(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに交差する第1方向及び第2方向に配列された複数の検出素子を含み、溶接対象に向けた超音波の送信及び反射波の検出を含む探査を実行する検出器から、前記反射波の検出結果を受信し、
前記検出結果から、前記溶接対象の前記第1方向及び前記第2方向に沿った複数の点で接合および未接合を判定する第1判定を実行し、
前記検出結果又は前記第1判定の結果に基づいて第1評価値を算出し、
複数の過去の前記第1評価値に基づいて第2評価値を算出し、
前記第1評価値と前記第2評価値との差を第1閾値と比較することで、前記第1判定の結果の適否を判定する第2判定を実行する、
処理装置を備えた処理システム。
互いに交差する第1方向及び第2方向に配列された複数の検出素子を含み、溶接対象に向けた超音波の送信及び反射波の検出を含む探査を実行する検出器から、前記反射波の検出結果を受信し、
前記検出結果から、前記溶接対象の前記第1方向及び前記第2方向に沿った複数の点で接合および未接合を判定する第1判定を実行し、
前記検出結果又は前記第1判定の結果に基づいて第1評価値を算出し、
複数の過去の前記第1評価値に基づいて第2評価値を算出し、
前記第1評価値と前記第2評価値との差を第1閾値と比較することで、前記第1判定の結果の適否を判定する第2判定を実行する、
処理装置。
互いに交差する第1方向及び第2方向に配列された複数の検出素子を含み、溶接対象に向けた超音波の送信及び反射波の検出を含む探査を実行する検出器から、前記反射波の検出結果を受信し、
前記検出結果から、前記溶接対象の前記第1方向及び前記第2方向に沿った複数の点で接合および未接合を判定する第1判定を実行し、
前記検出結果又は前記第1判定の結果に基づいて第1評価値を算出し、
複数の過去の前記第1評価値に基づいて第2評価値を算出し、
前記第1評価値と前記第2評価値との差を第1閾値と比較することで、前記第1判定の結果の適否を判定する第2判定を実行する、
処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る処理システムの構成を表すブロック図である。
図1に表したように、実施形態に係る処理システム100は、処理装置110及び記憶装置120を備える。記憶装置120は、溶接検査に関するデータを記憶する。処理装置110は、溶接検査に関するデータを処理する。
【0010】
図1に表した処理システム100は、検出器130、入力装置140、及び表示装置150をさらに備える。検出器130は、対象に向けて超音波を送信し、その反射波を検出(受信)する。検出器130は、例えばプローブを含む。以降では、検出器130による超音波の送信及び反射波の検出を、探査(プロ−ビング)という。
【0011】
処理装置110は、検出された反射波に基づいて、様々な処理を実行する。また、処理装置110は、表示装置150にユーザインタフェースを表示させる。ユーザは、表示装置150に表示されたユーザインタフェースを通して、処理によって得られたデータを容易に確認できる。また、ユーザは、入力装置140を用いて、ユーザインタフェースを介して処理装置110へデータを入力できる。
【0012】
処理装置110は、有線通信、無線通信、又はネットワークを介して記憶装置120、検出器130、入力装置140、及び表示装置150と接続される。
【0013】
ここで、溶接検査について具体的に説明する。溶接検査では、溶接部の非破壊検査が行われる。
【0014】
図2は、非破壊検査の様子を表す模式図である。
検出器130は、溶接部を検査するための複数の検出素子を含む。検出器130は、例えば
図2に表したように、人が手で把持できる形状を有する。検出器130を把持した人は、検出器130の先端を溶接部13に接触させ、溶接部13を検査する。ここでは、人が検出器130を把持し、溶接検査を実行する例について説明する。以降では、検出器130を把持し、溶接検査を実行する人(例えば検査者)を、ユーザという。
【0015】
図3は、検出器先端の内部構造を表す模式図である。
検出器130先端の内部には、
図3に表したように、複数の検出素子132を含む素子アレイ131が設けられている。検出素子132は、例えば、トランスデューサである。各検出素子132は、例えば、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。複数の検出素子132は、互いに交差する第1方向及び第2方向に配列されている。
図3に表した例では、複数の検出素子132は、互いに直交するX方向及びY方向に配列されている。
【0016】
素子アレイ131は、例えば硬質伝搬部材133により被覆されている。検出器130の先端を溶接部13に接触させた際、硬質伝搬部材133は、素子アレイ131と溶接部13との間に位置する。硬質伝搬部材133は、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。溶接部13の表面の形状に応じた硬質伝搬部材133を設けることで、溶接部13の内部まで超音波を伝搬させ易くなる。また、硬質伝搬部材133により、検出器130が溶接部13へ接触した際の素子アレイ131の変形、損傷などを抑制できる。硬質伝搬部材133は、溶接部13への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0017】
図2及び
図3は、溶接対象としての部材10を検査する様子を表している。部材10は、金属板11(第1部材)と金属板12(第2部材)が、溶接部13においてスポット溶接されて作製されている。
図3に表したように、溶接部13では、金属板11の一部と金属板12の一部が溶融し、混ざり合って凝固した凝固部14が形成されている。
【0018】
例えば、検査では、溶接部13が形成されているかを調べる。また、検査では、溶接部13の径、径が十分かどうか、などを調べる。検査時には、対象と検出器130との間で超音波が伝搬し易くなるように、対象の表面にカプラント15が塗布される。それぞれの検出素子132は、カプラント15が塗布された部材10に向けて超音波USを送信し、部材10からの反射波RWを受信する。
【0019】
又は、カプラント15に代えて、超音波が伝搬し易い軟質の伝搬部材が検出器130の先端に設けられていても良い。この軟質伝搬部材は、硬質伝搬部材133よりも軟らかい。溶接部13に接触した際、軟質伝搬部材は、溶接部13の表面の形状に倣って変形する。軟質伝搬部材は、例えばゲル状の樹脂で構成される。
【0020】
例えば
図3に表したように、1つの検出素子132が溶接部13に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、部材10の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子132のそれぞれは、この反射波RWを受信(検出)する。それぞれの検出素子132が順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子132で検出する。
【0021】
処理装置110は、反射波の検出結果が得られると、以下の第1判定及び第2判定を実行する。第1判定では、処理装置110は、得られた検出結果から、溶接対象の各点が接合されているか判定する。第2判定では、処理装置110は、反射波の検出結果又は第1判定の結果に基づいて、第1判定の結果の適否を判定する。
【0022】
以下で、第1判定及び第2判定について具体的に説明する。
【0023】
(第1判定)
図4は、実施形態に係る処理システムによる処理を説明するための模式図である。
図4(a)に表したように、超音波USの一部は、金属板11の上面11aまたは溶接部13の上面13aで反射される。超音波USの別の一部は、部材10に入射し、金属板11の下面11bまたは溶接部13の下面13bで反射する。
【0024】
上面11a、上面13a、下面11b、及び下面13bのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子132との間のZ方向における距離が、互いに異なる。検出素子132が、これらの面からの反射波を受信すると、反射波の強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか調べることができる。
【0025】
図4(b)及び
図4(c)は、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。
図4(b)及び
図4(c)において、縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。ここでは、反射波RWの強度を絶対値で表している。
図4(b)のグラフは、金属板11の上面11a及び下面11bからの反射波RWの検出結果を例示している。
