【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アコースティックフィールドのM’回の計算に適用される前記選択基準は、それ以下においてはアコースティックフィールドの寄与が無視できると見なされる、振幅閾値を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の、信号を取得するための方法。
初期放射を生成する前記初期符号化行列[MC’]の各列であって、それについてのアコースティックフィールドの計算が前記振幅閾値より大きいまたは等しい値を提供しない各列は、消去される(206)
請求項5に記載の、信号を取得するための方法。
M’回のアコースティックフィールドの計算に適用される前記選択基準は、所定の角度セクタの外側のアコースティックフィールドについてのいずれの寄与も除外することを伴う角度閾値処理をさらに含む
請求項1から6のいずれか一項に記載の、信号を取得するための方法。
通信ネットワークからダウンロードされ得る、および/または、コンピュータにより読み取り可能な媒体に記録されている、および/または、プロセッサ(114)により実行され得る、コンピュータプログラム(118)であって、前記プログラムがコンピュータ(112)において実行されると、請求項1から8のいずれか一項に記載の、信号を取得するための方法(200)のステップを実行するための命令を備えることを特徴とする
コンピュータプログラム。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、特には超音波による非破壊検査の分野に適用され、超音波信号の取得は、構造内の欠陥を検出および/または表示することを可能にするが、あらゆるタイプの超音波エコー画像の検出またはイメージングにも、特に人間または動物の体の関心の領域の検査のための医療分野に、適用することができる。
【0003】
より詳細には、
関心の領域に向かう超音波ウェーブのM回の連続放射のためのL個の放射トランスデューサを制御し、
特には関心の領域内での問題の放射の反射により引き起こされるエコーを測定して、N個の測定信号を、M回の連続放射ごとに、同時にかつ所定の時間にわたって受信するように、N個の受信トランスデューサを制御し、
N×Mのサイズを有する、超音波時間信号の行列[MR(t)]であって、この行列の各係数MR
i,j(t)が、j番目の放射により引き起こされて、i番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号を表す、という行列[MR(t)]を取得する、
という方式において動作する、超音波信号を取得するための方法に関する。
【0004】
そのような取得は、一般的に、多素子センサを有する探査装置を用いて、行われるし、各トランスデューサは、エミッタおよびレシーバの両方であり、これら2つのモード間の切り替えは、電気的に制御され得る。センサは、探査されるべき物体と接触して、または、ある距離に配置され得るが、後者の場合では、探査されるべき対象への超音波ウェーブの伝達を確実にするために、水没させなければならない。このセンサは、剛性要素または可撓性要素を有する、ライナー(1D)またはマトリックス(2D)であり得る。
【0005】
そして、この種の取得により得られた時間信号の行列[MR(t)]は、特には、検査された関心の領域の画像を提供するために、または、検査された関心の領域における構造的欠陥を示すパラメータの抽出のために、処理を受けられ得る。プロセッサの現在の計算キャパシティを考慮すると、この処理は、リアルタイム処理のために、制御機器に搭載され得る。
【0006】
実際には、関心の領域に向けての超音波ウェーブのM回の連続放射のためのL個の放射トランスデューサの制御は、符号化行列[MC]、この行列の各係数MC
i,jはj番目の放射時におけるi番目の放射トランスデューサによる放射に対する一般的な励起時間信号e(t)に適用される増倍率を表すが、を用いて符号化され得る。遅延則は、連続放射にさらに適用され得る。
【0007】
[MC]が単位行列で、遅延則が適用されていない場合、予め定義された超音波取得は、FMC(“Full Matrix Capture”から)の取得とみなされる。それは、第1の放射トランスデューサを励起することによる超音波ウェーブの放射と、N個の受信トランスデューサ全てでこの放射のエコーを受信することと、そして、それらを連続的に励起するために、放射トランスデューサ全てへ電気的に切り替えることと、から構成される。放射および受信の機能を実行するのが同じトランスデューサであるとき、[K(t)]として知られ、N×Nのサイズを有する、音波時間信号の行列[MR(t)]が得られる。
【0008】
