(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972123
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】酵素法を使用するレバウディオサイドNを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/56 20060101AFI20211111BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20211111BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20211111BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20211111BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
C12P19/56
C12P19/18
!C12N15/54
!C12N15/54ZNA
!C12N1/21
!C12N1/19
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-520995(P2019-520995)
(86)(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公表番号】特表2019-531083(P2019-531083A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】CN2016102948
(87)【国際公開番号】WO2018072213
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591235706
【氏名又は名称】ペプシコ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】陶 軍華
(72)【発明者】
【氏名】李 国慶
(72)【発明者】
【氏名】王 文霞
(72)【発明者】
【氏名】鄭 雷雷
(72)【発明者】
【氏名】朱 春磊
(72)【発明者】
【氏名】梁 暁亮
(72)【発明者】
【氏名】陳 車翹
【審査官】
野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0296499(US,A1)
【文献】
特表2016−527892(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/113231(WO,A1)
【文献】
特表2015−519059(JP,A)
【文献】
特表2016−527905(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/120486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−44/00
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製する方法であって、
a)レバウディオサイドAを、グリコシルドナーおよびラムノシルドナーならびにi)UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞またはii)組換え細胞から調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼが存在する反応系で反応させることを含み、ここで、i)またはii)の何れかにおけるUDP−グリコシルトランスフェラーゼが配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、該反応系が配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するUDP−グリコシルトランスフェラーゼをさらに含むか、または
b)レバウディオサイドJを、グリコシルドナーおよびi)UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞またはii)組換え細胞から調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼが存在する反応系で反応させることを含み、ここで、i)またはii)の何れかにおけるUDP−グリコシルトランスフェラーゼが配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、
a)およびb)におけるグリコシルドナーがUDP−グルコースまたはUDP−グルコース再生システムである、方法。
【請求項2】
グルコース再生システムが、スクロース、スクロース合成酵素及びUDPを含み、ラムノシルドナーがUDP−ラムノースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
UDP−グリコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)由来のUGT−A及びオライザ・サティバ(Oryza sativa)由来のUGT−Bのうちの1つ又は2つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
UDP−グルコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及び/又はオライザ・サティバ由来のUGT−Bを含み、UGT−Bが第1の工程で添加され、UGT−Aが前記第2の工程で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応系が、35℃〜45℃の温度及びpH値7.5〜8.5の水相系を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
水相系がリン酸緩衝液である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応系が細胞透過性化剤をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
