(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光源として半導体発光素子を用いる照明装置において、適切な光量の照明光を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、車両に搭載される照明装置であって、
電圧源に直列接続された半導体発光素子、少なくとも一つの第一PTC(正温度係数)サーミスタ、および第一固定抵抗と、
前記第一PTCサーミスタを支持している第一基板と、
前記半導体発光素子と前記第一固定抵抗の少なくとも一方から前記第一PTCサーミスタへの熱伝導を抑制する熱伝導抑制部と、
を備えている。
【0006】
適切な光量の照明光を得るためには、PTCサーミスタを通じて半導体発光素子の環境温度を正確に把握することが必要である。しかしながら、本開示の発明者たちは、以下の事実を見出した。光源駆動回路に含まれる固定抵抗や半導体発光素子などの回路要素から発生する熱は、基板を通じてPTCサーミスタに伝わる。この熱がPTCサーミスタの素子温度を上昇させてしまい、本来の素子温度と環境温度の対応関係が成立しなくなる。結果として、PTCサーミスタが半導体発光素子の環境温度を正確に把握できなくなる。
【0007】
上記のような構成によれば、他の回路要素の発熱に起因する第一PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、素子温度と環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子へ流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。結果として、光源として半導体発光素子を用いる照明装置において、適切な光量の照明光が得られる。
【0008】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板は、前記第一固定抵抗を支持しており、
前記熱伝導抑制部は、前記第一基板における前記第一固定抵抗と前記半導体発光素子の少なくとも一方から前記第一PTCサーミスタへの熱伝導経路上に形成されている第一スリットを含んでいる。
【0009】
第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から発生した熱は、第一PTCサーミスタに向かって第一基板を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に第一スリットが形成されているため、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から第一PTCサーミスタへの熱伝導を抑制できる。
【0010】
すなわち、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方の発熱に起因する第一PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、第一PTCサーミスタの素子温度と第一PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0011】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第一スリットを形成するという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0012】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板は、前記第一固定抵抗を支持しており、
前記第一固定抵抗と前記半導体発光素子の少なくとも一方と前記第一PTCサーミスタとを電気的に接続する第一導電パターンが前記第一基板上に形成されており、
前記熱伝導抑制部は、前記第一導電パターンの幅が狭められている部分を含んでいる。
【0013】
第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から発生した熱は、第一PTCサーミスタに向かって第一導電パターンを伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に位置する第一導電パターンの一部の幅が狭められているため、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から第一PTCサーミスタへの熱伝導を抑制できる。
【0014】
すなわち、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方の発熱に起因する第一PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、第一PTCサーミスタの素子温度と第一PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0015】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第一導電パターンの一部の幅を狭めるという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0016】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板は、前記第一固定抵抗を支持しており、
前記第一固定抵抗と前記半導体発光素子の少なくとも一方と前記第一PTCサーミスタとを電気的に接続する第一導電パターンが前記第一基板の第一主面上に形成されており、
前記熱伝導抑制部は、前記第一導電パターンと前記第一基板の第二主面上に形成された導電パターンを電気的に接続する第一スルーホールを含んでいる。
【0017】
第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から発生した熱は、第一PTCサーミスタに向かって第一導電パターンを伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱は、第一スルーホールを通じて第一基板の第二主面上に形成された導電パターンへ逃がされる。これにより、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から第一PTCサーミスタへの熱伝導を抑制できる。また、第一スルーホールは、第一PTCサーミスタから発生した熱を逃がす機能も有しうる。
【0018】
