(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
創エネ機器を含む複数の分散電源が一か所の連系点で配電系統に連携して電力系統に電力を供給し、該複数の分散電源の少なくとも1つが蓄電池と該蓄電池の直流電力を交流電力に変換するインバータ部を有する分散電源システムにおいて、
系統連系点の交流電圧を計測する電圧計測部と、
創エネ機器が発電する発電電力を計測する発電電力計測部と、
該蓄電池の直流電力を交流電力に変換するインバータ部を制御する制御部を有し、
該インバータ部を該制御部が制御する際、
該創エネ機器が無効電力を発生する際の目標制御電圧である第1の系統電圧目標値と、該インバータ部が無効電力を発生する際の目標制御電圧である第2の系統電圧目標値と、該発電電力計測部の出力に基づき該インバータ部で系統電圧の制御を行うかを判断する第1の系統電圧のスレッショルド電圧を有し、
該発電電力計測部で計測された発電電力が予め定められた基準電力を超え、かつ、該電圧計測部の出力が該第1の系統電圧のスレッショルド電圧を超えた場合、系統電圧が該第1の系統電圧目標値よりも小さな値をとる該第2の系統電圧目標値になるよう該インバータ部から出力する無効電力を制御するよう構成することを特徴とする分散電源システム。
該制御部は、該インバータ部が該第2の系統電圧目標値を目標に無効電力を出力する制御を行っている際、該インバータ部から出力する無効電力量が所定値以下になった際に、該第2の系統電圧目標値を所定の電圧幅で徐々に該第1の系統電圧目標値に近づけていくよう制御することを特徴とする請求項1記載の分散電源システム。
該制御部は、外部との通信インターフェース部を有し、該通信インターフェース部より該第1の系統電圧目標値が入力された場合は、入力された該第1の系統電圧目標値を使用し該インバータ部を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散電源システム。
該制御部は、上記第1の系統電圧のスレッショルド電圧、及び上記第2の系統電圧目標値を決定するための条件を該通信インターフェース部より取り込むよう構成することを特徴とする請求項4記載の分散電源システム。
該制御部は、配電系統に接続された該創エネ機器の変換器容量を取り込む変換器容量取り込み部を有し、該取り込んだ変換器容量取り込み部の出力、上記第1の系統電圧目標値を基に上記第1の系統電圧のスレッショルド電圧、及び上記第2の系統電圧目標値を生成するよう制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散電源システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の分散電源システムの構成を表わす図である。この分散電源システムでは、複数の分散電源が連系点で商用系統と連系される。
【0013】
図1を参照して、分散電源システムは、柱上トランス9−1〜9−mと、複数の区画19−1〜19−mと、複数の区画への電力供給のための配電系統14−1〜14−mと、CEMS(Community Energy Management System)15と、宅外通信ネットワーク13とを備える。区画の数mは、たとえば、30である。
【0014】
CEMS15は、区画19−1〜19−m内の需給電力を管理する。
区画19−jは、需要家宅に設置される需要家設備18−j−1〜18−j−nによって構成される。1つの区画内の需要家宅の数nは、たとえば、10である。
【0015】
柱上トランス9−1〜9−m以下複数の需要家(例えば、10軒程度)で構成された区画を複数区画(例えば30区画)集めてスマートタウンを構成した場合について説明する。
【0016】
需要家宅は、ZEH(Zero Emission House)住宅で構成されているものとする。ZEH住宅とは、二酸化炭素の排出量を大幅に削減するために、住宅等の断熱性能等を向上させるとともに、太陽電池等の再生可能エネルギーを利用した創エネ器を設置し、使用する1年間の電力収支をゼロとする住宅である。全ての住宅には太陽電池1(容量は4〜6kW程度)が設置され、メガソーラが構成されている場合について説明する。
【0017】
需要家設備18−j−1〜18−j−nは、連系点N−j−1〜N−j−nで商用系統17と連系可能に構成される。
【0018】
需要家設備18−j−iは、太陽電池1−j−i、太陽電池用電力変換装置2−j−i、蓄電池3−j−i、蓄電池用電力変換装置4−j−i、需要家宅内の負荷5−j−i、分電盤6−j−i、HEMS7−j−i、スマートメータ8−j−i、宅内配電系統10−j−i、宅内通信ネットワーク11−j−i、信号線12−j−iを備える。
【0019】
宅外通信ネットワーク13は、CEMS15と、HEMS7−j−i(j=1〜m、i=1〜n)とを接続する。
【0020】
複数の需要家設備18−j−1〜18−j−mは、柱上トランス9−jを介して、連系線900に接続される。連系線900は、商用系統17に接続される。これによって、複数の需要家設備18−j−1〜18−j−nに含まれる1以上の分散電源が商用系統17と連系される。
【0021】
以下の説明では、上述の構成要素X−j−iを総称して、Xと表記する。
図2は、需要家設備18の構成を表わす図である。
図2において、同一の番号を記したものは同一のものとする。需要家設備18は、分散電源として、創エネ機器111と、蓄エネ機器333とを備える。
【0022】
創エネ機器111は、創エネ装置としての太陽電池1と、太陽電池用電力変換装置2とを含む。創エネ装置は、太陽電池1に限るものではなく、風力発電装置、または水力発電装置なども含まれる。太陽電池用電力変換装置2が第1の電力変換装置に該当する。
【0023】
太陽電池1は、容量は4〜6kW程度であり、
図1に示すように10戸の需要家で構成された区画が30区画あつまるとメガソーラが構成されている。
【0024】
太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池1から供給される直流電力を交流電力に変換して、宅内配電系統10に供給する。
【0025】
蓄エネ機器333は、蓄電池3と、蓄電池用電力変換装置4とを含む。
蓄電池3は、電力の充放電が可能なように構成される。
【0026】
蓄電池用電力変換装置4は、蓄電池3から放電した直流電力を交流電力に変換して、宅内配電系統10に供給する。蓄電池用電力変換装置4は、宅内配電系統10から供給される交流電力に直流電力に変換して、蓄電池3を充電する。蓄電池用電力変換装置4が第2の電力変換装置に該当する。蓄電池用電力変換装置4がインバータ部に相当する。
【0027】
負荷5は、エコキュート51、エアコン52、冷蔵庫53、照明54、IHクッキングヒータ55等を含む。
【0028】
HEMS7は、宅外通信ネットワーク13を介してCEMS15と接続される。
分電盤6は、柱上トランス9から供給される商用系統17の電力を宅内配電系統10に供給する。分電盤6は、電力計測回路61を備える。電力計測回路61は、各ブレーカの電力を計測する。
【0029】
スマートメータ8は、商用系統17の電力使用量を計測する。
宅内配電系統10は、宅内の機器へ電力を供給する。
【0030】
宅内通信ネットワーク11は、HEMS7と宅内の機器との間で制御情報などを伝送する。
【0031】
信号線12は、分電盤6内の電力計測回路
61で計測された電力を表わす信号を伝送する。
図3は、太陽電池用電力変換装置2、および蓄電池用電力変換装置4の構成を表わす図である。
【0032】
太陽電池用電力変換装置2は、電圧計201、電流計202、第1のDC/DC変換回路203、第1の制御回路204、直流母線205、電圧計206、電流計207、第1のDC/AC変換回路208、第2の制御回路209、電圧計210、および電流計211を備える。
【0033】
電圧計201は、太陽電池1から出力される第1の直流電圧を計測する。
電流計202は、太陽電池1から出力される第1の直流電流を計測する。
【0034】
第1のDC/DC変換回路203は、太陽電池1から出力される第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する。
【0035】
直流母線205は、第1のDC/DC変換回路203から出力される第2の直流電圧を第1のDC/AC変換回路208に供給する。
【0036】
電圧計206は、直流母線205の第2の直流電圧を計測する。
電流計207は、直流母線205の第2の直流電流を計測する。
【0037】
第1のDC/AC変換回路208は、第1のDC/DC変換回路203から出力される第2の直流電圧(直流電力)を交流電圧(交流電力)に変換して、宅内配電系統10に出力する。
【0038】
電圧計210は、宅内配電系統10の交流電圧を連系点Nの交流電圧として計測する。
電流計211は、宅内配電系統10を流れる交流電流を計測する。
【0039】
第1の制御回路204は、電圧計201の出力、電流計202の出力、電圧計206の出力などに基づいて、第1のDC/DC変換回路203を制御する。
【0040】
第2の制御回路209は、電圧計206の出力、電流計207の出力、電圧計210の出力、および電流計211の出力などに基づいて、第1のDC/AC変換回路208を制御する。
【0041】
蓄電池用電力変換装置4は、電圧計401、電流計402、第2のDC/DC変換回路403、第3の制御回路404、直流母線405、電圧計406、電流計407、第2のDC/AC変換回路408、第4の制御回路409、電圧計410、および電流計411を備える。
【0042】
電圧計401は、蓄電池3から出力される第3の直流電圧を計測する。
電流計402は、蓄電池3から出力される第3の直流電流を計測する。
【0043】
第2のDC/DC変換回路403は、蓄電池3から出力される第3の直流電圧を第4の直流電圧に変換する。
【0044】
直流母線405は、第4の直流電圧を第2のDC/AC変換回路408に供給する。
電圧計406は、直流母線405の第4の直流電圧を計測する。
【0045】
電流計407は、直流母線405の第4の直流電流を計測する。
第2のDC/AC変換回路408は、第2のDC/DC変換回路403から出力される第4の直流電圧(直流電力)を交流電圧(交流電力)に変換して、宅内配電系統10に出力する。
【0046】
電圧計410は、宅内配電系統10の交流電圧を連系点Nの交流電圧として計測する。
電流計411は、宅内配電系統10を流れる交流電流を計測する。
【0047】
第3の制御回路404は、電圧計401の出力、電流計402の出力、電圧計406の出力などに基づいて、第2のDC/DC変換回路403を制御する。
【0048】
第4の制御回路409は、電圧計406の出力、電流計407の出力、電圧計410の出力、および電流計411の出力などに基づいて、第2のDC/AC変換回路408を制御する。
【0049】
図4は、第1の制御回路204の構成を表わす図である。
第1の制御回路204は、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御回路2041、電圧制御回路2042、切換え回路2043、および第5の制御回路2044を備える。
【0050】
MPPT制御回路2041は、太陽電池1から供給される電力を最大限取り出すために、電圧計201の出力と、電流計202の出力とに基づいて、太陽電池1の最大電力点をサーチし、その電力を取り出す制御のための制御指令値を生成する。
【0051】
電圧制御回路2042は、電圧計206の出力に基づいて、太陽電池1の電圧を制御し、太陽電池1から取りだす電力を制御するための制御指令値を生成する。
【0052】
切換え回路2043は、MPPT制御回路2041の出力と電圧制御回路2042の出力のいずれを第1のDC/DC変換回路203へ制御指令値として出力するかを切り換える。
【0053】
第5の制御回路2044は、MPPT制御回路2041および電圧制御回路2042へ制御パラメータ、および制御目標値などを出力するとともに、太陽電池1の発電状態などを管理する。第5の制御回路2044は、切換え回路2043の制御信号も出力する。
【0054】
図5は、第2の制御回路209の構成を表わす図である。
第2の制御回路209は、位相検出回路2091、無効電流振幅算出回路2092、無効電流波形発生回路2093、有効電流振幅算出回路2094、有効電流波形発生回路2095、加算器2096、および第6の制御回路2097を備える。
【0055】
位相検出回路2091は、電圧計210で計測された交流の電圧波形の位相を検出して、交流電圧の位相検出情報を出力する。
【0056】
無効電流振幅算出回路2092は、第6の制御回路2097で算出された交流電圧の実効値に基づいて、第1のDC/AC変換回路208が出力する無効電流の目標振幅を算出する。
