特許第6971972号(P6971972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971972
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】光変換材料
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20211111BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20211111BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20211111BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20211111BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20211111BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20211111BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20211111BHJP
【FI】
   G02B5/20
   C09K11/08 G
   C09K11/88
   F21S2/00 400
   H01L33/50
   B82Y20/00
   B82Y40/00
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-512848(P2018-512848)
(86)(22)【出願日】2016年8月17日
(65)【公表番号】特表2018-530777(P2018-530777A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016001403
(87)【国際公開番号】WO2017041875
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】15184670.6
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520500037
【氏名又は名称】リテック−ヴェルメーゲンズヴェルワルツングスゲゼルシャフト エムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LITEC−Vermoegensverwaltungsgesellschaft mbH
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】シュテンツェル,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】オポルカ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】リーガー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】テヴェス,シュテファン
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103975041(CN,A)
【文献】 特開2006−199963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0339499(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103694988(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104673315(CN,A)
【文献】 Marcus Muller et al.,Photoluminescence Quantum Yield and Matix-Induced Luminescence Enhancement of Colloidal Quantum Dots Embedded in Ionic Crystals,Chemistry of Materials,2014年04月28日,26,3231-3237
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
C09K 11/88
F21S 2/00
H01L 33/50
B82Y 20/00
B82Y 40/00
F21Y 115/10
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子および活性化されていない結晶性材料を含み、ここで半導体ナノ粒子が活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する、光変換材料であって、
活性化されていない結晶性材料が活性化されていない結晶性金属酸化物であって、M3+であり、M3+がSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属である、前記結晶性金属酸化物、活性化されていない結晶性ケイ酸塩およびハロケイ酸塩であって、
【化1】

からなるリストから選択され、式中Mが1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである、前記結晶性ケイ酸塩およびハロケイ酸塩、活性化されていない結晶性リン酸塩およびハロリン酸塩、活性化されていない結晶性ホウ酸およびホウケイ酸塩、活性化されていない結晶性アルミン酸塩、ガリウム酸塩およびアルミノケイ酸塩、活性化されていない結晶硫酸塩、硫化物、セレン化物およびテルル化物、活性化されていない結晶性窒化物およびオキシ窒化物、活性化されていない結晶性サイアロンおよび活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物、活性化されていない結晶性オキシ化合物、例えば好ましくはオキシ硫化物から選択された他の活性化されていない結晶性材料からなるリストから選択された無機蛍光体のマトリックス材料であることを特徴とする、前記光変換材料。
【請求項2】
活性化されていない結晶性リン酸塩またはハロリン酸塩が
【化2】
からなるリストから選択され、式中Mが1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;M4+がTi、Zr、Geおよび/またはSnであり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIであることを特徴とする、請求項1に記載の光変換材料。
【請求項3】
活性化されていない結晶性ホウ酸塩、ハロホウ酸塩またはホウケイ酸塩が
【化3】
からなるリストから選択され、式中M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Ga、In、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIであることを特徴とする、請求項1または2に記載の光変換材料。
【請求項4】
活性化されていない結晶性アルミン酸塩、ガリウム酸塩またはアルミノケイ酸塩が
【化4】
からなるリストから選択され、式中Mが1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項5】
活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物が
【化5】
からなるリストから選択され;式中Mが1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Sc、Y、La、Biならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;M4+がTi、Zr、Geおよび/またはSnであり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項6】
活性化されていない結晶性硫酸塩、硫化物、セレン化物またはテルル化物が
【化6】
からなるリストから選択され;式中M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;ならびにM3+がAl、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項7】
活性化されていない結晶性オキシ化合物が
【化7】
からなるリストから選択され;式中M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+がAl、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXが1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項8】
活性化されていない結晶性窒化物、酸窒化物またはサイアロンがM3+N、M2+Si、M2+Si、M3+Si11、M2+AlSiN、α−サイアロンおよびβ−サイアロンからなるリストから選択され;式中M2+がZn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;ならびにM3+がAl、Ga、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項9】
半導体ナノ粒子が合金における、コア/シェル構造における、または少なくとも2つのシェルを有するコア/マルチシェル構造における少なくとも2種の異なる半導体材料からなり、ここでコアが半導体材料または少なくとも2種の異なる半導体材料の合金のいずれかを含み、シェル(単数または複数)が独立して半導体材料または少なくとも2種の異なる半導体材料の合金を含み、ここで濃度勾配が任意にコアおよび/またはシェル(単数もしくは複数)内に、ならびに/あるいはコアおよび/またはシェル(単数もしくは複数)間に存在してもよいことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項10】
半導体材料がII−VI族半導体、III−V族半導体、IV−VI族半導体、I−III−VI族半導体から、ならびにこれらの半導体の合金および/または組み合わせから選択され、ここで半導体材料が任意に1種以上の遷移金属でドープされていてもよいことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項11】
半導体ナノ粒子がナノドット、ナノロッド、ナノフレーク、ナノテトラポッド、ナノロッド中のナノドット、ナノロッド中のナノロッドおよび/またはナノフレーク中のナノドットの形態にあることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項12】
光変換材料の表面が1種以上のコーティング材料でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光変換材料。