図4(c)のグラフは、溶接部13の上面13a及び下面13bからの反射波RWの検出結果を例示している。
【0026】
図4(b)のグラフにおいて、1回目のピークPe11は、上面11aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe12は、下面11bからの反射波RWに基づく。ピークPe11及びピークPe12が検出された時間は、それぞれ、金属板11の上面11a及び下面11bのZ方向における位置に対応する。ピークPe11が検出された時間とピークPe12が検出された時間との時間差TD1は、上面11aと下面11bとの間のZ方向における距離Di1に対応する。
【0027】
同様に、
図4(c)のグラフにおいて、1回目のピークPe13は、上面13aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe14は、下面13bからの反射波RWに基づく。ピークPe13及びピークPe14が検出された時間は、それぞれ、溶接部13の上面13a及び下面13bのZ方向における位置に対応する。ピークPe13が検出された時間とピークPe14が検出された時間との時間差TD2は、上面13aと下面13bとの間のZ方向における距離Di2に対応する。
【0028】
処理装置110は、ピーク間の時間差が溶接部13の厚みに対応するか判定する。ピーク間の時間差が溶接部13の厚みに対応すると判定されると、その点は接合されていると判定される。例えば、処理装置110は、X−Y面内の各点において、ピーク間の時間差を、予め設定された閾値と比較する。時間差が閾値以上のとき、処理装置110は、その点が接合されていると判定する。時間差が閾値未満のとき、処理装置110は、その点が接合されていないと判定する。閾値は、溶接部13の厚みに基づいて設定される。閾値に代えて、範囲が設定されても良い。処理装置110は、時間差がその範囲に含まれるとき、その点が接合されていると判定する。
【0029】
なお、反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子132から出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0030】
図5は、実施形態に係る処理システムにより得られた画像の一例である。
図5は、反射波の検出結果に基づいて描写される画像である。
図5において、各点の輝度(白さ)は、その点における反射波の強度を表す。
図5に表したように、反射波の検出結果として3次元のボリュームデータが得られる。この反射波の検出結果に基づいて、溶接対象の各点の接合又は未接合が判定される。
【0031】
図6は、実施形態に係る処理システムによる処理を説明するための図である。
図6(a)は、溶接部13近傍を模式的に表す平面図である。検出器130によって検出された反射波に基づいて、例えば
図6(a)に表した検出エリアDAの各点が接合されているか判定される。
【0032】
図6(b)は、
図6(a)に表した線分Li1の各点における検出結果の一例を表す。
図6(b)において、縦軸は、X方向及びY方向に垂直なZ方向における位置を表す。横軸は、X方向における位置を表す。
図6(b)において、○(白丸)は、部材10の1つ目の反射面のZ方向における位置を表す。1つ目の反射面は、金属板11の上面11a、溶接部13の上面13aなどである。●(黒丸)は、部材10の2つ目の反射面のZ方向における位置を表す。2つ目の反射面は、金属板11の下面11b、溶接部13の下面13bなどである。これらの位置は、上述したように、超音波USを送信した後、反射波RWのピークが検出されるまでの時間に基づいて算出される。
図6(b)において、◆は、接合および未接合の判定結果を表す。接合されていると判定された点は、1の値で表され、未接合と判定された点は、0の値で表されている。
【0033】
図7は、実施形態に係る処理システムによる処理結果を表す画像の一例である。
上述した方法により、検出エリアDAの各点が接合されているかを判定する第1判定が実行される。処理装置110は、第1判定の結果に基づいて、例えば
図7に表す画像を生成する。
図7において、白色は、その点が接合されていることを表す。黒色は、その点が接合されていないことを表す。白点の集合に基づく第1領域R1は、溶接部13に対応する。黒点の集合に基づく第2領域R2は、溶接部13の周りの部材10に対応する。
【0034】
処理装置110は、第1領域R1の面積に基づいて、溶接対象における溶接の良否を判定しても良い。処理装置110は、第1領域R1の面積に基づいて、溶接部13の面積を算出しても良い。処理装置110は、第1領域R1の径に基づいて、溶接部13の径を算出しても良い。例えば、記憶装置120には、検出素子132同士の距離が予め記憶される。処理装置110は、第1領域R1の画素数及び記憶された距離を用いて、溶接部13の面積又は径を算出する。例えば、処理装置110は、径として、溶接部13の長径及び短径を算出する。処理装置110は、長径と短径の平均を算出しても良い。処理装置110は、第1領域R1の円相当径を、溶接部13の径として算出しても良い。第1領域R1の円相当径は、第1領域R1の面積を有し、その面積を有する仮想円の径を算出することで得られる。処理装置110は、算出されたいずれかの値を予め設定された閾値と比較することで、溶接対象における溶接の良否を判定する。
【0035】
第1領域R1は、白点の集合のみを含んでも良いし、一部の黒点を含んでも良い。例えば、処理装置110は、白点の集合と、白点の集合に囲まれた黒点と、を第1領域R1として設定する。白点の集合が複数存在する場合、処理装置110は、それらの白点の集合と、白点の集合同士の間に位置する黒点と、を第1領域R1として設定する。
【0036】
また、溶接部13の上面13a及び下面13bは、金属板11の上面11aに対して傾斜していることがある。これは、溶接部13が凝固部14を含むことや、溶接の過程における形状の変形などに基づく。この場合、上面13a又は下面13bに対して平均的に垂直な方向に沿って超音波USが送信されることが望ましい。これにより、上面13a及び下面13bにおいてより強く超音波が反射され、検査の精度を向上させることができる。
【0037】
(第2判定)
第2判定では、第1判定の結果の適否が判定される。すなわち、第1判定で実行された各点での接合又は未接合の判定結果が、適切かどうか判定される。処理装置110は、第1判定の結果の適否を判定するために、反射波の検出結果又は第1判定の結果を用いる。
【0038】
例えば、処理装置110は、第1判定の結果を適切と判定すると、以下の第1動作を実行する。第1動作において、処理装置110は、その第1判定の結果を採用する。例えば、処理装置110は、その第1判定の結果に基づいて導出されるデータを、溶接対象の検査結果として採用する。例えば、データは、溶接部13の面積及び径の少なくともいずれかを含む。データは、溶接部13の面積又は径に基づいて判定された溶接の良否を含んでいても良い。データは、第1判定と第2判定との間に導出されても良いし、第2判定の後に導出されても良い。処理装置110は、第1判定の結果が適切と判定されたときのみ、第1判定の結果に基づくデータを導出しても良い。第1動作において、処理装置110は、第1判定の結果を示す画像、溶接部13の面積、溶接部13の径、及び溶接の良否の判定結果の少なくともいずれかを記憶装置120又は表示装置150に出力しても良い。
【0039】
処理装置110は、第1判定の結果を不適切と判定すると、処理装置110は、以下の第2動作を実行する。第2動作において、処理装置110は、その第1判定の結果を採用しない。例えば、第1判定と第2判定との間に、溶接部13の面積、溶接部13の径、溶接の良否の判定結果などのデータが導出される場合、処理装置110は、それらのデータを溶接対象の検査結果として採用しない。第2動作において、処理装置110は、第1判定の結果が不適切であることを示す判定結果を記憶装置120又は表示装置150に出力しても良い。第2動作において、処理装置110は、溶接部13への再度の探査の実行をユーザに促しても良い。検出器130は、処理装置110によって第1判定の結果が不適切と判定されたときに、自動的に溶接部13への再度の探査の実行をしても良い。
【0040】
実施形態の効果を説明する。
例えば、溶接対象の検査時に、溶接対象の複数の点で接合および未接合を判定し、第1領域R1の面積に基づいて溶接の良否を判定する方法がある。又は、第1領域R1の面積又は径に基づいて溶接部13の面積又は径を算出し、溶接部13の面積又は径に基づいて溶接の良否を判定する方法がある。これらの方法によれば、溶接対象における溶接の良否を概ね精度良く判定できる。