【0057】
無効電流波形発生回路2093は、位相検出回路2091から出力される交流電圧の位相検出情報、および無効電流振幅算出回路2092から出力される無効電流の目標振幅に基づいて、第1のDC/AC変換回路208が出力する無効電流波形を発生する。
【0058】
有効電流振幅算出回路2094は、第6の制御回路2097で算出された有効電流情報に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。
【0059】
有効電流波形発生回路2095は、位相検出回路2091から出力される交流電圧の位相検出情報、および有効電流振幅算出回路2094から出力される有効電流の目標振幅に基づいて、第1のDC/AC変換回路208から出力する有効電流波形を発生する。
【0060】
加算器2096は、無効電流波形発生回路2093から出力される無効電流波形と有効電流波形発生回路2095から出力される有効電流波形とを加算し、第1のDC/AC変換回路208から出力する交流電流目標値を生成する。
【0061】
第6の制御回路2097は、電圧計210で計測された交流電圧に基づいて、交流電圧の実効値を算出して、無効電流振幅算出回路2092へ出力する。
【0062】
第6の制御回路2097は、電圧計206で計測された直流母線205の電圧に基づいて、有効電流情報を算出して、有効電流振幅算出回路2094へ出力する。
【0063】
第6の制御回路2097は、加算器2096から出力される交流電流目標値と、電流計211で計測された交流電流に基づいて、第1のDC/AC変換回路208を制御する電流指令値を生成する。
【0064】
図6は、第3の制御回路404の構成を表わす図である。
第3の制御回路404は、充電制御回路4041、放電制御回路4042、切換え回路4043、および第7の制御回路4044を備える。
【0065】
充電制御回路4041は、電流計402の出力と、電圧計401の出力とに基づいて、蓄電池3の充電制御を行う際の指令値を算出する。
【0066】
放電制御回路4042は、電流計402の出力と、電圧計401の出力とに基づいて、蓄電池3からの放電制御を行う際の指令値を算出する。
【0067】
切換え回路4043は、充電制御回路4041の出力と放電制御回路4042の出力を切り換える。
【0068】
第7の制御回路4044は、充電制御回路4041、および放電制御回路4042へ制御パラメータおよび制御目標値などを出力するとともに、蓄電池3の充電量、充電電流、放電電力量などを管理する。第7の制御回路4044は、切換え回路4043の制御信号も出力する。
【0069】
図7は、第4の制御回路409の構成を表わす図である。
第4の制御回路409は、位相検出回路4091、無効電流振幅算出回路4092、無効電流波形発生回路4093、有効電流振幅算出回路4094、有効電流波形発生回路4095、加算器4096、および第8の制御回路4097を備える。
【0070】
位相検出回路4091は、電圧計410で計測された交流の電圧波形を検出して、交流電圧の位相検出情報を出力する。
【0071】
無効電流振幅算出回路4092は、第8の制御回路4097で算出された交流電圧の実実効値に基づいて、第2のDC/AC変換回路408が出力する無効電流の目標振幅を算出する。
【0072】
無効電流波形発生回路4093は、位相検出回路4091から出力される交流電圧の位相検出情報、および無効電流振幅算出回路4092から出力される無効電流の目標振幅に基づいて、第2のDC/AC変換回路408から出力される無効電流波形を発生する。
【0073】
有効電流振幅算出回路4094は、第8の制御回路4097で算出された有効電流情報に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。
【0074】
有効電流波形発生回路4095は、位相検出回路4091から出力される交流電圧の位相検出情報、および有効電流振幅算出回路4094から出力される有効電流の目標振幅に基づいて、第2のDC/AC変換回路408から出力される有効電流波形を発生する。
【0075】
加算器4096は、無効電流波形発生回路4093から出力される無効電流波形と有効電流波形発生回路4095から出力される有効電流波形とを加算して、第2のDC/AC変換回路408から出力される交流電流の目標値を生成する。
【0076】
第8の制御回路4097は、電圧計410で計測された交流電圧に基づいて、交流電圧の実効値を算出して、無効電流振幅算出回路4092へ出力する。
【0077】
第8の制御回路4097は、電圧計406で計測された直流母線405の電圧に基づいて、有効電流情報を算出して、有効電流振幅算出回路4094へ出力する。
【0078】
第8の制御回路4097は、加算器4096から出力される交流電流目標値と、電流計411で計測された交流電流とに基づいて、第2のDC/AC変換回路408を制御する電流指令値を生成する。
【0079】
次に、実施の形態1の分散電源システムの具体的な動作について説明する。以下では、太陽電池1、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池3、および蓄電池用電力変換装置4を中心とした分散電源システムの動作を説明する。
【0080】
HEMS7が起動すると、HEMS7は、宅内通信ネットワーク11に接続されている太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、および負荷5のステータスを確認する。その際、HEMS7は、CEMS15から太陽電池用電力変換装置2に対する制御用の情報が通知されていれば、この通知された制御用の情報を宅内通信ネットワーク11を介して太陽電池用電力変換装置2に通知する。HEMS7は、CEMS15から蓄電池用電力変換装置4に対する制御用の情報が通知されていれば、この通知された制御用の情報を宅内通信ネットワーク11を介して蓄電池用電力変換装置4に通知する。
【0081】
なお、実施の形態1では、宅内通信ネットワーク11のプロトコルとしてはEchonet Liteを使用し、物理層としてはEthernet(登録商標)を使用するものとして説明する。なお、宅内通信ネットワーク11のプロトコルはEchonet Liteに限るものではなく、他のプロトコル、あるいは独自のプロトコルでも良い。また、物理層もEthernetに限るものではなく、WISM(Wireless Services Module)または特小無線等の無線ネットワークまたは電灯線を利用したPLC(Power Line Communication)ネットワーク、光ネットワーク等でも良い。
【0082】
CEMS15とHEMS7との間は、宅外通信ネットワーク13で接続されている。CEMS15とHEMS7間の情報のやり取りについては後述する。
【0083】
HEMS7は、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、および負荷5のステータスの確認を終了すると、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、および負荷5の動作を監視する。具体的には、HEMS7は、負荷5の消費電力、創エネ機器111の発電電力、蓄エネ機器333の充放電電力を管理する。HEMS7は、CEMS15から指令が通知された場合、その指令内容に従って、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、および負荷5に指示を通知する。HEMS7は、管理している電力量をCEMS15に送信する。
【0084】
次に、商用系統17の交流電圧の上昇を抑制する制御の具体的な動作原理について説明する。
【0085】
太陽電池1の発電電力が増加し、宅外の商用系統17の交流電圧の実効値が上昇した場合、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力することによって、交流電圧の上昇を抑えることができる。よって、太陽電池用電力変換装置2は、商用系統17に接続される連系点Nの交流電圧の実効値を監視し、交流電圧の実効値が上昇した場合、無効電力を出力する。
【0086】
図8(a)および(b)は、無効電力による系統電圧の制御方式の概念を説明するための図である。
【0087】
以下、
図8(a)および(b)を用いて実施の形態1の商用系統17の交流電圧の上昇抑制制御の具体的な動作原理について説明する。太陽電池1等の分散電源の発電電力量が増加し、宅外の商用系統17の交流電圧の実効値が上昇した場合、太陽電池用電力変換装置2等から無効電力を出力することで交流電圧の上昇を抑えることができる。よって、太陽電池用電力変換装置2には、宅内配電系統10の交流電圧の実効値を監視し、交流電圧の実効値が上昇した場合、無効電力を出力する機能を備えたものがある。
【0088】
図8(a)において、原点0を中心とした円グラフについて説明する。円グラフは、横軸が有効電力(あるいは有効電流)、縦軸が無効電力(あるいは無効電流)である。一般に、太陽電池1に接続された太陽電池用電力変換装置2が出力できる最大電力である定格電力は、太陽電池1の最大の発電電力と同じとなることが多い。たとえば、4kWの太陽電池1を搭載されている場合は、太陽電池用電力変換装置2の定格電力は4kWとなる。
図8(a)の円グラフは、太陽電池用電力変換装置2が出力できる最大電力(円グラフの半径の大きさに相当)を示す。すなわち、太陽電池用電力変換装置2は、円グラフの内側なら宅内配電系統10に対して電力を供給することができる。
【0089】
より詳細に、
図8(a)の円グラフについて説明する。例えば、無効電力がゼロの場合は、
図8(a)に示すように、太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池1の最大の発電電力を出力することができる(図中、有効電力(最大)と記した矢印の大きさを参照)。しかし、太陽電池1が最大電力を発電しているときに、系統電圧の上昇を抑制するために、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力すると、無効電力と有効電力とを加算した電力の座標は、
図8(a)の円グラフの外側の領域に含まれることになる。太陽電池用電力変換装置2は、円グラフの外側の電力を出力できない。従って、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力する場合は、
図8(a)に示すように、有効電力の出力を抑制して、無効電力を加算しなければならない。
【0090】
系統連系規定では、力率は0.85以上と規定されている。
図8(a)において、θはcosθ=0.85となる角度である。従って、太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池用電力変換装置2の定格電力×sinθまでの無効電力を出力することができる。この無効電力は、
図8(a)において、縦軸と並行に記した破線の矢印の大きさに相当する。
【0091】
そこで、実施の形態1では、太陽電池1の発電電力を最大限太陽電池用電力変換装置2から出力するため、太陽電池1の発電電力(
図8中は有効電力と記している)が無効電力を出力することで抑制される場合は、蓄電池用電力変換装置4から無効電力を出力することで商用系統17(宅内配電系統10)の交流電圧の上昇を抑制する。
【0092】
具体的には、太陽電池1の現在の発電電力が太陽電池用電力変換装置2の定格電力(最大出力電力)の85%以下の場合は、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力しても太陽電池1の発電電力は抑制されない。つまり、無効電力と有効電力を加算した出力電力は、
図8(a)の円グラフの内側にくる。この場合には、太陽電池用電力変換装置2が、連系点Nの交流電圧が定められた電圧以下になるように無効電力を出力する。
【0093】
一方、太陽電池1の現在の発電電力が太陽電池用電力変換装置2の定格電力(最大出力電力)の85%を超える場合、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を発生すると、太陽電池用電力変換装置2から出力される電力の座標は、
図8(a)に示す円グラフの外側に出てくる場合がある。その場合、太陽電池用電力変換装置2は有効電力を抑制するため太陽電池1の発電量を抑制する。そのため、実施の形態1では、蓄電池用電力変換装置4を起動し、蓄電池用電力変換装置4の最大出力電力である定格電力まで無効電力を出力するように制御し、宅内配電系統10の電圧上昇を抑制する。
【0094】
