(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源主回路部は、前記出力電流を調整する第2のコンバータが前記コンバータと前記LEDモジュールとの間に接続されている請求項3または4に記載のLED照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1を
図1から
図10に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1における力率補償電源装置1は、直流に電源主回路部2と電源制御部3とを備えている。
まず、電源主回路部2について説明する。電源主回路部2は、全波整流回路14、入力フィルタ21、DC/DCコンバータ(以下、単にコンバータという)4、および出力コンデンサ15を主体に構成されている。
全波整流回路14は、図示省略したダイオードブリッジにより構成されており、交流電源5から供給される交流入力電圧vacを全波整流して全波整流電圧|vac|(以下、脈流電圧という)を出力する。入力フィルタ21は、入力コイル20と入力コンデンサ6a、および静電容量がCinである入力コンデンサ6で構成されており、後述するスイッチング素子7による交流電源5へのスイッチングに起因して発生するノイズが交流電源5に伝導することを抑制する。
【0010】
コンバータ4は、全波整流回路14により全波整流された脈流電圧|vac|を直流化するとともに目標の電圧に調整して出力する。静電容量がCoである出力コンデンサ15は、コンバータ4が出力する電圧の脈動を平滑させ、直流の出力電圧voとして電源主回路部2の出力側に出力する。直流電力の出力側には負荷8が接続されており、この負荷8に出力電圧voが印加される。
【0011】
コンバータ4は、実施の形態1では昇圧チョッパ回路で構成されている。より具体的には、コンバータ4において、全波整流回路14の一端と入力コンデンサ6の一端との接続点がインダクタンス素子としてのリアクトル18の一端と接続され、リアクトル18の他端がダイオード17のアノードと接続されている。また、ダイオード17のカソード端子が出力コンデンサ15の一端と負荷8の一端との接続点に接続されている。また、リアクトル18とダイオード17の接続点がスイッチング素子7の一端に接続され、スイッチング素子7の他端が出力コンデンサ15の他端と負荷8の他端との接続点に接続されている。なお、リアクトル18のインダクタンスはLである。
【0012】
スイッチング素子7は、電源制御部3で生成した素子駆動信号Vgにより駆動されるFET(Field Effect Transistor)素子、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子などが適用される。スイッチング素子7がFETである場合、上記したスイッチング素子7の一端および他端は、FET素子の場合はドレイン端子およびソース端子となる。
【0013】
なお、ダイオード17をFET素子、IGBT素子などのスイッチング素子171(図示なし)に変更し、スイッチング素子7、171のオンオフを逆論理で動作させる同期整流方式とすることもできる。
【0014】
電源主回路部2には、上記で説明した構成に加え、ゼロ電流検出部16、入力電圧検出部10、および出力電圧検出部9が設けられている。入力電圧検出部10は、直列に接続された複数の分圧抵抗など(図示なし)で構成され、脈流電圧|vac|の電圧値を検出して電気信号である入力電圧検出値vinsenとして出力する。出力電圧検出部9は、直列に接続された複数の分圧抵抗など(図示なし)で構成され、直流化された出力電圧voの電圧値を検出して出力電圧検出値vosenとして出力する。
【0015】
ゼロ電流検出部16は、例えば電流検出抵抗を有し、この電流検出抵抗の両端間に発生する電位差に基づいてリアクトル18に流れる電流iLを検出する。またゼロ電流検出部16は、上記した電流検出抵抗の両端間の電位差を電圧変換値iLsenとして出力する。電圧変換値iLsenは、リアクトル電流iLに対応する電圧値である。なお、ゼロ電流検出部16は、
図1に示すように低電位側で検出する方法に限らず、電流検出抵抗をリアクトル18と直列に接続して高電位側でリアクトル電流iLに対応した電圧変換値iLsenを検出する方法を採用することもできる。さらに、電流検出抵抗を用いずに、リアクトル18に逆極性の補助巻線を設け、補助巻線から得られる電圧を電圧変換値iLsenとして検出する構成とすることもできる。電圧変換値iLsenは、後述するようにスイッチング素子7のターンオンのタイミングを決定するために用いられる。
【0016】
次に、電源制御部3について説明する。電源制御部3は、入力電圧位相検出部12、出力電圧制御部11、およびスイッチ制御部13を備えている。入力電圧位相検出部12は、入力電圧検出値vinsenから脈流電圧|vac|の位相vinphase(以下、これをθと表記する場合もある)を検出する。なお、以降では位相θ(=vinphase)を入力電圧位相θと称する。実施の形態1および後述する実施の形態2から5において、入力電圧位相θは、
図2に示すように脈流電圧|vac|のボトムを基準として表現する。脈流電圧|vac|は交流入力電圧vacの2倍の周波数を持つため、脈流電圧|vacの1周期は0度から180度(0からπ)で表現される。
【0017】
出力電圧制御部11は、出力電圧検出値vosenと予め設定された目標電圧値vorefを取得し、両者の差分を求めて制御演算を実施することによりスイッチング素子7のオン時間の基準となる時間(以下、基準オン時間という)ton1を決定する。出力電圧制御部11による基準オン時間ton1の決定は、入力電圧位相検出部12が脈流電圧|vac|のボトムを検出したタイミングで行われる。
【0018】
スイッチ制御部13は、スイッチング素子7を駆動するための素子駆動信号Vgのオン時間ton2を算出する。具体的には、まず、スイッチ制御部13は基準オン時間ton1を出力電圧制御部11から取得するとともに、入力電圧位相θ(=vinphase)を入力電圧位相検出部12から取得する。次に、スイッチ制御部13は入力電圧位相θに応じた補正量Kphaseを決定し、さらに、補正量Kphaseに対してリミッタ処理を行うことよりリミッタ補正量Kphase*を決定する。リミッタ補正量Kphase*の決定後、スイッチ制御部13は基準オン時間ton1にリミッタ補正量Kphase*を乗じることにより素子駆動信号Vgのオン時間ton2を決定する。補正量Kphaseおよびリミッタ補正量Kphase*については後述する。
【0019】