すなわち、第一PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、第一PTCサーミスタの素子温度と第一PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0019】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第一導電パターンに第一スルーホールを形成するという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0020】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一PTCサーミスタを支持している第一基板と、
前記半導体発光素子と前記第一固定抵抗を支持している第二基板と、
を備えており、
前記熱伝導抑制部は、前記第一基板と前記第二基板を隔離している隙間を含んでいる。
【0021】
第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方から発生した熱は、第二基板を伝わる。上記のような構成によれば、隙間によってそのような熱の第一基板への伝達が阻止される。
【0022】
すなわち、第一固定抵抗と半導体発光素子の少なくとも一方の発熱に起因する第一PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、第一PTCサーミスタの素子温度と第一PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0023】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、隙間で二枚の基板を隔離するという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0024】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板に支持されている第二PTCサーミスタを備えており、
前記熱伝導抑制部は、前記第一基板における前記第一PTCサーミスタと前記第二PTCサーミスタ間の熱伝導経路上に形成されている第二スリットを含んでいる。
【0025】
第一PTCサーミスタから発生した熱は、第二PTCサーミスタに向かって第一基板を伝わる。同様に、第二PTCサーミスタから発生した熱は、第一PTCサーミスタに向かって第一基板を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に第二スリットが形成されているため、第一PTCサーミスタと第二PTCサーミスタ間の熱伝導を抑制できる。
【0026】
すなわち、他のPTCサーミスタの発熱に起因する各PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタの素子温度と当該PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の各PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0027】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第二スリットを形成するという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0028】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板に支持されている第二PTCサーミスタを備えており、
前記第一PTCサーミスタと前記第二PTCサーミスタを並列接続する第二導電パターンが前記第一基板上に形成されており、
前記熱伝導抑制部は、前記第二導電パターンの幅が狭められている部分を含んでいる。
【0029】
第一PTCサーミスタから発生した熱は、第二PTCサーミスタに向かって第二導電パターンを伝わる。同様に、第二PTCサーミスタから発生した熱は、第一PTCサーミスタに向かって第二導電パターンを伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に位置する第二導電パターンの一部の幅が狭められているため、第一PTCサーミスタと第二PTCサーミスタ間の熱伝導を抑制できる。
【0030】
すなわち、他のPTCサーミスタの発熱に起因する各PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタの素子温度と当該PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の各PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0031】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第二導電パターンの一部の幅を狭めるという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0032】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一基板に支持されている第二PTCサーミスタを備えており、
前記第一PTCサーミスタと前記第二PTCサーミスタを並列接続する第二導電パターンが前記第一基板の第一主面上に形成されており、
前記熱伝導抑制部は、前記第二導電パターンと前記第一基板の第二主面に形成された導電パターンを電気的に接続する第二スルーホールを含んでいる。
【0033】
第一PTCサーミスタから発生した熱は、第二導電パターンを介して第二PTCサーミスタに向かう。そのような熱は、第一スルーホールと第二スルーホールを通じて第一基板の第二主面に形成された導電パターンへ逃がされる。同様に、第二PTCサーミスタから発生した熱は、第二導電パターンを介して第一PTCサーミスタに向かう。そのような熱は、第二スルーホールと第一スルーホールを通じて第一基板の第二主面に形成された導電パターンへ逃がされる。これにより、第一PTCサーミスタと第二PTCサーミスタ間の熱伝導を抑制できる。
【0034】
すなわち、各PTCサーミスタの素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタの素子温度と当該PTCサーミスタにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の各PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0035】
