特許第6972090号(P6972090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972090
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】放熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20211111BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20211111BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H05K7/20 B
   H05K7/20 H
   H01L23/36 Z
   H01L23/46 C
   G06F1/20 C
   G06F1/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-229362(P2019-229362)
(22)【出願日】2019年12月19日
(65)【公開番号】特開2021-97190(P2021-97190A)
(43)【公開日】2021年6月24日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221155
【氏名又は名称】東芝電波プロダクツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】北崎 敏広
(72)【発明者】
【氏名】赤石 直也
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−324173(JP,A)
【文献】 特開2000−332177(JP,A)
【文献】 特開平08−300080(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0066888(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0056669(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0145581(US,A1)
【文献】 米国特許第06343016(US,B1)
【文献】 特開2019−047028(JP,A)
【文献】 特開平10−242357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0124953(US,A1)
【文献】 特開平07−170086(JP,A)
【文献】 特開2007−287957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/36
H01L 23/467
G06F 1/20
F28F 3/00
F28F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接触する表面を有するとともに扁平な1つの流路を内部に有する板状の放熱体と、
前記放熱体と一体に前記流路内に設けられるとともに、前記流路を通る冷媒の流通方向にそれぞれの長手方向が交差する複数の翼型フィンであって、それぞれの前記長手方向に交差する断面形状が、翼弦線が前記冷媒の前記流通方向に沿う翼形状になる複数の翼型フィンと
を有し、
複数の前記翼型フィンは、
前記流通方向と交差する第1の方向に前記長手方向が傾斜した第1の翼型フィンと、
前記流通方向と交差する前記第1の方向と異なる第2の方向に前記長手方向が傾斜した第2の翼型フィンと、
を有し、
前記流路では、複数の前記第1の翼型フィン及び複数の前記第2の翼型フィンが、前記流通方向に沿って交互に配置され、前記第1の翼型フィン及び前記第2の翼型フィンがクロスする、
放熱装置。
【請求項2】
複数の前記第1の翼型フィンのそれぞれは、前記流通方向に隣接する前記第2の翼型フィンと、部分的に重なって配置されている、
請求項1の放熱装置。
【請求項3】
前記流路の内面は、前記流通方向に交差する前記流路の幅方向に隣接する2つの前記翼型フィンの間でアーチ状に湾曲した湾曲面を含む、
請求項1又は2の放熱装置。
【請求項4】
前記放熱体の前記流路の一端に対向して配置され、前記流路内の空気を吸引する吸引装置をさらに有する、