また、スイッチ制御部13は、ゼロ電流検出部16で検出されるリアクトル電流iLに対応した電圧変換値iLsenに応じて素子駆動信号Vgのオンタイミングを決定する。このように素子駆動信号Vgのオン時間ton2とオンタイミングを決定することにより、スイッチ制御部13はスイッチング素子7を制御する。
【0020】
電源制御部3の各機能部の実現については、ICを含むデジタル回路を用いてもよいし、ICを含まないデジタル制御回路(同機能をもつソフトウェアによる回路も含まれる)を用いてもよい。また、構成要素の一部または全部がアナログ制御回路であってもよい。なお、実施の形態1ではマイコンを用いるデジタル制御回路により構成にする場合を一例として記載している。
【0021】
次に、電源制御部3を構成する出力電圧制御部11、入力電圧位相検出部12、スイッチ制御部13の処理動作に関してさらに具体的に説明する。
まず、出力電圧制御部11による基準オン時間ton1の決定の仕方について説明する。出力電圧制御部11は、入力電圧位相θ(=vinphase)が0、πのタイミング、すなわち、商用周波数が50Hz(周期20ms)の場合は全波整流後の脈流電圧|vac|の周波数である100Hz(周期10ms)の間隔で基準オン時間ton1を決定する。これにより、リアクトル電流iLの単位時間あたりの平均電流iLmeanを脈流電圧|vac|と同位相に制御することが可能となるので、力率改善制御を行うことができる。例えばコンバータ4が昇圧チョッパ回路の場合、スイッチング素子7のオン期間tonにおいて、容量Lをもつリアクトル18に流れるリアクトル電流iLの変化分ΔiLは、下記の(1)式に示すように脈流電圧|vac|に比例する関係にある。このことを利用し、脈流電圧|vac|の1周期間は、
図3に示すようにスイッチング素子7の基準オン時間ton1を一定にして電流臨界動作をする。
ΔiL=ton/L×|vac| (1)
例えば
図3において、脈流電圧|vac|の1周期間Taでは基準オン時間がton1aに設定され、次の1周期間Tbでは基準オン時間がton1bに設定される。このため、それぞれの周期において平均電流iLmeanは脈流電圧|vac|と同位相に制御される。なお、脈流電圧|vac|の入力電圧位相θのボトム0、πは入力電圧位相検出部12により検出されるが、その検出タイミングの方法については後述する。
【0022】
出力電圧制御部11は、出力電圧検出値vosenと目標電圧値vorefの差分を演算し、その差分がゼロになるようにスイッチング素子7に対する基準オン時間ton1を決定する。具体的には、比例積分(PI)制御または比例積分微分(PID)制御などの古典制御、あるいはH∞(H−infinity)制御等の現代制御により基準オン時間ton1を決定する。なお、ここでは力率改善制御を行うために、出力電圧制御部11において入力電圧位相θ(=vinphase)が0、πのタイミングで基準オン時間ton1の制御演算をすることとして説明している。しかし、この方法に限らず、例えばスイッチング素子7をターンオンするタイミングごとに制御演算を行ってもよい。この場合は、出力電圧検出部9に設けられる図示しないRCフィルタ等の調整により、出力電圧検出値vosenの高周波成分を十分に減衰させること、または、制御演算に使用する制御係数(ゲイン)を十分に小さくすることで上述した方法と同等の効果を得ることができる。
【0023】
入力電圧位相検出部12は、例えば以下のようにして入力電圧検出値vinsenから脈流電圧|vac|の位相(0〜π)を検出する。すなわち、AD変換器等(図示なし)により入力電圧検出値vinsenを一定周期でサンプリングを行い、
図4の●印で示すように最新のサンプリング値をx(n)、1サンプリング前の値をx(n−1)、2サンプリング前の値をx(n−2)・・・、としたときに、x(n−2)>x(n−1)<x(n)となったタイミングのx(n)点を、脈流電圧|vac|のボトムを検出したタイミングとする。このボトム検出タイミングを「ゼロ」とし、AD変換器等のサンプリングごとにカウントアップ処理を行いつつ、サンプリング周波数fsamp、交流電源5の商用周波数fcom、およびカウントアップ数nを用いて、次の(2)式により入力電圧位相θ(=vinphase)を算出する。
θ=vinphase=2×fcom×n×π/fsamp (2)
なお、上述した入力電圧位相θ(=vinphase)の検出方法では、最大でサンプリング周期の2周期分の脈流電圧ボトム検出遅延が発生する。この脈流電圧ボトム検出遅延による影響を低減するためには、例えば、平均遅延値である1周期遅延を前提とした次の計算式(3)式を用いて入力電圧位相θを決定してもよい。
θ=vinphase=2×fcom×(n+1)×π/fsamp (3)
【0024】
スイッチ制御部13は、上述の方法で算出した入力電圧位相θに応じて、後述の(8)式に示す補正量調整式によってリミッタ補正量Kphaseを*決定する。さらに、後述するリミッタ処理によって、補正量Kphaseからリミッタ補正量Kphase*を決定する。リミッタ補正量Kphase*は、基準オン時間ton1に対する補正信号であり、スイッチ制御部13は、次の(4)式に示すように基準オン時間ton1にリミッタ補正量Kphase*を乗じることにより素子駆動信号Vgのオン時間ton2を決定する。
ton2=ton1×Kphase* (4)
式(4)に示す補正演算は、素子駆動信号Vgの出力周期、すなわち素子駆動信号Vgが出力されるたびに実施することが好ましい。
【0025】
次に、スイッチ制御部13によるスイッチング素子7のオン/オフ制御について説明する。
図5Aは、ゼロ電流検出部16で得られる電圧変換値iLsenと素子駆動信号Vgの関係を示す図であり、スイッチ制御部13によるスイッチング素子7のオン/オフ制御の例を説明する図である。スイッチ制御部13は、素子駆動信号Vgによりオン制御したスイッチング素子7に対してオン時間ton2の間オン状態を継続させた後、素子駆動信号Vgをゼロにすることでスイッチング素子7をオフにする。スイッチング素子7がオフになると、リアクトル18に流れる電流iLが次第に減少し、
図5Aに示すようにゼロ電流検出部16で得られる電圧変換値iLsenも減少する。スイッチ制御部13は、コンパレータ(図示なし)に予め設定されたスレッショルド電圧iLthを電圧変換値iLsenが下回ったタイミングで再び素子駆動信号Vgをオン状態に切り替え、オン時間ton2の間、オン状態を維持する。