しかし、発明者らがさらに検証したところ、上述した方法では、溶接部13の良否の判定が困難なケースが存在することが分かった。具体的には、検出器130の傾きを溶接部13に対して十分に小さくし、且つ検出器130を溶接部13に確実に接触させたときでも、実際には良好に溶接された溶接部13が、不良と判定されるケースが存在することが分かった。
【0041】
図8(a)〜
図8(c)及び
図9は、反射波の検出結果に基づく画像を示す模式図である。
図8(a)〜
図8(c)の画像は、
図7と同様に、溶接対象の複数の点で接合を判定した結果を表す。
図8(a)〜
図8(c)に表した接合の判定結果は、同じ溶接対象の同じ部分に対して、検出器130の傾きが十分に小さい状態で得られた検出結果に基づく。発明者らは、
図8(a)〜
図8(c)に示すように、検出結果ごとに、第1領域R1の形状及びサイズが大きくばらつくケースが存在することを発見した。ばらつきの原因は未だ明らかでは無いが、溶接対象全体に対する溶接部13の傾き、溶接対象の材質などが影響していると考えられる。
【0042】
図8(a)の画像では、第1領域R1の一部が突出している。また、
図8(c)では、第1領域R1の全体が湾曲している。実際の溶接部13の形状が、これらの画像に表される第1領域R1の形状になることは生じ難い。
図8(b)の画像では、他の画像に比べて、第1領域R1が円に近い。
図8(b)の第1領域R1は、他の画像の第1領域R1に比べて、実際の溶接部13の形状により近い。
【0043】
図9は、
図8(a)に表した画像と同じである。検査において溶接部13の長径及び短径が算出される場合、
図9に表したように、突出した部分を基準に、第1領域R1の長径L1及び短径L2が算出される可能性がある。この場合、溶接部13の長径及び短径が実際よりも長く算出される。また、面積についても、溶接部13の面積が実際よりも大きく算出される。
【0044】
図8(c)に表した画像では、第1領域R1によって示される溶接部13のサイズが、実際の溶接部13のサイズよりも小さい。これらの画像については、溶接部13の長径及び短径が実際よりも短く算出される可能性がある。
【0045】
溶接部13の面積又は径が実際と異なって算出されると、溶接部13の面積又は径に基づく溶接の良否も、誤って判定される可能性がある。例えば、溶接部13の面積又は径が実際よりも大きく算出される場合、実際には溶接が不良であるにも拘わらず、その溶接が良好と判定される可能性がある。溶接部13の面積又は径が実際よりも小さく算出される場合は、実際には溶接が良好であるにも拘わらず、その溶接が不良と判定される可能性がある。また、溶接部13の面積又は径が、品質管理のために別の工程で参照される場合は、その別の工程で問題が生じる可能性がある。
【0046】
この課題について、実施形態に係る処理システム100では、処理装置110が第1判定に加えて第2判定を実行する。第2判定では、第1判定の結果の適否が判定される。すなわち、溶接対象の複数の点における接合及び未接合の判定結果が、適切かどうか判定される。例えば、第2判定によって第1判定の結果が適切と判定されたときのみ、第1判定の結果を採用することで、溶接対象に関するより正確なデータを導出できる。例えば、溶接部13の面積、溶接部13の径、溶接の良否などについて、より正確なデータを得ることができる。
【0047】
また、第2判定が実行されることで、
図7に表したような画像を基に、第1判定の結果の適否をユーザが判断する必要が無くなる。これにより、ユーザの知識及び経験に依存せずに、第1判定の結果の適否を判定できる。また、経験が十分では無いユーザが検査を実行する場合でも、より適切なデータのみを検査結果として採用できる。
【0048】
以下では、第2判定を実行するための複数の方法を説明する。
【0049】
(第1の方法)
処理装置110は、反射波の検出結果又は第1判定の結果に基づいて、第1評価値を算出する。処理装置110は、算出した第1評価値を記憶装置120に記憶する。また、処理装置110は、記憶装置120に記憶された過去の第1評価値を参照する。処理装置110は、第1評価値と、過去の第1評価値と、を用いて第1判定の結果の適否を判定する。
【0050】
具体的には、処理装置110は、過去の第1評価値に基づいて第2評価値を算出する。処理装置110は、第1評価値と第2評価値との差を第1閾値と比較することで、第1判定の結果の適否を判定する。例えば、直前の第1評価値が第2評価値として用いられても良い。好ましくは、複数の過去の第1評価値に基づいて、第2評価値が設定される。例えば、予め設定された数の過去の第1評価値の平均が、第2評価値として用いられる。
【0051】
第1閾値は、ユーザが設定しても良いし、過去の第1評価値に基づいて設定されても良い。例えば、処理装置110は、複数の過去の第1評価値の分散又は標準偏差を算出する。処理装置110は、分散又は標準偏差に所定の値を掛け合わせて第1閾値を算出する。
【0052】
第1評価値は、例えば、溶接部13の径に基づいて設定される。溶接部13の径は、上述した通り、第1判定の結果から算出される。処理装置110は、溶接部13の径を第1評価値をとして用いても良いし、溶接部13の径に基づいて算出される値を第1評価値をとして用いても良い。
【0053】
又は、第1評価値は、第1モデルから出力される値であっても良い。例えば、第1モデルは、第1判定の結果が適切なほど、より大きな値を出力するように学習される。学習された第1モデルは、記憶装置120に記憶される。第1モデルの学習には、
図7に表したような溶接対象の各点の接合及び未接合の判定結果を示す画像データが用いられる。各画像データに対して、その画像データが適切又は不適切かを示すラベルが付与される。第1モデルは、複数の画像データ及び複数のラベルを用いて学習される。処理装置110は、学習済みの第1モデルに第1判定の結果に基づく画像データを入力し、その画像データが適切であることを示す出力層の値(活性度)を第1評価値として用いる。又は、処理装置110は、出力層の値に基づいて算出される別の値を第1評価値として用いても良い。
【0054】
また、
図8(a)〜
図8(c)に表したように、第1判定の結果が適切であるほど、得られる第1領域R1の形状は円に近い。このため、第1評価値として、第1領域R1の円らしさが用いられても良い。円らしさは、第1領域の形状と円との類似の度合いを示す。例えば、円らしさを示す値が大きいほど、第1領域の形状は、より円に近い。円らしさとしては、真円度、円形度、又は楕円率を用いることができる。処理装置110は、真円度、円形度、楕円率、又は径の比を、第1評価値として用いる。処理装置110は、真円度、円形度、楕円率、又は径の比に基づいて算出される値を、第1評価値として用いる。
【0055】
真円度は、以下の方法により算出される。第1領域の外縁に内接する円と、第1領域の外縁に外接する別の円と、を設定する。これら2つの円の中心は、同じ位置に存在する。また、2つの円は、それらの間隔が小さくなるように設定される。2つの円の半径差が真円度に対応する。円の中心の設定方法は、任意である。例えば、以下の4つの方法が用いられる。第1の方法では、最小二乗法による近似円の中心を用いる。第2の方法では、外縁に内接する最大の円の中心を用いる。第3の方法では、外縁に外接する最小の円の中心を用いる。第4の方法では、半径差が最小となる内接円及び外接円の中心を用いる。真円度は、JIS B 0621(1984)に従って算出することができる。JIS B 0621(1984)は、ISO 1101(1983)に対応する。
【0056】
円形度は、第1領域の面積Aと、第1領域の外周の長さLと、を用いて、4nA/L
2で表される。楕円率は、短径に対する長径の比で表される。例えば、長径は、第1領域R1の外縁上の任意の2点を結んで得られる線分のうち、最も長い線分の長さである。短径は、長径の中心を通り、且つ長径に対して垂直な線分の長さである。
【0057】
円らしさとして、第1領域R1の円相当径r1に対する第1領域の径r2の比(r2/r1)が用いられても良い。径r2としては、例えば、長径と短径の平均値が用いられる。径r2として、複数の方向における第1領域R1の長さの平均値が用いられても良い。
【0058】
処理装置110は、真円度、円形度、楕円率、及び径の比から選択される2つ以上を用いて第1評価値を算出しても良い。例えば、処理装置110は、真円度、円形度、楕円率、及び径の比から選択される2つ以上の平均値又は和を、第1評価値として算出する。例えば、
図9に表したように、第1領域R1の長径L1及び短径L2は、実際の溶接部13の長径及び短径と大きく異なって算出される可能性がある。また、この結果、第1領域R1の短径L2が長径L1に近い値となりうる。このため、第1評価値の算出に楕円率を用いる場合、第1領域R1の形状が円とは大きく異なるにも拘わらず、第1領域R1が円らしいと判定される可能性がある。従って、第1評価値の算出に楕円率を用いる場合は、真円度、円形度、又は径の比をさらに用いることが好ましい。
【0059】