請求項1乃至3のうちいずれか1項の放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基板に実装した回路部品などの発熱体を冷やす放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機に搭載される電子機器の回路部品などの発熱体を冷やす放熱装置として、金属材料の積層造形により形成した伝熱板を用いた装置が知られている。特許文献1の装置は、矩形波形状の流路を備えた伝熱板を有し、水などの冷媒を流路内面に衝突させながら流通させることにより、伝熱板に接触した発熱体を冷やす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-25349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の伝熱板は、扁平な板状の本体に流路を形成しているため、流路断面積が小さく流路抵抗が大きい。その上、この伝熱板は、冷媒を流路内面に衝突させながら流通させるため、単位時間当たりに流通可能な冷媒の量が少ない。このため、特許文献1の伝熱板は、発熱体を冷やす能力が低く、航空機に搭載する電子機器の回路部品など比較的高温になる発熱体を十分に冷やすことは難しい。
【0005】
よって、発熱量の大きい発熱体を効果的に冷やすことができるとともに小型軽量に形成することができる放熱装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明放熱装置は、発熱体に接触する表面を有するとともに扁平な1つの流路を内部に有する板状の放熱体と、前記放熱体と一体に前記流路内に設けられるとともに、前記流路を通る冷媒の流通方向にそれぞれの長手方向が交差する複数の翼型フィンであって、それぞれの前記長手方向に交差する断面形状が、翼弦線が前記冷媒の前記流通方向に沿う翼形状になる複数の翼型フィンと、を有し、複数の前記翼型フィンは、前記流通方向と交差する第1の方向に前記長手方向が傾斜した第1の翼型フィンと、前記流通方向と交差する前記第1の方向と異なる第2の方向に前記長手方向が傾斜した第2の翼型フィンと、を有し、前記流路では、複数の前記第1の翼型フィン及び複数の前記第2の翼型フィンが、前記流通方向に沿って交互に配置され、前記第1の翼型フィン及び前記第2の翼型フィンがクロスする
【発明の効果】
【0012】
本発明放熱装置によると、発熱量の大きい発熱体を効果的に冷やすことができるとともに小型軽量に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る放熱装置を示す概略図である。
図2図2は、図1の放熱装置の放熱体を示す外観斜視図である。
図3図3は、図2の放熱体の流路内に設けた複数の翼型フィンの配置の一例を示す部分拡大斜視図である。
図4図4は、図2の放熱体の流路内に設けた複数の翼型フィンの配置の他の例を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、放熱装置1は、基板2に実装した回路部品3に接触して配置される板状の放熱体4を有する。図1では、基板2の構造を見易くするため放熱体4を基板2から離間させて図示したが、放熱装置1の使用時には、放熱体4は、基板2に実装した回路部品3に接触して配置される。この他に、放熱装置1は、放熱体4の内部を貫通して設けた1つの扁平な流路5内に空気を流通させるための吸引装置10を有する。放熱体4の流路5内には、複数の翼型フィン6(6a、6b)(図2図3)が設けられている。本実施形態の放熱装置1は、例えば、図示しない航空機に搭載する電子機器に組み込まれて使用される。
【0020】
近年、航空機に搭載する電子機器は、回路基板の高密度化が進んでおり、基板に実装する回路部品の発熱量も増大する傾向にある。一方、航空機に搭載する電子機器には、小型軽量化が求められている。例えば、回路基板を収容配置するスロットの幅は、20mmに規格化されている。このため、小型軽量で且つより放熱性能の高い放熱装置の開発が望まれている。
【0021】
図1および図2に示すように、本実施形態の放熱装置1の放熱体4は、矩形板状に形成されている。放熱体4は、金属材料の積層造形により形成されている。積層造形による金属材料の積層方向は、放熱体4の厚み方向である。放熱体4は、基板2に実装した回路部品3に接触可能な表面4aを有する。放熱体4は、4つの端面のうち互いに対向する2つの端面4b、4cを連絡して放熱体4を貫通して設けた扁平な矩形の流路5を有する。
【0022】
放熱体4は、上述したスロット内に基板2とともに収容配置するため、例えば9mmの厚みを有する。これ以上の厚みにすると、規格化されたスロットの幅に収まらなくなる。また、この場合、放熱体4の流路5の厚みは5mm程度であり、流路5の幅は例えば150mmである。
【0023】
放熱体4は、流路5内に複数の翼型フィン6を有する。複数の翼型フィン6は、積層造形により、放熱体4と一体に形成される。複数の翼型フィン6は、流路5を通る空気の流通方向に沿う姿勢で設けられる。翼型フィン6の構造および配置の例については後に詳述する。
【0024】
