特許第6971945号(P6971945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971945
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】測距システム、測距装置及び測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/02 20100101AFI20211111BHJP
   G01S 13/32 20060101ALI20211111BHJP
   G01S 7/36 20060101ALI20211111BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20211111BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20211111BHJP
【FI】
   G01S11/02
   G01S13/32
   G01S7/36
   E05B49/00 J
   B60R25/24
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-175377(P2018-175377)
(22)【出願日】2018年9月19日
(65)【公開番号】特開2020-46321(P2020-46321A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 章二
(72)【発明者】
【氏名】西川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】農人 克也
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 与晴
【審査官】 渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033547(JP,A)
【文献】 特開2006−118886(JP,A)
【文献】 特開平07−296211(JP,A)
【文献】 特開平07−084035(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0330449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 − 5/30
7/00 − 7/42
11/00 − 11/16
13/00 − 13/95
19/00 − 19/55
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の装置間で位相検出信号を含む測距信号の送受信を行い、受信した前記位相検出信号の位相検出結果に基づいて前記装置間の距離を算出する測距システムにおいて、
識別信号を変調した被変調信号を含む前記測距信号を生成する変調回路と、
他の装置に前記測距信号を送信する送信回路と、
他の装置から前記測距信号を受信する受信回路と、
前記受信した前記測距信号中の前記被変調信号を復調する復調回路と、
前記復調回路の復調結果から得られる前記識別信号の復元状態に基づいて前記位相検出結果に対する干渉波による影響を判定する制御回路と、を備え、
前記変調回路は、複数に分割した前記識別信号を含む2つ以上の前記測距信号を生成し、
前記制御回路は、少なくとも1つの前記測距信号の復調結果から前記干渉波による影響を判定する測距システム。
【請求項2】
前記変調回路は、前記識別信号をオンオフキーイング変調して前記被変調信号を生成する請求項に記載の測距システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記被変調信号が0レベルとなる期間における前記受信回路の出力レベルに基づいて、前記干渉波のレベルを推定する請求項に記載の測距システム。
【請求項4】
位相検出信号を含む測距信号の送信を行うための送信回路と、
装置を識別するための識別信号を複数に分割し分割した前記識別信号を変調して得た被変調信号を前記送信回路に与え、前記測距信号に前記被変調信号を含めて複数に分割した前記識別信号を含む2つ以上の前記測距信号を送信させる変調回路と、
他機の送信回路から送信された測距信号を受信する受信回路と、
前記受信回路によって受信された測距信号中の被変調信号を復調する復調回路と、
前記受信回路によって受信された測距信号中の位相検出信号の位相検出結果に基づいて距離を算出すると共に、前記復調回路により得られる少なくとも1つの前記測距信号の復調結果から得られる識別信号の復元状態に基づいて前記位相検出結果に対する干渉波による影響を判定する測距装置。
【請求項5】
一対の装置間で位相検出信号を含む測距信号の送受信を行うための送信回路及び受信回路と、受信した前記位相検出信号の位相検出結果に基づいて前記装置間の距離を算出する制御回路とを具備する測距システムの測距方法であって、
前記一対の装置間で識別可能な識別信号を複数に分割し分割した前記識別信号を変調して得た被変調信号を前記送信回路に与え、前記測距信号に前記被変調信号を含めて複数に分割した前記識別信号を含む2つ以上の前記測距信号を送信させ、
前記受信回路によって受信された前記測距信号中の前記被変調信号を復調し、