次に、上述のように蓄電池用電力変換装置4を制御する理由を説明する。例えば、太陽電池1の発電電力が十分にあり、蓄電池3が満充電状態の場合、蓄電池用電力変換装置4は、自身の消費電力を抑えるためスリープモードで待機している場合がある。スリープモードは、待機電力がほとんど発生しない待機モードである。このような状態の蓄電池用電力変換装置4を起動して無効電力を発生させた場合、蓄電池用電力変換装置4の待機電力を不必要に消費してしまう。待機電力には、蓄電池3と蓄電池用電力変換装置4の間、宅内配電系統10と蓄電池用電力変換装置4の間を接続するための図示していないリレー回路へ供給する電力、および蓄電池用電力変換装置4を制御する第3の制御回路404、および第4の制御回路409に供給する電力などが含まれる。また、待機中の蓄電池用電力変換装置4を使用する場合も、無効電力発生のため第2のDC/AC変換回路408を動作させることによってスイッチング損失および導通損失が発生し、不必要に電力を消費してしまう。
【0095】
したがって、太陽電池1の現在の発電電力が第1の基準電力PS以下の場合、太陽電池1から出力される発電電力が抑制されずに、宅内配電系統10を介して連系点Nに出力できるので、蓄電池用電力変換装置4を利用せず、太陽電池用電力変換装置2内の第1のDC/DC変換回路203が無効電力を発生する。これにより、上述した不必要な消費電力を発生させることなしに宅内配電系統10の電圧上昇を抑制し、連系点Nの電圧上昇を抑制できる。
【0096】
一方、太陽電池1の現在の発電電力が第1の基準電力PSを超える場合、蓄電池用電力変換装置4を起動して、太陽電池用電力変換装置2と蓄電池用電力変換装置4とが無効電力を生成する。これによって、宅内配電系統10の電圧上昇を抑制し、宅内配電系統10の電圧上昇を抑制することによって、太陽電池1から出力される発電電力を不必要に抑制するのを防止できる。
【0097】
系統連系規定において、力率が一定値R以上と定められている場合は、第1の基準電力PSは、太陽電池用電力変換装置2の定格電力と、力率Rとを乗算した値以下の数値である。たとえば、力率が0.85以上と定められている場合は、第1の基準電力PSは、太陽電池用電力変換装置2の定格電力の0.85倍以下の数値である。実施の形態1では、第1の基準電力PSを太陽電池用電力変換装置2の定格電力の0.85倍として説明するが、例えば電圧計や電流計等の測定器の誤差、太陽電池用電力変換装置2での損失等を考慮し、第1の基準電力PSを太陽電池用電力変換装置2の定格電力の0.82倍などと定めても良い。
【0098】
さらに、商用系統17の電圧上昇を、各需要家宅内に配置された分散電源で抑制できるので、商用系統17にはSVCまたは系統用蓄電池等の高価な配電系統安定化設備を配置する必要がない。たとえ、配電系統安定化設備を配置するにしても、小容量化できるので、コストを削減することができる。
【0099】
なお、実施の形態1では、配電系統内の交流電圧の検出を宅内配電系統10で行ったがこれに限るものではなく、計測が可能であるならば、例えばスマートメータ8の入力、柱上トランス9の直下などの交流電圧を使用しても良いことは言うまでもない。
【0100】
太陽電池用電力変換装置2と蓄電池用電力変換装置4の間は通信線を介して直接互いの情報をやり取りすることなく、各々独立して動作する。互いの情報をやり取りせずに自立的に動作させるために、HEMS7が制御情報を太陽電池用電力変換装置2と蓄電池用電力変換装置4に送信する。
【0101】
太陽電池用電力変換装置2は、蓄電池用電力変換装置4の動作を意識することなく、連系点Nの電圧が上昇した場合、自律的に無効電力を生成し、系統電圧の上昇を抑制することができる。太陽電池用電力変換装置2に特別な機能を実装しなくてもよいので、無効電力による系統電圧の上昇を抑制する機能を実装した市販の太陽電池用電力変換装置2を使用できる。蓄電池用電力変換装置4が、太陽電池用電力変換装置2の出力電力を監視することによって、無効電力生成の可否判断を自律的に行うことができる。
【0102】
具体的には、HEMS7は、太陽電池用電力変換装置2へ太陽電池用制御情報を送信する。太陽電池用制御情報は、第1の目標実効電圧VT1、および第1の閾値電圧VH1を含む。
【0103】
第1の閾値電圧VH1は、太陽電池用電力変換装置2が無効電力の出力を開始する際の交流実効電圧である。
【0104】
第1の目標実効電圧VT1は、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を発生する際の交流実効電圧の目標値である。第1の目標実効電圧VT1を第1の系統電圧目標値という場合もある。
【0105】
HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4へ蓄電池用制御情報を送信する。蓄電池用制御情報は、第1の基準電力PS、第2の基準電力PE、第2の閾値電圧VH2、および第2の目標実効電圧VT2を含む。
【0106】
第1の基準電力PSは、前述したように、系統電圧を抑制するために蓄電池用電力変換装置4が無効電力の発生を開始する際の太陽電池1の発電電力、すなわち太陽電池用電力変換装置2から出力される有効電力である。
【0107】
第2の基準電力PEは、蓄電池用電力変換装置4が無効電力の発生を終了する際の太陽電池1の発電電力、すなわち太陽電池用電力変換装置2から出力される有効電力である。
【0108】
第2の閾値電圧VH2は、蓄電池用電力変換装置4が無効電力の出力を開始する際の交流実効電圧である。第2の閾値電圧VH2を第1の系統電圧のスレッショルド電圧という場合もある。
【0109】
第2の目標実効電圧VT2は、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を発生する際の交流実効電圧の目標値である。第2の目標実効電圧VT2を第2の系統電圧目標値という場合もある。
【0110】
実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2から出力される太陽電池1の発電電力が、第1の基準電力PSよりも大きい場合は、
図8(b)に示すように、第1の基準電力PS>第2の基準電力PEの関係、および第1の閾値電圧VH1>第2の閾値電圧VH2>第1の目標実効電圧VT1>第2の目標実効電圧VT2の関係があるものとする。なお、第1の目標実効電圧VT1と第2の目標実効電圧VT2の関係は上記に限るものではない。
【0111】
第2の閾値電圧VH2を第1の閾値電圧VH1よりも低く設定することによって、太陽電池1の現在の発電電力が第1の基準電力PSを超えるときに、蓄電池用電力変換装置4からの無効電力が優先して出力される。すなわち、連系点Nの交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2を超える程度に上昇しただけでも、蓄電池用電力変換装置4から無効電力が出力され、連系点Nの交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1まで上昇しなければ、太陽電池用電力変換装置2から無効電力が出力されない。
【0112】
また、第2の目標実効電圧VT2を第1の目標実効電圧VT1よりも低く設定することによって、太陽電池1の現在の発電電力が第1の基準電力PSを超えるときに、太陽電池用電力変換装置2の無効電力の出力が抑制されて、蓄電池用電力変換装置4からの無効電力が優先して出力される。優先された蓄電池用電力変換装置4の無効電力の出力だけでは、連系点Nの交流実効電圧の抑制ができない場合は、太陽電池用電力変換装置2も無効電力を発生する。これにより、太陽電池1の発電電力を不必要に抑制することなく、連系点Nの電圧の安定化を図ることができる。
【0113】
図9は、太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報の需要家設備18への転送手順を表わすシーケンス図である。
【0114】
図9を参照して、CEMS15は、スマートタウンに加え、周辺のビル、マンション、工場、病院等の需給状況を管理するとともに、系統電圧安定化のためのデータベースを構築する。CEMS15は、日射量、風速、および気温等の予測結果に基づいて、需要家の消費電力、および太陽電池1の発電電力を予測する。CEMS15は、予測結果に基づき、各需要家に対して最適な制御情報を生成して通知する。具体的には、CEMS15は、太陽電池用制御情報、蓄電池用制御情報の変更がある場合に、新たな太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報を各需要家設備18のHEMS7に送信する。
【0115】
HEMS7は、太陽電池用電力変換装置2へ、新たな太陽電池用制御情報を通知する。
太陽電池用電力変換装置2は、新たな太陽電池用制御情報を受信すると、図示していない第2の制御回路209内の第6の制御回路2097内のレジスタにその数値を書き込む。太陽電池用電力変換装置2は、数値の書き込みが完了すると、その旨をHEMS7に通知する。その際、太陽電池用電力変換装置2は、受信した太陽電池用制御情報も通知する。HEMS7は、この通知を受信すると、受信した太陽電池用制御情報を確認し、太陽電池用制御情報が正常に送信されたか否かを確認する。そして、HEMS7は、正常に送信されていない場合は、太陽電池用制御情報を再送する。
【0116】
一方、正常に送信されている場合は、HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4へ、新たな蓄電池用制御情報を送信する。
【0117】
蓄電池用電力変換装置4は、新たな蓄電池用制御情報を受信すると、図示していない第4の制御回路409内の第8の制御回路4097内のレジスタにその数値を書き込む。蓄電池用電力変換装置4は、数値の書き込みが完了すると、その旨をHEMS7に通知する。その際、蓄電池用電力変換装置4は、受信した蓄電池用制御情報も通知する。HEMS7は、この通知を受信すると、受信した蓄電池用制御情報を確認し、蓄電池用制御情報が正常に送信されたか否かを確認する。そして、HEMS7は、正常に送信されていない場合は、蓄電池用制御情報を再送する。
【0118】
その後、HEMS7は、受信した太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報とともに、設定変更が完了したことをCEMS15に通知する。CEMS15は、通知された太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報を確認し、太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報が正常に送信されたか否かを確認する。そして、CEMS15は、正常に送信されていない場合は、太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報を再送する。正常に送信されている場合は、処理を終了する。
【0119】
図10は、太陽電池用電力変換装置2、および蓄電池用電力変換装置4において収集された計測データのCEMS15への転送手順を表わすシーケンス図である。なお、図示していないが、HEMS7が分電盤6内の電力計測回路61で計測した負荷5の消費電力を含む各ブレーカの電力を信号線12を介して収集および管理するものとする。
【0120】
CEMS15は、各需要家設備18のHEMS7へデータ収集要求を送信する。
HEMS7は、データ収集要求を受信すると、電力計測回路61によって計測された電力計測結果に基づいて、HEMS7内の図示していないメモリに記憶していた需要家設備18内の負荷5の単位時間ごとの消費電力量を確認する。HEMS7は、確認が終了すると、太陽電池用電力変換装置2に対して各種計測結果を通知するように要求通知を送信する。
【0121】
太陽電池用電力変換装置2は、HEMS7から要求通知を受信すると、太陽電池1の単位時間ごとの発電電力、出力した単位時間ごとの有効電力および無効電力、単位時間ごとの発電電力抑制の有無からなる計測結果を第6の制御回路2097内の図示していないメモリから読み出し、HEMS7へ通知する。
【0122】
HEMS7は、太陽電池用電力変換装置2から計測結果の通知を受信すると、その内容を確認後、蓄電池用電力変換装置4へ各種計測結果を通知するように要求通知を送信する。
【0123】
蓄電池用電力変換装置4は、HEMS7から要求通知を受信すると、蓄電池3の単位時間ごとの充放電電力量、出力した単位時間ごとの有効電力および無効電力からなる計測結果を第8の制御回路4097内の図示していないメモリから読み出し、HEMS7へ通知する。
【0124】
HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4から計測結果通知を受信すると、その内容を確認後、CEMS15へ負荷5の消費電力量を含む各種計測結果を送信する。
【0125】
CEMS15は、各種計測結果を受信すると、太陽電池用電力変換装置2に通知した太陽電池用制御情報と太陽電池用電力変換装置2の計測結果との紐付けを行うとともに、蓄電池用電力変換装置4に通知した蓄電池用制御情報と蓄電池用電力変換装置4の計測結果との紐付けを行って、図示していない系統電圧安定化用データベースに記憶する。
【0126】
その際、CEMS15は、時刻情報に加え、月、曜日、日射量実績、風速実績、および気温実績情報についても紐付けを行って、系統電圧安定化用データベースに記憶する。太陽電池用電力変換装置2、および蓄電池用電力変換装置4に通知される太陽電池用制御情報、蓄電池用制御情報は、需要家設備18毎に異なる。CEMS15が商用系統17に設置された各計測ポイントの系統電圧の計測結果に基づき、系統電圧の上昇が検出された場合、あるいは系統電圧の上昇が予測された場合、各需要家設備18の太陽電池用制御情報、蓄電池用制御情報をリアルタイムに計算して通知する。ここで、計測ポイントは、例えば、柱上トランス9−1〜9−mとすることができる。
【0127】
また、CEMS15は、各需要家設備18の消費電力量情報についても図示していない消費電力用データベースを構築する。その際、消費電力量データは、時刻情報に加え、月、曜日、天気実績、および気温実績と紐付けして消費電力用データベースに記憶される。
【0128】
CEMS15が上記データベースを構築する理由を説明する。CEMS15が管理するスマートコミュニティ内の配電系統の構成、分散電源の配置、および負荷の配置などは様々である。商用系統17に設置された各計測ポイントの系統電圧の上昇量も各計測ポイントによって異なる。従って、CEMS15は、気温の予報を含む天気予報情報、系統電圧安定化用データベース、および消費電力用データベースを用いて、現時刻以降の太陽電池1の発電電力、負荷5の消費電力量を予測する。そして、CEMS15は、現在の各計測ポイントの系統電圧の計測結果、発電電力予測結果、および消費電力量予測結果に基づいて、今後の系統電圧の上昇を予測する。
【0129】
系統電圧安定化用データベース、および消費電力用データベースに記憶されている各種計測結果をディープラーニング等の学習を用いて学習し、学習結果に基づいて、配電系統電圧の上昇を予測することができる。
【0130】
CEMS15は、配電系統電圧の上昇を予測した場合、系統電圧安定化用データベース、および消費電力用データベースに記憶されている各種計測結果に基づいて、系統電圧上昇予測の場合と同様に、ディープラーニング等の学習を用いて、需要家設備18内の太陽電池用制御情報、および蓄電池用制御情報を生成する。
【0131】
なお、実施の形態1では、CEMS15の具体的な学習方法(機械学習やディープラーニングによる学習方法)については、公知の方法を用いることができる。
【0132】
上述したように、各種計測結果を学習し、学習結果に基づいて、各需要家設備18内の太陽電池制御情報、および蓄電池用制御情報を生成するので、コミュニティ内でも異なる動きをする配電系統電圧を効果的、かつ最適に管理することができる。
【0133】
蓄電池用電力変換装置4(制御部)は、第2の閾値電圧VH2(第1の系統電圧のスレッショルド電圧)、及び第2の目標実効電圧VT2(第2の系統電圧目標値)を決定するための条件をHEMS7(通信インターフェース部)より取り込むよう構成することとしてもよい。
【0134】
蓄電池用電力変換装置4(制御部)は、配電系統に接続された創エネ機器111の変換器容量を取り込む変換器容量取り込み部を有し、取り込んだ変換器容量取り込み部の出力、第1の目標実効電圧VT1(第1の系統電圧目標値)に基づいて、第2の閾値電圧VH2(第1の系統電圧のスレッショルド電圧)、及び第2の目標実効電圧VT2(第2の系統電圧目標値)を生成するよう制御することとしてもよい。
【0135】
再び、
図3を参照して、HEMS7からの制御用の情報の通知の確認が完了すると、第1の制御回路204は、太陽電池1が発電可能か否かを確認する。具体的には、第1の制御回路204は、電圧計201から出力される太陽電池1の電圧が規定値Xを越えているか否かを確認する。太陽電池1の電圧が規定値Xを超えていた場合は、第1の制御回路204は、第2の制御回路209に対して太陽電池1の発電が可能であることを通知する。
【0136】
第2の制御回路209は、この通知を受信すると、電圧計210で計測された宅内配電系統10の交流電圧を確認し、柱上トランス9以下の配電系統14に交流電力が供給されているか否かを確認する。第2の制御回路209は、電圧計210の出力を確認し、規定量Y以上の振幅の交流電圧が得られており、かつ商用系統17が停電していないことを確認すると、第1のDC/AC変換回路208を起動するとともに、第1の制御回路204に対して、太陽電池1の発電を開始するように指示(以下、発電開始指示)を出す。
【0137】
第1の制御回路204中の第5の制御回路2044は、第2の制御回路209から太陽電池1の発電開始指示が通知されると、MPPT制御回路2041に対して太陽電池1の最大電力点追随制御を開始するように指示を出す。以下、最大電力点追随制御方法について簡単に説明する。
【0138】
MPPT制御回路2041は、前回の指令値が前々回の指令値と比較して大きくしたか、あるいは小さくしたかを管理する。MPPT制御回路2041は、今回計測した太陽電池1の発電電力と、前回計測した太陽電池1の発電電力とを比較し、発電電力が増加していた場合は、前回と同じ方向に指令値を変える。具体的には、MPPT制御回路2041は、今回の発電電力の計測の結果、太陽電池1での発電電力が増加した場合に、前々回の指令値に対して前回の指令値が増加したときには、今回の指令値が増加するよう制御し、前々回の指令値に対して前回の指令値が減少したときには、今回の指令値が減少するように制御する。
【0139】
一方、MPPT制御回路2041は、今回計測した太陽電池1の発電電力と、前回計測した太陽電池1の発電電力とを比較し、発電電力が減少していた場合は、前回と逆方向に指令値を変える。具体的には、MPPT制御回路2041は、今回の発電電力の計測の結果、太陽電池1での発電電力が減少した場合に、前々回の指令値に対して前回の指令値が増加したときには、今回の指令値が減少するよう制御し、前々回の指令値に対して前回の指令値が減少したときには、今回の指令値が増加するように制御する。
【0140】
このように制御することによって、太陽電池1は出力電力が最大となるよう制御される。
【0141】
第1のDC/DC変換回路203は、第1の制御回路204から出力される指令値に基づいて、内蔵されている昇圧回路を制御し、太陽電池1から出力される第1の直流電圧を、第2の直流電圧に変換し、出力する。
【0142】
第2の制御回路209は、第1のDC/DC変換回路203から太陽電池1からの電力の供給が開始されると、第1のDC/AC変換回路208を制御し、太陽電池1で発電した電力を宅内配電系統10に出力する。具体的には、第2の制御回路209は、直流母線205の直流電圧を監視し、直流電圧が制御目標値を超えた場合は、宅内配電系統10から供給される交流電圧波形に同期して電力を出力させる。
【0143】
次に、
図5を参照して、第2の制御回路209の動作を説明する。
位相検出回路2091は、電圧計210で計測した宅内配電系統10の交流電圧波形のゼロクロス点を検出する。位相検出回路2091は、ゼロクロス点の検出結果を無効電流波形発生回路2093、および有効電流波形発生回路2095に出力する。
【0144】
第6の制御回路2097は、電圧計210から出力される交流電圧を計測し、商用系統17が停電しているか否かを確認する。第6の制御回路2097は、商用系統17が停電していない場合は、電圧計206から出力される直流母線205の直流電圧と直流母線205の制御目標との差分電圧情報を有効電流振幅算出回路2094に出力する。第6の制御回路2097は、電圧計210から出力される宅内配電系統10の交流電圧に基づいて、交流実効電圧を算出し、無効電流振幅算出回路2092に出力する。
【0145】
無効電流振幅算出回路2092は、交流実効電圧を受け取ると、
図8(b)に示す第1の閾値電圧VH1と比較する。無効電流振幅算出回路2092は、比較の結果、交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1以下と判断した場合は、第1のDC/
AC変換回路208から出力する無効電流の振幅をゼロにするように無効電流波形発生回路2093に出力する。無効電流振幅算出回路2092は、交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1を超えていた場合は、交流実効電圧と第1の目標実効電圧VT1との差に基づいて、無効電流の目標振幅を計算し、計算結果を無効電流波形発生回路2093に出力する。
【0146】
有効電流振幅算出回路2094は、第6の制御回路2097から上述の差分電圧情報が入力されると、有効電流の目標振幅を算出し、算出結果を有効電流波形発生回路2095に出力する。
【0147】
図11は、有効電流、および無効電流を含む交流電流目標値の生成方法について説明するための図である。
【0148】
図11を参照して、第2の制御回路209、および第4の制御回路409に入力する有効電流、および無効電流を含む交流電流目標値の生成方法について説明する。
【0149】
有効電流波形発生回路2095あるいは4095は、位相検出回路2091あるいは4091において検出したゼロクロス点情報に基づいて、
図11(a)に示すように、宅内配電系統10の交流電圧位相と同位相の正弦波を有効電流基準波形として発生する。有効電流波形発生回路2095あるいは4095は、有効電流振幅算出回路2094あるいは4094から出力される有効電流振幅情報と有効電流基準波形とを乗算して
図11(b)に示す有効電流目標値を生成する。
【0150】
無効電流波形発生回路2093あるいは4093は、ゼロクロス点情報に基づいて、
図11(c)に示すように宅内配電系統10の交流電圧位相に対してπ/2進んだ余弦波を無効電流基準波形として発生する。無効電流波形発生回路2093あるいは4093は、無効電流振幅算出回路2092あるいは4092から出力される無効電流振幅情報と無効電流基準波形とを乗算して
図11(d)に示す無効電流目標値を生成する。
【0151】
加算器2096あるいは4096が、有効電流波形発生回路2095あるいは4095から出力される有効電流目標値と無効電流波形発生回路2093あるいは4093から出力される無効電流目標値とを加算することによって、
図11(e)に示す交流電流目標値を生成する。
【0152】
第6の制御回路2097は、加算器2096から交流電流目標値が入力されると、宅内配電系統10を流れる電流を計測する電流計211の出力と交流電流目標値とに基づいて、第1のDC/AC変換回路208に制御指令値を出力する。第6の制御回路2097は、第1のDC/DC変換回路203のステータス情報についても図示していないメモリに記憶し管理する。実施の形態1では、ステータス情報には、第1のDC/DC変換回路203から送られる太陽電池1の出力抑制情報、有効電流振幅情報、および無効電流振幅情報が含まれる。第6の制御回路2097は、HEMS7からの通知要求に基づいて、メモリからステータス情報を読み出して、加工してHEMS7に通知する。
【0153】
次に、
図6を参照して、第3の制御回路404の動作を説明する。蓄電池3の充放電は、HEMS7から出力される蓄電池3の充放電指示に従って、第3の制御回路404で制御する。
【0154】
HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4に対して充放電指示を宅内通信ネットワーク11を介して通知する。
【0155】
第4の制御回路409内の第8の制御回路4097は、HEMS7からの充放電指示を受信すると、第3の制御回路404内の第7の制御回路4044に蓄電池3の充放電の可否、蓄電量などのステータス情報を通知するように指示を出す。その際、第8の制御回路4097は、HEMS7から受信した充放電指示も通知する。
【0156】
