特許第6972012号(P6972012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972012骨盤疾患の治療のためのインプラント及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972012
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】骨盤疾患の治療のためのインプラント及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   A61F2/08
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-555173(P2018-555173)
(86)(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公表番号】特表2019-514489(P2019-514489A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017028087
(87)【国際公開番号】WO2017184578
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】62/325,269
(32)【優先日】2016年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/489,211
(32)【優先日】2017年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト トマス エイ
(72)【発明者】
【氏名】バラチャンドラン ラム クマール
(72)【発明者】
【氏名】ボストロム ジョン エイ
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0028980(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0021265(US,A1)
【文献】 特表2013−516244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y形状外科的インプラント(2)であって、
インプラント材料で形成され、遠位ベース端(6)近位ベース端(8)の間の固定長と、仙骨リーフ(10)と、第1の膣リーフと、幅とを含むベース(4)と、
前記遠位ベース端(6)前記近位ベース端(8)の間の前記長さに沿って可動である可動接合部(12)と、
を含み、
前記第1の膣リーフは、前記近位ベース端(8)と前記可動接合部(12)の間を延び、
前記仙骨リーフ(10)は、前記可動接合部(12)と前記遠位ベース端(6)の間を延び、
インプラント(2)材料を含む第2の膣リーフ(16)が、前記可動接合部(12)から延び、
前記第2の膣リーフ(16)は、前記可動接合部(12)での第2の膣リーフの遠位端(20)と緩んだ近位膣リーフ端(22)との間に第2の膣リーフ(16)長さを有し、該第2の膣リーフ長さは、前記ベースの長さに沿った前記可動接合部の移動によって調節可能である、
ことを特徴とするインプラント(2)。
【請求項2】
前記可動接合部(12)は、該可動接合部(12)が前記ベース(4)の前記長さに沿って移動されながら該ベース(4)との係合を維持することを可能にするように、該ベース(4)の幅に沿って該ベース(4)に可動に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【請求項3】
前記第1の膣リーフは、前記近位ベース端(8)と前記ベース(4)の前記長さに沿った前記可動接合部(12)の位置との間の長さを有し、該第1の膣リーフの該長さは、該ベース(4)の該長さに沿った該可動接合部(12)の移動によって調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【請求項4】
前記仙骨リーフ(10)は、前記遠位ベース端(6)と前記ベース(4)の前記長さに沿った前記可動接合部(12)の位置との間の長さを有し、該仙骨リーフ(10)の該長さは、該ベース(4)の該長さに沿ったスライダの移動によって調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【請求項5】
前記可動接合部(12)は、前記第2の膣リーフ(16)の前記遠位端(20)に確実に取り付けられたスライダを含み、該スライダは、該スライダが前記ベース(4)の前記長さに沿って移動しながら該ベース(4)との係合を維持することを可能にするように、該ベース(4)の幅に沿って該ベース(4)に可動に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【請求項6】
前記可動接合部(12)は、開いた構成又は閉じた構成に選択的に置くことができる摩擦係合(60)を含み、
前記摩擦係合(60)が前記開いた構成にある状態で、前記可動接合部(12)は、前記ベース(4)との係合を維持しながら該ベース(4)の前記長さに沿って移動することができ、該摩擦係合(60)が前記閉じた構成にある状態で、該摩擦係合(60)は、該ベース(4)の該長さに沿った可動接合部の移動を摩擦的に阻止する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【請求項7】
前記摩擦係合は、閉じる方向に付勢されるバネ荷重式摩擦係合(60)であることを特徴とする請求項6に記載のインプラント(2)。
【請求項8】
前記仙骨リーフ(10)が仙骨(112)の領域まで延びてそこで組織に固定されている間に前記第1の膣リーフ及び前記第2の膣リーフ(16)が非頂端前部及び後部膣組織(5)に固定されることを可能にするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、引用により本明細書に全体的にその開示が組み込まれている2016年4月20日出願の「骨盤疾患の治療のためのインプラント及び方法」という名称の米国仮特許出願第62/325、269号に対する優先権を主張する2017年4月17日出願の「骨盤疾患の治療のためのインプラント及び方法」という名称の米国非仮特許出願第15/489、211号の継続出願であり、かつそれに対する優先権を主張するものである。
【0002】
この出願はまた、引用により本明細書に全体的にその開示が組み込まれている2016年4月20日出願の米国仮特許出願第62/325、269号に対する優先権を主張するものである。
【0003】
本発明は、インプラント材料とインプラント材料の機械的特性を調節するのに有効である補強とを含む外科的インプラントに関し、外科的インプラントは、骨盤疾患(例えば、失禁、脱出症、挙筋裂離)、心臓疾患、ヘルニアなどを治療するためなどの様々な異なる外科的手順のいずれにも有用である。
【背景技術】
【0004】
