(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実施の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0010】
図1は、実施形態に係るエレベータシステム1の概略構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るエレベータシステム1においては、複数台の乗りかご10の運転動作が統括的に制御される。複数台の乗りかご10の一つ一つは「号機」と称されてもよい。
【0011】
図1に示すように、エレベータシステム1は、複数台の乗りかご10と、乗場行先階登録装置20と、群管理制御装置30と、を備えている。なお、
図1では、A号機、B号機、C号機の3台の乗りかご10を図示しているが、乗りかご10の台数はこれに限定されず、乗りかご10の台数は2台以上であれば任意の数であって構わない。また、
図1では、1台の乗場行先階登録装置20を図示しているが、乗場行先階登録装置20の台数はこれに限定されず、乗場行先階登録装置20の台数は任意の数であって構わない。
【0012】
各号機10には、乗場行先階登録装置20と通信するための通信IC11が設置されている。通信IC11は、例えば、乗りかご10内に設置される。通信IC11は、乗場行先階登録装置20と通信し、乗りかご10に関する設定情報を乗場行先階登録装置20に送信する。設定情報は、乗りかご10(通信IC11)ごとに予め設定される固有の情報であり、詳細については後述するが、通信IC11が設置された乗りかご10を識別するための号機情報と、対応付けられた号機情報により識別される乗りかご10と乗場行先階登録装置20との位置関係を推定するために利用される位置情報と、を含む。なお、通信IC11は、設定情報を送信するためのICであることから、送信ICと称されてもよい。
【0013】
乗場行先階登録装置20は、各号機10に設置された通信IC11と通信するための通信IC21を備えている。通信IC21は、各号機10に設置された通信IC11と通信し、各号機10の通信IC11から送信されて来る設定情報を受信する。詳細については後述するが、乗場行先階登録装置20は、通信IC21により受信された設定情報に基づいて、各号機10と乗場行先階登録装置20との位置関係を推定し、各号機10と乗場行先階登録装置20との位置関係を示す情報を、利用者に通知するための利用者通知情報として登録・保持する機能を有している。なお、通信IC21は、設定情報を受信するためのICであることから、受信ICと称されてもよい。
【0014】
また、乗場行先階登録装置20は、利用者の操作に応じて当該利用者の行先階の登録を受け付けると、当該行先階と、当該行先階の登録操作が行われた階床(つまり、乗場行先階登録装置20の設置階床)とを対応付けた行先階ホール呼びを生成し、これを群管理制御装置30に送信する。
【0015】
なお、本実施形態に係る乗場行先階登録装置20は、テンキーや、階床を示す階床ボタンを押下して行先階を登録する打ち込み式の乗場行先階登録装置であってもよいし、セキュリティゲートとICカードとを連動させた乗場行先階登録装置であって、セキュリティゲートを通過するためにICカードがかざされると、ICカードに予め記録された行先階を登録するゲート連動式の乗場行先階登録装置であってもよい。
【0016】
群管理制御装置30は、各号機10の運転動作を制御する。群管理制御装置30は、乗場行先階登録装置20から送信されて来る行先階ホール呼びを受信すると、当該行先階ホール呼びの割当号機を、群管理している各号機10の中から選定する割当処理を実行する。例えば、群管理制御装置30は、各号機10が行先階ホール呼びの登録階に到着するまでの時間や、各号機10が行先階ホール呼びの行先階に到着するまでの時間、エレベータシステム全体の運行効率などを総合的に考慮して、割当号機を選定する。群管理制御装置30は、上記した割当処理の結果、割当号機として選定された号機10の運転動作を制御する。群管理制御装置30は、上記した割当処理の結果、選定した割当号機を示す割当号機情報を乗場行先階登録装置20に送信する。
【0017】
乗場行先階登録装置20は、群管理制御装置30から送信されて来る割当号機情報を受信すると、当該割当号機情報により示される割当号機を利用者に通知する。これによれば、利用者は、自身の行先階に行くためにどの号機に乗車すればよいかを把握することが可能である。
【0018】
以下では、主に、乗場行先階登録装置20が、各号機10に設置された通信IC11から送信されて来る設定情報に基づいて、各号機10との位置関係を示す利用者通知情報を生成し、これを登録・保持する機能について説明する。
【0019】
