特許第6972112号(P6972112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972112
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】顕微鏡用の変更システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   G02B21/00
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-508957(P2019-508957)
(86)(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公表番号】特表2019-525255(P2019-525255A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017069615
(87)【国際公開番号】WO2018033398
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2020年5月11日
(31)【優先権主張番号】102016115140.8
(32)【優先日】2016年8月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シューマン
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043820(JP,A)
【文献】 特開2010−117624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(10)の光軸(O)に沿って延在する無限ビーム路(16)に選択的に挿入可能な、倍率の異なる複数のアフォーカル倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)を有する、顕微鏡(10)用の変更システムにおいて、
前記倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)は、それぞれ、光偏向システム(202、302、402)を有し、
前記光偏向システム(202、302、402)は、それぞれの前記倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)を貫通する前記無限ビーム路(16)の経路長が設定され、これにより、すべての倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)によって、倍率が異なるのにもかかわらず、前記顕微鏡(10)の対物レンズ(12)の射出瞳が、前記光軸(O)に沿って同じ位置に結像される、ように構成されている、
顕微鏡(10)用の変更システム。
【請求項2】
前記倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)は、それぞれ、光入射側変更面(201、301、401)および光出射側変更面(203、303、403)を有するモジュール体(20)を有しており、
前記2つの変更面は、すべてのモジュール体において互いに同一に配置されている、
請求項1記載の変更システム。
【請求項3】
前記倍率変更モジュール(200b〜200d、300b〜300d、400b〜400d)は、それぞれ、拡大システム(207b〜207d、307b〜307d、407b〜407d)を有する、
請求項1または2記載の変更システム。
【請求項4】
それぞれの前記拡大システム(207b〜207d、307b〜307d、407b〜407d)は、前記無限ビーム路(16)において光入射側に配置されている、
請求項3記載の変更システム。
【請求項5】
それぞれの前記拡大システム(207b〜207d、307b〜307d、407b〜407d)は、ケプラー式望遠鏡またはガリレオ式望遠鏡である、
請求項3または4記載の変更システム。
【請求項6】
前記光偏向システム(202、302、402)は、それぞれ、前記光入射側変更面(201、301、401)を貫通する、前記光軸(O)の部分に対し、前記光出射側変更面(203、303、403)を貫通する、前記光軸(O)の部分を同一に偏心させる、
請求項2記載の変更システム。
【請求項7】
前記光出射側変更面(203、303、403)を貫通する、前記光軸(O)の前記部分は、前記光入射側変更面(201、301、401)を貫通する、前記光軸の前記部分に対し、あらかじめ設定した平行偏心を有する、
請求項6記載の変更システム。
【請求項8】
前記光出射側変更面(203、303、403)を貫通する、前記光軸(O)の前記部分は、前記光入射側変更面(201、301、401)を貫通する、前記光軸(O)の前記部分に対して直角に偏向され、かつ、前記光入射側変更面からあらかじめ設定した間隔で配置されている、
請求項6記載の変更システム。
【請求項9】
前記光偏向システム(202、302、402)は、それぞれ、少なくとも1つの第1および第2の光反射部材(204、205、304、305、404、405)を有し、
