(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2半導体領域における基底面転位密度は、前記第1半導体領域における基底面転位密度の3/1000以下である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体装置。
シリコンと炭素とを含む第1化合物を含む第1半導体領域であって、前記第1半導体領域は、第1〜第3領域を含み、前記第3領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第1領域及び前記第2領域は第1元素を含み、前記第1元素は、第2元素及び第3元素よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第2元素は、Ar、Kr、Xe及びRnよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第3元素は、Cl、Br、I及びAtよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第3領域は第1元素を含まない、または、前記第3領域における第1元素の濃度は、前記第1領域における第1元素の濃度よりも低く、前記第2領域における第1元素の濃度よりも低い、前記第1半導体領域を準備する工程と、
前記第1〜第3領域の上に、シリコンと炭素とを含む第2化合物を含む第2半導体領域を形成する工程と、
を備え、
前記第1半導体領域は、SiC基板であり、
前記第2半導体領域は、ドリフト層の少なくとも一部となる、半導体装置の製造方法。
シリコンと炭素とを含む第1化合物を含む第1半導体領域であって、前記第1半導体領域は、第1〜第3領域を含み、前記第3領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第1領域及び前記第2領域は第1元素を含み、前記第1元素は、第2元素及び第3元素よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第2元素は、Ar、Kr、Xe及びRnよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第3元素は、Cl、Br、I及びAtよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記第3領域は第1元素を含まない、または、前記第3領域における第1元素の濃度は、前記第1領域における第1元素の濃度よりも低く、前記第2領域における第1元素の濃度よりも低い、前記第1半導体領域を準備する工程と、
前記第1〜第3領域の上に、シリコンと炭素とを含む第2化合物を含む第2半導体領域を形成する工程と、
を備え、
前記第1半導体領域は、SiC基板であり、
前記第2半導体領域は、ドリフト層の少なくとも一部となる、基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態に係る基板及び半導体装置を例示する模式図である。
図1(a)は、
図1(b)のA1−A2線断面図である。
図1(b)は、
図1(a)の矢印ARから見た平面図である。
【0009】
これらの図に示す基板210は、半導体装置110の一部となる。基板210を用いて、半導体装置となる複数の部分が形成される。この複数の部分を分割することで、半導体装置110が得られる。基板210は、炭化珪素(SiC)を含む。半導体装置110は、炭化珪素に基づいている。
【0010】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、実施形態に係る基板210(及び半導体装置110)は、第1半導体領域10及び第2半導体領域20を含む。第1半導体領域10は、シリコンと炭素とを含む化合物(第1化合物)を含む。第1化合物は、例えば、SiCである。第2半導体領域20は、シリコンと炭素とを含む化合物(第2化合物)を含む。第2化合物は、例えば、SiCである。
【0011】
第1半導体領域10は、例えば、SiC基板である。第1半導体領域10は、例えば、SiCバルク単結晶基板である。第1化合物は、例えば、4H−SiCである。
第2半導体領域20は、例えば、ドリフト層の少なくとも一部となる。
【0012】
第1半導体領域10は、第1〜第3領域11〜13を含む。例えば、第1〜第3領域11〜13は、第2半導体領域20と実質的に接する。
【0013】
例えば、第1半導体領域10は、第1面10aを有する。第1面10aは、例えば、基板の上面である。第1面10aに、上記の第1〜第3領域11〜13が設けられる。第1面10aにおいて、第2半導体領域20がエピタキシャル成長により形成される。
【0014】
第3領域13は、第1領域11と第2領域12との間に位置する。第1領域11及び第2領域12は、第1元素を含む。第1元素は、第2元素及び第3元素よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Ar、Kr、Xe及びRnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3元素は、Cl、Br、I及びAtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第1元素は、Arである。第1元素は、例えば、Clでも良い。