外科的インプラントは、広範な異なる外科的治療に使用される。インプラントの一部の形態は、ほぼ平面状で可撓性の織物タイプのインプラント材料を含む材料で構成される。これらのインプラントは、心臓組織、ヘルニア、失禁及び脱出症のような骨盤疾患の治療時のような軟組織の疾患を治療するために、並びにインプラント材料を使用して軟組織を支持する方法によって他の医学的疾患を治療するために使用することができる。
【0005】
骨盤健康に関して、これは、少なくとも部分的に高齢化に起因して男女共に重要度が増している医療分野である。一般的な骨盤の慢性疾患の例は、失禁(例えば、尿又は糞便)、骨盤組織脱出症(例えば、女性の膣脱又は挙筋脱)、子宮又は膀胱の脱出症、及び挙筋裂離のような骨盤底筋の疾患を含む。具体的な膣脱疾患は、膀胱瘤及び直腸瘤のような非頂端疾患、及び膣円蓋脱出症(すなわち、頂端脱出)を含む。これらのような骨盤障害は、正常な骨盤支持系に対する弱さ又は損傷からもたらされる可能性がある。
【0006】
非頂端脱出症の一形態は、前部膣壁の組織の脱出、例えば、膀胱瘤である。直腸瘤は、対照的に、非頂端後部膣脱の一形態、すなわち、後部膣壁組織の脱出である。小腸瘤は、小腸の一部分を閉じ込める腹膜嚢が直腸膣腔内に延びる膣ヘルニアである。膣円蓋脱出とも呼ばれる頂端脱出は、膨満である(すなわち、米国特許出願公開第2002/0028980号明細書、第2010/0184805号明細書、第2014/0005471号明細書、第2015/0057491号明細書、及び米国特許第8、109、867号明細書、第8、720、446号明細書、及び第8、956、276号明細書)。
【0007】
仙骨膣固定術は公知であり、かつ子宮がある場合に患者の子宮を外科的に摘出すること(子宮摘出術)、続いて合成メッシュを使用して仙骨から膣壁又は膣尖部を吊るすことを伴う。この手順は、膣尖部をその解剖学的位置に戻し、かつ移植されたメッシュによって組織を定位置に保持する。この手順は、膣長さ及び軸線をその内径を損なうことなく回復させ、従って、好ましい機能的転帰を有する可能性が高い。
【0008】
ある一定のSCP手順により、外科的インプラントは、単一後部又は遠位リーフに接続された2つの前部リーフを有する「Y」形状に事前形成されたメッシュである。使用時に、「Y」形状インプラントの2つの前部「リーフ」(又は「アーム」又は「付属器」)は、患者の前部膣壁及び後部膣壁に外科的に固定される。Y形状メッシュの第3の部分(すなわち、仙骨リーフ又は仙骨テール)は、患者の前部縦靭帯でのような仙骨で又はその近くで後部方向に固定される。現在市販されているY形状外科的インプラントの例は、2つの膣付属器を継ぎ目なく編み合わせて仙骨テールを形成するか(BARD社製Alyteインプラント、ASTORA社製Yメッシュインプラント)、又は膣付属器及び仙骨テールを3方向接合で仙骨リーフと互いに確実に接合させるか(Coloplast社製Restorelleインプラント、Boston Scientific社製Upsylonインプラント、Caldera社製Vertessaインプラント)のいずれかである。
【0009】
市販の事前形成調節不能Yタイプインプラントを使用して典型的に行われるような非頂端脱出を治療するための仙骨膣固定術は、インプラントの2つの膣部分(リーフ、付属器)を膣尖部に隣接して前部及び後部膣壁に縫出会う初期段階を含む。膣組織に膣リーフを取り付けた後、望ましい張力、すなわち、膣組織を仙骨から吊るのに必要とされる張力の量が特定され、インプラントの仙骨テールは、仙骨に又はその近くに外科的に取り付けられる。仙骨リーフを通してインプラントに配置するための張力の正しい量を決定することは、手順の成功に非常に重要である。過度の張力は、尿失禁に似た合併症をもたらす可能性がある。過少な張力は、再発性脱出を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0028980号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0184805号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0005471号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0057491号明細書
【特許文献5】米国特許第8、109、867号明細書
【特許文献6】米国特許第8、720、446号明細書
【特許文献7】米国特許第8、956、276号明細書
【特許文献8】米国特許公開第2012/0184805号明細書
【特許文献9】米国特許第9、060、836号明細書
【特許文献10】米国特許公開第2014/0257032号明細書
【特許文献11】米国特許出願第2013/0109910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以前は、調節可能インプラントも、頂端膣脱を治療するのに有用であると説明されてきた。例えば、米国特許公開第2012/0184805号明細書を参照されたい。しかし、以前のインプラントは、本明細書に説明するような方法段階のシーケンスによって非頂端脱出を治療する方法と共に使用されていた又は例えば非経膣法を使用して非頂端前部及び後部膣組織に対して差別的な張力及び支持を配置するために使用されていたとは思われない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、膣脱、例えば、頂端脱出、非頂端膣脱、又はその両方を治療するのに有用な調節可能Yタイプ外科的インプラントは、インプラントが外科的に配置された時に後部組織及び膣組織での差別的な張力及び支持を与えることにより、インプラントの前部及び後部膣リーフの位置決め及び治療効果の改善を提供するのに使用することができる。
【0013】
SCP手順に有用なY形状事前形成及び調節不能外科的インプラントは、固定全長と、仙骨リーフから延びる2つの膣リーフの固定サイズ(長さを含む)と、仙骨リーフの固定サイズ(長さを含む)とを有する。そのサイズ特徴に関して調節不能であるこのタイプのインプラントは、典型的には、仙骨尾部上に配置される張力をメッシュの前部及び後部膣付属器(リーフ)間で均等に分配する方式で配置される。T1がT2にほぼ等しい図2を参照されたい。2つの膣リーフ間の張力及び支持のこのタイプの均等分配は、主として膣円蓋(すなわち、頂端)脱出を有する患者に望ましくかつ有用である。
【0014】
任意的に頂端脱出と併せて様々なレベルの膀胱瘤又は直腸瘤又はその両方、すなわち、非頂端脱出を有する患者では、疾患の外科的治療は、後部膣壁上に配置される張力と比べて異なる量の張力を前部膣壁上に配置することによって改善することができる。例えば、患者が後壁と比べて有意な前壁脱出を有する場合に、前部膣壁は、後壁と比べて追加の支持量から利益を受けると考えられる。これは、後部膣組織に取り付けられた後部付属器上に配置される張力の量と比べてより多くの張力を前部膣組織に取り付けられたY形状インプラントの前部付属器(すなわち、前部膣リーフ)上に配置することを必要とするであろう。そのような場合に適切な量の前壁支持に基づいて仙骨尾部張力を決定して標準Y形状インプラントを使用する場合に、それは、後側に過剰な張力が生じて合併症をもたらす可能性があるであろう(図2参照)。これは、外科医が典型的に事前形成Yメッシュに張力を印加する方法が、専ら仙骨尾部上に配置される張力の量によるものであるからである。