図1に示すように、吸引装置10は、流路5の一端が開放した放熱体4の端面4cに対向して配置されている。吸引装置10は、端面4cに対向した吸引開口11aを有する吸引カップ11、および吸引カップ11の内部空間を吸引するためのポンプ12(またはファン)を有する。吸引カップ11の内部空間は、吸引管13を介してポンプ12に接続されている。
【0025】
吸引装置10のポンプ12を作動させて流路5の一端側から空気を吸引して流路5内に空気を流通させると、空気が複数の翼型フィン6に接触して放熱体4から熱を奪い、高温になった空気が吸引装置10によって吸引される。これにより、放熱体4に接触した回路部品3から熱が奪われて回路部品3が冷やされる。
【0026】
(実施例1)
以下、図3を参照して放熱体4の複数の翼型フィン6の形状および配置の一例について説明する。
複数の翼型フィン6は、略同じ形状に形成されており、放熱体4の流路5を流れる空気の流通方向(図中矢印S方向)に沿う姿勢で放熱体4と一体に設けられている。複数の翼型フィン6は、その長手方向が流通方向Sと交差する姿勢で設けられている。翼型フィン6は、航空機の翼と同様の断面形状を有する。翼型フィン6は、その全長にわたって同じ断面形状の柱状に形成されている。本実施形態の翼型フィン6は、例えば、NACA0009翼型の断面形状を有し、翼弦線と中心線が一致する対称翼型に形成されている。
【0027】
複数の翼型フィン6は、キャンバーの前縁が空気の流通方向Sの上流側に配置され且つキャンバーの後縁が流通方向Sの下流側に配置される向きで、且つ翼弦線が空気の流通方向Sと略一致する姿勢で流路5内に配置される。言い換えると、複数の翼型フィン6は、空気の流れをできるだけ妨げることのない姿勢、すなわち流路抵抗が最も小さくなる姿勢で流路5内に配置されている。複数の翼型フィン6の長手方向の両端は、放熱体4の流路5の内面に一体に接続している。
【0028】
複数の翼型フィン6は、その長手方向が空気の流通方向Sと交差する第1の方向(図3に矢印D1で示す方向)に傾斜した複数の第1の翼型フィン6a、およびその長手方向が空気の流通方向Sと交差し且つ第1の方向とは異なる第2の方向(図3に矢印D2で示す方向)に傾斜した複数の第2の翼型フィン6bを有する。言い換えると、複数の翼型フィン6は、第1の方向D1または第2の方向D2のいずれかの方向に傾斜して設けられている。本実施形態では、第1の方向D1と第2の方向D2は直交しており、それぞれ放熱体4が回路部品3に接触する表面4aに対して45°傾斜して設けられている。言い換えると、複数の第1の翼型フィン6aは同じ方向(第1の方向D1)に傾斜して互いに平行に配置されており、複数の第2の翼型フィン6bも同じ方向(第2の方向D2)に傾斜して互いに平行に配置されている。
【0029】
複数の翼型フィン6の流通方向Sに沿った配置に着目すると、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bは、放熱体4の流路5の全長にわたって、空気の流通方向Sに沿って交互に配置されている。空気の流通方向Sの最も上流側の1段目の複数の第1の翼型フィン6aは、その前縁が流通方向Sと直交する架空の面に面一に配置されて、流路5の幅方向に所定ピッチで離間して、所定角度で傾斜して互いに平行に配置されている。そして、2段目の複数の第2の翼型フィン6bは、その前縁が流通方向Sと直交する架空の面に面一に配置され、流路5の幅方向に所定ピッチで離間して、所定角度で傾斜して互いに平行に配置され、且つ1段目の複数の第1の翼型フィン6aの後縁側に部分的に入れ子状に重なるように配置されている。さらに、3段目の複数の第1の翼型フィン6aは、その前縁が流通方向Sと直交する架空の面に面一に配置され、1段目の第1の翼型フィン6aと同じピッチで離間して同じ角度で傾斜して互いに平行に配置され、且つ2段目の複数の第2の翼型フィン6bの後縁側に部分的に入れ子状に重なるように配置されている。以下同様に、複数段の翼型フィン6a、6bが流通方向Sに沿って交互にクロスするように配置されている。
【0030】
つまり、空気の流通方向Sに沿って複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを交互に配置し、且つ流通方向Sに隣接する各段の複数の第1の翼型フィン6aおよび複数の第2の翼型フィン6bを入れ子状に重ねて配置してある。本実施形態では、各段の複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを翼弦長の半分よりわずかに短い幅だけ重ねて配置した。このため、例えば、1段目の複数の第1の翼型フィン6aの後縁と3段目の複数の第1の翼型フィン6aの前縁が流通方向Sに沿って僅かに離間して近接している。また、同様に、2段目の複数の第2の翼型フィン6bの後縁と4段目の複数の第2の翼型フィン6bの前縁が流通方向Sに沿って僅かに離間して近接している。