上記の構成においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、第二導電パターンに第二スルーホールを形成するという簡易な手法を採用している。したがって、照明装置の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0036】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一固定抵抗と前記第一PTCサーミスタが直列に接続された回路に対して並列に接続された第二固定抵抗を備えている。
【0037】
第二固定抵抗は、第一固定抵抗と第一PTCサーミスタが直列に接続された回路を流れる電流の値を底上げする効果を有している。これにより、温度上昇によって第一PTCサーミスタの抵抗値が上昇して各発光素子を流れる電流が制限されても、比較的高い光量を維持できる。すなわち、この構成は、光源の高輝度化に適している。
【0038】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一PTCサーミスタに対して並列に接続された第三固定抵抗を備えている。
【0039】
第三固定抵抗は、第一PTCサーミスタの感度(すなわち電流制限を開始する温度と制限の程度)を調節する効果を有している。これにより、適当な値の固定抵抗を追加するのみの簡易な手法で、光源駆動回路の動作を調節できる。
【0040】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記半導体発光素子から出射された光を反射するリフレクタを備えており、
前記第一固定抵抗と前記第一PTCサーミスタは、前記リフレクタに覆われていない。
【0041】
このような構成によれば、第一固定抵抗と第一PTCサーミスタの放熱性を向上できる。これにより、例えばリフレクタ内に籠もった熱が第一PTCサーミスタの素子温度に与える影響を抑制できる。したがって、半導体発光素子に流れる電流の第一PTCサーミスタの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0042】
上記の照明装置は、以下のように構成されうる。
前記第一固定抵抗は、前記第一基板における上方を向く面に支持されている。
【0043】
このような構成によっても、第一固定抵抗の放熱性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0046】
添付の図面において、矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。以降の説明に用いる「左」および「右」は、運転席から見た左右の方向を示している。このような定義は説明の便宜のためであって、当該構造が実際に使用されるときの方向を限定する意図はない。
【0047】
図1は、一実施形態に係る前照灯装置1を示している。前照灯装置1は、車両に搭載される照明装置の一例である。
【0048】
前照灯装置1は、ハウジング2と透光カバー3を備えている。ハウジング2と透光カバー3は、灯室4を区画している。
【0049】
図2は、前照灯装置1を
図1における矢印IIに沿う方向から見た外観を示している。但し、透光カバー3の図示は省略している。
図1は、
図2における線I−Iに沿って矢印方向から見た断面を示している。
図3は、前照灯装置1を
図1における線III−IIIに沿って矢印方向から見た断面を示している。
【0050】
前照灯装置1は、ランプユニット5を備えている。ランプユニット5は、灯室4内に配置されている。ランプユニット5は、第一リフレクタ51、第二リフレクタ52、および基板53を備えている。
【0051】
基板53は、上面53aと下面53bを有している。
図4は、基板53の上面53aの外観を示している。
図5は、基板53の下面53bの外観を示している。
【0052】
ランプユニット5は、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533を備えている。
図4に示されるように、第一発光素子531と第二発光素子532は、基板53の上面53aに支持されている。
図5に示されるように、第三発光素子533は、基板53の下面53bに支持されている。第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533の各々は、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子である。
【0053】
図2に示されるように、第一リフレクタ51は、第一反射面51aと第二反射面51bを有している。第一反射面51aは、第一発光素子531から出射された光を所定の方向へ反射するように配置されている。第二反射面51bは、第二発光素子532から出射された光を所定の方向へ反射するように配置されている。本実施形態においては、第一リフレクタ51によって反射された光は、車両の前方にロービームパターンを形成する。
【0054】
図1に示されるように、第二リフレクタ52は、第三反射面52aを有している。第三反射面52aは、第三発光素子533から出射された光を所定の方向へ反射するように配置されている。本実施形態においては、第二リフレクタ52によって反射された光は、車両の前方にハイビームパターンを形成する。
【0055】
図1から
図3に示されるように、前照灯装置1は、光軸調節機構6を備えている。ランプユニット5は、光軸調節機構6を介してハウジング2に支持されている。光軸調節機構6は、ピボット軸61とエイミングスクリュー62を備えている。
【0056】
ピボット軸61は、ボールジョイントを介してランプユニット5とハウジング2を連結している。
【0057】
エイミングスクリュー62は、軸部62aと操作部62bを有している。軸部62aは、ハウジング2の背板2aを貫通して前後方向に延びている。操作部62bは、背板2aの後方、すなわちハウジング2の外側に配置されている。軸部62aの外周面にはネジ溝が形成されている。ランプユニット5の一部にはナット54が形成されており、当該ネジ溝と螺合している。
【0058】
操作部62bが所定の工具により回転されると、エイミングスクリュー62の回転が、ナット54を介してランプユニット5の姿勢を垂直面内(
図2における前後方向と上下方向を含む面内)で変化させる動きに変換される。これにより、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533の各光軸の向きが垂直面内において調節されうる。なお、当該「垂直面」が厳密な鉛直面と一致している必要はない。
【0059】