第1評価値は、反射波の検出結果と予め用意されたデータとの比較、又は第1判定の結果と予め用意されたデータとの比較により、算出されても良い。例えば
図7に表したような、第1判定の結果が適切であるときの画像データが、予め用意される。処理装置110は、第1判定の結果を示す画像データと、予め用意された画像データと、の類似度を第1評価値として算出する。又は、処理装置110は、反射波の検出結果を示すボリュームデータと、予め用意されたデータと、の類似度を第1評価値として算出しても良い。処理装置110は、類似度に基づいて算出される値を第1評価値として用いても良い。
【0060】
処理装置110は、第1評価値と第2評価値との差が第1閾値未満のとき、第1判定の結果が適切であると判定する。第1判定の結果が適切と判定されると、処理装置110は、上述した第1動作を実行する。処理装置110は、第1評価値と第2評価値との差が第1閾値以上のとき、第1判定の結果が不適切と判定する。第1判定の結果が不適切と判定されると、処理装置110は、上述した第2動作を実行する。
【0061】
図10は、第2判定を説明するためのグラフである。
図10において、横軸は時刻を表し、縦軸は各時刻で算出された第1評価値を表す。例えば、処理装置110は、時刻tの第1評価値を算出すると、時刻tよりも前の複数の第1評価値を用いて第2評価値及び第1閾値を設定する。処理装置110は、第1評価値と第2評価値との差が第1閾値以上か判定する。
図10において、破線BR1は、第2評価値に第1閾値を加えた値を示す。破線BR2は、第2評価値から第1閾値を減じた値を示す。この例では、時刻tにおける第1評価値は、第2評価値に第1閾値を加えた値以上である。換言すると、第1評価値と第2評価値との差は、第1閾値以上ある。このため、処理装置110は、第1判定の結果を不適切と判定する。
【0062】
(第2の方法)
処理装置110は、反射波の検出結果又は第1判定の結果を第1モデルに入力することで、第1判定の結果が適切か判定しても良い。第1モデルは、処理装置110は、反射波の検出結果又は第1判定の結果を、区分(分類又はクラスタリング)する。
【0063】
例えば、処理装置110は、
図7に表した第1判定の結果を示す画像データを第1モデルに入力する。第1モデルは、教師有り学習によって学習されており、入力された画像データを分類する。第1モデルの学習には、
図7に表したような溶接対象の各点の接合及び未接合の判定結果を示す画像データが用いられる。例えば
図8(a)又は
図8(c)に表したように、第1領域R1の一部が突出している画像データ、又は第1領域R1が湾曲している画像データに対しては、不適切であることを示すラベルが付与される。
図8(a)又は
図8(c)に表したように、第1領域R1が円に近いときは、適切であることを示すラベルが付与される。第1モデルは、複数の画像データ及び複数のラベルを用いて学習される。適切であることを示す第1カテゴリに入力された画像データが分類されたとき、処理装置110は、第1判定の結果を適切と判定する。不適切であることを示す第2カテゴリに入力された画像データが分類されたとき、処理装置110は、第1判定の結果を不適切と判定する。
【0064】
第1モデルは、教師無し学習によって学習されても良い。この場合、入力された画像データは、第1モデルによって、複数のカテゴリのいずれかにクラスタリングされる。入力された画像データが、
図8(b)に表したような第1領域R1の形状が円に近い画像データを含む第1カテゴリにクラスタリングされたとき、処理装置110は、第1判定の結果を適切と判定する。入力された画像データが、
図8(a)に表したような第1領域R1の一部が突出している画像データ、又は
図8(c)に表したような第1領域R1が湾曲している画像データを含む第2カテゴリにクラスタリングされたとき、処理装置110は、第1判定の結果を不適切と判定する。
【0065】
又は、第1モデルには、反射波の検出結果である三次元のボリュームデータが入力されても良い。この場合、第1モデルに対して、複数の三次元データを用いて教師有り学習又は教師無し学習が実行される。適切であることを示す第1カテゴリに入力されたデータが分類されたとき、処理装置110は、そのデータに基づく第1判定の結果も適切と判定する。不適切であることを示す第2カテゴリに入力されたデータが分類されたとき、処理装置110は、そのデータに基づく第1判定の結果も不適切と判定する。
【0066】
以上の通り、第2の方法では、反射波の検出結果又は第1判定の結果が第1モデルによって第1カテゴリに区分されたとき、処理装置110は、第1判定の結果を適切と判定する。第1判定の結果が適切と判定されると、処理装置110は、上述した第1動作を実行する。反射波の検出結果又は第1判定の結果が第1モデルによって第2カテゴリに区分されたとき、処理装置110は、第1判定の結果を不適切と判定する。第1判定の結果が不適切と判定されると、処理装置110は、上述した第2動作を実行する。
【0067】
処理装置110は、第1の方法と第2の方法を組み合わせて第1判定の結果の適否を判定しても良い。例えば、処理装置110は、第1の方法により第1判定の結果が適切と判定され、且つ第2の方法により第1判定の結果が適切と判定されたときに、第1判定の結果が適切であると最終的に判定する。又は、処理装置110は、第1の方法により第1判定の結果が適切と判定され、又は第2の方法により第1判定の結果が適切と判定されたときに、第1判定の結果が適切であると最終的に判定しても良い。第1の方法と第2の方法を適宜組み合わせることで、第2判定の精度を向上させることができる。
【0068】
図11は、実施形態に係る処理システムを用いた検査の流れを表すフローチャートである。
ユーザは、検出器130の先端を溶接部13へ接触させる。ユーザは、検出器130による探査を実行する(ステップS1)。例えば、検出器130には、探査を実行するためのボタンが設けられる。ユーザは、ボタンを操作することで、検出器130による探査を実行できる。又は、表示装置150に表示されたユーザインタフェースを通して、ユーザが検出器130による探査を実行できても良い。検出器130は、探査によって得られた反射波の検出結果を、処理装置110に送信する。
【0069】
処理装置110は、検出結果を受信すると、溶接対象の複数の点で接合および未接合を判定する第1判定を実行する(ステップS2)。処理装置110は、第1判定の結果の適否を判定する第2判定を実行する(ステップS3)。第1判定の結果が適切と判定されると、処理装置110は、第1動作を実行する(ステップS4)。第1判定の結果が不適切と判定されると、処理装置110は、第2動作を実行する(ステップS5)。
【0070】
処理装置110は、反射波の検出結果に基づいて、溶接部13の範囲の推定及び溶接部13に対する傾きの算出を実行しても良い。ここでは、溶接部13の表面の法線方向と検出器130の方向との間の角度を傾きと言う。検出器130の方向は、例えば、検出素子132の配列方向に垂直なZ方向に対応する。検出器130が溶接部13の表面と垂直に接しているとき、傾きはゼロである。
【0071】
溶接対象又は溶接部13に対する検出器130の傾きは、検査結果に影響を及ぼしうる。例えば、検出器130が溶接対象に対して傾いた状態で第1判定が実行されると、実際は適切に接合されているにも拘わらず、未接合と判定される可能性がある。このため、第1判定の実行前に、溶接対象に対する検出器130の傾きが小さく設定されることが好ましい。
【0072】
また、検出器130の傾きは、溶接部13からの反射波の検出結果を用いて算出される。第1判定では、少なくとも溶接部13からの反射波について接合及び未接合が判定されれば良い。溶接部13以外の領域からの反射波の検出結果に対する計算量を削減することで、各処理に要する時間を短縮できる。このため、傾きの算出及び第1判定の実行前に、溶接部13からの反射波を含む検出結果の一部を抽出することが好ましい。
【0073】
図12は、実施形態に係る処理システムを用いた検査の流れを表すフローチャートである。
範囲の推定及び傾きの算出が実行される場合の検査の流れについて、
図12を参照して説明する。ユーザは、検出器130による探査を実行する(ステップS1)。探査が実行されると、処理装置110は、探査を実行した溶接対象について、溶接部13からの反射波に対応する範囲を推定済みか判定する(ステップS11)。範囲が未だ推定されていないときは、処理装置110は、範囲を推定する(ステップS12)。
【0074】
例えば
図4(a)及び
図6(b)に表したように、超音波は、溶接部13以外の面からも反射される。処理装置110は、溶接部13からの反射波に対応する範囲を推定し、この範囲に含まれる反射波に基づいて、後の傾きの算出を実行する。これにより、必要な計算量を低減できる。また、算出される傾きの精度を向上させることができる。
【0075】
