特許第6972221号(P6972221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972221
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】磁気抵抗センサ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20211111BHJP
   G11B 5/31 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 43/12 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 43/10 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G11B5/39
   G11B5/31 A
   H01L43/08 Z
   H01L43/12
   H01L43/10
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-71896(P2020-71896)
(22)【出願日】2020年4月13日
(62)【分割の表示】特願2018-516625(P2018-516625)の分割
【原出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2020-115404(P2020-115404A)
(43)【公開日】2020年7月30日
【審査請求日】2020年4月13日
(31)【優先権主張番号】15171162.9
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517431528
【氏名又は名称】アイエヌエル−インターナショナル、イベリアン、ナノテクノロジー、ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】INL − INTERNATIONAL IBERIAN NANOTECHNOLOGY LABORATORY
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】リカルド、アレシャンドレ、デ、マトス、アントゥネス、フェレイラ
(72)【発明者】
【氏名】エルビラ、ペレス、デ、コロシア、パス
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−286340(JP,A)
【文献】 特開2003−086862(JP,A)
【文献】 特開2006−228326(JP,A)
【文献】 特開2000−353307(JP,A)
【文献】 特開2008−299995(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0187591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/39
G11B 5/31
H01L 43/08
H01L 43/12
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気感知層と、
磁気基準層と、
前記磁気感知層と前記磁気基準層との間のトンネル・バリア層と、
反強磁性材料の層を有し、前記磁気感知層と交換結合された感知交換層と、
反強磁性材料の層を有し、前記磁気基準層と交換結合された基準交換層と、
を備え、
外部磁場が不在の場合には、
前記磁気基準層を固定する交換バイアスが、基準方向に沿って存在し、
前記磁気感知層を固定する交換バイアスが、前記基準方向と直交する第1の方向に沿って存在し、
前記磁気感知層の結晶一軸異方性の軸が、前記第1の方向と平行である、磁気抵抗センサ。
【請求項2】
前記磁気感知層が、1:1まで小さくなり得るアスペクト比によって画定される寸法を有する、請求項1に記載の磁気抵抗センサ。
【請求項3】
前記磁気基準層が、人工反強磁性材料を用いて実装される、請求項1または2に記載の磁気抵抗センサ。
【請求項4】
前記磁気感知層が、1ナノメートル未満の厚さを有する薄い非磁性材料によって分離された2つの強磁性材料で作られている、請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気抵抗センサ。
【請求項5】
1ナノメートル未満の厚さを有する薄い非磁性層が、前記磁気感知層と前記感知交換層との間に位置決めされている、請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気抵抗センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、磁気抵抗センサにおける自由層バイアスに関し、より詳細には、感知層の磁気異方性と同じ方向に沿って感知層の直交バイアスを提供するインスタック・バイアス層を有する磁気トンネル接合センサの作製に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜多層スタックを基礎とし、巨大な磁気抵抗効果またはトンネル磁気抵抗効果を利用する磁気抵抗センサは、基準強磁性層(RL)と感知強磁性層(SL)との磁気モーメント間の相対方位に依存する電気抵抗を有する。基準強磁性層の磁気モーメントは、通常、マンガン−イリジウム(IrMn)またはマンガン−白金(PtMn)などの反強磁性材料との界面交換結合によって固定される。この結合が、好適な基準方向を画定し、この基準方向に沿って基準層が強く固定される。センサの抵抗値は、外部磁場が不在であり、感知層の磁気モーメントが基準方向に対して90度である、すなわち直交方向に沿っている場合には、基準磁気層に沿って印加される磁場に対して線形に変化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の態様によると、磁気抵抗センサが提供される。この磁気抵抗センサは、磁気感知層と、磁気基準層と、磁気感知層と磁気基準層との間のトンネル・バリア層とを備える。この磁気抵抗センサは、また、それぞれが反強磁性材料の層を有する感知交換層と基準交換層とを備える。感知交換層は、磁気感知層と交換結合される。同様に、基準交換層は、磁気基準層と交換結合される。さらに、この磁気抵抗センサは、外部磁場が不在の場合には、基準層を固定する交換バイアスが基準方向に沿って存在し、感知層を固定する交換バイアスが基準方向と直交する第1の方向に沿って存在し、感知層の磁気異方性が第1の方向と平行であるように、構成されている。
