特許第6972208号(P6972208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972208プシコースを含有するシロップ組成物、及びこれを含む食品
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  • 特許6972208-プシコースを含有するシロップ組成物、及びこれを含む食品 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972208
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】プシコースを含有するシロップ組成物、及びこれを含む食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/30 20160101AFI20211111BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20211111BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20211111BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20211111BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20211111BHJP
【FI】
   A23L29/30
   A23L29/256
   A23L29/262
   A23L29/269
   A23L29/231
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-31358(P2020-31358)
(22)【出願日】2020年2月27日
(62)【分割の表示】特願2018-542694(P2018-542694)の分割
【原出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2020-99339(P2020-99339A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年3月25日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0028520
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】パク,ユンギョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ソンベ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ドンチョル
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/075473(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/177522(WO,A1)
【文献】 特開2013−247872(JP,A)
【文献】 特開2014−027926(JP,A)
【文献】 特開2014−155466(JP,A)
【文献】 特開2002−345410(JP,A)
【文献】 特開平02−145158(JP,A)
【文献】 特開平07−046965(JP,A)
【文献】 特開2006−141226(JP,A)
【文献】 特開2006−149211(JP,A)
【文献】 特表2010−527611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J,A21D,A23C,A23G,
A23L,C13B,C13K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/
BIOTECHNO/CAplus/
SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プシコースを含むシロップ組成物の粘度、味及び保存安定性からなる群より選択される少なくとも1つの特性が改善されたシロップ組成物の製造方法であって、
前記シロップ組成物にガム、ペクチン又はその組み合わせを適用することを含み、
前記シロップ組成物内に前記ガム、ペクチン又はその組み合わせは、前記プシコース固形分100重量部に対して0.1〜0.5重量部で含まれ、
前記ガムは、キサンタンガム、カラギーナンガム、又はセルロースガムであり、
前記シロップ組成物の粘度が600〜7000cPである製造方法。
【請求項2】
前記シロップ組成物に塩(salt)をさらに適用することを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塩の適用量は、プシコース固形分100重量部を基準に0.05〜5重量部である、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塩は塩化ナトリウム(sodium chloride)である、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項5】