少なくとも1つの前記測距信号の前記復調の結果から得られる前記識別信号の復元状態に基づいて前記位相検出結果に対する干渉波による影響を判定する測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、測距システム、測距装置及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の施錠・開錠を容易にするキーレスエントリが多くの車に採用されている。この技術は自動車の鍵(キー)と自動車間の通信を利用してドアの施錠・開錠を行う。更に、近年、鍵に触れることなくドアロックの施錠・開錠を行ったり、エンジンを始動させたりすることができるスマートキーシステムも採用されている。
【0003】
しかしながら、攻撃者がキーと自動車間の通信に侵入し、車を盗難する事件が多発している。攻撃(所謂リレーアタック)の防御策として、キーと自動車間の距離が所定値以上と判断したときは通信による車の制御を禁止する策が検討されている。
【0004】
このような測距を行うシステムとして、位相検出方式を採用し、通信によって装置間の距離を求める通信型測距システムがある。
【0005】
しかしながら、近隣に複数の測距システムが存在する場合には、同一周波数帯の干渉波の影響を受けることがあり、検出位相が干渉波により変化して測距精度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−20221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、測距精度が低下することを防止することができる測距システム、測距装置及び測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の測距システムは、第1及び第2の装置間で位相検出信号を含む測距信号の送受信を行い、受信した前記位相検出信号の位相検出結果に基づいて前記装置間の距離を算出する測距システムにおいて、識別信号を変調した被変調信号を含む前記測距信号を生成する変調回路と、他の装置に前記測距信号を送信する送信回路と、他の装置から前記測距信号を受信する受信回路と、前記受信した前記測距信号中の前記被変調信号を復調する復調回路と、前記復調回路の復調結果から得られる前記識別信号の復元状態に基づいて前記位相検出結果に対する干渉波による影響を判定する制御回路と、を備え、前記変調回路は、複数に分割した前記識別信号を含む2つ以上の前記測距信号を生成し、前記制御回路は、少なくとも1つの前記測距信号の復調結果から前記干渉波による影響を判定する
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る測距装置を採用した測距システム示すブロック図。
図2】干渉波が存在する場合の測距精度の低下を説明するための図。
図3A】干渉波が存在する場合の測距精度の低下を説明するための図。
図3B】干渉波が存在する場合の測距精度の低下を説明するための図。
図4】本実施の形態において採用される測距信号の信号フォーマットを示す図。
図5】干渉波による妨害を受けているか否かの判定フローチャート。
図6】干渉波による妨害の様子を説明するための図。
図7】本発明の第2の実施の形態を説明するための図。
図8】本実施の形態においてB車とBキーとの間の測距信号のやり取り回数を合計6回とした場合の例を示す図。
図9】本発明の第3の実施の形態を説明するための図。
図10】本発明の第3の実施の形態を説明するための図。
図11】本発明の第3の実施の形態を説明するための図。
図12】本発明の第4の実施の形態を説明するための図。
図13】本発明の第5の実施の形態を説明するための図。
図14】変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る測距装置を採用した測距システム示すブロック図である。
【0011】
本実施の形態は無変調キャリアを用いた位相検出方式を採用し、通信によって装置間の距離を求める通信型測距を採用する例を説明する。このような測距装置においては、測距信号が干渉波により影響を受けた場合には、影響を受けた測距信号を廃棄し、新たに測距信号の送受信を実施した方が有効であると考えられる。そのために干渉波の影響を検出可能にすることが望ましい。
【0012】
そこで、本実施の形態においては、例えば機器を識別するためのID(識別)情報を利用して干渉波の有無を判定することで、有効な測距信号のみを用いた測距を実現する。これにより、干渉波が生じる環境においても、測距精度が低下することを防止する。
【0013】
先ず、図2図3A及び図3Bを参照して、干渉波が存在する場合の測距精度の低下について説明する。
【0014】
図2は複数の測距システムが同時に存在する状況を示している。例えば、駐車場等に2台のA車,B車が停車しているものとし、これらのA車,B車はいずれもスマートキーシステムを採用しているものとする。A車に対応するスマートキーはAキーであり、B車に対応するスマートキーはBキーである。また、A車とAキーとの間、及び、B車とBキーとの間では、スマートキーシステムの運用に際して、相互の距離を求めることでリレーアタックを防止する測距システムを採用しているものとする。
【0015】
