【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、独立請求項の特徴を有する本発明によって解決される。本発明の有利な実施の形態は従属請求項に規定される。全ての請求項の文言が引用することにより本明細書の一部をなす。本発明は、独立請求項及び/又は従属請求項の全ての意味のある組合せ、特に言及する全ての組合せも包含する。
【0014】
この課題は、導電性層をウェットコーティング(=インク)によって作製するための組成物であって、
a)少なくとも1つの導電性リガンドがナノ構造の表面上に配置された少なくとも1種類の導電性又は半導電性ナノ構造と、
b)少なくとも1つの溶媒と、
を含む、組成物によって解決される。
【0015】
ナノ構造は無機ナノ構造であるのが好ましい。無機ナノ構造は金属、2つ以上の金属の混合物又は2つ以上の金属の合金を含む金属ナノ構造であり得る。金属は金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、インジウム又はロジウムから選択するのが好ましい。ナノ構造は導電性又は半導電性酸化物を含んでいてもよい。かかる酸化物(ドープされていてもよい)の例は、インジウム−酸化スズ(ITO)又はアンチモン−酸化スズ(ATO)である。II−VI族、III−V族若しくはIV族の半導体、又はかかる半導体の合金も可能である。例はCdS、CdSe、CdTe、InP、InAs、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InSb、Si、Ge、AlAs、PbSe又はPbTeである。
【0016】
金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、インジウム又はロジウム、それらの混合物又は合金を含む金属ナノ構造が好ましい。
【0017】
対象の構造はナノ構造である。このことは、これらが少なくとも1つの寸法、好ましくは少なくとも2つ又は全ての寸法において200nm未満の広がり(TEMを用いて測定される)を有する構造であることを意味する。粒子、特に球状粒子も可能である。ナノ構造は様々な寸法において異なる広がりを有していてもよい。例は、最長の寸法と他の2つの寸法の各々との比率がいずれも少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2であるナノロッドである。ナノロッドは適切に配置される場合に、同じ面積に対するナノ構造間界面の数が球状粒子を使用した場合よりも小さいという利点を有する。これによりかかる構造の伝導性が改善され得る。
【0018】
ナノ構造はナノロッド(NR)であるのが好ましい。ナノロッドは少なくとも1.5:1、特に少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1という長さ対直径のアスペクト比を有するのが好ましい。アスペクト比は好ましくは100:1未満、特に50:1未満である。
【0019】
ナノロッドは1μm未満、好ましくは500nm未満の長さを有するのが好ましい。直径はこの場合、好ましくは500nm未満、好ましくは100nm未満、特に50nm未満であり、他の寸法はいずれの場合にもアスペクト比に対応する。
【0020】
ナノロッドの長さは、それとは独立して好ましくは50nm超、特に100nm超である。
【0021】
少なくとも1つの導電性リガンドがナノ構造の表面上に配置される。
【0022】
リガンドはスキーム2に示す構造を有する。これは、ポリマー骨格がナノ構造にその共役π系を介して、又は導電性ポリマー骨格内の若しくはそれに直接近接した官能基を介して直接的に吸着する導電性ポリマーである。安定性の増大を確実にするために、ポリマーは少なくとも10個の結合位置を有するポリマー又はオリゴマー構造である。これらの結合位置によりナノ構造の表面への配位結合が可能となり、これらはそれに結合するのが好ましい。さらに、リガンドは共役π系に属しない少なくとも1つの側鎖を有することを特徴とする。側鎖(複数の場合もある)の好適な選択は、極性溶媒中のコロイド安定性を確実にする極性基及び非極性溶媒中のコロイド安定性を確実にする嵩高い非極性側鎖である。側鎖は、それが例えば好適な官能基を有する更なるポリマーとの更なる結合を形成するように選択してもよい。
