(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972225
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】時間ベース管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-77587(P2020-77587)
(22)【出願日】2020年4月24日
(62)【分割の表示】特願2016-105365(P2016-105365)の分割
【原出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2020-115889(P2020-115889A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】新海 敦
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−029600(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/076289(WO,A1)
【文献】
特開2013−247903(JP,A)
【文献】
特開平10−105233(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1408829(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00 − 63/12
A01B 69/00 − 69/08
A01C 11/02
G05D 1/00 − 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機構を装備する車体に対地作業を行う作業装置を装備した作業車と、
管理コンピュータとを有し、
前記作業車は、
測位データを出力する衛星測位モジュールと、
前記測位データに基づいて前記車体の走行距離を算出する走行距離算出部と、
前記走行距離算出部で算出された走行距離の走行に要した時間から実距離走行時間を直進走行に要した時間と旋回走行に要した時間とに区分けして算出する走行時間算出部と、
前記管理コンピュータとの間でデータ転送を行う第1の通信処理部とを備え、
前記管理コンピュータは、
前記作業車との間でデータ転送を行う第2の通信処理部と、
前記作業車から転送され、前記直進走行に要した時間と前記旋回走行に要した時間とに区分けして算出された前記実距離走行時間に基づいて前記対地作業に要する時間を管理する作業管理部とを備える時間ベース管理システム。
【請求項2】
前記管理コンピュータは、前記作業地に対する対地作業の目標走行時間を設定する目標走行時間設定部を備え、
前記作業管理部は、前記目標走行時間と前記実距離走行時間とを比較して、前記対地作業の進捗度を算出する請求項1に記載の時間ベース管理システム。
【請求項3】
前記進捗度が走行中に報知可能である請求項2に記載の時間ベース管理システム。
【請求項4】
前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれが所定時間を超えた場合、緊急停止指令が出力される請求項2または3に記載の時間ベース管理システム。
【請求項5】
前記作業管理部は、直進走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれである直進時間ずれと、旋回走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれである旋回時間ずれとを算出する請求項2から4のいずれか一項に記載の時間ベース管理システム。
【請求項6】
前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれに基づいて前記車体のスリップ率を算出するスリップ率算出部が備えられている請求項2から4のいずれか一項に記載の時間ベース管理システム。
【請求項7】
前記スリップ率算出部は、直進走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれから直進走行時のスリップ率である直進スリップ率を算出するとともに、旋回走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれから旋回走行時のスリップ率である旋回スリップ率を算出する請求項6に記載の時間ベース管理システム。
【請求項8】
前記作業車は、
前記走行機構の車軸回転数を検出するセンサと、
前記車軸回転数から算出される走行距離と、前記走行距離算出部が算出した走行距離とに基づいて前記車体のスリップ率を算出するスリップ率算出部とをさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の時間ベース管理システム。
【請求項9】
前記作業管理部で管理される管理情報をデータ転送可能に記録する記録部と、前記管理情報を報知する報知部が備えられている請求項1から8のいずれか一項に記載の時間ベース管理システム。
【請求項10】
前記管理コンピュータは、前記作業地における前記車体の目標走行経路を設定する経路設定部をさらに備え、