イメージングにおいては、行列[K(t)]の係数を形成する超音波時間信号が、関心の領域にわたって、最適な解像度を有する画像を得ることを可能にする「トータルフォーカシングメソッド」タイプの合成フォーカシングを実行するために、用いられる。しかし、強い電気的または構造的ノイズの存在下においては、トータルフォーカシングメソッドによる再構成は、従来のエコー画像法と比較して、より低品質の画像を提供し得る。実際、後者においては、所定の遅延則の適用により、与えられた点に焦点を合わせるように、全てのトランスデューサが同時に放射する。しかし、合成フォーカシングによる再構成をその後実行するために、一般的に実施されるFMC取得方法によれば、各放射は、伝達されるエネルギーと、検査される部分への波の侵入の深さと、を制限する単一のトランスデューサにより、実行される。最後に、これは、エコー信号の振幅が電気的または構造的ノイズのレベルに匹敵し得るため、それ事態が信号対ノイズ比(SNR)の劣化であることを明らかにする。超音波ウェーブの減衰が大きい場合(粘弾性減衰、または媒体内の不均一性による拡散による減衰)、SNRのこの劣化はさらに大きくなり、見込まれる欠陥の検出および特徴付けを困難にする。
【0009】
SNRの劣化についてのこの問題に対する部分的な解決策は、超音波、強誘電体、および周波数制御についてのIEEEトランザクション、vol.42、No.3(1995年5月)、ページ429−442にて発表され、“Synthetic aperture imaging for small scale systems”とタイトルづけられた、Karamanなどによる論文において提供されている。
【0010】
それは、各放射ごとに、一つのトランスデューサではなく、複数の隣接するトランスデューサを使用することを伴う。センサから一定の距離に位置する仮想ソースにより放射されるであろうものに近い球面超音波ウェーブを媒体に伝達するために、使用される放射トランスデューサに対して遅延則が適用される。このようにして仮想ソースから放射された超音波ウェーブは、そのエネルギーがこのソースを形成する放射トランスデューサの数の平方根に比例するため、より強い。発生したノイズが主に無相関の電気ノイズであったならば、SNRはそれだけ改善される。対応する符号化行列[MC]は、その各列に複数の非ゼロな係数を備え、各放射において同時に使用される隣接トランスデューサの数と、任意に適用される遅延則と、を正確に定義する。
【0011】
しかし、非常に大きなノイズを有する検査部品の場合には、合成トータルフォーカシングにより最終的に得られる画像の品質の改善は、より限定的であり、SNRの増加はより少なく、検出に対する影響は期待されるほどポジティブではない。
【0012】
この解決法は、前述の問題を部分的には補償するが、それを消去しない。実際、SNRの増加は、各仮想ソースを形成するトランスデューサの数の平方根に比例し、この数は、センサのトランスデューサの総数Nよりも、はるかに少ない。
【0013】
また、仮想ソースによって放射することは、物体の境界上における多重反射と、モード変換と、を含む幾何学的エコーまたは複雑なエコーなどといった、寄生エコーにより実質的に引き起こされる再構成アーチファクトにより引き起こされ得る問題が消去されることを、可能にするわけではない。
【0014】
SNRの劣化というこの問題に対する別の解決策が、2016年9月18日から21日にかけてトゥール(フランス)で開催されたIEEE 国際超音波シンポジウムにて発表され、“Ultrasonic imaging in highly attenuating materials with Whalsh−Hadamard codes and the decomposition of the time reversal operator”とタイトルづけられた、Lopez Villaverdeなどによる論文により、提供されている。それは、H
Nと付けられたアダマール行列[MC]を用いて、または、このアダマール行列(H
N+および/またはH
N-)に起因する行列を用いて、放射を符号化することから成る。このタイプの放射符号化では、復号化後の[K(t)]と同等の時間信号の行列[MR(t)]が改善されたSNRで得られることが実証されている。しかし、以前の解決策よりもはるかに優れたSNRを得るために、符号化行列H
N+およびH
N-を用いた放射においてトランスデューサが用いられている場合は、例えば2N−1といった、一般に大多数の連続放射が課せられる。
【0015】
したがって、前述の問題および制約の少なくとも一部を克服することを可能にする超音波信号を取得するための方法を提供することが望ましいと思われる。
【0016】
したがって、超音波探査により信号を取得するための方法であって、
関心の領域へのM回の超音波ウェーブの連続放射のためのL個の放射トランスデューサを制御するステップと、
特には関心の領域で問題の放射の反射により引き起こされるエコーを測定して、N個の測定信号を、M回の連続放射ごとに、同時にかつ所定の時間にわたって受信するように、N個の受信トランスデューサを制御するステップと、
N×Mのサイズを有する超音波時間信号の行列[MR(t)]、この行列の各係数MR
