(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノズルの開口から液体を吐出する吐出処理が終了した後、当該ノズルの当該開口側に存在する当該液体を吸い上げるための吸引処理が行われる当該ノズルを含む液体吐出ノズルであって、
前記ノズルは、導電性を有し、
前記ノズルは、前記吸引処理が行われる期間において、前記導電性を利用して、当該ノズルの前記開口側に存在する前記液体である滞留液体が、当該ノズルの当該開口側に付着する力である付着力を小さくする構造を有し、
前記構造では、前記吸引処理が行われる期間において、前記ノズルに電圧が印加される
液体吐出ノズル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サックバック機構を有する半導体製造装置では、ノズルの開口から液体を吐出する吐出処理が行われた後に、当該ノズルの当該開口側に存在する滞留液体を吸い上げるための吸引処理が行われる。なお、吐出処理で使用される液体が酸性またはアルカリ性の薬液である場合、ノズルはフッ素樹脂等で構成される必要がある。
【0006】
ノズルがフッ素樹脂で構成されている構成では、吐出処理が行われた後、通常、ノズルはマイナスに帯電し、滞留液体はプラスに帯電する。そのため、滞留液体は、ノズルの開口側に付着する。なお、滞留液体の付着力が強い場合、吸引処理が行われても、滞留液体が、ノズルの開口側に付着した状態が維持される可能性がある。滞留液体が付着した状態で、例えば、乾燥処理等が行われると、開口における液だれが発生する。
【0007】
そこで、当該液だれの発生を抑制するために、吸引処理が行われる期間において、滞留液体がノズルの開口側に付着した状態が維持されることを抑制することが要求される。関連構成Aでは、この要求を満たすことはできない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、吸引処理が行われる期間において、滞留液体がノズルの開口側に付着した状態が維持されることを抑制することが可能な液体吐出ノズル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る液体吐出ノズルは、ノズルの開口から液体を吐出する吐出処理が終了した後、当該ノズルの当該開口側に存在する当該液体を吸い上げるための吸引処理が行われる当該ノズルを含む。前記ノズルは、導電性を有し、前記ノズルは、前記吸引処理が行われる期間において、前記導電性を利用して、当該ノズルの前記開口側に存在する前記液体である滞留液体が、当該ノズルの当該開口側に付着する力である付着力を小さくする構造を有
し、前記構造では、前記吸引処理が行われる期間において、前記ノズルに電圧が印加される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記ノズルは、導電性を有する。前記ノズルは、前記吸引処理が行われる期間において、前記導電性を利用して、当該ノズルの前記開口側に存在する前記液体である滞留液体が、当該ノズルの当該開口側に付着する力である付着力を小さくする構造を有する。
【0011】
これにより、吸引処理が行われる期間において、滞留液体がノズルの開口側に付着した状態が維持されることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の図面では、同一の各構成要素には同一の符号を付してある。同一の符号が付されている各構成要素の名称および機能は同じである。したがって、同一の符号が付されている各構成要素の一部についての詳細な説明を省略する場合がある。
【0014】
なお、実施の形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、当該各構成要素の相対配置などは、装置の構成、各種条件等により適宜変更されてもよい。また、各図における各構成要素の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
【0015】
<実施の形態1>
(構成)
図1は、実施の形態1に係る半導体製造装置500の構成を示す図である。
図1を参照して、半導体製造装置500は、液体吐出ノズル100と、ステージ30とを含む。
【0016】
半導体製造装置500は、ステージ30に載置されている被洗浄物31を洗浄する機能を有する。液体吐出ノズル100は、液体の吐出に使用される。半導体製造装置500は、吐出処理を行った後、後述の吸引処理(サックバック)を行う。
【0017】
吐出処理は、液体吐出ノズル100から液体を吐出する処理である。吐出処理で使用される液体は、例えば、酸性の薬液、または、アルカリ性の薬液である。なお、当該液体は、酸性またはアルカリ性の薬液に限定されない。当該液体は、処理工程の種類に対応する液体であればよい。当該液体は、例えば、純水、有機系の薬液等であってもよい。
【0018】
吐出処理は、例えば、被洗浄物31に液体をかける処理である。当該吐出処理では、例えば、液体吐出ノズル100からステージ30に載置されている被洗浄物31に向けて、液体が吐出される。なお、吸引処理については後述する。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る液体吐出ノズル100の構成を示す図である。