処理装置110は、推定された範囲内の反射波の検出結果に基づいて、検出器130の傾きを算出する(ステップS13)。算出された傾きが許容範囲内にあるか判定される(ステップS14)。判定は、ユーザが実行しても良いし、処理装置110が実行しても良い。処理装置110が判定する場合、許容範囲は、ユーザにより予め設定されても良いし、過去の検査結果の履歴に基づいて設定されても良い。
【0076】
例えば、処理装置110は、溶接部13の検査を実行した際に、検出結果に基づいて溶接部13の径を測定する。検出器130の傾きが大きすぎると、溶接部13の径が実際よりも小さく算出される。検出器130の傾きが小さくなるに連れて、算出される溶接部13の径が大きくなる。検出器130の傾きが十分に小さくなると、算出される溶接部13の径は、ほとんど変化しなくなる。記憶装置120には、このような過去に算出された検出器130の傾きと溶接部13の径との関係が記憶される。処理装置110は、記憶装置120に記憶されたデータを基に、検出器130の傾きの変化に対して、溶接部13の径の変化が小さくなる境界値を決定する。処理装置110は、この境界値に基づいて許容範囲の大きさを設定する。例えば、処理装置110は、境界値を許容範囲の大きさとして設定する。又は、検査の精度をより高めるために、処理装置110は、境界値に基づいて算出される、より小さな値を許容範囲として設定しても良い。
【0077】
傾きが許容範囲内に無いとき、ユーザは、検出器130の傾きを調整する(ステップS15)。処理装置110がステップS14を実行する場合、ユーザに向けて、傾きが許容範囲内に無いことが報知されても良い。ステップS15の後は、調整した後の傾きで、ステップS1が再度実行される。傾きが許容範囲内にあるとき、第1判定が実行される(ステップS2)。好ましくは、第1判定では、ステップS12で推定された範囲内におけるX−Y面の各点で、接合又は未接合が判定される。ステップS2以降は、
図11に表したフローチャートと同様に、ステップS3〜S5が実行される。
【0078】
以下で、範囲の推定、傾きの算出、及び検査について、具体的な処理の一例を説明する。
【0079】
(範囲の推定)
図13〜
図20を参照して、範囲の推定について具体的に説明する。
例えば、
図5(b)では、反射波の検出結果が2次元的に表されていた。反射波の検出結果は、3次元的に表されても良い。例えば、部材10に対して、複数のボクセルが設定される。各ボクセルには、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれの座標が設定される。反射波の検出結果に基づき、各ボクセルには、反射波強度が紐付けられる。処理装置110は、複数のボクセルにおいて、溶接部13に対応する範囲(ボクセルのグループ)を推定する。設定されるボクセルの数及び各ボクセルの大きさは、自動で決定されても良いし、表示装置150のユーザインタフェースを通してユーザにより設定されても良い。
【0080】
図13(a)及び
図13(b)は、一断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
図14は、Z方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
処理装置110は、反射波の検出結果に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を生成する。
図13(a)及び
図13(b)は、その一例である。
図13(a)及び
図13(b)において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図13(a)は、1つのX−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。
図13(b)は、1つのY−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。
図13(a)及び
図13(b)では、反射波強度を絶対値に変換した結果を表している。
【0081】
又は、処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度を合算し、Z方向における反射波の強度分布を生成しても良い。
図14は、その一例である。
図14において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図14では、反射波強度を絶対値に変換し、且つZ方向の各点における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じた結果を表している。
【0082】
Z方向における反射波の強度分布は、溶接部13の上面13a及び下面13bで反射した成分と、その他の部分の上面及び下面で反射した成分と、を含む。処理装置110は、フィルタリングにより、反射波の強度分布から、溶接部13の上面13a及び下面13bで反射した成分のみを抽出する。例えば、溶接部13のZ方向における厚さ(上面13aと下面13bとの間の距離)の半分の整数倍に対応する値が、予め設定される。処理装置110は、その値を参照し、その値の周期成分だけを抽出する。
【0083】
フィルタリングとしては、バンドパスフィルタ、ゼロ位相フィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又はフィルタ後の強度に対する閾値判定などを用いることができる。
【0084】
図15は、反射波の強度分布をフィルタリングした結果を例示するグラフである。
図15において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。
図15に表したように、フィルタリングの結果、溶接部の上面及び下面で反射した成分のみが抽出される。
【0085】
処理装置110は、抽出結果に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定する。例えば、処理装置110は、抽出結果に含まれるピークを検出する。処理装置110は、1つ目のピークのZ方向における位置及び2つ目のピークのZ方向における位置を検出する。処理装置110は、これらの位置を基準に、例えば
図15に表した範囲Ra1を、溶接部のZ方向における範囲と推定する。
【0086】
溶接部の構造、素子アレイ131の構成などにより、溶接部の上面からの反射波強度の符号(正又は負)と、溶接部の下面からの反射波強度の符号と、が互いに反転することがある。この場合、処理装置110は、正と負の一方のピークと、正と負の他方の別のピークと、を検出しても良い。処理装置110は、これらのピークの位置を基準に、溶接部のZ方向における範囲を推定する。また、反射波強度への処理によっては、反射波強度が正の値と負の値の一方のみで表される場合がある。この場合、溶接部のZ方向における範囲は、複数のピークの位置に基づいて推定されても良いし、ピークとボトムの位置に基づいて推定されても良いし、複数のボトムの位置に基づいて推定されても良い。すなわち、処理装置110は、フィルタリングした後の反射波強度について、複数の極値の位置に基づいて溶接部のZ方向における範囲を推定する。
【0087】
X−Z断面及びY−Z断面のそれぞれにおける反射波の強度分布を生成したときは、X−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、Y−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、が推定される。例えば、処理装置110は、これらの複数の推定結果について、平均、加重平均、重み付き移動平均などを計算し、その計算結果を溶接部全体のZ方向における範囲と推定する。
【0088】
又は、処理装置110は、X−Z断面及びY−Z断面の一方における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。処理装置110は、X方向の一部且つY方向の一部における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。これらの処理によれば、反射波の強度分布の生成に必要な計算量を低減できる。
【0089】
図15の例では、範囲Ra1の下限のZ方向における位置は、1つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を減じた値に設定されている。範囲Ra1の上限のZ方向における位置は、2つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を加えた値に設定されている。こうすることで、溶接部の上面及び下面が、検出素子132の配列方向に対して傾いているときに、溶接部のX−Y面におけるいずれかの点で、2つ目のピークがZ方向の範囲から外れることを抑制できる。
【0090】
溶接部のZ方向の範囲を推定した後、処理装置110は、溶接部のX方向の範囲及びY方向の範囲を推定する。
