(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、椅子に正規姿勢で着座した人の正面が向く図中矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子に正規姿勢で着座した人の上方の図中矢印UPの指す向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子に正規姿勢で着座した人の左側の図中矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。
【0014】
先ず、
図1〜
図7に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態の椅子1の側面図である。
図1に示すように、本実施形態の椅子1は、フロア上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、着座者が着座する座体4と、支基3の上面に取り付けられ座体4を前後スライド可能に支持する座受部材5と、座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ6と、背凭れ6を背後から支える背凭れ支持部材7と、背凭れ6の受面構成部20の湾曲形状を変更する湾曲形状変更手段8と、を有する。
【0015】
脚部2は、キャスタ9a付きの多岐脚9と、多岐脚9の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱10と、を有し、脚柱10の上端部に支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。支基3には、脚柱10の昇降調整機構と背凭れ支持部材7の傾動調整機構が内蔵されている。背凭れ支持部材7は、側面視略L字形状を有し、その前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。
なお、
図1中、符号11は、支基3上における背凭れ支持部材7の枢支軸であり、符号12は、支基3の側面に突設された傾動調整機構の操作ノブである。
【0016】
座体4は、骨格部を成す座板13と、座板13の上部に取り付けられる座本体14と、を有する。座本体14は、詳細な図示は省略するが、座板13の外周縁部に取り付けられる座枠(不図示)と、座板13の上面に設置されるウレタン等から成るクッション材(不図示)と、座枠に張設されてクッション材の上方側を覆うシート表皮材15と、を有する。
【0017】
図2は、この発明の第1の実施形態の椅子1の平面図である。
図3は、この発明の第1の実施形態の椅子1の背面図である。
図4は、この発明の第1の実施形態の椅子1の背面側斜視図である。
背凭れ6は、
図2に示すように、着座者と接して荷重を受ける受面構成部20を有する。受面構成部20は、
図2に示す平面視で、後方に凸となる湾曲形状を有する。本実施形態の受面構成部20は、樹脂成型された背凭れ板21(
図4参照)と、背凭れ板21の前面に設置されるクッション材(不図示)と、背凭れ板21に張設されてクッション材を覆うシート表皮材22と、によって形成されている。
【0018】
背凭れ6は、
図3に示す背面視で、四隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。また、背凭れ6は、
図1に示すように、前方に屈曲する突出部23を有する。本実施形態の背凭れ6は、
図1に示す側面視で、前方に凸の屈曲形状を有している。突出部23の頂点は、着座者の腰に対応する位置に形成されている。すなわち、突出部23は、
図1に示す側面視で、背凭れ6の下端部よりもやや上方の部分が前方に突出するように、適所で屈曲した形状を有している。
【0019】
背凭れ支持部材7は、
図1に示すように、背凭れ6を背後から支えるものである。背凭れ支持部材7は、背凭れ6よりも剛性が高く、背凭れ6で受けた着座者の荷重を支える強度部材である。背凭れ支持部材7は、樹脂成型されており、厚み大きさや補強リブの配置等により、背凭れ6よりも剛性が高く構成されている。背凭れ支持部材7は、
図3に示す背面視で、背凭れ6の外形と略同じ外形を有する枠部30を有する。枠部30は、背面側に大きく開口する開口部31を有している。
【0020】
背凭れ支持部材7は、