なお、電圧変換値iLsenのスレッショルド電圧iLthとの比較は、ここではコンパレータを用いているが、これに限らず、例えば電圧変換値iLsenをスイッチング素子7の駆動信号入力端子(FETの場合はゲート端子)に入力し、スイッチング素子7の持つオンスレッショルド電圧をiLthの代用として構成することで電圧変換値iLsenがiLthを下回るタイミングを検出することもできる。この場合、スレッショルド電圧iLthの調整はゼロ電流検出部16に含まれるコンデンサ容量および電圧レベルの比較に用いるコンパレータ等の素子遅延を事前に考慮して、臨界動作をするように調整することが好ましい。
【0026】
上記のように、スイッチング素子7のオン制御のタイミングを電圧変換値iLsenに基づいて決定するとともに、スイッチング素子7のオン時間ton2を式(4)によって決定することでスイッチング素子7のオン/オフ制御を行うことにより、出力電圧voを目標値に制御しつつ、臨界動作による効率向上だけでなく補正演算による力率向上を達成することができる。
なお、
図5Aに示した例では
図1のようにゼロ電流検出部16を電流検出抵抗で構成して電圧変換値iLsenを得ているが、上述したようにリアクトル18に逆極性の補助巻線を設け、補助巻線から得た電圧を電圧変換値iLsenとして得る構成とする場合には
図5Bに示す波形が得られる。この場合でも
図5Aで示した例と同様に、電圧変換値iLsenとスレッショルド電圧iLthとをコンパレータにより比較して、スイッチング素子7のオン制御のタイミングを決定することができる。
【0027】
次に、補正量Kphaseにおよびリミッタ補正量Kphase*について説明する。
図6Aは、入力フィルタ21とコンバータ4の等価回路である。ここでは、コンバータ4に流れる電流を電流源I*で表現しており(以下、電流または電圧に*印を付すことによりはベクトルであることを示す)、入力フィルタ21を構成する入力コイル20はリアクトルLで、入力コンデンサ6、6aは合成容量Cとして表している。なお、全波整流回路14は簡略化のために省略している。また、
図6Aに示した入力コイル20としては、
図7Aに等価回路を示すハイブリッドチョークコイル20Aを用いることができる。この場合、入力コイル20は、コモンモードノイズとノーマルモードノイズを同時に低減する。入力コイル20は上記したハイブリッドチョークコイル20Aに限定されるものではなく、
図7Bに回路図を示すノーマルモードチョークコイル20Bを用いてもよいし、
図7Cに回路図を示すコモンモードチョークコイル20Cを用いてもよい。
【0028】
まず、入力フィルタ21を構成するコンデンサの合成容量Cの影響により、交流入力電流iac*には交流入力電圧vac*に対して進み位相となる位相差Φが発生する。この位相差を調整しない場合、交流入力電流iac*と交流入力電圧vac*のベクトル図は
図6B示すとおりとなる。ここで、コンバータ4に流れる電流I*をゼロ(I*=0)とすると、入力フィルタ21の合成容量Cに流れる電流Ic*は、次の(5)式で求められる。
【0029】
【数1】
入力フィルタ21のLC共振周波数は、交流電源5の周波数よりも十分に高いので(5)式の分母は「正」となり、合成容量Cに流れる電流Ic*は進み電流となるため、交流入力電流iacの位相が交流入力電圧vacの位相に対して所定の位相差Φ分だけ進んでいることがわかる。
【0030】
このため、交流入力電流iacが交流入力電圧vacと同位相となるように、
図6Cに示すように、コンバータ4に流れる電流I*について、電流I*=Ip*−Ic*(ただし、Ip*は有効電流を示す)を生成することで、コンバータ4に流れる電流I*の位相をΦだけ補正して(遅らせて)制御することで、交流入力電流iac*を有効電流Ip*成分のみにする。ここで、コンバータ4に対する負荷8を抵抗Rと出力電圧voで表わし、電源回路での損失を無視すれば、エネルギー保存則から有効電流Ip*は、次の(6)式で求められる。
【0031】
【数2】
上記の(5)式および(6)式より、交流入力電流iacを交流入力電圧vacと同位相とするために、コンバータ4に流す電流I*において補正すべき位相差Φは、次の(7)式で算出することができる。
【0032】
【数3】
スイッチ制御部13は、(7)式で算出される位相差Φを用いて、スイッチング素子7の基準オン時間ton1に対する補正量Kphaseを決定する。すなわち、入力電圧位相検出部12で検出される入力電圧位相θ(=vinphase)を用いて、次の(8)式に示すように、力率「1」とする理想電流波形(√2・iac・sinθ)と、(7)式を用いて算出する補正電流波形(√2・iac・sin(θ−Φ))との比率を補正量Kphaseとする。
Kphase
=(√2・iac・sin(θ−Φ))/(√2・iac・sinθ)
=sin(θ−Φ)/sinθ (8)
すなわち、入力コンデンサ6、6aによる、交流入力電流iacと、交流入力電圧vacとの位相差Φに応じた補正電流波形と、上記位相差Φを零とした理想電流波形とを用いて、上記補正電流波形から上記理想電流波形を除算したものが補正量Kphaseである。したがって、交流入力電流iacを交流入力電圧vacと同位相(Φ=0)の場合、すなわち力率が「1」の場合には、補正量Kphase=1となる。なお、入力電圧位相θ(=vinphase)は上述した(2)式から求められる。
【0033】
補正量Kphaseを算出した後、リミッタ補正量Kphase*を求める。リミッタ補正量Kphase*を求める際は、上限閾値と下限閾値を予め定め、補正量Kphaseが上限閾値以上である場合、および補正量Kphaseが下限閾値以下である場合は、リミッタ補正量Kphase*の値をゼロとする。補正量Kphaseが下限閾値より大きく、かつ、上限閾値未満である場合は、リミッタ補正量Kphase*の値は補正量Kphaseの値とする。
【0034】
例として上限閾値を2、下限閾値を0と定めた場合を(9)式に示す。以降は上限閾値を2、下限閾値を0に設定した場合について説明する。
Kphase*=0(Kphase≧2のとき)
Kphase*=Kphase(0<Kphase<2のとき) (9)
Kphase*=0(Kphase≦0のとき)
以上のようにしてリミッタ補正量Kphase*を導出した後、スイッチ制御部13は、上述の(4)式を用いて基準オン時間ton1をリミッタ補正量Kphase*により補正演算し、スイッチング素子7に対する素子駆動信号Vgのオン時間ton2を最終的に決定する。なお、(4)式による基準オン時間ton1の補正は素子駆動信号Vgが出力されるたびに実施されるため、この補正に必要なリミッタ補正量Kphaseの算出も素子駆動信号Vgが出力されるたびに実施される。
【0035】