【0004】
例示的な実装では、基準方向に基準層を固定する交換バイアスと、基準方向と直交する第1の方向に感知層を固定する交換バイアスと、第1の方向と平行な感知層の磁気異方性とが、磁気抵抗センサの幾何学的形状と独立に、達成される。こうして、線形性が改善された磁気抵抗センサが、提供される。
【0005】
本開示のさらなる態様によると、磁気抵抗センサを作製する方法が、提供される。この方法は、反強磁性材料の層を有する基準交換層を積層させ、磁気基準層を、基準交換層が磁気基準層と交換結合されるように、基準交換層の上に積層させ、トンネル・バリア層を磁気基準層の上に積層させ、磁気感知層をトンネル・バリア層の上に積層させ、反強磁性材料の層を有する感知交換層を、感知交換層が磁気感知層と交換結合されるように、磁気感知層の上に積層させることにより、磁気抵抗スタックを形成することを備える。この方法は、また、基準層を固定する交換バイアスを、基準方向に沿って設定することを備える。この方法は、さらに、感知層を固定する交換バイアスを、基準方向と直交する第1の方向に沿って存在するように設定することを備える。この方法は、さらにまた、感知層の磁気異方性を、第1の方向と平行に存在するように設定することを備える。
【0006】
この方法では、感知層の磁気異方性を、第1の方向と平行に存在するように設定することが、磁気抵抗スタックを、積層の間に誘導されるどの異方性でもリセットするのに十分な温度に露出させる(expose)ことによって、第1のアニーリング・プロセスを実行することと、第1のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に、磁気抵抗スタックを、第1の方向の外部磁場に露出させることとを備えることがあり得る。
【0007】
この方法では、基準層を固定する交換バイアスを、基準方向に沿うように設定することが、磁気抵抗スタックを、感知層の磁気異方性をリセットするには不十分であるが、基準層を固定する交換バイアスをリセットするには十分である温度に露出させることによって、第1のアニーリング・プロセスの後で第2のアニーリング・プロセスを実行することと、第2のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に、磁気抵抗スタックを、基準方向の外部磁場に露出させることとを備えることがあり得る。
【0008】
この方法では、感知層を固定する交換バイアスを、基準方向と直交する第1の方向に沿って存在するように設定することが、磁気抵抗スタックを、基準層を固定する交換バイアスをリセットするには不十分であるが、感知層を固定する交換バイアスをリセットするには十分である温度に露出させることによって、第2のアニーリング・プロセスの後で、第3のアニーリング・プロセスを実行することと、第3のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に、磁気抵抗スタックを、第1の方向の外部磁場に露出させることとを備えることがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の態様による磁気抵抗センサの図である。
図2】本開示のさらなる態様による磁気抵抗センサの図である。
図3】本開示のまたさらなる態様による磁気抵抗センサの図である。
図4】本開示の態様による磁気抵抗センサの例示的実装に関して、横軸に印加された磁場の測定値を取り、縦軸に抵抗値を取ったグラフの図である。
図5】本明細書の本開示の態様による磁気抵抗センサを作製する方法の図である。
図6A図5の方法の、事後的な冷却を含む第1のアニーリング・プロセスの後の磁場の図である。
図6B図5の方法の、事後的な冷却を含む第2のアニーリング・プロセスの後の磁場の図である。
図6C図5の方法の、事後的な冷却を含む第3のアニーリング・プロセスの後の磁場の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現時点で考察されている様々な実施形態に関する以下の説明は、一般的原理を例示するという目的のためになされており、特許請求の範囲に記載された内容を限定することは意図されていない。
【0011】
本開示の様々な態様によると、磁気抵抗センサが提供され、この磁気抵抗センサは、従来型の磁気抵抗センサよりも優れた線形性を示す。本明細書における態様による磁気抵抗センサは、磁気異方性と感知層交換結合とによる感知層の組み合わされたインスタック・バイアスを伴う磁気トンネル接合スタックを基礎としており、磁気異方性と感知層交換結合とは、共に、基準方向と直交する共通の方向に沿って存在する。磁気異方性と感知層の交換結合との組み合わされた作用が、外部磁場が不在の場合に自由層がそれに沿って存在する明確に定義された(well-defined)方向を生じさせる。この基準方向に沿った磁場の影響により、感知層の磁化は、滑らかで一様に回転し、モノドメインから予測される理想の振る舞いに近づく。このようにして、高品質の線形応答が、形状のない異方性を伴う大面積センサにおいても、高感度センサを達成するために要求される非常に弱い感知層交換結合値の限度において、達成されることが可能になる。
【0012】
次に、図面を、特に図1を参照すると、本明細書における本開示の態様による磁気抵抗センサ100が示されている。磁気抵抗センサ100は、上部から底部に至るスタック状の形態で、感知交換層102と磁気感知層104とトンネル・バリア層106と磁気基準層108と基準交換層110とを含む、一連のサンドイッチ状の層から構成される。