図16及び
図18は、反射波の検出結果を例示する模式図である。
図16及び
図18において、領域Rは、素子アレイ131によって反射波の検出結果が得られた全体の領域を表す。領域Rの一断面では、溶接部の上面及び下面における反射波の成分と、その他の部分の上面及び下面における反射波の成分と、が含まれている。
【0091】
処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布を生成する。処理装置110は、予め設定されたZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減できる。又は、処理装置110は、推定したZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減しつつ、X−Y面における反射波の強度分布を生成する際に、溶接部の下面からの反射波成分が外れることを抑制できる。
【0092】
図17(a)〜
図17(c)は、X−Y面における反射波の強度分布の一例である。
図17(a)は、Z=1の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図17(b)は、Z=2の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図17(c)は、Z=350の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。
図16、
図17(a)〜
図17(c)、及び
図18では、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。
【0093】
処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布の重心位置を計算する。ここでは、強度分布を示す画像の重心位置を計算することで、強度分布の重心位置を得ている。例えば
図17(a)〜
図17(c)に表したように、処理装置110は、各画像における重心位置C1〜C350を計算する。
図18において、線分Li2は、Z=0〜Z=350までの全ての重心位置を繋いだ結果を表している。
【0094】
処理装置110は、Z=0〜Z=350までの重心位置を平均化する。これにより、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置が得られる。
図18において、平均位置APは、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置を表す。処理装置110は、平均位置APを中心として、X方向及びY方向のそれぞれにおいて所定の範囲を、溶接部のX方向の範囲Ra2、及び溶接部のY方向の範囲Ra3とする。
【0095】
例えば、範囲Ra2及び範囲Ra3を推定するために、検出器130(素子アレイ131)の径を示す値Vが予め設定される。処理装置110は、X方向及びY方向において、AP−V/2からAP+V/2までを、それぞれ範囲Ra2及び範囲Ra3とする。この場合、X−Y面における推定範囲は、四角形状となる。この例に限らず、X−Y面における推定範囲は、5角以上の多角形状又は円状などであっても良い。X−Y面における推定範囲の形状は、溶接部の形状に応じて適宜変更可能である。
【0096】
値Vに基づく別の値を用いて範囲Ra2及び範囲Ra3が決定されても良い。検出器130の径を示す値に代えて、溶接部の平均的な径を示す値が予め設定されても良い。溶接部の径は、検出器130の径と対応するためである。溶接部の径を示す値は、実質的に、検出器130の径を示す値とみなすことができる。
【0097】
以上の処理によって、溶接部のZ方向の範囲Ra1、X方向の範囲Ra2、及びY方向の範囲Ra3が推定される。範囲が推定された後は、推定した範囲における反射波の検出結果に基づいて、
図12に表したステップS12が実行される。
【0098】
図19は、実施形態に係る処理システムにおける範囲の推定の流れを表すフローチャートである。
処理装置110は、検出器130による反射波の検出結果に基づき、Z方向における反射波の強度分布を生成する(ステップS121)。処理装置110は、溶接部の厚さの値に基づいて強度分布をフィルタリングする(ステップS122)。これにより、溶接部13における反射波成分だけが、強度分布から抽出される。処理装置110は、抽出結果に基づき、溶接部のZ方向における範囲を推定する(ステップS123)。処理装置110は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度の重心位置を計算する(ステップS124)。処理装置110は、計算した複数の重心位置を平均化することで、平均位置を計算する(ステップS125)。処理装置110は、平均位置と、検出器130の径と、に基づいて、X方向及びY方向におけるそれぞれの範囲を推定する(ステップS126)。
【0099】
なお、Z方向における範囲の推定は、X方向及びY方向における範囲の推定の後に実行されても良い。例えば、
図19に表したフローチャートにおいて、ステップS121〜S123は、ステップS124〜S126の後に実行されても良い。この場合、処理装置110は、推定されたX方向及びY方向の範囲内に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を計算しても良い。これにより、計算量を低減できる。
【0100】
(傾きの算出)
図20は、反射波の検出結果を例示する画像である。
図20において、色が白いほど、その点における反射波の強度が大きいことを示している。処理装置110は、
図20に表した検出結果について、
図21に表した動作を実行する。この結果、範囲Raが推定される。
【0101】
以下では、範囲Raにおける傾きの算出方法について具体的な一例を説明する。
図21は、実施形態に係る処理システムによる処理を説明するための図である。
図22は、実施形態に係る処理システムにより得られた画像の一例である。
【0102】
図22(a)は、
図5に表したボリュームデータにおける溶接部13の表面を表す。
図22(b)は、
図5に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のY−Z断面を表す。
図22(c)は、
図5に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のX−Z断面を表す。
図22(b)及び
図22(c)では、上側が溶接部の表面で、下向きに深さ方向のデータが示されている。輝度が高い部分は、超音波の反射強度が大きい部分である。超音波は、溶接部13の底面、未接合の部材同士の間の面などで強く反射される。
【0103】
検出器130の傾きは、
図21に表した、溶接部13に垂直な方向13dと、検出器130の方向130aと、の間の角度に対応する。この角度は、X方向まわりの角度θxと、Y方向まわりの角度θyと、によって表される。検出器130の方向130aは、検出素子132の配列方向に対して垂直である。
【0104】
角度θxは、
図22(b)に表したように、Y−Z断面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、
図22(c)に表したように、X−Z断面での検出結果に基づいて算出される。処理装置110は、各断面ついて,3次元の輝度勾配の平均を角度θx及びθyとして算出する。処理装置110は、算出した角度θx及びθyを、検出器130の傾きとして記憶装置120に記憶する。処理装置110は、算出した傾きを表示装置150に表示させても良い。
【0105】
検出器130の傾きを算出し、その傾きを小さくすることで、第1判定において各点が接合しているかをより精度良く判定できる。また、第1判定の結果に基づくデータの精度を向上させることができる。また、傾きの算出及び第1判定を行う範囲を推定することで、各処理に必要な計算量を低減できる。
【0106】
例えば、第2判定において第1判定の結果が不適切と判定されたとき、検出器130による再度の探査が実行される。このとき、再度の探査を実行するときの条件が、直前の探査を実行するときの条件と異なっても良い。例えば、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくともいずれかが実行されることで、再度の探査を実行するときの条件が、直前の探査を実行するときの条件から変化する。
【0107】
例えば、第1判定の結果が不適切と判定されたとき、ユーザは、検出器130を溶接対象から離し、カプラントを溶接対象に再度塗布する。直前の探査において溶接対象と検出器130との間にカプラントが充填されていなかった場合には、カプラントの再塗布により、溶接対象と検出器130との間がカプラントによって充填される可能性がある。カプラントを再塗布する場合は、既に溶接対象に塗布されたカプラントを除去しても良い。