前記第1の光反射部材(204、304、404)は、前記光入射側変更面(201、301、401)を貫通する、前記光軸(O)の部分に配置されており、前記第2の光反射部材(205、305、405)は、前記光出射側変更面(203、303、403)を貫通する、前記光軸(O)の部分に配置されている、
請求項2、6から8までのいずれか1項記載の変更システム。
【請求項10】
前記第1および第2の光反射部材(204、205、304、305、404、405)は、ミラー装置またはプリズムの部分である、
請求項9記載の変更システム。
【請求項11】
前記倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)のうちの1つは、1と等しい倍率を有する、
請求項1記載の変更システム。
【請求項12】
射出瞳を備えた対物レンズ(12)と、
求項1から11までのいずれか1項記載の変更システムと、
有する顕微鏡(10)。
【請求項13】
前記倍率変更モジュール(200a〜200d、300a〜300d、400a〜400d)によって形成される、前記対物レンズ(12)の前記射出瞳の像の位置に光学部材が配置されている、
請求項12記載の顕微鏡(10)。
【請求項14】
前記光学部材は、空間光変調器、マイクロミラー装置または位相変化マスクである、
請求項13記載の顕微鏡(10)。
【請求項15】
4fシステムを有しており、それぞれの前記倍率変更モジュールは、前記4fシステムの部分である、
請求項12から14までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の光軸に沿って延在する無限ビーム路に選択的に挿入可能な、倍率の異なる複数のアフォーカル倍率変更モジュールを有する、顕微鏡用の変更システムに関する。さらに本発明は、アフォーカル倍率変更モジュールと、変更システムまたはアフォーカル倍率変更モジュールを備えた顕微鏡と、に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡システムにおける倍率を適合させるため、いわゆるアフォーカル倍率変更器が公知である。無限ビーム路を有する複合顕微鏡において、この倍率変更器は、一般に、対物レンズとチューブレンズとの間の無限ビーム路に配置されており、かつ例えば、リボルバまたは別のタイプの変更装置を用いて変更することが可能な複数の望遠鏡光学系によって実現される。
【0003】
倍率変更器に使用される望遠鏡光学系により、確かに顕微鏡光路のアフォーカル性は確保される。しかしながら、望遠鏡光学系の倍率が種々異なることにより、対物レンズの射出瞳は、光軸に沿って異なる位置に結像され、これにより、チューブレンズの作用が加わって、全体システムの異なる射出瞳位置が生じてしまうことになる。射出瞳位置のこのような変化に伴う口径食は、一般には許容され得る。
【0004】
しかしながら特殊な顕微鏡法では、対物側のテレセントリック系に対し、顕微鏡対物レンズの射出瞳の位置にある焦平面における結像を変化させなければならないことが多い。このような変化をもたらすものとしては、例えば、空間光変調器、略してSLM(Spatial Light Modulator)、マイクロミラー装置、略してDMD(Digital Mirror Device)または位相変化マスクなどの変調部材を焦平面に配置することなどが考えられる。上記の構成部材を定位置に位置決めできるようにするため、対物瞳に対して共役な平面を定位置に配置する必要がある。
【0005】
したがってこの特殊な顕微鏡法では、望遠鏡光学系によって射出瞳位置が変化してしまう一般的な倍率変更器を使用することはできない。
【0006】
定位置の瞳位置を有する倍率変更システムは、例えば米国特許第8144395号明細書(US 8 144 395 B2)および米国特許第8582203号明細書(US 8 582 203 B2)に記載されているように、いわゆるリモートフォーカシング技術との関連においても重要である。ここでは、第1に、実装において対物瞳を定位置に配置することが有効である4f配置構成が必要である。というのは、これにより、すべてのシステムコンポーネントを定位置に取り付けることができるからである。しかしながら、この配置構成内で対物レンズを交換する際には、収差のないリフォーカシングに必要な倍率条件を維持するために、全体システムの倍率も一定に保たなければならない。しかしながら使用上の制限から、例えばカバーガラス補正、自由な作業距離、液浸などの理由から、対物側の別の対物レンズを使用しようとする場合、生じ得る倍率変化を補償し、かつその際に対物瞳の像を定位置に留める付加的なシステムが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、比較的少ない技術的コストで、倍率変更時に対物瞳の像を定位置に維持することを可能にする、顕微鏡用の変更システムと、アフォーカル倍率変更モジュールと、変更システムまたはアフォーカル倍率変更モジュールを備えた顕微鏡と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1に記載した変更システム、請求項12に記載したアフォーカル倍率変更モジュール、もしくは請求項15に記載した顕微鏡によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項および以下の説明に示されている。
