(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6972249
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20211111BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B66B7/00 K
B66B1/34 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-127920(P2020-127920)
(22)【出願日】2020年7月29日
【審査請求日】2020年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 貴子
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−010305(JP,A)
【文献】
特開平9−278312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシンルームレスのエレベータにおいてかごを昇降路で昇降させる駆動部を制御する制御盤を旧制御盤から新制御盤に交換するときに臨時で使用される制御装置であって、
前記旧制御盤の取り外しに適した前記かごの位置である第1のかご位置と、前記新制御盤の取り付けに適した前記かごの位置である第2のかご位置と、を記憶する記憶部と、
前記制御装置と接続され前記かごを移動させる方向を指示するための操作部から前記かごを前記第1のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、前記かごの位置を検出する検出部から前記かごの現在位置の検出信号を入力したときに、前記かごを前記現在位置から前記第1のかご位置に移動させるための制御量を算出し、
前記操作部から前記かごを前記第2のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、前記検出部から前記かごの現在位置の検出信号を入力したときに、前記かごを前記現在位置から前記第2のかご位置に移動させるための制御量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記制御量に基づいて前記駆動部を制御して前記かごを移動させる制御部と、を備える制御装置。
【請求項2】
マシンルームレスのエレベータにおいてかごを昇降路で昇降させる駆動部を制御する制御盤を旧制御盤から新制御盤に交換するときに臨時で使用される制御装置であって、
前記旧制御盤の取り外しから前記新制御盤の取り付けまでの複数の作業手順と、前記作業手順ごとに適した前記かごの位置と、を対応付けたかご位置情報を記憶する記憶部と、
前記制御装置と接続され前記かごを移動させる方向を指示するための操作部から前記作業手順を特定する操作信号を入力した場合に、前記かごの位置を検出する検出部から入力した前記かごの現在位置の検出信号と前記かご位置情報とに基づいて、前記かごを前記現在位置から当該作業手順に対応する前記かごの位置に移動させるための制御量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記制御量に基づいて前記駆動部を制御して前記かごを移動させる制御部と、を備える制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記かごを移動させる方向が、前記駆動部を制御していないときに前記かごが自然に移動する方向と逆方向の場合のみ、前記駆動部を制御して前記かごを移動させる、請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータにおいてかごを昇降路で昇降させる駆動部を制御する制御盤は、技術開発により、小型化や多機能化が進められている。また、制御盤における各構成部品(各種処理基板等)について、新型のものは、通信インタフェース規格や信号形式等の面で従来型のものと互換性を有しない場合が多い。そのため、エレベータの制御盤をリニューアルする場合、制御盤の全体を交換することが多い。
【0003】
また、マシンルームレスのエレベータでは、一般に、制御盤や巻上機などの機器は昇降路の上部に設置されている。したがって、旧制御盤を新制御盤に交換する場合、例えば、作業者はかごの上に乗ってその交換作業をすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−014395号公報
【特許文献2】特開2011−068437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、作業者がかごの上に乗って昇降路の上部で旧制御盤を新制御盤に交換する場合、作業者が作業を行う高さ位置は常に同じではなく高低差がある。しかしながら、旧制御盤を取り外してから新制御盤を取り付けるまでは、駆動部を制御できないため、かごを移動させることができず、作業者にとって不便であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、マシンルームレスのエレベータの昇降路において作業者が旧制御盤を新制御盤に交換するときに、かごを移動させることができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の制御装置は、マシンルームレスのエレベータにおいてかごを昇降路で昇降させる駆動部を制御する制御盤を旧制御盤から新制御盤に交換するときに臨時で使用される制御装置であって、前記旧制御盤の取り外しに適した前記かごの位置である第1のかご位置と、前記新制御盤の取り付けに適した前記かごの位置である第2のかご位置と、を記憶する記憶部と、前記制御装置と接続され前記かごを移動させる方向を指示するための操作部から前記かごを前記第1のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、前記かごの位置を検出する検出部から前記かごの現在位置の検出信号を入力したときに、前記かごを前記現在位置から前記第1のかご位置に移動させるための制御量を算出し、前記操作部から前記かごを前記第2のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、前記検出部から前記かごの現在位置の検出信号を入力したときに、前記かごを前記現在位置から前記第2のかご位置に移動させるための制御量を算出する算出部と、 