図4に示されるように、ランプユニット5は、複数の抵抗素子534と複数のPTC(正温度係数)サーミスタ535を備えている。PTCサーミスタ535は、抵抗値と温度が正の相関を有するサーミスタである。複数の抵抗素子534と複数のPTCサーミスタ535は、基板53の上面53aに支持されている。
【0060】
第一発光素子531、第二発光素子532、第三発光素子533、複数の抵抗素子534、および複数のPTCサーミスタ535は、
図6に示される光源駆動回路530の一部を構成している。
【0061】
光源駆動回路530は、端子T1を備えている。端子T1は、不図示の電圧源と電気的に接続される。当該電圧源は、前照灯装置1が備えていてもよいし、前照灯装置1が搭載される車両に設けられていてもよい。
【0062】
光源駆動回路530は、端子T2を備えている。端子T2は、接地電位などのコモン電位と電気的に接続される。
【0063】
複数のPTCサーミスタ535は、並列に接続されている。複数のPTCサーミスタ535は、端子T1と直列に接続されている。
【0064】
複数の抵抗素子534は、第一固定抵抗R1を含んでいる。第一固定抵抗R1は、複数のPTCサーミスタ535と直列に接続されている。
【0065】
第一発光素子531は、第一固定抵抗R1と直列に接続されている。第二発光素子532は、第一発光素子531と直列に接続されている。第三発光素子533は、第二発光素子532と直列に接続されている。
【0066】
光源駆動回路530は、切替回路SWを備えている。切替回路SWは、第三発光素子533を端子T2に直列接続する第一経路C1と、第三発光素子533を迂回し固定抵抗R0を介して第二発光素子532を端子T2に直列接続する第二経路C2との間を切り替え可能に構成されている。
【0067】
切替回路SWが第一経路C1を選択すると、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533の全てが点灯され、車両の前方にロービームパターンとハイビームパターンが形成される。切替回路SWが第二経路C2を選択すると、第一発光素子531と第二発光素子532のみが点灯され、車両の前方にロービームパターンのみが形成される。
【0068】
PTCサーミスタ535は、各発光素子が自身のジャンクション温度を超えないようにする機能を有している。各発光素子に過電流が流れ続けると、ジャンクション温度を超える虞がある。あるいは、各発光素子の環境温度が上昇することによっても、ジャンクション温度を超える虞がある。前述のように、PTCサーミスタ535は、その抵抗値と温度が正の相関を有している。したがって、素子の温度が高くなるほど抵抗値が高くなる。PTCサーミスタ535は、この特性を利用して前述した事態の発生を防止する。
【0069】
例えば、電圧源から供給される電圧が上昇することによりPTCサーミスタ535に流れる電流が増えると、PTCサーミスタ535自身が発熱することによって素子温度が上昇する。これにより、PTCサーミスタ535の抵抗値が上昇し、各発光素子に流れる電流が制限される。したがって、各発光素子に過電流が流れる事態が回避される。
【0070】
あるいは、各発光素子が配置されている環境(灯室4など)の温度上昇によってもPTCサーミスタ535の素子温度が上昇する。これにより、PTCサーミスタ535の抵抗値が上昇し、各発光素子に流れる電流が制限される。したがって、各発光素子の温度上昇が抑制される。
【0071】
すなわち、適切な光量の照明光を得るためには、PTCサーミスタを通じて発光素子の環境温度を正確に把握することが必要である。しかしながら、本開示の発明者たちは、以下の事実を見出した。光源駆動回路に含まれる抵抗素子や発光素子などの回路要素から発生する熱は、基板を通じてPTCサーミスタに伝わる。この熱がPTCサーミスタの素子温度を上昇させてしまい、本来の素子温度と環境温度の対応関係が成立しなくなる。結果として、PTCサーミスタが発光素子の環境温度を正確に把握できなくなる。
【0072】
上記の知見に基づき、本実施形態に係る前照灯装置1は、抵抗素子534、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533の少なくとも一つからPTCサーミスタ535への熱伝導を抑制する熱伝導抑制部7を備えている。
【0073】
このような構成によれば、他の回路要素の発熱に起因するPTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、素子温度と環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、発光素子へ流れる電流のPTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。結果として、光源として半導体発光素子を用いる前照灯装置1において、適切な光量の照明光が得られる。
【0074】
次に
図7を参照しつつ、熱伝導抑制部7の具体例について説明する。
図7は、
図5に示された基板53の上面53aの一部を拡大して示している。前述した複数のPTCサーミスタ535は、四つのPTCサーミスタ535a、535b、535c、535dを含んでいる。
図5における第一固定抵抗R1に対応する抵抗素子は、符号534(R1)で示されている。
【0075】
熱伝導抑制部7は、基板53に形成された二つのスリットS1を含んでいる。各スリットS1は、基板53の上面53aと下面53bを連通している。各スリットS1は、PTCサーミスタ535aと抵抗素子534(R1)の間に形成されている。換言すると、各スリットS1は、抵抗素子534(R1)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導経路上に形成されている。基板53は、第一基板の一例である。スリットS1は、第一スリットの一例である。PTCサーミスタ535aは、第一PTCサーミスタの一例である。
【0076】
光源駆動回路530の動作中に抵抗素子534(R1)から発生した熱は、PTCサーミスタ535aに向かって基板53を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上にスリットS1が形成されているため、抵抗素子534(R1)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0077】