【0023】
本発明の目的上、結合位置は少なくともナノ構造の表面への配位結合の形態である。これはO、N、Se又はS、特にS等のヘテロ原子によって生じるのが好ましい。金属表面の場合には硫黄が好ましい結合位置である。
【0024】
したがって、導電性リガンドは導電性ポリマーを含むのが好ましい。かかるポリマーは共役π系を骨格として有するポリマーである。
【0025】
かかる導電性ポリマーは例えば、ピロール、例えばポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)及びポリ(3,4−置換ピロール)、チオフェン、例えばポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチオナフテン、ポリフラン、ポリベンゾフラン、ポリカルバゾール、ポリセレノフェン、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリアニリン、ポリメトキシフェニレンをベースとしたポリマーである。ポリマーは、他のモノマーとのコポリマー又はブロックコポリマーであってもよい。
【0026】
好ましいポリマーはポリチオフェン、ポリ(N−置換ピロール)とは別のポリピロール、ポリフラン、ポリベンゾフラン、ポリベンゾチオフェン、ポリカルバゾール、好ましくはポリチオフェン、例えばポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−置換チオフェン)及びポリベンゾチオフェンである。これらのポリマーでは、モノマーのヘテロ原子がナノ構造の表面に対する結合位置を形成する。少なくとも10個の結合位置が存在する場合、ポリマー又はオリゴマーは少なくとも10個のモノマー単位を有する。少なくとも50個、特に少なくとも100個の結合位置を有するリガンドが好ましい。それとは独立して、リガンドは2000個以下、特に1500個以下の結合位置を有するのが好ましい。結合位置は、ポリマー及び/又はオリゴマーの1つのモノマーに対応するのが好ましい。
【0027】
リガンドが更なるモノマーを含む場合の更なるモノマーの例は例えば、スチレンスルホン酸又はポリスチレンスルホン酸である。
【0028】
チオフェンの例はエチレン−3,4−ジオキシチオフェン、2−(3−チエニル)エトキシ−4−ブチルスルホネート(例えばナトリウム塩)、3−ヘキシルチオフェン及び対応するポリチオフェン、ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)、ポリ(2−(3−チエニル)エトキシ−4−ブチルスルホネート)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)である。
【0029】
リガンドの側鎖は例えば、極性溶媒との相溶性を増大する少なくとも1つの極性基を有し得る。かかる基の例はアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン、チオール、エーテル基、チオエーテル基、硫酸基、スルホン酸基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、ホスホン酸基である。側鎖は好ましくは4個〜25個の炭素原子を含む脂肪族分岐又は非分岐炭素鎖であり、1つ以上の非隣接CH
2基がO、NR又はSによって置換されることが可能であり、ここでRは水素、又は1個〜10個の炭素原子を有する脂肪族ラジカルであり、少なくとも1つの極性基を構成要素として含む。
【0030】
リガンドは2つ以上の極性基を含んでいてもよい。リガンド1つ当たり少なくとも5つの極性基が好ましい。
【0031】
リガンド1つ当たり少なくとも1つの官能基が好ましい。リガンドが4〜10のpH範囲で正味電荷を有するような基が存在するのが好ましい。モノマー1つ当たり少なくとも1つの官能基が存在することも可能である。
【0032】
リガンドの側鎖は、非極性/疎水性溶媒との相溶性を増大する少なくとも1つの非極性基を有していてもよい。例は4個〜25個の炭素原子を有する脂肪族若しくは脂環式炭化水素鎖、及び/又は6個〜20個の炭素原子を有する芳香族基である。シラン構造等のヘテロ原子が存在することも可能である。
【0033】