A車は、Aキーに対して、キーレスエントリを行うか否かのリクエストを発生する。Aキーは、A車からのリクエストを受信するとレスポンスを返し、開錠の前に測距のための通信を開始する。測距システムが、位相検出方式の通信型測距である場合には、A車とAキーとの間で交互に無変調の測距信号の送受信が行われる。B車とBキーも同様に通信が行われる。
【0016】
例えば、AキーからA車に対する無変調の測距信号の送信と略同時に、BキーからB車に無変調の測距信号を送信されるとする。この場合、A車は、Aキーからの測距信号だけでなくBキーからの測距信号も受信する可能性がある。また、B車も、Bキーからの測距信号だけでなくAキーからの測距信号も受信する可能性がある。
【0017】
測距システムが相互に同一周波数帯の測距信号を用いて測距を実施すると、A車の測距用受信器はAキー及びBキーの測距信号から得た位相情報を用いた測距を行うことになり、正しい測距を行うことはできない。B車についても同様である。
【0018】
図3AはB車による測距の様子を示すものであり、図3BはA車による測距の様子を示すものである。測距システムの測距信号は、プリアンブル(preamble)と位相検出信号(PD signal)とを含む。プリアンブルは、例えば無変調の正弦波であり、利得調整用として用いられる。位相検出信号としては、無変調のキャリア信号が採用され、位相検出信号の位相を検出することで、測距が行われる。
【0019】
ここでは簡単のため、一周波のみを用いた測距について説明するが、二周波を用いた測距においても同様である。いま、電波速度(光速)をCとすると、時間tで電波が進む距離Dは、D=tCであり、距離Dの伝搬に要する時間tはt=D/Cとなる。一方、測距に用いる各周波数をωとすると、正弦波sinωtがt秒間で進む位相Δθは、Δθ=ωtである。従って、(1)式が導かれる。
Δθ=ωD/C=2πf・D/C …(1)
B車の受信器において、Bキーから送信された正弦波sinωtのみが受信される場合には、受信信号から求めた位相Δθにより、距離Dは、(2)式によって求められる。
D=ΔθC/2πf (2)
ここで、Aキーからの位相検出信号を振幅Aを用いてAsin(ωt+θ)と表し、Bキーからの位相検出信号を振幅Aを用いてAsin(ωt+θ)と表す。A車、B車は、それぞれ受信信号から得られた位相θ,θとを用いて、(2)式から正確な距離を求めることができる。
【0020】
しかしながら、B車が受信する信号は、Bキー及びAキーからの信号を加算した信号yとなり、(3)式から(5)式で表される。
=Asin(ωt+θ)+Asin(ωt+θ)=Asin(ωt+φ) (3)
A={A+A+2Acos(θ−θ)}1/2 (4)
φ=tan−1{(Asinθ+Asinθ)/(Acosθ+Acosθ)} (5)
即ち、B車において検出する位相は、(5)式のφであり、Bキーからの位相θとは明らかに異なる。
【0021】
B車において、Bキーからの測距信号の受信直後(ほぼ同時)に、Aキーからの測距信号が受信されるとする。図3Aに示すように、B車は、2つの位相検出信号が同時に受信される期間においては、Aキーからの位相検出信号が干渉波となって、正しい位相の検出が不可能となる。同様に、図3Bに示すように、A車は2つの位相検出信号が同時に受信される期間においては、Bキーからの位相検出信号が干渉波となって、正しい位相の検出が不可能となる。
【0022】
なお、国内電波法の規定から、同時送受信が禁止された周波数帯においては、位相検出信号の送信前にキャリアセンスが行われることがある。この場合でも、A車、B車、Aキー及びBキーの位置関係によっては、距離減衰や遮蔽等の減衰により、キャリアセンス時の受信レベルが規定値以下となり、同時に位相検出信号が送信されてしまうことがある。従って、キャリアセンスを必要とする場合でも、干渉が生じて正しい位相の検出が不能となることがある。
【0023】
そこで、本実施の形態においては、測距を行う一対の通信機相互間において、測距信号中に、無変調の位相検出信号の外に自機を識別するID情報(識別情報)を含める。干渉波が混入しているか否かを判定し、干渉波が混入している場合には位相検出結果を採用しない。これにより、測距精度が低下することを防止する。
(構成)
図1において、測距システムを構成する第1装置1(以下、装置1ともいう)と第2装置2(以下、装置2ともいう)とは距離Lだけ離間して配置されている。装置1と装置2の少なくとも一方は移動自在であり、距離Lはこの移動に伴って変化する。装置1,2は同一構成である。なお、スマートキーシステムに適用した場合には、装置1,2の一方は、キーに設けられた装置であり、他方は車に設けられた装置である。
【0024】
装置1,2には、制御回路10が設けられている。制御回路10は、CPU11を備え、自装置の各部を制御する。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って動作して各部を制御する。なお、制御回路10は、CPU以外のプロセッサによって構成されていてもよく、また、FPGA等のハードウェアによって一部又は全部の機能を実現するものであってもよい。
【0025】
基準発振回路14は、所定周波数の発振信号(ローカル信号)を発生する。発振信号は、送信回路15、受信回路16及び変復調回路18に供給される。発振信号の周波数は、測距に用いるキャリア周波数のキャリアを送信回路15から発生させるために必要な周波数に設定される。
【0026】