前記特性が改善されたシロップ組成物は、結晶化(crystallization)が抑制されている、請求項1ないしのいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プシコースを含有するシロップ組成物、及びこれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖は人類が発見した最古の天然甘味食品であり、甘みを出す最良の甘味素材として使用されている。砂糖は直接人間のエネルギー源になる食品であり、甘味質が優秀であるため様々な分野で広く使用されている。しかし、砂糖は結晶化する特性があって、食品で添加された後に所定時間が経過すると、食品が固まる問題がある。また、高カロリー(約400kcal/100g)のため過剰摂取時に肥満、糖尿病など成人病の原因になるという研究結果があり、最近はWHOで総糖類の摂取を全カロリーの10%未満に制限して、砂糖に代替できる甘味素材に対する消費者の要求が存在する。
【0003】
そして、液体状態で食品における溶解度が高く、結晶化度が低く(すなわち、保存安定性が高い)、所定粘度を有して食品の水分と味を保持し、調理の便利性とツヤを付与する液状糖(例えば、水飴、料理糖、オリゴ糖など)が砂糖の代替材としてよく使用される傾向にある。しかし、液状糖のうち水飴(約310kcal/100g)及び料理糖(約310kcal/100g)はカロリー低減効果が非常に低く、カロリーを抑えたオリゴ糖(約250kcal/100g)は糖度が低いので砂糖と同じ甘さを出すために多量を使用した場合は、結果的に砂糖と同様のカロリーを摂取することになる問題がある。
【0004】
最近、砂糖の約70%の甘さを持ちながらもほぼゼロカロリーであるプシコースが砂糖の代替材として関心を受けているが、低粘性の特性のため添加量の調節が容易ではなく、調理時に共に入れた食品と調和せず、使用利便性及び調理適性が低下する。プシコースの粘度を増加させるために加熱時間を長くすると過度の加熱によるカラメル化反応で着色が発生し、焦げた味を誘発して官能品質が低下する恐れがある。また、後味で苦味とヒリヒリ感の味が存在して食品の風味が低下し、時間経過によって結晶化度が高くて保存安定性が脆弱であり、砂糖に代替する液状糖としての活用価値が足りない現状である。
【0005】
このような背景で、本発明者らはプシコースにガムやペクチンを添加することにより、従来市販されている液状糖と類似な物性(例えば、粘度、ツヤなど)を有するようになって、使用利便性と調理適性が増加し、結晶析出が低下して保存安定性が増加し、異味と異臭が減少し、選好度が著しく増加して官能品質が改善されることを確認し、本出願を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の目的は、プシコースを含むシロップ組成物を提供することである。
【0007】
本出願の他の目的は本出願のシロップ組成物を含む食品を提供することである。
【0008】
以下、本出願の内容についてより詳細に説明する。本明細書に記載のない内容は本出願の技術分野または類似分野における熟練者であれば十分に認識と類推できるのでその説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の目的を達成するため本出願の一態様は、ガム(Gum)、ペクチン(pectin)またはその組み合わせ;及びプシコースを含むシロップ組成物を提供する。
【0010】
具体的に、本出願のシロップ組成物は、粘度が600cP〜7000cPであり、より具体的に660〜6800cP、880〜3300cP、780〜3360cP、840〜3280cP、または720〜6460cPである。シロップ組成物の粘度が600cP未満または7000cPを超える場合、調理の利便性と官能品質が低下する。すなわち、シロップの粘度が600cP未満の場合、粘性が弱すぎて調理利便性が低下し(すなわち、添加量の調節が困難)、食品の水分と味の保存が難しくて官能品質も低下する。シロップの粘度が7000cPを超える場合には、粘性が強すぎて調理利便性が減少し、ツヤが低下して官能品質も低下することになる。下記の実施例で示すように、本出願のシロップ組成物は、約200cP程度の液状プシコースの粘度をカラメル化反なしで既存の液状糖の粘度範囲まで上昇させて、使用便利性と調理適性を改善し、ツヤは維持して官能品質の低下を防止することを確認した。
【0011】
本明細書における用語「プシコース」は、自然界に微量だけ存在する天然糖類のケトヘキソースの一種であり、フルクトースのC−3エピマーを意味する。
【0012】
本出願のプシコースは固状または液状であり、具体的に液状のプシコースである。
【0013】
また、本出願のプシコースはシロップ組成物の固形分100重量部を基準に、5〜99重量部、10〜99重量部、30〜99重量部、50〜99重量部、70〜99重量部、90〜99重量部、93〜99重量部、5〜97重量部、10〜97重量部、30〜97重量部、50〜97重量部、70〜97重量部、90〜97重量部、93〜97重量部、5〜95重量部、10〜95重量部、30〜95重量部、50〜95重量部、70〜95重量部、90〜95重量部、93〜95重量部、または95重量部である。
【0014】
本明細書における用語「ガム(Gum)」は、水溶性多糖類であり、例えば、アラビアガム、セルロースガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、ガティガム、タラガム、コンニャクガム、キサンタンガム、カードラン、ジェラン、アルジン、カラギーナンが前記ガムに含まれるが、これらに限定されない。具体的に、本出願のガムはセルロースガム、カラギーナンガム、キサンタンガムである。
【0015】