【0015】
本発明により、医師は、外科医が常時ベースで対処する広範な脱出疾患に応じるようにインプラントの外科的配置中にYタイプ(Y形状)インプラントの前部及び後部付属器を差別的に引張することを望むことができる。調節不能Yタイプインプラントは、インプラントを調節することによって後部対前部膣組織に対する異なるレベルの張力を配置する能力を外科医に提供せず、かつ通常は仙骨尾部(仙骨リーフ)の張力を2つの膣付属器間(前部膣リーフと後部膣リーフ間)で均等に分配する方式で配置される。
【0016】
事前形成調節不能Yタイプインプラントの限界を回避する1つの方法として、医師は、現時点で2つの別々のメッシュインプラント部分、すなわち、前部膣壁のための1つの部分と後壁のための第2の部分とを現在使用することができ、両方の部分は、仙骨に別々に取り付けられる。図1を参照されたい。2つのメッシュ部分を用いて、外科医は、各1つに作用する張力の量を別々に制御し、かつ前部及び後部膣組織での差別的張力の望ましい結果を達成することができる。このソリューションの欠点は、2つの個々のメッシュ部分を仙骨に別々に外科的に取り付ける(例えば、縫出会う)必要があることである。2つのメッシュ部分の2つの端部を仙骨に別々に取り付けることは、主要な血管及び尿管への取り付け点の近接性を考慮すると、手順の最も危険な段階の1つである。従って、患者に有意な害を引き起こす確率は、2つのメッシュ部分を別々に取り付ける必要があることに起因して、縫合を2度行う時に2倍に増大する。このソリューションはまた、仙骨への取り付けが典型的に時間を消費する段階であり、かつ2度行う必要があるので総手順時間を増大する。
【0017】
本発明により、膣組織の前部分上とそれとは独立に後部分上とに配置される張力を選択的に分配するために調節可能インプラントが使用される膣脱を治療するための新しい方法を説明する。患者の特定の脱出疾患に応じて、後部膣組織に与えられる支持は、前部膣組織に与えられる支持と比較して異なるレベルで印加することができる。例えば、後部張力に対する前部張力の量は、患者の膣組織に存在する脱出組織の具体的な種類及び組合せに基づいて、特に患者の非頂端後部組織に見出される脱出の程度と比較して非頂端前部膣組織に見出される脱出の存在及び相対的程度に基づいて選択することができる。ある一定の方法により、調節可能インプラントの膣リーフは、前部及び後部膣組織、例えば、前部膣壁及び後部膣壁の非頂端組織に取り付けることができる。膣リーフが膣組織に固定された後で、1つ又は2つの膣リーフの1又は複数の長さは調節することができる。膣リーフの1又は複数の長さを調節することは、2つの膣リーフの各々によって支持される異なる膣組織に対して印加される差別的張力及び差別的支持を生成することができる。その後に、仙骨リーフに存在することが望ましい張力の量を決定することができ、仙骨リーフは、仙骨解剖学的構造の領域で組織に取り付けることができる。
【0018】
本明細書において有用なインプラントは、非頂端後部膣組織に対する非頂端前部膣組織の差別的支持を可能にする調節可能性特徴を含むあらゆるYタイプインプラントとすることができる。固定長ベースに取り付けた可動コネクタを有するとして説明するものを含む有用なインプラントの非限定的な例を本明細書に説明する。
【0019】
本明細書に使用する時に、本明細書に説明する患者の解剖学的構造又はデバイス、デバイスの一部分、又は方法に関連した用語「遠位」は、患者の後部に向う方向、例えば、膣又は子宮に対して仙骨に向う方向を指し、本明細書に説明する患者の解剖学的構造又はデバイス又は方法に関連した用語「近位」は、患者の前部に向う方向、例えば、仙骨に対して膣組織又は尿道に向う方向を指す。
【0020】
本明細書に使用する時に用語「確実に取り付けられた」は、2つの構造が例えばリーフの外科的配置及び可動コネクタの移動を含む説明するようなデバイスの通常使用及び作動中に分離することのない方式での2つの構造間、例えば、インプラントのリーフ又はベースのインプラント材料とインプラントのコネクタとの間の取り付けを指し、2つの構造は、実質的にデバイスを損傷すると考えられる方式でその構造のうちの少なくとも一方の断裂、引裂、又は切断をもたらすと考えられる実質的な力を加えることによってのみ分離することができる。一例として、2つの構造は、それらを外科的配置及びインプラント使用の目的に対して必然的に取り付けられたままにさせることになる方式で取り付けることができる。「確実に取り付けられた」構造は、接着剤による、熱可塑性結合(例えば、成型)による、超音波結合による、留め金又はギザギザ面のような永続的又は確実な摩擦係合による、又はインプラントの外科的配置中又はその後に2つの構造を互いに保持するように設計されてそれが可能である別の取り付け機構によるようなあらゆる有用な固定機構又は技術によって互いに保持することができる。
【0021】
ベースの幅に沿ってベースに可動に取り付けられた可動コネクタにおけるような用語「可動に取り付けられた」は、コネクタがベースの長さに沿って移動しながらベースとの係合を維持することを可能にするこれらの2つの構造間の係合を指す。可動コネクタは、ベースに取り付けられ、かつスライダがベースとの接触を維持しながらベースの長さに沿って異なる場所まで移動(例えば、摺動)することを可能にする方式でベースと接触する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来のインプラント及び方法の例を示す図である。
図2】従来のインプラント及び方法の例を示す図である。
図3】本発明のインプラント及び方法の例を示す図である。
図4】本発明のインプラント及び方法の例を示す図である。
図5A】本発明のインプラントの例を示す図である。
図5B】本発明のインプラントの例を示す図である。
図6A】本発明のインプラントの例を示す図である。
図6B】本発明のインプラントの例を示す図である。
図7A】本発明のインプラントの例を示す図である。
図7B】本発明のインプラントの例を示す図である。
図8A】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図8B】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図9A】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図9B】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図10A】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図10B】本発明インプラントのコネクタ特徴の例を示す図である。