【0009】
本発明による変更システムは、顕微鏡の光軸に沿って延在する無限ビーム路に選択的に挿入可能な、倍率の異なる複数のアフォーカル倍率変更モジュールを有する。これらの倍率変更モジュールは、それぞれ、光偏向システムを有する。この光偏向システムは、それぞれの倍率変更モジュールを貫通する無限ビーム路の経路長が設定され、これにより、すべての倍率変更モジュールによって、倍率が異なるのにもかかわらず、顕微鏡の対物レンズの射出瞳が、光軸に沿って同じ位置に結像される、ように構成されている。
【0010】
変更システムを形成する倍率変更モジュールに含まれている種々異なる光偏向システムは、倍率変更が原因で発生する射出瞳位置の変化を補償するように構成されている。このことが意味するのは、複数の倍率変更モジュールのうちのいずれが、現在、顕微鏡に挿入されているかかかわらずに、対物レンズ射出瞳の像が、つねに同じ位置に形成されることである。
【0011】
対物レンズの射出瞳がそれぞれの倍率変更モジュールによって結像される結像長さの、本発明による変更システムによって実現されるこのような一元化により、定位置の焦平面において、SLM、DMDまたは位相変化マスクのような光学部材を定位置に配置することができる。このとき、このような構成部材の光学的に有効な平面は、定位置の瞳位置において、対応する拡大により、すなわち、適切な倍率変更モジュールを挿入することにより、瞳サイズに適合可能である。
【0012】
本発明による変更システムのモジュール性は、2つの観点から有用である。第1には、メーカ側においてこのモジュール性を利用し、これにより、メーカが、(ただ1つの)あらかじめ設定した倍率を有する倍率変更器を具備するように顕微鏡システムを製造する際に、1つのシステムから、異なる倍率を有するが構造的には同質である、異なる複数のモジュールを使用できるようにする。これにより、製造コストが大幅に減少される。第2には、顕微鏡システムのユーザは、上記のモジュール性を利用し、これにより、このユーザは、簡単な倍率変更により、すなわち、顕微鏡に挿入されている倍率変更モジュールを、別の倍率の構造的に同質のモジュールに交換することにより、システム倍率を変更することができる。したがって本発明による変更システムにより、例えば、手動によるまたはモータ駆動による実施において、スライドシステムもしくはリボルバを使用する、または別のリニア式もしくは回動式の変更器も使用する、迅速な交換のコンセプトのベースが形成される。
【0013】
好適には、倍率変更モジュールは、それぞれ、光入射側変更面および光出射側変更面を有するモジュール体を有しており、2つの変更面は、すべてのモジュール体において互いに同一に配置されている。これらの変更面は、例えば、対応する当接部と協働し、無限ビーム路内で空間的に固定の複数のインタフェースを成し、これらのインタフェースにより、構造的に同質のモジュール体を必要に応じて簡単に交換することが可能になる。それぞれのモジュール体の光入射側変更面は、倍率変更モジュールの入射瞳に対するいわば機械的な基準を形成し、この機械的な基準は、モジュールを組み込んだ際に、顕微鏡対物レンズの射出瞳と一致するようにされる。これに対応して、モジュール体の光出射側変更面は、倍率変更モジュールを含めた無限ビーム路内に形成される、対物レンズ射出瞳の像に対する機械的な基準を形成する。ここで上述の機械的な基準とは、それぞれの倍率変更モジュールに対し、顕微鏡対物レンズの射出瞳が、光入射側変更面に対して同じ位置を有し、かつ射出瞳の像が、光出射側変更面に対して同じ位置を有することであると理解されたい。2つの変更面は、すべてのモジュール体において互いに同一に配置されているため、射出瞳もしくはその像に対するこの機械的な基準も、すべての倍率変更モジュールについて同一である。したがって複数の倍率変更モジュールの変更面が、無限ビーム路の同じ個所に位置決めされる場合、対物レンズの射出瞳が、複数の倍率変更モジュールのうちのいずれが、現在、顕微鏡に挿入されているかにかかわらず、光軸に沿ってつねに同じ個所に結像されることが保証される。
【0014】
本発明による変更システムのモジュール性を備えた特性は、光入射側変更面および光出射側変更面の定義によって得られ、またそれぞれの倍率変更モジュールを収容しなければならない最大の組み込みスペースをあらかじめ設定することによって得られる。変更面では、光軸の方向も位置も固定に定義され、これにより、個々の倍率変更モジュールを交換できることが保証される。
【0015】
好適には、倍率変更モジュールは、それぞれ、例えばケプラー式望遠鏡またはガリレオ式望遠鏡である拡大システムを有する。設置スペースをより小さくするという理由から、特にケプラー式望遠鏡として形成することが有利である。好ましい実施形態では、それぞれの拡大システムは、無限ビーム路において、光偏向システムに後置されている。