すなわち、抵抗素子534(R1)の発熱に起因するPTCサーミスタ535aの素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535aの素子温度とPTCサーミスタ535aにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535aの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0078】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、スリットS1を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0079】
基板53の上面53aには、導電パターンP1が形成されている。導電パターンP1は、抵抗素子534(R1)とPTCサーミスタ535aを電気的に接続している。熱伝導抑制部7は、導電パターンP1の幅が狭められている部分を含んでいる。上面53aは、第一主面の一例である。導電パターンP1は、第一導電パターンの一例である。
【0080】
光源駆動回路530の動作中に抵抗素子534(R1)から発生した熱は、PTCサーミスタ535aに向かって導電パターンP1を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に位置する導電パターンP1の一部の幅が狭められているため、抵抗素子534(R1)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0081】
すなわち、抵抗素子534(R1)の発熱に起因するPTCサーミスタ535aの素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535aの素子温度とPTCサーミスタ535aにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535aの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0082】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP1の一部の幅を狭めるという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0083】
導電パターンP1におけるPTCサーミスタ535aの近傍に位置する領域には、複数のスルーホールH1が形成されている。各スルーホールH1の内周壁は、導電性部材で覆われている。これにより、各スルーホールH1は、基板53の上面53aに形成された導電パターンP1と、基板53の下面53bに形成された導電パターンP10(
図5参照)とを電気的に接続している。熱伝導抑制部7は、各スルーホールH1を含んでいる。スルーホールH1は、第一スルーホールの一例である。下面53bは、第二主面の一例である。
【0084】
光源駆動回路530の動作中に抵抗素子534(R1)から発生した熱は、PTCサーミスタ535aに向かって導電パターンP1を伝わる。上記のような構成によれば、PTCサーミスタ535aの近傍に到達した熱は、各スルーホールH1を通じて基板53の下面53bに形成された導電パターンP10へ逃がされる。これにより、抵抗素子534(R1)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。また、各スルーホールH1は、PTCサーミスタ535aから発生した熱を逃がす機能も有している。
【0085】
すなわち、PTCサーミスタ535aの素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535aの素子温度とPTCサーミスタ535aにより検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535aの素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0086】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP1にスルーホールH1を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0087】
同じ理由に基づき、導電パターンP1におけるPTCサーミスタ535b、535c、535dの各々の近傍に位置する領域にも、同様のスルーホールが形成されている。
【0088】
図7に示されるように、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535bは、導電パターンP1と導電パターンP2を介して並列接続されている。複数のPTCサーミスタを並列接続することにより、各発光素子へ流れる電流の量を増やすことができる。すなわち、この構成は、光源の高輝度化に適している。
【0089】
熱伝導抑制部7は、基板53に形成されたスリットS2を含んでいる。スリットS2は、基板53の上面53aと下面53bを連通している。スリットS2は、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535bの間に形成されている。換言すると、スリットS2は、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535b間の熱伝導経路上に形成されている。基板53は、第一基板の一例である。スリットS2は、第二スリットの一例である。PTCサーミスタ535aは、第一PTCサーミスタの一例である。PTCサーミスタ535bは、第二PTCサーミスタの一例である。
【0090】
光源駆動回路530の動作中にPTCサーミスタ535aから発生した熱は、PTCサーミスタ535bに向かって基板53を伝わる。同様に、PTCサーミスタ535bから発生した熱は、PTCサーミスタ535aに向かって基板53を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上にスリットS2が形成されているため、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535b間の熱伝導を抑制できる。
【0091】
すなわち、他のPTCサーミスタ535の発熱に起因する各PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタ535の素子温度と当該PTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流の各PTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0092】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、スリットS2を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0093】