図11】説明するような方法における調節可能インプラントの例を示す図である。
図12】説明するような方法における調節可能インプラントの例を示す図である。
【0023】
全ての図面は、模式的であり、縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に説明するのは、例えば、膀胱瘤又は直腸瘤などのような非頂端前部及び後部膣組織の脱出、又は膣円蓋脱出を意味する頂端膣組織の脱出、又はその組合せのような女性患者における膣脱を治療するのに有用な外科的インプラント及び関連する方法である。患者の子宮は、以前又は同時の外科的手順で摘出されていることになる。
【0025】
説明する方法のいずれかを行う上で有用なインプラントは、一般的に仙骨の領域での使用中に位置付けられる遠位部分と、膣組織の領域での使用中に位置付けられる近位部分とを含む。遠位部分は、仙骨リーフ(又は「付属器」)を含む。近位部分は、前部膣リーフ(又は「付属器」)及び後部膣リーフ(又は「付属器」)を含む。使用時に、前部膣リーフは、前部膣組織と接触させて外科的に固定することができ、その結果、非頂端前部膣脱の外科的治療において前部膣組織を支持するために有効である可能性がある。後部膣リーフは、後部膣組織と接触させて外科的に縫い合わせることができ、その結果、非頂端後部膣脱の外科的治療の一部として後部膣組織を支持するために有効である可能性がある。これに代えて又はこれに加えて、結び付けた前部膣リーフ及び後部膣リーフを膣尖部又は膣カフの組織上に配置して頂端脱出を治療するのに膣尖部を支持することができる。これらの治療では、仙骨リーフは、仙骨の解剖学的構造領域の組織のような後部場所に取り付けることによって吊るされ、それによって膣組織に取り付けられたインプラントの近位部分を支持する。
【0026】
説明する方法において有用なインプラントの実施形態は、後部膣組織と比べて前部膣組織に対して張力及び支持の差別的な配置を可能にするように調節可能である。例示的インプラントは、前部膣リーフ、後部膣リーフ、及び仙骨リーフの3方向交差点(すなわち、接合部)に位置付けられた可動接合部を含む。可動で静止していない接合部は、前部膣リーフの遠位端が後部膣リーフの遠位端と出会う場所であり、そこで前部膣リーフの遠位端及び後部膣リーフの遠位端の各々は、仙骨リーフの近位端と出会う。本明細書に従ってこの接合部は、インプラント長さの少なくとも一部分に沿って可動であり、また仙骨リーフの長さに対して可動であり、更に2つの膣リーフの少なくとも一方に対して可動とすることができる。接合部が可動であることに起因して、近位仙骨リーフ端(接合部の場所と同じ場所にある)と遠位仙骨リーフ端の間の仙骨リーフ長さは調節可能であり、すなわち、インプラントの長さに沿った接合部の移動により選択的に増加させる又は減少させることができる。更に、接合部が可動であることに起因して、近位膣リーフ端とそれぞれの遠位膣リーフ端(接合部の場所と同じ場所にある)の間の2つの膣リーフのうちの少なくとも一方の長さは調節可能であり、すなわち、インプラントの長さに沿った接合部の移動により選択的に増加させる又は減少させることができる。インプラントのある一定のそのような実施形態により、2つの膣リーフのうちの一方の長さは可動接合部の移動によって調節可能であり、第2の膣リーフの長さは接合部の移動時に固定される。他の実施形態により、2つの膣リーフの両方の長さは、例えば、各リーフに対する可動接合部の移動によって独立に調節可能である。
【0027】
可動接合部を含む本明細書に説明するインプラントのような調節可能インプラントは、例えば、非頂端前部膣脱、非頂端後部膣脱を治療するのに望ましいか又は改善された治療結果を伴う仙骨膣固定術を行う上で特に有用である可能性がある。インプラントは、調節可能であることにより、外科医が後部膣組織と比べて前部膣組織の差別的張力及び支持を達成することを可能にする方式で外科的に配置することができる。例えば、可動接合部を有する調節可能インプラントは、外科医が接合部を位置決めし、又はインプラントに対して付属器(リーフ)の長さを調節することを可能にして、異なる支持組織に対して選択的な支持を提供し、インプラントの治療効果及び治療方法を改善することができる。
【0028】
ある一定の有用な調節可能インプラントは、外科医が2つの膣リーフ及び仙骨リーフの三枝交差点の場所を移動することを可能にする可動接合部を含み、外科医が2つの膣リーフのうちの一方又は両方の長さを調節し、及び必要に応じて2つの膣リーフの長さに関して幾何学的な非対称性を与えることを可能にする。インプラントの外科的配置中の接合部の移動と、膣リーフ長さの任意的な非対称性とを許容することにより、前部及び後部膣壁に差別的張力を印加することが可能になる。例えば、可動接合部は、前部膣組織脱を有する患者を治療するために、前部膣組織上に配置される相対的支持レベルを増大するように調節することができる。これに代えて、可動接合部は、後部膣組織脱を有する患者を治療するために、後部膣組織上に配置される相対的支持レベルを増大するように調節することができる。
【0029】
図3は、説明するようなY形状インプラントの例を示し、ここでは、可動接合部は、後部膣組織104と比べて前部膣組織102に相対的により多くの支持を提供する場所にインプラントの長さに沿って位置決めされている。例えば、本明細書に説明するように(以下を参照)、前部膣リーフ14及び後部膣リーフ16が、例えば、縫合糸30によってそれぞれ前部膣組織102及び後部膣組織104に固定された後に、インプラント2の一部として可動コネクタ24が調節され、好ましくは定位置に保持されるか又はロックされる。それぞれの膣組織への膣リーフの取り付け、可動コネクタ24の調節、及びインプラント2の長さに沿った適所への可動コネクタ24のロックに続いて、仙骨リーフ20は、調節され、次に仙骨112のような仙骨の解剖学的構造領域に取り付けられる。前部膣リーフ14及び後部膣リーフ16の幾何学的非対称性(例えば、異なる長さ)は、前部膣リーフ14と後部膣リーフ16の間に仙骨リーフ10に存在する張力(T)の不均一な分配を引き起こす。
【0030】
図4に示すように、全仙骨張力Tは、後部付属器と比較すると前部付属器に多く分配され、すなわち、前部膣リーフ14の張力T1は、後部膣リーフ16の張力T2より大きい。図4に示すように、代替実施形態を参照すると、仙骨張力Tは、前部付属器と比較すると後部付属器に多く分配され、すなわち、後部膣リーフ16の張力T2は、前部膣リーフ14の張力T1より大きい。ある一定の実施形態により、調節可能Y形状インプラントは、インプラントの遠位端にある遠位ベース端とインプラントの近位端にある近位ベース端の間に固定長の連続的なインプラント材料を有するベースを含むことができる。仙骨リーフは、接合部から遠位方向に遠位ベース端まで延びて仙骨の解剖学的構造領域の組織に取り付けられるようになっている。例えば、前部膣リーフのような第1の膣リーフは、接合部から近位方向に近位ベース端まで延びて例えば前部膣組織のような膣組織を支持するようになっている。第2の膣リーフは、接合部から近位方向に近位ベース端まで延びて例えば後部膣組織のような膣組織に取り付けられるようになっている。各リーフは、独立に幅を有する。接合部は、遠位ベース端と近位ベース端の間でベースの長さに沿って移動可能な可動接合部である。第1の膣リーフは、近位ベース端と可動接合部の間を延びる。仙骨リーフは、可動接合部と遠位ベース端の間を延びる。同じくインプラント材料で製造された第2の膣リーフは、可動接合部から延びる。