【0013】
感知交換層102は、反強磁性材料の層を含んでおり、磁気感知層104と交換結合されるように位置決めされる。同様に、基準交換層110は、反強磁性材料の層を含んでおり、磁気基準層108と交換結合されるように位置決めされる。なお、トンネル・バリア層106は、磁気感知層104と磁気基準層108との間に位置決めされる。磁気感知層104は、感知交換層102とトンネル・バリア層106との間に位置決めされる。同様に、磁気基準層108は、トンネル・バリア層106と基準交換層110との間に位置決めされる。
【0014】
上述した構成の下では、交換バイアス磁場(exchange bias field)が、磁気基準層108と基準交換層110との間の交換結合により、磁気基準層108を強く固定する。この磁場は、本明細書において基準交換磁場(reference exchange field)と称され、基準方向112に沿って存在する。この基準磁場(reference magnetic field)は、センサ100によって測定されるべき外部磁場が存在するときに、基準層を固定し、基準層108の基準交換磁場が変化することを許容しないほど十分に強くなければならない。
【0015】
交換バイアス磁場は、磁気感知層104と感知交換層102との間の交換結合により、磁気感知層104を固定する。この磁場は、本明細書において感知交換磁場と称され、基準方向112と直交する第1の方向114に沿って存在する。さらに、感知層104の磁気異方性は、第1の方向114と平行な方向116にあり、また、基準方向112とは直交する。外部磁場が不在の場合には、感知交換磁場と磁気異方性との組み合わされた作用が、磁気感知層104の磁化ベクトルを、基準方向112と直交する第1の方向114に沿って存在するように強制する。
【0016】
基準方向112に沿って印加された外部磁場により、通常は第1の方向114に沿ってアライメントがとられている磁気感知層の磁化ベクトルは、滑らかで一様に回転し、飽和に到達するまで、外部磁場の値に対して抵抗の線形バリエーションを提供する。
【0017】
図2を参照すると、本開示のさらなる態様による磁気抵抗センサ200が示されている。磁気抵抗センサ200は、磁気抵抗センサ100と同一の一般的特性を、示す。なお、同様の機能を実装する構造は、図1図2との間で、任意の組合せで、相互に交換可能である。したがって、同様の機能を実装する構造は、図2では、図1における対応物と比較すると100を加えた参照符号を用いて、示されている。また、図1の磁気抵抗センサ100における構造と特徴との任意の組合せが、図2における磁気抵抗センサ200を用いても、実装されることが可能である。同様に、図2の磁気抵抗センサ200における構造と特徴との任意の組合せが、図1における磁気抵抗センサ100を用いても、実装されることが可能である。
【0018】
磁気抵抗センサ200は、キャップ201と感知交換層202と磁気感知層204とトンネル・バリア層206と磁気基準層208と基準交換層210とバッファ211とを含む、一連のサンドイッチ状の層から構成される。
【0019】
図1の例のように、感知交換層202は、反強磁性材料の層を含んでおり、磁気感知層204と交換結合されるように位置決めされる。同様に、基準交換層210は、反強磁性材料の層を含んでおり、磁気基準層208と交換結合されるように位置決めされる。
【0020】
さらに、図2の例では、磁気基準層208が、人工強磁性体(SAF)として実装される。たとえば、図示されているように、磁気基準層208は、トンネル・バリア層206に隣接する第1の強磁性層218(SAF基準層)として、実装される。非磁性スペーサ220(SAFスペーサ)が第1の強磁性層218と隣接し、第2の強磁性層222(SAF固定層)が非磁性スペーサ220と隣接している。SAFスペーサ220により仲介される、第1の強磁性層218と第2の強磁性層222とのルーダーマン・キッテル・カスヤ・ヨシダ(RKKY)結合の結果として、基準方向212に沿った磁化と逆平行のアライメントがとれた第2の強磁性層222の磁化が生じる。
【0021】
さらに詳しくは、基準層208を固定する交換バイアス磁場が、磁気基準層が基準方向212に沿って強く固定されるように、磁気基準層208の磁化ベクトルを、基準方向212に沿うように方向付ける(lie)。基準交換磁場は、センサ200によって測定されるべき外部磁場が存在するときに、基準層208を固定し、磁気基準層208の磁化ベクトルが変化することを許容しないほど十分に強くなければならない。
【0022】
感知層204を固定する交換バイアス磁場が、感知層204の磁化ベクトルを、基準方向212と直交する第1の方向214に沿うように方向付ける。さらに、感知層204の磁気異方性は、第1の方向214と平行な方向216にあり、よって、また、基準方向212と直交する。外部磁場が不在のときには、感知交換磁場と磁気異方性との組み合わされた作用が、磁気感知層204の磁化ベクトルを、基準方向212と直交する第1の方向214に沿うように、強制的に方向付ける。
【0023】
基準方向212に沿って印加された外部磁場により、通常は第1の方向214に沿ってアライメントがとられている感知磁場は滑らかで一様に回転し、飽和に到達するまで、外部磁場の値に対して抵抗の線形バリエーションを提供する。
【0024】
また、図1の例と類似して、トンネル・バリア層206は、磁気感知層204と磁気基準層208との間に位置決めされている。磁気感知層204は、感知交換層202とトンネル・バリア層206との間に位置決めされている。同様に、磁気基準層208は、トンネル・バリア層206と基準交換層210との間に位置決めされている。キャップ201は、感知層204と対向する感知交換層202に隣接し、外部回路(図示せず)との電気的接触を提供する。同じように、バッファ211が、基準層208と対向する基準交換層210に隣接し、やはり外部回路(図示せず)との電気的接触を提供する。