前記作業車は、前記目標走行経路及び前記測位データに基づいて前記車体を自動走行させる自動走行指令を生成する自動走行制御部をさらに備える請求項1から9のいずれか一項に記載の時間ベース管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場や土木現場などの作業地を走行しながら対地作業を行う作業車、及びこの作業車に適用される時間ベース管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、苗植走行しながら、植付作業中の圃場における植付作業の進捗度合等を測定する作業測定装置を備えた苗移植機が記載されている。この苗移植機は、後輪の駆動回転を検出する回転検出部材や、前輪の操向動作を検出する操向検出部材を用いて、単位苗植走行条の苗植付条面積を算出するとともに、縦方向の植付走行距離の移動に要する時間と、旋回距離の移動に要する時間を測定する。これにより、植付作業の進捗度や、終了時間、残余面積等を予測しながら植付作業を行うことを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−29600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1による技術のように、車輪の駆動回転に基づいて車速を算出し、直進走行と旋回走行を繰り返しながら行われる作業走行の時間を求める場合、車輪のスリップにより誤差が生じる。特に旋回半径の小さな旋回走行では、大きなスリップが発生し、車輪の回転数と移動距離とが対応しなくなり、大きな誤差が生じる。この誤差は積算されていくので、作業後半での進捗度の正確な算出は困難となる。
【0005】
上記実情に鑑み、作業地走行での走行時間管理が正確に行うことができる技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明
の一実施形態に係る時間ベース管理システムは、
走行機構を装備する車体に対地作業を行う作業装置を装備した作業車と、管理コンピュータとを有し、前記作業車は、測位データを出力する衛星測位モジュールと、前記測位データに基づいて前記車体の走行距離を算出する走行距離算出部と、前記走行距離算出部で算出された走行距離の走行に要した時間から実距離走行時間を直進走行に要した時間と旋回走行に要した時間とに区分けして算出する走行時間算出部と、前記管理コンピュータとの間でデータ転送を行う第1の通信処理部とを備え、前記管理コンピュータは、前記作業車との間でデータ転送を行う第2の通信処理部と、前記作業車から転送され、前記直進走行に要した時間と前記旋回走行に要した時間とに区分けして算出された前記実距離走行時間に基づいて前記対地作業に要する時間を管理する作業管理部とを備える。
【0007】
この構成では、衛星測位モジュールの測位データから遂次算出される車体の座標位置から車体の移動距離(走行距離)が求められ、その移動(走行)にかかった時間を実距離走行時間として算出するので、この実距離走行時間は、スリップなどによる誤差が排除された走行時間が得られる。作業車の作業状況を時間で管理する際には、走行距離当たりの正確な走行時間が必要となるので、この実距離走行時間を用いた走行時間管理により、作業車の作業状況を正確に把握することができる。特に、トラクタや田植機などのような対地作業車では、定車速指令を走行機構に与えて、一定速度で走行しながら作業が行われることが多い。そのような定速度作業走行では、実距離走行時間を管理するだけで、対地作業の状況(適正または不適)を正確に把握することができる。
【0008】
例えば、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業地に対する対地作業の目標走行時間を設定する目標走行時間設定部が備えられ、前記作業管理部は、前記目標走行時間と前記実距離走行時間とを比較して、前記対地作業の進捗度を算出するように構成されている。特定の作業地における特定の対地作業を行う場合、適正な作業時間である走行時間は算出可能である。したがって、この構成では、その適正な作業時間が目標走行時間として設定され、作業中において、逐次算出される実距離走行時間と目標走行時間とを比較することで、全作業のうちでどの程度完了しているか、未作業がどの程度残っているかといった作業の進捗度を算出することできる。これにより、作業車による対地作業の時間管理が実現する。さらに好ましい実施形態の1つでは、前記進捗度が走行中に報知可能に構成されている。これにより、運転者や操作者は、作業走行中において、任意の時点での進捗度は把握することができ、これからの作業走行計画、例えば、日暮れまでに作業が完了できるかどうか、作業終了まで燃料が大丈夫かどうかなどを適切に判断することができる。
【0009】
このような時間管理において、設定された目標走行時間と遂次算出される実距離走行時間との間に大きな差が出てくると、適正な作業が行われていないと推定されるので、現在行っている作業を一旦停止することが望ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれが所定時間を超えた場合、緊急停止指令が出力されるように構成されている。