図2は、乗場行先階登録装置20の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、乗場行先階登録装置20は、通知部201、設定情報受信部202、設定部203、利用者通知情報記憶部204、呼び登録部205、割当号機情報受信部206、表示部207、などを備えている。
【0020】
通知部201は、利用者通知情報記憶部204に利用者通知情報を登録するための設定モードが起動されたことを群管理制御装置30に通知する機能を有している。設定モードの起動、つまり、利用者通知情報の登録は、乗場行先階登録装置20が乗場に設置された際の初期設定時、あるいは、定期メンテナンス時、などに行われる。
【0021】
設定情報受信部202は、
図1に示した通信IC21の一機能に相当する。設定情報受信部202は、各号機10の通信IC11から送信されて来る設定情報を受信する機能を有している。設定情報は、通信IC11が設置された乗りかご10を識別するための号機情報と、対応付けられた号機情報により識別される乗りかご10と乗場行先階登録装置20との位置関係を推定するために利用される位置情報と、を含む情報である。なお、通信IC21は、複数のアンテナ素子が規則的に配列されたアレイアンテナを含んでいてもよく、設定情報受信部202は、このアレイアンテナを利用して、各号機10の通信IC11から送信されて来る設定情報を受信してもよい。
【0022】
設定部203は、設定情報受信部202により受信された設定情報に基づいて利用者通知情報を生成し、これを利用者通知情報記憶部204に登録する機能を有している。具体的には、設定部203は、受信された設定情報に含まれる位置情報に基づいて、当該設定情報に含まれる号機情報により識別される乗りかご10が乗場行先階登録装置20から見てどの方向に位置しているかを推定する。例えば、設定部203は、受信された設定情報に含まれる位置情報を用いて公知の到来方向推定処理を行い、当該設定情報に含まれる号機情報により識別される乗りかご10が乗場行先階登録装置20から見てどの方向に位置しているかを推定する。到来方向推定方法としては、ビームフォーマ(beamformer)法、Capon法、線形予測(linear prediction)法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などが一例に挙げられるが、任意の方法が使用されて構わない。
【0023】
設定部203は、上記した到来方向推定処理により、設定情報に含まれる号機情報により識別される乗りかご10が乗場行先階登録装置20から見てどの方向に位置しているかを推定すると、当該号機情報と、当該号機情報により識別される乗りかご10が位置すると推定された方向を示す方向情報とを対応付けた利用者通知情報を生成し、これを利用者通知情報記憶部204に登録する。設定部203は、受信された全ての設定情報について到来方向推定処理を実行し、各号機10に対応する利用者通知情報の生成・登録を行う。
【0024】
利用者通知情報記憶部204は、設定部203により生成された利用者通知情報を保持(記憶)する。
ここで、
図3を参照して、利用者通知情報のデータ構造の具体例について説明する。例えば
図3に示す利用者通知情報I1によれば、乗場行先階登録装置20から見た「A号機」の方向が「左方向」であることが示される。また、
図3に示す利用者通知情報I2によれば、乗場行先階登録装置20から見た「B号機」の方向が「直進方向」であることが示される。さらに、
図3に示す利用者通知情報I3によれば、乗場行先階登録装置20から見た「C号機」の方向が「右方向」であることが示される。なお、
図3では、方向情報により示される方向が、左右方向または直進方向である場合を例示したが、方向情報により示される方向はより細分化されていても構わない。
【0025】
呼び登録部205は、利用者の操作に応じて当該利用者の行先階の登録を受け付けると、当該行先階と、当該行先階の登録操作が行われた階床(つまり、乗場行先階登録装置20の設置階床)とを対応付けた行先階ホール呼びを生成し、これを群管理制御装置30に送信する機能を有している。
【0026】
割当号機情報受信部206は、群管理制御装置30から送信されて来る割当号機情報を受信する機能を有している。
【0027】
表示部207は、割当号機情報受信部206により受信された割当号機情報により示される割当号機を号機情報として含む利用者通知情報を利用者通知情報記憶部204から取得し、これを乗場行先階登録装置20の表示ディスプレイに表示する。
【0028】
図4は、乗場行先階登録装置20の表示ディスプレイに表示される利用者通知情報の表示例を示す図である。