上述したように、基準オン時間ton1の算出は脈流電圧|vac|の周期毎に行われる一方で、リミッタ補正量Kphaseの算出および(4)式による基準オン時間ton1の補正は素子駆動信号Vgが出力されるたびに実施される。ここで、式(8)式(9)より、補正量Kphaseおよびリミッタ補正量Kphase*は入力電圧位相θ(=vinphase)の関数であり、入力電圧位相θは時間の関数であるため、脈流電圧|vac|1周期の間には、補正量Kphaseの値が上限閾値(=2)以上、あるいは下限閾値(=0)以下となり、リミッタ補正量Kphase*が0となる期間がある。リミッタ補正量Kphase*が0となる期間では、基準オン時間ton1に関わらず素子駆動信号Vgのオン時間ton2が0となり、スイッチング素子7のスイッチングが行われない。このように、実施の形態1においては、リミッタ補正量Kphase*による補正により、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間が存在する。また、このようにスイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間ではスイッチング損失は発生しない。なお、リミッタ補正量Kphase*によりスイッチングを停止させる期間では、スイッチング素子7はオフで固定されることとなる。
【0036】
ここで、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間を設定しても力率改善が実現できる理由について説明する。
図8はコンバータ4の入力電圧の説明図であり、交流入力電圧vacと脈流電圧|vac|の関係を示している。電源主回路部2は、
図1に示したとおり整流回路14の後段に入力コンデンサ6を備える。このため、コンバータ4に入力される脈流電圧|vac|は、交流入力電圧vacが大きい時は交流入力電圧vacと大きさが同じであるが、交流入力電圧vacが小さい時は交流入力電圧vacと大きさが異なる。交流入力電圧vacと脈流電圧|vac|の大きさが異なる期間では、コンバータ4に供給されるエネルギーが入力コンデンサ6から送られており、交流電源5に電流が流れない。このため、脈流電圧|vac|と交流入力電圧vacの大きさが異なる期間は力率改善に寄与しない期間である。この期間は、交流入力電圧vacの小さい期間であるから、
図8に示すように、入力電圧位相θが0度付近または180度付近となる期間である。
【0037】
実施の形態1では、入力電圧位相θが0度付近、または180度付近である期間にスイッチング素子7のスイッチングを停止させる。具体的に説明すると、例えばリミッタ補正量Kphase*の算出のための上限閾値を2、下限閾値を0と設定し、(7)式により算出される位相差Φが10度である場合、(8)式より算出される補正量Kphaseが下限閾値以下、または上限閾値以上となる範囲は、入力電圧位相θが0〜10度、および170〜180度の範囲である。このように、実施の形態1においてスイッチング素子7のスイッチングが停止される期間は入力電圧位相θが0度付近、または180度付近であり、力率改善に寄与しない期間と一致する。このため、リミッタ補正量Kphase*によりスイッチング素子7のスイッチングを停止さる期間を設けても、力率改善に与える影響は小さい。
【0038】
なお、入力コンデンサ6がない場合は、上記した力率改善に寄与しない期間は存在しないが、この場合はスイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間は交流入力電圧vacが小さい期間であり、交流入力電圧vacが大きい期間に比べて力率改善への寄与が小さい。このため、スイッチング素子7のスイッチングを停止しても力率改善への影響は小さく、力率改善しながらスイッチング損失を低減するという実施の形態1の効果を得ることができる。ただし、入力コンデンサ6がない場合に比べて力率改善の効果は小さいと考えられるので、実施の形態1は入力コンデンサ6がある場合に適用することが望ましいい。
【0039】
次に、実施の形態1のシミュレーション結果について説明する。なお、シミュレーションはMywayプラス社の回路シミュレーションを使用して行っている。シミュレーション条件は、交流入力電圧vac=200V(50Hz:脈流電圧|vac|の周波数は100Hz)、出力電圧vo=330V、負荷8の抵抗R=2000Ω(電力54.45W)、入力フィルタ21の入力コイル20のリアクタンスL=7mH、入力フィルタ21の入力コンデンサ6、6aの合成容量C=0.42uFである。なお、(7)式を用いると、交流入力電流iacの交流入力電圧vacに対する位相差ΦはΦ=10.98[度]となったので、(8)式でΦ=10.98度としてシミュレーションを行った。なお、リミッタ補正量Kphase*を決定するための上限閾値は2に設定し、下限閾値は0に設定した。
【0040】
実施の形態1を適用しない参考例のシミュレーション結果を
図9に、実施の形態1を適用したシミュレーション結果を
図10に示す。
図9および
図10において、上から順番に、出力電圧検出値vosenと目標電圧値voref、入力電圧位相θ(=vinphase)に応じたリミッタ補正量Kphase*、基準オン時間ton1とリミッタ補正量Kphase*の乗算値である素子駆動信号Vgのオン時間ton2、および素子駆動信号Vg、交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形をそれぞれ示している。なお、参考例である
図9では、
図10との比較の便宜上、リミッタ補正量Kphase*の値を1で固定している。また、
図9および
図10において、最下段の交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形は両者の位相差を比較するためのものであり、比較しやすいように交流入力電流iacは600倍した値を表示している。また、素子駆動信号Vgの波形を示す図において、網掛けの領域はスイッチング素子7のスイッチングが行われる領域であることを示している。
【0041】
図9に示す例と
図10に示す例において、交流入力電圧vacと交流入力電流iacとの位相差Φを補正するように素子駆動信号Vgのオン時間ton2が変化する点は共通しており、ともに0.98を超える力率を実現しているが、素子駆動信号Vgのオン時間ton2の変化の態様は両者で異なる。すなわち、参考例としての
図9では、上述したようにリミッタ補正量Kphase*の値を1で固定しているので、素子駆動信号Vgのオン時間ton2は基準オン時間ton1をそのまま出力している(ton2=ton1)。この場合、スイッチング素子7は常にスイッチングを行うことが素子駆動信号Vgの波形から確認できる。一方、実施の形態1のシミュレーション結果を示す