i,j(t)は、j番目の放射により引き起こされ、i番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号を表す、を得るステップと、
を備える方法が提案される。
それに伴い、
L×M’のサイズを有する、連続放射を符号化するための初期行列[MC’]、この行列の各係数MC’
i,jはj番目の放射時におけるi番目の放射トランスデューサによるその放射に対する共通の励起時間信号e(t)に適用される増倍率を表している、は、完全にMよりも大きい、連続初期放射の数M’に対して予め定義されており、
M’回の連続初期放射ごとに、アコースティックフィールドについての計算が実行され、
L×Mのサイズを有する、縮小された符号化行列[MC]は、M’回のアコースティックフィールドの計算に適用される選択基準に基づき消去されたM’−M回の初期放射に対応するM’−M個の列を除外することにより、初期符号化行列[MC’]から得られ、
関心の領域に向かう超音波ウェーブのM回の連続放射に対する、L個の放射トランスデューサの制御は、共通の励起時間信号e(t)に適用される縮小された符号化行列[MC]を用いて、符号化される。
【0017】
このようにして、上記で示されたものの一つ、または、別のもの、特には、意図された用途と、計画された後の処理と、に応じた、満足のいくSNRを保証する符号化行列、であり得る符号化行列[MC’]から開始して、本発明は、関連する基準に基づき1つ以上の放射を消去することにより、それがアコースティックフィールドの計算に関連しているので、放射の数を減らすことを可能にする。この動作方式は、行列[MR(t)]のSNRに対するこの減少の影響を可能な限り制限することにより、放射の数を減少させることを特に可能にする。
【0018】
オプション的には、超音波時間信号の行列[MR(t)]は、以下の方式における行列積により算出される復号行列[MR’(t)]を得るために、復号される。
【数1】
“T”は行列転置の記号である。
【0019】
このようにして、N×Lのサイズを有する行列が、従来のFMCタイプの取得により得られた時間信号の行列とともに同じ処理が可能であるものに基づき、得られる。
【0020】
また、オプション的には、M’回の連続初期放射ごとに実行されるアコースティックフィールドの計算は、初期符号化行列[MC’]のインデックスm’を有する各列に対して、以下の方式において定義された、簡略化されたフィールドモデルE
m’(f,θ)の計算を備える。
【数2】
fは、時間周波数であり、
θは、L個の放射トランスデューサの軸が整列しているときの、放射トランスデューサについての主平面または軸の法線に対する角度であり、
s
l(f)は、l番目の放射トランスデューサの伝達関数であり、
D
l(f,θ)は、超音波ウェーブの放射媒体内のl番目の放射トランスデューサの指向性関数であり、
eは、指数関数であり、
jは、j
2=−1といった複素数であり、
kは、k=2πf/cにより定義される波数であり、cは、問題の放射媒体内の超音波ウェーブの速度であり、
dは要素間の幅で、すなわち、二つの隣接するトランスデューサ間の距離に追加される放射トランスデューサの共通の幅である。
【0021】
また、オプション的には、M’回の連続初期放射ごとに実行されるアコースティックフィールドの計算は、以下の方式における簡略化されたフィールドモデルE
m’(f,θ)それぞれに基づく積分されたフィールド値A
m’(θ)の計算をさらに備える。
【数3】
f
minおよびf
maxはそれぞれ、共通の励起時間信号e(t)の帯域幅の最小および最大周波数である。
【0022】
また、オプション的には、アコースティックフィールドのM’回の計算に適用される選択基準は、それ以下においてはアコースティックフィールドの寄与が無視できると見なされる振幅閾値を備える。
【0023】
また、オプション的には、初期放射を生成する初期符号化行列[MC’]の各列であって、それについてのアコースティックフィールドの計算が振幅閾値より大きいまたは等しい値を提供しない各列は、消去される。
【0024】
また、オプション的には、M’回のアコースティックフィールドの計算に適用される選択基準は、所定の角度セクタの外側のアコースティックフィールドについてのいずれの寄与も除外することを伴う角度閾値処理をさらに備える。
【0025】
また、オプション的には、初期符号化行列[MC’]は、アダマール行列であるか、または、アダマール行列から得られる。
【0026】
通信ネットワークからダウンロードされ得る、および/または、コンピュータにより読み取り可能な媒体に記録されている、および/または、プロセッサにより実行され得る、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータにおいて実行されると、本発明に係る信号を取得するための方法についてのステップの実行のための命令を備えるコンピュータプログラムもまた提案されている。