【0016】
それぞれのモジュール体内での拡大システムの位置決めおよび拡大システムを形成する光学素子の焦点距離は、それぞれのモジュールの全体長さが最小化され、ひいては最大限に確保すべき設置スペースが制限されるように選択可能である。
【0017】
好適には、光偏向システムは、それぞれ、光入射側変更面を貫通する、光軸の部分に対し、光出射側変更面を貫通する、光軸の部分を同一に偏心させる。この同一の偏心により、すべての倍率変更モジュールに対し、変更面における光軸の位置および配向が同一に定義され、これにより、個々のモジュールを交換できることが保証される。
【0018】
特別な実施形態において、光出射側変更面を貫通する、光軸の部分は、光入射側変更面を貫通する、光軸の部分に対し、あらかじめ設定した平行偏心を有する。この実施形態により、180°のビーム偏向を実現することも可能である。
【0019】
90°のビーム偏向は、光出射側変更面を貫通する、光軸の部分が、光入射側変更面を貫通する、光軸の部分に対して直角に偏向され、かつ光入射側変更面からあらかじめ設定した間隔で配置されている場合に実現される。
【0020】
好ましい実施形態において、光偏向システムは、それぞれ、少なくとも1つの第1および第2の光反射部材を有し、第1の光反射部材は、光入射側変更面を貫通する、光軸の部分に配置されており、第2の光反射部材は、光出射側変更面を貫通する、光軸の部分に配置されている。光偏向システムを形成する2つの光反射部材の相対的な配置を適切に選択することにより、定位置の瞳の結像を実現するために、それぞれの倍率変更モジュール内の無限ビーム路の経路長を望み通りに設定することができる。2つの光反射部材を使用することにより、さらに、顕微鏡にいずれにせよ必要なビーム偏向を、像の反転なしに保証することができるという利点が得られる。
【0021】
2つの光反射部材は、好適には、ミラー装置またはプリズムの部分である。さらに上の方で述べた直角のビーム偏向のために、特に、スミスプリズムもしくはペンタプリズムまたはこれと同等のミラー装置を使用することが考えられる。
【0022】
変更システムは、倍率が1に等しい倍率変更モジュールを有することも可能である。このことが意味するのは、このモジュールでは、光偏向システムだけは設けられているが、別のモジュールに設けられる拡大システムは設けられていないことである。
【0023】
本発明の別の態様によれば、顕微鏡の光軸に沿って延在する無限ビーム路に挿入可能な、顕微鏡用のアフォーカル倍率変更モジュールが規定される。倍率変更システムは、光偏向システムを有しており、この光偏向システムは、倍率変更モジュールを貫通する無限ビーム路の経路長が設定され、これにより、倍率変更モジュールによって、顕微鏡の対物レンズの射出瞳が、光軸に沿ってあらかじめ設定した位置に結像される、ように構成されている。
【0024】
さらに本発明では、射出瞳を備えた対物レンズと、上で説明した形態の変更システムまたはアフォーカル倍率変更モジュールと、を有する顕微鏡が規定される。
【0025】
顕微鏡の好ましい実施形態において、倍率変更モジュールによって形成される、対物レンズの射出瞳の像の位置に、顕微鏡の結像を変化させるために利用可能な、例えばSLM、DMDまたは位相変化マスクのような光学部材が配置されている。
【0026】
顕微鏡の別の好ましい実施形態において、倍率変更モジュールは、好適には収差のないリフォーカシングに利用される4fシステムの部分である。
【0027】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による顕微鏡の概略図である。
図2a】変更システムの第1実施例を示す図である。
図2b】別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第1実施例を示す図である。
図2c】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第1実施例を示す図である。
図2d】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第1実施例を示す図である。
図3a】変更システムの第2実施例を示す図である。
図3b】別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第2実施例を示す図である。
図3c】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第2実施例を示す図である。
図3d】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第2実施例を示す図である。
図4a】変更システムの第3実施例を示す図である。
図4b】別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第3実施例を示す図である。
図4c】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第3実施例を示す図である。
