特許第6972291号(P6972291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972291核酸増幅方法、核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6972291
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】核酸増幅方法、核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6853 20180101AFI20211111BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20211111BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20211111BHJP
【FI】
   C12Q1/6853 ZZNA
   C12Q1/6876 Z
   !C12N15/113 Z
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-215698(P2020-215698)
(22)【出願日】2020年12月24日
【審査請求日】2021年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良則
(72)【発明者】
【氏名】毛利 勇太
(72)【発明者】
【氏名】中里 浩章
(72)【発明者】
【氏名】納富 継宣
【審査官】 中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0266418(US,A1)
【文献】 特開2018−153157(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第111961730(CN,A)
【文献】 Analytica Chimica Acta, 2020.06.17, vol. 1126, pp. 1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 3/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を増幅する方法であり、
下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
[ここで、N3cは標的核酸の標的領域の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、BLは塩基配列B2を含むループ領域を示し、B1cとB1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含むBwアダプタープライマーと、前記標的領域とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を合成し、前記標的領域の相補鎖の5’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(b):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−3’・・・(b)
[ここで、N5cは前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を示し、N3c及びN5cを含む塩基配列は標的領域と相補的な塩基配列Ncを示す。]
からなる第一の鋳型核酸を得る工程Aと、
下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
[ここで、N5’は第一の鋳型核酸の塩基配列N5cと相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、FLは塩基配列F2を含むループ領域を示し、F1cとF1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点としてFwアダプターヌクレオチドの相補鎖を合成し、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(d):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−F1c−FLc−F1−3’・・・(d)
[ここで、FLcはFwアダプターヌクレオチドのFLと相補的な塩基配列を示す。]
からなる第二の鋳型核酸を得る工程Bと、
第二の鋳型核酸を鋳型として、下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーとを用いて、LAMP法により第二の鋳型核酸の塩基配列Ncを増幅する工程Cと、
を含むことを特徴とする、核酸増幅方法。
【請求項2】
塩基配列Ncの長さが10〜100塩基長であることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項3】
前記標的核酸がmiRNAであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の核酸増幅方法。
【請求項4】
工程Aと工程Bとが同一反応系で進行することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項5】
工程Bの後、かつ、工程Cの前に、工程Bの反応産物を85℃以上に加熱する熱処理工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項6】
工程Cの後に、塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズするプローブを用いて塩基配列Ncを検出する検出工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項7】
前記プローブにおいて、塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さが5塩基長以下であることを特徴とする、請求項6に記載の核酸増幅方法。
【請求項8】
前記プローブの全長の塩基配列が、塩基配列N3c又は塩基配列N5cのいずれかに全て含まれないことを特徴とする、請求項6に記載の核酸増幅方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法に用いるためのプライマーセットであり、
下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
[ここで、N3cは標的核酸の標的領域の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、BLは塩基配列B2を含むループ領域を示し、B1cとB1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含むBwアダプタープライマーと、
下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
[ここで、N5’は第一の鋳型核酸の塩基配列N5cと相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、FLは塩基配列F2を含むループ領域を示し、F1cとF1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、
を備えることを特徴とする、核酸増幅方法用プライマーセット。
【請求項10】
下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと、
下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーと、
をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の核酸増幅方法用プライマーセット。
【請求項11】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法に用いるためのキットであり、請求項9又は10に記載のプライマーセットを備えることを特徴とする、核酸増幅方法用キット。
【請求項12】
塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズするプローブをさらに備えることを特徴とする、請求項11に記載の核酸増幅方法用キット。
【請求項13】
前記プローブにおいて、塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さが5塩基長以下であることを特徴とする、請求項12に記載の核酸増幅方法用キット。
【請求項14】
前記プローブの全長の塩基配列が、塩基配列N3c又は塩基配列N5cのいずれかに全て含まれないことを特徴とする、請求項12に記載の核酸増幅方法用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅方法、核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキットに関し、より詳しくは、核酸増幅方法、並びに、これに用いる核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸の検出には、従来、マイクロアレイ上に固定したプローブによって核酸を捕捉して検出するマイクロアレイ法が主に用いられているが、かかるマイクロアレイ法は、操作が複雑であることや、用いる装置が高価であるといった課題を有している。
【0003】
他方、簡便性や経済性の観点から、短鎖核酸の検出にもPCR等の核酸増幅方法を用いることが検討されている。このような核酸増幅方法としては、例えば、米国特許出願公開第2009/0220969号明細書(特許文献1)において、miRNAにポリAを付加してからPCRによってこれを増幅する方法(Poly−A Tailing)が記載されている。また、例えば、米国特許出願公開第2005/0266418号明細書(特許文献2)には、miRNAにリンカープローブをハイブリダイズさせてステムループ構造を付加してからPCRによってこれを増幅する方法が記載されている。
【0004】
さらに、例えば、特開2018−153157号公報(特許文献3)には、標的RNAを増幅する方法として、当該標的RNAを逆転写し、伸長化させた後に、これを増幅する方法が記載されており、前記増幅方法としては、その一例としてLAMP法が挙げられている。特許文献3に記載の方法において、かかるLAMP法のために設計された逆転写プライマー及び伸長化プライマーは、B2配列及びB1c配列を含むBIPプライマーと、F2配列及びF1c配列を含むFIPプライマーと、B3配列を含むB3プライマーと、F3配列を含むF3プライマーと、の組み合わせであるLAMPプライマーセットに基づいて、前記逆転写プライマーがB1配列、B2配列、及びB3配列をこの順で含み、かつ、前記伸長化プライマーがF1配列、F2配列、及びF3配列をこの順で含む構造となっている。
【0005】
また、例えば、A.A.Abdullah AL−maskriら,Analytica Chimica Acta 1126,2020,1−6(非特許文献1)には、ステムループ構造を有する逆転写プライマー(SL probe)及び伸長化プライマー(PS−H probe)を用いて、標的RNAを逆転写し、伸長化させた後に、これをLAMP法によって増幅する方法が記載されている。非特許文献1に記載の方法において、前記逆転写プライマーは、F1c配列、F2配列、及びF1配列をこの順で含み、かつ、前記伸長化プライマーは、B1c配列、B2配列、及びB1配列をこの順で含み、いずれもステムループ構造を形成する。また、非特許文献1に記載の方法では、前記伸長化プライマーのB1c配列及びB2配列がホスホロチオエート化されており、伸長化後、当該ホスホロチオエート化されたB1c配列及びB2配列において二本鎖が解離してSelf−foldingし、両端にステムループ構造を形成するため、LAMP法のためのアウタープライマーを必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0220969号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0266418号明細書
【特許文献3】特開2018‐153157号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.A.Abdullah AL−maskriら,Analytica Chimica Acta 1126,2020,1−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜2に記載されているように核酸をPCRによって増幅する方法では、特に血液や体液を検体として短鎖核酸を検出する場合に、感度や特異性が十分ではないといった課題を有していた。また、特許文献3に記載されているような方法では、標的RNAを逆転写し、伸長化させた後の構造がリニア構造となるが、このような構造では、LAMP法を用いた核酸増幅において、増幅産物の検出感度や特異性が十分ではないといった課題を有していることを本発明者らは見出した。他方、非特許文献1に記載されている、標的RNAを逆転写し、伸長化させた後の構造がステムループ構造となる方法では、感度は向上するものの、ステップ数も多く、簡便性に劣るといった課題を有している。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸であっても、それを鋳型として簡便かつ特異的に核酸を増幅することができる核酸増幅方法、並びに、これに用いる核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ステムループ構造を有するBwアダプタープライマーを用い、逆転写反応又は伸長化反応によって標的核酸の標的領域の相補鎖を合成させた後、ステムループ構造を有し、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされたFwアダプターヌクレオチドを用いてさらにその相補鎖を合成させることにより、前記標的領域の相補鎖の両末端にステムループ構造が付加されたダンベル構造を簡便かつ特異的に形成できることを見出した。また、これを鋳型としてLAMPプライマーを作用させ、LAMP法を行うことにより、前記標的核酸が断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸であっても、非特異増幅が十分に抑制され、特異的に標的領域に対応する核酸を増幅することが可能となることも見出した。さらに、上記のように鋳型の合成を簡便かつ特異的に行えることに加えて、その後のLAMP法は複雑な温度やサイクルの制御が不要な方法であるため、かかる方法によれば、従来よりもより簡便に核酸増幅を行うことが可能であることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かかる知見により得られた本発明の態様は以下のとおりである。
[1]
核酸を増幅する方法であり、
下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