【0025】
一般的観察:
図1および図2の全体を参照すると、トンネル・バリア層106、206は、感知層104、204と基準層108、208との間にスペーサを形成し、酸化マグネシウム(MgO)などの材料を備えることができる。
【0026】
磁気感知層104、204、磁気基準層108、208、またはその両者共に、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト−鉄(CoFe)、コバルト−鉄−ホウ素(CoFeB)、ニッケル−鉄(NiFe)、その他など、単一の強磁性層から作られることが可能である。あるいは、磁気感知層104、204、磁気基準層108、208、またはその両者共に、CoFe/ルテニウム(Ru)/CoFeBの人工反強磁性三層などの反強磁性結合、または、CoFeB/CoFe、CoFeB/NiFe、CoFeB/スペーサ/NiFe、CoFeB/タンタル(Ta)/NiFeその他などの強磁性結合を用いて、複数の強磁性層で構成されることが可能である。
【0027】
たとえば、図2では、磁気感知層204は、CoFeB合金などの単一の磁性材料で、または、たとえばCoFeB/Ta/NiFeなど、非磁性材料によって分離された強磁性的に結合された強磁性層など複数の層の組合せで、作られることが可能である。たとえば、図2では、磁気基準層208は、例示的構成として、たとえばCoFe合金で作られたSAF固定された層と、たとえばRuで作られたSAFスペーサと、たとえばCoFeB合金で作られたSAF基準層とで構成された人工反強磁性材料(SAF)の三層として、示されている。さらに、感知層104、204を構成する強磁性層の一軸異方性は、感知層104、204を固定する交換磁場(交換磁場の方向114、214を参照のこと)と同じ方向116、216に沿っており、すなわち、感知層104、204の一軸異方性は、基準方向112、212と直交する方向に沿っている。
【0028】
感知交換層102、202、基準交換層110、210、またはこれら両者共に、マンガン−イリジウム(IrMn)またはマンガン−白金(PtMn)合金など、いずれかの適切な反強磁性材料であることが可能である。いずれにしても、本明細書においてより詳細に記載されるように、基準交換層110、210は、センサの基準磁場を画定する基準方向112、212に沿って基準層108、208の磁場を交換固定するために、用いられる。同様に、感知交換層102、202は、基準方向112、212と直交しセンサの感知磁場を画定する第1の方向114、214に沿って感知層104、204の磁場を交換固定するために、用いられる。さらに、直交方向は、感知層104、204と平行な方向、すなわち、(垂直ではなく)感知層104、204の平面内にある。
【0029】
キャップ201、バッファ211またはその両者共に、外部回路から磁気抵抗センサ100、200への電気的結合を提供するいずれかの適切な材料である。たとえば、キャップ201、バッファ211またはその両者共に、Ru、Ta、銅−窒素(CuN)、その他などの材料の1つまたは複数の層を備えることが可能である。
【0030】
例示的な磁気抵抗センサ・スタック
図3を参照すると、本開示の様々な態様による、図2の磁気抵抗センサの例示的な実装が示されている。図3の例示的スタックは、本明細書において与えられている磁場の方位のためのすべての要件を満たす。図3における同様の構造は、したがって、図2の対応物に100を加えた参照符号を用いて示されている。
【0031】
図示されているように、例示的な磁気抵抗センサ300は、キャップ301と、感知交換層302と、磁気感知層304と、トンネル・バリア層306と、磁気基準層308と、基準交換層310と、バッファ311とを含む、一連のサンドイッチ状の層で構成される。
【0032】
キャップ301は、Ruの10ナノメートル(nm)の層とTaの5nmの層とRuの2nmの層とを含む、3つの層で構成される。
【0033】
感知交換層302は、IrMnの6nmの層とRuの0.2nmの層とを含む、2つの層で構成される。代替的な実装では、感知交換層302は、PtMn合金を備えることがある。
【0034】
磁気感知層304は、ニッケル・鉄(NiFe)の4nmの層とTaの0.21nmの層とCoFe4020などのコバルト・鉄・ホウ素の2nmの層とを含む、3つの層で構成される。
【0035】
トンネル・バリア層306は、酸化マグネシウム(MgO)である。
【0036】
磁気基準層308は、人工反強磁性構造を形成する3つの層で構成される。人工反強磁性構造は、CoFe4020などのコバルト・鉄・ホウ素の2.6nmの層と、Ruの0.85nmの層と、CoFe30などのコバルト・鉄の2nmの層とで構成される。
【0037】
基準交換層310は、IrMnの20nmの層で構成される。
【0038】
バッファ層311は、Ruの5nmの層とTaの5nmの層とで構成される。バッファ層311は、また、それぞれのスタック状の層が硝酸銅(CuN)の25nmの層とRuの5nmの層とを含む、6つのスタック状の層も含む。
【0039】
実際には、結果的に得られる構造が、基準層を固定する交換バイアスが基準方向に沿った向きに存在し、感知層を固定する交換バイアスが、基準方向と直交する第1の方向に沿った向きに存在し、感知層の磁気異方性が第1の方向と平行であるように構成されている限り、様々な材料の厚さと材料自体とが上述の例から変動することは、可能である。
【0040】