同じ理由に基づき、PTCサーミスタ535bとPTCサーミスタ535c間の熱伝導経路上にも同様のスリットが形成されている。また、PTCサーミスタ535cとPTCサーミスタ535d間の熱伝導経路上にも同様のスリットが形成されている。
【0094】
熱伝導抑制部7は、導電パターンP1の幅が狭められている部分を含んでいる。当該部分は、PTCサーミスタ535bとPTCサーミスタ535cの間に位置しており、両者を並列接続している。導電パターンP1の幅が狭められている部分は、第二導電パターンの一例である。また、熱伝導抑制部7は、導電パターンP2の幅が狭められている部分を含んでいる。当該部分は、PTCサーミスタ535bとPTCサーミスタ535cの間に位置しており、両者を並列接続している。導電パターンP2の幅が狭められている部分は、第二導電パターンの一例である。
【0095】
光源駆動回路530の動作中にPTCサーミスタ535aから発生した熱は、PTCサーミスタ535bに向かって導電パターンP1と導電パターンP2を伝わる。同様に、PTCサーミスタ535bから発生した熱は、PTCサーミスタ535aに向かって導電パターンP1と導電パターンP2を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に位置する導電パターンP1の一部の幅と導電パターンP2の一部の幅が狭められているため、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535b間の熱伝導を抑制できる。
【0096】
すなわち、他のPTCサーミスタ535の発熱に起因する各PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタ535の素子温度と当該PTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流の各PTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0097】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP1の一部の幅と導電パターンP2の一部の幅を狭めるという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0098】
同じ理由に基づき、PTCサーミスタ535bとPTCサーミスタ535c間の熱伝導経路上に位置する導電パターンP1の幅と導電パターンP2の幅も狭められている。また、PTCサーミスタ535cとPTCサーミスタ535d間の熱伝導経路上に位置する導電パターンP1の幅と導電パターンP2の幅も狭められている。
【0099】
導電パターンP2におけるPTCサーミスタ535a、535bの各々の近傍に位置する領域には、複数のスルーホールH2が形成されている。各スルーホールH2の内周壁は、導電性部材で覆われている。これにより、各スルーホールH2は、基板53の上面53aに形成された導電パターンP1と、基板53の下面53bに形成された導電パターンP20(
図5参照)とを電気的に接続している。熱伝導抑制部7は、各スルーホールH2を含んでいる。スルーホールH2は、第二スルーホールの一例である。下面53bは、第二主面の一例である。
【0100】
光源駆動回路530の動作中にPTCサーミスタ535aから発生した熱は、導電パターンP2を介してPTCサーミスタ535bに向かう。そのような熱は、各スルーホールH1と各スルーホールH2を通じて基板53の下面53bに形成された導電パターン20へ逃がされる。同様に、PTCサーミスタ535bから発生した熱は、導電パターンP2を介してPTCサーミスタ535aに向かう。そのような熱は、各スルーホールH2と各スルーホールH1を通じて基板53の下面53bに形成された導電パターンP20へ逃がされる。これにより、PTCサーミスタ535aとPTCサーミスタ535b間の熱伝導を抑制できる。
【0101】
すなわち、各PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタ535の素子温度と当該PTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流の各PTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0102】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP2にスルーホールH2を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0103】
同じ理由に基づき、導電パターンP2におけるPTCサーミスタ535c、535dの各々の近傍に位置する領域にも、同様のスルーホールが形成されている。
【0104】
導電パターンP1におけるPTCサーミスタ535a、535b、535c、535dの各々の近傍に位置する領域に形成された各スルーホールH1も同じ役割を担いうる。
【0105】
熱伝導抑制部7は、基板53に形成された二つのスリットS3を含んでいる。各スリットS3は、基板53の上面53aと下面53bを連通している。各スリットS3は、各PTCサーミスタ535と第一発光素子531の間に形成されている。換言すると、各スリットS3は第一発光素子531から各PTCサーミスタ535への熱伝導経路上に形成されている。基板53は、第一基板の一例である。スリットS3は、第一スリットの一例である。PTCサーミスタ535は、第一PTCサーミスタの一例である。
【0106】
光源駆動回路530の動作中に第一発光素子531から発生した熱は、各PTCサーミスタ535に向かって基板53を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上にスリットS3が形成されているため、第一発光素子531から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0107】
すなわち、第一発光素子531の発熱に起因する各PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタ535の素子温度と各PTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流の各PTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0108】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、スリットS3を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0109】