細胞透過性化剤がトルエンであり、トルエンが、1〜3%の体積濃度を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組換え細胞が微生物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記微生物細胞が、大腸菌、出芽酵母、又はピチア・パストリスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
レバウディオサイドNを樹脂分離により精製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
樹脂分離により精製したレバウディオサイドNが95%を超える純度を有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製するための方法に関し、特に、レバウディオサイドNの生物学的調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘味剤は、飲料及び菓子などの食品の製造に広く使用される食品添加剤の一種である。甘味剤は、食品の製造中に添加されてもよく、又は、家庭用ベーキングにおいてスクロースの代用物として適切に希釈して使用されてもよい。甘味剤としては、天然甘味剤及び人工甘味剤が挙げられ、前者はスクロース、高フルクトースコーンシロップ、ハチミツなどを含み、後者はアスパルテーム、サッカリンなどを含む。ステビオサイドは、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)植物から抽出された天然甘味剤の一種であり、食品及び飲料に広く使用されている。ステビア・レバウディアナの抽出物は、レバウディオサイドを含む複数のステビオサイドを含有し、天然に抽出されたステビオサイドは、バッチごとの組成の差が大きく、その後精製する必要がある。
【0003】
ステビア・レバウディアナの葉におけるレバウディオサイドNの比は、1.5%未満である。従来の抽出方法により高純度のレバウディオサイドNを得ることは非常に困難であり、このことは、レバウディオサイドNの徹底的な調査を制限し、その商業的用途を妨げる。
【発明の概要】
【0004】
本発明によって解決される技術的課題は、従来技術における欠陥を克服し、酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製する方法を提供することである。本方法によれば、高純度レバウディオサイドN製品は、短い生産サイクルにおいて低コストで調製され得る。
【0005】
本発明では、上記技術的問題を解決するために、以下の技術的解決策が採用される。
【0006】
酵素法を用いてレバウディオサイドNを調製するための方法が提供される。本方法は、グリコシルドナーの存在下で、レバウディオサイドAを基質として使用し、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞及び/又は調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下で反応させてレバウディオサイドNを生成することを含む。
【0007】
酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製するための方法が更に提供される。本方法は、グリコシルドナーの存在下で、レバウディオサイドJを基質として使用し、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞及び/又は調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下で反応させてレバウディオサイドNを生成することを含む。
【0008】
好ましくは、グリコシルドナーは、グルコース系ドナー及びラムノシルドナーのうちの1つ又は2つを含み、グルコース系ドナーが、UDP−グルコース又はスクロース、スクロース合成酵素及びUDPからなるUDP−グルコース再生システム(2007、FEBS Letters、581,2562〜2566)であり、ラムノシルドナーはUDP−ラムノースである。グルコース系ドナーは、好ましくはスクロース、スクロース合成酵素、及びUDPからなるUDP−グルコース再生システムである。UDPグルコースの価格は高い。したがって、UDP−グルコース再生システムの使用は、コストを大幅に低減することができる。
【0009】
好ましくは、UDP−グ
ルコシルトランスフェラーゼ(すなわち、ウ
リジン二リン酸グルカノトランスフェラーゼ、略してUGTと称され、当該技術分野において既知である)は、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)由来のUGT−A及びオライザ・サティバ(Oryza sativa)由来のUGT−Bのうちの1つ又は2つを含む。
【0010】
好ましくは、UDP−グルコシルトランスフェラーゼは、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及び/又はオライザ・サティバ由来のUGT−Bを含み、UDP−グリコシルトランスフェラーゼを、2つの工程で反応系に添加し、UGT−Bが第1の工程で添加され、UGT−Aが第2の工程で添加される。UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも60%の同一性を有し、及び/又はUGT−Bのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列4に対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0011】
より好ましくは、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも70%の同一性を有し、及び/又はUGT−Bのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列4に対して少なくとも70%の同一性を有する。
【0012】