かかる基の例はブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル非分岐基、又は同じ数の炭素原子を有する構造異性体等のアルキル基である。脂環式基の例はシクロヘキシル、シクロヘプチルである。芳香族基の例はフェニル、ナフチル、アントラシル、ペリル(peryl)である。側鎖はこれらの基を複数含んでいてもよい。
【0034】
リガンドは極性基を有する側鎖と非極性基を有する側鎖とを含んでいてもよい。複数の異なる極性基又は非極性基が存在することも可能である。
【0035】
側鎖は適切な官能基を有する更なる化合物、例えば更なるポリマーに結合するように選択してもよい。
【0036】
組成物は、リガンドに結合し、適切な側鎖を有する少なくとも1つの更なるポリマーを含んでいてもよい。
【0037】
これにより、例えばポリスチレン等の芳香族基を有するポリマーが導電性ポリマー又はオリゴマーのπ系に付着するようになり得る。異なる電荷を有するポリマーを使用することも可能である。このため、導電性リガンドが反対の電荷を有し得る場合に荷電ポリマーは導電性リガンドと相互作用することができる。これは一時的な場合であってもよい。
【0038】
この場合、この更なるオリゴマーは、特に溶媒中で溶解性を生じるために上記のような少なくとも1つの適切な側鎖を有する。
【0039】
リガンドとしての置換又は非置換チオフェンと、特に荷電した少なくとも1つの極性側基を有するポリスチレン、例えばスチレンスルホン酸(PSS)のポリマー又はオリゴマーとの組合せが好ましい。
【0040】
この場合、組成物はリガンドだけでなく、リガンドと相互作用し、それにより組成物中のリガンドの溶解性を改善する少なくとも1つの更なるポリマー又はオリゴマーも含む。リガンド及び少なくとも1つの更なるポリマーは、例えば5:1〜1:5又は2:1〜1:2、特に1.5:1〜1:1.5の範囲の様々な重量比で存在し得る。
【0041】
好ましい組合せは、ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)とである。
【0042】
リガンドは少なくとも5kDa、好ましくは1000kDa以下(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される)、好ましくは少なくとも10kDa〜500kDa、特に30kDa〜100kDaの平均分子量を有するポリマー又はオリゴマーであるのが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態では、組成物は少なくとも1つのマトリックスポリマーを含む。マトリックスポリマーは導電性又は非導電性ポリマーとすることができ、非導電性ポリマーが好ましい。導電性ポリマーは上記に規定している。
【0044】
マトリックスポリマーは組成物中に溶液として存在するのが好ましい。この目的で、好適な溶媒を選択することが必要であり得る。
【0045】
好ましいマトリックスポリマーは通常の可溶性ポリマー、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール若しくはポリビニルピロリドン、又はそれらの混合物である。
【0046】
ナノ構造の割合は、溶媒を含まない組成物をベースとして好ましくは少なくとも10重量%、特に少なくとも30重量%である。ナノ構造の割合は最大90重量%であり得る。好ましい割合は10重量%〜90重量%、特に20重量%〜80重量%、非常に特に好ましくは30重量%〜70重量%である。
【0047】
導電性リガンドとナノ構造との組合せはタイプI複合体とも称する。マトリックスポリマーが付加的に存在する場合、組合せは以下でタイプII複合体と称する。
【0048】
導電性リガンドの使用により、これまで必須であったリガンドの除去により生じる問題を回避することが可能となる。このため、好適な組成を有するインクからタイプII複合体を一プロセス工程で作製することが可能である。焼結工程は通常、マトリックスポリマーにも望ましくない形で影響を与えるが、本発明によるリガンドを使用する場合に焼結工程が必要でないことから、この問題は本発明により解決される。加えて、本発明によるリガンドの使用の結果として、上部構造の崩壊を引き起こし得る、嵩高いリガンドシェルの除去時に生じる先に形成された構造内の間隙のリスクがなくなる。
【0049】