【0031】
これらの実施形態により、2つの膣リーフの各々は、単一密度(材料重量)であり、インプラント材料の単一層の形態のものであるとすることができる。仙骨リーフも単一層のものであるとすることができ、膣リーフと同じ単一密度の材料重量を示すことができる。これに代えて、仙骨リーフは、2層(すなわち、インプラント材料の2つの層)で製造することができ、膣リーフと比べて倍密度(2倍の材料重量)である場合があり、すなわち、仙骨リーフ材料の総重量は単一密度膣リーフの重量の2倍とすることができる。
【0032】
インプラントの様々な支持部分(ベース、及び膣及び仙骨リーフ)は、患者の骨盤領域内の組織と接触するように、及び膣脱の治療として組織を支持する方式で組織に外科的に配置されて固定されるようになった外科的インプラント材料で構成される。
【0033】
外科的インプラント材料は、膣組織を支持するために外科的に配置されるようになったほぼ平面状で可撓性の多孔質インプラント材料とすることができる。ポリマーモノフィラメントのような繊維のストランドを可撓性で平面状の織布、不織布、又は編物に組み立てることによって調製される多孔質(例えば、メッシュ)材料を含む可撓性インプラント材料の多くの例は公知であり、かつ市販されている。代替インプラント材料は、移植後に組織内殖を許容するようになった開口場部、開口、又は開窓の形態の細孔を含むように成型、押出、及び切断、又は他に形成することができる。
【0034】
適切なインプラント材料は公知であり、その例は、解剖学的組織を支持するための外科的インプラント材料として使用されるように市販されている。これらは、接続されたストランド、繊維、糸、フィラメント(例えば、モノフィラメント)、処理フィルムなどから織られた、編まれた、押し出された、又は他に製造された開放細孔(多孔質)材料を含み、それらは、天然又は合成のものとすることができる。例示的インプラント材料は、多くの繊維接合点と多くの規則的又はランダムなサイズで離間した開口とを形成する相互接続された、結び付けられた、又は他に接続されたフィラメント又は繊維を有する織られた、不織の(しかし、依然として繊維状又はフィラメント状の)、編まれた、又は別の材料を含む。モノフィラメント繊維又はマルチフィラメント繊維から製造されたインプラント材料は、膣脱を治療するのに有用であり、インプラント材料を調製するために互いに組み立てられた2又は3タイプ以上の異なる繊維(モノフィラメント、マルチフィラメント、又はその組合せ)を含む材料も同様である。繊維接合部は、織成、結合(例えば、接着結合、熱結合など)、結束、超音波溶接、編成、又はその組合せを含む他の接合部形成技術によって形成することができる。得られる開口部、細孔、開口、又は開窓などのサイズは、インプラントが膣組織のような解剖学的場所に配置された後に、接触した組織において組織内殖と開放細孔インプラント材料の定着とを可能にするのに十分である。一例として、以下に限定するものではないが、開放細孔インプラント材料の開口は、約0.040インチ(1.016mm)〜約0.055インチ(1.397mm)の範囲の対角寸法又は直径寸法を有する楕円形、正方形、円形、矩形、又はダイヤモンド形状の開口の形態を取ることができる。
【0035】
開放細孔インプラント材料のストランド、層、又はフィラメントなどは、外科的インプラントを形成するのに有用なあらゆる材料のものとすることができる。適切な天然材料及びポリマー材料は、生体適合性であり、必要に応じて生体吸収性であり、組織内殖を容易にするか又は感染を防止するために被覆することができる。例は、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリエチレングリコール(PGA)、ポリエステル、及び材料のあらゆる組合せを含む。望ましい治療に応じて、ポリマーは、吸収性、非吸収性、又は再吸収性とすることができる。市販のインプラント材料の例は、Prolene(登録商標)、Deldene(登録商標)、及びMarlex(登録商標)移植可能材料の商品名で販売されているものを含む。更に別の例は、経糸トリコットで編んだ織成ポリプロピレンモノフィラメントである。
【0036】
インプラント材料の他の例は、事前形成材料、例えば、米国特許第9、060、836号明細書及び米国特許公開第2014/0257032号明細書に説明されているような単体又は均質なパターン付きインプラント材料を含み、これらの文献の各々の全体は、引用により本明細書に組み込まれている。これらの文献に説明されているような単体又は均質なパターン付きインプラントの例は、成型、ダイカスト、レーザエッチング、レーザ切断、押出加工などによって形成されたパターン化されたセルから構成することができる。インプラント材料の各部分(例えば、前部分の中に形成されたような)は、前部分の単一又は複数の軸線に沿う伸長、拡張、収縮の望ましい制御を可能にする方式で正弦波状又は他の波形の支柱部材に形成することができる。応力、張力、及び圧縮力の分配は、インプラント材料又は前部分の特定の又は局所的な区域にわたって制御することができる。ある一定の実施形態では、成形インプラント材料は、例えば、前部分のような説明するインプラントの一部分に望ましい1次元又は2次元伸長特性を提供することができる。例えば、成形前部分は、圧力が前部分に対して単一方向にのみ加えられる場合に前部分が2次元的に伸長するような(すなわち、長くなる)伸長特性を有することができ、例えば、単一軸線に沿って力が加えられた場合に、前部分は異なる軸線に沿って長くなることができる。
【0037】
ここで図5A(側面図)及び5B(上面図)を参照すると、インプラント2は、インプラントの遠位端にある遠位ベース端6とインプラントの近位端にある近位ベース端8の間に固定長のインプラント材料を有するベース4を含むY形状インプラントである。仙骨リーフ10は、可動接合部12から遠位方向に遠位ベース端6まで延びる。第1の膣リーフ14、例えば、前部膣リーフは、接合部12から近位方向に近位ベース端8まで延びる。第2の膣リーフ16、例えば、後部膣リーフは、接合部12から近位方向に延びる。各リーフ10、14、及び16は、独立に幅を有する。
【0038】
接合部12は、遠位ベース端6と近位ベース端8の間でベース4の長さに沿って移動可能な可動接合部である。第1の膣リーフ14は、近位ベース端8と可動接合部12の間を延び、膣リーフ14の長さは、近位ベース端8と遠位ベース端6の間のコネクタ12の移動によって増加させる又は減少させることができる(図5A及び5Bの矢印を参照)。仙骨リーフ10は、可動接合部12と遠位ベース端6の間を延びる。