送信回路15は例えば直交変調器によって構成することができる。送信回路15は、変復調回路18から与えられた測距信号を直交変調して増幅した後、送信波をアンテナ19に供給する。アンテナ19は、送信波を送信することができる。また、アンテナ19は、装置1又は2からの送信波を受信した信号を受信回路16に供給する。
【0027】
受信回路16は例えば直交復調器によって構成することができる。受信回路16は、受信信号を直交復調し、受信波の同相成分(I信号)及び直交成分(Q信号)を分離して変復調回路18に出力する。
【0028】
本実施の形態においては、制御回路10には、ID生成回路13が設けられている。ID生成回路13は、自機及び測距対象の機器(装置1に対する装置2、装置2に対する装置1)をそれぞれ識別するためのID情報を生成する。なお、装置1,2が有するこれらのID情報は相互に同一であってもよい。例えば、ID生成回路13は、メモリ12に予めID情報が記憶されている場合には、メモリ12からID情報を読み出してもよい。また、測距の都度、ランダム又は所定の規則に従ってID情報を生成してもよい。CPU11は、ID生成回路13が生成したID情報を変復調回路18に供給して、変復調回路18の変復調処理を制御する。
【0029】
本実施の形態においては、制御回路10は、測距信号として、プリアンブル及び位相検出信号の外に測距対象の機器のID情報を含めた信号を送信させるように、変復調回路18を制御する。即ち、制御回路10は、プリアンブル及び位相検出信号については無変調のキャリア信号が出力されるように変復調回路18を制御し、ID情報についてはID情報を変調信号とした所定の変調方式でキャリア信号を変調して得られる被変調信号が出力されるように変復調回路18を制御する。
【0030】
変復調回路18は、プリアンブルの送信期間(プリアンブル期間)及び位相検出信号の送信期間(位相検出信号期間)については、無変調のキャリアを、ID情報の送信期間(ID信号期間)については、被変調信号を、送信回路15に出力する。なお、変復調回路18は、振幅変調、周波数変調及び位相変調等の一般的ないずれの変調方式を採用してもよい。
【0031】
図4は本実施の形態において採用される測距信号の信号フォーマットの一例を示す図である。測距信号は先頭にプリアンブル(preamble)が配置され、次にID情報の被変調信号(ID)が配置され、最後に位相検出信号(PD signal)が配置される。IDとPD signalの順序は逆であってもよい。
【0032】
なお、変復調回路18は、受信信号が与えられると、プリアンブル期間及び位相検出信号期間については、キャリアをそのまま制御回路10に出力し、ID信号期間については、被変調信号を復調して得られるID情報を制御回路10に出力する。
【0033】
制御回路10は、プリアンブルのレベルに応じて、受信回路16等の利得を調整する。また、制御回路10は、受信したID情報と自機のID情報との比較を行い、位相検出信号の位相を検出する。位相検出結果を用いることで、測距対象機器との間の測距が可能である。なお、この測距演算は、CPU11がメモリ12に格納されたプログラムを実行することによって、実現することができる。
【0034】
制御回路10は、ID信号期間の信号からID情報を復元することができない場合、又は復元したID情報と自機のID情報とが不一致の場合、即ち、受信信号から自機のID情報を復元できない場合には、位相検出結果を無効として、測距演算に採用しない。
【0035】
次にこのように構成された実施の形態の動作について図5及び図6を参照して説明する。図5は干渉波による妨害を受けているか否かの判定フローチャートである。図6は干渉波による妨害の様子を説明するための図である。
【0036】
図2と同様の状態を想定する。A車及びB車は所定の周期でリクエストを送信している(S1)。Aキー及びBキーは、リクエストを受信すると、レスポンスを返し、開錠の前に測距のための通信を開始する。Aキー及びBキーは、測距のための通信に際して、ID情報を含む測距信号を送信する。
【0037】
A車及びB車は、レスポンスの受信の待機状態となる(S2)。A車及びB車はレスポンスを受信すると、測距信号の受信を開始する(S3)。A車及びB車の制御回路10は、測距信号に含まれるプリアンブルによって、受信回路16の利得調整等を行う。制御回路10は、ID信号期間になると、受信した被変調信号を変復調回路18によって復調させる(S5)。
【0038】
制御回路10は、復調信号を取得すると(S6)、ID情報が復元されたか否かを判定する(S7)。制御回路10は、ID情報が復元されている場合には、復元されたID情報がメモリ12に記憶されている自機のID情報に一致しているか否かを判定する(S8)。制御回路10は、復元されたID情報が自機のID情報に一致している場合には、ID一致と判定する(S9)。
【0039】
また、制御回路10は、ID情報が復元されなかったと判定した(S7)場合及び復元されたID情報が自機のID情報に一致していないと判定した(S8)場合には、IDエラーと判定する(S10)。受信回路16においては、ID信号期間の次に、位相検出信号期間の無変調キャリアが受信される。制御回路10は、受信回路16の出力から位相検出信号の位相を検出する。
【0040】