【0027】
コンピュータにおいて実行されると、本発明に係る信号を取得するための方法のステップの実行のための命令を備えており、通信ネットワークからダウンロードされ得る、および/または、コンピュータにより読み取り可能な媒体に記録されている、および/または、プロセッサにより実行され得る、コンピュータプログラムもまた提案される。
【0028】
複数の超音波放射トランスデューサおよび複数の超音波受信トランスデューサを備えるプローブと、
本発明に係る、信号を取得するための方法を実施するように設計された、トランスデューサを制御するためおよび処理するための手段と、
を備える超音波探査装置もまた提案される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照すると、物体102を探査するための、本発明の一実施形態に係る装置100は、ケース106を有する超音波プローブ104を備え、ケース106はプローブ104に取り付けられた基準フレームとして用いられる変形不可能な構造要素であり、その中には、N個の固定または移動可能なトランスデューサ108
1、…、108
Nが、例えば直線状に、または、格子状に、配置される。
【0031】
物体102は、例えば、非破壊検査により検査することが望まれる機械的部分、または、医学的状況では、非侵襲的に検査することが望まれる人体部分である。
図1の実施形態では、物体102は、水110のような液体に浸されており、プローブ104は、水110がそれらを分けるように、物体102から一定の距離に維持される。しかし、他の同等の実施形態においては、プローブ104は、物体102と直接接触していてもよい。
【0032】
トランスデューサ108
1,…,108
Nは、汎用の符号Cにより識別される制御信号に応答して物体102の方向に、
図1の点線矢印で示されている互いに平行な主要方向に、および、図の主平面内に、超音波ウェーブを放射するように設計されている。
【0033】
トランスデューサ108
1,…,108
Nは、物体102上および内において反射する超音波ウェーブの波のエコーを検出するように、そして、汎用の符号Sにより識別され、これらのエコーに対応する、測定信号を提供するように、さらに設計されている。こうして、
図1の非限定的な例において、N個のトランスデューサ108
1,…,108
Nは、放射と受信の両方の機能を実行するが、エミッタとは異なるレシーバもまた、本発明の原理に準拠しているならば、相違する独立の場合において、設けられ得る。さらに、実際には、エミッタの数LはレシーバNの数と異なり得る。
【0034】
探査装置100は、プローブ104のトランスデューサ108
1,…,108
Nの制御のための、および、測定信号Sの処理のための、電子回路112をさらに備える。この電子回路112は、制御信号Cをそれに送信するために、および、測定信号Sを受信するために、プローブ104に接続されている。電子回路112は、例えばコンピュータのものである。それは、プローブ104に制御信号Cを送信し、プローブ104から測定信号Sを受信するように設計されたマイクロプロセッサなどのような中央処理ユニット114と、コンピュータプログラム118が記録されるメモリと、を有する。
【0035】
コンピュータプログラム118は、L×M’のサイズを有する、問題の非限定的な例においてはN×M’のサイズを有するとも言える、初期符号化行列[MC’]を用いてM’回の連続初期放射を定義するための命令120を、まず初めに、備える。この行列の各係数MC’
i,jは、j番目の放射時におけるi番目の放射トランスデューサによるその放射に対する、全てのトランスデューサ108
1,…,108
N,に共通の励起時間信号e(t)に適用される増倍率を表す。この増倍率は、問題のj番目の初期放射に適用される遅延則の遅延を含むことができる。初期符号化行列[MC’]は、メモリに記録された初期符号化行列のセットから命令120を用いて選択され、命令120などを用いてマンマシンインターフェースを介して定義されて、予め定められ得るし、メモリに記録され得る。
【0036】
上に示されたように、初期符号化行列[MC’]は、FMC取得に準拠した、M’=L=N回の連続初期放射に対する単位行列であり得る。また、それは、前述のKaramanなどによる論文に教示されているように、遅延則を含む非ゼロ係数がその主要対角線の周囲に配置されているという、取得に準拠したM’<L=N回の連続初期放射に対する行列でもあり得る。
【0037】
また、それは、Lopez Villaverdeなどによる前述の記事のII.A章において教示されているように、取得に準拠したM’=L=N回の連続初期放射に対するアダマール平方行列H
Nでもあり得る。この場合、数Nは、2のべき乗でなければならない。
【0038】
また、それは、Lopez Villaverdeなどによる前述の記事のIII.B章において教示されているように、取得に準拠したM’回の連続初期放射に対する、アダマール行列から得られた行列でもあり得る。例えば、これは、M’=2L−1=2N−1の連続初期放射に対する行列H