図4を参照すると、例示的な実装において、100x100μmの面積を備えた一連の磁気トンネル接合デバイス(図3を参照して説明された、磁気抵抗センサ300)を作製するために、微細加工とアニーリングとが用いられるプロセスが、実行された。図4のバルク伝達曲線は全体として、上述の構造のセンサ・スタックは、保磁力が一般的に1エルステッド(Oe)未満であり、オフセット磁場が一般的に10エルステッド未満である場合には、基準方向に沿って印加された磁場の下で線形になる、ということを示している。たとえば、図4のグラフ400が示しているように、測定された磁場は、少なくとも−29エルステッドから20エルステッドの範囲では線形であることが示された。線形範囲は、感知層を固定する交換磁場の大きさを変化させることによって調整されることが可能であり、ここで、感知層を固定する交換磁場の大きさは、磁気感知層と感知交換層との厚さおよび組成に依存する。しかし、線形範囲を(1,000エルステッドではなくて)50エルステッドまでのオーダーに維持することによって、感知層において作用する2つの磁場は、同一線上にすることが可能である。このように、線形範囲は、そうしないと磁気領域における感知層を分解することになる2つの磁場の間の競合を回避するように、選択されることが可能である。
【0041】
磁気抵抗センサを作製する方法
図5を参照すると、本開示の態様による磁気抵抗センサを作製するための方法500が示されている。方法500は、502において、磁気抵抗構造を微細加工することを備える。例示として、方法500は、502において、基盤の上に反強磁性材料の層を有する基準交換層を積層させ、磁気基準層を、基準交換層が磁気基準層と交換結合されるように、基準交換層の上に積層させ、トンネル・バリア層を磁気基準層の上に積層させ、磁気感知層をトンネル・バリア層の上に積層させ、反強磁性材料の層を有する感知交換層を、感知交換層が磁気感知層と交換結合されるように、磁気感知層の上に積層させることにより、磁気抵抗スタックを形成することができる。実際には、バッファ層は、また、たとえば基板の上であって基準交換層の下に積層されることもあり得る。同様に、キャップが、感知交換層の上に積層されることもあり得る。
【0042】
たとえば、スタックは、図3を参照して説明された材料と厚さとを用いた積層プロセスを通じて、構築されることもあり得る。代替的な実装では、図1または図2との関係で与えられたスタックを構築することによるなど、他の構成も用いられることが可能である。
【0043】
本明細書においてさらに詳細に注意されるように、外部磁場が不在の場合には、基準層を固定する交換バイアスは、基準方向に沿った向きに存在し、感知層を固定する交換バイアスは、基準方向と直交する第1の方向に沿った向きに存在し、感知層の磁気異方性は、第1の方向と平行である。
【0044】
以上を考慮すると、方法500は、また、感知層の磁気異方性を、第1の方向と平行に存在するように設定することを備え、これは、積層の間に誘導されるどの異方性でもリセットするのに十分な温度に磁気抵抗スタックを露出させることにより、第1のアニーリング・プロセスを実行し、第1のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に、磁気抵抗スタックを、第1の方向の外部磁場に露出させることなどによる。
【0045】
例示として、第1のアニーリング・プロセスは、504で実行される。第1のアニーリング・プロセスは、トンネル磁気抵抗動作のための適切なフェーズにおけるトンネリングに参加するトンネル・バリアと対応する強磁性層(たとえば、図1、2および3のそれぞれにおける、磁気感知層104、204、304、トンネル・バリア層106、206、306および磁気基準層108、208、308)とを結晶化する。
【0046】
さらに、504での第1のアニーリング・プロセスは、積層の間に誘導されるどのような異方性もリセットするために、反強磁性材料の閉鎖温度(blocking temperature)よりも高いまたはそれに近接する高いアニーリング温度を用いることがあり得る。たとえば、高いアニーリング温度(T>摂氏320度)は、IrMnやPtMnなどの反強磁性材料の積層の間に誘導されるどのような異方性もリセットするのに十分なほど、高い。したがって、504における第1のアニーリング・プロセスは、各反強磁性層(たとえば、図1、2、および3のそれぞれにおける感知交換層102、202、302および基準交換層110、210、310)の固定方向を設定するように、用いられることができる。
【0047】
そのようなアニーリング温度は、また、CoFeB/MgO/CoFeB磁気トンネル接合スタックにおける(強磁性の)感知層および基準層の一軸異方性の軸を設定するのに用いられることも可能である。
【0048】
さらに詳しくは、方法500は、第1のアニーリング・プロセスの間に熱を加えた後の冷却動作の間に、506において、外部磁場をスタックに近接して印加することを備える。印加される磁場は、最終的な直交方向(たとえば、図1および図2を参照して説明された方向112、212)に沿って印加される。特に、方法500は、(強磁性である)感知層(SL HK)の一軸異方性の軸を設定するために、506における冷却を用いて、外部磁場をスタックに印加することを備える。
【0049】
(強磁性である)感知層の一軸異方性の軸を設定することに加えて、印加される磁場は、スタックの強磁性基準層を飽和させるのに十分なほど強い。すなわち、図1を参照して説明されたもののようなスタックを構築するために、印加される外部磁場は、基準層108を飽和させるのに十分なほど強くなければならない。図2および図3を参照して説明されたもののようなスタックを構築するためには、印加される外部磁場は、スタックの強磁性基準層208、308の人工強磁性構造(たとえば、層218、220および222または層318、320および322)を飽和させるのに十分なほど強くなければならない。図3を参照してさらに詳細に説明された例示的なスタック構成のためには、印加される外部磁場は、好ましくは、1テスラ以上である。
【0050】
図6Aを簡単に参照すると、表示600は、第1のアニーリング・プロセスとそれに続く冷却との終了時における、磁気抵抗センサ・スタックの交換磁場と磁気異方性との方向を示している。特に、図6Aは、感知層604(上述された感知層104、204、304に類似する)と、トンネル・バリア層606(上述されたトンネル・バリア層106、206、306に類似する)と、基準層608(上述された基準層108、208、308に類似する)とで構成されるスタックを、示している。