図4では、利用者通知情報記憶部204に記憶された利用者通知情報I1が表示部207によって取得され、当該利用者通知情報I1が表示ディスプレイに表示されている場合を想定する。これによれば、利用者は、自身の行先階に行くためには「A号機」に乗車すればよいこと、A号機に乗車するためには「左方向」に進めばよいこと、を把握することができる。なお、
図4では、「左方向」を示すために左方向を向いた矢印が表示される場合を例示したが、方向を示す態様はこれに限定されず、例えば「左方向に進んで下さい」などのメッセージが表示されてもよい。
【0029】
次に、
図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステム1の動作の一例について説明する。
図5に示す一連の動作は、利用者通知情報を生成し、これを利用者通知情報記憶部204に登録するために行われる動作であり、例えば、乗場行先階登録装置20が乗場に設置された際の初期設定時、あるいは、定期メンテナンス時、などに行われる。
【0030】
まず、乗場行先階登録装置20の通知部201は、保守員の操作に応じて設定モードが起動されると、設定モード起動通知を群管理制御装置30に送信する(ステップS1)。設定モード起動通知には、設定モードが起動された旨の他に、乗場行先階登録装置20の設置階床を示す階床情報が含まれる。
【0031】
群管理制御装置30は、乗場行先階登録装置20からの設定モード起動通知を受信すると、当該設定モード起動通知に含まれる階床情報により示される設置階床に乗りかご10を移動させるための指示を、エレベータシステム1に含まれる全号機に出力する(ステップS2)
エレベータシステム1に含まれる全号機が、群管理制御装置30からの指示にしたがって、乗場行先階登録装置20の設置階床に移動すると(ステップS3)、各号機10に設置された通信IC11は、乗場行先階登録装置20に設定情報を送信する(ステップS4)。各号機10の通信IC11から送信される設定情報は、乗場行先階登録装置20の設定情報受信部202(通信IC21)により受信される。
【0032】
乗場行先階登録装置20の設定部203は、エレベータシステム1に含まれる複数号機のうちの一つ(以下、対象号機と表記する)を選択し(ステップS5)、当該対象号機からの設定情報が設定情報受信部202により受信されたかどうかを確認する(ステップS6)。
【0033】
ステップS6の処理の結果、対象号機に関する設定情報が設定情報受信部202により受信されていない場合(ステップS6のNo)、設定部203は、当該対象号機に関する利用者通知情報を手動で設定する必要があることを、保守員に対して通知する(ステップS7)。保守員は、上記した通知を受けると、対象号機に関する利用者通知情報を手動で登録する。具体的には、保守員は、対象号機の号機情報と、乗場行先階登録装置20から見た対象号機が位置する方向を示す方向情報とを入力して、対象号機に関する利用者通知情報を利用者通知情報記憶部204に登録する。
【0034】
一方で、ステップS6の処理の結果、対象号機に関する設定情報が設定情報受信部202により受信されている場合(ステップS6のYes)、設定部203は、受信された設定情報に基づいて、当該対象号機に関する利用者通知情報を生成し、これを利用者通知情報記憶部204に登録する(ステップS8)。具体的には、設定部203は、設定情報に含まれる号機情報により識別される号機(つまり対象号機)が乗場行先階登録装置20から見てどの方向に位置するかを公知の到来方向推定処理により推定し、対象号機を示す号機情報と、推定された方向を示す方向情報とを対応付けた利用者通知情報を生成して、これを利用者通知情報記憶部204に登録する。
【0035】
しかる後、設定部203は、エレベータシステム1に含まれる全号機を対象号機として選択したか否かを判定し(ステップS9)、全号機を対象号機として選択したと判定した場合(ステップS9のYes)、ここでの一連の動作を終了させる。
【0036】
一方で、ステップS9の処理の結果、エレベータシステム1に含まれる全号機を対象号機として選択していないと判定した場合(ステップS9のNo)、設定部203は、上記したステップS5の処理に戻り、まだ対象号機として選択していない号機を対象号機として選択し、再度同様な動作を行う。
【0037】
以上説明した一実施形態に係るエレベータシステム1は、設定情報を送信する通信IC11を備えた複数台の乗りかご10と、各号機10に設置された通信IC11から送信されて来る設定情報を受信する通信IC21を備えた乗場行先階登録装置20と、を備えている。乗場行先階登録装置20は、各号機10の通信IC11から送信されて来る設定情報に基づいて、各号機10が自装置から見てどの方向に位置するかを推定し、推定された方向を示す方向情報と、号機情報とを対応付けた利用者通知情報を生成して、これを登録・保持する機能を有している。