制御回路10は、ID一致判定が得られた(S9)場合には、位相検出結果を有効とし測距演算に用いる。また、制御回路10は、IDエラー判定が得られた(S10)場合には、位相検出結果を無効とし測距演算に用いない。なお、この場合には、制御回路10は、対応するキーに対して測距信号の再送を要求してもよい。
【0041】
また、制御回路10は、S9,S10の判定が得られた後に位相検出信号の位相を求めるようになっていてもよい。また、S9,S10の判定が得られる前に位相の検出処理を開始し、S10の判定が得られた段階で、位相の検出処理を中止するか又は位相検出結果を無効にするようになっていてもよい。
【0042】
図6はB車による測距の様子を示すものであり、横軸に時間をとり、Aキーの測距信号の受信、Bキーの測距信号の受信及びB車の測距処理を示している。図6では、B車において、Bキーからの測距信号だけでなく、干渉波となるAキーからの測距信号も受信される例を示している。
【0043】
図6の例は、B車において、Aキーからの測距信号の受信直後(ほぼ同時)に、Bキーからの測距信号が受信されることを示している。Bキーの測距信号に含まれるID情報は、Aキーの測距信号が干渉波となって、正しく復元することはできない。例えば、Aキーの測距信号の強度の方がBキーの測距信号の強度よりも十分に大きい場合には、Aキーに設定されたID情報が検出されることもある。この場合には、制御回路10は、IDエラーと判定する。また、例えば、AキーとBキーの測距信号の強度が略々同程度である場合には、ID情報の復元時に、訂正不能なエラーが検出されることもある。この場合にも、制御回路10は、IDエラーと判定する。
【0044】
B車の制御回路10は、IDエラーと判定される場合には、Bキーからの測距信号が干渉波の影響を受けているものと判定して、当該測距信号に含まれる位相検出信号の位相検出結果を無効として、測距演算には用いないようにする。これにより、干渉波の影響によって測距演算結果に誤差が生じることを防止することができる。
【0045】
このように本実施の形態においては、測距信号に、ID情報を変調した被変調信号を含めて送信し、被変調信号の復調によって正しいID情報が得られるか否かにより干渉波の有無を判定する。干渉波が存在する場合には、位相検出結果を無効として測距演算に用いない。これにより、干渉波によって測距演算精度が低下することを防止することができる。
(第2の実施の形態)
図7は本発明の第2の実施の形態を説明するための図である。本実施の形態におけるハードウェア構成は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態においては、ID情報を複数に分割し、分割したID情報(以下、分割ID情報という)を、複数回送信する測距信号によって分割して伝送する。これにより、1回の測距信号の送信に要する時間を短縮することを可能にして、測距に要する時間を短縮する。
【0046】
本実施の形態においても、位相検出信号が干渉波の影響を受けているか否かを判定するために測距信号の送信毎にID情報を付加する。このため、ID情報によって測距信号の通信時間が長くなり、測距に要する時間が長くなってしまい、スマートキーシステムの応答が遅くなる。例えば、スマートキーシステムが使用する周波数帯、300MHz帯、400MHz帯、900MHz帯を用いて測距信号を送信すると、チャンネル帯域の制限から、測距信号の周波数帯域は数100kHz程度となり、ID情報の伝送レートは比較的小さい。従って、ID情報の伝送には比較的長時間を要する。なお、ID情報の伝送時間を短縮するためにID情報のビット数を少なくすると、干渉波の判定精度が劣化してしまう。例えば、ID情報を4ビットで構成した場合には、16台の装置しか識別できなくなり、混雑した駐車場では識別数が不足する。
【0047】
そこで、制御回路10は、ID情報を複数に分割し、分割ID情報を複数回の測距信号に分けて伝送する。例えば、図7の例では、装置1,2は、測距信号を2回送信するようになっている。制御回路10はID情報を2分割し、各分割ID情報を含む距信号を送信するように制御を行う。
【0048】
図7は縦軸に時間をとりB車からBキーに送信する測距信号の一例を示している。図7はID情報が8ビットで構成される例を示している。IDを分割しない場合には、測距信号は、先頭にプレアンブル(preamble)が配置され、次に8ビットのID情報を変調して得られる被変調信号(ID)が配置され、最後に位相検出信号(PD signal)が配置される。ID信号期間における1〜8の数字は、被変調信号により伝送されるID情報のビットを示している。この場合には、1回目及び2回目とも、同一の測距信号が送信される。
【0049】
これに対し、本実施の形態では、B車の制御回路10は、1回目の測距信号の送信時に、8ビットID情報のうちの先頭4ビットのみを変調させ、4ビット分の被変調信号をID信号期間に送信する。また、制御回路10は、2回目の測距信号の送信時に、8ビットID情報のうちの後方4ビットのみを変調させ、4ビット分の被変調信号をID信号期間に送信する。
【0050】
一方、Bキーの制御回路10は、1回目の測距信号の受信時に、ID信号期間における4ビットを受信して復調させ、先頭4ビット分のID情報を取得する。また、制御回路10は、2回目の測距信号の受信時に、4ビットを受信して復調させ、後方4ビット分のID情報を取得する。制御回路10は、1回目及び2回目の受信において取得した4ビットずつのID情報により元の8ビットのID情報を復元する。