本明細書における用語「ペクチン」は、D−ガラクツロン酸単位のα−1,4−結合で構成されたコロイド性の多糖類を意味する。本出願のペクチンは、例えばLMペクチン[Low Methoxyl pectin、DE(degree of esterification)<50%]、HMペクチン[High Methoxyl pectin、DE>50%]、アミドペクチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
本出願のシロップ組成物において、本出願のガム、ペクチンまたはその組み合わせは、プシコース固形分100重量部に対して、0.05〜1重量部で含まれ、具体的に、0.05〜0.5重量部、0.05〜0.3重量部、0.05〜0.2重量部、0.1〜0.5重量部、0.1〜0.3重量部、0.1〜0.2重量部、0.2〜0.5重量部、0.2〜0.3重量部、または0.2重量部で含まれる。ペクチンはプシコース固形分100重量部に対して、0.05〜1重量部、0.05〜0.5重量部、0.05〜0.3重量部、0.05〜0.2重量部、より具体的には、0.1〜0.5重量部で含まれる。
【0017】
本出願のガムまたはペクチンは粉末、結晶、または液状の形態であるが、これらに限定されない。
【0018】
本出願のシロップ組成物は、ガム(Gum)、ペクチン(pectin)またはその組み合わせ;及びプシコースを含むシロップ組成物に塩(salt)をさらに含むことができる。本出願の塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム、およびコハク酸ナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。具体的に、使用できる塩は天日塩、再製塩、焼塩、溶融塩、精製塩および加工塩などが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本出願の塩は、プシコース固形分100重量部に対して、0.05〜5重量部で含まれ、具体的に、0.05〜3重量部、0.05〜2重量部、0.05〜1重量部、0.05〜0.7重量部、0.05〜0.5重量部、0.1〜5重量部、0.1〜3重量部、0.1〜2重量部、0.1重量部〜1重量部、0.1〜0.7重量部、0.3〜5重量部、0.3〜3重量部、0.3〜2重量部、0.3〜1重量部、0.3〜0.7重量部、0.5〜5重量部、0.5〜3重量部、0.5〜2重量部、0.5〜1重量部、0.5〜0.7重量部または0.5重量部で含まれる。
【0020】
本出願のシロップ組成物は、甘味料、合成保存料、天然保存料、酸味調節剤またはその組み合わせをさらに含むことができる。具体的に前記甘味料は、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、砂糖、飴、糖シロップ、糖アルコール、オリゴ糖、タガトース、キシロース、蜂蜜、高甘味料(例えば、ステビオール配糖体、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、羅漢果(ラカンカ)抽出物、ソーマチン、シトラス抽出物、シクラメート、ネオテーム、グリチルリチン(甘草)、アリテーム及びフィロズルチンなど)、食物繊維及びデキストリンなどが含まれる、これらに限定されない。前記合成保存料は、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸エチルが含まれることがあるが、これらに限定されない。前記天然保存料は、例えば、グレープフルーツ種子抽出物、柑橘抽出物、複合黄岑(おうごん)抽出物、乳酸菌複合粉末及びポリリシンが含まれるが、これらに限定されない。前記pH調節剤は、例えば、クエン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、および第3リン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本出願の他の態様は、ガム(Gum)、ペクチン(pectin)またはその組み合わせをプシコースに適用するステップを備える、シロップ組成物の製造方法を提供する。
【0022】
本出願における用語「適用」は、混合、添加、コーティング、噴霧などの実施が含まれるが、これらに限定されない。具体的に本出願の適用は、混合または添加である。
【0023】
本出願の製造方法は、プシコースに塩を適用するステップをさらに備えることができる。本出願の塩の適用は、本出願のガム、ペクチンまたはその組み合わせをプシコースに適用するステップの前、後、または同時に、適用することができる。
【0024】
本出願の製造方法で、本出願のシロップ組成物とプシコース、ガム、ペクチン、塩、粘度などが共通事項であるので、共通事項の記載の繰り返しを避けるために省略する。
【0025】
本出願のさらに他の様態は、本出願のガム(Gum)、ペクチン(pectin)またはその組み合わせをプシコースに適用するステップを含む、シロップ組成物の粘度、味質、保存安定性からなる群より選択される一つ以上の特性の改善方法を提供する。
【0026】
具体的に本出願における粘度の改善方法は、粘度を600〜7000cPの範囲に調節する方法である。また、本出願の味質改善方法は、異味および/または異臭のマスキング方法であり得る。更に、本出願における保存安定性の改善方法は、結晶析出の抑制方法であり得る。
【0027】
本出願の改善方法は、プシコースに塩を適用するステップをさらに備えることができる。本出願の塩の適用は、本出願のガム、ペクチンまたはその組み合わせをプシコースに適用するステップの前、後、または同時に、適用する。