図4d】さらに別の倍率変更モジュールを有する変更システムの第3実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、顕微鏡10がブロック図で示されている。顕微鏡10は、対物面14から到来する光を受光する対物レンズ12を有する。この光は、コリメートされた光束として対物レンズ12から出射し、無限ビーム路16に伝搬し、モジュール体20を有する倍率変更モジュール18に到達する。この倍率変更モジュール18は、アフォーカル光学系である。これに対応して、倍率変更モジュール18からの光は、ここでもコリメートされた光束として出射する。次にチューブレンズ22により、光は、中間像を形成するために中間像面24に集束される。
【0030】
図1に示した実施形態において、アフォーカル倍率変更モジュール18を通って出射した光は、アフォーカル倍率変更モジュール18によって偏向され、これにより、無限ビーム路16が、平行偏心される。
【0031】
図2a〜図2dには、図1に示した倍率変更モジュール18に対応するモジュールをそれぞれ形成する異なる4つの倍率変更モジュール200a〜200dが示されている。これらの倍率変更モジュール200a〜200dにより、顕微鏡10において全体的な倍率を変更するために使用可能な変更システムが得られる。このために、倍率変更モジュール200a〜200dのうちの1つが選択的に顕微鏡10の無限ビーム路16に挿入される。
【0032】
図2a〜図2dに示した実施例において、倍率変更モジュール200aは、倍率1を有し、倍率変更モジュール200bは、倍率1.05を有し、倍率変更モジュール200cは、倍率1.5を有し、倍率変更モジュール200dは、倍率1.6を有する。当然のことながら、これらの数値は、純粋に例示的なものであると理解されたい。
【0033】
倍率変更モジュール200aは、図2aに示していないそのモジュール体に、光入射側変更面201を有しており、この光入射側変更面201を通して、光は、光軸Oに沿ってモジュール体に入射する。次に、光は、モジュール体内の光偏向システム202によって偏向され、これにより、光は、平行偏心されて、モジュール体に形成された変更面203を通って倍率変更モジュール200aから出射する。したがって光出射側変更面203を貫通する、光軸Oの部分は、光入射側変更面201を貫通する、光軸Oの部分に対し、図2aにおいてdで示したように平行偏心される。
【0034】
光偏向システム202は、第1の偏向ミラー204および第2の偏向ミラー205を有する。第1の偏向ミラー204は、光入射側変更面201を貫通する、光軸Oの部分にあるのに対し、第2の偏向ミラー205は、光出射側変更面203を貫通する、光軸Oの部分に配置されている。2つの偏向ミラー204および205は、それぞれ、光軸Oに対して傾けられており、かつ互いに平行に配向されている。これに対応して、図2aに示した角度αおよびαは、絶対値が等しい。
【0035】
図2aにおいて、倍率変更モジュール200aの入射瞳には参照符号206が付されている。入射瞳206は、光軸Oに沿って、光入射側変更面201から、あらかじめ設定した固定の間隔を有する。倍率変更モジュール200aが、顕微鏡10の無限ビーム路16に配置されると、入射瞳206は、対物レンズ12の射出瞳の位置に配置される。
【0036】
倍率1を有する、図2aに示した倍率変更モジュール200aとは異なり、別の倍率変更モジュール200b、200cおよび200dは、それぞれ、2つのレンズ群208b、209b、もしくは208c、209c、もしくは208d、209dから形成されかつケプラー式望遠鏡である拡大システム207b、207cもしくは207dを有する。倍率変更モジュール200a〜200dを有する変更システムは、すべての倍率変更モジュール200a〜200dにおいて、入射瞳206、ひいてはモジュールを組み込んだ際の対物レンズ12の射出瞳と、光入射側変更面201と、の間の間隔が同一になるように設計される。さらに、すべての倍率変更モジュール200a〜200dについて、光軸Oの平行偏心dも同じである。拡大システム207b、207cおよび207dの異なる拡大作用によって位置が変化する射出瞳の像が、すべてのモジュールについて定位置に維持されることを保証するため、光偏向システム202を形成する2つの偏向ミラー204および205は、個々の倍率変更モジュール200b、200cおよび200dにおいて互いに異なる間隔を有する。言い換えると、光偏向システム202は、倍率変更モジュール200b、200cおよび200dのそれぞれにおいて、すべての倍率変更モジュール(拡大システムのないモジュール200aを含めて)により、射出瞳の像が同じ位置に形成されるように、対応する拡大システム207b、207c、207dに応じて調整される。
【0037】
図2a〜図2dの比較が示すように、偏向ミラー204および205は、それぞれの倍率変更モジュールを貫通する光束の影が生じないようにそれぞれ互いに配置される。すなわち、特に、すべての倍率変更モジュール200a〜200dについて、このシステムコンセプトにおいて規定される最大の瞳サイズおよび画角を考慮して、口径食のない結像が可能になるように間隔dを選択する。
