特許第6971952号(P6971952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971952
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/04 20140101AFI20211111BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L25/04 Z
   H01L21/60 301A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-209356(P2018-209356)
(22)【出願日】2018年11月7日
(65)【公開番号】特開2020-77722(P2020-77722A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2020年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏之
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−107937(JP,A)
【文献】 特開2008−235502(JP,A)
【文献】 特開2017−59650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/18
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体素子と、
平面視において、前記第1半導体素子に隣接している第2半導体素子と、を備え、
前記第1半導体素子は、第1ワイヤおよび第2ワイヤにより、前記第2半導体素子に接続されており、
前記第1ワイヤは、
前記第1半導体素子に接続されている第1接点と、
前記第2半導体素子に接続されている第2接点とを有し、
前記第2ワイヤは、
前記第1半導体素子に接続されている第3接点と、
前記第2半導体素子に接続されている第4接点とを有し、
前記第1ワイヤのうち前記第1接点と前記第2接点との間の部分である第1線状部は、起伏を有し、
前記第2ワイヤのうち前記第3接点と前記第4接点との間の部分である第2線状部は、起伏を有し、
前記第1線状部の第1最上部は、前記第2線状部の第2最上部に隣接しており、
前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第1接点と前記第3接点との間隔より狭く、
前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第2接点と前記第4接点との間隔より狭い
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体装置は、さらに、第1樹脂および第2樹脂を備え、
前記第2樹脂の熱伝導率は、前記第1樹脂の熱伝導率より低く、
前記第1最上部および前記第2最上部は、前記第2樹脂により封止されており、
前記第1ワイヤのうち前記第2樹脂により封止されていない部分は、前記第1樹脂により封止されており、
前記第2ワイヤのうち前記第2樹脂により封止されていない部分は、前記第1樹脂により封止されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、パッケージにより封止されており、
前記パッケージは、第1樹脂で構成されており、
前記パッケージの上面のうち、前記第1最上部および前記第2最上部の上方の領域には窪みが設けられている
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体装置は、さらに、第1樹脂および第3樹脂を備え、
前記第3樹脂のヤング率は、前記第1樹脂のヤング率より小さく、
前記第1最上部および前記第2最上部の状態は、当該第1最上部および当該第2最上部が前記第3樹脂に接触している第1状態、または、当該第1最上部および当該第2最上部が当該第3樹脂内に存在する第2状態であり、
前記第1ワイヤのうち前記第3樹脂に接触していない部分、または、当該第1ワイヤのうち当該第3樹脂内に存在していない部分は、前記第1樹脂により封止されており、
前記第2ワイヤのうち前記第3樹脂に接触していない部分、または、当該第2ワイヤのうち当該第3樹脂内に存在していない部分は、前記第1樹脂により封止されている
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワイヤにより複数の半導体素子が接続された構成を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置等の半導体装置には、複数の半導体素子が設けられている。当該複数の半導体素子に含まれる隣接する2つの半導体素子は、例えば、複数のワイヤにより接続されている場合もある。なお、半導体装置では、様々な要因により、当該複数のワイヤに過電流が流れる場合がある。当該様々な要因は、例えば、短絡箇所の発生、静電気の発生等である。以下においては、隣接する2つの半導体素子を接続する複数のワイヤに過電流が流れる状況を、「過電流状況」ともいう。