【0051】
磁気抵抗センサ・スタックのすべての図示されている交換磁場と磁気異方性とは、究極的には磁気抵抗センサにおける基準方向と直交することになる方向に沿って存在している。さらに詳しくは、外部磁場(Hann)は、磁気抵抗センサの最終的なスタック構成における磁気感知層に対する直交方向と感知層の磁気異方性とを画定する方向632に設定される(図1の方向114、116、図2の方向214、216)。
【0052】
結果的に、最初のアニーリングの後では、スタックにおける各強磁性層の一軸磁気異方性の軸と各交換磁場と関連する一方向異方性とは、印加された外部磁場と同じ方向に沿って向いている。
【0053】
すなわち、外部磁場(Hann)に応答して、(強磁性の)感知層の一軸異方性の軸の方向634(SL H)と、感知層を固定する交換バイアスの方向636(SL Hex)と、感知磁場の方向638(SL Mag)と、基準層磁場の方向640(RL Mag)とは、すべて、同一の方向にアライメントがとれている。結果的に、感知層の磁化の方向と基準層の磁化の方向とは、最終的なデバイスの直交方向(たとえば、図1の方向114、図2の方向214)に沿って向いていることになる。
【0054】
図5の方法500は、また、感知層の磁気異方性をリセットするには不十分であるが基準層を固定する交換バイアスをリセットするには十分である温度に、磁気抵抗スタックを露出させることにより、第1のアニーリング・プロセスの後で第2のアニーリング・プロセスを実行し、第2のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に、基準方向の外部磁場に磁気抵抗スタックを露出させることなどによって、基準層を固定する交換バイアスを基準方向に沿うように設定することを備える。
【0055】
たとえば、再び図5を参照すると、方法500は、また、508において、第2のアニーリング・プロセスを実行することを備える。第2のアニーリング・プロセスの間のアニーリング温度は、反強磁性層(たとえば、感知交換層および基準交換層)の閉鎖温度より高くなければならないが、感知層の一軸異方性が再度向き付けられる温度より低くなければならない。ある例示的な実装では、摂氏280度以下の温度(T≦280°C)が、第2のアニーリング・プロセスの間で用いられることがあり得る。
【0056】
なお、510における第2のアニーリング・プロセスの間に熱を加えた後の冷却は、基準層の磁場(RL Mag)の方向を最終的な基準方向に設定するのに用いられる。たとえば、方法500は、さらに、第2のアニーリング・プロセスの間に熱を加えた後の冷却動作の間に、外部磁場をスタックに近接して印加することを備える。より詳しくは、両方の反強磁性材料の界面における交換バイアスは、冷却の間に基準方向に沿って外部磁場を印加することによって、90度だけ回転される。
【0057】
たとえば、外部磁場(Hann)は、スタックの強磁性基準層を飽和させるのに十分に強くなければならない。図2および図3を参照して説明されたもののようなスタック構築のためには、第2のアニーリング・プロセス(図5のプロセス510)の冷却の間に印加される外部磁場は、スタックの強磁性基準層208(たとえば、層218、220および222)の人工反強磁性構造を飽和させるのに十分なほど強くなければならない。印加される外部磁場は、好ましくは、1テスラ以上である。
【0058】
図6Bを簡単に参照すると、表示600は、第2のアニーリング・プロセスとそれに続く冷却の終了時における、磁気抵抗センサ・スタック(感知層604と、トンネル・バリア層606と、基準層608とを備えている)の交換磁場と磁気異方性との方向を示している。
【0059】
さらに詳しくは、外部磁場(Hann)は、磁気抵抗センサの最終的なスタック構成における磁気基準層のための基準方向を画定することになる方向642(たとえば、図1の方向112、図2の方向212)に設定される。実際には、図5の510で印加される外部磁場(Hann)は、図5の506において印加される外部磁場(Hann)と同じ場合があり得るし、または、異なる場合もあり得る。
【0060】
方向642の外部磁場に応答して、(強磁性の)感知層の一軸異方性の軸の方向634(SL H)は、変化しない。すなわち、図6Bの方向634は、図6Aの方向634と同じである。しかし、感知層を固定する交換バイアスの方向646(SL Hex)と、基準層の磁場の方向650(RL Mag)とは、外部磁場Hannの方向642と同じ方向にアライメントがとれている。
【0061】
感知磁場の方向648(SL Mag)は、感知層の一軸異方性の方向と対応する感知交換バイアス層からの交換バイアスの方向との両方によって影響される。しかし、感知層の一軸異方性は、対応する感知交換バイアス層からの交換バイアスと直交する。結果的に、感知層の磁場の方向648は、感知層の一軸異方性の方向と対応する感知交換バイアス層からの交換バイアスの方向との間のどこかにあることになる。こうして、感知層の磁化は、直交方向と基準方向との間の中間的な方向に沿った方向に維持されることになる。厳密な方向は、一軸異方性と感知層にバイアスを与える交換磁場との間のバランスに依存することになる。
【0062】
さらに、基準層の磁化の方向650は、最終的なデバイスの基準方向(たとえば、図1の方向112、図2の方向212)に沿った向きになる。
【0063】
しかし、本明細書における開示のさらなる態様によると、方法500は、さらにまた、第2のアニーリング・プロセスの後で、基準層を固定する交換バイアスをリセットするには不十分であるが感知層を固定する交換バイアスをリセットするには十分である温度に磁気抵抗スタックを露出させることにより第3のアニーリング・プロセスを実行し、第3のアニーリング・プロセスと関連する冷却の間に磁気抵抗スタックを第1の方向の外部磁場に露出させることなどによって、感知層を固定する交換バイアスを、基準方向と直交する第1の方向に沿って存在するように設定することを備える。