図10では、入力電圧位相θに応じて変化するリミッタ補正量Kphase*により基準オン時間ton1を補正して素子駆動信号Vgのオン時間ton2を算出するので、素子駆動信号Vgのオン時間ton2が基準オン時間ton1に対して大きく変化している。
【0042】
図9および
図10の最下段の波形を確認すると、参考例では交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相進みによる位相差が確認できるが、実施の形態1では交流入力電圧vacと交流入力電流iacの位相差はほぼゼロとなることが確認できる。回路シミュレーションで力率を測定すると、参考例の場合は力率=0.985であるのに対して、実施の形態1の場合は力率=0.997に向上していることが分かった。
【0043】
また、実施の形態1では素子駆動信号Vgが0に固定されている期間、すなわち、スイッチング素子7のスイッチングが停止している期間が存在することが
図10より確認できる。このことから、実施の形態1を適用した場合、参考例と比べてスイッチング損失の増加を抑制できることが確認できる。
【0044】
なお、ここでは補正量Kphaseの算出において、(7)式を用いた計算により位相差Φを求める方法を示したが、
図1に示した構成に交流入力電流iacの位相検出手段を追加し、実測した交流入力電圧vacと交流入力電流iacの両者の位相から位相差Φを求めてもよく、さらに、シミュレーションまたは実験により事前に位相差Φを求めてもよい。
【0045】
実施の形態1によれば、スイッチング損失の増加を抑制しつつ高力率を実現することができる。より具体的には、コンバータのスイッチング素子を駆動する素子駆動信号のオン時間を算出する際に、スイッチング素子出力電圧検出値および目標電圧値から求められる基準オン時間と、脈流電圧の入力電圧位相に基づいて演算される補正量にリミッタ処理を施したリミッタ補正量を算出し、基準オン時間にリミッタ補正量を乗じた結果を素子駆動信号のオン時間とした。そして、このようにして算出されたオン時間を用いてスイッチング素子のオン/オフ制御を行うことにより、交流入力電圧に対する交流入力電流の位相進みの影響を抑制する。この結果、交流入力電流と交流入力電圧を精度よく同位相、同波形とすることができ、従来に比べて力率を改善する。また、上記リミッタ処理により力率改善への寄与が小さい期間はスイッチングを停止させるようにしたため、力率改善に大きな影響を与えることなくスイッチング損失の増加を抑制している。
【0046】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2を
図11に基づいて説明する。
実施の形態2は、リミッタ補正量Kphase*を求めるための上限閾値および下限閾値を位相差Φに応じて決定する点が実施の形態1と異なる。
図11は、位相差Φを5度から45度まで、5度ずつ変化させた場合のそれぞれについての上限閾値および下限閾値を示している。実施の形態2では、図に示すように位相差Φが小さいときほど上限閾値の値を大きくし、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間を短くしている。位相差Φが小さい場合、
図6Bに示したとおり、電流Ic*が電流I*と比べて小さくなるので、コンバータ4に流れる電流が入力フィルタ21の入力コンデンサ6、6aに流れる電流と比べて大きく、出力電力が大きい状態にある。このような状態においては、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる理想的な期間(例えば入力電圧位相θが0〜10度、または170〜180度となる期間)から外れた期間でスイッチング素子7のスイッチングを停止させてしまうと、入力電流iacに歪みが発生して力率を低下させてしまう虞がある。
【0047】
上記した力率の低下を防ぐためには、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間が理想的な期間から外れることを防ぐ必要があるが、補正量Kphaseの算出に用いる入力電圧位相θは、入力電圧位相検出部12により検出される入力電圧位相vinphaseであるため、検出誤差などにより交流入力電圧vacの実際の位相との間にずれが生じる可能性がある。このようなずれが生じていると、(8)式で算出される補正量Kphaseが交流入力電圧vacに対して位相進みまたは位相遅れを有することとなり、補正量Kphaseが上限閾値以上または下限閾値以下となる期間が理想的な期間から外れ、(9)式によりリミッタ補正量Kphase*がゼロになる期間も理想的な期間から外れるため、理想的な期間から外れた予期せぬ期間でスイッチング素子7のスイッチングを停止させてしまうこととなる。そこで、実施の形態2では位相差Φが小さい場合に上限閾値の値をより大きな値に設定し、スイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間がより短くなるようにしている。これにより、補正量Kphaseに位相進みまたは位相遅れが生じても、理想的な期間から外れた期間でスイッチングを停止させてしまうことを防ぐことができる。
【0048】
例えば位相差Φが10度である場合、
図11に示すとおり上限閾値は2.5である。これに基づいてリミッタ補正量Kphase*を算出しスイッチング素子7のスイッチングを停止させる期間を求めると、入力電圧位相θが0〜10度、または174〜180度となる期間がスイッチングを停止させる期間となる。このため、4度以下の位相進みであれば、スイッチングを停止させる期間は上記した理想的な期間内に納まる。
【0049】
位相差Φが大きい場合、
図6Bに示したとおり、電流Ic*が電流I*と比べて大きくなるので、コンバータ4に流れる電流が入力フィルタ21の入力コンデンサ6、6aに流れる電流と比べて小さく、出力電力が小さい状態にある。このような状態においては、スイッチング素子7のスイッチングを停止できる期間が長く、また、スイッチングを停止したときに発生する入力電流iacの歪みが小さいので、上限閾値を小さな値に、下限閾値を大きな値に設定し、スイッチングを停止させる期間を長くしている。