【0003】
過電流状況では、複数のワイヤが接続されている、当該2つの半導体素子の両方または一方が故障する可能性がある。このような事態の発生を抑制するために、半導体装置におけるワイヤをヒューズとして利用する技術が使用される。
【0004】
特許文献1では、ワイヤをヒューズとして利用する技術を使用した構成(以下、「関連構成A」ともいう)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−239697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接する2つの半導体素子が複数のワイヤにより接続されている構成を有する半導体装置がある。なお、過電流状況において、当該複数のワイヤが過電流により溶断されない可能性がある。当該複数のワイヤが過電流により溶断されない場合、当該過電流により、当該半導体素子が故障する可能性があるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ワイヤに過電流が流れる状況において、当該ワイヤが溶断されやすい半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体装置は、第1半導体素子と、平面視において、前記第1半導体素子に隣接している第2半導体素子と、を備える。前記第1半導体素子は、第1ワイヤおよび第2ワイヤにより、前記第2半導体素子に接続されており、前記第1ワイヤは、前記第1半導体素子に接続されている第1接点と、前記第2半導体素子に接続されている第2接点とを有し、前記第2ワイヤは、前記第1半導体素子に接続されている第3接点と、前記第2半導体素子に接続されている第4接点とを有し、前記第1ワイヤのうち前記第1接点と前記第2接点との間の部分である第1線状部は、起伏を有し、前記第2ワイヤのうち前記第3接点と前記第4接点との間の部分である第2線状部は、起伏を有し、前記第1線状部の第1最上部は、前記第2線状部の第2最上部に隣接しており、前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第1接点と前記第3接点との間隔より狭く、前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第2接点と前記第4接点との間隔より狭い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記第1ワイヤは、前記第1半導体素子に接続されている第1接点と、前記第2半導体素子に接続されている第2接点とを有する。前記第2ワイヤは、前記第1半導体素子に接続されている第3接点と、前記第2半導体素子に接続されている第4接点とを有する。
【0010】
前記第1ワイヤのうち前記第1接点と前記第2接点との間の部分である第1線状部は、起伏を有する。前記第2ワイヤのうち前記第3接点と前記第4接点との間の部分である第2線状部は、起伏を有する。
【0011】
前記第1線状部の第1最上部は、前記第2線状部の第2最上部に隣接している。前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第1接点と前記第3接点との間隔より狭い。前記第1最上部と前記第2最上部との間隔は、前記第2接点と前記第4接点との間隔より狭い。
【0012】
これにより、ワイヤに過電流が流れる状況において、前記第1最上部および前記第2最上部の温度は、前記第1接点および前記第3接点の温度よりも、高くなる。そのため、前記第1ワイヤの一部である第1最上部、および、前記第2ワイヤの一部である第2最上部が、過電流により溶断されやすくなる。すなわち、ワイヤに過電流が流れる状況において、当該ワイヤが溶断されやすい半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の側面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の一部を示す平面図である。
図3図2のA1−A2間の一点鎖線に沿った、半導体装置の断面図である。
図4】変形例1の構成における半導体装置の断面図である。
図5】変形例2に係る構成を有する半導体装置の断面図である。