【0108】
再度の探査において、溶接対象に対する検出器130の傾きは、直前の探査における傾きと同じ値に設定されても良い。検出器130の傾きが直前の傾きと同じ値であったとしても、反射波の検出結果が直前の検出結果と異なる可能性がある。また、検出器130の傾きを直前の傾きと同じ値にすることで、傾きが許容範囲内に維持される。
【0109】
又は、溶接対象に対する検出器130の傾きは、直前の探査における傾きと異なる値に設定されても良い。この場合、傾きの変化量は、直前の傾きと許容範囲の臨界値との差よりも小さいことが好ましい。これにより、検出器130の傾きを変化させた場合でも、変化後の傾きが許容範囲外となることを抑制できる。また、検出器130の傾きを変化させることで、直前の反射波の検出結果とは異なる検出結果が得られる可能性が高くなる。
【0110】
検出器130の傾きは、許容範囲の外に設定されても良い。これにより、検出器130の傾きが、直前の探査における傾きとは大きく異なる値に設定される。この結果、直前の探査とは大きく異なる検出結果が得られる可能性が高まる。直前の探査とは大きく異なる検出結果に基づいて、再び検出器130の傾きを調整することで、検出器130を、より適切な検出結果が得られる状態へ調整できる可能性がある。
【0111】
再度の探査において、傾きの許容範囲を変更しても良い。例えば、処理装置110は、傾きの許容範囲を狭める。処理装置110は、狭めた許容範囲に検出器130の傾きが入るように、傾きを調整する。処理装置110は、許容範囲を変更させたときに、検出器130の傾きを、直前の探査における傾きと異なる値に設定しても良い。
【0112】
直前の探査実行時と異なる条件で再度の探査が実行された後は、その探査によって得られた反射波の検出結果に基づいて、第1判定が再度実行される。又は、第1判定の前に、範囲の推定が再度実行されても良い。第1判定では、再度推定された範囲の各点について、接合又は未接合が検出される。
【0113】
第1判定の結果が不適切と判定され、検出器130による再度の探査が実行されるときに、溶接の良否の判定結果に応じて、探査実行時の条件を変化させても良い。例えば、溶接が良好と判定され、且つ第1判定の結果が不適切と判定されたときは、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくとも1つが実行される。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件から別の条件(第1条件)へ変化する。溶接が不良と判定され、且つ第1判定の結果が不適切と判定されたときは、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の別の少なくとも1つが実行される。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件からさらに別の条件(第2条件)へ変化する。第1判定の結果と溶接の判定結果との組み合わせに応じて探査実行時の条件を設定することで、再探査においてより適切な反射波の検出結果が得られ易くなる。
【0114】
図23は、第1モデルによる区分の結果を表す模式図である。
第2判定の第2の方法において、反射波の検出結果又は第1判定の結果が、第1モデルによって、3つ以上のカテゴリに区分されても良い。
図23(a)〜
図23(c)は、第1モデルによって、第1判定の結果を示す画像データが3つ以上のカテゴリに区分された例を示す。
図23(a)〜
図23(c)は、それぞれ互いに異なるカテゴリに区分された画像データを表す。
図23(a)に表した画像データは、第1判定の結果が適切であることを示す。
図23(b)及び
図23(c)に表した画像データは、第1判定の結果が不適切であることを示す。
【0115】
図23(b)の画像データは、第1領域R1の面積が、
図23(a)の画像データに比べて大きい。また、
図23(b)の画像データは、第1領域R1の一部が突出している。
図23(b)の画像データは、
図23(a)の画像データが区分される第1カテゴリとは異なる第2カテゴリに区分される。
図23(c)の画像データは、第1領域R1の面積が、
図23(a)の画像データに比べて小さい。また、
図23(c)の画像データは、第1領域R1が全体的に湾曲している。
図23(c)の画像データは、第1カテゴリ及び第2カテゴリとは異なる第3カテゴリに区分される。
図23(b)及び
図23(c)の画像データにおける第1領域R1の形状は、
図23(a)の画像データに比べて、円からは遠い。
【0116】
第1判定の結果を示す画像データに代えて、反射波の検出結果である3次元のボリュームデータが第1モデルに入力されても良い。第1判定の結果を示す画像データは、反射波の検出結果に基づく。従って、3次元のボリュームデータについても同様に、第1モデルによって複数のカテゴリのいずれかに区分できる。
【0117】
例えば、第1判定の結果が不適切と判定されると、検出器130による再度の探査が実行される。このとき、データが区分されたカテゴリに応じて、探査実行時の条件を変化させても良い。例えば、データが第2カテゴリに区分されたときは、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくとも1つが実行される。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件から別の条件(第1条件)へ変化する。データが第3カテゴリに区分されたときは、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の別の少なくとも1つが実行される。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件からさらに別の条件(第2条件)へ変化する。データが区分されたカテゴリに応じて探査実行時の条件を設定することで、再探査においてより適切な反射波の検出結果が得られ易くなる。
【0118】
(変形例)
以上で説明した溶接部の検査は、ロボットにより自動的に実行されても良い。
図24は、実施形態の変形例に係る処理システムの構成を表す模式図である。
図25は、実施形態の変形例に係る処理システムの一部を表す斜視図である。
【0119】
図24に表した処理システム100aは、処理装置110及びロボット160を有する。ロボット160は、検出器130、撮像装置161、塗布装置162、アーム163、及び制御装置164を含む。
【0120】
撮像装置161は、溶接された部材を撮影し、画像を取得する。撮像装置161は、画像から溶接痕を抽出し、溶接部13の大凡の位置を検出する。塗布装置162は、カプラントを溶接部13の上面に塗布する。
【0121】
検出器130、撮像装置161、及び塗布装置162は、
図25に表したように、アーム163の先端に設けられている。アーム163は、例えば、多関節ロボットである。アーム163の駆動により、検出器130、撮像装置161、及び塗布装置162を変位させることができる。制御装置164は、ロボット160の各構成要素(検出器130、撮像装置161、塗布装置162、アーム163)の動作を制御する。
【0122】
図26は、実施形態の変形例に係る処理システムの動作を表すフローチャートである。
処理装置110は、制御装置164へ、記憶装置120に記憶された溶接部13の座標を送信する。制御装置164は、アーム163を駆動させ、受信した座標に向けてアーム163の先端を移動させる(ステップS21)。受信した座標付近に検出器130を移動させると、撮像装置161が部材10を撮影し、取得した画像から溶接部13の詳細な位置を検出する(ステップS22)。制御装置164は、アーム163を駆動させ、塗布装置162を検出した位置近傍に移動させる(ステップS23)。塗布装置162は、カプラントを溶接部13に塗布する(ステップS24)。制御装置164は、アーム163を駆動させ、カプラントを塗布した溶接部13に検出器130の先端が接触するように、検出器130を移動させる(ステップS25)。以降は、
図12に表したフローチャートと同様に、S1〜S5及びS11〜S15が実行される。
【0123】
ステップS5の第2動作において、ステップS2の探査が再度実行されても良い。例えば、処理装置110は、ステップS3において、第1判定の結果が不適切と判定すると、制御装置164にその判定結果を送信する。制御装置164は、判定結果を受信すると、検出器130による探査を再度実行する。このとき、制御装置164は、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくともいずれかを実行しても良い。
【0124】