【0010】
圃場と呼ばれる作業地に対して、耕耘作業、苗植付け作業、収穫作業などを行う農業作業機では、直進走行と旋回走行(90°ターンや180°ターンなど)とを繰り返しながら走行し、圃場全体の農作業を完了する。その際、実質的には、直進走行で農作業を実施し、旋回走行では車体の姿勢を変更するだけで、農作業は実施しない。このことから、直進走行と旋回走行とを区分けして、時間管理を行うことが重要である。例えば、直進走行において、目標走行時間と実距離走行時間との時間ずれが大きいと、対地作業結果が悪いことを考慮しなければならない。また、旋回走行において、目標走行時間と実距離走行時間との時間ずれが大きいと、旋回走行が困難な地面状況が発生しているか、あるいは実行されている旋回半径が不適切であるといったことを考慮しなければならない。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業管理部は、直進走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれである直進時間ずれと、旋回走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれである旋回時間ずれとを算出するように構成されている。
【0011】
目標走行時間と実距離走行時間との時間ずれは、地面と走行機構(車輪など)との間でのスリップによって生じる。このことから、スリップ率を求めることで、車速、作業装置における作業負荷、地面(圃場面)の状態が適正であるかどうかを評価することができる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれに基づいて前記車体のスリップ率を算出するスリップ率算出部が備えられている。このスリップ率においても、直進走行と先行走行ではスリップ状況が異なるので、上述した形態と同様に、直進走行と旋回走行とで区分けして算出することが好ましい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記スリップ率算出部は、直進走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれから直進走行時のスリップ率である直進スリップ率を算出するとともに、旋回走行時における前記目標走行時間と前記実距離走行時間との時間ずれから旋回走行時のスリップ率である旋回スリップ率を算出するように構成されている。
また、前記作業車は、前記走行機構の車軸回転数を検出するセンサと、前記車軸回転数から算出される走行距離と、前記走行距離算出部が算出した走行距離とに基づいて前記車体のスリップ率を算出するスリップ率算出部とをさらに備えても良い。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業管理部で管理される管理情報をデータ転送可能に記録する記録部と、前記管理情報を報知する報知部が備えられている。管理情報には、例えば、上述した進捗度、時間ずれ、スリップ率、などが含まれる。このような管理情報が、経時的に記録部に記録されると、作業車の走行軌跡とリンクさせることができ、より精細な作業評価を行うことができる。さらに、これらの管理情報が、各地の作業地での対地作業を管理する管理センタの管理コンピュータに転送されることにより、大量のデータを用いた対地作業の分析を行うことができる。さらに、上述のような管理情報を作業車の運転者や作業車を遠隔操縦する操作者などに報知することで、作業品質を向上させる方策を講じるきっかけを作ることができる。
【0013】
上述したような、時間をベースにした作業の管理は、運転者の直観や経験による作業の変更ができない自動走行の場合、特に適している。作業車を自動走行させるために
、前記管理コンピュータは、前記作業地における前記車体の目標走行経路を設定する経路設定部をさらに備え、前記作業車は、前記目標走行経路及び前記測位データに基づいて前記車体を自動走行させる自動走行指令を生成する自動走行制御部をさらに備えても良い。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】作業車による対地作業の時間管理に関する基本原理を模式的に示す説明図である。
【
図2】作業車の走行時間と走行位置と走行軌跡とを模式的に示す説明図である。
【
図3】作業車の実施形態の1つを示すトラクタの側面図である。
【
図4】トラクタの制御系を示す機能ブロック図である。
【
図5】作業車の走行時に経時的に取り扱われるデータ群の一例をタイムチャート的に示す説明図である。
【
図6】時間ベース管理システムにおける基本的な制御構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による作業車の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2とを用いて、作業車による対地作業の時間管理に関する基本原理を説明する。
図1には、対地作業を行っている作業車におけるデータの流れが示されており、