【請求項13】
請求項1〜12の1つ以上に記載の1種以上の光変換材料を含む、光変換混合物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の光変換材料または請求項13に記載の光変換混合物の、紫外光および/または青色光のより長い波長を有する光への部分的な、または完全な変換のための使用。
【請求項15】
少なくとも1つの一次光源および請求項1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1種の光変換材料または請求項13に記載の光変換混合物を含む、光源。
【請求項16】
光変換材料または光変換混合物が一次光源上に直接配置されるか、または一次光源から遠方の支持材料上に配置されることを特徴とする、請求項15に記載の光源。
【請求項17】
光変換材料または光変換混合物を一次光源または支持材料にフィルムの形態においてスピンコーティングもしくはスプレーコーティングによって、またはフィルムの形態において積層体として適用する、請求項15または16に記載の光源の製造方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載の少なくとも1つの光源を含む、照明ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の主題
本発明は、活性化されていない結晶性材料および活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する半導体ナノ粒子(量子物質)を含む光変換材料に関する。本発明はさらに、光変換材料の、紫外および/または青色光をより長い波長を有する光に部分的に、または完全に変換するための変換材料としての使用に関する。本発明はさらに、光変換混合物、光源および本発明による光変換材料を含む照明ユニットに関する。本発明はさらに、本発明による光変換材料を含有する光源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ドイツにおけるエネルギー消費量の約20%は、光の発生のためである。従来の白熱ランプは非効率的であり、最も効率的な蛍光灯は10mgまでの水銀を含む。ソリッドステート照明デバイス、例えば発光ダイオード(LED)は、それらが従来の光源よりも、電気エネルギーの光への変換における良好な効率(エネルギー効率)、長い寿命および高い機械的強度を有するので、高度に有望な代替である。LEDを、ディスプレイ、自動車および標識照明ならびに家庭用および街灯照明を含む多種多様な用途において使用することができる。その製造のために使用する無機半導体化合物に依存して、LEDは、スペクトルの様々な領域において単色光を発光することができる。しかしながら、照明産業の多くのために必要である「白色」光を、従来のLEDを用いて発生させることはできない。
【0003】
白色光の発生のための現在の解決策は、異なる色(例えば赤色、緑色および青色または「RGB」)を有する3つ以上のLEDの使用、または従来の蛍光体材料(例えば、YAG:Ce)を含む色変換層の、白色光の、LEDの紫外(UV)もしくは青色発光からの発生のための使用のいずれかを含む。したがって、青色光は、より長い波長を有する光に変換され、青色光および黄色光の組み合わせは、ヒトの目によって白色光として知覚される。しかし、このタイプの白色光は、事実上決して理想的ではなく、多くの場合において望ましくないか、または不快な特性を有し、それは、改善または補正を必要とし得る。変換LEDのより単純な構成は、照明装置の大衆市場に向けられている。現在、これらのLEDランプは、従来の白熱ランプおよびほとんどの蛍光ランプよりも尚かなり高価であり、商業的に入手できる白色LEDは、劣悪な色再現特性を有する青みがかった冷白色光を発する。貧弱と知覚される白色光のこの品質は、スペクトルの緑色および赤色部分における発光の欠如のために、黄色変換蛍光体材料YAG:Ceに由来する。
【0004】
ディスプレイについて、LEDで得られる狭いスペクトル半値全幅(FWHM)を有する3つ以上の原色を有することが、重要である(典型的なFWHM< 30 nm)。これにより、大きな全域を網羅することが可能になる。「全域」は、通常、3つの色を混合することによって得られる色のタイプの範囲として定義される。しかしながら、異なる色の3つ以上のLEDを使用する解決法は、多くの用途にとって過度に高価かつ複雑である。したがって、単一のLEDを使用して広い全域の網羅を可能にし、狭い帯域において発光する変換材料によって達成することができる光源を利用可能にすることが、望ましい。広いスペクトルを有する光源のためのLEDの提供のためのプロセスは、短波長LED光をより長い波長を有する光に変換する蛍光体を利用する。
【0005】
例えば、広範囲の緑色波長にわたって光を発する蛍光体を、狭い青色スペクトルを発生するLEDからの青色光を用いて励起することができる。蛍光体によって発生した緑色光を、次に白色光源の成分として使用する。複数の蛍光体を組み合わせることによって、広いスペクトルを有する白色光源を、光変換中の蛍光体の効率が十分に高いという条件で、原則として作成することができる。この結果、改善された色再現特性がもたらされる。さらなる詳細を、"Status and prospects for phosphor-based white LED Packaging", Z. Liu et al., Xiaobing Front. Optoelectron. China 2009, 2(2): 119-140に見出すことができる。
【0006】
不都合なことに、しかしながら、光設計者は、当該光設計者が選択することができる蛍光体のいかなる所望のセットへのアクセスをも有しない。LEDにおいて用いることができ、光変換における十分な効率を有する従来の希土類元素含有蛍光体の限られた数のみがある。これらの蛍光体の発光スペクトルを、容易に修正することはできない。さらに、スペクトルは、波長の関数として発せられる光が一定でない限りは、理想よりも小さい。複数の蛍光体を組み合わせても、したがって、最適な白色光源は生じない。加えて、現在使用されている赤色蛍光体は、長波長の赤色スペクトル域の深部までの光を発し、それにより、かかるLEDの輝度およびしたがってそれらの効率がさらに低下する。
【0007】
米国特許第7,102,152号、第7,495,383号および第7,318,651号には、量子ドット(QD)および非量子蛍光物質の形態における半導体ナノ粒子の両方を、デバイスの光源によって最初に発せられる光の少なくともいくらかをより長い波長を有する光に変換するために利用する、光の発光のためのデバイスおよびプロセスが開示されている。QDは、高い量子収率および狭い発光スペクトルを、サイズによって調整することができる中心発光波長と共に有する。QDおよび蛍光体の両方の組み合わせによって、光の品質を改善することが可能になる。
【0008】
QD添加によって、改善を達成することが可能になるが、高い固有の吸収の欠点を有し、すなわちそれらは、それらをそれら自体励起したときに発せられる光を吸収する。これにより、光変換の全体的なエネルギー効率が低下する。さらに、商業的に入手できる赤色発光体のようなQDも同様に、緑色蛍光体発光を再吸収し、これによってさらに、エネルギー効率の低下およびさらに発光スペクトルの変化がもたらされ、標的の色計画がより困難になる。さらに、分離が、QD材料および蛍光体を使用する場合、LEDの製造中に生じ得、これは、光変換材料の均一な分布がもはや確実にされないことを意味する。低下したエネルギー効率および所望の色再現の不十分な制御が、結果である。
【0009】
いくつかの適用において、密集したQDを有するクラスターが、所望される。このタイプの密集したQDクラスターは、例えば名称蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の下で知られている現象を示す。例えばJoseph R. Lakowicz, "Principles of Fluorescence Spectroscopy"、第2版、Kluwer Academic / Plenum Publishers, New York, 1999, pp. 367-443を参照。FRETは、より短い(例えばより青色の)波長で発する供与体QDと、直近において配置され、より長い波長で発する受容体QDとの間で生じる。
【0010】
双極子−双極子相互作用が、供与体発光遷移の双極子モーメントと受容体吸収遷移の双極子モーメントとの間に生じる。FRETプロセスの効率は、供与体の吸収と受容体の発光との間のスペクトル重複に依存する。量子ドット間のFRET分離は、典型的には10nm以下である。FRET効果の効率は、分離に極めて高度に依存する。FRETの結果、光変換中の色変化(赤色変化)および効率損失がもたらされる。この理由のために、光変換材料におけるQDのクラスター形成を回避するための初期の研究において努力がなされた。
【0011】
半導体ナノ粒子は、物理的特性を粒子サイズ、組成および形状の調整によって広い範囲にわたって調整することができるナノ材料のクラスである。特に、蛍光発光は、粒子サイズに依存するこのクラスの特性の1つである。蛍光発光の調整可能性は、量子限界効果に基づいており、それに従って、粒子サイズの減少の結果、「箱中の粒子」挙動がもたらされ、その結果、バンドギャップエネルギーの青色変化およびしたがって発光がもたらされる。したがって、例えば、CdSeナノ粒子の放出を、〜6.5nmの直径を有する粒子について660nmから〜2nmの直径を有する粒子について500nmに調整することができる。
【0012】
同様の挙動を、紫外(UV)領域(例えばZnSeまたはCdSの使用時)から可視(VIS)領域(例えばCdSeまたはInPの使用時)を介して近赤外(NIR)領域(例えばInAsの使用時)に至る広いスペクトル範囲を網羅することが可能になるのをもたらす他の半導体ナノ粒子について達成することができる。ナノ粒子の形状の変化は、特にロッド形状が重要である多くの半導体系について既に例証されている。ナノロッドは、球状ナノ粒子の特性とは異なる特性を有する。例えば、それらは、ロッドの長手方向軸に沿って偏光した発光を示し、一方球状ナノ粒子は、偏光していない発光を有する。
【0013】
異方性の(細長い)ナノ粒子、例えばナノロッド(また以下で時々「ロッド」と称する)は、したがって偏光発光に適している(WO 2010/095140 A3を参照)。X. Peng et al.は、"Shape control of CdSe nanocrystals" in Nature, 2000, 404, 59-61において、ポリマー中に包埋され、コロイドベースの半導体コア(シェルなし)に基づくCdSeナノロッドを記載している。事実上完全な偏光は、ここで個々のナノロッドから発せられる。T. MokariおよびU. Baninは、"Synthesis and properties of CdSe/ZnS rod/shell nanocrystals" in Chemistry of Materials 2003, 15 (20), 3955-3960において、シェルをロッド構造に適用した場合のナノロッドの発光の改善を記載している。