図6】変形例3の構成における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の図面では、同一の各構成要素には同一の符号を付してある。同一の符号が付されている各構成要素の名称および機能は同じである。したがって、同一の符号が付されている各構成要素の一部についての詳細な説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、実施の形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、当該各構成要素の相対配置などは、装置の構成、各種条件等により適宜変更されてもよい。また、各図における各構成要素の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100の側面図である。半導体装置100は、例えば、電力用半導体装置である。図1において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。以下の図に示されるX方向、Y方向およびZ方向も、互いに直交する。以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向(−X方向)とを含む方向を「X軸方向」ともいう。また、以下においては、Y方向と、当該Y方向の反対の方向(−Y方向)とを含む方向を「Y軸方向」ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向(−Z方向)とを含む方向を「Z軸方向」ともいう。
【0017】
また、以下においては、X軸方向およびY軸方向を含む平面を、「XY面」ともいう。また、以下においては、X軸方向およびZ軸方向を含む平面を、「XZ面」ともいう。また、以下においては、Y軸方向およびZ軸方向を含む平面を、「YZ面」ともいう。
【0018】
図1を参照して、半導体装置100は、パッケージP1を備える。パッケージP1は、上面P1sを有する。パッケージP1は、樹脂R1で構成されている。すなわち、半導体装置100は、樹脂R1を備える。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置100の一部を示す平面図である。なお、図2は、パッケージP1の内部構成を示している。また、図2では、半導体装置100における1つのアーム部が示されている。図3は、図2のA1−A2間の一点鎖線に沿った、半導体装置100の断面図である。
【0020】
図2および図3を参照して、半導体装置100は、さらに、リードフレームF1,F2と、半導体素子S1aと、半導体素子S1bと、複数のワイヤW1とを備える。
【0021】
リードフレームF1,F2の各々の形状は、板状である。リードフレームF1,F2の各々は、金属で構成される。リードフレームF1,F2の各々は、配線状に加工された、板状の金属である。
【0022】
リードフレームF1には、半導体素子S1a,S1bが実装されている。平面視(XY面)において、半導体素子S1bは、半導体素子S1aに隣接している。半導体素子S1aは、例えば、スイッチング素子としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。IGBTは、主電流の流れを制御する機能を有する。半導体素子S1bは、例えば、還流ダイオード(Free Wheeling Diode)である。還流ダイオードは、IGBTがオフ状態であるときに還流電流を流す機能を有する。
【0023】
半導体素子S1aおよび半導体素子S1bは、詳細は後述するが、複数のワイヤW1およびリードフレームF1により、電気的に逆並列に接続されている。
【0024】
半導体素子S1aの上面には、電極E1aが設けられている。電極E1aは、エミッタ電極である。半導体素子S1aの底面には、コレクタ電極(図示せず)が設けられている。半導体素子S1aのコレクタ電極(図示せず)は、リードフレームF1に接続される。リードフレームF1は、IGBTのコレクタ側の外部接続端子(コレクタ側端子)として機能する。
【0025】
半導体素子S1bの上面には、電極E1bが設けられている。電極E1bは、アノード電極である。半導体素子S1bの底面には、カソード電極(図示せず)が設けられている。半導体素子S1bのカソード電極(図示せず)は、リードフレームF1に接続される。
【0026】
リードフレームF1の一部、半導体素子S1a,S1b、リードフレームF2の一部、および、複数のワイヤW1は、パッケージP1により封止されている。前述したように、パッケージP1は、樹脂R1で構成されている。すなわち、リードフレームF1の一部、半導体素子S1a,S1b、リードフレームF2の一部、および、複数のワイヤW1は、樹脂R1により封止されている。樹脂R1は、モールド樹脂である。
【0027】