【0031】
また、1段目の複数の第1の翼型フィン6aと3段目の複数の第1の翼型フィン6aは、それぞれ、空気の流通方向Sに一対一で並んで配置されており、2段目の複数の第2の翼型フィン6bと4段目の複数の第2の翼型フィン6bも、流通方向Sに一対一で並んで配置されている。つまり、本実施形態では、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを空気の流通方向Sに一対一で重ねて整列配置しているため、流路抵抗が小さくされており、十分な流量で空気を流路5に流通させることができる。翼型フィン6単体で見ても、表面形状が空気抵抗の少ない形状を有するため、流路抵抗を低く抑えることができる。
【0032】
上記構造の放熱装置1の放熱体4の表面4aを回路部品3に接触させて配置して、ポンプ12を作動させると、放熱体4の一端側から空気が吸引されて、放熱体4の他端4bから一端4cに向けて流路5内に空気が流通される。このとき、流路5内の限られた空間を通して空気を流通させるため、単位時間当たりに流路5を流れる空気の量を十分な量にすることができ、多くの空気を複数の翼型フィン6に効率よく接触させることができる。また、翼型フィン6a、6bを互いにクロスさせて傾斜させているとともに、流通方向Sに沿って一対一で重ねて配置しているため、複数の翼型フィン6a、6bを流路5内に高い密度で配置したにも拘わらず流路抵抗を低く抑えることができ、十分な量の空気を流通させることができる。
【0033】
回路部品3からの熱は、経時的に、放熱体4を介して複数の翼型フィン6に伝熱される。上述したようにポンプ12が作動されて放熱体4の流路5内を空気が流通されると、複数の翼型フィン6の表面に空気が接触し、翼型フィン6からの熱により空気が温められる。流路5を通過して複数の翼型フィン6の表面に接触した空気は、比較的高温に加熱されて流路5から排出される。以上のように、回路部品3の熱が放熱装置1によって奪われて、回路部品3が冷やされる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、放熱体4の流路5内に流路抵抗の小さい翼型フィン6を配置したため、翼型フィン6の表面に接触して流れる空気の翼型フィン6の表面との間の境界層剥離を軽減させることができる。このため、放熱体4の流路5における流路抵抗に基づく圧力損失を低減させることができ、放熱体4を薄くして軽量小型化したにも拘わらず、十分な量の空気を流路5内で流通させることができ、放熱装置1の放熱性能を向上させることができる。
【0035】
ところで、実施例1の放熱体4は、複数の翼型フィン6a、6bを交差させた複雑な構造を有するため、上述したように、金属材料の積層造形により形成される。積層造形は、造形物の形状によって、サポート材が必要になる場合がある。積層造形では、一般に、材料を重力方向の下方から徐々に積層して固めることにより造形物を形成する。このため、積層する材料を下から支える物体が無い場合(オーバーハングした形状の場合)には、材料をそのまま積層していくことができない。よって、このような場合には、サポート材を用いて新たに積層する材料を下から支える必要がある。なお、使用したサポート材は、通常、造形物を形成した後、造形物から取り除いて破棄する必要がある。
【0036】
このため、実施例1の放熱体4は、サポート材を用いない積層造形を可能にすべく、その形状を工夫した。実施例1の放熱体4は、その厚み方向(図3の矢印Z方向)に金属材料を積層して造形する。この場合、放熱体4の図示上方の板状体41を最後に積層する際に、翼型フィン6a、6bによる支えの無いオーバーハングした部分の積層造形が問題となる。このため、実施例1の放熱体4は、複数の翼型フィン6a、6bのピッチを2mm程度の狭ピッチに設計した上で、翼型フィン6aが板状体41を支える部位と翼型フィン6bが板状体41を支える部位が空気の流通方向Sに沿って一直線に並ぶように、翼型フィン6a、6bの配置位置を工夫した。そして、流路5の幅方向に隣接する翼型フィン6a(6b)による板状体41の支え位置の間で流路5の内面(板状体41の内面)を上方に凸となるアーチ状の湾曲面42に形成した。
【0037】
一般に、積層造形では、鉛直方向に対する傾斜角度が45度程度の構造物まではサポート材を用いない造形が可能とされている。このため、翼型フィン6a、6bは、サポート材を用いない積層造形が可能である。しかし、鉛直方向と直交する方向(水平方向)に延びた板状体41は、そのままでは積層造形をすることができない。これに対し、実施例1の放熱体4は、2mmピッチで設けた複数の翼型フィン6a、6bによって板状体41を下から支えている。その上、流路5の幅方向に隣接する翼型フィン6a(6b)の間で流路5の内面を湾曲面42に形成している。このため、サポート材を用いない積層造形が可能となっている。