【0014】
D. V. Talapin et al.は、"Seeded Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Nanoheterostructures with Rod and Tetrapod Morphologies" in Nano Letters 2007, 7 (10), 2951-2959中で、被覆(シェル)を有するナノロッド粒子について達成された量子収率の向上を記載している。C. Carbone et al.は、"Synthesis and Micrometer-Scale Assembly of Colloidal CdSe/CdS Nanorods Prepared by a Seeled Growth Approach" in Nano Letters 2007, 7 (10), 2942-2950中で、シェルを有するナノロッドについての双極子発光パターンを記載しており、それは、発光がその先端からの代わりにロッドの中心から発することを意味する。さらに、ナノロッドが光増幅に関して有利な特性を有することが、示されており、それは、レーザー材料としての使用のためのそれらの可能性を例示する(Banin et al., Adv. Mater., 2002, 14, 317)。
【0015】
個々のナノロッドについて、発光を可逆的にスイッチオンおよびスイッチオフすることができるので、それらは外部電場において独特の挙動を示すことが、同様に示されている(Banin et al., Nano Letters, 2005, 5, 1581)。コロイド状半導体ナノ粒子のさらなる魅力的な特性は、それらの化学的アクセス可能性であり、それによって、これらの材料を様々な方法において加工することが可能になる。半導体ナノ粒子を、スピンコーティングもしくはスプレーコーティングによって、またはプラスチック中に包埋して、溶液から薄層の形態において適用することができる。 Jan Ziegler et al.は、"Silica-Coated InP/ZnS Nanocrystals as Converter Material in White LEDs", Advanced Materials, Vol. 20, No. 21, 13 October 2008, pages 4068-4073において、発光変換材料を高性能青色LEDチップ上に含むシリコーン複合層を付加した白色LEDの製造を記載している。
【0016】
LED用途における半導体ナノ粒子の使用は、とりわけUS 2015/0014728 A1に記載されており、それは、LEDにおいて使用することができる蛍光体/マトリックス複合体粉末に関する。蛍光体/マトリックス複合粉末は、マトリックスおよび、100nm以下のサイズを有し、マトリックス中に分散した複数の蛍光体または量子ドットを含み、ここで複合粉末のサイズは20μm以上であり、それは特定の表面粗さを有する。その製造中でさえも、記載した複合粉末は、所望の放出挙動を達成するために、蛍光体および量子ドットの混合比の正確な設定を必要とする。
【0017】
対照的に、混合比のその後の適合は可能ではなく、その結果、LEDの製造における複合粉末の有用性における限定された柔軟性がもたらされる。さらに、エネルギー変換の効率は、マトリックス中に分散した蛍光物質のタイプおよび量に高度に依存する。特に、蛍光体および/または量子ドットの量が多い場合、材料を焼結することが困難になる。さらに、多孔性が増大し、それによって励起光での効率的な照射がより困難となり、材料の機械的強度が損なわれる。しかし、マトリックス中に分散した蛍光材料の量が過度に少ない場合、十分な光変換を達成することが困難になる。
【0018】
QDの従来の蛍光体(変換蛍光体)との既知の組合せを含む上に述べた既知の光変換材料の多くの欠点の観点において、かかる欠点を有しない従来の蛍光体を有するかかる材料を含む半導体ナノ粒子材料および組成物についての必要性がある。特に、光の変換における高い効率および全域の改善された制御性をもたらす、低い、ないし無視できる再吸収を有し、低い固有吸収を有する半導体ナノ粒子および変換蛍光体の組み合わせについての必要性がある。
【0019】
したがって、低い再吸収および固有の吸収によって区別され、したがってLEDのエネルギー効率を高める半導体ナノ粒子に基づく利用可能な光変換材料を有することが、望ましい。さらに、従来の蛍光体との改善された混和性により区別され、したがってLED製造中の分離効果のために生じる上に記載した欠点(例えば低下したエネルギー効率および色再現の不十分な制御)が回避される、半導体ナノ粒子に基づく利用可能な光変換材料を有することが、望ましい。
【発明の概要】
【0020】
発明の目的
本発明の目的は、したがって、従来技術からの上記の欠点を有さない半導体ナノ粒子をベースとする光変換材料を提供することにある。特に、本発明の目的は、混合中の分離効果に起因する損失が回避されるので、従来の蛍光体との改善された混和性を有し、結果としてLEDのより効率的な製造を容易にする半導体ナノ粒子に基づく光変換材料を提供することにある。
【0021】
本発明のさらなる目的は、緑色スペクトル領域において低い再吸収を示し、したがって低下した二重変換のためにLEDの向上した効率およびLEDスペクトルの改善された予測可能性を可能にする半導体ナノ粒子に基づく光変換材料の提供である。さらに、本発明の目的は、LEDの製造中に容易な加工性によって区別され、LED製造者がLEDの製造のための既存の設備および機械を使用することを可能にする、半導体ナノ粒子に基づく光変換材料を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の目的は、フィルムの形態にあるか、または活性化された蛍光体において存在する従来の半導体ナノ粒子と比較してLED発光の改善され、より標的化された設定を可能にし、より柔軟な使用を可能にする、半導体ナノ粒子に基づく光変換材料を提供することにある。
【0023】
本発明のさらなる目的は、LEDの増加した輝度を可能にし、さらに狭帯域放射によって区別される半導体ナノ粒子に基づく光変換材料を提供することにあり、長波スペクトル域におけるエネルギー損失が回避され、ディスプレイにおける改善された全域網羅が促進されることを意味する。さらなる目的は、そのために、本発明による光変換材料を、蛍光体の生産において使用する既存のコーティング方法を用いてコーティングすることが可能であることであり、ここでこのタイプの追加的なバリア層は、不必要である。
【0024】
発明の説明
驚くべきことに、上記の目的が半導体ナノ粒子を光変換材料を得るために活性化されていない結晶性材料の表面に適用した場合に達成されることが、見出された。さらに、驚くべきことに、表面上に半導体ナノ粒子を有する活性化されていない結晶性材料が従来の蛍光体と同様の粒子サイズおよび密度分布を有することが、見出されている。この結果、このタイプの光変換材料の従来の蛍光体との改善された混和性がもたらされ、改善された性能データ、例えばエネルギー効率、輝度および安定性によって区別されるLEDのより効率的な製造が可能になる。
【0025】
上に述べた目的は、したがって、半導体ナノ粒子および活性化されていない結晶性材料を含む光変換材料によって達成され、ここで半導体ナノ粒子は、活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する。
【0026】
本発明の態様は、1以上のタイプの活性化されていない結晶性材料および1以上のタイプの半導体ナノ粒子を含む光変換材料に関する。得られる光変換材料は、緩い材料、粉末材料、厚い、もしくは薄い層材料またはフィルムの形態における自己支持材料の形態にあり得る。それはさらに、キャスティング材料中に包埋されていてもよい。光変換材料は、添加材料、例えば配位子および/またはコーティング材料を含んでもよい。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、半導体ナノ粒子が、それらが活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する場合、改善された物理的特性を有し、その結果、それらが、照明適用における従来の蛍光体との組み合わせのためにより適していることを見出した。特に、本発明者らは、本発明による光変換材料を光源において使用した結果、半導体ナノ粒子の再吸収効果および自己吸収効果がより少なくなり、それによって制御された色設定および高い効率が可能になることを確立した。さらに、本発明による光変換材料によって、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および関連する所望されない結果が抑制される。半導体ナノ粒子は、従来の蛍光物質の発光の極めて低い光ルミネセンス自己吸収および極めて低い吸収を有し、したがって、特に、光学的に緻密な層において従来の蛍光物質よりもエネルギー効率が高い。本発明の光変換材料は、したがって低い自己吸収および低い再吸収によって区別される。
【0028】
本発明はさらに、本発明による1種以上の光変換材料を含む光変換混合物を提供する。
本発明による光変換材料および本発明による光変換混合物によって、紫外および/または青色光の、より長い波長を有する光、例えば緑色光または赤色光への部分的な、または完全な変換が可能になる。
【0029】
さらに、本発明は、少なくとも1つの一次光源および本発明による少なくとも1種の光変換材料または本発明による少なくとも1種の光変換混合物を含む光源を提供する。
本発明の光源を、照明ユニットにおいて用いることができる。
【0030】
加えて、本発明は、本発明による光源の製造方法であって、本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を一次光源またはフィルムの形態における支持体材料に、スピンコーティング、スプレーコーティングによって、または積層体としてのフィルムの形態において適用する、前記方法を提供する。
本発明の好ましい態様を、従属請求項に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の説明
図1図1:例1〜4から製造した光変換材料の吸収スペクトル。
図2図2:例1〜4から製造した光変換材料の発光の相対的なスペクトルエネルギー分布。
図3図3:発光スペクトルLED1:青色LED(λmax=450nm)中のYAl12上に緑色QD(λmax=543nm)と組み合わせたSrSiO上の赤色QD(λmax=635nm)、色座標x〜0.31およびy〜0.31;標準カラーフィルターでのNTSCは、100%である。
図4図4:発光スペクトルLED2:青色LED(λmax=450nm)中の緑色ケイ酸塩蛍光体(λmax=520nm)と組み合わせたSrSiO上の赤色QD(λmax=635nm)、色座標x〜0.31およびy〜0.31;標準カラーフィルターでのNTSCは、98%である。