Nからもたらされる二つの行列H
N+およびH
N−の水平方向の連結であり得る。
【数4】
J
NはN×Nのサイズを有する行列であり、その全ての係数が1である。これは、単に、M’=L=N回の連続初期放射に対する行列H
N+でもあり得る。
【0039】
当業者にとっては、具体的な使用目的に応じて、他の初期符号化行列[MC’]も可能である。
【0040】
コンピュータプログラム118は、初期符号化行列[MC’]において定義されたM’回の連続初期放射のそれぞれに対するアコースティックフィールドの計算を実行するための命令122をさらに備える。このアコースティックフィールドは、トランスデューサ自体に、特に、それらが設計されている材料に、それらのサイズに、それらの位置に、音波が放射される媒体に、依存する。
【0041】
図2A、2B、および2Cは、デカルト座標および振幅スペクトルにおける、所定の符号化された放射に応答して得られるアコースティックフィールドの例を示す。これらの三つの例において、トランスデューサ108
1,…,108
Nは、整列しており、それらはエミッタおよびレシーバであり、N=64であり、初期符号化行列[MC’]はアダマール行列H
64である。より詳しくは、
図2Aは、1の係数のみからなる、行列H
64の1番目の列により符号化された1番目の初期放射を用いて、デカルト座標において得られるアコースティックフィールドを示す。したがって、得られたアコースティックフィールドは、トランスデューサに垂直な方向に進む平面波についてのものである。
図2Bは、行列H
64の3番目の列により符号化された3番目の初期放射を用いて得られたアコースティックフィールドを示す。
図2Cは、行列H
64の17番目の列により符号化された17番目の初期放射を用いて得られたアコースティックフィールドを示す。
【0042】
その分野の一般的な知識があれば、アコースティックフィールドの計算を実行することは、当業者の手の届く範囲内にあるが、計算時間を短縮することを目的とした、特に独創的な計算が以下に提供される。それは、以下の方式において、初期符号化行列[MC’]のインデックスm’を有する各列に対して定義された、簡略化されたフィールドモデルE
m’(f,θ)を提案することを伴う。
【数5】
fは、例えばMHzで表される、時間周波数であり、
θは、トランスデューサが整列しているときの、トランスデューサの主平面または軸の法線に対する角度であり、
図示された例では、L=Nであり、
s
l(f)は、例えば中心周波数の周囲でガウス信号の形状をとる、トランスデューサ108
lの伝達関数であり、
D
l(f,θ)は、例えば、2014年9月に、Ultrasonics volume 54,No.7,ページ1842−1850において発表され、“A comparison between ultrasonic array beamforming and super resolution imaging algorithms for non−destructive evaluation”とタイトルづけられた、Fanなどによる論文において、式(7)として教示されているように、超音波ウェーブの放射媒体におけるトランスデューサ108
lの指向性関数であり、
eは指数関数であり、
jは、j
2=−1といったような複素数であり、
kは、k=2πf/cにより定義される波数であり、cは、問題の放射媒体における超音波ウェーブの速度であり、
dは、要素間の幅で、すなわち、二つの隣接するトランスデューサ間の距離に追加されるトランスデューサの共通の幅である。
【0043】
図3A、3B、および3Cは、予め定められた符号化された放射への応答において得られた、簡略化されたアコースティックフィールドの計算の例を示す。これらの三つの例においては、トランスデューサ108
1,…,108
Nは、整列しており、それらはエミッタおよびレシーバであり、N=64であり、初期符号化行列[MC’]はアダマール行列H
64である。さらに、要素間の幅dは0.6mmに等しく、速度cは2.3mm/μsに等しく、関数s
l(f)は、−6dBで60%の帯域幅で5MHzで中心周波数を有するガウス信号の形をとるように選択され、関数D
l(f,θ)は、前述のFranなどによる論文の教示に従って、0.5mmのトランスデューサの共通幅に対して、定義される。より詳細には、
図3Aは、行列H
64の1番目の列に対して得られたアコースティックフィールドの計算結果を示すものであって、0から10MHzまで変化する周波数fが、二次元基準フレームの横座標軸に示されており、−90から+90度まで変化する角度θが、この二次元基準フレームの縦座標軸上に示されており、fとθの可能なバリエーションの内側に位置する二次元基準フレームの各点は、この点において計算されたアコースティックフィールドの振幅の絶対値に応じて、グレースケールにおいて、そして任意の単位において、示さている。同様に、