【0038】
これによれば、保守員が利用者通知情報に相当する情報を手動で登録する手間を省略することが可能となるため、保守員にかかる負担を軽減することができる。つまり、保守員の現場での作業量および作業時間を減らすことが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る乗場行先階登録装置20は、群管理制御装置30から送信されて来る割当号機情報を受信すると、当該割当号機情報により示される割当号機に関する利用者通知情報を表示ディスプレイに表示し、割当号機と当該割当号機までの方向(歩行方向)とを利用者に対して通知する機能を有している。これによれば、利用者は、割当号機だけでなく、当該割当号機に乗車するためにはどの方向に進めばよいかを把握することができる。つまり、利用者の利便性を向上させることが可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、通信IC11が乗りかご10内に設置されている場合を想定したが、通信IC11の設置位置はこれに限定されず、通信IC11は各階床の乗場ドア近辺(例えば、乗場ドア表面や三方枠など)に号機ごとに設置されてもよい。例えば、通信IC11は、A号機に対応する1階の乗場ドア、B号機に対応する1階の乗場ドア、C号機に対応する1階の乗場ドア、A号機に対応する2階の乗場ドア、B号機に対応する2階の乗場ドア、・・・、などに設置されてもよい。これによれば、通信IC11の設置数は増加してしまうものの、利用者通知情報の生成・登録に際して、全号機を乗場行先階登録装置20の設置階床に移動させる必要がなくなるため、利用者通知情報の生成・登録にかかる時間を短縮させることが可能である。
【0041】
また、本実施形態では、利用者通知情報が、号機情報および方向情報を含む情報であるとしたが、これに限定されず、利用者通知情報は、号機情報により識別される乗りかご10の乗場マップ上での位置を示す画像情報をさらに含むとしてもよい。これによれば、例えば
図6に示すような表示を実現させることが可能である。
図6の表示例によれば、利用者は、自身の行先階に行くためには「A号機」に乗車すればよいこと、A号機に乗車するためには「左方向」に進めばよいこと、A号機の乗場マップ上での位置(つまり、A号機の詳細な位置)、を把握することができる。つまり、
図6の表示例によれば、乗場行先階登録装置20から見て同一方向に複数台の乗りかご10が並んで設置されている場合にも対応することが可能であり、利用者の利便性をさらに向上させることが可能である。
【0042】
さらに、本実施形態では、設定情報が、号機情報および位置情報を含む情報であるとしたが、これに限定されず、設定情報は、号機情報のみを含むとしてもよい。この場合、設定部203は、位置情報ではなく号機情報を用いて公知の到来方向推定処理を行い、当該号機情報により識別される乗りかご10が乗場行先階登録装置20から見てどの方向に位置しているかを推定する。
【0043】
本実施形態では、乗りかご10の通信IC11と、乗場行先階登録装置20の通信IC21とを利用して、乗場行先階登録装置20から見た各号機10の方向を推定するとしたが、通信IC11および通信IC21の用途はこれに限定されず、例えば、乗場行先階登録装置20から各号機10までの水平距離の算出に利用されてもよい。算出された水平距離は群管理制御装置30において実行される割当処理などに利用することが可能であり、例えば、利用者が乗場行先階登録装置20から各号機10まで移動するのにかかると予測される時間(予測移動時間)の算出に利用されてもよい。
【0044】
以上説明した一実施形態によれば、号機情報および方向情報を含む利用者通知情報を自動で登録することが可能となり、保守員にかかる負担を軽減し得るエレベータシステム1および乗場行先階登録装置20を提供することが可能である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】複数号機の乗りかごと10、群管理制御装置30と、乗場行先階登録装置20とを含む。各号機には、乗場行先階登録装置20と通信する第1通信部が設置される。乗場行先階登録装置20は、記憶部と、第2通信部と、設定部と、表示部と、を備える。記憶部には、利用者に通知する利用者通知情報が登録される。第2通信部は、各号機の第1通信部と通信する。設定部は、第1通信部からの各号機に関する情報に基づいて、各号機と乗場行先階登録装置との位置関係を示す利用者通知情報を生成し、これを記憶部に登録する。表示部は、群管理制御装置30から通知される割当号機に関する利用者通知情報を記憶部から取得し、当該利用者通知情報に基づいて、割当号機と割当号機までの方向とを表示する。