その他については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、交流入力電流と交流入力電圧の位相差が小さい場合はリミッタ補正量を求めるための上限閾値を大きくし、スイッチング素子のスイッチングを停止させる期間をより短く設定するので、入力電圧位相に検出誤差があり、補正量に位相進みまたは位相遅れがある場合でも、予期せぬ期間においてスイッチングを停止させてしまうことを防ぐことができる。このため、交流入力電流の歪みの発生およびこの歪みによる力率の低下を防ぐことができる。また、交流入力電流と交流入力電圧の位相差が大きい場合は上限閾値を小さくするとともに下限閾値を大きくし、スイッチング素子のスイッチングを停止させる期間をより長く設定するので、スイッチング損失をさらに低減することができる。
【0051】
なお、
図11で示した上限閾値および下限閾値は一例であり、上限閾値および下限閾値を位相差Φにより変化させればよい。例えば、位相差Φが小さい場合に上限閾値を小さく設定することも考えられる。ただし、
図11で示したように設定することが望ましい。
【0052】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3を
図12Aから
図21に基づいて説明する。実施の形態3は、入力電圧位相θ(=vinphase)に応じた補正量Kphaseの決定方法が実施の形態1と異なる。すなわち、実施の形態1では、入力電圧検出値vinsenから得られる入力電圧位相θ(=vinphase)を利用し、(8)式に基づいて補正量Kphaseを決定したが、実施の形態3では、スイッチ制御部13において(8)式の演算を近似式化して補正量Kphaseを決定する。
【0053】
まず、(8)式を近似式化することを考える。入力電圧位相θを度数表示(脈流電圧|vac|の周期を0度〜180度)として、
図12Aでは、力率が「1」となる理想の交流入力電流の波形、すなわち交流入力電圧vacと同位相である理想交流入力電流iacrefの波形を実線で示し、理想交流入力電流iacrefに対して位相が10度進んだ状態の位相進み交流入力電流iacleadの波形を破線で示す。また、
図12Bでは、理想交流入力電流iacrefの波形を実線で示し、理想交流入力電流iacrefに対して位相が10度遅れた状態の位相遅れ交流入力電流iaclagの波形を破線で示す。
【0054】
図13Aには、(8)式に基づいて
図12Aにおける位相進み交流入力電流iacleadを理想交流入力電流iacrefで除算し、(9)式によるリミッタ処理を施して求めたリミッタ補正量Kphase*を示す。また、
図13Bには、(8)式に基づいて
図12Bにおける位相遅れ交流入力電流iaclagを理想交流入力電流iacrefで除算し、(9)式によるリミッタ処理して求めたリミッタ補正量Kphase*を示す。なお、
図13Aおよび
図13Bにおいて、リミッタ補正量Kphase*を求めるための上限閾値、下限閾値は、それぞれ2、0に設定している。
【0055】
交流入力電圧vacに対して交流入力電流iacが進相となる場合、すなわち、(5)式の分母が「正」となる場合は、進相分を遅らせるように補正を行うため、
図13Aに示すように、入力電圧位相θの増加に伴ってリミッタ補正量Kphase*は増加する。一方、交流入力電圧vacに対して交流入力電流iacが遅相となる場合、すなわち、(5)式の分母が「負」となる場合は、遅相分を進めるように補正を行うため、
図13Bに示すように、入力電圧位相θの増加に伴ってリミッタ補正量Kphase*は減少する。
なお、以降の説明では、入力コンデンサ6、6aの影響を考慮して、交流入力電流iacが交流入力電圧vacに対して進相である場合(すなわち、
図12Aの状態)を前提として記述する。
【0056】
出力電力等により交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相差Φが変化した場合を考える。交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相差Φを「5度」、「10度」、「15度」、「20度」、「25度」とそれぞれ変化させた場合に、(8)(9)式に基づいて入力電圧位相θに対するリミッタ補正量Kphase*を求めた結果を
図14において実線で示す。また、実線で示したそれぞれのリミッタ補正量Kphase*を簡単な一次関数にそれぞれ近似した場合のリミッタ補正量Kphase*を破線で示す。なお、
図14においてリミッタ補正量Kphase*を求めるための上限閾値2、下限閾値を0としている。近似されたリミッタ補正量Kphase*は、
図14において破線で示された各々の一次関数が周期的に繰り返されるものであるから、近似されたリミッタ補正量Kphase*は、180度の周期を持つ鋸波状の信号となる。このような近似は、下記の(10)式に示すような、入力電圧位相θに応じて単純に補正量Kphaseが増加する一次関数式に(8)式を近似することであり、補正量Kphaseの算出、ひいてはリミッタ補正量Kphase*の算出に要する時間を短縮する。
Kphase=A・θ+B (10)
【0057】
なお、
図14を参考にすると、(10)式で示す一次関数式の傾きAと切片Bの設定は、以下の条件のもとに設定することができる。
(i)傾きAを「正」の値に設定する。
(ii)交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相差Φが大きいほど、入力電圧位相θの変化に対する補正量Kphaseの変化を大きく、すなわち、傾きAを「大きく」設定する。
(iii)切片Bの決め方として、
図14により、入力電圧位相θが90度のときに補正量Kphaseが「1」となるように切片Bを設定する。すなわち、B=1−A×(90度)となるように切片Bを決定する。
【0058】
上記の(ii)に関して、交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相差Φが大きくなる条件を(7)式から考察する。
(7)式で使用する各定数を、交流入力電圧vac=200V(50Hz:脈流電圧の周波数は100Hz)、出力電圧vo=400V、負荷R=2938Ω(電力54.45W)、入力フィルタ21の入力コイル20のリアクトルL=7mH、入力フィルタ21の入力コンデンサ6、6aの合成容量C=0.42uFを基準として、電源主回路部2の負荷8への出力電力Po、交流入力電圧vac、交流入力電圧周波数fをそれぞれパラメータとして、それらを変化させたときの、交流入力電圧vacに対する交流入力電流iacの位相差Φの算出結果を
図15Aから
図15Cに示す。
【0059】
出力電力Poが小さいほど位相差Φは大きくなることが
図15Aより分かり、交流入力電圧vacが大きいほど位相差Φが大きくなることが
図15Bより分かる。また、交流入力電圧周波数fが大きいほど位相差Φが大きくなることが