【0015】
第3領域13は、第1元素を含まない。または、第3領域13における第1元素の濃度(例えば第3ピーク濃度)は、第1領域11における第1元素の濃度(例えば第1ピーク濃度)よりも低く、第2領域12における第1元素の濃度(例えば第2ピーク濃度)よりも低い。
【0016】
このように、第1面10aの近傍に、第1元素を含む複数の高濃度領域10Gが設けられる。複数の高濃度領域10Gの間の領域(低濃度領域10L)は、実質的に第1元素を含まない。
【0017】
複数の高濃度領域10Gの1つが、第1領域11に対応する。複数の高濃度領域10Gの別の1つが、第2領域12に対応する。低濃度領域10Lが、第3領域13に対応する。
【0018】
第1半導体領域10から第2半導体領域20への方向(例えば積層方向)を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0019】
第1領域11から第2領域12への方向を第2方向とする。第2方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する。この例では、第2方向は、X軸方向に対応する。第2領域12は、X軸方向(第2方向)において、第1領域11から離れる。
【0020】
図1(b)に示すように、この例では、複数の高濃度領域10G(例えば、第1領域11及び第2領域12など)は、Y軸方向に沿って延びる。後述するように、複数の高濃度領域10Gの少なくとも一部は、島状でも良い。低濃度領域10Lの少なくとも一部が島状でも良い。
【0021】
図1(a)に示すように、この例では、第1半導体領域10は、第4領域14をさらに含む。第1〜第3領域11〜13は、第4領域14と第2半導体領域20との間に位置する。第4領域14は第1元素を含まない。または、第4領域14における第1元素の濃度(例えば第4ピーク濃度)は、第1領域11における第1元素の濃度(例えば第1ピーク濃度)よりも低く、第2領域12における第1元素の濃度(例えば第2ピーク濃度)よりも低い。第4領域14は、低濃度領域10Mに対応する。
【0022】
上記の複数の高濃度領域10Gは、例えば、第1半導体領域10となるSiC層(SiC基板など)の表面の複数の部分に第1元素を導入することで形成できる。
【0023】
このように、実施形態においては、高濃度領域10G及び低濃度領域10Lが設けられる。例えば、高濃度領域10Gにおける格子定数は、低濃度領域10Lにおける格子定数よりも大きくなる。例えば、高濃度領域10Gから低濃度領域10Lに力(応力)が加わる。
【0024】
Geを含むSiCを半導体領域の全面に設ける参考例が考えられる。この参考例において、格子定数差に起因するミスフィット転位が基底面に発生し易い。例えば、積層欠陥の起点が増えてしまう場合がある。
【0025】
実施形態においては、高濃度領域10G及び低濃度領域10Lが設けられる。例えば、高濃度領域10Gが分割して設けられる。高濃度領域10Gでは、大きな応力が得られる。高濃度領域10Gが分割して設けられるため、ミスフィット転位の発生が抑制される。一方、低濃度領域10Lから第2半導体領域20に、エピタキシャル成長のために必要な原子配列情報を伝えることができる。これにより、第2半導体領域20において、良質な結晶が得られる。
【0026】
実施形態において、低濃度領域10Lは、高濃度領域10Gから、基底面に働く圧縮応力を受ける。例えば、低濃度領域10Lに存在する基底面転位10B(
図1(a)参照)は、鏡像力を受ける。これにより、表面(第1面10a)から深さ方向(Z軸方向)に向かって、転位の転換が生じる。例えば、基底面転位10B(BPD:basal plane dislocation)が表面に向かって曲がり、貫通刃状転位TED(threading edge dislocation)になる。例えば、半導体装置110(例えばパワーデバイス)の動作時において、注入されたホールが、この転換点まで届くことが抑制される。これにより、積層欠陥が拡張するような電子正孔対の再結合エネルギーが生じ難くなる。これにより、積層欠陥の拡張が抑制される。
【0027】
例えば、実施形態において、第3領域13及び第4領域14の少なくともいずれかにおいて、基底面転位10Bが貫通刃状転位10Eに変化する。
【0028】
実施形態においては、欠陥を少なくすることができる基板及び半導体装置を提供できる。
【0029】
例えば、閾値電流密度を超える電流密度の電流が流れると、基底面転位10Bの少なくとも一部となる部分転位から、積層欠陥が拡張する。高濃度領域10Gにおいては、この閾値電流密度を上昇することができる。例えば、Vf劣化が抑制できる。
【0030】
実施形態において、第2半導体領域20における基底面転位密度を、第1半導体領域10における基底面転位密度よりも低くすることができる。例えば、前者は、後者の3/1000以下である。例えば、前者は後者の1/10000以下でも良い。
【0031】
さらに、第1領域11及び第2領域12における結晶品質は、第3領域13における結晶品質よりも低いと考えられる。これは、第1領域11及び第2領域12が第1元素を含むことに起因する。このため、これらの領域の上に、第2半導体領域20を結晶成長したときに、第2半導体領域20のうちの第3領域13の上に位置する部分において、横方向成長が生じやすくなる。例えば、第3領域13の上から横方向に成長した第2半導体領域20が第1領域11及び第2領域12の少なくとも一部の上に延びる。これにより、より高い結晶品質を有する第2半導体領域