【0038】
以上のように、実施例1の放熱体4は、サポート材を用いない積層造形により形成可能であるため、放熱体4を製造した後、サポート材を除去する必要がなく、所望する形状を実現することができる。また、実施例1の放熱体4は、サポート材を用いない積層造形が可能であるため、サポート材の施工にかかる作業が不要となり、その分、製造コストを低減することができる。
【0039】
(実施例2)
図4は、放熱体4’の翼型フィン6a、6bの配置を変更した他の例を示す部分拡大斜視図である。実施例2の放熱体4’は、翼型フィン6a、6bの配置が異なる以外、上述した実施例1の放熱体4と略同じ構造を有する。よって、ここでは、上述した実施例1の放熱体4と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
実施例2の放熱体4’は、空気の流通方向Sに沿って、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを交互に配置した構造を有する。実施例2の放熱体4’も、厚み5mmの流路5内に複数の翼型フィン6a、6bを配置した。流通方向Sの上流側の1段目の複数の第1の翼型フィン6aの後縁と2段目の複数の第2の翼型フィン6bの前縁との間は、流通方向Sに沿って離間している。複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bは、実施例1と同様に交差して設けられている。
【0041】
実施例2の放熱体4’を用いた場合においても、上述した実施例1の放熱体4を用いた場合と同様に、放熱体4’の流路5を通る空気の流路抵抗を小さくすることができ、複数の翼型フィン6a、6bの表面積を大きくすることができ、放熱性能を向上させることができる。
【0042】
実施例2の放熱体4’は、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bが空気の流通方向Sに沿って離間しており、流路5を流れる空気が各翼型フィン6a、6bの前縁の全体に接触する。これに対し、実施例1の放熱体4では、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bが流通方向Sに沿って部分的に重なっているため、流路5を流れる空気が各翼型フィン6a、6bの前縁の全体には接触しない。このため、実施例1の放熱体4と比較して、実施例2の放熱体4’の熱抵抗が僅かに低い。反面、実施例1の放熱体4と比較して、実施例2の放熱体4’の圧力損失が僅かに大きい。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、複数の翼型フィン6a、6bを備えた放熱体4、4’について説明したが、これに限らず、流路抵抗の少ない形状で且つ流通する空気に触れる表面積が十分に大きい形状あれば他の形状を採用することもできる。
【0045】
また、例えば、上述した実施形態では、複数の翼型フィン6a、6bを放熱体4、4’の流路5内に整列配置した場合について説明したが、これに限らず、複数の翼型フィン6を空気の流通方向に沿う姿勢で配置すればよく、その配置位置はランダムであってもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを直交する方向に傾斜させて配置した場合について説明したが、これに限らず、第1の翼型フィン6aと第2の翼型フィン6bは少なくとも異なる方向に傾斜していればよい。冷却効率を向上させるためには、流路5内に配置される翼型フィン6の長さをできるだけ長くして表面積を大きくすることが有効である。
【0047】
また、上述した実施例1では、複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを空気の流通方向に略1/2ピッチ分重ねて配置した場合について説明したが、これに限らず、翼型フィン6a、6bを流通方向に重ねる長さは任意に設定可能であり、必ずしも重ねる必要もない。複数の第1の翼型フィン6aと複数の第2の翼型フィン6bを流通方向に重ねて配置することにより、限られた長さの流路5内に配置する翼型フィン6a、6bの数を多くすることができ、空気が触れる翼型フィン6a、6bの表面積を大きくすることができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、放熱体4の流路5の幅方向に隣接した翼型フィン6a(6b)の間で流路5の内面に湾曲面42を設けた場合について説明したが、これに限らず、流路5の内面形状は、積層造形が可能であればいかなる形状であってもよい。