半導体素子S1aは、複数のワイヤW1により、半導体素子S1bに接続されている。なお、図2では、一例として、3本のワイヤW1が示されている。各ワイヤW1は、電極E1a、電極E1bおよびリードフレームF2に接続されている(図2および図3参照)。リードフレームF2は、IGBTのエミッタ側の外部接続端子(エミッタ側端子)として機能する。なお、各ワイヤW1のうち、リードフレームF2に近い部分は、出力ワイヤとして機能する。
【0028】
また、半導体素子S1aの電極E1aには、入力ワイヤとしてのワイヤW2が接続されている。
【0029】
以下においては、図2の3本のワイヤW1を、それぞれ、ワイヤW1a,W1b,W1cともいう。ワイヤW1a,W1b,W1cは、パッケージP1(樹脂R1)により封止されている。なお、半導体素子S1aと半導体素子S1bとを接続するワイヤW1の数は、3に限定されず、2または4以上であってもよい。
【0030】
図3は、鉛直面(YZ面)における、ワイヤW1aの形状を示している。なお、鉛直面(YZ面)におけるワイヤW1b,W1cの形状も、図3のワイヤW1aの形状と同等の形状である。
【0031】
次に、本実施の形態の特徴的な構成(以下、「構成Ct1」ともいう)について説明する。なお、以下の説明では、一例として、主に、ワイヤW1a,W1bについて説明する。
【0032】
図2および図3を参照して、ワイヤW1aは、半導体素子S1a(電極E1a)に接続されている接点n1と、半導体素子S1b(電極E1b)に接続されている接点n2とを有する。また、ワイヤW1bは、半導体素子S1(電極E1)に接続されている接点n3と、半導体素子S1b(電極E1b)に接続されている接点n4とを有する。

【0033】
以下においては、ワイヤW1aのうち接点n1と接点n2との間の部分を、「線状部W1ap」ともいう。線状部W1apは、鉛直面(YZ面)において、曲がっている。鉛直面(YZ面)における線状部W1apの形状は、略弓形または弓形(ループ状)である。すなわち、線状部W1apは、起伏を有する。
【0034】
また、以下においては、ワイヤW1bのうち接点n3と接点n4との間の部分を、「線状部W1bp」ともいう。線状部W1bpは、鉛直面(YZ面)において、曲がっている。鉛直面(YZ面)における線状部W1bpの形状は、略弓形または弓形(ループ状)である。すなわち、線状部W1bpは、起伏を有する。
【0035】
以下においては、線状部W1apの最上部(ループトップ部)を、「最上部T1a」ともいう。また、以下においては、線状部W1bpの最上部(ループトップ部)を、「最上部T1b」ともいう。線状部W1apの最上部T1aは、線状部W1bpの最上部T1bに隣接している。以下においては、最上部T1aと最上部T1bとの間隔を、「最上部間隔Ab」ともいう。最上部間隔Abは、最上部T1aと最上部T1bとの最短距離である。また、以下においては、最上部T1a,T1bの周辺の領域を、「最上部周辺領域」ともいう。
【0036】
以下においては、半導体素子S1a,S1bを接続する複数のワイヤW1に過電流が流れる状況を、「過電流状況」ともいう。当該複数のワイヤW1は、例えば、ワイヤW1a,W1b,W1cである。
【0037】
構成Ct1では、過電流状況において、ワイヤW1a,W1b,W1cの各々はヒューズとして利用される。また、構成Ct1では、過電流状況において、最上部周辺領域に発熱が集中するように、ワイヤW1a,W1bは構成される。具体的には、構成Ct1では、最上部間隔Abは、接点n1と接点n3との間隔より狭い。また、構成Ct1では、最上部間隔Abは、接点n2と接点n4との間隔より狭い。
【0038】
最上部間隔Abは、例えば、接点n1と接点n3との間隔のk倍である。「k」は正の実数である。「k」は、例えば、0.1から0.9の範囲の値である。また、最上部間隔Abは、例えば、接点n2と接点n4との間隔のk倍である。
【0039】
なお、ワイヤW1a,W1cも、ワイヤW1a,W1bに対する構成Ct1と同様な構成を有する。以下、簡単に説明する。ワイヤW1cは、半導体素子S1a(電極E1a)に接続されている接点n5と、半導体素子S1b(電極E1b)に接続されている接点n6とを有する。以下においては、ワイヤW1cのうち接点n5と接点n6との間の部分を、「線状部W1cp」ともいう。鉛直面(YZ面)における線状部W1cpの形状は、鉛直面(YZ面)における線状部W1bpの形状と同等の形状である。
【0040】
以下においては、線状部W1cpの最上部(ループトップ部)を、「最上部T1c」ともいう。また、以下においては、最上部T1aと最上部T1cとの間隔を、「最上部間隔Ac」ともいう。最上部間隔Acは、最上部T1aと最上部T1cとの最短距離である。以下においては、最上部T1a,T1b,T1cの周辺の領域も、「最上部周辺領域」ともいう。
【0041】
構成Ct1では、過電流状況において、当該最上部周辺領域に発熱が集中するように、ワイヤW1a,W1b,W1cは構成される。具体的には、最上部間隔Acは、接点n1と接点n5との間隔より狭い。また、最上部間隔Acは、接点n2と接点n6との間隔より狭い。また、最上部T1aと最上部T1cとの間隔は、最上部T1aと最上部T1bとの間隔と同等の間隔である。