更に、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも80%の同一性を有し、及び/又はUGT−Bのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列4に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0013】
また更に、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも90%の同一性を有し、及び/又はUGT−Bのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列4に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0014】
いくつかの特定の実施形態では、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2と絶対的に同一であり、及び/又はUGT−Bのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列4と絶対的に同一である。
【0015】
好ましくは、UDP−グリコシルトランスフェラーゼは、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2と少なくとも60%の同一性を有する。
【0016】
より好ましくは、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも70%の同一性を有する。
【0017】
更に、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0018】
更に、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも90%の同一性を有する。いくつかの特定の実施形態では、UGT−Aのアミノ酸配列は、配列表に列挙される配列2と絶対的に同一である。
【0019】
本発明によると、この反応は、水性系で4〜50℃の温度及びpH値5.0〜9.0で行われる。好ましくは、反応は、水相系で35℃〜45℃の温度及びpH値7.5〜8.5で行われる。
【0020】
より好ましくは、反応はリン酸緩衝液中で実施される。
【0021】
より好ましくは、反応系は、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ組換え細胞及び細胞透過性化剤を含む。更に、細胞透過性化剤はトルエンであり、トルエンは、反応系中で1〜3%の体積比濃度を有する。
【0022】
より好ましくは、反応に使用される全ての出発物質を反応容器に添加し、均一に混合し、設定温度で配置し、十分な反応のために撹拌する。反応が完了すると、使用要件を満たすレバウディオサイドN製品は、精製によって得られ得る。特定の精製方法は、樹脂分離を含む後処理である。この精製方法によれば、純度95%のレバウディオサイドN生成物を得ることができる。
【0023】
好ましくは、組換え細胞は、微生物細胞である。より好ましくは、微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、又はピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0024】
本発明の特定の態様によれば、第1の工程における反応基質はレバウディオサイドAであり、UDP−グリコシルトランスフェラーゼは、オライザ・サティバ由来のUGT−Bであり、オライザ・サティバ由来のUGT−Bのアミノ酸配列は、配列4に対して少なくとも80%の同一性を有し、第2の工程における反応基質は、第1の工程からの反応生成物レバウディオサイドJを含有する反応溶液であり、UDP−グリコシルトランスフェラーゼはステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列は、配列2に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0025】
本発明の別の特定の態様によれば、反応基質はレバウディオサイドJであり、UDP−グリコシルトランスフェラーゼは、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列は、配列2に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0026】
先行技術と比較して、本発明は、前述の技術的解決策を実施することによって以下の利点を有する。
【0027】
本発明で提供される酵素法によるレバウディオサイドNを調製するための方法は、非常に重要な適用価値を有する。この方法によれば、植物よりも微生物がはるかに速く成長するため、生産コストを大幅に低下させることができ、生産サイクルを短縮することができ、製品の競争力を大幅に向上させることができる。また、植物は、ステビオサイドの含有量が少ないが、異なる構造を有する多くのステビオサイドを含有する。したがって、より純粋な製品を抽出することは困難である。ステビア・レバウディアナの葉からレバウディオサイドNを抽出する従来の技術と比較して、本発明による酵素合成方法は、より高い純度を有する製品を得ることができ、必然的に新規のステビオサイド型レバウディオサイドNの研究及び適用を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
式I及び式IIは、レバウディオサイドJ及びレバウディオサイドNの構造式である。
【0029】
【化1】
【0030】
本発明は主に、レバウディオサイドNを合成するための2つの経路を提供する。
【0031】
【化2】
【0032】
本発明で使用されるUGT−A又はUGT−Bは、酵素凍結乾燥粉末形態で存在してもよく、又は組換え細胞中に存在してもよい。
【0033】
UGT−A又はUGT−Bを得る方法は、以下のとおりである。
【0034】
組換え大腸菌(又は他の微生物)の発現株は、分子クローニング技術及び遺伝子工学技術によって得られ、次いで組換え大腸菌を発酵させて、UGT−A又はUGT−Bを含有する組換え細胞を得るか、又はUGT−A若しくはUGT−Bの凍結乾燥粉末を組換え細胞から調製する。