図5図5:発光スペクトルLED3:緑色LuAl12:Ce(λmax=540nm、CRI 85、点線)との混合物中の、および黄色YAl12:Ce(λmax=560nm、CRI 80、実線)との混合物中のYAl12上の赤色QD(λmax=635nm)。
【0032】
定義
本出願において使用する用語「光変換材料」は、半導体ナノ粒子の活性化されていない結晶性材料との組み合わせを示し、ここで半導体ナノ粒子は、活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する。本発明の光変換材料は、半導体ナノ粒子の1つ以上のタイプおよび/または活性化されていない結晶性材料の1つ以上のタイプを含んでもよく、ここで半導体ナノ粒子は、活性化されていない結晶性材料の表面または活性化されていない結晶性材料上に位置する。
【0033】
本出願において使用する用語「活性化されていない結晶性材料」は、結晶性であり、活性化剤、すなわち光変換中心を有さない粒子形態における無機物質を示す。活性化されていない結晶性材料は、したがって、それ自体発光性でも蛍光性でもない。加えて、それは、可視領域において特定の固有の吸収を有さず、したがって無色である。さらに、活性化されていない結晶性材料は、透明である。活性化されていない結晶性材料は、半導体ナノ粒子のための支持材料としての役割を果たす。活性化されていない結晶性材料の色の欠如および透明性のために、一次光源によって、別の蛍光体または別の光変換材料によって発せられた光は、障害されておらず、損失のない材料を通過することができ、それによって、本発明による光変換材料のLEDにおける使用の効率が向上する。
【0034】
本出願において使用する、ここで同義語として使用する用語「蛍光体」または「変換蛍光体」は、1つ以上の発光中心を有する粒子形態における蛍光無機材料を示す。発光中心は、活性化剤、通常希土類金属元素の原子もしくはイオン、例えばLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu、ならびに/または遷移金属元素の原子もしくはイオン、例えばCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、AuおよびZn、ならびに/または主族金属元素の原子もしくはイオン、例えばNa、Tl、Sn、Pb、SbおよびBiによって形成される。
【0035】
蛍光体または変換蛍光体の例には、ガーネットに基づく蛍光体、ケイ酸塩に基づく、オルトケイ酸塩に基づく、チオガレートに基づく、硫化物に基づく、および窒化物に基づく蛍光体が含まれる。本発明の意味における蛍光材料は、量子限界効果を有さない。このタイプの非量子制限蛍光体材料は、二酸化ケイ素コーティングを有するかまたは有さない蛍光体粒子であり得る。本出願の意味における蛍光体または変換蛍光体は、電磁スペクトルの特定の波長範囲、好ましくは青色またはUVスペクトル範囲における放射線を吸収し、電磁スペクトルの別の波長範囲、好ましくは紫色、青色、緑色、黄色、オレンジ色または赤色スペクトル範囲における可視光を発光する材料を意味するものと解釈される。
【0036】
用語「放射線誘発発光効率」もまた、これに関連して理解されるべきであり、すなわち変換蛍光体は、特定の波長範囲における放射線を吸収し、別の波長範囲における放射線を特定の効率で発する。用語「発光波長の変化」は、変換蛍光体が光を、別の、または同様の変換蛍光体と比較して異なる波長で発する、すなわちより短い、またはより長い波長の方向に変化したことを意味するものと解釈される。
【0037】
本出願における用語「半導体ナノ粒子」(量子材料)は、半導体材料からなるナノ粒子を示す。半導体ナノ粒子は、サブミクロンサイズにおける少なくとも1つの寸法を有し、いくつかの態様において100nmより小さく、いくつかの他の態様において、最大寸法(長さ)として1ミクロンより小さいサイズを有する、あらゆる所望の分離した単位である。いくつかの他の態様において、寸法は、400nmより小さい。半導体ナノ粒子は、あらゆる所望の対称または非対称の幾何学的形状を有することができ、可能な形状の非限定的な例は、細長い、円形、楕円形、ピラミッド状などである。
【0038】
半導体ナノ粒子の特定の例は、細長いナノ粒子であり、それはまた、ナノロッドと称され、半導体材料製である。使用することができるさらなる半導体ナノロッドは、金属または金属合金領域をそれぞれのナノロッドの一端または両端上に有するものである。かかる細長い半導体/金属ナノ粒子およびその製造の例は、WO 2005/075339に記載されており、その開示内容を、参照により本明細書中に組み込む。他の可能な半導体/金属ナノ粒子は、WO 2006/134599に示されており、その開示内容を、参照により本明細書中に組み込む。
【0039】
さらに、コア/シェル構造またはコア/マルチシェル構造における半導体ナノ粒子が、知られている。これらは、1つのタイプの材料を含む「コア」が別の材料を含む「シェル」で覆われているヘテロ構造によって特徴づけられる個別の半導体ナノ粒子である。いくつかの場合において、シェルをコア上で成長させ、それは「シードコア」としての役割を果たす。コア/シェルナノ粒子は、次にまた「播種された」ナノ粒子と称される。表現「シードコア」または「コア」は、ヘテロ構造中に存在する最も内側の半導体材料に関する。コア/シェル構造中の既知の半導体ナノ粒子は、例えばEP 2 528 989 B1に示されており、その内容を、それらの全体において参照により本記載中に組み込む。
【0040】
したがって、例えば、点状の半導体ナノ粒子が知られており、ここで球状のシェルは、球形のコアの周囲に対称的に配置される(いわゆる量子ドット中の量子ドット)。さらに、ロッド形状の半導体ナノ粒子が知られており、ここで球状のコアは、細長いロッド形状のシェル内に非対称に配置されている(いわゆる量子ロッド中の量子ドット)。表現ナノロッドは、ロッド様形状を有するナノ結晶、すなわち結晶の第1の(長手方向の)軸に沿っての増大した成長によって形成され、一方他の2つの軸に沿った寸法は極めて小さく保持されるナノ結晶を示す。ナノロッドは、極めて小さい直径(典型的には10nmより小さい)および約6nm〜約500nmの範囲内にあり得る長さを有する。
【0041】
コアは、典型的には事実上球形の形状を有する。しかし、異なる形状、例えば擬似ピラミッド、キューブ八面体、ロッドおよび他のものを有するコアをまた、使用することができる。典型的なコア直径は、約1nm〜約20nmの範囲内にある。コア/シェル構造中の対称的な点状の半導体ナノ粒子(量子ドット中の量子ドット)の場合において、全粒子直径dは、通常コア直径dよりもはるかに大きい。dと比較してのdの規模は、コア/シェル構造中の対称的な点状の半導体ナノ粒子の光吸収に影響を及ぼす。
【0042】
知られているように、コア/シェル構造中の半導体ナノ粒子は、より良好な光学的および化学的特性、例えばより高い量子収量(QY)およびより良好な耐久性を提供し得るさらなる外側シェルを含んでもよい。半導体ナノ粒子は、次にコア/マルチシェル構造を有する。コア/マルチシェル構造中のロッド形状の半導体ナノ粒子の場合において、第1のシェルの長さは、一般に10nm〜200nmおよび特に15nm〜160nmの範囲内にあり得る。他の2つの寸法(ロッド形状の半径方向軸)における第1のシェルの厚さは、1nm〜10nmの範囲内にあり得る。さらなるシェルの厚さは、一般に、0.3nm〜20nmおよび特に0.5nm〜10nmの範囲内にあり得る。
【0043】
他の態様は、例えばナノテトラポッドであり(US 8,062,421 B2に記載されているように)、それは、第1の材料および少なくとも1つのアーム、しかし典型的には4つのさらなるアームからなり、第2の材料からなるコアを含み、ここでコアおよびアームは、それらの結晶構造において異なる。このタイプのナノテトラポッドは、大きなStokes変化を有する。
【0044】
用語「コア材料」は、コア/シェル構造またはコア/マルチシェル構造において半導体ナノ粒子のコアを形成する材料を示す。材料は、II−VI、III−V、IV−VIもしくはI−III−VI族またはそれらの1つ以上のあらゆる所望の組合せからの半導体であり得る。例えば、コア材料を、
【化1】
それらの合金およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0045】
用語「シェル材料」は、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子のシェルまたはコア/マルチシェル構造を有する半導体ナノ粒子の個々のシェルの各々が構築される半導体材料に関する。材料は、II−VI、III−V、IV−VIもしくはI−III−VI族またはそれらの1つ以上のあらゆる所望の組合せからの半導体であり得る。例えば、シェル材料を、
【化2】
それらの合金およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0046】
用語「配位子」は、パッシベーション効果をもたらし、ファンデルワールス力を克服することによってナノ粒子の凝集または集成を防止する役割を果たす半導体ナノ粒子の外面コーティングに関する。一般に使用することができる配位子は、以下のものである:ホスフィンおよびホスフィンオキシド、例えばトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチルホスフィン(TOP)またはトリブチルホスフィン(TBP);ホスホン酸、例えばドデシルホスホン酸(DDPA)、トリデシルホスホン酸(TBPA)、オクタデシルホスホン酸(ODPA)またはヘキシルホスホン酸(HPA);アミン、例えばドデシルアミン(DDA)、テトラデシルアミン(TDA)、ヘキサデシルアミン(HDA)またはオクタデシルアミン(ODA);イミン、例えばポリエチレンイミン(PEI);チオール、例えばヘキサデカンチオールまたはヘキサンチオール;メルカプトカルボン酸、例えばメルカプトプロピオン酸またはメルカプトウンデカン酸;および他の酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸またはオレイン酸。
【0047】
用語「コーティング材料」は、コーティングを光変換材料の粒子の表面上に形成する材料を示す。用語「コーティング」を、ここで、別の材料上に設けられ、他の材料の外面または溶媒アクセス可能表面を部分的に、または完全に覆う材料の1つ以上の層を記載するために使用する。使用される言葉から、光変換材料の各々の個々の一次粒子に適用したコーティングの結果、同一のコーティング材料中に均一なマトリックスの形態において一緒に存在するか、または含まれる多数の粒子の代わりに、互いに分離した多数の異なる被覆された一次粒子の生成がもたらされることは、言うまでもない。光変換材料の一次粒子は、典型的には、複数の半導体ナノ粒子を含む。
【0048】