図1に示すように、背凭れ6の突出部23に対応する位置に、前方に屈曲する突出部32を有する。すなわち、突出部32は、
図1に示す側面視で、枠部30の下端部よりもやや上方の部分が前方に突出するように、適所で屈曲した形状を有している。この突出部32には、後述する湾曲形状変更手段8の操作部材50が配置されるようになっている。背凭れ支持部材7は、枠部30の下端部から前方に延出する連結部33を有する。連結部33は、支基3内の傾動調整機構に連結されている。
【0021】
図5は、この発明の第1の実施形態の湾曲形状変更手段8の構成図である。
図6は、この発明の第1の実施形態の湾曲形状変更手段8の係合溝60が設けられた背凭れ6の背面図である。
図7は、
図6における矢視A−A断面図である。なお、これらの図では、受面構成部20を形成するクッション材、シート表皮材22を不図示としている。
湾曲形状変更手段8は、
図5に示すように、背凭れ6の幅方向(左右方向)における中央部24と両端部25とを前後に相対移動させて受面構成部20の湾曲形状を変更するものである。
【0022】
湾曲形状変更手段8は、
図3に示すように、背凭れ6の中央部24を背凭れ支持部材7に固定する固定部40と、
図2及び
図5に示すように、背凭れ6の両端部25に設けられ、背凭れ支持部材7に対して前後に移動可能な移動端部41と、を有する。固定部40は、
図3に示すように、複数の固定ネジ42によって、背凭れ6の中央部24を背凭れ支持部材7に固定する構成となっている。
【0023】
固定ネジ42は、背凭れ6の中央部24の上端部を、背凭れ支持部材7の枠部30の上端部に固定すると共に、背凭れ6の中央部24の下端部を、背凭れ支持部材7の枠部30の下端部に固定する。固定ネジ42による背凭れ6の中央部24の上端部の固定は、背凭れ6の幅方向の中心とその両脇の三か所で行う構成となっている。また、固定ネジ42による背凭れ6の中央部24の下端部の固定は、背凭れ6の幅方向の中心の一か所で行う構成となっている。
【0024】
移動端部41は、背凭れ支持部材7に固定されない背凭れ6の自由端であり、背凭れ支持部材7に対して前後に移動可能な構成となっている。すなわち、移動端部41は、固定部40を支点とする背凭れ6(背凭れ板21)の弾性変形によって前後に移動する。移動端部41は、背凭れ6の突出部23に対応する位置に設けられている。背凭れ6の突出部23に対応する位置には操作部材50が配置されており、移動端部41は、操作部材50の押圧によって前後に移動する構成となっている。
【0025】
操作部材50は、
図1に示すように、背凭れ6及び背凭れ支持部材7のいずれか一方(本実施形態では背凭れ支持部材7)に移動可能に支持されている。操作部材50は、背凭れ6の中央部24と両端部25とを前後に相対移動させるためのものであり、着座者が把持可能な把持部51を有する。把持部51は、着座者の操作性を向上させるものであり、
図3に示すように、略L形状を有すると共に、背凭れ6の側部に突出し、着座者が座体4に座った状態で把持可能な構成となっている。
【0026】
操作部材50は、
図4及び
図5に示すように、背凭れ6及び背凭れ支持部材7の互いに対向する対向面26,34のいずれか一方側(本実施形態では対向面34側)に回転可能に支持される基端部52と、基端部52を中心に回動し、背凭れ6及び背凭れ支持部材7の対向面26,34の他方側(本実施形態では対向面26側)を押圧する先端部53と、を有する。また、背凭れ6及び背凭れ支持部材7の対向面26,34の他方側(本実施形態では対向面26側)には、
図4〜
図6に示すように、先端部53の回動軌跡に沿って、先端部53と係合可能な係合溝60が形成されている。
【0027】
係合溝60は、背凭れ6の背後に設けられている。係合溝60は、
図6に示すように、背凭れ6の両端部25の外形に沿って設けられている。すなわち、係合溝60は、高さ方向(上下方向)に延在している。また、係合溝60は、背凭れ6の突出部23に対応する位置を上下で跨ぐように延在しており、背凭れ6の突出部23より下側の傾斜形状に沿って幅方向(左右方向)内側に曲がるように形成されている。
【0028】
係合溝60は、