【0042】
(まとめ)
以上説明したように、本実施の形態によれば、ワイヤW1aは、半導体素子S1aに接続されている接点n1と、半導体素子S1bに接続されている接点n2とを有する。ワイヤW1bは、半導体素子S1aに接続されている接点n3と、半導体素子S1bに接続されている接点n4とを有する。
【0043】
ワイヤW1aのうち接点n1と接点n2との間の部分である線状部W1apは、起伏を有する。ワイヤW1bのうち接点n3と接点n4との間の部分である線状部W1bpは、起伏を有する。
【0044】
線状部W1apの最上部T1aは、線状部W1bpの最上部T1bに隣接している。最上部T1aと最上部T1bとの間隔は、接点n1と接点n3との間隔より狭い。最上部T1aと最上部T1bとの間隔は、接点n2と接点n4との間隔より狭い。
【0045】
また、ワイヤW1cは、半導体素子S1aに接続されている接点n5と、半導体素子S1bに接続されている接点n6とを有する。ワイヤW1cのうち接点n5と接点n6との間の部分である線状部W1cpの形状は、線状部W1bpの形状と同等の形状である。最上部T1aと最上部T1cとの間隔は、接点n1と接点n5との間隔より狭い。また、最上部T1aと最上部T1cとの間隔は、接点n2と接点n6との間隔より狭い。
【0046】
これにより、ワイヤに過電流が流れる状況において、最上部T1a,T1b,T1cの温度は、接点n1,n3,n5の温度よりも、高くなる。そのため、ワイヤW1aの一部である最上部T1a、ワイヤW1bの一部である最上部T1b、および、ワイヤW1cの一部である最上部T1cが、過電流により溶断されやすくなる。すなわち、ワイヤに過電流が流れる状況において、当該ワイヤが溶断されやすい半導体装置を提供することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、過電流状況において、ワイヤの発熱箇所が集中するように構成される。具体的には、最上部周辺領域に発熱が集中するように、ワイヤW1a,W1b,W1cは構成される。すなわち、最上部周辺領域では、熱干渉が発生しやすい。そのため、過電流状況が発生した場合、最上部周辺領域における最上部T1a,T1b,T1cが溶断されやすくなる。
【0048】
その結果、最上部T1a,T1b,T1cが溶断されてパッケージP1が破壊される場合、当該溶断(破壊)の影響を、最上部T1a,T1b,T1c、および、最上部周辺領域における樹脂R1に留めることができる。したがって、過電流状況が発生した場合に、半導体素子S1a,S1bにダメージが生じることを抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、外部接続端子(コレクタ側端子)として機能するリードフレームF1に、半導体素子S1a,S1bが載置されている。すなわち、外部接続端子用の金属部材(リードフレームF1)は、半導体素子が載置される金属部材としても利用される。そのため、半導体素子を載置するための金属部材を別途設ける必要がなく、半導体装置(モジュール)の小型化を実現できるという効果が得られる。これにより、半導体装置の製造工程の簡略化を実現できる。
【0050】
なお、関連構成Aでは、半導体素子(半導体チップ)が載置されている金属部材と、外部接続端子に相当する別の金属部材との間に、ヒューズとして機能する複数のワイヤが設けられる。そのため、半導体素子(半導体チップ)が載置されている金属部材に加え、外部接続端子に相当する金属部材が別途設けられる。したがって、関連構成Aでは、半導体装置(モジュール)の大型化、当該半導体装置の製造工程の複雑化、発熱箇所の分散等が問題となる。
【0051】
そこで、本実施の形態の半導体装置100は、上記の効果を奏するための構成を有する。そのため、本実施の形態の半導体装置100により、上記の各問題を解決することができる。
【0052】
<変形例1>
以下においては、本変形例の構成を「構成Ctm1」ともいう。構成Ctm1は、熱伝導率の低い樹脂を使用した構成である。構成Ctm1は、構成Ct1に適用される。
【0053】
図4は、変形例1の構成Ctm1における半導体装置100の断面図である。図4を参照して、構成Ctm1では、半導体装置100は、さらに、樹脂R1aを備える。構成Ctm1では、パッケージP1は、樹脂R1および樹脂R1aで構成される。樹脂R1aの熱伝導率は、樹脂R1の熱伝導率より低い。すなわち、樹脂R1aの放熱性は、樹脂R1の放熱性より低い。
【0054】
構成Ctm1では、最上部T1a,T1b,T1cは、樹脂R1aにより封止されている。すなわち、樹脂R1aは、最上部T1a,T1b,T1cを束ねる。
【0055】