コーティングの材料(コーティング材料)は、障壁としてのコーティングが尚、外部の物理的影響またはおそらくは有害な物質、例えば酸素、水分および/またはフリーラジカルの通過に対する適切な保護を提供する限り、被覆した材料の内部構造中に少なくとも部分的に浸透し得る。これにより、光変換材料の安定性が向上し、その結果、改善された耐久性および寿命がもたらされる。さらに、コーティング材料は、いくつかの態様において、光変換材料に、追加的な機能性、例えばポリマーまたはキャスティング材料における光変換材料の熱に対する低下した感受性、低下した光屈折または改善された接着を提供する。さらに、光変換材料の粒子の表面上の凹凸を、1つ以上のコーティング材料の適用によって平滑化することができる。このタイプの表面平滑化によって、光変換材料の良好な加工性が可能になり、材料の表面での発せられた光の所望されない光散乱効果が低減され、その結果向上した効率がもたらされる。
【0049】
用語「キャスティング材料」は、本発明による光変換材料および本発明による光変換混合物を含む光透過性マトリックス材料に関する。光透過性マトリックス材料は、シリコーン、ポリマー(液体または半固体前駆体材料、例えばモノマーから形成される)、エポキシド、ガラスまたはシリコーンおよびエポキシドを含む複合であり得る。ポリマーの具体的であるが非限定的な例は、フッ素化ポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、ポリアクリル酸ポリマー、ポリアクリロニトリルポリマー、ポリアニリンポリマー、ポリベンゾフェノンポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)ポリマー、シリコーンポリマー、アルミニウムポリマー、ポリビスフェノポリマー、ポリブタジエンポリマー、ポリジメチルシロキサンポリマー、ポリエチレンポリマー、ポリイソブチレンポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリスチレンポリマー、ポリビニルポリマー、ポリビニルブチラールポリマーまたはパーフルオロシクロブチルポリマーを含む。
【0050】
シリコーンは、ゲル、例えばDow Corning(登録商標) OE-6450、エラストマー、例えばDow Corning(登録商標) OE-6520、Dow Corning(登録商標) OE-6550、Dow Corning(登録商標) OE-6630、および樹脂、例えばDow Corning(登録商標) OE-6635、Dow Corning(登録商標) OE-6665、NusilからのNusil LS-6143および他の製品、Momentive RTV615、Momentive RTV656ならびに他の製造者からの他の多くの製品を含んでもよい。さらに、キャスティング材料は、(ポリ)シラザン、例えば変性有機ポリシラザン(MOPS)またはペルヒドロポリシラザン(PHPS)であり得る。キャスティング材料に基づく光変換材料または光変換混合物の含量は、好ましくは3〜80重量%の範囲内である。
【0051】
本発明の好ましい態様
本発明は、半導体ナノ粒子および活性化されていない結晶性材料を含み、ここで半導体ナノ粒子が活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する光変換材料に関する。
【0052】
活性化されていない結晶性材料は、無色であり、それは、活性化剤を含まない、すなわち発光中心を有しない材料に起因する。このことから、活性化されていない材料は、それが特定の固有の吸収、ルミネセンスまたは蛍光を示さないので、無色かつ透明であることになる。その結果、一次光源によって、または別の蛍光体によって発せられた光は、障害されておらず、損失を有しない活性化されていない結晶性材料を通過し、表面上で半導体ナノ粒子に到達することができ、それによってそれは吸収され、より長い波長を有する光に変換され、次に発せられ、本発明による光変換材料のLEDにおける使用の際の効率の向上が引き起こされる。
【0053】
本発明において、活性化されていない結晶性材料は、活性化されていない結晶性材料の表面上に位置する半導体ナノ粒子のための支持材料としての役割を果たす。半導体ナノ粒子は、活性化されていない結晶性材料の表面上に無秩序に、または定義された配置において分布し得る。
【0054】
本発明における活性化されていない結晶性材料は、化学的組成に関して限定されない。本発明の意味における活性化されていない結晶性材料は、活性化剤の挿入のために生じる発光中心を有しないあらゆる結晶性無機化合物である。好適な活性化されていない結晶性材料は、例えば、活性化剤を有さず、およびしたがって発光中心を有さない無機蛍光体(活性化されていないマトリックス材料)のホスト格子材料(マトリックス材料)である。無機蛍光体のかかるマトリックス材料は、本発明の意味において活性化されておらず、それは、これらが特定の固有の吸収を示さず、したがって無色であるからである。それらは、したがって半導体ナノ粒子のための支持材料として適している。
【0055】
極めて多種多様の蛍光体の活性化されていないマトリックス材料は、本発明のために考慮され、例えば金属酸化物蛍光体のマトリックス材料、ケイ酸塩およびハロケイ酸塩蛍光体のマトリックス材料、リン酸塩およびハロリン酸塩蛍光体のマトリックス材料、ホウ酸塩およびホウケイ酸塩蛍光体のマトリックス材料、アルミン酸塩、ガリウム酸塩およびアルミノケイ酸塩蛍光体のマトリックス材料、モリブデン酸塩およびタングステン酸塩蛍光体のマトリックス材料、硫酸塩、硫化物、セレン化物およびテルル化物蛍光体のマトリックス材料、窒化物およびオキシ窒化物蛍光体のマトリックス材料ならびにサイアロン蛍光体のマトリックス材料である。さらに、活性化されていない複雑な金属−酸素化合物、活性化されていないハロゲン化合物およびドーパントを含まず、所要の結晶化度を有する活性化されていないオキシ化合物が、考慮される。
【0056】
本発明の好ましい態様において、活性化されていない結晶性材料は、活性化されていない結晶性金属酸化物、活性化されていない結晶性ケイ酸塩およびハロケイ酸塩、活性化されていない結晶性リン酸塩およびハロリン酸塩、活性化されていない結晶性ホウ酸塩およびホウケイ酸塩、活性化されていない結晶性アルミン酸塩、ガリウム酸塩およびアルミノケイ酸塩、活性化されていない結晶性モリブデン酸塩およびタングステン酸塩、活性化されていない結晶性硫酸塩、硫化物、セレン化物およびテルル化物、活性化されていない結晶性窒化物およびオキシ窒化物、活性化されていない結晶性サイアロンならびに他の活性化されていない結晶性材料、例えば活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物、活性化されていない結晶性ハロゲン化合物および活性化されていない結晶性オキシ化合物、例えば好ましくはオキシ硫化物またはオキシ塩化物から選択された無機蛍光体のマトリックス材料である。
【0057】
好ましい活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物は、活性化されていないヒ酸塩、活性化されていないゲルマン酸塩、活性化されていないハロゲルマン酸塩、活性化されていないインデート、活性化されていないランタネート、活性化されていないニオブ酸塩、活性化されていないスカンデート、活性化されていないスズ酸塩、活性化されていないタンタル酸塩、活性化されていないチタン酸塩、活性化されていないバナジウム酸塩、活性化されていないハロバナジウム酸塩、活性化されていないホスホバナジウム酸塩、活性化されていないイットリウム酸塩および活性化されていないジルコン酸塩である。
【0058】
本発明のより好ましい態様において、活性化されていない結晶性材料は、活性化されていない結晶性アルミン酸塩、活性化されていない結晶性ケイ酸塩もしくはハロケイ酸塩または活性化されていない結晶性チタン酸塩である。
【0059】
活性化されていない結晶性金属酸化物の例は、以下のものを含む:M2+O、M3+およびM4+、式中M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Ga、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにM4+は、Ti、Zr、Ge、Snおよび/またはThである。
活性化されていない結晶性金属酸化物の好ましい例は、以下のものである:Al、CaO、Ga、La、ThO、Y、ZnO、(Y,Gd)および(Zn,Cd)O。
【0060】
活性化されていない結晶質ケイ酸塩またはハロケイ酸塩の例は、以下のものを含む:
【化3】
式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0061】
活性化されていない結晶質ケイ酸塩およびハロケイ酸塩の好ましい例は、以下のものである:
【化4】
【0062】
活性化されていない結晶性リン酸塩またはハロリン酸塩の例は、以下のものを含む:
【化5】
式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;M4+は、Ti、Zr、Geおよび/またはSnであり;Xは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0063】
活性化されていない結晶性リン酸塩およびハロリン酸塩の好ましい例は、以下のものである:
【化6】
【0064】
活性化されていない結晶性ホウ酸塩、ハロホウ酸塩またはホウケイ酸塩の例は、以下のものを含む:
【化7】
式中、M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Ga、In、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0065】
活性化されていない結晶性ホウ酸塩およびホウケイ酸塩の好ましい例は、以下のものである:
【化8】
【0066】
活性化されていない結晶性アルミン酸塩、ガリウム酸塩またはアルミノケイ酸塩の例は、以下のものを含む:
【化9】

式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;ならびにXは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0067】
活性化されていない結晶性アルミン酸塩、ガリウム酸塩およびアルミノケイ酸塩の好ましい例は、以下のものである:
【化10】
【0068】
活性化されていない結晶性モリブデン酸塩またはタングステン酸塩の例は、以下のものを含む:
【化11】
式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;Xは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0069】
活性化されていない結晶性モリブデン酸塩およびタングステン酸塩の好ましい例は、以下のものである:
【化12】
【0070】
活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物の例は、以下のものを含む:
【化13】
式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、La、Biならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;M4+は、Ti、Zr、Geおよび/またはSnであり;Xは、1以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0071】
活性化されていない結晶性複合金属−酸素化合物の好ましい例は、以下のものである:
【化14】
【0072】
活性化されていない結晶性硫酸塩、硫化物、セレン化物またはテルル化物の例は、以下のものを含む:
【化15】
式中、M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属である。
【0073】
活性化されていない結晶性硫酸塩、硫化物、セレン化物またはテルル化物の好ましい例は、以下のものである:
【化16】
【0074】
活性化されていない結晶性ハロゲンまたはオキシ化合物の例は、以下のものを含む:
【化17】
式中、Mは、1種以上のアルカリ金属、好ましくはLi、Naおよび/またはKであり;M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属であり;Xは、1種以上のハロゲン、好ましくはF、Cl、Brおよび/またはIである。
【0075】
活性化されていない結晶性ハロゲン化合物の好ましい例は、以下のものである:
【化18】
【0076】
活性化されていない結晶性オキシ化合物の好ましい例は、以下のもの:
【化19】
から選択されたオキシ硫化物およびオキシ塩化物である。
【0077】
活性化されていない結晶性窒化物、オキシ窒化物またはサイアロンの例は、以下のものを含む:M3+N、M2+Si、M2+Si、M3+Si11、M2+AlSiN、α−サイアロンおよびβ−サイアロン、式中M2+は、Zn、Fe、Co、Ni、Cd、Cuならびに/または1種以上のアルカリ土類金属、好ましくはBe、Mg、Ca、Srおよび/もしくはBaであり;M3+は、Al、Ga、Sc、Y、Laならびに/またはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択された1種以上の希土類金属である。
【0078】
活性化されていない結晶性窒化物およびオキシ窒化物の好ましい例は、以下のものである:
【化20】
好ましい活性化されていない結晶性サイアロンは、以下のものである:α−サイアロンおよびβ−サイアロン。
活性化されていない結晶性材料の前記例は、単に例示のための役割を果たし、いかなる方法においても本発明の保護の程度および範囲に関して限定的であると見なすべきではない。
【0079】
本発明の光変換材料において用いることができる半導体ナノ粒子は、それらを他の(より短い)波長範囲を有する光励起放射線で照射した際にある波長を有する光を発することが可能であるサブミクロンサイズにおける半導体材料である。半導体ナノ粒子は、しばしばまた量子材料と称される。量子材料によって発せられる光は、極めて狭い周波数範囲によって区別される(単色光)。
【0080】
本発明の好ましい態様において、半導体ナノ粒子は、合金の形態における、またはコア/シェル構造もしくは少なくとも2つのシェルを有するコア/マルチシェル構造における少なくとも2種の異なる半導体材料からなり、ここでコアは、半導体材料または少なくとも2種の異なる半導体材料の合金のいずれかを含み、シェル(単数または複数)は、独立して半導体材料または少なくとも2種の異なる半導体材料の合金を含み、ここで濃度勾配は、任意にコアおよび/もしくはシェル(単数もしくは複数)内に、ならびに/またはコアおよび/もしくはシェル(単数もしくは複数)の間に存在し得る。より好ましい態様において、半導体材料あるいはコアおよび隣接するシェル中の、ならびに/または隣接するシェル中の少なくとも2種の異なる半導体材料の合金は、異なる。
【0081】
既に上記したように、本発明の目的に適した半導体ナノ粒子を、半導体材料から製造する。本発明に適した半導体ナノ粒子の可能な材料組成は、WO 2010/095140 A3およびWO 2011/092646 A2に記載されており、その内容を、参照により本出願中に組み込む。半導体材料を、好ましくは、II−VI族半導体、III−V族半導体、IV−VI族半導体、I−III−VI族半導体から、ならびにこれらの半導体の合金および/または組み合わせから選択し、ここで半導体材料に、任意に、1種以上の遷移金属、例えばMnおよび/またはCuをドープさせてもよい(M. J. Anc, N. L. Pickett et al., ECS Journal of Solid State Science and Technology, 2013, 2(2), R3071-R3082を参照)。
【0082】
II−VI族半導体材料の例は、以下のものである:CdSe、CdS、CdTe、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdZnSeおよびそれらの任意の所望の組み合わせ。
III−V族半導体材料の例は、以下のものである:InAs、InP、InN、GaN、InSb、InAsP、InGaAs、GaAs、GaP、GaSb、AlP、AlN、AlAs、AlSb、CdSeTe、ZnCdSeおよびそれらの任意の所望の組み合わせ。
【0083】
IV−VI族半導体材料の例は、以下のものである:PbSe、PbTe、PbS、PbSnTe、TlSnTeおよびそれらの任意の所望の組み合わせ。
I−III−VI族半導体材料の例は、以下のものである:CuGaS、CuGaSe、CuInS、CuInSe、Cu(InGa)S、AgInS、AgInSeおよびそれらの任意の所望の組み合わせ。
【0084】
半導体ナノ粒子のための半導体材料の前記例は、単に例示のための役割を果たし、いかなる方法においても本発明の保護の程度および範囲に関して限定的であると見なすべきではない。前記半導体材料を、合金として、またはコア/シェル構造における、もしくはコア/マルチシェル構造におけるコアもしくはシェル材料として使用することができる。
【0085】
半導体ナノ粒子の外形および内形は、さらに限定されない。半導体ナノ粒子は、好ましくは、ナノドット、ナノロッド、ナノフレーク、ナノテトラポッド、ナノロッド中のナノドット、ナノロッド中のナノロッドおよび/またはナノフレーク中のナノドットの形態にある。
【0086】
ナノロッドの長さは、好ましくは8〜500nmおよびより好ましくは10〜160nmである。ナノロッドの全直径は、好ましくは1〜20nmおよびより好ましくは1〜10nmである。典型的なナノロッドは、好ましくは2より大きいかまたはそれに等しい、およびより好ましくは3より大きいかまたはそれに等しい側比(長さ対直径)を有する。
【0087】
より好ましい態様において、半導体ナノ粒子は、大きなStokesシフトを有し、大きなナノドット、ナノロッド中のナノドット、ナノロッド中のナノロッドおよび/またはナノテトラポッドの形態にある。
【0088】
Stokesシフトは、吸収と発光との間の光(電磁放射)の波長または周波数におけるシフトを記載する。Stokesシフトは、入射する光子と出射する光子との間のエネルギーにおける差異である。
ΔE(光子)=E(in)−E(out)
【0089】
入射光によって蛍光を発する物質の場合において、再び発せられた光は、一般的により長い波長の範囲に移動し、それは、赤色シフトと称される(Stokes規則)。
【0090】
本発明の意味において大きなStokesシフトを有する半導体ナノ粒子は、以下のものである:
(A)発光極大が580〜680nmであり、以下の条件(I)を満たす半導体ナノ粒子:
(I)ARred1=吸収455nm/最大吸収580〜680nm>3.5:1、好ましくは>7:1、
ここでARred1は、455nmでの吸収(吸収455nm)と、580〜680nmの波長範囲内での最大吸収(最大吸収580−680nm)との間の比を示す。
【0091】
(B)発光極大が580〜680nmであり、以下の条件(II)を満たす半導体ナノ粒子:
(II)ARred2=吸収405nm/最大吸収580〜680nm>6:1、好ましくは>10:1、
ここでARred2は、405nmでの吸収(吸収405nm)と580〜680nmの波長範囲における最大吸収(最大吸収580−680nm)との間の比を示す。
【0092】
(C)発光極大が510〜580nmであり、以下の条件(III)を満たす半導体ナノ粒子:
(III)ARgreen1=吸収455nm/最大吸収510−580nm>2.5:1、好ましくは>6:1、
ここでARgreen1は、455nmでの吸収(吸収455nm)と510〜580nmの波長範囲における最大吸収(最大吸収510〜580nm)との間の比を示す。
【0093】
(D)発光極大が510〜580nmであり、以下の条件(IV)を満たす半導体ナノ粒子:
(IV)ARgreen2=吸収405nm/最大吸収510−580nm>3.5:1、好ましくは>7:1、
ここでARgreen2は、405nmでの吸収(吸収405nm)と510〜580nmの波長範囲における最大吸収(最大吸収510〜580nm)との間の比を示す。
【0094】
励起放射に応答しての半導体ナノ粒子の発せられた光(発光色)の波長を、ナノ粒子の形状、サイズおよび/または材料組成の調整によって好適な方法において選択することができる。発光色に関するこの柔軟性によって、本発明による光変換材料の色の大きな変化が可能になる。赤色光の発光を、例えば、CdSeナノドット、CdSeナノロッド、CdSナノロッド中のCdSeナノドット、CdSナノロッド中のZnSeナノドット、CdSe/ZnSナノロッド、InPナノドット、InPナノロッド、CdSe/CdSナノロッド、CdSナノロッド中のZnSeナノドットおよびZnSe/CdSナノロッドによって達成することができる。
【0095】
緑色光の発光を、例えばCdSeナノドット、CdSeナノロッド、CdSe/CdSナノロッドおよびCdSe/ZnSナノロッドによって達成することができる。青色光の発光を、例えば、ZnSe、ZnS、ZnSe/ZnSおよび/またはCdSに基づくコア/シェルナノドットまたはコア/シェルナノロッドによって達成することができる。特定の半導体ナノ粒子と特定の発光色との間のこの例示的な割り当ては、決定的ではなく、単に例示のための役割を果たすことを意図する。当業者は、特定の材料依存性限界内の異なる発光色を半導体ナノ粒子のサイズの調整によって達成することができることを認識している。
【0096】
さらなる好ましい半導体ナノ粒子は、CdSe/CdS、CdSeS/CdS、ZnSe/CdS、ZnCdSe/CdS、CdSe/CdZnS、CdTe/CdS、InP/ZnSe、InP/CdS、InP/ZnSおよびCuInS/ZnSから選択された材料を有するコア/シェル構造を有するナノロッド;ならびにCdSe/CdS/ZnS、CdSe/CdZnS/ZnS、ZnSe/CdS/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/CdS/ZnSおよびInP/CdZnS/ZnSから選択されたコア/マルチシェル構造を有するナノロッドである。