図7に示すように、所定の摺動性を有するライナー61とライナー支持部材63における保持部64とによって形成されている。ライナー61は、操作部材50の先端部53と摺接するものであり、先端部53の形状に対応した形状を有している。本実施形態の操作部材50の先端部53は、ボール状(球状)に形成されており、ライナー61は、断面視で円弧状に形成されている。ライナー61は、第1ライナー部材61aと第2ライナー部材61bに分割可能に構成されている。第1ライナー部材61aと第2ライナー部材61bは、凹凸の嵌合部62によって組み合わせ可能に構成されている。
【0029】
ライナー61は、ライナー支持部材63によって背凭れ6(背凭れ板21)の背後に固定されている。ライナー支持部材63は、ライナー61を保持する保持部64と、背凭れ板21に係合可能な係合突起65と、を有する。保持部64は、ライナー61の外径よりも狭い間隔で、一対で設けられている。係合突起65は、ライナー支持部材63の内側において、幅方向(左右方向)に突出して設けられている。なお、係合突起65は、不図示であるがライナー支持部材63の左右の適所に複数設けられている。なお、ライナー61とライナー支持部材63とは、二色成型等の手段により一体的に形成してもよい。
【0030】
背凭れ板21は、ライナー支持部材63を取り付け可能な取付溝66を有する。取付溝66には、複数のリブ67が立設している。ライナー61は、ライナー支持部材63と複数のリブ67との間に挟まれて固定されている。リブ67には、ライナー支持部材63の係合突起65と係合する係合穴68が設けられている。係合穴68は、リブ67に幅方向(左右方向)に貫通して設けられている。係合突起65と係合穴68とが係合することで、ライナー支持部材63が背凭れ板21に対して固定される。
【0031】
操作部材50は、先端部53が係合溝60に係合する一方、基端部52が回転軸69に回転自在に支持されている。回転軸69は、幅方向に延在し、背凭れ支持部材7に設けられている。基端部52は、回転軸69が挿通する軸受穴70を有する。軸受穴70の径は、回転軸69の径よりも大きくなるように設計されている。すなわち、基端部52は、回転軸69の軸線と直交する方向にガタを有している。本実施形態の操作部材50は、このガタにより、
図6に示す係合溝60に沿って先端部53を幅方向(左右方向)に移動可能としている。
【0032】
続いて、上記構成の湾曲形状変更手段8を用いた背凭れ6の形状変更の操作及びその作用について説明する。
【0033】
着座者は、座体4に座った状態で、
図3に示す背凭れ6の左右に突出する操作部材50の把持部51を把持し、上方に引き上げる。操作部材50は、基端部52が背凭れ支持部材7に回転可能に支持されており、基端部52を中心に先端部53が上方に回動する(
図1参照)。先端部53が上方に回動すると、操作部材50は、背凭れ6及び背凭れ支持部材7の互いに対向する対向面26,34間に突っ張り、対向面26,34間の距離を押し広げる。背凭れ支持部材7は、背凭れ6よりも剛性が高く、背凭れ6側が弾性変形する。
【0034】
背凭れ6は、
図3に示すように、中央部24が固定部40によって背凭れ支持部材7に固定されており、両端部25が背凭れ支持部材7に対して移動可能とされている。このため、背凭れ6の両端部25が、操作部材50の押圧によって前方に移動する(
図5参照)。背凭れ6の両端部25が前方に移動すると、背凭れ6の受面構成部20の曲率が大きくなり、
図5に示すように、受面構成部20の湾曲形状が形状C1から形状C2に変更されることとなる。
【0035】
本実施形態では、背凭れ6の背後が背凭れ支持部材7によって支えられているため、強度を背凭れ支持部材7によって確保できる分、背凭れ6全体の剛性を下げても着座者の荷重を受けることができる。したがって、背凭れ6に十分な弾性を与えて、
図2及び
図5に示すように、受面構成部20の湾曲形状を大きく変更させることができる。また、背凭れ6は、その幅方向における中央部24と両端部25とを前後に相対移動させるため、湾曲形状変更の際に幅方向における両端部25の間隔が大きく変更されることはない。
【0036】