【0035】
本発明に記載の分子クローニング技術及び遺伝子工学技術はどちらも既知のものである。分子クローニング技術についての詳細については、研究室マニュアル、第3版(Joseph Sambrook,2005)を参照することができる。
【0036】
遺伝子工学技術を用いて構築された本明細書に記載の組換え株の発現工程は、以下のとおりである。
(1)所望の遺伝子断片は(配列表に列挙される配列1及び配列2又は配列3及び配列4に基づいて)遺伝的に合成され、ベクターpUC57にライゲーションされ、NdeI及びBamHI酵素消化部位は、それらの2つの末端に装填される。
(2)二重酵素消化及び連結により、遺伝子断片は、遺伝子がT7プロモーターの制御下に配置されるように、発現ベクターpTE30aの対応する酵素消化部位に挿入される。
(3)組換えプラスミドを形質転換し、大腸菌BL21(DE3)に配置し、標的タンパク質発現をIPTGにより誘導し、UGT−A又はUGT−Bを含有する組換え大腸菌発現株が得られる。
【0037】
UGT−A又はUGT−Bを含有する組換え細胞、及びUGT−A又はUGT−Bの凍結乾燥粉末は、以下の工程によってUGT−A又はUGT−Bを含有する組換え大腸菌発現株を使用することによって調製される:
UGT−A又はUGT−Bを含有する組換え大腸菌発現株を、1%の割合で4mlの液体LB培地に接種し、培地を37℃で一晩振盪させ(速度200rpm)、一晩培養物を1%の接種量で50mlの液体LB培地に移し、OD600値が0.6〜0.8の範囲に達するまで、37℃で振盪(速度200rpm)することによって接種し、次いで、濃度0.4mMのIPTGを添加し、20℃で振盪して一晩接種する。誘導が完了すると、細胞を遠心分離し(8000rpm及び10分)、回収し、5mlの2ミリモル/Lリン酸緩衝液(7.0のpH値を有する)を使用して細胞を再懸濁して組換え細胞を得る。得られた組換え細胞を氷浴で更に処理し、超音波破砕する。粉砕液体を遠心分離する(8000rpm及び10分)。その後、上清を回収し、24時間凍結乾燥して、凍結乾燥粉末を得る。
【0038】
以下、具体例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0039】
実施例1:UGT−Aを含有する組換え大腸菌細胞の調製
配列表に列挙される配列1及び配列2に従って、UGT−A遺伝子断片は遺伝子合成され、NdeI及びBamHI酵素消化部位は、それぞれ2つの末端に装填され、遺伝子断片は、ベクターpUC57(Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co.,Ltdにより製造)に連結される。制限的エンドヌクレアーゼNdeI及びBamHIを使用してUGT遺伝子断片を酵素消化し、精製した断片を回収した。断片を、T4リガーゼを使用してベクターpTE30aの対応する酵素消化部位に連結させ、したがって断片をBL21(DE3)株に形質転換した。
【0040】
UGT株を1%の割合で4mlの液体LB培地に接種し、培地を37℃で一晩振盪した(速度200rpm)。一晩培養物を1%の接種量で50mlの液体LB培地に移し、OD600値が0.6〜0.8の範囲に達するまで、37℃で振盪(速度200rpm)して接種し、次いで、濃度0.4mMのIPTGを添加し、20℃で振盪して一晩接種を行った。誘導が完了したら、細胞を遠心分離し(8000rpm及び10分)、回収し、細胞を5mlの2ミリモル/Lリン酸緩衝液(7.0のpH値を有する)を使用して再懸濁し、UGT−Aを含有する組換え細胞を得た。
【0041】
実施例2:UGT−A凍結乾燥粉末の調製
実施例1で調製したUGT−Aを含有する組換え細胞を氷浴で更に処理し、超音波破砕した。粉砕液体を遠心分離した(8000rpm及び10分)。その後、上清を回収し、24時間凍結乾燥して、UGT−Aの凍結乾燥粉末を得た。
【0042】
実施例3:UGT−Bを含有する組換え大腸菌細胞の調製
配列3及び配列4に従い、UGT−B遺伝子断片を遺伝子合成し、NdeI及びBamHI酵素消化部位をそれぞれ2つの末端に装填し、遺伝子断片をベクターpUC57(Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co.,Ltd製)に連結させた。制限的エンドヌクレアーゼNdeI及びBamHIを使用してUGT遺伝子断片を酵素消化し、精製した断片を回収した。断片を、T4リガーゼを使用してベクターpTE30aの対応する酵素消化部位に連結させ、したがって断片をBL21(DE3)株に形質転換した。
【0043】
UGT株を1%の割合で4mlの液体LB培地に接種し、培地を37℃で一晩振盪し(速度200rpm)、一晩培養物を1%の接種量で50mlの液体LB培地に移し、OD600値が0.6〜0.8の範囲に達するまで、37℃で振盪(速度200rpm)することによって接種し、次いで、濃度0.4mMのIPTGを添加し、20℃で振盪することによって一晩接種を行った。誘導が完了すると、細胞を遠心分離し(8000rpm及び10分)、回収し、5mlの2ミリモル/Lリン酸緩衝液(7.0のpH値を有する)を使用して細胞を再懸濁して、触媒作用のUGT−Bを含有する組換え細胞を得た。
【0044】
実施例4:UGT−B凍結乾燥粉末の調製
実施例3で調製したUGT−Bを含有する組換え細胞を氷浴で更に処理し、超音波破砕した。粉砕液体を遠心分離した(8000rpm及び10分)。その後、上清を回収し、24時間凍結乾燥して、UGT−Bの凍結乾燥粉末を得た。
【0045】
実施例5:UDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下でレバウディオサイドJを反応基質として使用することによるレバウディオサイドNの合成(経路1)。
この実施例では、レバウディオサイドNは、実施例2の方法によって調製されたUGT−A凍結乾燥粉末を使用することによって触媒的に合成された。この実施例では、スクロース、スクロース合成酵素(以下、AtSUS1と称する)及びUDPからなるUDP−グルコース再生システムを、グルコース系ドナーとして使用した。
【0046】
