(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、1)ハードコート剤、及び、2)積層フィルム、に項分けして詳細に説明する。
【0012】
1)ハードコート剤
本発明のハードコート剤は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するものである。
(A)成分:反応性官能基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物
(B)成分:ポリチオール化合物
(C)成分:反応性官能基を有する無機フィラー
【0013】
本発明のハードコート剤は、(A)成分として、反応性官能基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(A)」ということがある。)を含有する。
【0014】
有機ケイ素化合物(A)中の反応性官能基とは、(B)成分のメルカプト基と反応して化学結合を形成し得る基をいう。
この反応性官能基としては、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の炭素−炭素不飽和結合を有する基;エポキシ基;イソシアネート基;メルカプト基;等が挙げられる。これらの中でも、炭素−炭素不飽和結合を有する基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0015】
有機ケイ素化合物(A)中の加水分解性基とは、加水分解反応によりシロキサン結合(Si−O−Si結合)を形成し得る基をいう。
この加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等の炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルコキシ基;フェノキシ基等の炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリールオキシ基;ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアシルオキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜10のアシルオキシ基がより好ましい。
【0016】
有機ケイ素化合物(A)としては、下記式(I)で示される化合物が挙げられる。
【0018】
式(I)中、R
1は反応性官能基を有する基を表し、R
2は加水分解性基を表し、R
3は反応性官能基を有しない、非加水分解性基を表す。
xは1、2又は3、yは1、2又は3、zは0、1又は2であり、x、y、zの合計は4である。
x、y又はzが2以上のとき、複数のR
1、R
2又はR
3は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0019】
R
1としては、反応性官能基や、反応性官能基を有する基が挙げられる。これらの具体例としては、ビニル基、ビニルオキシメチル基等のビニル基を有する基;アリル基、アリルオキシメチル基等のアリル基を有する基;スチリル基、スチリルメチル基等のスチリル基を有する基;(メタ)アクリロイル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイル基を有する基;エポキシ基、グリシジル基、3−グリシジルオキシプロピル基等のエポキシ基を有する基;イソシアネート基、3−イソシアナトプロピル基等のイソシアネート基を有する基;メルカプト基、3−メルカプトプロピル基等のメルカプト基を有する基;等が挙げられる。これらの中でも、炭素−炭素不飽和結合を有する基が好ましく、ビニル基がより好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する(以下にて同じ)。
R
1の炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10である。
【0020】
R
2としては、前記加水分解性基が挙げられる。
R
2の炭素数は好ましくは0〜15、より好ましくは0〜10である。
【0021】
R
3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜15のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリール基;等が挙げられる。
【0022】
有機ケイ素化合物(A)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン等のビニル基含有シラン化合物;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン等のアリル基含有シラン化合物;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−アクリロキシプロピルトリブロモシラン等のγ−アクリロキシアルキル基含有シラン化合物;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブロモシラン等のγ−メタクリロキシアルキル基含有シラン化合物;α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリクロロシラン、α−グリシドキシエチルトリブロモシラン、β−グリシドキシエチルトリクロロシラン、β−グリシドキシエチルトリブロモシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、有機ケイ素化合物(A)としては、ビニル基含有シラン化合物が好ましく、ビニルトリアセトキシシランがより好ましい。
有機ケイ素化合物(A)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明のハードコート剤は、(B)成分として、ポリチオール化合物を含有する。