図3Bは、行列H
64の4番目の列に対して得られたアコースティックフィールドの計算結果を示す。同様に、
図3Cは、行列H
64の16番目の列に対して得られたアコースティックフィールドの計算結果を示す。
【0044】
オプション的だが、有利なことに、命令122は、励起時間信号e(t)の周波数帯域幅にわたって結果を積分することにより、先行するM’個のアコースティックフィールドの計算を続ける。この帯域幅の最小周波数および最大周波数は、それぞれ、f
minおよびf
maxと示されている。こうして、このことは、以下の方式において、初期符号化行列[MC’]のインデックスm’を有する各列に対して定義された、θのみに依存する積分されたフィールド値A
m’(θ)を与える。
【数6】
【0045】
図4の線図は、このようにして、二次元基準フレームの横座標軸上において1番目からM’番目(図示された例においてはM’=N=64)まで変動する、連続初期放射の関数として、そして、この二次元基準フレームの縦座標軸上において−90から+90度まで変化する、角度θの可能な値の関数として、この積分されたアコースティックフィールド値における変動を示す。より正確には、
図4の線図は、以下の値に基づいて、m’およびθの可能な変動の内側に位置する二次元基準フレームの各点のグレイレベルを計算することにより、この積分された値を対数値において示す。
【数7】
【0046】
実際には、A
1(0)は、m’およびθの関数として、A
m’(θ)が有することができる最大値であることに留意されたい。
【0047】
コンピュータプログラム118は、初期符号化行列[MC’]のM’−M個の列(M<M’)を除外するための命令124をさらに備え、この/これらの除外された列は、命令122により実行されたアコースティックフィールドのM’回の計算に適用された選択基準に基づき除外されたM’−M回の初期放射に対応する。これらの命令は、L×Mのサイズを有し、初期符号化行列[MC’]の除外されていない列のみを備え、このように選択されたM回の放射を定義する、縮小された符号化行列[MC]を得ることを可能にする。
【0048】
図5および6は、選択基準の非限定的な例の適用を示す。
図5は、特に、それより低いとアコースティックフィールドの寄与が無視されると考えられる
図4の対数値ALOG
m’(θ)への、振幅閾値THの適用を示す。この閾値THは、例えば、放射の全体にわたる、かつ、全ての角度θに対するA
m’(θ)が達する最大振幅の5%に、または、対数尺度において−26dBに、設定される。オプション的には、この振幅閾値THは、所定の角度セクタの外側のアコースティックフィールドについてのいずれの寄与も除外することを伴う角度閾値処理により、達成され得る。そうは言うものの、
図4および5の例では、角度セクタ[−30°;+30°]を超えたところに、−26dBを超える対数値ALOG
m’(θ)がないので、そのような角度閾値処理は潜在的であることが見受けられる。
図6は、その値の二値化の後に、
図5を繰り返します。閾値処理後に非ゼロである全てのA
m’(θ)の値は、黒で示されており、他のものは白で示される。このように、
図6において、全ての角度θに対応する複数の値A
m’(θ)は閾値THよりも小さいので、すなわち二値化後はゼロと言え、特定の初期放射は、全体として無視できる寄与であると考えられ得る。この例において、これらは、インデックスm’=6、14、18、22、24、26、30、32、34、38、42、46、48、54、56、62、および64を有する放射である。このように、選択基準は、縮小された符号化行列[MC]を得るために、初期符号化行列[MC’]内の対応する列を除外することを伴う。図示された例において、初期符号化行列[MC’]=H
64のインデックスm’=6、14、18、22、24、26、30、32、34、38、42、46、48、54、56、62、および64を有する17個の列は、こうして、M=47個の列の縮小された符号化行列[MC]を得るために、除外される。こうして、連続放射の数は、受信時におけるSNRの実質的な劣化なしで、26%をわずかに超えるだけ、減らされる。
【0049】
コンピュータプログラム118は、
物体102の関心の領域に向けての、選択された超音波ウェーブのM回の連続放射を実行するために、L=N個のトランスデューサ108
1,…,108
Nをエミッタとしてアクティブ化し、
M回の連続放射それぞれの後に、これらのN個のレシーバにより、検査の所望の深さから、所定の時間にわたって、特には関心の領域で問題の放射の反射により引き起こされたエコーを測定して、N個の測定信号を同時に受信するために、レシーバとしてN個のトランスデューサ108
1,…,108
Nをアクティブ化する、
といったように、トランスデューサ108
1,…,108
Nを制御するための信号Cを生成するための命令126を、さらに備える。
【0050】
こうして、トランスデューサ108