本発明の第1の態様に係る放熱装置は、発熱体に接触する表面を有するとともに扁平な1つの流路を内部に有する板状の放熱体と、流路を通る冷媒の流通方向に沿う姿勢で放熱体と一体に流路内に設けた複数の翼型フィンと、を有する。
本発明の第2の態様に係る放熱装置によると、複数の翼型フィンは、流通方向と交差する第1の方向に傾斜した第1の翼型フィンと、流通方向と交差する第1の方向と異なる第2の方向に傾斜した第2の翼型フィンと、を有する。
本発明の第3の態様に係る放熱装置によると、複数の翼型フィンは、流通方向と交差する第1の方向に傾斜した複数の第1の翼型フィンと、流通方向と交差する第1の方向と異なる第2の方向に傾斜して流通方向に沿って複数の第1の翼型フィンの下流に配置した複数の第2の翼型フィンと、を有する。
本発明の第4の態様に係る放熱装置によると、複数の第1の翼型フィンと複数の第2の翼型フィンは、流通方向に部分的に重なって配置されている。
本発明の第5の態様に係る放熱装置によると、流路の内面は、隣接する2つの翼型フィンの間でアーチ状に湾曲した湾曲面を含む。
本発明の第6の態様に係る放熱装置によると、放熱体の流路の一端に対向して配置され、流路内の空気を吸引する吸引装置をさらに有する。
本発明の第1の態様に係る放熱装置によると、扁平な1つの流路内に複数の翼型フィンを設けたため、放熱体を薄くすることができ、小型軽量にすることができる。その上、翼型フィンを放熱体と一体に流路内に設けたため、流路抵抗を小さくすることができる。よって、この放熱装置によると、小型軽量に構成することができ、その上、発熱量の大きい発熱体を効果的に冷やすことができる。
本発明の第2の態様に係る放熱装置によると、第1の方向に傾斜した第1の翼型フィンと第2の方向に傾斜した第2の翼型フィンを有するため、第1および第2の翼型フィンに冷媒を効率よく接触させることができ、発熱体を効果的に冷やすことができる。
本発明の第3の態様に係る放熱装置によると、第1の方向に傾斜した複数の第1の翼型フィンの下流側に第2の方向に傾斜した複数の第2の翼型フィンを配置したため、複数の第1の翼型フィンおよび複数の第2の翼型フィンのそれぞれに冷媒を効率よく接触させることができ、発熱体を効果的に冷やすことができる。
本発明の第4の態様に係る放熱装置によると、冷媒の流通方向に沿ってより多くの翼型フィンをコンパクトに配置することができ、その分、放熱性能を高めることができ、発熱体を効果的に冷やすことができる。
本発明の第5の態様に係る放熱装置によると、板状の放熱体を厚み方向に積層造形により形成する場合に、サポート材が不要となり、サポート材を除去する必要がなく、装置の製造工程を簡略化することができ、装置の製造コストを低減することができる。
本発明の第6の態様に係る放熱装置によると、放熱体の流路内の空気を吸引するため、限られた空間における冷媒の流通量を多くすることができ、放熱性能を高めることができ、発熱体を効果的に冷やすことができる。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された事項を付記する。
[1]発熱体に接触する表面を有するとともに扁平な1つの流路を内部に有する板状の放熱体と、
前記流路を通る冷媒の流通方向に沿う姿勢で前記放熱体と一体に前記流路内に設けた複数の翼型フィンと、
を有する放熱装置。
[2]前記複数の翼型フィンは、
前記流通方向と交差する第1の方向に傾斜した第1の翼型フィンと、
前記流通方向と交差する前記第1の方向と異なる第2の方向に傾斜した第2の翼型フィンと、
を有する[1]の放熱装置。
[3]前記複数の翼型フィンは、
前記流通方向と交差する第1の方向に傾斜した複数の第1の翼型フィンと、
前記流通方向と交差する前記第1の方向と異なる第2の方向に傾斜して前記流通方向に沿って前記複数の第1の翼型フィンの下流に配置した複数の第2の翼型フィンと、
を有する[1]の放熱装置。
[4]前記複数の第1の翼型フィンと前記複数の第2の翼型フィンは、前記流通方向に部分的に重なって配置されている、
[3]の放熱装置。
[5]前記流路の内面は、隣接する2つの翼型フィンの間でアーチ状に湾曲した湾曲面を含む、
[1]の放熱装置。
[6]前記放熱体の前記流路の一端に対向して配置され、前記流路内の空気を吸引する吸引装置をさらに有する、
[1]乃至[5]のうちいずれか1項の放熱装置。
【符号の説明】
【0049】
1…放熱装置、2…基板、3…回路部品、4、4’…放熱体、4a…表面、5…流路、6…翼型フィン、6a…第1の翼型フィン、6b…第2の翼型フィン、10…吸引装置、41…板状体、42…湾曲面、D1…第1の方向、D2…第2の方向、S…流通方向。
図1
図2
図3
図4