第7の制御回路4044は、この指示を受け取ると、図示していないメモリから蓄電電力量を読み出し、充放電の可否を判断する。その際、第7の制御回路4044は、図示しない温度計から出力される気温についても確認することによって、充放電の可否を判断する。具体的には、実施の形態1では、蓄電電力量が90%を超えていた場合は充電不可および放電可とし、外気温が35℃を超えていた場合、あるいは0℃を下回っていた場合は蓄電池3の劣化を抑制するために充放電不可とし、充電電力量がゼロの場合は充電可および放電不可と判断する。なお、判断するための閾値は上記に限るものではなく、充電制限をかける蓄電電力量を90%を超える値、あるいは90%よりも小さな値にしても良い。また、充放電を不可とする外気温についても上記数値に限るものではなく、蓄電池3の劣化が一気に進む温度などの蓄電池3の特性を閾値にしても良い。さらに、蓄電池3の充放電を行わず、宅内配電系統10に対して無効電流を供給する場合については、特例措置として蓄電池用電力変換装置4を起動する。
【0157】
充放電の可否判断結果、蓄電電力量等の蓄電池3のステータス情報は、第7の制御回路御4044から第8の制御回路4097に通知される。第8の制御回路4097は、このステータス情報を受信すると、宅内通信ネットワーク11を介して、その情報をHEMS7に通知する。第7の制御回路御4044は、第8の制御回路4097へのステータス情報の通知を完了すると、充放電可、あるいは無効電流を生成する場合と判断された場合は、蓄電池用電力変換装置4をスリープモードから充放電モードに切り換える。一方、充放電不可と判断された場合は、スリープモードを継続する。
【0158】
第7の制御回路4044は、充放電モードに切り替わったことを確認すると充放電指示が放電であった場合は、放電制御回路4042に対して、放電開始指示、および放電電力量指示値を出力する。放電電力量指示値は、HEMS7から充放電指令と共に通知されるものとする。その際、第7の制御回路4044は、切換え回路
4043に対しても、放電制御回路
4042からの制御指令値を選択するよう指示を出力する。
【0159】
放電制御回路4042は、放電開始指示が入力されると、電圧計401、および電流計402から入力される電圧情報、および電流情報に基づいて、蓄電池3からの放電電力を算出する。放電制御回路4042は、算出結果が放電電力量指示値になるように制御指令値を生成し、切換え回路4043に出力する。
【0160】
切換え回路4043は、放電制御回路4042から出力される制御指令値を第2のDC/DC変換回路403に出力する。第2のDC/DC変換回路403は、制御指令値を受け取ると、指令値に基づき、蓄電池3から出力される直流電圧を、直流母線405の直流電圧に変換することによって蓄電池3から電力を放電させる。その際、放電制御回路4042は、第2のDC/DC変換回路403のステータス情報(具体的には放電電力量)を収集し、収集結果を第8の制御回路4097に第7の制御回路4044を経由して通知する。第2のDC/DC変換回路403から出力された直流電力は、第2のDC/AC変換回路408で交流電力に変換されて宅内配電系統10に供給される。
【0161】
第4の制御回路409は、HEMS7から充電指示が通知されると、第3の制御回路404に対して充電指示、および充電電力量あるいは充電電流を通知する。
【0162】
第3の制御回路404内の第7の制御回路4044は、第4の制御回路409から充電指示が通知されると、充電制御回路4041に対して、充電開始指示、および充電電力量を出力する。その際、第7の制御回路4044は、切換え回路4043に対しても、充電制御回路4041からの制御指令値を選択するように指示を出力する。
【0163】
充電制御回路4041は、充電開始指示が入力されると、電流計402から入力される電流情報、および電圧計401から出力される蓄電池電圧に基づいて、蓄電池3への充電電力あるいは充電電流が、通知された充電電力量あるいは充電電流値になるように制御指令値を生成し、切換え回路4043に出力する。
【0164】
切換え回路4043は、充電制御回路4041から出力される制御指令値を第2のDC/DC変換回路403に出力する。第2のDC/DC変換回路403は、制御指令値を受け取った指令値に基づき、蓄電池3から出力される直流電圧を、直流母線405の直流電圧に変換することによって蓄電池3に電力を充電させる。その際、充電制御回路4041は、第2のDC/DC変換回路403のステータス情報、具体的には充電電力量を収集し、収集結果を第8の制御回路4097に第7の制御回路4044を経由して通知する。なお、無効電流のみを出力する場合は、実施の形態1では、放電電力が“0”の放電モードとして起動する。
【0165】
次に、
図7を参照して、第4の制御回路409の動作を説明する。
位相検出回路4091は、電圧計410で計測した宅内配電系統10の交流電圧波形のゼロクロス点を検出する。位相検出回路4091は、ゼロクロス点の検出結果を無効電流波形発生回路4093、および有効電流波形発生回路4095に出力する。
【0166】
第8の制御回路4097は、電圧計410から出力される交流電圧を計測し、商用系統17が停電しているか否かを確認し、停電していない場合は、電圧計406から出力される直流母線405の直流電圧と直流母線405の制御目標との差分電圧情報を有効電流振幅算出回路4094に出力する。第8の制御回路4097は、電圧計410から出力される宅内配電系統10の交流電圧から交流実効電圧を算出して、無効電流振幅算出回路4092に出力する。
【0167】
無効電流振幅算出回路4092は、交流実効電圧を受け取ると、
図8(b)に示す第2の閾値電圧VH2と比較する。無効電流振幅算出回路4092は、比較の結果、交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2以下と判断した場合は、第2のDC/
AC変換回路408から出力する無効電流の目標振幅をゼロとし、目標振幅を無効電流波形発生回路4093に出力する。無効電流振幅算出回路4092は、交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2を超えていた場合は、交流実効電圧と第2の目標実効電圧VT2との差に基づいて、無効電流の目標振幅を計算し、計算結果を無効電流波形発生回路4093に出力する。
【0168】
有効電流振幅算出回路4094は、第8の制御回路4097から上述の差分電圧情報が入力されると有効電流の目標振幅を算出し、算出結果を有効電流波形発生回路4095に出力する。
【0169】
第8の制御回路4097は、加算器4096から交流電流目標値が入力されると、宅内配電系統10を流れる電流を計測する電流計411の出力と、交流電流目標値とに基づいて、第2のDC/
AC変換回路408に制御指令値を出力する。第8の制御回路4097は、第2のDC/DC変換回路403のステータス情報についても図示していないメモリに記憶し管理する。ステータス情報には、第2のDC/DC変換回路403から送られる蓄電池3の充放電電力情報、有効電流振幅情報、および無効電流振幅情報が含まれる。第8の制御回路4097は、HEMS7からの通知要求に基づきメモリからステータス情報を読み出して、加工してHEMS7に通知する。
【0170】
次に、太陽電池用電力変換装置2、および蓄電池用電力変換装置4の動作をさらに詳細に説明する。実施の形態1では、上述したように、太陽電池用電力変換装置2と蓄電池用電力変換装置4は互いに独立して動作する。つまり、太陽電池用電力変換装置2と蓄電池用電力変換装置4は、互いに内部ステータスをリアルタイムに情報供給することなしに動作する。蓄電池用電力変換装置4は、分電盤6内の電力計測回路61から出力される太陽電池1の発電電力の計測結果を使用する。太陽電池1の発電電力が、太陽電池用電力変換装置2から蓄電池用電力変換装置4へ通信等により伝送されるのではない。
【0171】
図12および
図13は、太陽電池用電力変換装置2の動作手順を表わすフローチャートである。
【0172】
ステップS101において、第1の制御回路204が、電圧計201から出力される太陽電池1の電圧が規定値Xを越えているか否かを確認する。第1の制御回路204は、太陽電池1の電圧が規定値Xを越えていることを確認すると、第2の制御回路209に対して太陽電池1の発電が可能であることを通知する。第2の制御回路209が、電圧計210から出力される宅内配電系統10の交流電圧の計測結果に基づいて、商用系統17が停電しているか否かを確認する。停電していないことが確認されると、処理がステップS103に進む。
【0173】
ステップS103において、第1の制御回路204が、HEMS7から太陽電池用制御情報の変更の通知を受信しているか否かを確認する。確認の結果、HEMS7から変更通知を受信していない場合は(S103:NO)、処理がステップS105に進む。HEMS7から変更通知を受信している場合は(S103:YES)、処理がステップS104に進む。
【0174】
ステップS104において、第2の制御回路209内の第6の制御回路2097は、HEMS7から送信されてきた新たな太陽電池用制御情報を図示しないレジスタに設定する。
【0175】
ステップS105において、第2の制御回路209内の第6の制御回路2097は、太陽電池用電力変換装置2の現在の制御モードを確認する。太陽電池用電力変換装置2の制御モードには、通常動作モードと、無効電力モードとがある。通常動作モードは、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力しない動作モードである。無効電力モードは、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力するモードである。太陽電池用電力変換装置2の現在の制御モードが、無効電力モードの場合には、処理がステップS110に進む。太陽電池用電力変換装置2の現在の制御モードが、通常動作モードの場合には、処理がステップS106に進む。
【0176】
ステップS110において、無効電流振幅算出回路2092は、第1の目標実効電圧VT1と、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計210の計測結果に基づいて第2の制御回路209で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧とに基づいて、無効電流の目標振幅を算出する。有効電流振幅算出回路2094が、直流母線205の直流電圧を計測する電圧計206の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。無効電流波形発生回路2093は、無効電流の目標振幅に基づいて、無効電流の目標値を生成する。有効電流波形発生回路2095は、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。無効電流の目標値と有効電流の目標値とが加算器2096で加算されることによって、太陽電池用電力変換装置2が出力する交流電流の目標値が加算器2096から出力される。
【0177】
ステップS106において、太陽電池用電力変換装置2のモードを無効電力モードに移行するか否かが判断される。具体的には、第2の制御回路209内の第6の制御回路2097が、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計210の計測結果に基づいて宅内配電系統10の交流実効電圧を算出し、交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1を超えているか否かを確認する。交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1を超えている場合には、処理がステップS107に進み、交流実効電圧が第1の閾値電圧VH1以下の場合には、処理がステップS109に進む。
【0178】
ステップS107において、第6の制御回路2097は、太陽電池用電力変換装置2内の図示しないレジスタに無効電力モードフラグをセットして、無効電力モードに移行する。
【0179】
ステップS108において、無効電流振幅算出回路2092は、第1の目標実効電圧VT1と、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計210の計測結果に基づいて第2の制御回路209で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧とに基づいて、無効電流の目標振幅を算出する。有効電流振幅算出回路2094は、直流母線205の直流電圧を計測する電圧計206の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。無効電流波形発生回路2093は、無効電流の目標振幅に基づいて、無効電流の目標値を生成する。有効電流波形発生回路2095は、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。無効電流の目標値と有効電流の目標値とが加算器2096で加算されることによって、太陽電池用電力変換装置2が出力する交流電流の目標値が加算器2096から出力される。