図2を参照して、液体吐出ノズル100は、ノズル10と、ノズル20とを含む。なお、液体吐出ノズル100は、ノズル10のみを含む構成としてもよい。当該構成では、液体吐出ノズル100は、ノズル10である。
【0020】
ノズル10に対し、吐出処理および吸引処理が行われる。言い換えれば、ノズル10は、吐出処理が終了した後、吸引処理が行われるノズルである。
【0021】
ノズル10の形状は、管状である。また、ノズル10の形状は、長尺状でもある。ノズル10は、PFA等のフッ素樹脂で構成されている。フッ素樹脂は、耐腐食性を有する。具体的には、ノズル10全体は、フッ素樹脂と導電性を有する材料とが混ざった混合材料で構成されている。そのため、ノズル10全体は、導電性を有する。
【0022】
ノズル10の一方の端には、注入口としての開口H1aが設けられている。ノズル10の他方の端には、開口H1bが設けられている。開口H1aには、液体を供給する液体供給部(図示せず)が接続されている。吐出処理では、液体供給部から供給される液体が、開口H1aから開口H1bに向かって流れる。
【0023】
つまり、開口H1aは、ノズル10の上流側に設けられている。また、開口H1bは、ノズル10の下流側に設けられている。なお、前述の吐出処理は、ノズル10の開口H1bから液体を吐出する処理である。
【0024】
ノズル20は、サックバック用ノズルである。ノズル20の形状は、管状である。また、ノズル20の形状は、長尺状でもある。ノズル10における、開口H1aと開口H1bとの間の領域には、ノズル20の一方の端が接続されている。ノズル20の他方の端には、一例として、真空装置(図示せず)が接続されている。
【0025】
また、ノズル10は、滞留部10aと、端部10bとを含む。滞留部10aは、ノズル10の一部である。滞留部10aの形状は、一例として、直線状である。
【0026】
端部10bは、ノズル10の別の一部である。端部10bは、ノズル10の開口H1b側である。端部10bの形状は、例えば、円弧状である。以下においては、ノズル10の開口H1b側(端部10b)に存在する液体を、「滞留液体」ともいう。すなわち、滞留液体は、ノズル10の端部10b内に存在する液体である。ノズル10の端部10bには、開口H1bが設けられている。
【0027】
前述の吸引処理(サックバック)は、滞留液体を吸い上げるための処理である。具体的には、吸引処理では、一例として、真空装置(図示せず)が,ノズル20内の空気を吸い上げる。そのため、ノズル20内において、方向Dr2へ吸引力が働く。これにより、滞留液体には、滞留部10aに向かう方向へ吸引力が働く。そのため、開口H1bにおける液だれの発生が抑制される。なお、吸引処理では、ノズル20の端を負圧にすることが可能であれば、真空装置以外の装置が使用されてもよい。
【0028】
なお、滞留部10aは、吸引処理が行われる期間において、滞留液体が滞留するための部分である。
【0029】
次に、本実施の形態の特徴的な構成(以下、「構成Ct1」ともいう)について説明する。構成Ct1では、ノズル10は、構造X1を有する。
【0030】
次に、構造X1について説明する。なお、
図2には、構造X1を説明するために、滞留液体3を、一例として、液滴として示している。なお、滞留液体3は、液滴に限定されない。滞留液体3は、例えば、ノズル10の開口H1b側(端部10b)全体に存在する液体であってもよい。構造X1の構成については後述する。以下においては、構成Ct1と比較の対象となる構成を、「構成Ct0」ともいう。構成Ct0では、ノズル10が構造X1を有していない。
【0031】
なお、吐出処理が終了した後、フッ素樹脂で構成されるノズル10は、通常、マイナスに帯電し、ノズル10内の液体(滞留液体3)はプラスに帯電する。構成Ct0では、吸引処理が行われても、帯電したノズル10および滞留液体3の引力により、当該滞留液体3はノズル10(端部10b)の内面に付着した状態が維持される可能性がある。そこで、前述したように、構成Ct1では、ノズル10は、構造X1を有する。
【0032】
以下においては、滞留液体が、ノズル10の開口H1b側(端部10b)に付着する力を、「付着力」ともいう。すなわち、付着力は、滞留液体が、ノズル10(端部10b)の内面に付着する力である。
【0033】
構造X1は、吸引処理が行われる期間において、ノズル10が有する導電性を利用して、滞留液体の付着力を小さくする構造である。構造X1では、ノズル10にアース12が接続されている。具体的には、構造X1では、滞留部10aにアース12が接続されている。すなわち、ノズル10(滞留部10a)は接地されている。
【0034】
したがって、液体吐出ノズル100では、ノズル10が導電性を有し、かつ、ノズル10(滞留部10a)にアース12が接続されている。そのため、吐出処理が終了した後、帯電しているノズル10、および、ノズル10(端部10b)の内面に付着し、かつ、帯電している滞留液体3の各々が除電される。これにより、ノズル10および滞留液体3の引力は小さくなる。すなわち、滞留液体3の付着力は小さくなる。
【0035】
(効果)