再度の探査において、制御装置164は、溶接対象に対する検出器130の傾きを、直前の探査における傾きと同じ値に設定しても良い。検出器130の傾きが直前の傾きと同じ値であったとしても、反射波の検出結果が直前の検出結果と異なる可能性がある。また、検出器130の傾きを直前の傾きと同じ値にすることで、傾きが許容範囲内に維持される。
【0125】
又は、制御装置164は、溶接対象に対する検出器130の傾きを、直前の探査における傾きと異なる値に設定しても良い。この場合、傾きの変化量は、直前の傾きと許容範囲の臨界値との差よりも小さいことが好ましい。これにより、検出器130の傾きを変化させた場合でも、変化後の傾きが許容範囲外となることを抑制できる。また、検出器130の傾きを変化させることで、直前の反射波の検出結果とは異なる検出結果が得られる可能性が高くなる。
【0126】
検出器130の傾きが直前の探査における傾きと異なる値に設定される場合、制御装置164は、検出器130の傾きを、許容範囲の外に設定しても良い。これにより、検出器130の傾きが、直前の探査における傾きとは大きく異なる値に設定される。この結果、直前の探査とは大きく異なる検出結果が得られる可能性が高まる。直前の探査とは大きく異なる検出結果に基づいて、再び検出器130の傾きを調整することで、検出器130を、より適切な検出結果が得られる状態へ制御できる可能性がある。
【0127】
制御装置164は、ステップS22又はS24を再度実行しても良い。すなわち、制御装置164は、溶接部13の位置を再度検出する。これにより、溶接部13のより正確な位置が検出され、より適切な第1判定の結果が得られる可能性がある。又は、制御装置164は、溶接部13にカプラントを再度塗布する。例えば、第1判定の結果が不適切と判定されたとき、制御装置164は、アーム163を駆動させ、検出器130を溶接対象から離す。制御装置164は、塗布装置162にカプラントを溶接対象に再度塗布させる。制御装置164は、カプラントを塗布する前に、塗布装置162のノズルを洗浄しても良い。制御装置164は、カプラントを塗布する前に、溶接対象から離れた位置でカプラントを試験的に発射させ、カプラントが正常に発射されたか判定しても良い。カプラントが正常に発射されないときは、制御装置164は、塗布装置162のノズルを洗浄しても良い。塗布装置162に異常がある場合、これらの動作によって塗布装置162の異常が解消される可能性がある。洗浄又は試験的な発射の後、制御装置164は、溶接対象にカプラントを再度塗布させる。カプラントの再塗布により、溶接対象と検出器130との間がカプラントによって充填される可能性がある。この結果、より適切な第1判定の結果が得られる可能性がある。ステップS22又はS24が実行された後は、以降のステップが再び実行される。
【0128】
第1判定の結果が不適切と判定され、検出器130による再度の探査が実行されるときに、制御装置164は、溶接の良否の判定結果に応じて、探査実行時の条件を変化させても良い。例えば、溶接が良好と判定され、且つ第1判定の結果が不適切と判定されたとき、制御装置164は、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくとも1つを実行する。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件から別の条件(第1条件)へ変化する。溶接が不良と判定され、且つ第1判定の結果が不適切と判定されたとき、制御装置164は、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の別の少なくとも1つを実行する。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件からさらに別の条件(第2条件)へ変化する。第1判定の結果と溶接の判定結果との組み合わせに応じて探査実行時の条件を設定することで、再探査においてより適切な反射波の検出結果が得られ易くなる。
【0129】
第2判定において第2の方法が用いられるとき、制御装置164は、データが区分されたカテゴリに応じて、探査実行時の条件を変化させても良い。例えば、データが第2カテゴリに区分されたとき、制御装置164は、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の少なくとも1つを実行する。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件から別の条件(第1条件)へ変化する。データが第3カテゴリに区分されたとき、制御装置164は、カプラントの再塗布、傾きの再調整、及び傾きの許容範囲の変更の別の少なくとも1つを実行する。これにより、再度の探査実行時の条件が、直前の探査実行時の条件からさらに別の条件(第1条件)へ変化する。データが区分されたカテゴリに応じて探査実行時の条件を設定することで、再探査においてより適切な反射波の検出結果が得られ易くなる。
【0130】
処理システム100aにおいて、第2判定が実行されることで、溶接対象に関するより正確なデータを得ることができる。例えば、第1判定の結果に基づいて溶接部13の面積又は径が算出される場合、適切と判定された第1判定の結果に基づく値を採用することで、より正確な値を得ることができる。
【0131】
図27は、システムのハードウェア構成を表すブロック図である。
例えば、実施形態に係る処理システム100の処理装置110は、コンピュータであり、ROM(Read Only Memory)111、RAM(Random Access Memory)112、CPU(Central Processing Unit)113、およびHDD(Hard Disk Drive)114を有する。
【0132】
ROM111は、コンピュータの動作を制御するプログラムを記憶している。ROM111には、コンピュータに上述した各処理を実現させるために必要なプログラムが記憶されている。
【0133】
RAM112は、ROM111に記憶されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。CPU113は、処理回路を含む。CPU113は、ROM111に記憶された制御プログラムを読み込み、当該制御プログラムに従ってコンピュータの動作を制御する。また、CPU113は、コンピュータの動作によって得られた様々なデータをRAM112に展開する。HDD114は、読み取りに必要なデータや、読み取りの過程で得られたデータを記憶する。HDD114は、例えば、
図1に表した記憶装置120として機能する。
【0134】
処理装置110は、HDD114に代えて、eMMC(embedded Multi Media Card)、SSD(Solid State Drive)、SSHD(Solid State Hybrid Drive)などを有していても良い。
【0135】
入力装置140は、マウス、キーボード、及びタッチパッドの少なくともいずれかを含む。表示装置150は、モニタ及びプロジェクタの少なくともいずれかを含む。タッチパネルのように、入力装置140及び表示装置150の両方として機能する装置が用いられても良い。
【0136】
制御装置164についても、
図27に表したハードウェア構成を適用することが可能である。又は、
図27に表した1つのコンピュータが、処理装置110及び制御装置164として機能しても良い。又は、複数のコンピュータの協働により、処理装置110又は制御装置164の機能が実現されても良い。
【0137】
以上の例では、溶接部13の平均的な形状が円形である場合について説明した。上述した第2判定は、溶接部13の形状が円以外である場合にも適用可能である。例えば、処理装置110は、第1判定の結果に基づいて第1領域R1を設定した後、第1領域R1の外縁を抽出する。処理装置110は、第1領域R1の外縁と予め設定された形状との類似性に基づいて、第1判定の結果の適否を判定しても良い。例えば、処理装置110は、第1領域R1の外縁を示す画像と、予め設定された形状を含む画像と、の間の類似度を算出する。類似度は、各画像の特徴点等に基づいて算出される。処理装置110は、類似度を予め設定された閾値と比較することで、第1判定の結果の適否を判定する。
【0138】
以上で説明した実施形態に係る処理システム、処理方法を用いることで、溶接対象に関するより正確なデータを得ることができる。また、コンピュータを、処理システムとして動作させるためのプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0139】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、または、他の記録媒体に記録されても良い。
【0140】
例えば、記録媒体に記録されたデータは、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0141】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。