【0028】
本出願の改善方法で、本出願のシロップ組成物およびその製造方法とプシコース、ガム、ペクチン、塩、粘度、ガム、ペクチンまたはその組み合わせを適用するステップ、塩を適用するステップなどが共通であるので、共通事項の記載は繰り返しを避けるために省略する。
【0029】
本出願のさらに他の様態は、本出願のシロップ組成物を含む食品を提供する。本出願の食品は、一般食品、健康食品及び医療用(または、患者用)の食品を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本出願のシロップ組成物を食品に使用する場合、前記シロップ組成物をそのまま添加することや他の食品または食品成分と一緒に使用することができ、通常の方法で適切に使用する。有効成分の混合量は使用目的(予防、健康または治療的処置)に従って適切に決定する。
【0031】
本出願の食品の例として、肉類、ソーセージ、パン、ケーキ、チョコレート、キャンディー、スナック、お菓子(例えば、クッキー、クラッカーなど)、ピザ、麺(例えば、ラーメン等)、チューインガム、アイスクリームなどの乳製品、様々なスープ、ケチャップ、ソース、グレービー(gravies)、ドレッシング、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがある。
【0032】
本出願の食品は様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分で含有することができる。前述した天然炭水化物は、グルコース及びフルクトースなどの単糖類、マルトースおよびスクロースなどの二糖類、デキストリンおよびシクロデキストリンなどの多糖類、キシリトール、ソルビトール、およびエリスリトールなどの糖アルコールである。甘味料として、ソーマチン及びステビア抽出物などの天然甘味料、サッカリンおよびアスパルテームのような合成甘味料などを使用する。前記天然炭水化物の割合は、本出願の食品100ml当たり、一般的に約0.01〜0.20g、具体的に約0.04〜0.10gである。
【0033】
その他、本出願の食品は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。また、本出願の食品組成物は、天然果実ジュース、果実ジュース飲料、野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。これらの成分は、単独または組み合せて使用する。これらの添加剤の割合は、本出願の食品100重量部当たり、0.01〜0.20重量部の範囲から選択する。
【発明の効果】
【0034】
本出願は、ガム、ペプチン、またはその組み合わせが含まれたプシコース含有シロップ組成物を提供し、ツヤを維持しながらもプシコースの低保存安定性及び低粘度を改善して調理利便性を高めるとともに、プシコースの異味および/または異臭を効果的にマスキングして官能品質を改善する効果がある。これにより、本出願のシロップ組成物は、砂糖及び従来の液状糖に代替して、様々な食品に応用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本出願の実施形態に係る組成物の粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本出願の実施例をもって詳細に説明するが、これは本出願の理解を容易にするためであり、本出願はこれに限定されることではない。
【0037】
実施例1ないし25:プシコースを含有したシロップ組成物の製造
実施例1ないし実施例25において、プシコースを含有したシロップの組成物は、液状プシコース[液状プシコース(固形分70〜76重量%、固形分100重量部に対してプシコース95重量部、フルクトース5重量部)、CJ第一製糖]固形分100重量部に対してセルロースガム(Walocel 100PA、ダイン素材)、カラギーナン(Satiagel ABN 26、SKT TRADING)、キサンタンガム(キサンタンガム、ダイン素材)、ペクチン(GENU Explorer pectin 65CS、(株)ジュピターインターナショナル)及びデキストリン(CJ第一製糖)のそれぞれを固形分として0.05、0.10、0.20、0.50、および1.00重量で部混合し、均質化して製造した。
【0038】
比較例:市販の液状糖
当業界で砂糖に代替して汎用的に使用される市販の液状糖を比較例として使用した。
[比較例1]プシコース
液状プシコース(固形分70〜76重量%、固形分100重量部に対してプシコース95重量部、フルクトース5重量部、CJ第一製糖)を100重量%で使用した。
[比較例2]料理糖
市販の料理糖[白雪料理糖(原糖、オリゴ糖)、CJ第一製糖]を100重量%で使用した。
[比較例3]オリゴ糖
食物繊維が含有された市販のオリゴ糖[白雪フラクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖固形分のうち55%以上含有)、CJ第一製糖]を100重量%で使用した。
[比較例4]水飴
市販の水飴[麦芽イオン水飴82(マルトース45%以上)、CJ第一製糖]を100重量%で使用した。
【0039】
[実験例1]:プシコースを含有したシロップ組成物の粘度と性状を確認
製造された前記実施例1ないし実施例35、及び比較例1ないし4の粘度をspindle NO. 5、RPM 20及び25の条件で粘度計(Brookfield DV−II+ Pro Viscometer、Brookfield engineering laboratories、INC.)を用いて測定し、肉眼で性状を確認した。