なお、最上部T1aの全体または一部が、樹脂R1aにより封止されている。また、最上部T1bの全体または一部が、樹脂R1aにより封止されている。また、最上部T1cの全体または一部が、樹脂R1aにより封止されている。
【0056】
また、ワイヤW1aのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1bのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1cのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0057】
(まとめ)
以上説明したように、本変形例の構成Ctm1によれば、樹脂R1aの熱伝導率は、樹脂R1の熱伝導率より低い。すなわち、樹脂R1aの放熱性は、樹脂R1の放熱性より低い。最上部T1a,T1b,T1cは、樹脂R1aにより封止されている。
【0058】
また、ワイヤW1aのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1bのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1cのうち樹脂R1aにより封止されていない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0059】
これにより、構成Ctm1では、最上部T1a,T1b,T1cの放熱性は低い。そのため、過電流状況において、最上部T1a,T1b,T1cの温度が、図3の構成よりも、高くなりやすい。したがって、過電流状況が発生した場合において、過電流により最上部T1a,T1b,T1cが、さらに溶断されやすくなる。
【0060】
その結果、最上部T1a,T1b,T1cが溶断されてパッケージP1が破壊される場合、樹脂R1aが当該破壊の起点となる。そのため、当該溶断(破壊)の影響を、最上部T1a,T1b,T1c、および、樹脂R1aに留めることができる。したがって、過電流状況が発生した場合に、半導体素子S1a,S1bにダメージが生じることを抑制することができる。
【0061】
なお、構成Ctm1では、最上部T1a,T1b,T1cの全てが、樹脂R1aにより封止されていなくてもよい。例えば、最上部T1a,T1bが樹脂R1aにより封止さていてもよい。
【0062】
<変形例2>
以下においては、本変形例の構成を「構成Ctm2」ともいう。構成Ctm2は、パッケージP1の上面に窪みを設けた構成である。構成Ctm2は、構成Ct1および構成Ctm1の全てまたは一部に適用される。
【0063】
一例として、構成Ctm2が適用された構成Ct1(以下、「構成Ct1m2」ともいう)を、以下に示す。構成Ct1m2は、図3の構成に、構成Ctm2が適用されたものである。
【0064】
図5は、変形例2に係る構成Ct1m2を有する半導体装置100の断面図である。図5を参照して、構成Ct1m2では、パッケージP1の上面P1sのうち、最上部T1a,T1b,T1cの上方の領域には窪みV1が設けられている。なお、パッケージP1は、樹脂R1(モールド樹脂)で構成されている。具体的には、窪みV1の底が、最上部T1a,T1b,T1cの上方を覆うように、当該窪みV1は設けられる。
【0065】
以下においては、パッケージP1のうち、窪みV1の底と、最上部T1a,T1b,T1cとの間の部分を、「窪み下部」ともいう。窪み下部は、パッケージP1の一部である。図5において、窪み下部の断面は、窪みV1の底と、最上部T1aとの間の部分に相当する。窪み下部の厚みは薄い。
【0066】
(まとめ)
以上説明したように、本変形例の構成Ctm2によれば、パッケージP1の上面P1sのうち、最上部T1a,T1b,T1cの上方の領域には窪みV1が設けられている。窪みV1の底が、最上部T1a,T1b,T1cの上方を覆うように、当該窪みV1は設けられる。そのため、パッケージP1における窪み下部の厚みは薄い。したがって、窪み下部の物理的強度は小さい。
【0067】
そのため、過電流状況において、最上部T1a,T1b,T1cが溶断されて、パッケージP1が破壊される場合、窪み下部が当該破壊の起点となる。そのため、当該溶断(破壊)の影響を、最上部T1a,T1b,T1c、および、窪み下部に留めることができる。したがって、過電流状況が発生した場合に、半導体素子S1a,S1bにダメージが生じることを抑制することができる。
【0068】
なお、構成Ctm2では、窪みV1の底が、最上部T1a,T1b,T1c全ての上方を覆わなくてもよい。例えば、窪みV1の底が、最上部T1a,T1bの上方を覆うように、当該窪みV1は設けられてもよい。
【0069】
<変形例3>
以下においては、本変形例の構成を「構成Ctm3」ともいう。構成Ctm3は、ヤング率の低い樹脂を使用した構成である。構成Ctm3は、構成Ct1に適用される。