前述した二つのスリットS1は、各PTCサーミスタ535と第二発光素子532の間に形成されている。換言すると、各スリットS1は、第二発光素子532から各PTCサーミスタ535への熱伝導経路上に形成されている。PTCサーミスタ535は、第一PTCサーミスタの一例である。
【0110】
光源駆動回路530の動作中に第二発光素子532から発生した熱は、各PTCサーミスタ535に向かって基板53を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上にスリットS1が形成されているため、第二発光素子532から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0111】
すなわち、第二発光素子532の発熱に起因する各PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、各PTCサーミスタ535の素子温度と各PTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流の各PTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0112】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、スリットS1を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0113】
図4から
図7を参照して説明した実施形態においては、電圧源側からPTCサーミスタ535、第一固定抵抗R1、および第一発光素子531の順に直列接続されている。しかしながら、直列接続がなされていれば、PTCサーミスタ535、第一固定抵抗R1、および第一発光素子531の順序は任意である。また、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533の接続順序も任意である。したがって、PTCサーミスタ535あるいは第一固定抵抗R1との直接的な電気的接続に供される発光素子は、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533から任意に選ばれうる。
【0114】
図8は、そのような変形例に係る光源駆動回路530Aを示している。本例においては、電圧源側から第一固定抵抗R1、PTCサーミスタ535、および第一発光素子531の順に直列接続されている。
【0115】
図示を省略するが、この場合、第一発光素子531とPTCサーミスタ535を電気的に接続する導電パターンP3が基板53の上面53aに形成される。したがって、熱伝導抑制部7は、導電パターンP3の幅が狭められている部分を含みうる。導電パターンP3は、第一導電パターンの一例である。
【0116】
光源駆動回路530Aの動作中に第一発光素子531から発生した熱は、PTCサーミスタ535に向かって導電パターンP3を伝わる。上記のような構成によれば、そのような熱伝導経路上に位置する導電パターンP3の一部の幅が狭められているため、第一発光素子531からPTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0117】
すなわち、第一発光素子531の発熱に起因するPTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535の素子温度とPTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0118】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP3の一部の幅を狭めるという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0119】
これに加えてあるいは代えて、導電パターンP3におけるPTCサーミスタ535の近傍に位置する領域には、複数のスルーホールH3が形成されうる。各スルーホールH3の内周壁は、導電性部材で覆われる。図示を省略するが、各スルーホールH3は、基板53の上面53aに形成された導電パターンP3と、基板53の下面53bに形成された導電パターンとを電気的に接続する。熱伝導抑制部7は、各スルーホールH3を含みうる。スルーホールH3は、第一スルーホールの一例である。上面53aは、第一主面の一例である。下面53bは、第二主面の一例である。
【0120】
光源駆動回路530の動作中に第一発光素子531から発生した熱は、PTCサーミスタ535に向かって導電パターンP3を伝わる。上記のような構成によれば、PTCサーミスタ535の近傍に到達した熱は、各スルーホールH3を通じて基板53の下面53bに形成された導電パターンへ逃がされる。これにより、第一発光素子531からPTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。また、各スルーホールH3は、PTCサーミスタ535から発生した熱を逃がす機能も有している。
【0121】
すなわち、PTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535の素子温度とPTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0122】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、導電パターンP3にスルーホールH3を形成するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0123】
図6に破線で示されるように、光源駆動回路530は、第二固定抵抗R2を含みうる。第二固定抵抗R2は、第一固定抵抗R1とPTCサーミスタ535が直列に接続された回路に対して並列に接続される。
【0124】
第二固定抵抗R2は、第一固定抵抗R1とPTCサーミスタ535が直列に接続された回路を流れる電流の値を底上げする効果を有している。これにより、温度上昇によってPTCサーミスタ535の抵抗値が上昇して各発光素子を流れる電流が制限されても、比較的高い光量を維持できる。すなわち、この構成は、光源の高輝度化に適している。
【0125】