【0180】
ステップS109において、有効電流振幅算出回路2094は、直流母線205の直流電圧を計測する電圧計206の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する有効電流波形発生回路2095は、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。無効電流の目標値はゼロである。有効電流の目標値が加算器2096に入力されることによって、太陽電池用電力変換装置2が出力する交流電流の目標値が加算器2096から出力される。
【0181】
ステップS110、S108、またはS109によって得られた交流電流の目標値は、第6の制御回路2097に入力される。
【0182】
ステップS111において、第6の制御回路2097は、交流電流の目標値に基づいて、第1のDC/AC変換回路208の制御指令値を生成し、第1のDC/AC変換回路208に出力する。第1のDC/AC変換回路208は、制御指令値が入力されると、入力された指令値に基づいて、第1のDC/DC変換回路203から供給される直流電力を交流電力に変換し宅内配電系統10に出力する。
【0183】
ステップS112において、第1の制御回路204は、第1のDC/AC変換回路208に制御指令値を出力すると、電圧計201から出力される太陽電池1の電圧、および電流計202から出力される太陽電池1から供給される電流の計測結果に基づいて、太陽電池1の発電電力を算出する。第2の制御回路209は、宅内配電系統10に設置された電圧計210、および電流計211を用いて太陽電池用電力変換装置2が出力する有効電力、および無効電力を算出する。
【0184】
ステップS113において、第2の制御回路209は、ステップS112での算出結果である太陽電池1の発電電力、太陽電池用電力変換装置2が出力する有効電力、および無効電力を図示していないメモリへ記憶する。
【0185】
ステップS114以降において、第2の制御回路209内の第6の制御回路2097は、太陽電池用電力変換装置2の無効電力モードを継続するか否かを判断する。
【0186】
ステップS114において、第6の制御回路2097は、ステップS112で計測した無効電力が規定値TH1以下か否かを判断する。なお、実施の形態1では、ステップS112で計測した無効電力を用いるが、その代わりに、無効電流振幅算出回路2092から出力される無効電流の振幅値を用いてもよい。ステップS112で計測した無効電力が規定値TH1を超える場合(S114:NO)、処理がステップS101に戻る。ステップS112で計測した無効電力が規定値TH1以下の場合(S114:YES)、処理がステップS115に進む。
【0187】
ステップS115において、第6の制御回路2097は、太陽電池用電力変換装置2の現在のモードが無効電力モードであるかを確認する。太陽電池用電力変換装置2が無効電力モードでない場合(S115:NO)は、処理がステップS101に戻る。一方、太陽電池用電力変換装置2が無効電力モードである場合(S115:YES)、処理がステップS116に進む。
【0188】
ステップS116において、第6の制御回路2097は、無効電力が規定値TH1以下の期間を計測する。
【0189】
ステップS117において、第6の制御回路2097は、無
効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続したか否かを確認する。無
効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続していた場合には(S117:YES)、処理がステップS118に進む。無
効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続していない場合には(S117:NO)、処理がステップS101に戻る。
【0190】
ステップS118において、第6の制御回路2097は、太陽電池用電力変換装置2内の図示しないレジスタにセットされている無効電力モードフラグをクリアして、通常動作モードに移行する。
【0191】
次に、ステップS117において、計測した無効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続したか否かを確認する理由について簡単に説明する。
【0192】
太陽電池1等の代表される再生可能エネルギーを利用した発電システムは発電電力が急変することがある。スマートタウンの場合、例えば、雲が上空をよぎり日射急変が発生すると、各戸に設置された太陽電池1は狭いエリアに集中して配置されているため、ほぼ同時に太陽電池1の発電電力が低下するため、系統電圧の上昇は抑制される。しかし、上空の雲が通り過ぎると各戸に設置された太陽電池1の発電電力が回復するため、系統電圧が一気に上昇する。よって、実施の形態1では、このような日射急変でも、系統電圧の上昇を抑えるために、無効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続した場合に限り、太陽電池1の無効電力の出力を停止することとした。
【0193】
また、実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2からの無効電力の出力を太陽電池用電力変換装置2自身で判断するよう構成した。このように構成することで、系統電圧の上昇を効果的に行うことができる。特に、蓄電池用電力変換装置4の有無で太陽電池用電力変換装置2の制御を変える必要がなく、系統電圧が上昇した場合、太陽電池用電力変換装置2の無効電力制御によって、宅内配電系統10の電圧上昇を確実に抑制できる。
【0194】
図14〜
図16は、蓄電池用電力変換装置4の動作手順を表わすフローチャートである。
【0195】
ステップS151において、第4の制御回路409は、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計410の値、および分電盤6内の電力計測回路61で計測された値を取得する。第4の制御回路409は、電圧計410からの出力に基づいて、宅内配電系統10の交流実効電圧を算出する。分電盤6内の電力計測回路61は、図示していない電圧計と電流計を用いて計測された太陽電池用電力変換装置2が出力する有効電力を太陽電池1の発電電力として算出する。算出された発電電力は、一定周期(例えば10秒周期)で信号線12を介して第4の制御回路409に通知される。
【0196】
ステップS153において、第4の制御回路409は、計測結果の取得が完了すると、HEMS7から蓄電池用制御情報の変更が通知されているか否かを確認する。確認の結果、HEMS7から変更通知を受信していない場合(S153:NO)、処理がステップS155に進む。HEMS7から変更通知を受信している場合(S153:YES)、処理がステップS154に進む。
【0197】
ステップS154において、第4の制御回路409内の第8の制御回路4097は、HEMS7から送信されてきた新たな蓄電池用制御情報を図示していないレジスタに設定する。
【0198】
ステップS155において、第4の制御回路409は、蓄電池用電力変換装置4の現在の制御モードを確認する。蓄電池用電力変換装置4の制御モードには、通常動作モードと、無効電力モードと、スリープモードとがある。通常動作モードは、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を出力しない動作モードである。無効電力モードは、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を出力するモードである。スリープモードは、蓄電池3からの充放電は行われず、かつ待機のための電力がほとんど発生しない待機モードである。
【0199】
蓄電池用電力変換装置4の現在の制御モードが無効電力モードの場合(S155:YES)、処理がステップS162に進む。蓄電池用電力変換装置4の現在の制御モードが無効電力モードでない場合(S155:NO)、処理がステップS156に進む。
【0200】
ステップS162において、第4の制御回路409は、無効電力モード解除の一次判定を行う。蓄電池用電力変換装置4での待機電力、スイッチング損失、および導通損失を可能な限り抑えるため、太陽電池1の発電電力を抑制することなく太陽電池用電力変換装置2が無効電力を発生できる場合は、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を発生させないようにする。しかし、太陽電池1の発電電力が、第1の基準電力PS以下となった時点で、蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードの動作を終了し、蓄電池用電力変換装置4が例えばスリープモードに移行した場合、次のような問題が生じる。太陽電池1の発電電力が日射量の急変で急に増加した場合に、蓄電池用電力変換装置4がスリープモードから通常動作モードに切り替わるまでの期間、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を出力することができない。その場合、配電系統の電圧上昇を抑制するために、太陽電池1の出力抑制を実施する等の処置が必要になったり、太陽電池1の発電電力が第1の基準電力PS付近の場合、蓄電池用電力変換装置4の運転モードがハンチングしてしまうことがある。
【0201】
図17は、蓄電池の無効電力制御の開始および終了の条件を説明するための図である。
図17に示すように、蓄電池用電力変換装置4が無効電力モードに移行する際の第1の基準電力PSを、無効電力モードを解除して通常動作モードに移行する際の第2の基準電力PEよりも大きくすることによって、モードの切り替えに際してヒステリシスを持たせる。なお、モードを切り換える際には、
図17に示すように、宅内配電系統10の第1の目標実効電圧VT1および第2の目標実効電圧VT2も切り換える。これによって、無効電力モードと通常動作モードを交互に行き来するモードのハンチングを抑えることができる。その結果、図示しないリレー等を不必要にON/OFFさせることがなくなるので、機器が劣化するのを防止できる。
【0202】
ステップS162において、第4の制御回路409が、太陽電池用電力変換装置2から出力される太陽電池1の発電電力が第2の基準電力PE以下か否かを判断する。太陽電池用電力変換装置2から出力される太陽電池1の発電電力が第2の基準電力PE以下の場合(S162:YES)、処理がステップS164に進む。太陽電池用電力変換装置2から出力される太陽電池1の発電電力が第2の基準電力PEを超える場合(S162:NO)、処理がステップS163に進む。
【0203】
ステップS164において、第4の制御回路409内の第8の制御回路4097は、図示しないレジスタにセットされた無効電力モードフラグをクリアする。
【0204】
蓄電池用電力変換装置4が充放電を行っていた場合は、第3の制御回路404は、宅内配電系統10の交流電圧の目標値を第1の目標実効電圧VT1に変更し、蓄電池3からの充放電制御を継続する。
【0205】
一方、蓄電池用電力変換装置4が充放電を行っていなかった場合は、蓄電池用電力変換装置4は、スリープモードに移行する。すなわち、第3の制御回路404は、図示していない蓄電池3と蓄電池用電力変換装置4を接続するリレーへの電力供給を停止し、かつ蓄電池3と蓄電池用電力変換装置4とを切り離す。さらに、第3の制御回路404は、HEMS7と通信を行う第8の制御回路4097内の一部の回路を除き電源の供給を停止する、あるいは低消費電力モードに移行させる。低消費電力モードでは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のデジタル回路は入力するクロックの周波数が低くなる。なお、
図15に示すフローチャートは、蓄電池3からの充放電があり、スリープモードへは移行しない場合を示す。また、スリープモードへ移行する場合は、スリープモード移行後、
図15に示すフローチャートの処理は終了する。そして、HEMS7からスリープモード解除指示が入力されると、上述したように、蓄電池用電力変換装置4を通常起動し、蓄電池3と蓄電池用電力変換装置4を接続する図示していないリレーを接続して通常動作モードに復帰する。
【0206】