【0064】
再び図5を参照すると、方法500は、さらに、512において、第3のアニーリング・プロセスを実行することを備える。たとえば、第3のアニーリング・プロセスの間の温度は、基準層を固定する基準交換層(たとえば、図1の基準交換層110、図2の基準交換層210)の閉鎖温度より低く、しかし、感知層を固定する感知交換層(たとえば、図1の感知交換層102、図2の感知交換層202)の閉鎖温度より高い値に設定されることができる。例示として、第3のアニーリング・プロセスの間の温度は、摂氏250度未満に設定されることがあり得る(T<250°C)。別の例では、この温度は、摂氏220度未満に設定される(T<220°C)。
【0065】
外部磁場が、514において、第3のアニーリング・プロセスの冷却フェーズの間に印加される。第3のアニーリング・プロセスの間には、感知層を固定する交換バイアスが90度だけ回転され、直交方向に沿う方向に再度向けられる。感知層の磁気異方性は、直交方向に沿った状態のまま邪魔されずに維持される。基準層を固定する交換バイアスは、基準方向に沿った状態のまま邪魔されずに維持される。したがって、基準層の磁化の方向は、影響されない。
【0066】
簡単に図6Cを参照すると、表示600は、第3のアニーリング・プロセスとそれに続く冷却との終了時における、磁気抵抗センサ・スタック(感知層604と、トンネル・バリア層606と、基準層608とを備えている)の交換磁場と磁気異方性との方向を示している。さらに詳しくは、外部磁場(Hann)が、直交方向に対応する方向632に設定される(図6Aを参照して説明された外部磁場(Hann)の方向632と同じ)。
【0067】
実際には、外部磁場(Hann)は、図5の第1のアニーリング・プロセス504の冷却の間に方向632に印加される外部磁場と同じ場合があり得るし、または、それとは異なる場合もあり得る。たとえば、例示的な実装では、冷却外部磁場(Hann)が方向632(直交方向に沿っている)に印加されるが、感知層604を飽和させるほど十分に大きくなければならず、たとえば、この冷却磁場の値は、0.1テスラ未満でよい。
【0068】
方向632の外部磁場(Hann)に応答して、(強磁性の)感知層の一軸異方性の軸の方向804(SL H)は、やはり変化しない(よって、直交方向に維持される)。
しかし、感知層を固定する交換バイアスの方向636(SL Hex)は、もう一度再び、外部磁場Hannの方向632と同じ方向にアライメントがとれている。
【0069】
基準層の磁場の方向(RL Mag)は、図5の514で印加される外部磁場Hannによって影響されない。したがって、基準層の磁場(RL Mag)は、基準方向650のまま留まる。
【0070】
感知磁場の方向(SL Mag)は、感知層の一軸異方性の方向と対応する感知交換バイアス層からの交換バイアスの方向との両方によって影響される。感知層の一軸異方性と、対応する感知交換バイアス層からの交換バイアスとの両方が、同じ方向(直交方向)にアライメントがとれている。結果的に、感知磁場の方向(SL Mag)は、もう一度再び、方向638にあり、これは直交方向である。
【0071】
再び図5を参照すると、第3のアニーリング・ステップ512および冷却514は、感知交換層と基準交換層とを直交構成に設定するために、要求される。これは、第2のアニーリング508と冷却510とをプロセス500から削除し、ステップ514において冷却磁場を第1の方向と直交する方向に沿って印加することによって、達成されることが可能になった。そのようなプロセスでは、感知層において作用している2つの内部磁場(磁気異方性および交換バイアス)は、同一線上にないことがあり得る。これらの2つの磁場の間の競合が、感知層の磁気モーメントを直交方向から変位させることがあり、それにより、今度は、基準方向に沿った磁場に応答して、センサの線形性が劣化を受けることがあり得る。感知層は、(図6Cに示されているものと類似の構成では)傾斜した状態になる可能性があり、伝達曲線が、高感度を有するセンサにおいて特別な意味がある衝撃を有することが可能な曲率を示す場合があり得る(2つの競合する磁場の大きさのオーダーが類似することがあり得る)。
【0072】
様々な事柄:
外部磁場に対して、磁気抵抗デバイスの線形抵抗バリエーションを要求する様々な応用例が存在する。線形応答を達成するために、感知層の磁気モーメントは、外部磁場が不在であれば、基準層と直交する方向に沿って向けられている。
【0073】
本開示の態様は、トンネル・バリアおよび強磁性層(CoFeB/MgO/CoFeBの磁気トンネル接合におけるMgOおよびCoFeBなど)を備えており、伝達曲線全体の少なくともある領域における線形動作を容易にする優れた磁気輸送特性を提供するために、高いアニーリング温度(たとえば、T>280°C)と複数のアニーリング・プロセスとを用い、磁気トンネル接合スタックに基礎を置く磁場センサを提供する。本明細書で説明されている構成を達成するため、2つの反強磁性層が、各層の固定方向を選択的に設定するために別個の磁気アニーリング手順が用いられることが可能であるように、異なる閉鎖温度を有することがあり得る。
【0074】
より詳しくは、本明細書において説明されているように、例示的な実装においては、製造技術に応じて、感知交換層(たとえば、反強磁性材料)と磁気感知層との間の界面における交換バイアスと関連する閉鎖温度が、基準交換層とたとえば図2に示されているSAF固定層などの磁気基準層とからの界面における交換と関連する閉鎖温度と異なる場合があり得る。さらに、磁気感知層204と関連する磁気異方性は、いったん設定されると、感知交換層と磁気感知層との間の界面における交換バイアスと関連する閉鎖温度と、基準交換層と磁気基準層とからの界面における交換と関連する閉鎖温度とにおいて、安定的な状態に留まらなくてはならない。
【0075】