20が得られる。
【0032】
実施形態に係る1つの例において、第1半導体領域10及び第2半導体領域20は、例えばn形である。この場合、第1半導体領域10は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。第2半導体領域20は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。これらの元素は、n形の不純物に対応する。第1半導体領域10に含まれる上記の元素の濃度は、第2半導体領域20に含まれる上記の元素の濃度よりも高い。
【0033】
例えば、第1半導体領域10における上記の元素(例えば、窒素)の濃度は、1×10
18cm
−3以上1×10
19cm
−3以下である。第2半導体領域20における上記の元素(例えば、窒素)の濃度は、1×10
16cm
−3以上1×10
17cm
−3以下である。このような濃度の差が、これらの半導体領域の違いに関する情報の少なくとも一部となる。
【0034】
後述するように、第1半導体領域10は、アルミニウム及びガリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含んでも良い。この元素は、p形の不純物に対応する。このとき、第2半導体領域20は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。この元素は、n形の不純物に対応する。このような元素の種類の差が、これらの半導体領域の違いに関する情報の少なくとも一部となる。
【0035】
図2は、第1実施形態に係る基板及び半導体装置を例示するグラフ図である。
図2は、
図1(a)のB1−B2線に沿う部分における、元素の濃度を例示している。
図2の横軸は、厚さ方向(Z軸方向)における位置である。
図2の縦軸は、元素の濃度C0である。
図2の例では、第1半導体領域10及び第2半導体領域20は、窒素を含む。
図2には、窒素の濃度CNのプロファイルと、第1元素の濃度C1のプロファイルと、が例示されている。
【0036】
図2に示すように、第1半導体領域10における窒素の濃度C10は、第2半導体領域20における窒素の濃度C20よりも高い。1つの例において、第1半導体領域10における窒素の濃度C10(ピーク濃度)の1/10になる位置を、第1半導体領域10及び第2半導体領域20の境界とすることができる。
【0037】
一方、第1元素の濃度CGeのプロファイルは、分布を有する。例えば、第1元素の濃度C1のピークCpは、第1半導体領域10の中に位置する。第1元素の濃度C1のピークCpの1/10の第1元素の濃度C1(濃度Cq)となる位置が存在する。この位置は、第2半導体領域20の中に位置しても良い。例えば、第2半導体領域20の一部(第1領域11との界面の近傍)における第1元素の濃度は、第1領域11における第1元素の濃度C1のピーク(第1ピーク濃度)の1/10以上でもよい。
【0038】
例えば、高濃度領域10Gに含まれる第1元素の一部が、第2半導体領域20の中に移動することが考えられる。一方、分析の条件に応じて、高濃度領域10Gに含まれる第1元素の一部が、第2半導体領域20の中に位置するように、観測される場合があっても良い。このように、高濃度領域10Gに実質的に接して、または、高濃度領域10Gの極めて近傍に、第2半導体領域20が位置する。
【0039】
このように、実施形態に係る基板210(及び半導体装置110)において、第1〜第3領域11〜13は、第4領域14と第2半導体領域20との間に位置する。第2領域12は、第4領域14から第2半導体領域20への方向(例えばZ軸方向)と交差する方向(例えばX軸方向)において、第1領域11から離れる。第3領域13は、第1領域11と第2領域12との間に位置する。第1領域11及び第2領域12は第1元素を含む。一方、第3領域13は第1元素を含まない。または、第3領域13における第1元素の第3ピーク濃度は、第1領域11における第1元素の第1ピーク濃度よりも低く、第2領域12における第1元素の第2ピーク濃度よりも低い。第4領域14は第1元素を含まない。または、第4領域14における第1元素の第4ピーク濃度は、第1ピーク濃度よりも低く、第2ピーク濃度よりも低い。第2半導体領域20の一部における第1元素の濃度は、第1ピーク濃度の1/10以上である。
【0040】
このような基板210及び半導体装置110によれば、欠陥を少なくすることができる基板及び半導体装置を提供できる。
【0041】
第2元素(Ar、Kr、Xe及びRnよりなる群から選択された少なくとも1つ)は、化学的に安定で、不活性である。第1元素として第2元素を含む場合は、半導体領域の電気的な特性の変化を抑制しつつ、基底面転位10Bを貫通刃状転位10Eへ転換できる。
【0042】
一方、第1元素がCl(第3元素の1つ)である場合、半導体領域の電気的な特性の変化が懸念されるが、実質的な影響は観測されない。第1元素が第3元素である場合も、基底面転位10Bを貫通刃状転位10Eへ転換できる効果が得られる。
【0043】