1,…,108
Nにより送信されたN×M個の測定信号のセットSは、プローブ104により、中央処理ユニット114に返送される。
【0051】
こうして、コンピュータプログラム118は、N×Mのサイズを有する超音波の時間信号の行列[MR(t)]、この行列の各係数MR
i,j(t)はj番目の放射への応答に対するトランスデューサ108
iにより受信された測定信号を表す、を指示するための命令128をさらに備える。
【0052】
オプション的には、コンピュータプログラム118は、行列[MR(t)]の時間的フィルタリングを実行するための命令130をさらに備え、このフィルタリングは、物体24内の関心の領域から排除された放射の時刻に存在するあらゆる情報も除外することを目的とする。
【0053】
最後に、コンピュータプログラム118は、汎用の符号132により示された、行列[MR(t)]を処理するための命令を備える。命令132により実行される処理は、
命令124を用いて得られた縮小された符号化行列[MC]に関するオプション的な符号化と、
例えば特許出願のWO2014/009671A1号において教示されたものといったようなノイズ縮小処理と、
DORT(フランス語の“De’composition de l’Ope’rateur de Retournement Temporel”から、すなわち、時間反転演算子の分解)型のフィルタリングといった適応的かつ選択的なフォーカシングと、
「トータルフォーカシングメソッド」タイプの合成フォーカシングにより、または、タイプBスキャン、Sスキャンもしくはその他の画像を得るための公知の他の特定の処理により、物体102における関心の領域のデジタル画像の再構成と、
を含むことができる。
【0054】
【数8】
という復号化により得られた行列[MR’(t)]は、従来のFMCタイプの取得により得られた時間信号の行列と同じ方法で用いられ得る行列である、ということが、特には証明され得る。一般には、それはN×Lのサイズを有し、トランスデューサがエミッタでありレシーバであるときは、N×Nのサイズを有する正方と言えることに留意されたい。しかし、それは従来の取得により得られたものよりも、明らかに雑音が少ない。
【0055】
実験として、先の図の例、つまり、トランスデューサ108
1,…,108
Nが整列しており、L=N=64であり、初期符号化行列[MC’]はアダマール行列H
64であり、要素間の幅dは0.6mmに等しく、伝搬媒体は、速度cが2.3mm/μsに等しいようなものであり、関数s
l(f)は、5MHzで、60%の帯域幅で、−6dBでの中心周波数を有するガウス信号の形態をとるように選択され、関数D
l(f,θ)は、前述のFranなどによる論文の教示に従って、0.5mmのトランスデューサの共通幅に対して定義されている、という例に対するシミュレーションが実行された。さらに、
図7に示すように、検査される媒体は、25mmの深さに較正孔(CH)型の3つの人工的な欠陥を備え、それらは互いに25mmほど離れている。
【0056】
上で定義されたように選択を実行し、こうして、アダマール行列H
64内の64個から17個の列を除外することにより、
図8の比較結果が得られる。実線で示されている第1の曲線は、復号後に、47個の列に縮小された符号化行列[MC]の適用によって得られた信号の25mmの深さでのデシベルによる振幅を示す。実線で示された曲線の後ろに僅かに見える、破線で示された第2の曲線は、初期符号化行列H
64の縮小なしに得られた信号の25mmの深さでのデシベルによる振幅を示す。この二つの曲線の疑似重ね合わせは、放射されたアコースティックフィールドに大きく寄与しない17個の列の除外も、結果に対する大きな影響を有しないということを示す。最後に、点線で示されている第3の曲線は、FMC取得により得られた信号の25mmの深さでのデシベルによる振幅を示す。この第3の曲線はアダマール行列による(初期の)符号化についての全ての利点を示している。
【0057】
デジタル画像が、前述の結果のそれぞれに対し、「トータルフォーカシングメソッド」タイプの合成フォーカシングにより再構成された場合、
図9A、9Bおよび9Cの画像が得られる。より正確には、
図9Aは、従来のFMC取得に対するトータルフォーカシングにより得られた画像を示す。
図9Bは、アダマール行列H
64により符号化された取得に対するトータルフォーカシングにより得られた画像を示す。
図9Cは、アダマール行列H
64の17個の前述の列を除外することにより得られる縮小された符号化行列により符号化された取得に対するトータルフォーカシングにより得られた画像を示す。
図9Bおよび9Cの画像は、
図9Aの画像よりも、明らかにノイズが少ない。さらに、
図9Bおよび9Cの画像は、極めて同等な品質であるが、
図9Cのそれは、疑いなく、より非常に速い取得により得られた(連続放射の数に関して26%の増加)。
【0058】
図10を参照して、
図1の装置100により実施される超音波信号の取得および処理のための方法200について説明する。