以上説明したように、本実施の形態によれば、ノズル10は、導電性を有する。ノズル10は、吸引処理が行われる期間において、当該導電性を利用して、当該ノズル10の開口H1b側に存在する液体である滞留液体が、当該ノズル10の当該開口H1b側に付着する力である付着力を小さくする構造X1を有する。
【0036】
これにより、吸引処理が行われる期間において、滞留液体がノズルの開口側に付着した状態が維持されることを抑制することができる。
【0037】
また、本実施の形態の液体吐出ノズル100では、ノズル10が導電性を有し、かつ、ノズル10(滞留部10a)にアース12が接続されている。そのため、吐出処理が終了した後、帯電しているノズル10、および、ノズル10(端部10b)内に付着し、かつ、帯電している滞留液体3の各々が除電される。これにより、ノズル10および滞留液体3の引力は小さくなる。すなわち、滞留液体3の付着力は小さくなる。例えば、滞留液体3の付着力は、吸引処理により滞留液体3が滞留部10aへ移動可能とするための弱い力になる。
【0038】
したがって、吸引処理により、滞留液体3は滞留部10aへ移動する。そのため、ノズル10の端部10bには、滞留液体3が存在しなくなる。すなわち、ノズル10の端部10bに液滴が存在することはない。仮に、ノズル10の端部10bに液滴が存在していても、吸引処理により、当該液滴は、滞留部10aへ移動する。その結果、開口H1bにおける液だれの発生を十分に抑制することができるという効果が得られる。
【0039】
なお、サックバック機構を有する半導体製造装置が使用する液体が、酸性またはアルカリ性の薬液である場合、ノズルは、耐腐食性を有するフッ素樹脂で構成される。前述したように、構成Ct0では、吸引処理が行われても、帯電したノズル10および滞留液体3の引力により、当該滞留液体3はノズル10(端部10b)の内面に付着した状態が維持される可能性がある。
【0040】
滞留液体が、ノズル10(端部10b)の内面に付着した状態で、例えば、リンス処理、乾燥処理等が行われると、開口における液だれが発生する。液だれが発生すると、例えば、滞留液体が、被洗浄物にかかる。この場合、シミ、エッチングムラ、乾燥不良などの不具合が発生するという問題がある。
【0041】
そこで、本実施の形態の液体吐出ノズル100は、上記の効果を奏するための構成を有する。そのため、本実施の形態の液体吐出ノズル100により、上記の問題を解決することができる。したがって、例えば、滞留液体が、被洗浄物にかかるという状況の発生を十分に抑制できる。また、シミ、エッチングムラ、乾燥不良などの不具合が発生することを十分に抑制できる。
【0042】
なお、本実施の形態では、ノズル10全体が導電性を有するとしたがこれに限定されない。少なくとも上記の効果が得られるように、ノズル10の一部が導電性を有してもよい。この場合、ノズル10の当該一部が、フッ素樹脂と導電性を有する材料とが混ざった混合材料で構成される。
【0043】
<変形例1>
以下においては、本変形例の構成を「構成Ctm1」ともいう。構成Ctm1では、ノズル10が、構造X1aを有する。構成Ctm1は、実施の形態1の液体吐出ノズル100に適用される。また、構成Ctm1は、実施の形態1の半導体製造装置500に適用される。構成Ctm1が適用された半導体製造装置500は、構成Ctm1が適用された液体吐出ノズル100(
図3参照)を含む。
【0044】
図3は、変形例1に係る構成Ctm1が適用された液体吐出ノズル100の構成を示す図である。前述したように、構成Ctm1では、ノズル10は、構造X1aを有する。構造X1aは、吸引処理が行われる期間において、ノズル10が有する導電性を利用して、滞留液体の付着力を小さくする構造である。
【0045】
構成Ctm1では、ノズル10の滞留部10aに電源Pw1が接続される。電源Pw1は、半導体製造装置500の制御に従って駆動する。電源Pw1は、吸引処理が行われる期間において、滞留部10a(ノズル10)に電圧を印加する。そのため、構造X1aでは、吸引処理が行われる期間において、滞留部10a(ノズル10)に電圧が印加される。
【0046】
具体的には、電源Pw1は、吸引処理が行われる期間において、ノズル10(滞留部10a)に、滞留液体3の極性と同じ極性の電圧を印加する。例えば、滞留液体3がプラスに帯電している状況において、電源Pw1は、ノズル10(滞留部10a)に、正(プラス)の電圧を印加する。そのため、構造X1aでは、吸引処理が行われる期間において、滞留部10a(ノズル10)に、滞留液体3の極性と同じ極性の電圧が印加される。
【0047】
(効果)
以上説明したように、本変形例によれば、ノズル10が導電性を有し、かつ、滞留部10a(ノズル10)に、滞留液体3の極性と同じ極性の電圧が印加される。これにより、滞留部10a(ノズル10)の内面の極性は、滞留液体3の極性と同じになる。そのため、吐出処理が終了した後に、ノズル10(端部10b)の内面に付着している滞留液体3は、当該内面から離れる。
【0048】
したがって、吸引処理により、滞留液体3は滞留部10aへ移動する。すなわち、ノズル10の端部10bには、滞留液体が存在しなくなる。その結果、開口H1bにおける液だれの発生を十分に抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態、変形例を自由に組み合わせたり、実施の形態、変形例を適宜、変形、省略することが可能である。