実施形態において、第1領域11における第1元素の濃度は、例えば、1×10
17cm
−3以上1×10
21cm
−3以下である。第1領域11における第1元素の濃度が1×10
17cm
−3未満の場合、例えば、基底面転位10Bの貫通刃状転位10Eへ転換の効果が低い。第1領域11における第1元素の濃度が1×10
21cm
−3を超えると、例えば、第1領域11が漏れ電流の経路となる。例えば、半導体装置の動作に不都合が生じる場合がある。
【0044】
第
3領域1
3における第1元素の濃度は、例えば、1×10
15cm
−3以上1×10
17cm
−3未満である。第
3領域1
3における第1元素の濃度は、例えば、5×10
16cm
−3以下でも良い。
【0045】
図3は、第1実施形態に係る基板及び半導体装置を例示する模式的断面図である。
第1領域11から第2領域12への方向(例えばX軸方向)と、第1半導体領域10に含まれる第1化合物(例えば、SiC)の<11−20>方向と、の間の角度を角度θとする。角度θは、例えば、オフ角である。角度θは、例えば、0
度を超え10度以下である。角度θは、例えば、1度以上5度以下でも良い。
【0046】
図3に示すように、第1領域11と第2領域12との間の距離を距離w3とする。距離w3は、第3領域13のX軸方向に沿う長さに対応する。第1領域11のX軸方向に沿う長さを幅w1とする。第2領域12のX軸方向に沿う長さを幅w2とする。
【0047】
実施形態において、幅w1は、例えば、2μm以上50μm以下である。幅w2は、例えば、2μm以上50μm以下である。距離w3は、例えば、1μm以上8μm以下である。
【0048】
図3に示すように、第1領域11の長さd1(厚さ)及び第2領域12の長さd2(厚さ)のそれぞれは、例えば、100nm以上600nm以下である。長さd1は、第1半導体領域10から第2半導体領域20への方向(Z軸方向)に沿う第1領域11の長さである。長さd2は、Z軸方向に沿う第2領域12の長さである。
【0049】
実施形態において、距離w3、角度θ及び長さd1は、以下の第1式を満たすことが好ましい。
w3<(d1/tanθ) (1)
このような関係により、例えば、基底面転位10Bは、第1領域11または第2領域12に届くようになる。これにより、基底面転位密度を効果的に転換させることができる。
【0050】
距離w3、角度θ及び長さd2は、以下の第2式を満たすことが好ましい。
w3<(d2/tanθ) (2)
実施形態において、距離w3、角度θ及び長さd1は、以下の第3式を満たしても良い。
w3<(d1/tanθ)/2 (3)
距離w3、角度θ及び長さd2は、以下の第4式を満たしても良い。
w3<(d2/tanθ)/2 (4)
例えば、基底面転位密度を効果的に転換させることができる。
【0051】
図4及び
図5は、第1実施形態に係る基板及び半導体装置を例示する模式的平面図である。
図4に示すように、基板211及び半導体装置111においては、第1領域11及び第2領域12は、島状である。第1領域11及び第2領域12の間に、第3領域13(低濃度領域10Lの一部)が位置する。低濃度領域10Lは、第1領域11及び第2領域12の周りに設けられる。
【0052】
図5に示すように、基板212及び半導体装置112においては、第3領域13(低濃度領域10Lの一部)は、島状である。高濃度領域10Gは、低濃度領域10Lの周りに設けられる。高濃度領域10Gに含まれる複数の部分(第1領域11及び第2領域12)の間に、島状の第3領域13(低濃度領域10Lの一部)が設けられる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態は、半導体装置に係る。第2実施形態において、半導体装置は、トランジスタである。
【0054】
図6は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、第1半導体領域10及び第2半導体領域20に加えて、第3半導体領域30、第4半導体領域40、第1〜第3電極51〜53、及び、絶縁部61を含む。
【0055】
第2半導体領域20は、第1導電形である。第3半導体領域30は、第2導電形である。第4半導体領域40は、第1導電形である。例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。第1導電形がp形で、第2導電形がn形でも良い。以下では、第1導電形がn形で、第2導電形がp形とする。
【0056】
第1半導体領域10は、第1方向(Z軸方向)において、第1電極51と第2電極52の少なくとも一部との間、及び、第1電極51と第3電極53と、の間に位置する。第2領域12は、第1方向と交差する第2方向(例えばX軸方向)において第1領域11から離れる。第3電極53から第2電極52の上記の少なくとも一部への方向は、第2方向(例えばX軸方向)に沿う。
【0057】
第2半導体領域20は、第1部分20a及び第2部分20bを含む。第1部分20aは、第1方向(Z軸方向)において、第1半導体領域10と第2電極52の上記の少なくとも一部との間に位置する。第2部分20bは、第1方向(Z軸方向)において、第1半導体領域10と第3電極53と、の間に位置する。
【0058】