ステップS165において、第8の制御回路4097は、直流母線405の直流電圧を計測する電圧計406の計測結果に基づいて、有効電流振幅算出回路4094に有効電流の目標振幅を算出させる。有効電流波形発生回路4095が、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。有効電力の目標値が加算器4096に入力されて、蓄電池用電力変換装置4が出力する交流電流の目標値が加算器4096から出力される。なお、充放電電力量は、HEMS7から通知される充放電電力量に基づき第3の制御回路404が制御する。
【0207】
ステップS163において、無効電流振幅算出回路4092が、第2の目標実効電圧VT2と、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計410の計測結果に基づいて第4の制御回路409で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧とに基づいて、無効電流の目標振幅を算出する。有効電流振幅算出回路4094が、直流母線405の直流電圧を計測する電圧計406の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。無効電流波形発生回路4093は、無効電流の目標振幅に基づいて、無効電流の目標値を生成する。有効電流波形発生回路4095は、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。無効電流の目標値と有効電流の目標値とが加算器4096で加算されることによって、蓄電池用電力変換装置4が出力する交流電流の目標値が加算器4096から出力される。
【0208】
ステップS156において、第4の制御回路409が、分電盤6内の電力計測回路61で計測された太陽電池1の発電電力が、第1の基準電力PSを超えるか否かを判断する。太陽電池1の発電電力が、第1の基準電力PSを超える場合に(S156:YES)、処理がステップS158に進む。太陽電池1の発電電力が、第1の基準電力PS以下の場合に(S156:NO)、処理がステップS161に進む。
【0209】
ステップS158において、第4の制御回路409が、宅内配電系統10の交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2を超えているかを確認する。宅内配電系統10の交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2を超えている場合(S158:YES)、処理がステップS159に進む。宅内配電系統10の交流実効電圧が第2の閾値電圧VH2以下の場合(S158:NO)、処理がステップS161に進む。
【0210】
ステップS159において、第4の制御回路409内の第8の制御回路4097は、図示しないレジスタに無効電力モードフラグをセットして、無効電力モードに移行する。
【0211】
ステップS160において、無効電流振幅算出回路4092が、第2の目標実効電圧VT2と、宅内配電系統10の交流電圧を計測する電圧計410の計測結果に基づいて第4の制御回路409で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧とに基づいて、無効電流の目標振幅を算出する。有効電流振幅算出回路4094が、直流母線405の直流電圧を計測する電圧計406の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。無効電流波形発生回路4093は、無効電流の目標振幅に基づいて、無効電流の目標値を生成する。有効電流波形発生回路4095は、有効電流の目標振幅に基づいて、有効電流の目標値を生成する。無効電流の目標値と有効電流の目標値とが加算器4096で加算されることによって、蓄電池用電力変換装置4が出力する交流電流の目標値が加算器4096から出力される。
【0212】
ステップS161において、有効電流振幅算出回路4094が、直流母線405の直流電圧を計測する電圧計406の計測結果に基づいて、有効電流の目標振幅を算出する。有効電流波形発生回路4095が、有効電流の目標振幅に基づいて有効電流の目標値を発生する。有効電流の目標値が加算器4096を介して、蓄電池用電力変換装置4が出力する交流電流の目標値として出力される。なお、充放電電力量は、HEMS7から通知される充放電電力量に基づき第3の制御回路404が制御する。
【0213】
ステップS165、S163、S160、またはS161で交流電流の目標値が得られると、処理がステップS166に進む。
【0214】
ステップS166において、第4の制御回路409内の第8の制御回路4097が、第2のDC/AC変換回路408の制御指令値を生成し、第2のDC/AC変換回路408に出力する。第2のDC/AC変換回路408は、制御指令値が入力されると、入力された指令値に基づき、放電の場合は第2のDC/DC変換回路403から供給される直流電電力を交流電力に変換して宅内配電系統10に出力し、充電の場合は宅内配電系統10を直流電力に変換して、第2のDC/DC変換回路403を介して蓄電池3に充電する。
【0215】
ステップS167において、第3の制御回路404は、第2のDC/AC変換回路408に制御指令値が出力されると、電圧計401から出力される蓄電池3の電圧、および電流計402から出力される蓄電池3の充放電電流の計測結果に基づいて蓄電池3の充放電電力を算出する。第4の制御回路409は、宅内配電系統10に設置された電圧計410、および電流計411を用いて蓄電池3の充放電電力から出力される有効電力、および無効電力を算出する。
【0216】
ステップS168において、第4の制御回路409は、ステップS167での算出結果である蓄電池3の充放電電力、蓄電池3の充放電電力が出力する有効電力、および無効電力を図示していないメモリへ記憶する。
【0217】
ステップS169以降において、第4の制御回路409内の第8の制御回路4097は、無効電力モードを継続するかを判断する。
【0218】
ステップS169において、第8の制御回路4097は、S167で計測した無効電力が規定値TH1以下か否かを判断する。無効電力が規定値TH1以下の場合(S169:YES)、処理がステップS171に進む。無効電力が規定値TH1を超える場合(S169:NO)、処理がステップS170に進む。なお、実施の形態1では、ステップS167で計測した無効電力を用いるが、太陽電池1の場合と同様に、例えば、無効電流振幅算出回路4092から出力される無効電流の振幅を用いてもよい。
【0219】
ステップS170において、第8の制御回路4097は、蓄電池用電力変換装置4の無効電力リセットモードフラグが図示しないレジスタにセットされていた場合は、蓄電池用電力変換装置4の無効電力リセットモードフラグをクリアするとともに、第2の目標実効電圧VT2を初期値V0に戻す。そして、処理がステップS151に戻る。
【0220】
ステップS171において、第8の制御回路4097は、蓄電池用電力変換装置4の現在のモードが無効電力モードであるか確認する。蓄電池用電力変換装置4の現在のモード無効電力モードでない場合(S171:NO)、処理がステップS151に戻る。蓄電池用電力変換装置4の現在のモードが無効電力モードである場合(S171:YES)、処理がステップS172に進む。
【0221】
ステップS172において、第8の制御回路4097は、無効電力が規定値TH1以下の期間を計測する。
【0222】
ステップS173において、第8の制御回路4097は、無効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続したかを確認する。無効電電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続した場合(S173:YES)は、処理がステップS174に進む。無効電力が規定値TH1以下の期間が規定期間TH2以上継続しない場合(S173:NO)は、処理がステップS151に戻る。
【0223】
ステップS174において、第8の制御回路4097は、蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードのリセット判定を行う。
【0224】
図18は、
図16のステップS174における蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードのリセット判定の手順を表わすフローチャートである。
図19は、蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードのリセット判定方法を模式的に表わす図である。
【0225】
第8の制御回路4097は、蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードをすぐに解除するのではなく、
図19に示すように、無効電流の振幅を制御する宅内配電系統10の電圧の目標値を徐々に第2の目標実効電圧VT2から第1の目標実効電圧VT1に変化させることによって無効電力モードを解除する。
【0226】
ステップS191において、第8の制御回路4097は、現在のモードが蓄電池用電力変換装置4の無効電力リセットモードに移行しているか否かを確認する。現在のモードが蓄電池用電力変換装置4の無効電力リセットモードに移行していない場合(S191:NO)、処理がステップS192に進む。
【0227】
ステップS192において、第8の制御回路4097は、図示しないレジスタに無効電力リセットモードフラグをセットする。
【0228】
ステップS192の後、あるいはステップS1
91において
YESの場合、処理がステップS193に進む。
【0229】
ステップS193において、第8の制御回路4097は、第2の目標実効電圧VT2が第1の目標実効電圧VT1以上になったか否かを確認する。第2の目標実効電圧VT2が第1の目標実効電圧VT1以上になった場合(S193:YES)、処理がステップS194に進む。第2の目標実効電圧VT2が第1の目標実効電圧VT1未満の場合(S193:NO)、処理がステップS197に進む。
【0230】
ステップS194において、第8の制御回路4097は、第2の目標実効電圧VT2を初期値V0に戻す。
【0231】
ステップS195において、第8の制御回路4097は、図示しないレジスタにセットされている蓄電池用電力変換装置4の無効電力リセットモードフラグをリセットする。
【0232】
ステップS196において、第8の制御回路4097は、図示しないレジスタにセットされている蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードフラグをリセットする。これによって、蓄電池用電力変換装置4の無効電力モードが終了する。
【0233】
ステップS197において、第8の制御回路4097は、無効電流振幅算出回路4092で使用する第2の目標実効電圧VT2を一定量ΔVだけ増加させる。その後、処理がステップS193に戻る。
【0234】
太陽電池1の発電電力の急変、または負荷5の使用電力の急変等によって、一時的に系統電圧が低い値に戻った場合でも、第2の目標実効電圧VT2を制御することによって、無効電力モードを継続させる。日射が元に戻った場合は、無効電力による系統電圧の抑制を即実行することができるとともに、蓄電池用電力変換装置4が日射急変または負荷急変による一時的な系統電圧低下に対しても確実に対応できるとともに、無効電力モードの解除を確実に判断できる。
【0235】
以上のように、本実施の形態では、太陽電池用電力変換装置2から出力される太陽電池1の発電電力に基づき、太陽電池用電力変換装置2が系統連系規定で供されている力率が最小となる無効電力を出力しても太陽電池用電力変換装置2から出力される有効電力に抑制がかからない場合は、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力する。蓄電池用電力変換装置4を利用されないので、不必要な消費電力を発生させることなしに宅内配電系統10の電圧上昇を抑制できる。
【0236】
太陽電池用電力変換装置2から出力される有効電力に抑制がかかると予測される場合は、蓄電池用電力変換装置4が優先的に無効電力を出力する。太陽電池用電力変換装置2からは有効電力のみ出力されるので、太陽電池1に対して出力抑制をかけることなく、発電電力を全て太陽電池用電力変換装置2が出力することができる。
【0237】
蓄電池用電力変換装置4が最大の無効電力を出力しても宅内配電系統10の系統電圧の交流実効電圧の抑制ができない場合は、太陽電池用電力変換装置2も無効電力を発生するので、系統電圧の上昇を抑制できる。
【0238】
各需要家宅内に配置された分散電源によって商用系統17の電圧上昇を抑制できるので、商用系統17にはSVCまたは系統用蓄電池等の高価な配電系統安定化設備を配置する必要がなく、または配電系統安定化設備を配置するにしても小容量化できる。
【0239】
実施の形態2.