【0040】
その結果、下記の表1と図1で示すように、比較例1に比べて実施例1ないし実施例20の粘度と性状において有意に改善されることが分かる。具体的に、プシコース固形分100重量部に対してセルロースガム及びペクチンが、それぞれ0.1〜0.5重量部で混合されたシロップ組成物(実施例2ないし4及び実施例17ないし19)、カラギーナンが0.2〜0.5重量部で混合されたシロップ組成物(実施例8ないし9)、キサンタンガムが0.05〜0.2重量部で混合されたシロップ組成物(実施例11ないし13)の粘度が従来市販の液状糖の粘度(比較例2ないし4は660〜6800cP)まで増加し、ツヤが適切でありながら粘性も適切になることで、既存の液状プシコースの短所として指摘された低粘性の物性が改善され、市販の液状糖と同様の性状を有することを確認した。ただし、デキストリンを添加したプシコース含有シロップ組成物である実施例21ないし25は、添加量による粘度の改善効果が非常に少なく粘性も弱いことを確認した。
【表1】
【0041】
[実験例2]:結晶析出の有無を測定
プシコース含有シロップ組成物における結晶析出の有無とその程度を測定するために、実施例1ないし実施例20、及び比較例1〜4のシロップ組成物をそれぞれ100mlずつサンプリング後、結晶析出を加速させるため各サンプルに種結晶(seed crystal)を0.5重量%添加した。プシコースを含む実施例1ないし20及び比較例1のシロップ組成物において、種結晶として結晶プシコース(純度99%、CJ第一製糖)を使用した。料理糖、オリゴ糖および水飴をそれぞれ含んでいる比較例2ないし4の種結晶として、結晶グルコース(99%、CJ第一製糖)を使用した。結晶析出を加速させるため、前記サンプル各10個ずつを食品公典の冷蔵条件に準じて7条件で保管し、8週間にわたって一ヶ月(4週)の間隔で結晶析出の有無を肉眼で観察した。
【0042】
その結果、下記に表2で示すように、比較例1に比べて実施例1ないし実施例20のシロップ組成物で結晶析出が著しく抑制されることを確認した。特に、ガムとペクチンをそれぞれ0.1重量部以上を添加した時に、市販の液状糖である比較例2〜4に比べて同等以上の結晶析出防止の効果を確認した。
【表2】
【0043】
[実験例3]:官能評価
前述した実施例1ないし20、および比較例1ないし3のシロップ組成物を下記式1を用いて、それぞれ10Brixの濃度に希釈して官能評価のための試料として用いた。
【0044】
<式1>
原液サンプルのBrix×原液サンプルの重量=希釈サンプルのBrix×(原液サンプルの重量+精製水の重量)
*Brix:溶液100g中に溶解された固形分(糖)の量(g)
前記各々の各試料を用いて、訓練されたパネル15名を対象に、異味及び異臭の強度、ボディ感、選好度の項目に対して官能評価を行い、その結果を表3で5点尺度法(5:非常に高い、4:高い、3:普通、2:弱い、1:非常に弱い)で評価し、その平均を表した。
[官能評価における用語の定義]
*異味及び異臭:試料本来の香味ではない異質の程度
*ボディ感:試料を口に中に含んだ後、又は飲み込んだ後に、口内の全体に感じられる総合的な味の強度
*選好度:個人的嗜好度
【0045】
その結果、下記の表3に示すように、液状プシコース(比較例1)に比べてセルロースガム、カラギーナン、キサンタンガム、およびペクチンがそれぞれ添加されたプシコースシロップ組成物(実施例1ないし20)は、異味及び異臭が著しく減少し、ボディ感及び選好度は有意に増加し、官能の改善を確認した。ただし、既に商用化された市販の液状糖である比較例2と比較例3に比べて選好度はやや低いことを示した。
【表3】
【0046】
[実験例4]:塩添加によって官能のさらなる改善を確認
液状プシコースにガムまたはペクチンを添加する場合、比較例1に比べて粘性と官能の改善があるが、既存市販の液状糖(比較例2及び比較例3)に比べて選好度がやや低く評価されたので(実験例4)、選好度を高めるために食塩を添加して官能改善の追加実験を行った。
【0047】
4−1:塩を添加したプシコースシロップ組成物の製造
プシコース100重量部にセルロースガム、カラギーナンガム、キサンタンガム、およびペクチンを固形分として、それぞれ0.2重量部を混合及び均質した後、食塩[本塩(ボンソグム、塩化ナトリウム99%以上)、ハンジュソグム]0.05、0.5、2および5重量部をそれぞれ添加した後に混合及び均質化して、実施例26ないし実施例41のシロップ組成物を製造した。
【0048】
4−2:塩を添加したプシコースシロップ組成物の官能評価
実施例26ないし実施例41および比較例1〜3を前記実験例3の式1を用いて、それぞれ10Brix濃度に希釈し、試料として使用した。
【0049】
前記の各試料を用いて、訓練されたパネル15名を対象に、異味及び異臭の強度、ボディ感、選好度の項目に対して官能評価を行い、その結果を表4で5点尺度法(5:非常に高い、4:高い、3:普通、2:弱い、1:非常に弱い)で評価し、その平均を表した。
【0050】
その結果、プシコース含有シロップ組成物に食塩を0.05〜5重量部の混合した場合、食塩を添加する前のプシコース含有シロップ組成物(実施例1ないし20)よりも、異味及び異臭、ボディ感と選好度が著しく改善され、市販の液状糖(比較例2ないし比較例3)と同様の水準を示し、ペクチンを添加したプシコース含有シロップ組成物は食塩に添加によって市販の液状糖以上の選好度を示すことが確認された。
【表4】
図1