図2には、作業車の走行経路と走行時間とが模式的に示されている。
【0017】
ここでは、作業車は、
図2に示すように操向輪や駆動輪などから構成される走行機構10を装備する車体1と、車体1に取り付けられた作業装置30とを備えている。
図2の例では、作業車は、直進走行と180°の旋回走行とを繰り返しながら、作業地全体を作業走行する。作業車には、GNSSモジュールなどによって構成される衛星測位モジュール80が備えられており、車体の座標位置(以下単に自車位置と称する)を示す測位データを出力する。なお、測位データで表される自車位置は、アンテナの位置が基準となるが、ここでは、自車位置は、アンテナの位置ではなく、車両の適切な位置、例えば、作業装置30の対地作用点などとなるような位置補正処理が行われる。
【0018】
図2で、模式的に示されているように、測位データに基づいて、走行距離算出部51は、周期的に取得した自車位置(又は走行時点)(
図2ではP01・・・で示されている)から走行距離(
図2ではL01・・・で示されている)を算出する。この周期的に連続して取得した自車位置を繋いでいくと、作業車の走行軌跡が得られる。また、走行距離を積算することにより、所定走行区間の走行距離、例えば全行程の走行距離が得られる。さらに、走行時間算出部52は、走行距離算出部51で算出された走行距離の走行に要した時間(
図2ではt01・・・で示されている)を実距離走行時間として算出する。この実距離走行時間を積算することで、所定走行区間の実距離走行時間、例えば全行程の実距離走行時間が得られる。作業管理部50は、この作業車による対地作業の時間管理に、この実距離走行時間を用いる。
【0019】
この作業車には、所定車速、例えば一定の車速(5km/hや10km/hなどの定車速)で走行しながら、この作業地を対地作業する際に必要となる目標走行時間を設定する目標走行時間設定部62が備えられている。これは、運転者が設定することもできるし、通信等の手段で自動的に設定されることも可能である。例えば、この作業車が、自動走行作業車として運用される場合には、経路設定部61によって設定された目標走行経路から、目標走行時間設定部62が目標走行時間を算出して、設定することも可能である。なお、直進走行での車速設定と旋回走行での車速設定とは、同一でなくてもよく、それぞれ別々に設定することができる。また、直進走行と旋回走行のいずれにおいても特定の区間において異なる車速を設定することも可能である。
【0020】
走行上のトラブル(走行機構10の不調、ぬかるみでのスリップなど)や作業上のトラブル(過負荷の発生など)があった場合、目標走行時間設定部62によって設定されている所定自車位置での目標走行時間と、走行時間算出部52によって算出される実距離走行時間と間の相違(時間ずれ)が、想定外に大きくなることがある。この場合には、作業車を停止して、走行機構10の状態や作業装置30の状態を点検する必要がある。したがって、作業管理部50は、目標走行時間と実距離走行時間との時間ずれが所定時間を超えた場合、緊急停止指令を出力させる機能を有する。この機能は、作業車が、自動走行作業車として運用される場合に、特に好適である。
【0021】
図1の例では、作業管理部50には、進捗度算出部501とスリップ率算出部502とが含まれている。進捗度算出部501は、この作業地に対する作業のために設定された目標走行時間と、走行時間算出部52によって算出された実距離走行時間(より詳しくは所定区間ごとの実距離走行時間の積算値)とを比較して、対地作業の進捗度を算出する。算出された進捗度は、視覚的な手段あるいは聴覚的な手段を通じて報知することができる。この進捗度の報知により、作業の進み具合(作業効率)、作業の残り時間(作業終了予測時間)などが容易に把握することができる。スリップ率算出部502は、目標走行時間と実距離走行時間との時間ずれに基づいて車体1のスリップ率を算出する。ぬかるみ面の走行時や小旋回半径での旋回走行時に生じるスリップは、一定車速での走行した場合での目標走行時間と実際の実距離走行時間との時間ずれとして現れるので、その時間ずれからスリップ率を算出することができる。このスリップ率により、作業地の地面状態や旋回状態などを評価することができる。
【0022】
この作業車のように、直進走行と旋回走行とを繰り返して作業地に対する作業を行っていく場合、直進走行で作業装置30を駆動し、旋回走行では作業装置30を駆動しないことが多い。また、直進走行と旋回走行とでは、走行機構10の状況が大きく異なる。このため、直進走行と旋回走行とを区分けして、走行管理あるいは作業管理することが好ましい。このため、この作業管理部50は、直進走行時における時間ずれを直進時間ずれとし、旋回走行時における時間ずれを旋回時間ずれとして算出する機能を有する。特に、直進走行と旋回走行とでは、走行負荷が大きく異なり、走行負荷に起因するスリップは、直進走行と旋回走行とでは区分けして評価することは、スリップ評価にとって重要である。このことから、スリップ率算出部502は、直進走行時における時間ずれから直進走行時のスリップ率である直進スリップ率を算出するとともに、旋回走行時における時間ずれから旋回走行時のスリップ率である旋回スリップ率を算出することも可能である。
【0023】