【0097】
好ましい態様において、半導体ナノ粒子を、上記のように活性化されていない結晶性材料の表面に適用し、したがって半導体ナノ粒子は、活性化されていない結晶性材料に基づいて0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜2重量%の割合で存在する。
【0098】
好ましい態様において、半導体ナノ粒子の表面を、1つ以上の配位子でコーティングする。配位子は、それらが半導体ナノ粒子の表面コーティングに適している限り、いかなる特定の制限にも付されない。好適な配位子は、例えば、ホスフィンおよびホスフィンオキシド、例えばトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチルホスフィン(TOP)またはトリブチルホスフィン(TBP);ホスホン酸、例えばドデシルホスホン酸(DDPA)、トリデシルホスホン酸(TBPA)、オクタデシルホスホン酸(ODPA)またはヘキシルホスホン酸(HPA);アミン、例えばドデシルアミン(DDA)、テトラデシルアミン(TDA)、ヘキサデシルアミン(HDA)またはオクタデシルアミン(ODA);チオール、例えばヘキサデカンチオールまたはヘキサンチオール;メルカプトカルボン酸、例えばメルカプトプロピオン酸またはメルカプトウンデカン酸;ならびに他の酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸またはオレイン酸である。上に述べた例が限定的であるとみなされるべきであることは、意図しない。
【0099】
本発明の光変換材料の表面を1種以上のコーティング材料でコーティングすることが、さらに好ましい。コーティング材料は、それらが光変換材料の表面をコーティングするのに適している限り、いかなる特定の制限にも付されない。好適な材料は、例えば、また蛍光体のコーティングに使用するもの、例えば無機または有機コーティング材料である。無機コーティング材料は、誘電絶縁体、金属酸化物(透明な伝導性酸化物を含む)、金属窒化物または二酸化ケイ素をベースとする材料(例えばガラス)であり得る。
【0100】
金属酸化物を使用する場合、金属酸化物は、単一の金属酸化物(すなわち金属イオン、例えばAlの単一のタイプと組み合わせた酸化物イオン)または混合金属酸化物(すなわち2種以上のタイプの金属イオン、例えばSrTiOと組み合わせた酸化物イオン、もしくはドープした金属酸化物、例えばドープした透明な伝導性酸化物(TCO)、例えばAlドープZnO、GaドープZnOなど)であり得る。金属イオンまたは(混合)金属酸化物の金属イオンを、周期表の任意の好適な族、例えば2、13、14もしくは15族から選択することができるか、またはそれらは、金属またはランタニド金属であり得る。
【0101】
特定の金属酸化物には、以下のものが含まれるが、それらに限定されない:Al、ZnO、HfO、SiO、ZrOおよびTiO、それらの組合せ、合金および/もしくはドープされた種を含む;ならびに/またはTCO、例えばAlドープZnO、GaドープZnOおよびIn。無機コーティングは、任意の好適な形態における二酸化ケイ素を含む。いくつかの態様において、無機コーティング材料の1種以上は、Al、ZnO、TiO、Inからなる群から選択された金属酸化物またはそれらの組み合わせおよび/もしくはドープした種である。特定の態様において、金属酸化物は、TCO、例えばAlドープZnOまたはGaドープZnOである。
【0102】
特定の金属窒化物は、以下のものを含むが、これらに限定されない:AlN、BN、Si、それらの組合せ、合金および/またはドープされた種を含む。
【0103】
代替的に、および/または追加的に、有機コーティングを上述の無機コーティングに適用することがまた、可能である。有機コーティングは、同様に、光変換材料の安定性および耐久性ならびに分散性に対して有利な効果を有し得る。好適な有機材料は、(ポリ)シラザン、例えば好ましくは変性有機ポリシラザン(MOPS)またはペルヒドロポリシラザン(PHPS)、およびそれらの混合物、有機シランおよびまたポリマーまでの他の有機材料である。
【0104】
従来技術には、光変換材料または蛍光体へのコーティング材料の適用のための多数のプロセスが開示されている。したがって、例えば、内容を参照により本出願中に組み込むWO 2014/140936には、プロセス、例えば化学的気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)(マグネトロンスパッタリングを含む)、Vitex技術、原子層堆積(ALD)および分子層堆積(MLD)が記載されている。さらに、コーティングを、流動床プロセスによって行うことができる。さらなるコーティング方法は、JP 04-304290、WO 91/10715、WO 99/27033、US 2007/0298250、WO 2009/065480およびWO 2010/075908に記載されており、その内容を、参照により本明細書中に組み込む。
【0105】
多層コーティングを構築するために、異なるコーティング材料を、連続的に適用することができる。多数のコーティング材料、例えば金属酸化物、例えばAl、SiO、ZnO、TiOおよびZrO;金属、例えば、PtおよびPd;ならびにポリマー、例えばポリ(アミド)およびポリ(イミド)を、本発明による光変換材料のコーティングのために使用することができる。Alは、最良に調査されているコーティング材料の1種であり、それを、原子層堆積(ALD)プロセスの補助で適用する。Alを、基板に、トリメチルアルミニウムおよび水蒸気の対応する金属および酸素源としての交互の使用ならびにALDチャンバをこれらの適用の各々の間に不活性キャリアガス、例えばNまたはArでフラッシュすることによって適用することができる。
【0106】
本発明はさらに、本発明による1種以上の光変換材料を含む光変換混合物に関する。光変換混合物が1種以上の変換蛍光体を本発明による光変換材料の他に含むことがまた、可能である。光変換材料および変換蛍光体が互いに相補的である異なる波長の光を発することが、好ましい。本発明による光変換材料が赤色発光材料である場合、これを、好ましくは、シアン発光変換蛍光体と組み合わせて、または青色および緑色または黄色発光変換蛍光体と組み合わせて使用する。本発明による光変換材料が緑色発光材料である場合、これを、好ましくは、マゼンタ発光変換蛍光体と組み合わせて、または赤色および青色発光変換蛍光体と組み合わせて使用する。したがって、本発明の光変換材料を1種以上のさらなる変換蛍光体と組み合わせて本発明による光変換混合物中で使用し、したがって白色光が好ましくは発せられることが、好ましい場合がある。
【0107】
光変換混合物は、好ましくは、本発明による光変換材料を、混合物の総重量に基づいて1〜90重量%の比率において含む。
【0108】
本出願の文脈において、紫色光は、発光極大が420nmより低い光を示し、青色光は、発光極大が420nm〜469nmである光を示し、シアン光は、発光極大が470nm〜505nmである光を示し、緑色光は、発光極大が506〜545nmである光を示し、黄色光は、発光極大が546〜569nmである光を示し、オレンジ色光は、発光極大が570〜600nmである光を示し、赤色光は、発光極大が601〜670nmである光を示す。本発明による光変換材料は、好ましくは、赤色または緑色発光変換材料である。マゼンタは、赤色および青色についての最大強度の加法混色によって発生し、RGB全域において小数値(255,0,255 )または16進値(FF00FF)に相当する。
【0109】
本発明による光変換材料と一緒に使用し、本発明による光変換混合物を形成することができる変換蛍光体は、いかなる特定の限定にも付されない。したがって、あらゆる可能な変換蛍光体を使用することが、一般に可能である。以下のものが、例えばここで好適である:
【化21】
【0110】
【化22】
【0111】
【化23】
【0112】
【化24】
【0113】
本発明による光変換材料または光変換混合物を、紫外および/または青色光のより長い波長を有する光、例えば緑色または赤色光への部分的な、または完全な変換のために使用することができる。本発明は、したがってさらに、光変換材料または光変換混合物の光源における使用に関する。光源は、特に好ましくはLED、特に蛍光体変換LED、略してpc−LEDである。光変換材料を少なくとも1種のさらなる光変換材料および/または1種以上の変換蛍光体と混合し、およびしたがって、特に白色光または特定の色点を有する光を有する光を発する光変換混合物を形成することが、ここで特に好ましい(カラーオンデマンド原理)。「カラーオンデマンド原理」は、1種以上の発光材料および/または変換蛍光体を用いてpc−LEDによって特定の色点の光の発生を意味するものと解釈される。
【0114】
本発明は、したがってさらに、一次光源および本発明による少なくとも1種の光変換材料または本発明による少なくとも1種の光変換混合物を含有する光源に関する。ここでまた、光源が、本発明による光変換材料に加えてまた本発明によるさらなる光変換材料および/または変換蛍光体を含有し、したがって光源が好ましくは白色光または特定の色点を有する光を発することが、特に好ましい。
【0115】
本発明による光源は、好ましくは、一次光源および光変換材料または光変換混合物を含むpc−LEDである。光変換材料または光変換混合物は、好ましくは層の形態において形成し、ここで層は、複数の部分層を含んでもよく、ここで部分層の各々は、異なる光変換材料または異なる光変換混合物を含んでもよい。層は、したがって単一の光変換材料もしくは単一の光変換混合物または複数の部分層を含んでもよく、ここで各部分層は、次に異なる光変換材料または異なる光変換混合物を含む。層の厚さは、光変換材料または光変換混合物の粒子サイズおよび所要の光学的特徴に依存して数ミリメートル〜数ミクロンの範囲内、好ましくは2mm〜40μmの範囲内であり得る。
【0116】
LEDの発光スペクトルの変調についてのいくつかの態様において、単一の層または部分層を有する層を、一次光源上に形成してもよい。層または部分層を有する層は、一次光源上に直接配置されてもよく、または一次光源から空気、真空または充填材料によって分離されてもよい。充填材料(例えばシリコーンまたはエポキシ)は、断熱としての、および/または光学散乱層としての役割を果たすことができる。一次光源の発光スペクトルの変調は、広い色スペクトルを有する発光、例えば高い演色評価数(CRI)および所望の相関色温度(CCT)を有する「白色」光を発生させるための照明目的の役割を果たすことができる。
【0117】
広い色スペクトルを有する発光は、一次光源によって最初に発生した光の一部をより長い波長の光に変換することによって発生する。赤色の強度の増加は、より低いCCT(例えば2,700〜3,500 K)を有する「より暖かい」光を得るために重要であり、しかしまたスペクトルにおける、例えば青色から緑色への転移における特定の領域の「平滑化」によって、CRIが同様に改善され得る。LED照明の変調をまた、光学ディスプレイ目的のために使用することができる。