【0038】
図3a〜図3dには、同様に上で説明したコンセプトに対応して実施された本発明による変更システムの第2実施例が示されている。第2実施例による変更システムには、図3aに示した倍率1を有する倍率変更モジュール300aと、図3bに示した倍率1.05を有する倍率変更モジュール300bと、図3cに示した倍率1.5を有する倍率変更モジュール300cと、図3dに示した倍率1.6を有する倍率変更モジュール300dと、が含まれている。
【0039】
この実施例においても、すべての倍率変更モジュール300a〜300dは、それぞれ、光入射側変更面301と、2つの偏向ミラー304、305から形成される光偏向システム302と、光出射側変更面303と、入射瞳306と、を有する。倍率変更モジュール300b、300cおよび300dは、さらに(倍率1の倍率変更モジュール300aとは異なり)、それぞれ、2つのレンズ群308b、309b、もしくは308c、309c、もしくは308d、309dから形成されかつケプラー式望遠鏡である拡大システム307b、307cもしくは307dを有する。
【0040】
個々の倍率変更モジュール300a〜300dに使用される光偏向システム302は、この実施例においても、拡大システム307b、307cおよび307dの拡大作用を考慮し、対物レンズ12の射出瞳が、すべてのモジュールにおいて同じ位置に結像されるように構成されている。
【0041】
第2実施例は、図2a〜図2dに示した変更システムとは、光出射側変更面303を貫通する、光軸Oの部分が、光偏向システム302により、光入射側変更面301を貫通する、光軸Oの部分に対し、直角に偏向される点が異なる。したがって第2実施例の倍率変更モジュール300a〜300dにより、それぞれ90°のビーム偏向が生じる。このビーム偏向を目的として、2つの偏向ミラー304および305は、光軸Oに対してそれぞれ(光軸に対して垂直な方向を基準にして)22.5°傾けられている。第2の偏向ミラー305を第1の偏向ミラー304に対して適切に位置決めすることにより、倍率変更モジュール300a〜300dのそれぞれについて保証できるのは、対物レンズ12の射出瞳の定位置の結像が得られることである。
【0042】
すべての倍率変更モジュール300a〜300dにおいて、図3a〜図3dにおいてdで示した、それぞれの光出射側変更面303を貫通する光軸Oと、光入射側変更面301と、の間の間隔は、同じである。ここでも、すべての倍率変更モジュール300a〜300dについて、このシステムコンセプトにおいて規定される最大の瞳サイズおよび画角を考慮して、口径食のない結像が可能になるように間隔dを選択する。
【0043】
最後に、図4a〜図4dには、ここでも倍率1.0、1.05、1.5および1.6を有する4つの倍率変更モジュール400a〜400dが設けられている第3実施例が示されている。ここでも、倍率変更モジュール400a〜400dは、それぞれ、光入射側変更面401と、2つの偏向ミラー404および405から形成される光偏向システム402と、光出射側変更面403と、入射瞳406と、を有する。1とは異なる倍率を有する倍率変更モジュール400b、400cおよび400dは、さらに、それぞれ、2つのレンズ群408b、409b、408c、409c、408d、409dから形成されかつケプラー式望遠鏡である拡大システム407b、407cもしくは407dを有する。
【0044】
第3実施例は、上で説明した2つの実施例とは異なり、180°のビーム偏向のために設計されている。これに対応して、光偏向システム402を形成する2つの偏向ミラー404および405は、それぞれ、光軸に対して45°傾けられている。同じ角度で2つの偏向ミラー404、405をこのように配置構成することは、光軸に対して異なる角度で偏向ミラーが傾けられている配置構成よりも、反射率および偏光上の理由から有利である。しかしながら無論、異なる角度で偏向ミラーが傾けられている配置構成を除外するものでもない。
【0045】
倍率変更モジュール400a〜400dでは、それぞれの変更面401を通って入射した光は、それぞれの光偏向システム402によって偏向され、これにより、この光は、光入射方向とは逆の方向に、平行偏心されて変更面403から出射する。したがって光出射側変更面403を貫通する、光軸Oの部分は、光入射側変更面401を貫通する、光軸Oの部分に対し、図4a〜図4dにおいてdで示したように偏心される。すべての倍率変更モジュール400a〜400dについて、瞳サイズおよび画角を考慮して、口径食のない結像が可能になるように偏心dを選択する。
【0046】
図4a〜図4dの比較が示すように、拡大システム407b、407cおよび407dの異なる拡大作用によって位置が変化する射出瞳の像が、すべてのモジュールについて定位置に維持されることを保証するため、2つの偏向ミラー404および405は、異なる倍率変更モジュール400a〜400d全体を通して共通に、光入射側もしくは光出射側の光軸Oの部分に沿って同様にシフトされる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d