第3半導体領域30は、第3部分30c及び第4部分30dを含む。第3部分30cは、第1方向(Z軸方向)において、第1部分20aと第2電極52の上記の少なくとも一部との間に位置する。この例では、第3半導体領域30は、第5部分30eをさらに含む。
【0059】
第4半導体領域40は、第1方向(Z軸方向)において、第3部分30cと第2電極52の上記の少なくとも一部との間に位置する。第4半導体領域40は、第2電極52と電気的に接続される。
【0060】
第3半導体領域30の第4部分30dは、第2方向(例えばX軸方向)において、第2半導体領域20の第2部分20bの少なくとも一部と、第4半導体領域40との間に位置する。
【0061】
この例では、X軸方向において、第3部分30cと第5部分30eとの間に、第4半導体領域40が位置する。第5部分30eは、第2電極52と電気的に接続される。
【0062】
絶縁部61は、第1方向(Z軸方向)において、第2部分20bと第3電極53との間に位置する。この例では、絶縁部61の一部は、Z軸方向において、第3電極53と第4部分30dとの間、及び、第3電極53と第4半導体領域40の一部との間にも設けられている。
【0063】
第1電極51は、例えば、ドレイン電極に対応する。第2電極52は、例えば、ソース電極に対応する。第3電極53は、例えば、ゲート電極に対応する。第1半導体領域10は、例えば、SiC基板である。第1半導体領域10は、例えば、n
+領域である。第2半導体領域20は、例えば、ドリフト層に対応する。第2半導体領域20は、例えば、n
−領域である。第3半導体領域30は、例えば、pウエルに対応する。第4半導体領域40は、例えば、n
+ソースに対応する。半導体装置120は、例えば、MOSFETである。半導体装置120は、例えば、縦型パワーMOSFETである。
【0064】
半導体装置120において、例えば、第1半導体領域10は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。第2半導体領域20は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。第1半導体領域10における上記の元素の濃度は、第2半導体領域20における上記の元素の濃度よりも高い。半導体装置120において、例えば、Vf劣化を抑制できる。
【0065】
半導体装置120に含まれる第1半導体領域10及び第2半導体領域20は、実施形態に係る基板220の一部である。
【0066】
図7は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る半導体装置121も、第1半導体領域10A及び第2半導体領域20に加えて、第3半導体領域30、第4半導体領域40、第1〜第3電極51〜53、及び、絶縁部61を含む。
【0067】
半導体装置121においては、第1半導体領域10Aは、p形である。半導体装置121におけるこれ以外の構成は、半導体装置120の構成と同様である。第1半導体領域10Aにおいても、第1〜第4領域11〜14が設けられる。
【0068】
第1半導体領域10Aは、アルミニウム及びガリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。第2半導体領域20は、窒素及びリンからなる群から選択された少なくとも1つを含む元素を含む。
【0069】
半導体装置121は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体装置121において、例えば、Vf劣化を抑制できる。
【0070】
半導体装置121に含まれる第1半導体領域10A及び第2半導体領域20は、実施形態に係る基板221の一部である。
【0071】
実施形態において、第1電極51及び第2電極52の少なくともいずれかは、例えば、Al、Cu及びAuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第3電極53(例えばゲート電極)は、TiN、Al、Ru、W、及びTaSiNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。絶縁部61は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム及び酸化ハフニウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態は、半導体装置に係る。第3実施形態において、半導体装置は、ダイオードある。
【0073】
図8は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る半導体装置130は、第1半導体領域10及び第2半導体領域20に加えて、第1電極51及び第2電極52を含む。
【0074】
第1電極51と第2電極52との間に第1半導体領域10が位置する。第1半導体領域10と第2電極52との間に第2半導体領域20が位置する。
【0075】
例えば、第1半導体領域10は、第1導電形(例えば、n形)であり、第2半導体領域20は、第1導電形である。第1半導体領域10における第1導電形の不純物濃度は、第2半導体領域20における第1導電形の不純物濃度よりも高い。例えば、第2電極52は、第2半導体領域20とショットキー接合する。
【0076】
この例では、第2電極52の1つの端部と第2半導体領域20との間に、接合終端領域20Aが設けられている。第2電極52の別の端部と第2半導体領域20との間に、接合終端領域20Bが設けられている。