前記有機ケイ素化合物(A)に加えて、ポリチオール化合物を含有するハードコート剤を用いることにより、透明性に優れ、鉛筆硬度が高く、耐屈曲性に優れるハードコート層を形成することができる。
【0024】
ポリチオール化合物は、分子内に、2以上のメルカプト基を有する化合物である。
ポリチオール化合物としては、エチレンビス(メルカプトアセテート)、エチレンビス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト基数が2の化合物;トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト基数が3の化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト基数が4以上の化合物;等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、ポリチオール化合物としては、メルカプト基数が3の化合物又はメルカプト基数が4以上の化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオネート)がより好ましい。
ポリチオール化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ポリチオール化合物の含有量は特に限定されない。ポリチオール化合物の含有量は、(A)成分に対して、通常50〜120質量%、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは60〜90質量%である。
ポリチオール化合物の含有量が少な過ぎるハードコート剤を使用してハードコート層を形成すると、積層フィルムにカールが発生するおそれがある。一方、ポリチオール化合物が多過ぎるハードコート剤を使用すると、硬度が高いハードコート層を形成するのが困難になるおそれがある。
【0027】
本発明のハードコート剤は、(C)成分として、反応性官能基を有する無機フィラー(修飾処理により、表面に反応性官能基が導入された無機フィラーをいう。以下、この(C)成分を「無機フィラー(C)」ということがある。)を含有する。
前記有機ケイ素化合物(A)及びポリチオール化合物に加えて、無機フィラー(C)を含有するハードコート剤を用いることにより、透明性に優れ、鉛筆硬度が高く、耐屈曲性、耐擦傷性、カール性のすべてに優れるハードコート層を形成することができる。
【0028】
無機フィラー(C)に含まれる反応性官能基とは、(B)成分のメルカプト基と反応して化学結合を形成し得る基をいう。この反応性官能基としては、有機ケイ素化合物(A)の反応性官能基として示したものと同様のものが挙げられる。なかでも、炭素−炭素不飽和結合を有する基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0029】
無機フィラー(C)を構成する無機成分(修飾処理前の無機フィラーの構成成分)としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩等が挙げられる。
【0030】
金属酸化物としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
金属塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩;等が挙げられる。
これらの中でも、無機フィラー(C)を構成する無機成分としては、金属酸化物が好ましく、シリカがより好ましい。
【0031】
無機フィラー(C)の形状は、球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状等のいずれであってもよいが、球状であるのが好ましい。ここで、球状とは、真球状の他、回転楕円体、卵形、金平糖状、まゆ状等球体に近似できる多面体形状を含む略球状を意味する。
【0032】
無機フィラー(C)の大きさは特に限定されない。無機フィラー(C)の平均粒径は、通常5〜1000nm、好ましくは7〜500nm、より好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜30nmである。
無機フィラー(C)の平均粒径が上記範囲内にあることで、透明性に優れ、かつ、耐擦傷性に優れるハードコート層を効率よく形成することができる。
無機フィラー(C)の平均粒径は、BET法により得られた比表面積を利用して算出することができる。
【0033】
本発明のハードコート剤において、無機フィラー(C)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
無機フィラー(C)の含有量は特に限定されない。無機フィラー(C)の含有量は(A)成分に対して、通常、30〜130質量%、好ましくは60〜125質量%である。
特に、無機フィラー(C)の含有量が、(A)成分に対して90〜125質量%のハードコート剤を使用すると、硬度が高いハードコート層を形成し易くなる。
また、無機フィラー(C)の含有量が、(A)成分に対して90〜125質量%のハードコート剤を使用すると、耐擦傷性に優れるハードコート層を形成し易くなる。
【0035】
本発明のハードコート剤は、本発明の効果を阻害しない範囲において、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、溶媒や光重合開始剤が挙げられる。
【0036】
溶媒を含有するハードコート剤は塗工性に優れるため、溶媒を含有するハードコート剤を使用することで、薄いハードコート層を効率よく形成することができる。
溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒等が挙げられる。
溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明のハードコート剤が溶媒を含有するとき、溶媒の含有量は、本発明のハードコート剤の固形分濃度が30〜95質量%以上になる量が好ましく、35〜90質量%になる量がより好ましく、40〜85質量%になる量がさらに好ましい。
【0038】
光重合開始剤を含有するハードコート剤を使用することで、ハードコート剤を塗工した後、得られた塗膜を効率よく硬化させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明のハードコート剤が光重合開始剤を含有するとき、光重合開始剤の含有量は、ハードコート剤の固形分全量に対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0040】
本発明のハードコート剤は、前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する。そして、(A)成分や(C)成分に含まれる反応性官能基は、(B)成分に含まれるメルカプト基と反応し得るものであるとともに、これらの反応性官能基同士でも反応し得るものである。
このように、本発明のハードコート剤は、メルカプト基が関与する反応とメルカプト基が関与しない反応の両方を利用できるものであるため、本発明のハードコート剤を用いることにより硬度が高く、耐擦傷性に優れるハードコート層を形成することができる。
【0041】
また、前記反応性官能基同士を反応させる場合は、通常、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射したり、加熱したりすることが必要になるため、反応性官能基とメルカプト基との反応が、反応性官能基同士の反応に比べて速く進行する。そして、この反応性官能基とメルカプト基との反応は付加反応であり、この反応が起きてもハードコート層の収縮が起こり難い。
一方、反応性官能基同士の反応が必要以上に起きると、局所的な硬化収縮が生じ、光学特性やカール性を低下させるおそれがある。
したがって、(B)成分の量を適切に調節し、反応性官能基とメルカプト基との反応後において未反応の反応性官能基が余り過ぎないようにしたハードコート剤を用いることで、光学特性、カール性、耐屈曲性にも優れるハードコート層を形成することができる。
【0042】
2)積層フィルム
本発明の積層フィルムは、基材層とハードコート層を有する積層フィルムであって、前記ハードコート層が、本発明のハードコート剤を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0043】
本発明の積層フィルムを構成する基材層は、ハードコート層を保持するために用いられる。
基材層の種類は特に限定されない。例えば、合成樹脂フィルムを基材層として利用することができる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。
【0044】
本発明において、前記基材層の少なくとも一方の面にはプライマー層が設けられていてもよい。前記プライマー層としては、その上に設けられるハードコート層に対する密着性及び前記基材層に対する密着性が良好なものであればよく、その種類は特に制限されない。プライマー層としては、アクリル系プライマー層、ポリエステル系プライマー層、ポリウレタン系プライマー層、シリコーン系プライマー層、ゴム系プライマー層等の従来公知のプライマー層を用いることができる。プライマー層の厚みは、通常、0.01〜20μm、好ましくは、0.1〜15μmである。
【0045】
基材層(合成樹脂フィルム)の厚みは特に限定されず、積層フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。
基材層の厚みは、通常、10〜500μm、好ましくは20〜200μmである。
【0046】
本発明の積層フィルムを構成するハードコート層は、本発明のハードコート剤を用いて形成されたものである。
ハードコート層の厚みは、通常、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μmである。
【0047】
ハードコート層は、基材層用の合成樹脂フィルム(又はプライマー層)上に本発明のハードコート剤を塗工し、得られた塗膜を硬化させることにより形成することができる。
【0048】
合成樹脂フィルム(又はプライマー層)上にハードコート剤を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を採用できる。例えば、ロールコート法、カーテンフローコート法、マイヤバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ブレードコート法、スムーズコート法、ロールナイフコート法等が挙げられる。
【0049】
塗膜を硬化させる方法は特に限定されない。例えば、塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって塗膜を硬化させることができる。
紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができる。紫外線の照射量は、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができる。電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0050】
ハードコート層を形成する際は、必要に応じて、塗膜の硬化前又は塗膜の硬化後に乾燥処理を行ってもよい。
乾燥処理条件は特に限定されない。乾燥温度は、例えば、40〜150℃、好ましくは60〜140℃であり、乾燥時間は、例えば、30秒から1時間、好ましくは1〜30分である。
【0051】
ハードコート層は、本発明のハードコート剤を用いて形成されたものであり、硬度が高く、かつ、耐擦傷性に優れる。