【0059】
ステップ202の間、命令120を実行する処理ユニット114は、L×M’のサイズ、問題の非限定的な例ではN×M’のサイズとも言える、を有する初期符号化行列[MC’]を用いて、M’回の連続初期放射を定義する。
【0060】
ステップ204の間、命令122を実行する処理ユニット114は、例えば、
図3A、3B、3Cおよび4により示された例にしたがって、初期符号化行列[MC’]において定義された、M’回の連続初期放射ごとに、アコースティックフィールドの計算を実行する。
【0061】
ステップ206の間、命令124を実行する処理ユニット114は、初期符号化行列[MC’]から、M’−M個の列(M<M’)を除外し、これまたはこれらの除外された列は、L×Mのサイズを有する、問題の非限定的な例ではN×Mのサイズを有するとも言える、縮小された符号化行列[MC]を得るために、命令122により実行されたアコースティックフィールドのM’回の計算に適用された選択基準に基づき除外されたM’−M回の初期放射に対応する。適用される選択基準は、例えば
図5および6に示されるものである。
【0062】
ステップ208の間、命令126を実行する処理ユニット114は、行列[MR(t)]の取得のための縮小された符号化行列[MC]を用いて、トランスデューサ108
1,…,108
Nの放射および受信のシーケンスを制御する。各発射後、N個のトランスデューサの全てにおいて信号が受信され、デジタル化されて電子回路112に送信される。
【0063】
ステップ210の間、命令128を実行する処理ユニット114は、行列[MR(t)]、この行列の各係数MR
i,j(t)はj番目の放射に応答してトランスデューサ108
iにより受信された測定信号を表し、この信号はその後の処理を容易にするためにデジタル化されている、を構築する。
【0064】
ステップ212の間、命令130を実行する処理ユニット114は、行列[MR(t)]の時間的フィルタリングを実行し、このフィルタリングは関心の領域から排除された放射の時刻に存在するあらゆる情報も除外することを目的とする。このステップ206の目的は、特にイメージ化されるべき欠陥が部品の底部のような強いエコーを発生するインターフェースに近い場合において、後の処理を容易にすることである。それは、特に、邪魔なエコーを発生するインターフェースを排除することにより、イメージ化されるべき領域を欠陥のごく近傍に限定することを可能にする。対象の底部から形成されている亀裂のイメージングにおいて非常に有利である。
【0065】
最後に、最後のステップ214の間、命令132を実行する処理ユニット114は、上で定義された行列[MR’(t)]を得るために用いられる縮小された符号化行列[MC]に係るオプションの復号、ノイズ低減、適応的および選択的フォーカシング、物体102における関心の領域のデジタル画像の再構築、などといった上述の処理のうちの一つ以上を実行する。
【0066】
上記で詳細に説明された取得方法を実施する、上記のような探査装置が、放射の数を減らすことにより、超音波信号の取得を簡略化することを可能にしつつ、得られた時間信号の行列のSNRに対するこの減少の影響をできるだけ限定することは、明らかである。
【0067】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではないということが意味される。実際、それらに対するまさに開示された教示に照らして、様々な修正が上述の実施形態へ行われ得ることは、当業者にとって明らかである。
【0068】
特に、コンピュータプログラムの命令120、122、124、126、128、130、および132の少なくとも一部は、これらの命令の実行中に実行される機能に特化した、マイクロプログラムのまたはマイクロワイヤードの電子回路により、置き換えられ得る。
【0069】
さらに、
図3Aから
図9Cの結果および計算は、アダマール行列による放射の符号化を用いて、得られおよび実行されたが、しかし、Lopez Villaverdeなどによる前述の論文のIII.B章に記載されているもののうちの一つ、または、他のような放射の符号化を用いて、類似の結果および計算が、得られおよび実行され得る。初期符号化行列の性質は、決して本発明の原理を変えるものではない。
【0070】
さらにまた、上記で詳細に説明された実施形態では、L=N=M’である。しかし、これら三つのパラメータが一般的に等しいという特別な理由はない。
【0071】
一般に、以降の特許請求の範囲において用いられる用語は、特許請求の範囲を本明細書に開示された実施形態に限定するものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲がその式によって網羅することを目的とする全ての均等物を含み、当業者の一般的な知識をここに開示された教示の実施に適用することによる均等物の提供は、当業者の範囲内にある、と解釈されなければならない。