【0039】
図5A及び5Bのインプラント2により、第2の膣リーフ16の遠位端20は、接合部12に確実に取り付けられる。第2の膣リーフ16の長さ、すなわち、遠位端20(コネクタ12に対するその確実な取り付け場所での)と近位(自由)端22の間の距離は固定されている。第2の膣リーフ16のこの固定長は、ベース4の長さに沿う接合部12の移動と共に変化しない。
【0040】
リーフ10、14、及び16の交差場所を意味する接合部12は、ベース4の長さに沿って移動することができる。例えば、ベース4及び3つのリーフ10、14、及び16全てとの係合を維持しながらベース4の長さに沿って自由に移動することができる留め金又はスライダの形態の機械的コネクタ24により、移動を可能にすることができる。図SA及びSBに示すように、コネクタ24は、コネクタ24の遠位端から近位端まで連続的に延びる一方でベース4を構成するインプラント材料(例えば、メッシュ)の周りに適合してそれを収容し、ベース4の幅にわたって及びその長さに沿ってコネクタ24の摺動移動を可能にする内側開口部34(破線に示す)を含むことができる。
【0041】
図6A(側面図)及び6B(上面図)は、インプラント2の代替実施形態を示している。図示するのは、インプラントの遠位端にある遠位ベース端6とインプラントの近位端にある近位ベース端8の間に固定長のインプラント材料(例えば、連続的なインプラント材料)を有するベース4を含むY形状インプラントである。仙骨リーフ10は、可動接合部12から遠位方向に遠位ベース端6まで延びる。第1の膣リーフ14、例えば、前部膣リーフは、接合部12から近位方向に近位ベース端8まで延びる。第2の膣リーフ16、例えば、後部膣リーフは、接合部12から近位方向に延びる。各リーフ10、14、及び16は、独立に幅を有する。接合部12と遠位ベース端6の間のベース4の遠位部分(ベース4のこの部分は、仙骨リーフ10でもある)は、2層のインプラント材料で製造され、すなわち、膣リーフ14及び16と比べて倍密度(2倍の材料重量)である。2つの層は、必要に応じて、縫合糸28などによって仙骨リーフ10の遠位部分に取り付けられる(他の取り付け手段も有用であろう)。
【0042】
更に図6A及び6Bを参照すると、接合部12は、遠位ベース端6と近位ベース端8の間でベース4の長さに沿って移動可能な可動接合部である。第1の膣リーフ14は、近位ベース端8と可動接合部12の間を延び、膣リーフ14の長さは、近位ベース端8と遠位ベース端6の間の可動接合部12の移動によって増加させる又は減少させることができる(矢印参照)。仙骨リーフ10は、可動接合部12と遠位ベース端6の間を延びる。リーフ10、14、及び16の交差場所を意味する接合部12は、例えば、ベース4及び3つのリーフ10、14、及び16全てとの係合を維持しながらベース4の長さに沿って自由に移動することができる留め金又はスライダの形態の機械的コネクタ24を使用して移動可能である。図6A及び6Bに示すように、コネクタ24は、ベース4を構成するインプラント材料(例えば、メッシュ)の周りに適合してそれを収容し、ベース4の幅にわたって及びその長さに沿ってコネクタ24の摺動移動を可能にする内側開口部(破線に示す)を含むことができる。図6A及び6Bのインプラント2により、第2の膣リーフ16の遠位端20の場所は、コネクタ24の場所によって制御される。第2の膣リーフ16の長さ、すなわち、遠位端20(コネクタ12に対するその確実な取り付け場所での)と近位(自由)端22の間の距離は、結果としてコネクタ24の移動に基づいて調節可能である。
【0043】
図5A、5B、6A、及び6Bには示されないが、コネクタ24の好ましい特徴は、コネクタ24とベース4の間に選択的に摩擦を加えてコネクタ24をベース4のインプラント材料と摩擦係合させることができるロッキング係合、又は代わりにコネクタ24とベース4の間に選択的に摩擦を印加及び除去してコネクタ24をベース4のインプラント材料と摩擦的に係合させるか又は解除することができる摩擦係合(例えば、選択的に係合可能又は選択的ロッキング)である。
【0044】
図7A及び7Bに示すように、インプラント2は、コネクタ24とベース4の間に選択的に摩擦を印加及び除去することができる摩擦係合を有するコネクタ24を含む。ボタン25を選択的に押す又は解除してベース4に対して上下に移動させ(矢印参照)、及びコネクタ24(図示せず)の摩擦係合をベース4のインプラント材料と摩擦的に係合させるか又は解除することができる。ボタン25は、圧力が加えられない間は上がる(押下げられない)ように付勢され、これがコネクタ24の摩擦係合をベース4に係合させ、ベース4の長さに沿ったコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止する。使用時に、外科医は、ボタン25に圧力を加えることができ、これがコネクタ24の摩擦係合をベース4から解除し、ベース4に対するコネクタ24の自由な移動を可能にする。外科医がベース4の長さに沿ってコネクタ24の望ましい場所を識別すると、ボタン25が解除されてコネクタ24の摩擦係合がベース4に再係合し、再びベース4の長さに沿ったコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止する。
【0045】
図8A及び8Bを参照すると、示されているのは、コネクタ24を含むインプラント2の例である。コネクタ24は、選択的にベース4と係合して又は次に解除されてベース4の長さに沿うコネクタ24の移動をそれぞれ阻止又は可能にすることができる摩擦係合を含む。コネクタ24は、ハウジング32と、摩擦係合30(歯、細長い延長部、バンプ、尖端、反復(例えば、ギザギザ面など)と、バネ27と、ハウジング32の遠位端40からハウジング32の近位端42まで延びる開口部34とを含む。
【0046】
図8Aに示すように、延びるようにボタンを付勢する(図8B参照)バネ27を押圧するためにコネクタ24のボタン25が押し下げられる。図8Aにおいて、摩擦係合30は、同じくコネクタ24の内部に存在して遠位端40と近位端42の間で開口部34内に延びるベース4のインプラント材料と摩擦係合しない位置まで(ボタン25と共に)押下げられる。この構成では、ボタン25を押し下げた状態で、コネクタ24をベース4の長さに沿って自由に移動し、インプラント2の1又は2以上のリーフの長さを増加させる又は減少させることができる。図示の摩擦係合30は、ベース4のインプラント材料を貫通し、例えば、インプラント材料の貫通ボア(例えば、移植可能なメッシュ材料の細孔、又は移植可能なメッシュ材料に形成されたより大きい開口部)を貫通して延びる。これに代えて、ベース4の長さに沿うコネクタ24の移動を抑制又は阻止するのに十分な力を用いて対向面31(これは、平坦であるか又はそれ自体の摩擦特徴を含むとすることができる)に対してインプラント材料を押圧することなどにより、摩擦係合30は、単にインプラント材料に圧力を掛けるだけである場合がある。