1Lの0.05モル/Lのリン酸緩衝液(8.0のpH値を有する)、0.5gのUDP、1gのレバウディオサイドJ、5gのスクロース、10gのUGT−A凍結乾燥粉末、及び0.5gのAtSUS1凍結乾燥粉末を反応系に順次添加し、均一に混合し、次いで得られた溶液を40℃の水浴に入れた。300rpmの速度で撹拌し、24時間反応させた。反応が完了したら、500μlの反応溶液を採取し、均一な混合物のために等体積の非水性メタノールに添加し、得られた溶液を8000rpmの速度で10分間遠心分離した。その後、上清をフィルター膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーによって試験した(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilent eclipse SB−C18 4.6×150mm;試験波長:210nm;移動相:ギ酸の0.1%溶液:アセトニトリル=65%:35%;流量:1.0ml/分、カラム温度:30℃)。レバウディオサイドJの変換率は90%超であった。シリカゲル−樹脂分離、結晶化などの後処理による精製によって0.61gのレバウディオサイドNを得、得られたレバウディオサイドNの純度は95%超であった。
【0047】
実施例6:UDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下でレバウディオサイドAを反応基質として使用することによるレバウディオサイドNの合成(経路2)
この実施例では、レバウディオサイドNは、実施例2の方法によって調製されたUGT−A凍結乾燥粉末及び実施例4の方法によって調製されたUGT−B凍結乾燥粉末を使用することによって触媒的に合成された。
【0048】
第1の工程における反応:1Lの0.05モル/Lリン酸緩衝液(8.0のpH値を有する)、2gのUDPラムノシル、1gのレバウディオサイドA、及び10gのUGT−B凍結乾燥粉末を反応系に順次添加し、均一に混合し、次いで、得られた溶液を40℃の水浴中に置き、300rpmの速度で撹拌し、24時間反応させた。第2の工程における反応:第1工程で反応が完了したら、反応溶液を10分間沸騰させ、反応溶液のpH値を8.0に調節し、0.5gのUDP、5gのスクロース、10gのUGT−A凍結乾燥粉末、及び3gのAtSUSI凍結乾燥粉末を加え、均一に混合し、次いで得られた溶液を40℃の水浴に入れ、300rpmの速度で撹拌した。24時間から反応させた。反応が完了したら、500μlの反応溶液を採取し、均一な混合物について等体積の非水性メタノールに添加し、得られた溶液を8000rpmの速度で10分間遠心分離した。その後、上清をフィルター膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーによって試験した(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilent eclipse SB−C18 4.6×150mm;試験波長:210nm;移動相:ギ酸の0.1%溶液:アセトニトリル=65%:35%;流量:1.0ml/分、カラム温度:30℃)。レバウディオサイドAの変換率は90%超であった。シリカゲル−樹脂分離、結晶化などの後処理による精製によって0.58gのレバウディオサイドNを得、得られたレバウディオサイドNの純度は95%超であった。
【0049】
実施例7:UDP−グリコシルトランスフェラーゼを含有する組換え細胞の触媒作用下でレバウディオサイドJを反応基質として使用することによるレバウディオサイドNの合成
本実施例では、レバウディオサイドNは、実施例1の方法によって調製されたUGT−Aを含有する組換え細胞を使用することによって触媒的に合成された。
【0050】
1Lの0.05モル/Lのリン酸緩衝液(8.0のpH値を有する)、0.5gのUDP、1gのレバウディオサイドJ、5gのスクロース、40gのUGT−A全細胞、及び10gのAtSUS1全細胞を反応系に順次添加し、均一に混合し、次いで得られた溶液を40℃の水浴に入れ、300rpmの速度で撹拌し、24時間反応させた。反応が完了したら、500μlの反応溶液を採取し、均一な混合物のために等体積の非水性メタノールに添加し、得られた溶液を8000rpmの速度で10分間遠心分離した。その後、上清をフィルター膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーによって試験した(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilent eclipse SB−C18 4.6×150mm;試験波長:210nm;移動相:ギ酸の0.1%溶液:アセトニトリル=65%:35%;流量:1.0ml/分、カラム温度:30℃)。レバウディオサイドJの変換率は90%超であった。シリカゲル−樹脂分離、結晶化などの後処理による精製によって0.54gのレバウディオサイドNを得、得られたレバウディオサイドNの純度は95%超であった。
【0051】
実施例8:UDP−グリコシルトランスフェラーゼを含有する組換え細胞の触媒作用下でレバウディオサイドAを反応基質として使用することによるレバウディオサイドNの合成
第1の工程における反応:1Lの0.05モル/Lリン酸緩衝液(8.0のpH値を有する)、2gのUDPラムノシル、1gのレバウディオサイドA、及び40gのUGT−B全細胞を反応系に順次添加し、均一に混合した後、40℃の水浴中に置き、300rpmの速度で撹拌し、24時間反応させた。第2の工程における反応:第1の工程で反応が完了したら、反応溶液を10分間沸騰させ、反応溶液のpH値を8.0,に調整し、0.5gのUDP、5gのスクロース、40gのUGT−A全細胞、及び10gのAtSUSI全細胞を加え、均一に混合し、次いで、得られた溶液を40℃の水浴中に置き、300rpmの速度で撹拌し、24時間から反応させた。反応完了後、500μlの反応溶液を採取し、均一な混合物のために等体積の非水性メタノールに添加し、得られた溶液を8000rpmの速度で10分間遠心分離した。その後、上清をフィルター膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーによって試験した(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilent eclipse SB−C18 4.6×150mm;試験波長:210nm;移動相:ギ酸の0.1%溶液:アセトニトリル=65%:35%;流量:1.0ml/分、カラム温度:30℃)。レバウディオサイドAの変換率は90%超であった。シリカゲル−樹脂分離、結晶化などの後処理による精製によって0.53gのレバウディオサイドNを得、得られたレバウディオサイドNの純度は95%超であった。