【0077】
第1電極51は、例えば、カソード電極である。第2電極52は、例えば、アノード電極である。第1半導体領域10は、例えば、n
+領域(n
+基板)に対応する。第2半導体領域20は、例えば、n
−領域に対応する。第2半導体領域20は、例えば、ドリフト層に対応する。半導体装置130において、例えば、Vf劣化を抑制できる。
【0078】
半導体装置130に含まれる第1半導体領域10及び第2半導体領域20は、実施形態に係る基板230の一部である。
【0079】
(第4実施形態)
第4実施形態は、半導体装置または基板の製造方法に係る。
図9(a)〜
図9(c)は、第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図9(b)に示すように、半導体装置の製造方法は、第1半導体領域10を準備する工程を含む。第1半導体領域10は、シリコンと炭素とを含む第1化合物(例えばSiC)を含む。第1半導体領域10は、第1〜第3領域11〜13を含む。第3領域13は、第1領域11と第2領域12との間に位置する。第1領域11及び第2領域12は、第1元素を含む。第1元素は、第2元素及び第3元素よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Ar、Kr、Xe及びRnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3元素は、Cl、Br、I及びAtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3領域13は、第1元素を含まない。または、第3領域13における第1元素の濃度(例えば第3ピーク濃度)は、第1領域11における第1元素の濃度(例えば第1ピーク濃度)よりも低く、第2領域12における第1元素の濃度(例えば第2ピーク濃度)よりも低い。この例では、第4領域14の上に、第1〜第3領域11〜13が位置する。
【0080】
図9(c)に示すように、第1〜第3領域11〜13の上に、第2半導体領域20を形成する。第2半導体領域20は、シリコンと炭素とを含む第2化合物(例えばSiC)を含む。
【0081】
図9(a)は、第1半導体領域10を準備する工程の例を示している。第1半導体領域10を準備する工程は、例えば、第1化合物を含む基体10sの一部に第1元素10iを注入して、第1〜第3領域11〜13を形成することを含む。例えば、開口部OP1を有するマスクM1を用いて、第1元素10iが、基体10sに注入される。これにより、基体10sに、選択的に第1元素10iが導入される。
【0082】
このようにして、実施形態に係る基板が得られる。
【0083】
このようにして得られた第2半導体領域20において、第3半導体領域30及び第4半導体領域40などを形成する。さらに電極を形成する。これにより、実施形態に係る半導体装置(トランジスタまたはダイオードなど)が得られる。
【0084】
実施形態においては、例えば、SiCを含むバルク基板に、第1元素を含む領域が選択的に形成される。これにより、第1元素を含む領域では、増大した内部応力によって積層欠陥が発生する閾値電流密度を上げることができる。一方、第1元素を実質的に含まない領域では、第1元素を含む領域の弾性歪を基底面に働く圧縮力として吸収する。その結果、第1元素を含まない領域の基底面転位10Bは、第2半導体領域20のエピタキシャル成長の直前の高温時に、鏡像力により、貫通刃状転位10Eに転換する。例えば、通電時において、注入されたホールが基底面転位10Bに届くことが、抑制される。例えば、積層欠陥の拡張が抑制される。例えば、Vf劣化が抑制される。
【0085】
実施形態によれば、欠陥を少なくすることができる半導体装置、基板、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法を提供することができる。
【0086】
実施形態において、不純物濃度に関する情報は、例えば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより得られる。上記において、不純物濃度は、例えば、キャリア濃度でも良い。
【0087】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0088】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる半導体領域、電極及び絶縁部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0090】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0091】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置、基板、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置、基板、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0092】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。