作業管理部50は、上述した以外の種々のデータ、例えば走行機構10の状態を示す走行データや作業装置30の状態を示す作業データも入力して、管理情報として記録することができる。さらに、作業管理部50で生成あるいは管理されている進捗度、時間ずれ、スリップ率、車体走行軌跡などのデータも管理情報として記録される。記録された管理情報は、記録メディアやデータ通信を通じて、作業車から持ち出すことができる。至急に報知した方がよい管理情報は、作業車の運転者や操作者に、視覚的あるいは聴覚的な手段を通じて直接報知される。
【0024】
この作業車を自動走行として構成する場合には、経路設定部61によって設定される作業地における車体1の目標走行経路に自車位置が一致するように車体1を自動走行させる自動走行指令を生成する自動走行制御部42が備えられる。
【0025】
次に、本発明の作業車の具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は、
図3に示されているように、畦によって境界づけられた圃場(作業地)に対して耕耘作業などの農作業を行うロータリ耕耘装置などの作業装置30を装備したトラクタである。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、操縦部20に配置されている前輪11の操舵はステアリングホイール22の操作によって可能である。トラクタのキャビン21には、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。図示されていないが、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
【0026】
図4には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この制御系は、
図1を用いて説明された基本原理を採用している。この制御系の中核要素である制御ユニット4には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、車両走行機器群71、作業走行機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14をはじめ、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業走行機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置を昇降させる昇降機構31などが含まれている。通信処理部70は、制御ユニット4で処理されたデータを遠隔地の管理センタに構築された管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。報知デバイス73には、フラットパネルディスプレイやランプやブザーが含まれており、走行注意情報や自動操舵走行での目標走行経路からの外れなど、運転者に報知したい種々の情報を視覚的または聴覚的の形態で運転者や操作者に対して報知する。報知デバイス73と出力処理部7との間の信号伝送は、有線または無線で行われる。
【0027】
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードで走行中に自動/手動切替操作具83を操作することで、手動操舵での走行に切り替えられ、手動操舵での走行中に自動/手動切替操作具83を操作することで、自動操舵での走行に切り替えられる。
【0028】
制御ユニット4には、
図1を用いて既に説明した機能部である、走行制御部40、走行距離算出部51、走行時間算出部52、作業管理部50が備えられている。作業装置30を制御するために、作業制御部54が備えられている。このトラクタは、自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能である。このため、走行制御部40には、手動走行制御部41とともに自動走行制御部42が含まれる。この自動走行では、予め設定された目標走行経路に沿って走行するので、この目標走行経路を設定する経路設定部61、設定された目標走行経路の所定位置まで走行するまでの適正な時間である目標走行時間を設定する目標走行時間設定部62が備えられている。
【0029】
目標走行経路の生成は、制御ユニット4または管理コンピュータ100あるいはその両方で行われる。制御ユニット4で、目標走行経路の作成を行う場合には、経路生成アルゴリズムを有する経路生成部63が制御ユニット4に備えられる。管理コンピュータ100で目標走行経路が生成される場合は、生成された目標走行経路が制御ユニット4に送られ、経路設定部61によって設定される。自動走行制御部42は、目標走行経路と自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力する。走行制御部40を構成する手動走行制御部41及び自動走行制御部42のいずれもが、操作指示により、走行機構10に一定車速での走行を命じる定車速指令を与えることができる。これにより、自動走行と手動走行のいずれであっても、自動的に一定車速(直進走行と旋回走行とで異なる車速を採用してもよい)を維持して走行する定車速走行が可能である。