【0118】
本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を、キャスティング材料、例えばガラス、シリコーンもしくはエポキシ樹脂中に分散させるか、またはセラミック材料として形成してもよい。キャスティング材料は、本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を含む光透過性マトリックス材料である。いかなる方法においても限定的であると見なすべきではないキャスティング材料の好ましい例を、上に述べる。光変換材料または光変換混合物を、好ましくは、所望の光学的特性および適用の構造に依存して、キャスティング材料を基準として3〜80重量%の比率において使用する。
【0119】
好ましい態様において、本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を、一次光源上に直接配置する。
代替の好ましい態様において、本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を、一次光源から遠方の支持材料上に配置する(いわゆる遠隔蛍光原理)。
【0120】
本発明による光源の一次光源は、半導体チップ、ルミネセント光源、例えばZnO、いわゆるTCO(透明伝導性酸化物)、ZnSeまたはSiCベースの配置、有機発光層(OLED)またはプラズマもしくは放電源に基づく配置、最も好ましくは半導体チップであり得る。一次光源が半導体チップである場合、それは、好ましくは、従来技術から知られているようにルミネセント窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)である。このタイプの一次光源の可能な形態は、当業者に知られている。レーザーは、光源としてさらに適している。
【0121】
本発明による光変換材料または本発明による光変換混合物を、光源、特にpc−LEDにおいて使用するために、任意の所望の外形、例えば球状粒子、フレークおよび構造化材料およびセラミックスに変換することができる。これらの形状は、用語「成形体」の下に要約される。成形体は、したがって光変換成形体である。
【0122】
本発明はさらに、光源の製造方法であって、光変換材料または光変換混合物を一次光源または支持材料にフィルムの形態において、スピンコーティングもしくはスプレーコーティングによって、または積層体としてのフィルムの形態において適用する、前記方法に関する。
【0123】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1つの光源を含む照明ユニットに関する。照明ユニットの使用は、いかなる特定の制限にも付されない。したがって、照明ユニットを、例えば光学的ディスプレイデバイス、特に背面照射を有する液晶ディスプレイデバイス(LCディスプレイ)において使用することができる。本発明は、したがってまたこのタイプのディスプレイデバイスに関する。本発明による照明ユニットにおいて、光変換材料または光変換混合物と一次光源との間の光結合(特に半導体チップ)を、好ましくは光伝導配置またはデバイスによって達成する。
【0124】
これにより、一次光源を中央の位置に設置し、光変換材料または光変換混合物に、光伝導デバイス、例えば光伝導繊維によって光学的に結合することが可能になる。このようにして、光スクリーンを形成するように配置され得る1種以上の異なる光変換材料または混合物からなる、照明希望に整合したランプ、および一次光源に結合した光導波路を、達成することができる。これにより、強力な一次光源を電気的設置に好ましい位置で配置し、光導波路にあらゆる所望の位置でさらなる電気配線なしに、光導波路を敷設することによってのみ結合する光変換材料または混合物を含むランプを設置することが、可能になる。
【0125】
以下の例および図面は、本発明を例示することを意図する。しかし、それらを、いかなる方法においても限定的であると見なすべきではない。
【0126】

すべての発光スペクトルを、OceanOptics HR 4000分光計と組み合わせたUlbricht球において記録した。粉末スペクトルを記録するために使用する励起光源は、単色光分光器を備えたハロゲン冷光源である。試験したLEDを、Keithley SourceMeterによって動作させた(20mAで〜450nmのチップ波長を有する3528 LEDを、ここで示す実験のために使用した)。
粒度分布を、等張性食塩水中でBeckman Coulter Multisizer IIIを用いて記録した。>100,000個の粒子を、各場合において測定した。
【0127】
光変換材料の製造のための作業例
赤色:
例1:100gの白色の粉末状の活性化されていないアルミン酸塩(YAl12)を、500mlのフラスコ中で150mlのヘプタンに懸濁させる。33mlの赤色量子ロッド溶液(ヘプタン中のCdSe/CdSナノロッド3重量%、TOP、TOPOおよびODPAにより安定化した)を、懸濁液に加える。この懸濁液を、RTで真空なしで2時間混合する。溶媒を、ロータリーエバポレーター中で真空中で40℃の水浴温度で注意深く除去する。コーティングしたガーネット粉末を、一晩乾燥する(真空/25℃)。最後に、コーティングした系を、<64μmの粒度にふるい分けする。
【0128】
例2:15gの白色の粉末状の活性化されていないケイ酸塩(SrSiO)を、250mlのフラスコ中で100mlの水に懸濁させる。4.5mlの赤色量子ロッド溶液(水中の3重量%のCdSe/CdSナノロッド、PEIにより安定化した)を、懸濁液に加える。この懸濁液を、ロータリーエバポレーターにより60rpmでRTで真空なしで3時間混合する。より良好な均質化が、小さいAlビーズの添加により確実になる。溶媒を、ロータリーエバポレーター中で真空中で40℃の水浴温度で注意深く除去する。溶媒の完全な除去のために、コーティングしたケイ酸塩を、ロータリーエバポレーター中で真空中でRTでさらに約12時間放置する。最後に、コーティングした系を、<64μmの粒度にふるい分けする。
【0129】
例3:10gの白色の粉末状の活性化されていないチタン酸塩(MgTiO)を、100mlのフラスコ中で50mlのトルエンに懸濁させる。3mlの赤色量子ロッド溶液(トルエン中の3重量%のCdSe/CdSナノロッド、TOP、TOPOおよびODPAにより安定化した)を、懸濁液に加える。この懸濁液を、RTで真空なしで3時間撹拌する。コーティングしたチタン酸塩を、その後フリットを介して吸引しながら濾別し、完全に乾燥するためにRTで真空中で一晩放置する。最後に、コーティングした系を、<64μmの粒度にふるい分けする。
【0130】
緑色:
例4:15gの白色の粉末状の活性化されていないアルミン酸塩(YAl12)を、500mlのフラスコ中で80mlのヘプタンに懸濁させる。4.5mlの緑色量子ロッド溶液(ヘプタン中の3重量%のCdSe/CdSナノロッド、TOP、TOPOおよびODPAにより安定化した)を、懸濁液に加える。この懸濁液を、ロータリーエバポレーターにより60rpmでRTで真空なしで2時間混合する。より良好な均質化が、小さいAlビーズの添加により確実になる。溶媒を、ロータリーエバポレーター中で真空中で40℃の水浴温度で注意深く除去する。溶媒の完全な除去のために、コーティングしたガーネットを、RTで真空中で一晩乾燥する。最後に、コーティングした系を、<64μmの粒度にふるい分けする。
【0131】
製造した光変換材料の測定
得られたすべての光変換材料の相対的なスペクトルエネルギー分布を、光ファイバ分光器によって450nmの励起波長で記録した。さらに、種々の励起波長での吸収を、決定した。製造したすべての光変換材料の吸収スペクトルを、図1に示す。製造したすべての材料の相対的なスペクトルエネルギー分布(発光)を、図2に示す。
【0132】
LED評価
充填していないLEDを、光学的シリコーン(Dow Corning OE6550)で充填し、ここで正確な量の赤色および緑色粒子を、ディスペンサーを介して懸濁させる。シリコーン懸濁液を、二軸回転ミキサーによって製造し、その後真空中で脱気する。LEDを、その後乾燥キャビネット中で140℃で5時間固化させ、Ulbricht球によって光ファイバ分光計を使用して得られた発光に関して測定する。シリコーン中の粉末の、およびまた赤色、黄色または緑色の個々の成分の総量の変化によって、色三角中での事実上任意の色の位置を、達成することができる。
【0133】
シリコーンの代わりに、他の高度に透明な材料、例えばエポキシ樹脂をキャスティング組成物として使用することがまた、可能である。
LED1:赤色QD(λmax=635nm)、SrSiO上、緑色QDと組み合わせた(λmax=543nm)、YAl12上、青色LED(λmax=450nm)中、色座標X〜0.31およびy〜0.31;標準カラーフィルターを使用したNTSCは、100%である。図3は、LED1の発光スペクトルを示す。
【0134】
LED2:赤色QD(λmax=635nm)、SrSiO上、緑色ケイ酸塩蛍光体と組み合わせた(λmax=520nm)、青色LED中(λmax=450nm)、色座標X〜0.31およびy〜0.31;標準カラーフィルターを使用したNTSCは、98%である。
図4は、LED2の発光スペクトルを示す。
LED3:赤色QD(λmax=635nm)、緑色LuAl12:Ceとの混合物(λmax=540nm、CRI85、点線)における、および黄色YAl12:Ceとの混合物(λmax=560nm、CRI80、実線)におけるYAl12上。図5は、LED3の発光スペクトルを示す。
【0135】
本発明による光変換材料のさらなる有用な利点:
− 従来の450nmのLED、緑色蛍光体β−サイアロン535および赤色蛍光体KSiFにおける標準的なカラーフィルターでのNTSCは、94%に達するに過ぎない。
− LEDにおいて使用するすべての変換材料に対する同一の沈降挙動を、所要に応じて特別に調整することができ、LED製造プロセスにおける生産歩留まりを増加させることができる。
【0136】
− 緑色/黄色スペクトル域における再吸収がほとんどなく、したがって二重変換がより少なく、効率が向上し、かつLEDスペクトルの予測可能性がより良好である。
− 新たな製造装置がLED製造業者によって要求されないので、使用が単純である。
【0137】
− 使用者は、活性化された蛍光体上の従来のQDフィルムまたはQDと比較してLED発光を調整するより多くの機会を有する(柔軟な使用、使用者が、各色位置について異なる光変換器を使用しなくてよいため)。
【0138】
− LEDの増大した輝度、赤色の狭帯域放射によって、低い眼の感度を有する深い長波スペクトル域におけるいかなるエネルギーも無駄にならないため。
− 蛍光体のための既存のコーティング技術を、用いることができる;付加的なバリア膜は、必要ではない。
図1
図2
図3
図4
図5