本発明の積層フィルムを構成するハードコート層は、実施例に記載の方法に従って鉛筆引っかき硬度試験を行ったときに、通常、F以上の硬度を示し、H以上が好ましい。
本発明の積層フィルムを構成するハードコート層は、実施例に記載の方法に従って耐擦傷性を評価した場合、通常は傷が観察されない。
【0052】
本発明の積層フィルムは透明性に優れるものが好ましい。本発明の積層フィルムは、全光線透過率を測定したときに、89%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。上限値は特にないが、通常は95%以下である。
本発明の積層フィルムは耐屈曲性に優れるものが好ましい。本発明の積層フィルムは、JIS K5600−5−1に準じて、マンドレル屈曲試験を行ったときに、4mmΦ以下が好ましく、2mmΦ以下がより好ましい。
本発明の積層フィルムは反りが少ないものが好ましい。本発明の積層フィルムは、実施例に記載の方法に従ってカール性を評価すると、通常は110mm以下、好ましくは50mm以下である。下限値は特にないが、通常は3.5mm以上である。
【0053】
これらの光学特性、耐屈曲性、カール性に優れる積層フィルムは、上述のように(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の量を調節し、(A)成分や(C)成分が有する反応性官能基同士の反応を必要以上に起こさせないことにより製造することができる。
【0054】
本発明の積層フィルムは、硬度が高く、かつ、耐擦傷性及び耐屈曲性に優れるハードコート層を有するものであり、タッチパネルの製造材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0056】
実施例及び比較例で使用した化合物を以下に示す。
・有機ケイ素化合物(ビニルトリアセトキシシラン)の溶液(A1)(堺化学社製、商品名:SHC−001B、濃度90%)
・ポリチオール化合物〔トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)〕の溶液(B1)(堺化学社製、商品名:SHC−001A、濃度60%)
・無機フィラー(アクリロイルオキシ基を有するシリカナノフィラー)分散液(C1)(日産化学工業社製、商品名:AC−4130Y、濃度30%、平均粒径40〜50nm)
・無機フィラー(アクリロイルオキシ基を有するシリカナノフィラー)分散液(C2)(日産化学工業社製、商品名:AC−2140Z、濃度40%、平均粒径10〜15nm)
【0057】
[実施例1]
有機ケイ素化合物の溶液(A1)110部、ポリチオール化合物の溶液(B1)100部、無機フィラー分散液(C1)119部を混合し、得られた混合液をメチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度45%のハードコート剤(1)を調製した。
片面プライマー層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名:PET50A4100、厚み50μm)に、マイヤーバー#10を用いて硬化後の膜厚が5μmになるようにハードコート剤(1)をプライマー層の面上に塗布し、紫外線を照射(光量:500mJ/cm
2)して塗膜を硬化させた。次いで硬化塗膜を、120
oCで20分間乾燥してハードコート層を形成し、積層フィルム(1)を得た。
【0058】
[実施例2〜9、比較例1]
実施例1において、ハードコート剤(1)に代えて、第1表に記載の組成のハードコート剤(2)〜(10)を調製し、これを使用して積層フィルムを製造したことを除き、実施例1と同様にして積層フィルム(2)〜(10)をそれぞれ得た。
【0059】
実施例1〜9及び比較例1で得られた積層フィルムについて、以下の評価を行った。結果を第1表に示す。第1表中、「濃度」は「固形分濃度」の意味である。
【0060】
[膜厚評価]
厚み計(ニコン社製、商品名:MH−15)を用いて、JIS K 7130(1999)に準じて、ハードコート層の膜厚を測定した。
【0061】
[全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色社製、商品名:N−DH−2000)を用いて、JIS K 7361−1(1997)に準じて、積層フィルムの全光線透過率を測定した。
【0062】
[鉛筆硬度]
鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製、商品名:No.553−M)を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、荷重750g、引っかき速度0.5mm/秒で鉛筆引っかき硬度試験を行った。
【0063】
[耐擦傷性評価]
積層フィルムのハードコート層を、スチールウール#0000を用いて、250g/cm
2の荷重で長さ50mmの範囲を10往復擦り、その後目視で傷の有無を確認し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
◎:傷がない。
○:1〜2本程度傷がある。
×:無数の傷がある。
【0064】
[耐屈曲性評価]
JIS K5600−5−1(1999)に準じて、マンドレル屈曲試験を行い、積層フィルムの耐屈曲性を評価した。
【0065】
[カール性評価]
積層フィルムを1辺10cmの正方形に切り取り、これを試験片とした。この試験片を水平の台上に静置し、このときの四隅の浮き(mm)を測定し、その合計値を算出した。
【0066】
【表1】
【0067】
第1表から、以下のことが分かる。
実施例1〜9で得られた積層フィルム(1)〜(9)のハードコート層は、透明性に優れるとともに、硬度が高く、かつ、耐擦傷性、耐屈曲性に優れる。
また、実施例5、6、9で得られた積層フィルム(5)、(6)、(9)は、反りが小さいものである。
一方、比較例1で得られた積層フィルム(10)は、硬度が低く、耐擦傷性に劣るものである。