【0047】
更に図8A及び8Bを参照すると、ボタン25を選択的に押す又は解除してベース4に対して上下に移動させ(矢印参照)、及びコネクタ24内部の摩擦係合30をベース4のインプラント材料と摩擦的に係合させるか又は解除することができる。ボタン25は、圧力が加えられない間は上がるようにバネ27によって付勢され、すなわち、ベース4に対するコネクタ24の摩擦係合がそれによってベース4の長さに沿ったコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止するように付勢される。使用時に、外科医は、ボタン25に圧力を加えることができ、ボタン25を押下げてコネクタ24の摩擦係合30をベース4から解除し、ベース4に対するコネクタ24の自由な移動を可能にする。図8Aを参照されたい。外科医がベース4の長さに沿ってコネクタ24の望ましい場所を識別すると、ボタン25が解除されて、コネクタ24の摩擦係合30がベース4に再係合し、再びベース4の長さに沿ったコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止する。図8Bを参照されたい。
【0048】
図9A及び9Bを参照すると、示されているのは、接合部12でのインプラント2及びコネクタ24の別の代替例である。コネクタ24は、図8A及び8Bのコネクタ特徴を含み、それに加えて、ボタン25と選択的に係合(図9A)及び解除(図9B)することができるブロック46を含む。ブロック46がボタン25と係合すると、ボタン25は押し下げられ、摩擦係合30はベース4のインプラント材料から解除される。この構成では、コネクタ24は、ベース4に対して移動することができる。外科医がベース4の長さに沿ってコネクタ24の望ましい場所を識別すると、ボタン25からブロック46を外すことによってボタン25を解除することができ、図9Bに示すように、摩擦係合30がベース4に係合して、ベース4の長さに沿ったコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止する。
【0049】
ここで図10A及び10Bを参照すると、示されているのは、接合部12での代替コネクタ24を含むインプラント2の例である。コネクタ24は、ハウジング32、可動摩擦係合60、ハウジング32の遠位端40からハウジング32の近位端42まで延びる開口部34、及びシャフト62を受け入れるようになったハウジング32内の開口部66、並びに図8A、8B、9A、及び9Bのコネクタ24と類似する他の特徴を含む。
【0050】
図10A及び10Bのコネクタ24は、(任意的な)延長部又は歯64がそこから延びるペグ又はシャフト62を含む摩擦(例えば、ロッキング)係合60、又は開口部66内へのかつそれを通るシャフト62の移動を可能にして係合60の逆移動を抑制するか又は阻止する他の摩擦機構を含む。摩擦係合60は、最初に、ベース4の長さに沿って遠位かつ近位へのコネクタ24の移動を可能にするように解除されているものとすることができる。この構成では、摩擦係合60を解除した状態で、コネクタ24をベース4の長さに沿って自由に移動し、インプラント2の1又は2以上のリーフの長さを増加させる又は減少させることができる。外科医がベース4の長さに沿ってコネクタ24の望ましい場所を識別すると、摩擦係合60は、ベース4のインプラント材料に向けてその内部に又はそれを通過して、次にハウジング32の開口部66を通して押し込まれるものとすることができる。図10Bを参照すると、ベース4の長さに沿うコネクタ24の移動を抑制して実質的に阻止する方式で、ベース4及びハウジング32に係合した摩擦係合60が示されている。シャフト62のサイズは、編成又は織成によるその製造に起因して典型的にインプラント材料内の細孔又は他の開口部又は開口のようなベース4のインプラント材料の開口部に係合するようになっているものとすることができる。これに代えて、ベース4のインプラント材料は、シャフト62が通過するようになった拡張、切断、又は穿孔された開口部及び任意的な補強部(例えば、鳩目)を有することができる。この拡張、切断、又は穿孔された開口部は、外科医が、選択し、次にインプラント材料を貫通してハウジング32の開口部66を通る摩擦係合60の移動によって定位置にコネクタ24をロックすることを可能にするベース上の位置に位置付けることができる。
【0051】
ここで図11及び12(側面図)を参照すると、女性の解剖学的構造のある一定の関連の特徴が子宮を摘出された患者で示されている。図示の解剖学的構造は、膣(V)100、前部膣組織102、後部膣組織104、膀胱(B)108、直腸(R)110、仙骨(S)112(すなわち、仙骨岬角及び前仙骨靱帯などを含む仙骨の解剖学的構造領域であるが、いずれも特に示されていない)、及び膣円蓋(すなわち、膣尖部)120を含む。
【0052】
説明するようなインプラントを配置する方法は、従来の公知の仙骨膣固定術の1又は2以上の段階を含む外科技術によって実施することができる。この手順は、非頂端膣脱、頂端脱出、又は非頂端膣脱と頂端膣脱の組合せを治療するのに有用である可能性がある。有用な手順は、非頂端膣組織(例えば、前部膣組織又は後部膣組織)、膣カフ、又はその組合せの領域を外科的インプラントを通して仙骨の解剖学的構造(例えば、仙骨(骨自体)の近くの仙棘靱帯、子宮仙骨靭帯、仙骨の又はその近くの筋膜、又は仙骨岬角の前縦靱帯)に対して吊るす(メッシュのストリップのようなインプラントを使用して)ことを必要とする。
【0053】
この外科的インプラントは、非頂端脱出を治療するのに後部膣組織上に配置される支持と比べて前部膣組織に差別的張力又は支持を配置する段階を含む本明細書に記載の方法を実施するのに有用であると決定されることになるあらゆる外科的インプラントとすることができる。調節可能インプラントの例を本明細書に説明して例示するが、後部組織と対比して前部組織に差別的張力を印加する本明細書に説明するような調節可能インプラントを使用する方法は、いずれもある一定のインプラント設計に限定されずかつ必要とせず、例えば、目下説明している調節可能インプラントの使用を必要としない。他の調節可能Yタイプ外科的インプラントは公知であり、本明細書に記載の方法で有用である可能性がある。例えば、米国特許出願第2012/0184805号明細書及び第2013/0109910号明細書を参照されたい。それらの開示は、引用によりその内容全体が本明細書に組み込まれている。本明細書に具体的に説明するインプラントに加えて、これらの特許文献のインプラント、又はそれらの修正特徴又は改造又は変形は、非頂端後部膣組織と比べて非頂端前部膣組織に差別的張力又は支持を印加する段階を含む本明細書に説明するような方法を実施するのに有用であると認めることができる。
【0054】