好ましいタイプII組成物は、通常は100℃を超える温度での別個の焼結工程を必要としない。
【0050】
溶媒は、いずれの場合にも120℃未満の沸点を有する溶媒、又は該溶媒から構成される溶媒混合物から選択するのが好ましい。かかる溶媒により溶媒を低温、例えば60℃未満で迅速に除去することが可能となる。
【0051】
溶媒は好ましくは揮発性溶媒、特に室温で揮発性の溶媒である。
【0052】
かかる溶媒の例は水、アルコール、ケトン又はエーテル、更にはそれらの混合物である。更なる溶媒が存在していてもよい。
【0053】
更なる溶媒は例えばアルカン、芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物、環式芳香族化合物、エステル、ケトン、アミド、スルホネートから選択することができる。
【0054】
溶媒は少なくとも1つのアルコールを含み得る。少なくとも1つのアルコールは、最大10個の炭素原子を有するアルコールであるのが好ましい。かかるアルコールの例はメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールである。
【0055】
ケトンの例はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである。
【0056】
エステルの例は酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸プロピルである。
【0057】
アルカンの例はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びそれらの構造異性体、更には同じ数の炭素を有する対応する環式化合物、例えばシクロヘキサンである。
【0058】
タイプI複合体については、溶媒は水、アルコール、又は水及び/又は少なくとも1つのアルコールを含む混合物から選択するのが好ましい。
【0059】
タイプII複合体には、同様に所与の溶媒に十分な量で可溶性であるマトリックスポリマーが必要とされる。したがって、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドン等の通常のポリマーが可溶性である溶媒を選択するのが好ましい。かかる溶媒の例はアセトン、シクロヘキサン及び水、更にはそれらの混合物である。
【0060】
溶媒の選択により分散液のコロイド安定性も決定される。コロイド安定性は、例えばリガンドを用いて導入されるナノ構造の表面上の好適な官能基によっても影響を受ける可能性がある。
【0061】
極性溶媒中では、5〜9のpH範囲における組成物中のナノ構造のゼータ電位の絶対値は5mVを超えるのが好ましい。
【0062】
ナノ構造に対するリガンドの含量は、ナノ構造の表面上のリガンドシェルの最大厚さが5nm未満、特に2nm未満(TEMによって決定される)となるように選択するのが好ましい。
【0063】
リガンドによるナノ構造の被覆率の程度は、全粒子表面に対して少なくとも1つの単分子層であるが、10未満のリガンド層が粒子表面を覆うものが好ましい。共役ポリマーの場合、Mwと独立して、粒子表面1nm
2当たり少なくとも1個であるが50個以下のモノマー単位という被覆率が好ましい。特に、粒子表面1nm
2当たり少なくとも2個であるが20個以下のモノマー単位という被覆率が好ましい。これらの数字は、有機物質の割合の重量測定と組み合わせたTEM測定により算出することができる。
【0064】
加えて、リガンドの基及びそれにより調整することができる溶解性の適切な選択により、2つの層を重ねて配置し、下部の層が新たなインクの溶媒により溶解しないように溶媒を「直交的に」選択することが可能となる(例えば、「積層」法での「溶液プロセスによる」太陽電池の場合)。
【0065】
本発明の組成物の成分a)は様々な方法で得ることができる。このため、導電性リガンドは、例えば沈殿又は還元によるナノ構造の作製におけるのと同程度に早く使用することができる。
【0066】
別の実施の形態では、導電性リガンドをリガンド交換によって導入する。この目的では、以下の工程:
a)少なくとも1つの第1のリガンドによって安定化された、導電性又は半導電性ナノ構造の分散液の準備と、
b)少なくとも1つの導電性リガンドの添加と、
c)少なくとも1つの導電性リガンドによる第1のリガンドの少なくとも一部の置換と、