【0051】
なお、制御回路10は、測距信号の受信毎に可能ならばID情報の判定を行ってもよいし、また、ID情報の復元に必要な全ての測距信号の受信後に、ID情報の判定を行ってもよい。
【0052】
他の作用は第1の実施の形態と同様である。
【0053】
本実施の形態においては、ID情報を分割して送信しているので、1回の測距信号の通信に要する時間を、ID情報を分割しないで送信する場合に比べて短縮することが可能である。従って、結果的に測距に要する時間を短縮することが可能である。
【0054】
制御回路10は、例えば、分割されたID情報を受信すると、受信したID信号期間の復調処理によって、ID情報を復元する。制御回路10は、復元の結果によって、干渉波による影響を判定することも可能である。例えば、ID情報が復元できなかった場合、あるいは、復元した先頭4ビットのID情報とメモリ12から読み出した対応するID情報の先頭4ビットとが不一致の場合には、制御回路10は、受信した測距信号が干渉波による妨害を受けていると判定して、IDエラーと判定してもよい。この場合には、2回目の測距信号の受信を行うことなく、次の測距のための通信を開始するようにしてもよい。
【0055】
また、制御回路10は、1回目の測距信号の受信によって、先頭4ビットのID情報が一致判定した場合には、2回目の測距信号を受信して、後方4ビットのID情報の復元処理を行う。制御回路10は、後方4ビットのID情報についても、メモリ12から読み出した対応するID情報の後方4ビットと一致しているものと判定した場合には、ID一致と判定し、位相検出結果を測距演算に用いる。また、制御回路10は、先頭4ビットのID情報について一致判定したとしても、後方4ビットのID情報について不一致判定した場合には、ID不一致と判定し、位相検出結果を無効として、測距演算に用いない。
【0056】
図8はB車とBキーとの間の測距信号のやり取りを合計3回とした場合の例を示す図である。図8図7に比べてB車及びBキーから周波数がfM−CAR≒fM−KEY=fの3回目の送信が行われる点が異なる。一般に多くの周波数で測距した結果を用いることにより測距精度が上がるため、測距回数を上げたものである。
【0057】
3回の送信を行うことから、測距に要する時間は2回の送信を行う場合に比べて長くなるが、3回の通信によって測距精度を向上させることができる。また、この場合には、ID情報の分割数を大きくすることにより、測距時間の短縮を図ることができる。
【0058】
図8においても、8ビットのID情報を分割してID信号期間に配置して伝送する。図8では、8ビット中の先頭3ビットを1回目の測距信号で伝送し、8ビット中の第4ビットから第6ビットを2回目の測距信号で伝送し、8ビット中の最後の2ビットを3回目の測距信号で伝送する。なお、図8では、3回目の測距信号の伝送時に、先頭の1ビットを再度伝送する例を示しているが、このビットは伝送しなくてもよく、ID情報として最後の2ビットのみを伝送するようにしてもよい。
【0059】
本実施の形態においては、干渉波の影響を受けているか否かの判定のために送信するID情報を複数に分割し、分割ID情報を測距信号に付加して伝送する。これにより、各測距信号の伝送に要する時間を短縮することができ、測距に要する時間を短縮することができる。
【0060】
なお、本実施の形態においても、ID情報の変調方式としては、振幅変調、周波数変調、位相変調等の一般的な変調方式を採用することができ、変調方式が限定されるものではない。
(第3の実施の形態)
図9から図11は第3の実施の形態を説明するための図である。本実施の形態におけるハードウェア構成は図1と同様である。本実施の形態は、第1の実施の形態に比べて、ID情報のビット数及び測距に要する時間を変更することなく、位相検出信号期間を長くすることを可能にしたものである。
【0061】
変復調回路18は、ID情報に対して振幅変調又は振幅復調を行う。変復調回路18は、基準発振回路14の出力を用いて、位相検出信号と同じキャリアを用いた振幅変調を行う。
【0062】
図9において、上段は第1の実施の形態による測距信号を示し、下段は本実施の形態による測距信号を示している。図9の上段では、測距信号は、先頭にプリアンブル(preamble)が配置され、次にID情報を変調して得た被変調信号(ID)が配置され、最後に位相検出信号(PD signal)が配置される。
【0063】
これに対し、本実施の形態においては、図9の下段に示すように、先頭のプリアンブル及び最後の位相検出信号については上段と同じであるが、ID信号期間については、ID情報を振幅変調した被変調信号(ID+PD signal)(以下、位相検出信号を含むID情報という)を配置する。制御回路10は、ID信号期間の位相検出信号を含むID情報を復調してID情報を復元し、復元したID情報を元に干渉波の影響を判定する。
【0064】
制御回路10は、位相検出信号を含むID情報のうち、所定のレベルが得られる信号部分の位相を検出する。即ち、制御回路10は、受信回路16からのID信号期間の一部の出力と位相検出信号期間の出力とを用いて位相を検出する。
【0065】
図10及び図11はID信号期間の受信信号を用いて位相検出信号期間と同様の位相検出が可能であることを説明するものである。図10は位相検出信号を示しており、上段はその波形を示し、下段は位相角を示している。