図7においては、第二固定抵抗R2に対応する抵抗素子を符号534(R2)で示している。本例においては、抵抗素子534(R2)とPTCサーミスタ535aの間に形成されているスリットS1によって、抵抗素子534(R2)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0126】
同様に、導電パターンP2における抵抗素子534(R2)とPTCサーミスタ535aの間に位置して幅が狭められている部分によって、抵抗素子534(R2)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0127】
同様に、導電パターンP2におけるPTCサーミスタ535aの近傍に形成されている複数のスルーホールH2によって、抵抗素子534(R2)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0128】
図6に破線で示されるように、光源駆動回路530は、第三固定抵抗R3を含みうる。第三固定抵抗R3は、PTCサーミスタ535に対して並列に接続される。
【0129】
第三固定抵抗R3は、PTCサーミスタ535の感度(すなわち電流制限を開始する温度と制限の程度)を調節する効果を有している。これにより、適当な値の固定抵抗を追加するのみの簡易な手法で、光源駆動回路530の動作を調節できる。
【0130】
図7においては、第三固定抵抗R3に対応する抵抗素子を符号534(R3)で示している。本例においては、抵抗素子534(R3)とPTCサーミスタ535c、535dの間に形成されているスリットS3によって、抵抗素子534(R3)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0131】
同様に、導電パターンP1における抵抗素子534(R3)とPTCサーミスタ535b、535cの間に位置して幅が狭められている部分によって、抵抗素子534(R2)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。また、導電パターンP2における抵抗素子534(R3)とPTCサーミスタ535dの間に位置して幅が狭められている部分によって、抵抗素子534(R2)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0132】
同様に、導電パターンP1における各PTCサーミスタ535の近傍に形成されている複数のスルーホールH1によって、抵抗素子534(R3)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。また、導電パターンP2における各PTCサーミスタ535の近傍に形成されている複数のスルーホールH2によって、抵抗素子534(R3)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0133】
図7においては、
図6に示された固定抵抗R0に対応する抵抗素子を符号534(R0)で示している。本例においては、抵抗素子534(R0)とPTCサーミスタ535a、535bの間に形成されているスリットS1によって、抵抗素子534(R0)からPTCサーミスタ535aへの熱伝導を抑制できる。
【0134】
同様に、導電パターンP1における抵抗素子534(R0)とPTCサーミスタ535a、535bの間に位置して幅が狭められている部分によって、抵抗素子534(R0)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0135】
同様に、導電パターンP1における各PTCサーミスタ535の近傍に形成されている複数のスルーホールH1によって、抵抗素子534(R0)から各PTCサーミスタ535への熱伝導を抑制できる。
【0136】
図3と
図4の比較から明らかなように、本実施形態においては、各抵抗素子534と各PTCサーミスタ535は、第一リフレクタ51に覆われていない。
【0137】
このような構成によれば、抵抗素子534とPTCサーミスタ535の放熱性を向上できる。これにより、例えば第一リフレクタ51内に籠もった熱がPTCサーミスタ535の素子温度に与える影響を抑制できる。したがって、第一発光素子531、第二発光素子532、および第三発光素子533に流れる電流のPTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0138】
図4に示されるように、各抵抗素子534は基板53の上面53aに支持されている。
【0139】
このような構成によっても、抵抗素子534の放熱性を向上できる。
【0140】
上記の各実施形態は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本開示の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0141】
上記の実施形態においては、第一発光素子531、第二発光素子532、第三発光素子533、抵抗素子534、およびPTCサーミスタ535が共通の基板53に支持されている。しかしながら、
図9に示されるように、第一基板53Aと第二基板53Bが設けられる構成も採用されうる。
【0142】
第一基板53Aは、PTCサーミスタ535を支持する。第二基板53Bは、第一発光素子531、第二発光素子532、第三発光素子533、および抵抗素子534を支持する。この場合、熱伝導抑制部7は、第一基板53Aと第二基板53Bを隔離する隙間Gを含む。第一基板53Aと第二基板53Bの間に形成される適宜の回路配線は図示を省略している。
【0143】
光源駆動回路の動作中に各発光素子や抵抗素子534から発生した熱は、第二基板53Bを伝わる。上記のような構成によれば、隙間Gによってそのような熱の第一基板53Aへの伝達が阻止される。
【0144】
すなわち、各発光素子や抵抗素子534の発熱に起因するPTCサーミスタ535の素子温度上昇を抑制できる。これにより、PTCサーミスタ535の素子温度とPTCサーミスタ535により検出される環境温度の対応関係を意図されたものに近づけることができる。したがって、各発光素子に流れる電流のPTCサーミスタ535の素子温度に基づく制御の正確性が向上する。
【0145】
本例においては、当該制御の正確性を得るために特殊な電流制御回路を設けるのではなく、隙間Gで二枚の基板を隔離するという簡易な手法を採用している。したがって、前照灯装置1の製品コストの上昇を抑制しつつ、適切な光量の照明光が得られる。
【0146】
本出願の記載の一部を構成するものとして、2017年2月17日に提出された日本国特許出願2017−027634号の内容が援用される。