を含む方法を行うのが好ましい。
【0067】
以下に個々のプロセス工程をより詳細に記載する。これらの工程は必ずしも指定の順序で行う必要はなく、説明される方法は言及していない更なる工程を含んでいてもよい。
【0068】
本方法では、導電性リガンドを表面上に有するナノ構造を作製するか、又は導電性リガンドにより置換される非導電性リガンドが表面上に存在するナノ構造を作製する。ここでは、分散液のコロイド安定性が悪影響を受けるべきではない。さもなければナノ粒子の凝集が生じる。
【0069】
リガンド交換の場合、少なくとも1つの第1のリガンドによって安定化される導電性又は半導電性ナノ構造の分散液を準備する。好適なナノ構造は組成物について記載したものである。
【0070】
分散液を少なくとも1つの第1のリガンドによって安定化する。このことは、分散液がリガンド交換の条件下で安定したままでいることを意味する。このため、例えば、過剰なこのリガンドの濃度は20μM超とすることができるが、10mM未満とし、30μM〜1mM、特に50μM〜800μMの範囲の濃度が好ましい。
【0071】
少なくとも1つの第1のリガンドはこの場合、ナノ構造の表面への配位のための少なくとも1つの基を含むのが好ましい。結果として、構造の凝集を防ぐ所要の表面層を形成することができる。リガンドは、例えば金表面上のチオールのように共有結合しないのが好ましい。
【0072】
かかるリガンドの例は炭酸基、テトラアルキルアンモニウム基等のアンモニウム基、アミノ基を含むリガンドである。かかる第1のリガンドの例は、シトレート又は臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。
【0073】
生じ得る過剰な第1のリガンドを除去することが必要な場合もある。これは例えば、遠心分離及び再分散を用いて行うことができる。ここでもコロイド安定性が依然として確実であることが重要である。
【0074】
凝集を回避するために、ナノ構造の濃度を低い値に設定することが有利であり得る。10mg/ml未満、特に4mg/ml未満、非常に特に好ましくは1mg/ml未満の濃度が好ましい。
【0075】
ナノ構造の表面の十分な被覆率、ひいては十分なコロイド安定性を確実にするために、少なくとも1つの導電性リガンドを粒子表面1cm
2当たり少なくとも0.5μgのポリマーという濃度で使用するのが好ましい。面積はDLS又はTEM測定を用いて決定される。分散液中の粒子の凝集は特に溶媒の除去時にのみ生じる。本発明による組成物は、少なくとも24時間、特に少なくとも1週間、非常に特に好ましくは少なくとも1ヶ月にわたって安定している、すなわちUVvisを用いて凝集が見られないのが好ましい。
【0076】
ナノ構造を少なくとも1つの導電性リガンドと少なくとも1時間、特に好ましくは少なくとも5時間インキュベートするのが好ましい。少なくとも12時間が好ましい。5時間〜100時間、特に12時間〜36時間の時間が可能である。
【0077】
この間に第1のリガンドの少なくとも一部が少なくとも1つの導電性リガンドにより置換されるが、完全な交換が好ましい。
【0078】
交換が完了した後、吸着していないリガンドを除去することが必要な場合もある。この目的で、分散液を遠心分離し、上清を捨てることにより精製及び濃縮することができる。さらに、インク組成物用の溶媒をこの工程で選択することができる。ここでは分散液の乾燥を行わないものとする。リガンドを用いて修飾された粒子は、常に溶媒で湿ったままであるのが好ましい。
【0079】
本発明は、表面上に導電性又は半導電性層を作製する方法であって、以下の工程:
a)表面への本発明による組成物の適用と、
b)少なくとも1つの溶媒の除去と、
を含む、方法も提供する。
【0080】
個々のプロセス工程を下記により詳細に記載する。工程は必ずしも指定の順序で行う必要はなく、説明される方法は言及していない更なる工程を含んでいてもよい。
【0081】
第1の工程では、本発明による組成物を表面に適用する。これは当業者に既知のウェットコーティング法のいずれを用いても行うことができる。これは例えばインクジェット印刷、吹付け、浸漬、フラッジング、吹付け、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングを用いて行うことができる。適用方法に応じて、分散液、溶媒及び考え得る添加剤の所要の濃度を選択することができる。粘度もそれに応じて整合させることができる。