[ここで、N3cは標的核酸の標的領域の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、BLは塩基配列B2を含むループ領域を示し、B1cとB1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含むBwアダプタープライマーと、前記標的領域とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を合成し、前記標的領域の相補鎖の5’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(b):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−3’・・・(b)
[ここで、N5cは前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を示し、N3c及びN5cを含む塩基配列は前記標的領域と相補的な塩基配列Ncを示す。]
からなる第一の鋳型核酸を得る工程Aと、
下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
[ここで、N5’は第一の鋳型核酸の塩基配列N5cと相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、FLは塩基配列F2を含むループ領域を示し、F1cとF1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点としてFwアダプターヌクレオチドの相補鎖を合成し、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(d):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−F1c−FLc−F1−3’・・・(d)
[ここで、FLcはFwアダプターヌクレオチドのFLと相補的な塩基配列を示す。]
からなる第二の鋳型核酸を得る工程Bと、
第二の鋳型核酸を鋳型として、下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーとを用いて、LAMP法により第二の鋳型核酸の塩基配列Ncを増幅する工程Cと、
を含むことを特徴とする、核酸増幅方法。
[2]
塩基配列Ncの長さが10〜100塩基長であることを特徴とする、[1]に記載の核酸増幅方法。
[3]
前記標的核酸がmiRNAであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の核酸増幅方法。
[4]
工程Aと工程Bとが同一反応系で進行することを特徴とする、[1]〜[3]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
[5]
工程Bの後、かつ、工程Cの前に、工程Bの反応産物を85℃以上に加熱する熱処理工程をさらに含むことを特徴とする、[1]〜[4]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
[6]
工程Cの後に、塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズするプローブを用いて塩基配列Ncを検出する検出工程をさらに含むことを特徴とする、[1]〜[5]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
[7]
前記プローブにおいて、塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さが5塩基長以下であることを特徴とする、[6]に記載の核酸増幅方法。
[8]
前記プローブの全長の塩基配列が、塩基配列N3c又は塩基配列N5cのいずれかに全て含まれないことを特徴とする、[6]に記載の核酸増幅方法。
[9]
[1]〜[8]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法に用いるためのプライマーセットであり、
下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
[ここで、N3cは標的核酸の標的領域の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、BLは塩基配列B2を含むループ領域を示し、B1cとB1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含むBwアダプタープライマーと、
下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
[ここで、N5’は第一の鋳型核酸の塩基配列N5cと相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、FLは塩基配列F2を含むループ領域を示し、F1cとF1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、
を備えることを特徴とする、核酸増幅方法用プライマーセット。
[10]
下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと、
下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーと、
をさらに備えることを特徴とする、[9]に記載の核酸増幅方法用プライマーセット。
[11]
[6]〜[8]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法に用いるためのプローブであり、
塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズすることを特徴とする、プローブ。
[12]
塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さが5塩基長以下であることを特徴とする、[11]に記載のプローブ。
[13]
全長の塩基配列が、塩基配列N3c又は塩基配列N5cのいずれかに全て含まれないことを特徴とする、[11]に記載のプローブ。
[14]
[1]〜[8]のうちのいずれか一項に記載の核酸増幅方法に用いるためのキットであり、[9]又は[10]に記載のプライマーセットを備えることを特徴とする、核酸増幅方法用キット。
[15]
[11]〜[13]のうちのいずれか一項に記載のプローブをさらに備えることを特徴とする、[14]に記載の核酸増幅方法用キット。
【0012】
なお、本発明の構成によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明では、先ず、LAMP法に用いるための鋳型核酸を標的核酸を基に合成するが、この際、ステムループ構造を有するBwアダプタープライマーを用いて標的核酸の標的領域との二量体を形成させるため、スタッキング効果によって当該二量体(例えば、RNA/DNAヘテロ、又はDNA/DNAホモ)の熱的安定性が増大し、相補鎖合成(逆転写反応又は伸長化反応)が促進されるものと推察される。また、その後、同じくステムループ構造を有するFwアダプターヌクレオチドを用いてこれを鋳型としてさらに相補鎖合成を進め、鋳型核酸の構造を、両端にステムループ構造が付加されたダンベル構造とするため、LAMP法における増幅反応が効率よく進む。さらにこのとき、上記のFwアダプターヌクレオチドの3’末端に伸長化阻害修飾がなされているため、BwアダプタープライマーとFwアダプターヌクレオチドとのミスマッチ伸長による非特異増幅も十分に抑制され、優れた特異性が発揮されるものと推察する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸であっても、その全長の長さによってプライマー設計が制限されることなく、それを鋳型として簡便かつ特異的に核酸を増幅することができる核酸増幅方法、並びに、これに用いる核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の核酸増幅方法の一形態を示す模式概念図である。