【0066】
いま、無変調のキャリア信号である位相検出信号yが初期位相θを用いて、y=cos(ωt+θ)で表されるものとする。この余弦波信号は以下の通り変形できる。
y=cos(ωt+θ)=cos(−θ)cosωt+sin(−θ)sinωt
cosωtをx軸とし、sinωtをy軸として、yは図10の下段の円の動径によって示すことができる。動径の位相角は、
arctan{sin(−θ)/cos(−θ)}
で表され、−θとなる。初期位相θは、測距演算の基準となる位相である。位相検出信号の初期位相は、測距のために位相を検出する期間中は変化しないように、基準発振回路14及び送信回路15が制御される。
【0067】
ID情報の被変調信号に用いるキャリアは位相検出信号のキャリアと同一である。初期位相θの情報がキャリアに対する振幅変調後の被変調信号に保持されていれば、被変調信号を測距演算に用いる位相検出に利用することができることになる。
【0068】
図11は振幅変調されたID情報の被変調信号を示しており、上段はその波形を示し、下段は位相角を示している。被変調信号yはy=e(t)cos(ωt+θ)で表される。なお、e(t)はID情報に基づくレベルである。なお、図11は振幅変調として、オンオフキーイング(OOK)変調を採用した場合の例を示している。例えばID情報のビットが“0”の場合にはe(t)=0である。被変調信号yは以下の通り変形できる。
y=e(t)cos(ωt+θ)=e(t)cos(−θ)cosωt+e(t)sin(−θ)sinωt
cosωtをx軸とし、sinωtをy軸として、上記式は図11の下段の円の動径によって示すことができる。この場合の動径の位相角は、下記(6)式で表させる。
arctan{e(t)sin(−θ)/e(t)cos(−θ)}=−θ (6)
この(6)式に示すように、振幅変調における振幅を表すe(t)は、x軸情報及びy軸情報の両方に乗算されるので打ち消され、位相情報は保存される。図11の例では、ID信号期間の信号は、e(t)=0の期間において振幅は0となるが、e(t)が0でない期間においては、位相情報が保持されている。
【0069】
即ち、位相検出信号と同一キャリアを用いてID情報を振幅変調した場合には、被変調信号には位相検出信号と同じ位相情報が含まれることになる。これにより、位相検出結果を測距演算に用いることができる。
【0070】
なお、e(t)が0又は1のOOK信号の例を示したが、e(t)が0又は1以外の数値であっても、上記(6)式から分かるように振幅情報は相殺されるので、振幅変調であれば位相情報は保存される。
【0071】
このように本実施の形態においては、ID情報を振幅変調した被変調信号をID信号期間の信号として送信している。このため、等価的に位相検出信号期間を長くすることができる。これにより、ID情報のビット数を低減することなく、また、測距に要する時間を長くすることなく、位相検出信号期間を長くして、位相検出精度を向上させ、結果的に測距精度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態は、第2の実施の形態の分割ID情報を用いる場合にも適用できることは明らかである。
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態を説明するための図である。本実施の形態におけるハードウェア構成は図1と同様である。本実施の形態は第3の実施の形態と同様の考え方によって、測距信号を短縮することを可能にしたものである。
【0073】
本実施の形態においては、制御回路10は、変復調回路18に、ID情報に対する振幅変調又は振幅復調を施させる。また、変復調回路18は、基準発振回路14の出力を用いて、位相検出信号と同じキャリアを用いた振幅変調を行う。
【0074】
制御回路10は、送信するID情報の各ビットが“0”であるか“1”であるかを認識しており、送信回路15を制御して、ID情報の“1”の数に対応した期間だけ、位相検出信号期間を短縮する。ID情報の変調方式としてOOK変調を採用した場合には、ID情報が“1”の期間における被変調信号は、位相検出信号と同じとなる。従って、ID情報が“1”の期間における被変調信号を位相検出信号として用いる。これにより、位相検出に用いる時間を変更することなく位相検出信号期間を短縮して、測距信号を短くすることができる。
【0075】
図12はこの場合の例を示しており、図12の上段は第1の実施の形態における測距信号を示し、下段は本実施の形態における測距信号を示している。本実施の形態においては、ID情報(ID)中のPD signal期間、すなわち、位相検出信号期間を短縮している。この場合でも、上段の位相検出信号期間(PD signal)と同じ期間において位相の検出が可能である。
【0076】
即ち、第3の実施の形態においては、ID信号期間の一部を位相検出に用いることで位相の検出精度を向上させるものであったが、本実施の形態は、位相検出に用いたID信号期間の一部に位相検出信号を含めることで、測距信号を短くして、測距に要する時間を短縮するものである。
【0077】
測距信号の受信時には、制御回路10は、復元したID情報の“1”の数を判定し、判定結果に基づいて位相検出信号期間の長さを判断する。例えば、8ビットのID情報が“10011100”である場合には、“1”に対応する4箇所の被変調信号期間において、制御回路10は、受信回路16の出力に基づく位相検出を行い、その分だけ図12上段に示した位相検出信号期間を短縮して位相検出を行う。