感知層の一軸異方性が基準方向に沿っている場合に、磁場が不在であるならば、反強磁性/感知層の界面(たとえば、図1の感知交換層102および磁気感知層104の界面、図2の感知交換層202および磁気感知層204の界面)におけるスピンは、基準方向にはブロックされることになる。すなわち、センサは、線形応答を提供する磁気構成を失うことになる。しかし、本明細書に開示されている構造では、感知層の磁気モーメントが直交方向に沿ってアライメントがとれた状態に留まり、センサによって測定されるべき外部磁場に応答する線形パフォーマンスを容易にする。
【0076】
例示的な実装では、優れた線形応答と熱安定性とを備えた磁場センサが、たとえば本明細書において図5から図6Cを参照して説明されたように、感知層の一軸異方性を考慮した線型化方法を実装することによって、提供される。
【0077】
特に、本明細書において例示されている構造は、形状異方性とは独立に線形性と熱安定性とを示すように、作製される。すなわち、(外部磁場の存在が不在の場合において)大きなアスペクト比と小さな横方向寸法とを要求せずに、基準層を固定する交換バイアスが基準方向に沿って存在し、他方で、感知層を固定する交換バイアスが基準方向と直交する第1の方向に沿って存在し、感知層の磁気異方性が第1の方向と平行に存在する。むしろ、上述した磁場の特性は、アスペクト比とは無関係の大きな横方向寸法を備えている場合(たとえば、100x10μmから10x10μm)だけではなく、アスペクト比とは無関係に小さな横方向寸法を備えている場合(たとえば、100x2μmから2x2μm)でも、実現される。よって、たとえば、磁気感知層は、1:1程度まで小さくできるアスペクト比によって画定される寸法を有することがあり得る。これが可能であることにより、小さな線形範囲を備えた高感度の線形センサが、この場合以外の従来型のセンサ(たとえば、2x2μmの正方形センサ)を用いても可能ではなかった小さな面積において作製することが可能になる。さらに、本明細書の構造および方法により、線形性を依然として維持しながらセンサの幾何学的構成間の独立性が可能になる。よって、たとえば、本明細書におけるセンサは、小さな横方向寸法に限定されることがなく、5μmよりも大きいことが可能になる。さらに、線形範囲とセンサの寸法とが、独立のパラメータではない。
【0078】
本明細書に記載されているように構築されたセンサは、低い周波数の範囲での非常に弱い磁場の検出に関するもののように、比較的大きな面積および/または低いアスペクト比を有する磁場センサを要求する応用例において、適している。
【0079】
さらに、本明細書においてより詳細に記載されているように、外部磁場が不在の場合において、基準層を固定する交換バイアスが基準方向に沿って存在し、他方で、感知層を固定する交換バイアスが基準方向と直交する第1の方向に沿って存在し、感知層の磁気異方性が第1の方向と平行に存在する。したがって、本明細書に説明されているように、磁気抵抗センサ・スタックに含まれていない永久磁石からの磁場バイアス作用に依存することが、必要ない。
【0080】
たとえば、本明細書の構造は、センサの近傍に形成されたハードな磁気層による感知層のバイアスを回避する。CoCrPtまたはCoZrNbなどハードな磁気層の使用は、感知層の磁気モーメントを基準層と直交する方向にアライメントをとるために用いられる浮遊磁場を、それを固定することなく、生成する。そのような方式によって提供されるバイアス磁場は、感知層の全体で不均一である(従って、いくつかの応用例では、それを安定化させるのに不適切である)。さらに、センサの近傍において形成された磁気層に依存するときのバイアス磁場の強度は、用いられている幾何学的形状に大きく依存し、センサの熱安定性は、永久磁石の熱安定性による限界を有する。
【0081】
同様に、感知層を固定するインバウンド磁気層からの磁気バイアスに依存することは必要なく、または、そうでない場合には、基準層におけるもの以外のスタックに含まれる強磁性層から生じる浮遊磁場を用いたスタック内のバイアスに依存する。
【0082】
さらに、本明細書の構造は、直交方向における交換結合を用いたスタック内のバイアスに依存することを必要としない。逆に、本明細書で説明されているように、感知層を固定する交換バイアスが基準方向と直交する第1の方向に沿って存在し、感知層の磁気異方性は第1の方向と平行である。
【0083】
さらに、本明細書で与えられているアプローチは、感知層における交換バイアスと一軸異方性との間の競合を回避し、その理由は、両方の磁場が同じ方向にアライメントがとれているからである。これが、線形性と熱パフォーマンスとの両方を改善させる。
【0084】
本明細書で用いられている用語は、特定の実施形態を説明するという目的のためであり、開示内容に限定することは意図されていない。本明細書で用いられている単数形の「a」「an」および「the」は、特に明示的にそうではないと断らない限り、複数形も同様に含むことが意図されている。「備える(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で用いられるときには、言明されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定しており、1つまたは複数のそれ以外の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/もしくはそれらのグループの存在または追加を排除しないことをさらに理解されたい。
【0085】
本開示に関する説明は、例示と説明の目的で呈示されたのであって、網羅的であること、または、開示されている形式における開示内容に限定されることは意図されていない。
本開示の範囲および精神から逸脱することなく、多くの変形およびバリエーションが当業者には明らかであろう。
【0086】
本出願の開示について、詳細に、および、その実施形態を参照することにより、以上で説明してきたが、添付の特許請求の範囲において定義されている開示の範囲から逸脱することなく、変形およびバリエーションが可能であることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C