【0082】
溶媒としては、組成物について記載した溶媒が好ましい。
【0083】
表面の材料は使用する組成物、特に溶媒に適合するものとする。低い温度のために、表面の材料を自由に選択することができる。表面は有機又は無機表面とすることができる。表面は例えばポリマー、金属、半金属、ガラス又はセラミックを含み得る。
【0084】
本発明の好ましい実施の形態では、少なくとも1つの溶媒の除去を60℃未満、特に40℃未満の温度で行う。4℃〜30℃の範囲の温度が好ましい。
【0085】
特に1バール(10
5Pa)未満という大気圧より低い圧力を用いることも可能である。
【0086】
導電性リガンドの使用のために、このリガンドの除去はコーティングの伝導性を生じさせるのに必須ではない。リガンドのために粒子間の電子の交換を容易に生じさせることができる。
【0087】
結果として、リガンドシェルを除去するために従来技術では必要とされる付加的な熱処理を回避することができる。リガンドシェルの除去が必要とされないことから、以下の利点も生じる。
エネルギー消費プロセス工程が不要となる。
所与の容量を有するリガンドの除去により、当然ながら粒子の空間要求が所与の容量の分だけ減少する。これにより先に構成された構造が分解される可能性があるか、又は粒子の単分子層が存在する場合、粒子間の直接接触が失われる。
タイプII複合体をウェットコーティングにより一プロセス工程で直接作製することができ、マトリックスポリマーを選択することで、リガンドの除去によりマトリックスポリマーも除去されず、又はその特性が悪影響を受けないことを確実にする必要はない。
【0088】
好ましい実施の形態では、本方法は表面への塗工後に60℃超、特に40℃超の温度での任意のコーティングの処理を含まない。
【0089】
本発明は、本発明の方法を用いて得られる導電性又は半導電性構造を付加的に提供する。
【0090】
本発明は、好ましくは本発明による組成物又は本発明による方法から得られる、導電性又は半導電性ナノ構造と、少なくとも1つの導電性リガンドと、少なくとも1つのマトリックスポリマーとを含む複合材料を付加的に提供する。
【0091】
本発明による構造又は複合材料は様々な形で、例えばディスプレー、導体トラック、回路、コンデンサ、太陽電池に使用することができる。
【0092】
更なる詳細及び特徴を、従属請求項と併せた以下の好ましい実施例の記載により導き出すことができる。ここで、それぞれの特徴は単独で、又はそれらを2つ以上組み合わせて実現することができる。課題を解決する可能性は実施例に限定されない。このため、例えば、範囲の指定は考え得る全ての部分区間における言及されない全ての中間値を常に包含する。
【0093】
1. CTABを用いた金ナノロッドの作製
20nm〜50nmの直径及び80nm〜150nmの長さのアスペクト比を有する金ナノロッドをYe et al.による方法によって作製した。この目的で、成長溶液(500ml〜2l)をAuCl
4(0.5mM)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB 0.4M)、オレイン酸ナトリウム(800mM)、アスコルビン酸(0.16mM)、並びに様々な容量の硝酸銀溶液(4mM)及びHCl(32%)を用いて調製した。異方性結晶成長を特定の容量の球状金核の添加によって誘発した。この核分散液は、NaBH
4を用いたCTAB水溶液(0.1M)中5mlのHAuCl
4(0.25mM)の還元、及び30分間のインキュベーションにより事前に作製した。反応物を35℃で14時間静置した。次いで、金ナノロッド(AuNR)を遠心分離によって精製し、CTAB溶液(1mM)中で保管した。プロセスは2Lのサイズまでスケールアップすることができた。これは約200mgの金という金ナノロッドの乾燥質量+付加的なリガンドの質量(210mgに対応する)に対応する。作製された金ナノロッドは、断面積(TEMによって測定される)をベースとして10%未満の直径及び長さの偏差を有する。分散液については、pH7で+20mVのゼータ電位が測定された。これは純粋に静電的な安定化という点での平均コロイド安定性を示す。リガンド/金属比は熱重量測定により約5:95(m/m)と決定された。20nmの直径及び100nmの長さ(TEMによって決定される)を有する円筒形と仮定すると、これは1nm