すなわち、背凭れ6のその幅方向における中央部24と両端部25とを左右に相対移動させる従来の形態では、受面構成部20が張材等で構成されている場合、撓みにより着座者を支持する力が低下する虞があるが、本実施形態では、背凭れ6のその幅方向における中央部24と両端部25とを前後に相対移動させるため、着座者を支持する力の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、背凭れ6の幅方向における中央部24を背凭れ支持部材7に固定し、背凭れ6の幅方向における両端部25に設けられた移動端部41を操作部材50で押圧して前後に移動させるようになっている。この移動端部41は、背凭れ6の前方に屈曲する突出部23に対応する位置に設けられている。この突出部23は着座者の腰等を支えとなる座り心地に影響する部分であるため、突出部23に対応する位置を前後に移動させることで、着座者の着座感を容易に変更できる。例えば、着座者の腰をホールドするように背凭れ6の湾曲形状を変更することで、着座者の側方へのズレを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では、操作部材50を操作し、その基端部52を中心にその先端部53を回動させ、背凭れ6の対向面26側を押圧し、操作部材50をその対向面26,34間で突っ張らせることで、受面構成部20の湾曲形状を変更させるようになっている。背凭れ6には、
図7に示すように、先端部53の回動軌跡に沿って係合溝60が設けられている。このため、先端部53は、回動する間、係合溝60に係合しており、背凭れ6から外れて押圧が解除されてしまうことはない。また、先端部53は、ボール状に形成されており、背凭れ6への当たり方を一定に維持でき、また、操作部材50を回動させても操作感が変わることはない。
【0039】
このように、上述の本実施形態によれば、着座者と接して荷重を受ける受面構成部20を有する背凭れ6と、背凭れ6を背後から支える背凭れ支持部材7と、背凭れ6の幅方向における中央部24と両端部25とを前後に相対移動させて受面構成部20の湾曲形状を変更する湾曲形状変更手段8と、を有する、という構成を採用することによって、背凭れ6の湾曲形状を大きく変更可能であると共に着座者を支持する力の低下を抑制可能である椅子1が得られる。
【0040】
続いて、この発明の第2の実施形態について
図1〜
図7を援用し、
図8を参照して説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、上記実施形態と共通部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
図8は、この発明の第2の実施形態の背凭れ6の背凭れ板80の正面図である。この実施形態の椅子は、第1の実施形態とは背凭れ6の構造のみが異なり、その他の部分は第1の実施形態と同様とされている。
【0041】
この実施形態の背凭れ6の受面構成部20は、多数の線材部82によって高さ方向及び幅方向に複数の開口部が形成された背凭れ板80と、背凭れ板80の前面に設置されるクッション材(不図示)と、背凭れ板80に張設されてクッション材を覆うシート表皮材(不図示)と、背凭れ板80の背面を覆う背凭れカバー(不図示)と、によって形成されている。背凭れ板80は、その外縁部を形成するフレーム81と、フレーム81の内側において縦横に配置された複数の線材部82と、によって形成されている。
【0042】
受面構成部20は、上述の湾曲形状変更手段8による中央部24と両端部25との前後の相対移動によって変形する領域T1と、領域T1よりも相対的に変形しない領域T2と、を形成する境界部83を有する。本実施形態の境界部83は、背凭れ板80に形成されている。境界部83は、背凭れ板80の線材部82に形成されたスリット84を有する。スリット84は、線材部82の適所に設けられ、高さ方向(上下方向)に並んで配置されている。
【0043】
この境界部83は、線材部82に形成したスリット84によって適所の剛性を低下させ、変形の境界を形成するものである。この第2の実施形態によれば、境界部83があることで、変形する領域T1と、相対的に変形しない領域T2とを区別でき、受面構成部20の湾曲形状をある程度制御できる。すなわち、受面構成部20の変形を左右方向にある程度方向づけることができるため、第1の実施形態の作用効果をより確実に発揮し、背凭れ6の湾曲形状を大きく変更可能とすると共に、湾曲形状変更の際に着座者の着座感が大きく変更されてしまうことを抑制できる。
【0044】
続いて、この発明の第3の実施形態について
図1〜
図7を援用し、
図9を参照して説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、上記実施形態と共通部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