実施の形態2では、第2の閾値電圧VH2を太陽電池1の発電電力に応じて切り換える。太陽電池1の発電電力が、出力抑制のかかりにくいほど低い場合に、第2の閾値電圧VH2を高く設定することによって、蓄電池用電力変換装置4を待機モードに移行しやくする。これによって、待機電力を抑制できる。一方、太陽電池1の発電電力が、出力抑制のかかりやすいほど高くて、無効電力による系統電圧抑制が必要な場合には、第2の閾値電圧VH2を低く設定することによって、蓄電池用電力変換装置4が確実に無効電力を発生することができる。
【0240】
具体的には、第8の制御回路4097は、分電盤6内の電力計測回路61で計測された太陽電池1の発電電力が閾値THX以上の場合に、第2の閾値電圧VH2をV1とする。第8の制御回路4097は、分電盤6内の電力計測回路61で計測された太陽電池1の発電電力が閾値THX未満の場合に、第2の閾値電圧VH2をV2とする。V2>V1である。
【0241】
あるいは、第8の制御回路4097は、分電盤6内の電力計測回路61で計測された太陽電池1の発電電力に対して、第2の閾値電圧VH2を線形に減少させてもよい。
【0242】
実施の形態3.
実施の形態1では、第2の目標実効電圧VT2を第1の目標実効電圧VT1よりも低く設定したが、これに限るものではない。
【0243】
本実施の形態では、HEMS7は、第1の目標実効電圧VT1を第2の目標実効電圧VT2よりも低く設定する。このように設定した場合、太陽電池用電力変換装置2が無効電力の発生を開始すると、蓄電池用電力変換装置4からの無効電力よりも優先して無効電力が宅内配電系統10に供給されるようになる。これにより、太陽電池1の出力抑制が迅速に開始される。
【0244】
一般に、蓄電池用電力変換装置4が出力する無効電力で系統電圧の上昇を抑えられない場合、基本的には、太陽電池1の発電電力が多すぎるため、蓄電池用電力変換装置4の無効電力制御では系統電圧の上昇を抑えることができない場合が想定される。よって、第1の目標実効電圧VT1を第2の目標実効電圧VT2よりも低く設定することによって、蓄電池用電力変換装置4の無効電力制御で系統電圧の上昇が抑えられない場合は、太陽電池用電力変換装置2の無効電力の出力を優先させ、自発的に太陽電池1の出力の抑制を行うことによって、配電系統の電圧の安定化が迅速に行われる。
【0245】
具体的には、HEMS7は、系統電圧が上昇した場合、迅速に太陽電池1の出力抑制を行う必要がある場合は、本実施の形態のように、第1の目標実効電圧VT1を第2の目標実効電圧VT2よりも低く設定する。一方、HEMS7は、配電系統の余裕があり、太陽電池1の発電電力を優先させる場合には、実施の形態1のように、第2の目標実効電圧VT2を第1の目標実効電圧VT1よりも低く設定する。また、その中間であれば、第1、および第2の系統電圧の目標値を同じにしても良い。
【0246】
変形例.
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0247】
(1)実施の形態1では、各需要家宅内に、創エネ機器111と蓄エネ機器333とを設置するものとしたが、これに限定されるものではない。各需要家宅内には、どちらか一方を有するものでもよい。
【0248】
この場合には、創エネ機器111のみを備える需要家設備18と、蓄エネ機器333のみを備える需要家設備18がペアを構成する。
【0249】
たとえば、需要家設備18−1が、創エネ機器111を備え、需要家設備18−2が蓄エネ機器333を備える場合には、需要家設備18−1と需要家設備18−2がペアを構成する。需要家設備18−2内の蓄電池用電力変換装置4は、需要家設備18−1内の分電盤6内の電力計測回路61から出力される太陽電池1の発電電力の計測結果をHEMS7およびCEMS15を通じて取得するようにすればよい。
【0250】
(2)実施の形態1では、創エネ機器111が、自然エネルギーを活用する分散電源としての太陽電池1を含むものとしたが、これに限るものではない。例えば、創エネ機器111が、風力発電装置、または燃料電池を含むものとしてもよい。
【0251】
(3)実施の形態1では、蓄電池3として据置バッテリを用いたが、これに限るものではない。蓄電池3として、電気自動車のバッテリを用いてもよい。
【0252】
(4)蓄電池3としてリチュウムイオンバッテリを用いる場合は、バッテリ側に内蔵されたバッテリ管理ユニットが、蓄電量、充放電の可否、充電時の最大充電電流などを管理し、第3の制御回路404に通知するものとしてもよい。
【0253】
(5)実施の形態1では、蓄エネ機器333が、蓄電池3を含むものとしたが、これに限るものではない。蓄エネ機器333が、電気車両、ハイブリッド車両、または燃料電池車両に接続される電力変換装置を含むものとしてもよい。その際、無効電力を発生させるだけなので、電気車両、ハイブリッド車両、または燃料電池車両が電力変換装置に接続されていなくてもよい。
【0254】
(6)実施の形態1では、蓄電池3として1台の定置型蓄電池を使用する場合を前提としたが、これに限るものではない。2台以上の複数の蓄電池、あるいは他の分散電源機器と連携して使用してもよい。複数台の蓄電池を連携して使用する場合、その中の1つ、あるいは複数が、電気車両、ハイブリッド車両、または燃料電池車両に接続される電力変換装置であってもよい。
【0255】
(7)実施の形態1では、各種制御をハードウエアで実施するものとしたが、これに限定されるものではない。各種の制御のための全ての回路、あるいは一部の回路をCPU上で動作するソフトウエア実現してもよい。
【0256】
(8)実施の形態1では、
図18のステップS197において、予め定められた電圧幅で第2の目標実効電圧VT2を第1の目標実効電圧VT1に近づけていくように制御したが、これに限定されるものではない。予め定められた時間で第2の目標実効電圧VT2を第1の目標実効電圧VT1に近づけていくよう制御してもよい。
【0257】
(9)実施の形態1では、宅内配電系統10の交流電圧を検出することによって、連系点Nの交流電圧を検出したが、これに限るものではない。例えばスマートメータ8に入力される交流電圧、柱上トランス9の直下などで計測された交流電圧、または商用系統17の電圧を連系点Nの交流電圧としてもよい。
【0258】
(10)実施の形態1では、蓄電池用電力変換装置4が、CEMS15から送信される蓄電池用制御情報に含まれる第1の基準電力PSを表わす情報を取得したが、これに限定されるものではない。
【0259】
蓄電池用電力変換装置4が、太陽電池用電力変換装置2の定格電力、および系統連系規定によって定められた力率を表わす情報をCEMS15などから取得して、第1の基準電力PSを算出するものとしてもよい。
【0260】
(11)実施の形態1では、
図15のステップS162およびS156において、分電盤6内の電力計測回路61は、図示していない電圧計と電流計を用いて計測された太陽電池用電力変換装置2が出力する有効電力を太陽電池1の発電電力として算出したが、これに限定するものではない。太陽電池用電力変換装置2が出力する実効電力(例えば10秒間の平均値)を太陽電池1の発電電力として算出してもよい。この場合、第1の基準電力PSおよび第2の基準電力PEも変更する必要がある。あるいは、第1の制御回路204が、電圧計201から出力される太陽電池1の電圧、および電流計202から出力される太陽電池1から供給される電流の計測結果に基づいて、太陽電池1の発電電力を算出してもよい。
【0261】
上記の開示は、以下のような発明も含む。
(請求項A)
複数の分散電源の各々が連系点で商用系統と連系される分散電源システムであって、
前記複数の分散電源
の各々は、創エネ機器と蓄エネ機器とを含み、
前記創エネ機器は、創エネ装置と、前記創エネ装置の直流電力を交流電力に変換する第1の電力変換装置とを含み、
前記蓄エネ機器は、蓄電池と、前記蓄電池の直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換装置とを含み、
前記第1の電力変換装置は、前記連系点の交流電圧の実効値が第1の閾値電圧を超えているときに、前記連系点の電圧が第1の目標実効電圧となるように、出力する無効電力を制御し、
前記第2の電力変換装置は、前記創エネ機器の発電電力
が第1の基準電力を超え、かつ前記連系点の交流電圧の実効値が第2の閾値電圧を超えている場合に、前記連系点の電圧が第2の目標実効電圧となるように、出力する無効電力を制御する、分散電源システム。
【0262】
(請求項B)
前記第2の電力変換装置は、前記創エネ機器の発電電力が前記第1の基準電力以下の場合に、前記蓄電池から無効電力を出力させない、請求項A記載の分散電源システム。
【0263】
(請求項C)
系統連系規定において、力率が一定値以上と定められている場合は、前記第1の基準電力は、前記第1の電力変換装置の定格電力と前記一定値とを乗算した値以下の数値である、請求項Aに記載の分散電源システム。
【0264】
(請求項D)
前記第1の閾値電圧は、前記第2の閾値電圧よりも大きい、請求項A記載の分散電源システム。
【0265】
(請求項E)
前記第1の電力変換装置は、前記交流電圧の実効値と、第1の目標実効電圧との差に基づいて、無効電流の目標振幅を求め、
前記第2の電力変換装置は、前記交流電圧の実効値と、第2の目標実効電圧との差に基づいて、無効電流の目標振幅を求め、
前記第2の目標実効電圧は、前記第1の目標実効電圧よりも小さい、請求項A記載の分散電源システム。
【0266】
(請求項F)
前記第1の電力変換装置は、前記交流電圧の実効値と、第1の目標実効電圧との差に基づいて、無効電流の目標振幅を求め、
前記第2の電力変換装置は、前記交流電圧の実効値と、第2の目標実効電圧との差に基づいて、無効電流の目標振幅を求め、
前記第2の目標実効電圧は、前記第1の目標実効電圧よりも大きい、請求項A記載の分散電源システム。
【0267】
(請求項G)
前記第2の電力変換装置は、前記蓄電池が前記無効電力を出力しているときに、前記創エネ機器の発電電力が前記第1の基準電力よりも小さな第2の基準電力以下に変化した場合に、前記蓄電池の前記無効電力の出力を停止させる、請求項A記載の分散電源システム。
【0268】
(請求項H)
前記第1の電力変換装置は、CEMS(Community Energy Management System)から送信される前記第1の閾値電圧、および前記第1の目標実効電圧を含む第1の制御情報を取得し、
前記第2の電力変換装置は、前記CEMSから送信される前記第1の基準電力、前記第2の基準電力、前記第2の閾値電圧、および前記第2の目標実効電圧を含む第2の制御情報を取得する、請求項G記載の分散電源システム。
【0269】
(請求項I)
各需要家宅に、前記創エネ機器と、前記蓄エネ機器とが設置され、
前記CEMSから送信される前記第1の制御情報および前記第2の制御情報は、需要家宅に応じて異なる、請求項H記載の分散電源システム。
【0270】
(請求項J)
前記第2の電力変換装置は、前記蓄エネ機器が出力する無効電力が規定値以下となる状態が規定期間継続したときには、前記第2の目標実効電圧を一定の電圧幅で徐々に前記第1の目標実効電圧まで変化させる、請求項A記載の分散電源システム。
【0271】
(請求項K)
前記創エネ機器の発電電力に応じて、前記第2の閾値電圧が変化する、請求項A記載の分散電源システム。
【0272】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。