図15Cより分かる。このように、負荷8への出力電力Poが小さくなる、交流入力電圧vacが大きくなる、または交流入力電圧周波数fが大きくなるといった変化に伴って位相差Φが大きくなるので、これに従い、入力電圧位相θの変化に対する補正量Kphaseの変化を大きく、すなわち、(10)式の傾きAが大きくなるように設定する。
【0060】
なお、補正量Kphaseは、各種パラメータの組み合わせ毎に事前に決定した傾きAと切片Bの値をテーブルメモリから読み出して決定してもよく、事前に各種パラメータの組み合わせ毎に計算した補正量Kphaseの値をテーブルメモリから読み出すようにしてもよい。他の方法として、例えば力率を検出する構成または交流入力電流iacを検出する構成のいずれか一方もしくはその両方を検出可能な手段を
図1の構成に追加し、力率が向上、または交流入力電流歪みが低減するように、脈流電圧|vac|の1周期毎に傾きAおよび切片Bを変化させる制御を行うことで、より力率が改善されるようにこれらの値A、Bを調整することができる。
リミッタ補正量Kphase*は、実施の形態1と同様、補正量Kphaseの演算後に(9)式に一例を示すようなリミッタ処理を行い、素子駆動信号Vgのオン時間ton2の導出に用いる。
【0061】
実施の形態3についても、実施の形態1の場合と同様に、Mywayプラス社の回路シミュレーションを使用して、シミュレーションによる効果確認を行った。シミュレーション条件は、交流入力電圧vac=242V(50Hz:脈流電圧|vac|の周波数は100Hz)、負荷8への出力電圧vo=390V、入力フィルタ21の入力コイル20のリアクタンスL=7mH、入力フィルタ21の入力コンデンサ6、6aの合成容量C=0.42uF、リミッタ補正量Kphase*を求める際の上限閾値を2、下限閾値を0とした。また、負荷8への出力電力Poは(i)Po=50W(負荷抵抗R=3042Ω)と、(ii)Po=5W(負荷抵抗R=30kΩ)の2通りでそれぞれ確認を行った。
【0062】
(i)出力電力Po=50Wのとき
実施の形態3および実施の形態1のいずれも適用しない参考例のシミュレーション結果を
図16に、実施の形態3のシミュレーション結果を
図17に、実施の形態1のシミュレーション結果を
図18に示す。
図16、
図17、および
図18において、上段が入力電圧位相θに応じたリミッタ補正量Kphase*を、中段が素子駆動信号Vgを、下段が交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形をそれぞれ示している。なお、
図16では、
図17および
図18との比較の便宜上、リミッタ補正量Kphase*の値を1で固定している。また、
図17では、入力電圧位相θが90度のときにリミッタ補正量Kphase*の値が1となるように、(10)式の傾きおよび切片を決定している。また、
図16、
図17、および
図18において、最下段の交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形は、両者の位相差を比較するためのものであり、比較しやすいように交流入力電流iacは1000倍した値を表示している。
【0063】
回路シミュレーションにより力率を確認すると、
図16に示す参考例では0.971、
図17に示す実施の形態3では0.995、
図18に示す実施の形態1では0.993であり、実施の形態3の(10)式による近似式を用いることで、参考例よりも大きな力率改善効果があり、実施の形態1で示した(8)式の場合とほぼ同等の効果が得られることが確認できる。なお、出力電力Po=50Wの条件下において、(10)式で近似的に計算される補正量Kphaseは、リミッタ補正量を求めるための上限閾値、下限閾値に達することがないため、スイッチング素子7は全領域でスイッチングを実施している。
【0064】
(ii)出力電力Po=5Wのとき
実施の形態3および実施の形態1のいずれも適用しない参考例のシミュレーション結果を
図19に、実施の形態3のシミュレーション結果を
図20に、実施の形態1のシミュレーション結果を
図21に示す。
図19、
図20、および
図21において、上段が入力電圧位相θに応じたリミッタ補正量Kphase*を、中段が素子駆動信号Vgを、下段が交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形をそれぞれ示している。なお、
図19では、
図20および
図21との比較の便宜上、リミッタ補正量Kphase*の値を1で固定している。また、
図20では、入力電圧位相θが90度のときにリミッタ補正量Kphase*の値が1となるように、(10)式の傾きおよび切片を決定している(
図14における25度進みの状態)。また、
図19、
図20、および
図21において、最下段の交流入力電圧vacと交流入力電流iacの波形は、両者の位相差を比較するためのものであり、比較しやすいように交流入力電流iacは6000倍した値を表示している。
【0065】
回路シミュレーションにより力率を確認すると、
図19に示す参考例では0.676、
図20に示す実施の形態3では0.822、
図19に示す実施の形態1では0.834であり、実施の形態3の(10)式による近似式を用いることで、参考例よりも大きな力率改善効果があり、また実施の形態1で示した(8)式の場合と同等レベルの効果が得られることが確認できる。
【0066】
なお、
図20に示す実施の形態3では
図21に示す実施の形態1と同様にリミッタ補正量Kphase*が0となっている期間があり、素子駆動信号Vgが0に固定されている期間が確認できる。このことから、実施の形態3の(10)式を用いた場合でも、スイッチング素子7のスイッチングが停止させることでスイッチング損失の増加を抑制していることがわかる。
以上のように、出力電力Poを50W、5Wとしたときのシミュレーション結果(
図17、
図20)から、実施の形態3の(10)式に基づく簡易な一次関数式を用いた場合でも力率改善が可能であることが確認される。さらに、出力電力Poが5Wの場合は、実施の形態1と同様にスイッチング損失の増加を抑制しつつ力率改善が可能であることができることが確認される。
【0067】
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、素子駆動信号のオン時間を決定する補正量の算出に一次関数の近似式を用いるので、補正量およびこれにリミッタ処理を施したリミッタ補正量の算出が容易となっている。このため、実施の形態1では必要だったsin演算または除算を行う必要がなく、マイコンなどの演算処理部の実装が容易になっている。
【0068】
実施の形態4.