2当たり8個のCTAB分子の単分子層に相当する。CTABは水性環境で二重層を形成する傾向がある。金ロッドの単分子層が1nm
2当たり4個以下のCTAB分子を有すると仮定する。
【0094】
2. リガンド交換
項目1に従って作製した、CTABを用いて安定化した金ナノロッド(AuNR@CTAB)を洗浄し、過剰なCTABを除去し、所望の金含量を設定した。この目的で、ポリマーの溶液(水中0.5mg/mlのポリ(2−(3−チエニル)エトキシ−4−ブチルスルホネート(PTEBS) 40kDa〜70kDa))を添加し、AuNR@CTABの分散液(水中0.5mg/mlの金)とともに室温で24時間撹拌した。金ナノロッドを特定の容量の純溶媒中での再分散によって精製し、所望の標的濃度とした。ゼータ電位が+20mVから−45mVへと変化し(pH7)、リガンド交換の成功が示された。リガンド交換の成功は分光法によって確認された。透過型電子顕微鏡写真からリガンドシェルの厚さを約1nmと推定することができ、これは熱重量測定に一致する。いずれの場合にも3つの寸法のうち1つの広がりに関する情報を与える文献データ(Liu et al.(ポリチオフェン骨格におけるモノマーの間隔)、Zhang et al.(この側鎖を有するポリマー鎖を好ましくは互いに対して仮定した間隔)、Colle et al.(共役ポリマー間のp−スタッキング距離(p-stacking distance)))から、使用したポリマーについて1nm
3当たり7.2個のモノマーというポリマーのパディング密度(padding density)を算出することができ、加熱時の質量の減少からリガンドシェルの厚さは同様に1nmと決定された。
【0095】
3.2重量%という質量の減少が、23nm×103nmの寸法を有する結晶金ナノロッドについて見出された。より小さな表面積/容量比(25nm×113nm)を有する金ナノロッドの場合、2.9重量%という質量の減少が算出された。リガンド質量/表面積の比率を用いる場合、粒子表面積1m
2当たり3.4mgという値が2.のリガンドについて得られる。
【0096】
好適な溶媒、溶媒混合物及び溶媒/ポリマー混合物中でのコロイド安定性がUVvis分光法によって実証された。
【0097】
2.1. 付加的なポリマーを用いたリガンド
PEDOT:PSS(ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート)を用いたリガンド交換を、2.と同様にして行った。分析を用いてリガンドの交換を確認した。得られる分散液は極性溶媒(イソプロパノール、アセトン、メタノール、エタノール)中で少なくとも1週間安定していた。作製されたコーティングは1Ω/sqの伝導性を示し、これはリガンドの除去後のナノ構造の伝導性よりもはるかに良好である。
【0098】
2.2. 非極性溶媒のためのリガンド
ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(MN 15000〜45000)で修飾された金ナノロッドを作製した。この目的で、リガンドを合成中に添加した。このリガンドは非極性溶媒(クロロホルム、トルエン)中での安定性を促進する。焼結を行わずに作製した層の伝導性を測定した。
【0099】
2.3. 金ナノ粒子上での交換
金粒子(直径15nm、シトレートを用いて安定化した)上でのリガンド交換を2.と同様にして行った。ゼータ電位は−29.2mVから34.9mVへと変化したが、これは中程度の安定性を示す。
【0100】
3. コーティングの作製
水/メタノール(10:90)中の本発明に従って修飾された金ナノロッドの分散液をガラス基板に適用した。鋳型を用いて直線のラインを作製した。市販の銀塗料を電極に使用した。
【0101】
タイプII複合体:アセトン/水(97.5/2.5;v/v)中の溶解PMMAにより本発明に従って修飾された金ナノロッドの分散液を、ドロップキャスティングによりガラス表面(1×1cm)上に適用し、導電性複合体を溶媒の蒸発(40℃、5分間)により形成する。
【0102】
実施例を図面に概略的に示す。個々の図面中の同一の参照符号は同一の要素、又は同じ機能を有するか若しくはそれらの機能に関して互いに対応する要素を表す。