【0030】
この実施形態においても、作業管理部50には、
図1を用いて説明した、進捗度算出部501及びスリップ率算出部502が備えられている。制御ユニット4に入力されたデータや制御ユニット4で生成されたデータは、記録部55に記録され、記録されたデータのなかで指定されたものは、リアルタイム処理またはバッジ処理で、管理コンピュータ100に転送される。
【0031】
作業管理部50で管理されている各種項目、例えば進捗度、スリップ率、自動走行時の方位ずれ及び位置ずれなどが、所定の許容範囲を超えた場合、報知デバイス73を通じて警報等を発するための報知データを生成する報知部56も備えられている。また、ボタンなどの操作によって、進捗度などは報知デバイス73を通じて報知させることも可能である。
【0032】
トラクタの走行とともに、制御ユニット4で経時的に取り扱われるデータ群の一例が、
図5に模式的なタイムチャートで示されている。走行地点を結んだトラクタの走行経路が、直線状で示されているが、その走行軌跡には直進経路や旋回経路が含まれている。つまり、
図5の例では、走行地点P00からP04までが直進走行であり、P04からP05までが旋回走行であり、P05から再び直進走行と旋回走行が繰り返されている。
【0033】
図5で示された走行例では、所定の時点(T00・・・T06で示している)における自車位置である走行地点を、P00・・・P06で示しており、各走行地点の間の距離である走行距離を、L00・・・L06で示している。この走行距離は、衛星測位モジュール80からの測位データに基づいて算出されるので、各走行距離に必要とした走行時間(t00・・・t06で示している)はスリップなどの影響を受けていない実距離走行時間となる。
【0034】
各走行地点間の目標走行時間(rt00・・・rt06で示している)が目標走行時間設定部62で設定されている場合、目標走行時間と実走行距離時間との差である時間ずれが算出される。この時間ずれが許容範囲を超えた場合、警告の報知や走行停止が行われる。また、走行スタートからの実走行距離時間を積算することで、その時点までの積算実距離走行時間を算出することができる。この算出された積算実距離走行時間も目標の積算実距離走行時間との差が容範囲を超えた場合(時点T04)、警告の報知や走行停止が行われる。なお、
図5では、各積算実距離走行時間が一定長さ(一定時間)で図示されているが、実際にはほとんど一定長さにはならない。
【0035】
実走行距離時間が目標走行時間を上回った場合、スリップが発生していると見なすことができるので、実走行距離時間と目標走行時間とからスリップ率(
図5ではk01・・・k06で示している)が算出され、記録される。スリップ率が予め設定された許容限度を超えた場合、警告が報知される。もちろん、スリップ率は、後輪12の車軸回転数から算出される見かけの走行距離と、測位データに基づいて算出された走行距離とから、スリップ率の算出が可能であるので、スリップ率算出部502は、この方法で算出されたスリップ率を用いてもよい。
【0036】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、作業地走行での走行時間管理を実行する機能は、実質的に作業車に構築されていたが、これらの機能のいくつかは、作業車以外に、例えば管理コンピュータ100に分散することも可能である。そのような時間ベース管理システムの一例が
図6に示されている。このシステムでは、目標走行経路を設定する経路設定部61、目標走行時間設定部62が、管理センタの管理コンピュータ100または管理者の通信端末に構築され、目標走行経路と目標走行時間とが作業車に転送される。実走行時間を算出する走行時間算出部52やスリップ率算出部502は、利用するデータの転送などの理由から作業車に構築されるのが好都合である。ただし、作業管理部50は、作業車または管理コンピュータまたは管理者の通信端末のいずれか都合のよい方に構築可能である。
【0037】
(2)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車、あるいは作業装置30としてドーザやローラ等を備える建設作業車等の種々の作業車も、実施形態として採用することができる。
【0038】
(3)
図1、
図4、
図6で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、走行しながら対地作業を行う作業車に適用可能である。特に、目標走行経路に沿って、自動走行する自動走行作業車に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 :車体
10 :走行機構
4 :制御ユニット
40 :走行制御部
41 :手動走行制御部
42 :自動走行制御部
50 :作業管理部
501 :進捗度算出部
502 :スリップ率算出部
51 :走行距離算出部
52 :走行時間算出部
54 :作業制御部
55 :記録部
56 :報知部
61 :経路設定部
62 :目標走行時間設定部
63 :経路生成部
7 :出力処理部
70 :通信処理部
73 :報知デバイス
8 :入力処理部
80 :衛星測位モジュール