図9は、この発明の第3の実施形態の背凭れ6の背凭れ板21の平面図である。この実施形態の椅子は、第1の実施形態とは背凭れ板21の構造のみが異なり、その他の部分は第1の実施形態と同様とされている。
【0045】
この実施形態の境界部83は、背凭れ板21に形成されている。境界部83は、背凭れ板21に形成された溝85を有する。溝85は、背凭れ板21の適所に設けられ、高さ方向(上下方向)に延在している。この境界部83は、背凭れ板21に形成した溝85によって適所の厚み(剛性)を低下させ、変形の境界を形成するものである。この第3の実施形態によれば、境界部83があることで、変形する領域T1と、相対的に変形しない領域T2とを区別でき、受面構成部20の湾曲形状を制御できる、という第2の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0046】
続いて、この発明の第4の実施形態について
図1〜
図7を援用し、
図10〜
図12を参照して説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、上記実施形態と共通部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
図10は、この発明の第4の実施形態の背凭れ6と背凭れ支持部材7との固定部40の正面図である。
図11は、
図10における矢視B−B断面図である。
図11は、この発明の第4の実施形態の背凭れ6と背凭れ支持部材7との組み合わせ方を説明する正面図である。この実施形態の椅子は、第1の実施形態とは背凭れ6、背凭れ支持部材7、固定部40の構造のみが異なり、その他の部分は第1の実施形態と同様とされている。
【0047】
図10に示すように、この実施形態の背凭れ6の受面構成部20は、多数の線材部82によって高さ方向及び幅方向に複数の開口部が形成された背凭れ板80と、背凭れ板80の前面に設置されるクッション材(不図示)と、背凭れ板80に張設されてクッション材を覆うシート表皮材(不図示)と、背凭れ板80の背面を覆う背凭れカバー(不図示)と、によって形成されている。背凭れ板80は、その外縁部を形成するフレーム81と、フレーム81の内側において縦横に配置された複数の線材部82と、によって形成されている。
【0048】
フレーム81は、その下端部中央を分断するスリット86を有する。スリット86によって形成される空間は、線材部82によって形成された下端部中央の開口部87と連通している。このため、背凭れ板80は、下端部中央で二股に分かれるようになっている。
背凭れ支持部材7は、
図12に示すように、枠部30の内側に、剛性を確保するための複数のリブ90が縦横に設けられている。このリブ90は、枠部30の下端部及び連結部33に形成されている。
【0049】
湾曲形状変更手段8は、
図10に示すように、背凭れ6の中央部24を背凭れ支持部材7に固定する固定部40を有する。固定部40は、背凭れ6の中央部24の上端部を背凭れ支持部材7の枠部30の上端部に固定する固定ネジ42と、背凭れ6の中央部24の下端部と背凭れ支持部材7の下端部とを係合させる係合部43と、を有する。係合部43は、
図12に示すように、背凭れ6に設けられた係合突起44と、背凭れ支持部材7に設けられた係合溝45と、から形成されている。係合部43は、背凭れ板80の下端部を開く方向への背凭れ6の変形を許容しつつ、背凭れ6の下端部の前方への移動(抜け)を規制するものである。
【0050】
係合突起44は、背凭れ板80に一体的に形成されている。係合突起44は、背凭れ板80の下端部から下方に延びる棒体であり、スリット86を挟んだ両側に一対で設けられている。この係合突起44は、前方に膨らんだ先端部44aを有している。
一方、係合溝45は、背凭れ支持部材7に一体的に形成されている。係合溝45は、枠部30の下端部のリブ90の間に形成された溝であり、係合突起44に対応して一対で設けられている。この係合溝45は、左右方向に延在して形成されている。
【0051】
図11の断面図に示すように、係合溝45は、前方斜め上方に向いて開口しており、その開口に係合突起44が挿入されるようになっている。係合溝45は、前壁を形成するリブ90の側面に形成された開口部46を有する。係合突起44の先端部44aは、開口部46と係合することで、前方斜め上方への抜けが規制されるようになっている。開口部46は、