【0052】
上記の実施例は、当業者が本発明の開示をより良く理解し、本発明を実施するように、本発明の技術的概念及び特性を説明することを単に意図したものである。しかしながら、これらの実施例は、本発明の保護範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の趣旨及び本質から逸脱することなくなされるいかなる同等の変更又は修正も、本発明の保護範囲内に包含されるものとする。
さらに、本発明は次の態様を包含する。
1. 酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製する方法であって、グリコシルドナーの存在下で、レバウディオサイドAを基質として使用し、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞及び/又は調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下で反応させて、前記レバウディオサイドNを生成することを含む、方法。
2. 酵素法を使用してレバウディオサイドNを調製する方法であって、グリコシルドナーの存在下でレバウディオサイドJを使用し、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ含有組換え細胞及び/又は調製されたUDP−グリコシルトランスフェラーゼの触媒作用下で反応させて、前記レバウディオサイドNを生成することを含む、方法。
3. 前記グリコシルドナーが、グルコース系ドナー及びラムノシルドナーのうちの1つ又は2つを含み、前記グルコース系ドナーが、スクロース、スクロース合成酵素及びUDPからなるUDP−グルコース又はUDP−グルコース再生システムであり、前記ラムノシルドナーがUDP−ラムノースである、項1又は2に記載の方法。
4. 前記UDP−グリコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)由来のUGT−A及びオライザ・サティバ(Oryza sativa)由来のUGT−Bのうちの1つ又は2つを含む、項1又は2に記載の方法。
5. 前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及び/又はオライザ・サティバ由来のUGT−Bを含み、前記UDP−グリコシルトランスフェラーゼを、2つの工程で前記反応系に添加し、前記UGT−Bが前記第1の工程で添加され、前記UGT−Aが前記第2の工程で添加される、項1に記載の方法。
6. 前記UGT−Aのアミノ酸配列が、配列表に列挙される配列2に対して少なくとも60%の同一性を有し、及び/又は前記UGT−Bのアミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列4に対して少なくとも60%の同一性を有する、項5に記載の方法。
7. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも70%の同一性を有し、及び/又は前記UGT−Bの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列4に対して少なくとも70%の同一性を有する、項6に記載の方法。
8. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも80%の同一性を有し、及び/又は前記UGT−Bの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列4に対して少なくとも80%の同一性を有する、項7に記載の方法。
9. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は前記UGT−Bの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列4に対して少なくとも90%の同一性を有する、項8に記載の方法。
10. 前記UDP−グリコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、前記UGT−Aのアミノ酸配列が、配列表に列挙される配列2と少なくとも60%の同一性を有する、項2に記載の方法。
11. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも70%の同一性を有する、項10に記載の方法。
12. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも80%の同一性を有する、項11に記載の方法。
13. 前記UGT−Aの前記アミノ酸配列が、前記配列表に列挙される配列2に対して少なくとも90%の同一性を有する、項12に記載の方法。
14. 前記反応が、水相系で35℃〜45℃の温度及びpH値7.5〜8.5で行われる、項1又は2に記載の方法。
15. 前記反応がリン酸緩衝液中で実施される、項14に記載の方法。
16. 前記反応系が、UDP−グリコシルトランスフェラーゼ組換え細胞及び細胞透過性化剤を含む、項14に記載の方法。
17. 前記細胞透過性化剤がトルエンであり、前記トルエンが、前記反応系中に1〜3%の体積比濃度を有する、項16に記載の方法。
18. 前記反応に使用される全ての前記出発物質が、反応容器に添加され、均一に混合され、設定温度で配置され、十分な反応のために撹拌される、項14に記載の方法。
19. 前記組換え細胞が微生物細胞である、項1又は2に記載の方法。
20. 前記微生物が、大腸菌、出芽酵母、又はピチア・パストリスである、項19に記載の方法。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]