以下に、実施の形態4を
図22に基づいて説明する。
図22は、実施の形態4におけるLED照明装置の構成を示すブロック図であり、
図1と対応する構成部分には同一の符号を付している。LED照明装置100は、
図1に示した力率補償電源装置1の構成に対して、負荷8が複数のLED23を縦列接続してなるLEDモジュール22に置き換わっている。このため、電源制御部3において、出力電圧検出部9に代えて出力電流検出部24が設けられるとともに、出力電圧制御部11に代えて出力電流制御部26が設けられ、目標電流値iorefが設定されるように変更されている。その他の構成は
図1に示した力率補償電源装置1と同様である。
【0069】
出力電流検出部24は、例えば、図示しない電流検出抵抗を設置し、電流検出抵抗の両端間に発生する電位差をLEDモジュール22に流れる出力電流に対応した電圧変換値iosenとして検出する。また、LEDモジュール22の接続構成は、ここではLED23を全て直列に接続したものとしているが、複数のLED23を直列または直並列に接続したものであってもよい。さらに、ここでは光源をLED23としているが、これに限らず有機ELまたはレーザーダイオードに変更することもできる。
【0070】
実施の形態4では、そのVI特性から通常は電流制御がLED23に適している点を考慮し、実施の形態1に適用した出力電圧制御を出力電流制御に置き換えている。この構成にすることにより、実施の形態1から3と同様の制御を行うことでLEDモジュール22に流れる電流を制御することができる。また、調光機能を搭載して光量を調整する場合は、外部から入力される目標電流値iorefを可変にする構成とすることにより、調光機能を実現することができる。
【0071】
LEDモジュール22を負荷とした場合、調光機能によりLEDモジュール22に流れる電流を変化させた場合でも出力電圧voは変化しない。実施の形態1および3では、出力電力Poが補正量Kphaseを決定するための一つのパラメータであったため、理想的には出力電圧voと出力電流ioを共に検出して電力を算出する必要があった。これに対し、実施の形態4では、
図22に示すように負荷8がLEDモジュール22となっているため、出力電流検出部24で出力電流ioを電圧変換値iosenとして検出することにより補正量Kphaseおよびリミッタ補正量Kphase*を調整することができ、出力電圧voの検出を行う必要がない。なお、補正量Kphaseおよびリミッタ補正量Kphase*の算出は、実施の形態1から3の場合と同様に行えばよい。
【0072】
実施の形態4によれば、負荷としてLEDモジュールを適用したLED照明装置において、交流入力電流と交流入力電圧を同位相、同波形とすることが可能となり、力率を向上することができる。より具体的には、電源主回路部に出力電流検出部を設けて出力電流を電圧変換値として検出するとともに、出力電流検出値と目標電流値とから基準オン時間を演算する出力電流制御部を電源制御部に設け、入力電圧位相に応じた補正量を基準オン時間に乗算したオン時間を用いてスイッチング素子をオン/オフ制御するので、入力コンデンサによる交流入力電圧に対する交流入力電流の位相進みの影響を補正できる。このため、交流入力電流と交流入力電圧を同位相、同波形にでき、力率を向上することができる。また、実施の形態1から3と同様に力率改善への寄与が小さい期間はスイッチングを停止させるようにしたため、力率改善に大きな影響を与えることなくスイッチング損失の増加を抑制している。
【0073】
また、LEDモジュールを負荷としているため、出力電流検出部により出力電流を電圧変換値として検出し、この電圧変換値を用いて補正量を調整することができ、出力電圧voの検出を行う必要がない。このため、マイコンのピン数削減、処理時間の短縮、配線の削減、およびこれらによる小型化、低コスト化の利点が得られる。
さらに、調光信号は通常外部からマイコンに入力されて調光制御を行うので、調光信号が可変である場合でも、調光後の最適な補正量Kphaseを事前に求めることができる。このため、負荷変動に対して応答速度の速い力率改善制御を行うことができる。
【0074】
実施の形態5.
以下に、実施の形態5を
図23に基づいて説明する。
図23は、実施の形態5におけるLED照明装置の構成を示すブロック図であり、
図1および
図22と対応する構成部分には同一の符号を付している。LED照明装置101は、
図1に示した構成に対して、負荷8がLEDモジュール22であることに加えて、電源主回路部2において、LEDモジュール22とコンバータ4との間に出力電流調整用のDC/DCコンバータとしてのLED電流調整回路41、すなわち第2のコンバータが設けられて2段のコンバータが適用されているとともに、LEDモジュール22に流れる電流に対応した電圧変換値iosenを検出する出力電流検出部24が設けられている。また、電源制御部3においては、出力電圧制御部11に加えて、出力電流制御部26が設けられている。
【0075】
実施の形態5によれば、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。また、2段のコンバータを適用しているので、入力側の力率改善制御と出力側の電流安定制御を同時に実現することができる。すなわち、入力側で力率改善制御をしつつ、交流電源の商用周波数リップルを出力側で除去し、LEDモジュールにおいて光のちらつきが発生することを防ぐことができる。
【0076】
なお、上記の実施の形態1から5において、力率補償電源装置またはLED照明装置を小型化するために、装置の全て、あるいは一部を1つの集積回路に実装して、1つのパッケージに収めたICとしてもよい。例えば、電源制御部を1つの制御ICのパッケージに収めることが好ましい。
【0077】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。