【0070】
図6は、変形例3の構成Ctm3における半導体装置100の断面図である。図6を参照して、構成Ctm3では、半導体装置100は、さらに、樹脂R1bを備える。構成Ctm3では、パッケージP1は、樹脂R1および樹脂R1bで構成される。樹脂R1bのヤング率は、樹脂R1のヤング率より小さい。すなわち、樹脂R1bは、樹脂R1よりやわらかい。つまり、樹脂R1bの放熱性は、樹脂R1の放熱性より低い。
【0071】
構成Ctm3では、最上部T1a,T1b,T1cの状態は、状態St1である。状態St1は、最上部T1a,T1b,T1cが樹脂R1bに接触している状態である。この場合、ワイヤW1aのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。また、ワイヤW1bのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。また、ワイヤW1cのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0072】
なお、最上部T1a,T1b,T1cの状態は、状態St2であってもよい。状態St2は、最上部T1a,T1b,T1cが樹脂R1b内に存在する状態である。この場合、ワイヤW1aのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1bのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1cのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0073】
(まとめ)
以上説明したように、本変形例の構成Ctm3によれば、樹脂R1bのヤング率は、樹脂R1のヤング率より小さい。すなわち、樹脂R1bの放熱性は、樹脂R1の放熱性より低い。最上部T1a,T1b,T1cは樹脂R1bに接触している。この場合、ワイヤW1aのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。また、ワイヤW1bのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。また、ワイヤW1cのうち樹脂R1bに接触していない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0074】
なお、最上部T1a,T1b,T1cが樹脂R1b内に存在してもよい。この場合、ワイヤW1aのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1bのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。ワイヤW1cのうち樹脂R1b内に存在していない部分は、樹脂R1により封止されている。
【0075】
以上の構成により、最上部T1a,T1b,T1cの放熱性を低下させることができる。そのため、変形例1と同様な効果が得られる。例えば、最上部T1a,T1b,T1cが溶断されてパッケージP1が破壊される場合、樹脂R1bが当該破壊の起点となる。そのため、当該溶断(破壊)の影響を、最上部T1a,T1b,T1c、および、樹脂R1bに留めることができる。したがって、過電流状況が発生した場合に、半導体素子S1a,S1bにダメージが生じることを抑制することができる。
【0076】
なお、構成Ctm3では、最上部T1a,T1b,T1cの全ての状態が、状態St1または状態St2でなくてもよい。例えば、最上部T1a,T1bの状態が状態St1であってもよい。当該状態St1は、最上部T1a,T1bが樹脂R1bに接触している状態である。
【0077】
また、例えば、最上部T1a,T1bの状態が状態St2であってもよい。当該状態St2は、最上部T1a,T1bが樹脂R1b内に存在する状態である。
【0078】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態、各変形例を自由に組み合わせたり、実施の形態、各変形例を適宜、変形、省略することが可能である。
【0079】
例えば、半導体素子S1aは、スイッチング素子以外の半導体素子であってもよい。また、半導体素子S1bは、還流ダイオード以外の半導体素子であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
100 半導体装置、n1,n2,n3,n4,n5,n6 接点、P1 パッケージ、R1,R1a,R1b 樹脂、S1a,S1b 半導体素子、T1a,T1b,T1c 最上部、W1,W1a,W1b,W1c,W2 ワイヤ、W1ap,W1bp,W1cp 線状部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6