前記算出部によって算出された前記制御量に基づいて前記駆動部を制御して前記かごを移動させる制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のエレベータ制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態のかご位置情報の例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態の制御装置における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のエレベータ制御システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本実施形態では、マシンルームレスのエレベータを対象とする。
【0010】
図1は、実施形態のエレベータ制御システムSの概略構成を示すブロック図である。エレベータ制御システムSは、かご1と、駆動部2と、カウンタウェイト3と、ロープ4と、旧制御盤5と、新制御盤6と、かご位置検出装置7(検出部)と、制御装置8と、操作部9と、を備える。なお、
図1で示している場所は、エレベータの昇降路の上部である。
【0011】
かご1とカウンタウェイト3は、ロープ4で連結されている。そのロープ4は、駆動部2に掛けられている。駆動部2は、例えば巻上機であり、駆動することでかご1を昇降路で昇降させる。
【0012】
ここでは、駆動部2を制御する制御盤を、旧制御盤5から新制御盤6に交換することを前提とする。その場合に、臨時で制御装置8を使用する。制御装置8は、旧制御盤5から抜いた配線を接続されて動作する構成となっている。
【0013】
制御装置8は、例えば、半導体素子や集積回路等から構成される基板で、各種信号を送受信したり、各種情報を記憶したり、各種演算処理を実行したりする。制御装置8は、主な構成として、処理部81と、記憶部82と、を備える。記憶部82は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成され、各種情報を記憶する。
【0014】
処理部81は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、各種演算処理を実行する。処理部81は、主な機能部として、取得部811と、算出部812と、制御部813と、を備える。また、操作部9は、制御装置8と接続され、かご1を移動させる方向を指示するための操作入力装置である。
【0015】
取得部811は、外部装置から各種信号を取得する。取得部811は、例えば、かご位置検出装置7からかご位置の検出信号を取得したり、操作部9から操作信号を取得したりする。
【0016】
ここで、例えば、記憶部82が、旧制御盤5の取り外しに適したかご1の位置である第1のかご位置と、新制御盤6の取り付けに適したかご1の位置である第2のかご位置と、を記憶しているものとする。その場合、算出部812は、操作部9からかご1を第1のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、かご位置検出装置7からかご1の現在位置の検出信号を入力したときに、かご1を現在位置から第1のかご位置に移動させるための制御量を算出する。また、算出部812は、操作部9からかご1を第2のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、かご位置検出装置7からかご1の現在位置の検出信号を入力したときに、かご1を現在位置から第2のかご位置に移動させるための制御量を算出する。そして、制御部813は、算出部812によって算出された制御量に基づいて駆動部2を制御してかご1を移動させる。
【0017】
より具体的には、以下の通りである。記憶部82が、
図2に示すかご位置情報を記憶しているものとする。
図2は、実施形態のかご位置情報の例を示す構成図である。かご位置情報では、作業対象装置と、作業手順と、かご位置と、が対応付けて記憶されている。作業対象装置は、旧制御盤5と新制御盤6である。
【0018】
作業手順は、旧制御盤5と新制御盤6のそれぞれに対応付けられている。つまり、複数の作業手順は、旧制御盤5の取り外しから新制御盤6の取り付けまでの作業手順を示している。そして、作業手順(作業手順A1、A2、・・・)ごとに、作業に適したかご位置(かご位置x
A1、x
A2、・・・)が対応付けられている。かご位置は、かご1の鉛直方向の位置を示す。
【0019】
なお、
図1において、範囲L1は、旧制御盤5に対する作業を行う場合の高さ位置の範囲である。また、範囲L2は、新制御盤6に対する作業を行う場合の高さ位置の範囲である。また、範囲L3は、範囲L1と範囲L2の両方を含む範囲である。
【0020】
算出部812は、操作部9から作業手順を特定する操作信号を入力した場合に、かご位置検出装置7から入力したかご1の現在位置の検出信号とかご位置情報(
図2)に基づいて、かご1を現在位置から当該作業手順に対応するかご1の位置に移動させるための制御量を算出する。そして、制御部813は、算出部812によって算出された制御量に基づいて駆動部2を制御してかご1を移動させる。
【0021】
また、制御部813は、かご1を移動させる方向が、駆動部2を制御していないときにかご1が自然に移動する方向(以下、「正方向」ともいう。)と逆方向の場合のみ、駆動部2を制御してかごを移動させるようにしてもよい。そうすれば、かご1を移動させる方向が正方向の場合には、駆動部2を駆動するための電力が不要になるだけでなく、駆動部2におけるモータ(不図示)を発電機として機能させて回生発電を行うことができる。