例示的方法により、調節可能Y形状インプラント(例えば、説明するような)は、第1の膣リーフを前部膣組織に固定し、第2の膣リーフを後部膣組織に固定し、かつ仙骨リーフを仙骨の解剖学的構造領域内の組織に固定して外科的に配置することができる。2つの膣リーフの配置、及び両リーフの膣組織への固定の後で、ユーザ(例えば、外科医)は、ベースの長さに沿って可動コネクタの場所を調節することができる。ベースに沿うコネクタの移動は、膣リーフの一方又は他方の長さを調節するのに(例えば、図3、4、及び11を参照)、又は膣リーフの両方の長さを同時に調節するのに(図12参照)有効であるとすることができる。図5A及び5Bに示すようなインプラントを使用する場合に、調節可能長さの膣リーフは、膣の一方の側の膣組織(例えば、非頂端前部膣組織)に外科的に固定することができ、固定長(接合部12に対して)の第2の膣リーフは、膣の第2の側(例えば、非頂端後部膣組織;図3及び11参照)に外科的に固定することができる。これに代えて、固定長の膣リーフを前部膣組織に外科的に固定した状態で、調節可能長さの膣リーフは、後部膣組織に外科的に固定することができる(図4参照)。
【0055】
外科的な方法の例示的段階は、必要に応じて2つの膣リーフを切り取って、前部及び後部膣組織に適合させる段階を含む。外科医は、次に、例えば、膀胱瘤、直腸瘤、又はその両方のような疾患の程度及びタイプに応じて、前部及び後部膣組織の各々に対して別々に印加する支持及び張力の望ましいレベルを決定することができる。支持及び張力の相対量は、膣リーフのうちの1又は2以上の長さを調節する可動コネクタの移動によって達成することができ、可動コネクタの望ましい場所が決定された状態で、例えば、可動コネクタの摩擦係合又はロッキング係合を起動することにより、コネクタを所定位置に固定することができる。これらの段階中又はその後に、外科医は、仙骨リーフに配置する仙骨張力の望ましい量を決定することができ、仙骨リーフは、例えば、仙骨岬角のような患者の仙骨の解剖学的構造領域で組織に取り付けることができる。
【0056】
有用な方法は、腹部切開により、膣切開により、腹腔鏡下で、又は任意的にロボット手術機器を使用して行うことができる。本明細書のものとは異なるが、1又は2以上の方法段階を共通して有する場合がある公知の方法の例は、米国特許出願公開第2002/0028980号明細書、第2010/0184805号明細書、第2014/0005471号明細書、第2015/0057491号明細書、第2013/0109910号明細書、及び米国特許第8、109、867号明細書、第8、720、446号明細書、及び第8、956、276号明細書に説明されており、これら文献の内容全体は、引用により本明細書に組み込まれている。図11を参照すると、例えば、図5A及び5Bに示すように、前部膣リーフ14、後部膣リーフ16、仙骨リーフ10、及び調節機構(例えば、可動コネクタ24)を含む調節可能Y形状インプラントが示されている。非頂端膣組織を支持するために子宮なしの患者に外科的に配置される場合に、インプラント2は、前部膣リーフ14を前部膣組織102に取り付け、後部膣リーフを後部膣組織102に取り付け、かつ仙骨リーフ10を仙骨の解剖学的構造領域で組織に取り付けた状態で配置され、インプラント2と膣リーフに固定された膣組織とを支持する。移植中に、摺動接合部は、医師によりベース(4)メッシュ上の異なる場所に配置されるものとすることができる。ベース(4)の長さに沿った摺動接合部の場所は、仙骨リーフに加えられる張力(T)が前部膣リーフ(張力T1を有する)と後部膣リーフ(張力T2を有する)の間でどのように分配されるかを決定することになる。図11を参照すると、T=T1+T2が示されている。
【0057】
図12は多くの点で類似するが、図6A及び6Bで説明したインプラント2を示すという点で異なっている。
本発明は、以下のような態様であってもよい。
(1)女性患者における膣円蓋脱出を治療する方法であって、前部膣リーフと、後部膣リーフと、仙骨リーフとを含むY形状インプラントを用意する段階であって、該3つのリーフが接合部で接続され、該前部膣リーフ及び該後部膣リーフのうちの少なくとも一方が調節可能長さ膣リーフであり、該接合部と該膣リーフの近位端との間の該膣リーフの長さが調節可能である、前記用意する段階と、前記前部膣リーフを患者の前部膣組織に取り付ける段階と、前記後部膣リーフを前記患者の後部膣組織に取り付ける段階と、前記後部膣組織に前記インプラントによって印加される張力の量に対して前記前部膣組織に該インプラントによって印加される張力の量を増加させる又は減少させるために前記少なくとも一方の調節可能長さ膣リーフの前記長さを調節する段階と、を含むことを特徴とする方法。
(2)前記前部膣リーフを前記前部膣組織に取り付けた後かつ前記後部膣リーフを前記後部膣組織に取り付けた後に、該後部膣組織に前記インプラントによって印加される前記張力の量に対して該前部膣組織に該インプラントによって印加される該張力の量を増加させる又は減少させるために前記少なくとも一方の調節可能長さ膣リーフの前記長さを調節する段階を含む。
(3)前記長さを調節した後に、前記仙骨リーフを前記患者の仙骨解剖学的構造の領域で組織に取り付ける段階を含む。
(4)方法が、膀胱瘤を治療する段階を含み、前記調節する段階は、前記後部膣組織上に配置される前記張力の量に比べてより大きい張力の量を前記非頂端前部膣組織上に配置する段階を含む。
(5)方法が、直腸瘤を治療する段階を含み、前記調節する段階は、前記後部膣組織上に配置される前記張力の量に比べてより大きい張力の量を前記非頂端後部膣組織上に配置する段階を含む。
(6)前記調節する段階は、前記接合部と前記前部膣組織への前記前部膣リーフの取り付けの第1の位置との間のインプラント材料の長さが、該接合部と前記後部膣組織への前記後部膣リーフの取り付けの第1の位置との間のインプラント材料の長さよりも小さいように、前記少なくとも一つの調節可能長さ膣リーフの前記長さを調節する段階を含む。
(7)前記調節する段階は、前記接合部と前記前部膣組織への前記前部膣リーフの取り付けの第1の位置との間のインプラント材料の長さが、該接合部と前記後部膣組織への前記後部膣リーフの取り付けの第1の位置との間のインプラント材料の長さよりも大きいように、前記少なくとも一つの調節可能長さ膣リーフの前記長さを調節する段階を含む。
(8)方法が、直腸瘤、小腸瘤、又はその組合せを治療する段階を含み、前記調節する段階は、前記前部膣組織上に配置される前記張力の量に比べてより大きい張力の量を前記後部膣組織上に配置する段階を含む。
(9)前記インプラントは、前記仙骨リーフがある第1の端部と前記第1の膣リーフがある第2の端部との間の開放細孔インプラント材料の長さと、幅とを含むベースと、緩んだ端部と、近位端と、該緩んだ端部と該近位端の間の長さと、幅とを含む前記第2の膣リーフと、を含み、前記第2の膣リーフは、前記ベースと出会って可動接合部を形成し、該可動接合部は、該ベースの前記長さに沿った該接合部の位置の移動を可能にする。
(10)前記前部及び後部膣組織に不均等な張力を印加するように前記インプラントを調節する段階を含む。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12