【0078】
このように本実施の形態においては、ID信号期間の信号を位相検出信号として用いることができ、位相検出精度を低下させることなく、位相検出信号期間を短縮し、測距に要する時間を短縮することができる。
【0079】
なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態の分割ID情報を用いる場合に適用することができることは明らかである。
(第5の実施の形態)
図13は本発明の第5の実施の形態を説明するための図である。本実施の形態におけるハードウェア構成は図1と同様である。本実施の形態は第4の実施の形態と同様の考え方によって、位相検出信号期間を短縮すると共に、ID情報の検出精度を向上させるものである。
【0080】
ID信号期間内で位相検出に利用できる期間はID情報が“1”の期間のみである。例えば、ID情報が全て“0”の場合には、位相検出信号期間を短縮することはできない。即ち、第4の実施の形態においては、位相検出信号期間がID情報に応じて変動することになる。そこで、本実施の形態においては、制御回路10は、変復調回路18にマンチェスター符号を用いて振幅変調(例えばOOK変調)を実行させる。
【0081】
マンチェスター符号では、例えば“0”を“01”で表し、“1”を“10”で表す。このマンチェスター符号を採用することで、ID情報の伝送レートを下げて検出精度を向上させることが可能となる。反面、ID信号期間は2倍になる。しかし、マンチェスター符号を採用すると、“1”と“0”の数は同数となり、ID信号期間の1/2を位相検出信号期間として利用することができることになる。この結果、測距信号が長くなることを抑制しながら、ID情報の検出精度を向上させることができる。
【0082】
図13はこの場合の例を示しており、図13の上段は第3の実施の形態における測距信号を示し、下段は本実施の形態における測距信号を示している。上段の例では、8ビットのID情報が“10011100”の例を示している。
【0083】
一方、本実施の形態においては、ID信号期間においてマンチェスター符号を採用すると共に、ID情報(ID+PD singal)中のPD signal期間だけ位相検出信号期間を短縮している。即ち、下段においては、8ビットのID情報“10011100”は、“1001011010100101”となる。“0”と“1”の数はいずれも8となって、8ビット分のID信号期間で、位相検出が可能である。この結果、図13の例では、ID情報の伝送レートは遅くなるが、ID情報の検出精度を向上させることができる。
【0084】
このように本実施の形態においては、ID情報をマンチェスター符号化した後振幅変調しており、測距信号が長くなることを抑制しつつ、ID情報の検出精度を向上させることができる。
(変形例)
図14は変形例を示す説明図である。本変形例のハードウェア構成は図1と同様である。本変形例は、例えばID情報にマンチェスター符号、OOK変調を採用して、干渉波の大きさをより正確に検出するものである。上記各実施の形態においては、受信したID情報が自機のID情報に一致しているか否かによって、干渉波の影響を判定した。しかし、干渉波の大きさが比較的小さければ、干渉波が存在したとしても受信したID情報が自機のID情報に一致することもある。そこで、本変形例は、ID情報をOOK変調して伝送する場合において、“0”期間の受信信号のレベルにより干渉波のレベルを推定するものである。
【0085】
このため、この変形例では、ID信号期間に必ず“0”期間が含まれるように、ID情報にマンチェスター符号を採用した方がよい。
【0086】
制御回路10は、受信回路16の出力からID信号期間に含まれる“0”期間の信号レベルを求める。この“0”期間の信号レベルは、干渉波の信号レベルであるものと考えられる。制御回路10は、この信号レベルと、変復調回路18においてID情報の“0”,“1”の判定に用いる閾値との比較によって、干渉波のレベルを推定する。
【0087】
図14は上段に8ビットのID情報“10011100”に対応するマンチェスター符号による信号を示し、下段に上段のマンチェスター符号をOOK変調して得た被変調信号を実線によって示している。また、下段の破線は、干渉波を示している。制御回路10は、推定した干渉波のレベルが所定の閾値よりも大きい場合には、比較的大きいレベルの干渉波により位相検出信号が影響を受けているものと判定する。この場合には、制御回路10は、ID情報について一致と判定した場合であっても、位相検出結果を無効として、測距演算に用いないようにしてもよい。
【0088】
なお、マンチャスター符号を採用しない場合でも、ID信号期間にOOK変調による“0”期間が含まれていれば、“0”期間におけるレベル判定によって、干渉波の影響を推定することが可能である。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0090】
1,2…装置、10…制御回路、11…CPU、12…メモリ、13…ID生成回路、14…基準発振回路、15…送信回路、16…受信回路、18…変復調回路。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14