図10に示すように、左右方向に延在して形成されている。このため、係合突起44は、先端部44aが開口部46に係合した状態で、左右に移動可能な構成となっている。
【0052】
上記構成の第4実施形態によれば、背凭れ6の中央部24の下端部を完全に固定せず、左右方向の変形を許容しつつ、前方への移動を規制する半固定状態とすることができる。上述したように、背凭れ6は、背凭れ6の幅方向における中央部24を背凭れ支持部材7に固定し、背凭れ6の幅方向における両端部25に設けられた移動端部41を操作部材50で押圧して前後に移動させるようになっている。この第4実施形態によれば、背凭れ6の中央部24の下端部が完全に固定されていないため、移動端部41の前後の移動に追従して左右方向に柔軟に変形できる。これにより、操作部材50の操作に要する力が上記第1実施形態よりも小さくなり、操作部材50の操作性を向上させることができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、操作部材の先端部が背凭れの対向面側を押圧する構成について説明したが、本発明は、操作部材の先端部が背凭れ支持部材の対向面側を押圧する構成であっても良い。また、この場合、背凭れの対向面側に係合溝が形成されている構成を採用することが好ましい。
【0055】
また、例えば、上記実施形態では、操作部材の基端部が軸受穴に回転軸を挿通することで支持される構成について説明したが、本発明は、操作部材の基端部がボールジョイントで支持される構成であっても良い。但し、ボールジョイントの場合、あらゆる方向の荷重に反応して動いてしまうため、着座者からの荷重が過大である場合には、上記実施形態のように軸受穴を大きく設計し、回転軸の軸線と直交する方向に敢えてガタを持たせた頑強な構成を採用することが好ましい。
【0056】
また、例えば、上記実施形態では、受面構成部が背凭れ板及びその前面に配置したクッション材等によって形成される構成について説明したが、本発明は、受面構成部が枠部材に張設されたメッシュ等の張材によって形成される構成であっても良い。なお、この場合、枠部材が弾性変形可能に構成され、操作部材によって前後方向に押圧される構成を採用することが好ましい。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、背凭れの幅方向における中央部を固定し、背凭れの幅方向における両端部を前後に移動させる構成について説明したが、本発明は、背凭れの幅方向における両端部を固定し、背凭れの幅方向における中央部を前後に移動させる構成であっても良い。この場合、背凭れの幅方向における中央部の背後に背凭れ支持部材を配置し、操作部材で中央部を押圧する構成を採用することが好ましい。
【0058】
また、例えば、上記実施形態では、操作部材によって背凭れの幅方向における中央部と両端部とを前後に相対移動させる構成について説明したが、本発明は、操作部材を用いずに、直接手で背凭れの幅方向における中央部と両端部とを前後に相対移動させる構成であっても良い。但し、操作部材を用いれば、直接手で移動させるよりも軽力で、背凭れの湾曲形状を変更することができる。
【0059】
また、例えば、上記実施形態では、固定部として、背凭れの中央部の下端部を完全に固定せず、左右方向の変形を許容しつつ、前方への移動を規制する半固定状態とする係合部を採用する構成について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、背凭れの中央部の下端部の前方の移動(抜け)を規制する突起状の係止部を設けて、背凭れの中央部の下端部の固定を当該係止部による係止のみとして半固定状態とする構成を採用してもよい。
【0060】
また、例えば、上記実施形態では、固定部として、背凭れの中央部の上端部を背凭れ支持部材の枠部の上端部に固定する固定ネジを採用する構成について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、背凭れの中央部の上端部の後方に、複数の係合突起を形成し、これら係合突起が背凭れ支持体に形成した係合凹部に係合することによって、背凭れの中央部の上端部が背凭れ支持部材の枠部の上端部に固定される構成を採用してもよい。また、この係合凹部の寸法に若干の遊びを設けることによって、背凭れの中央部の上端部においても半固定状態とし、背凭れを背凭れ支持部材に対して動きやすくすると共に、これによって操作部材の操作性をより軽くすることが可能となる。