【0022】
次に、
図3を参照して、実施形態の制御装置8における処理等について説明する。
図3は、実施形態の制御装置8における処理を示すフローチャートである。まず、作業者M(
図2)は、新制御盤6と制御装置8と操作部9を所持してかご1の上に乗る。その後、旧制御盤5による駆動部2の制御により、かご1は旧制御盤5の近傍の所定位置まで移動して停止する。
【0023】
次に、作業者Mは、制御装置8を昇降路の近傍の壁に設置する。次に、作業者Mは、旧制御盤5から配線を抜いて、その配線を制御装置8に差す。これにより、制御装置8による駆動部2の制御が可能となる。つまり、制御装置8は、旧制御盤5から抜いた配線が届く範囲に設置する必要がある。
【0024】
そして、ステップS1において、制御装置8の取得部811は、制御装置8に接続された操作部9による操作があったか、つまり、操作部9から操作信号を入力したか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS1に戻る。ここで、例えば、作業者Mが、操作部9を操作して、旧制御盤5を取り外すための作業手順A1(
図2)を指定したものとする。そうすると、ステップS1でYesとなる。
【0025】
ステップS2において、算出部812は、作業手順(作業手順A1)を特定し、かご位置検出装置7から入力したかご1の現在位置の検出信号とかご位置情報(
図2)に基づいて、かご1を現在位置から当該作業手順に対応するかご1の位置(かご位置x
A1)に移動させるための制御量を算出する。
【0026】
次に、ステップS3において、制御部813は、作業手順に対応するかご位置にかご1を移動する。つまり、制御部813は、ステップS2で算出された制御量に基づいて駆動部2を制御してかご1を移動させる。ステップS3の後、ステップS1に戻る。
【0027】
このようにして、作業者Mは、作業手順ごとに操作部9で作業手順を指定するだけで、その作業手順(作業手順A1、A2、・・・)にとって適切な位置(かご位置x
A1、x
A2、・・・)にかご1を移動させることができる。
【0028】
そして、すべての作業手順の作業が終わった後、作業者Mは、制御装置8から配線を抜いて、その配線を新制御盤6に差す。これにより、新制御盤6による駆動部2の制御が可能となる。
【0029】
従来技術では、マシンルームレスのエレベータにおける制御盤の交換作業は、狭く、暗く、かごの上というすでに用品が設置されている足場の不安定な場所で重量物を扱う作業であり、作業者に大きな負担を強いていた。また、作業者が作業を行う高さ位置は常に同じではなく高低差があるが、旧制御盤を取り外してから新制御盤を取り付けるまでは、駆動部を制御できないため、かごを移動させることができず、作業者にとって不便であった。
【0030】
一方、本実施形態のエレベータ制御システムSによれば、旧制御盤5を新制御盤6に交換する場合に、臨時で制御装置8を使用して、操作部9から入力した操作信号に基づいて駆動部2を制御してかご1を移動させる。これにより、作業者は、旧制御盤5を取り外すときや新制御盤6を取り付けるときに、作業しやすいようにかご1の位置を変えることができる。
【0031】
具体的には、例えば、
図2に示すようなかご位置情報を用いることで、作業手順に対応したかご位置にかご1を容易に移動できる。
【0032】
したがって、作業性の向上や、制御盤のリニューアル工事の時間短縮を図ることができる。例えば、作業経験の少ない作業者が作業する場合、作業者は、各作業手順におけるかご1の適切な位置がすぐにはわからない。しかし、本実施形態の手法を用いることで、作業者は、操作部9で作業手順を指定するだけで、かご1が適切な位置に移動するので、作業効率が向上する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0034】
例えば、かご1の速度からかご1の移動に必要な時間を算出しておき、作業者による操作部9での1回の操作で、かご1をスムーズに移動させることができる。つまり、かご1が上下移動を繰り返すことがないようにすることで、かご1の移動効率を向上させるとともに、かご1に乗っている作業者の安全性をより向上させることができる。
【0035】
また、交換作業前に予めVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)の技術を用いて交換作業のシミュレーションをしておくことで、各作業手順におけるかご1の適切な位置を算出し、制御装置8の記憶部82に記憶させておいてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…かご、2…駆動部、3…カウンタウェイト、4…ロープ、5…旧制御盤、6…新制御盤、7…かご位置検出装置、8…制御装置、9…操作部、81…処理部、82…記憶部、811…取得部、812…算出部、813…制御部
【要約】
【課題】マシンルームレスのエレベータの昇降路において作業者が旧制御盤を新制御盤に交換するときに、かごを移動させる。
【解決手段】実施形態の制御装置は、マシンルームレスのエレベータにおいてかごを昇降路で昇降させる駆動部を制御する制御盤を旧制御盤から新制御盤に交換するときに臨時で使用される。記憶部は、旧制御盤の取り外しに適したかごの位置である第1のかご位置と、新制御盤の取り付けに適したかごの位置である第2のかご位置と、を記憶する。算出部は、例えば、制御装置と接続されかごを移動させる方向を指示するための操作部からかごを第1のかご位置に移動させる旨の操作信号を入力した場合であって、かごの位置を検出する検出部からかごの現在位置の検出信号を入力したときに、かごを現在位置から第1のかご位置に移動させるための制御量を算出する。制御部は、その制御量に基づいて駆動部を制御してかごを移動させる。
【選択図】
図1