図2A】試験例2の伸長化反応後の熱処理効果の検証でmiR−21−5pを用いて得られた蛍光強度−反応時間曲線を示す。(a)は熱処理なしの結果を示し、(b)は熱処理ありの結果を示す。
図2B】試験例2の伸長化反応後の熱処理効果の検証でLet−7a−5pを用いて得られた蛍光強度−反応時間曲線を示す。(a)は熱処理なしの結果を示し、(b)は熱処理ありの結果を示す。
図3A】試験例3のFwアダプターヌクレオチドの3’末端リン酸化効果の検証でmiR−21−5pを用いて得られた蛍光強度−反応時間曲線を示す。(a)はリン酸化なしの結果を示し、(b)はリン酸化ありの結果を示す。
図3B】試験例3のFwアダプターヌクレオチドの3’末端リン酸化効果の検証でLet−7a−5pを用いて得られた蛍光強度−反応時間曲線を示す。(a)はリン酸化なしの結果を示し、(b)はリン酸化ありの結果を示す。
図4A】試験例4の蛍光消光プローブ検出でmiR−21−5pを用いて得られた融解曲線を示す。(a)はmiR−21−5p領域設計プローブを用いたときの結果を示し、(b)はループ領域設計プローブを用いたときの結果を示す。
図4B】試験例4の蛍光消光プローブ検出でLet−7a−5pを用いて得られた融解曲線を示す。(a)はLet−7a−5p領域設計プローブを用いたときの結果を示し、(b)はループ領域設計プローブを用いたときの結果を示す。
図5】試験例5のプローブ設計領域の検証で得られた融解曲線を示す。(a)はmiRNA21Probe−1、(b)はmiRNA21Probe−2、(c)はmiRNA21Probe−3、(d)はmiRNA21Probe−4、(e)はmiRNA21Probe−5、(f)はmiRNA21Probe−6、(g)はmiRNA21Probe−7、(h)はmiRNA21Probe−8、の各蛍光消光プローブを用いたときの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態を例に挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
<核酸増幅方法>
本発明の核酸増幅方法は、
下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
[ここで、N3cは標的核酸の標的領域の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、BLは塩基配列B2を含むループ領域を示し、B1cとB1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含むBwアダプタープライマーと、前記標的領域とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を合成し、前記標的領域の相補鎖の5’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(b):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−3’・・・(b)
[ここで、N5cは前記標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を示し、N3c及びN5cを含む塩基配列は前記標的領域と相補的な塩基配列Ncを示す。]
からなる第一の鋳型核酸を得る工程Aと、
下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
[ここで、N5’は第一の鋳型核酸の塩基配列N5cと相補的な塩基配列からなるアニール領域を示し、FLは塩基配列F2を含むループ領域を示し、F1cとF1とは互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。]
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点としてFwアダプターヌクレオチドの相補鎖を合成し、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された下記の構造(d):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−F1c−FLc−F1−3’・・・(d)
[ここで、FLcはFwアダプターヌクレオチドのFLと相補的な塩基配列を示す。]
からなる第二の鋳型核酸を得る工程Bと、
第二の鋳型核酸を鋳型として、下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーとを用いて、LAMP法により第二の鋳型核酸の塩基配列Ncを増幅する工程Cと、
を含む、核酸を増幅する方法である。
【0017】
以下、本発明の核酸増幅方法の好ましい形態について、場合により図1を参照しながら例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は、本発明の核酸増幅方法の一形態を示す模式概念図である。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(標的核酸)
本発明において、「標的核酸」とは、下記の核酸増幅方法によって検出する目的の標的領域を含みうる核酸である。また、本発明において、「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドからなるポリヌクレオチド、すなわち、DNA、RNA、又はデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドが混在するポリヌクレオチドを示し、断片であっても、その全部又は一部が修飾されたものであっても、その全部又は一部に非天然型のヌクレオチドや特定の配列を含むものであってもよい。前記修飾としては、例えば、DNA及び/又はRNAのメチル化や脱アミノ化;ラジオアイソトープ、結合性リガンド(ビオチン、ジゴキシン等)による標識が挙げられる。前記非天然型のヌクレオチドとしては、例えば、PNA(polyamide nucleic acid)、LNA(登録商標、locked nucleic acid)、ENA(登録商標、2’−O,4’−C−Ethylene−bridged nucleic acids)が挙げられる。また、これら核酸としては、下記のBwアダプタープライマーがアニールしうるものであれば特に制限されず、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、ヘアピン構造、ハンマーヘッド構造等の3次元構造を有するものであってもよい。これらの中でも、本発明に係る標的核酸としては、本発明の核酸増幅方法を特に有効に適用することができる観点からは、断片核酸(断片DNA、断片RNA等)、miRNA、tRNA(トランスファーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、siRNA(small interfering RNA)等の短鎖核酸であることが好ましく、miRNAであることがより好ましい。なお、「miRNA」は、通常、20〜25塩基長の一本鎖RNA分子を示し、タンパク質には翻訳されず、真核生物において、主に、遺伝子の転写後の発現調節に関与するといわれている。
【0019】
このような標的核酸としては、特に制限されず、当該標的核酸を含みうる試料から抽出されたものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。前記標的核酸を含みうる試料としても特に制限されず、例えば、化学合成した核酸を含む溶液の他、各種生物(細胞、組織、器官、個体を含む)及びその抽出液;ヒト及び動物の体液(唾液、涙、汗、尿、血液、リンパ液等);植物生体液;生物培養液;環境中の水(河川、湖沼、港湾、水路、地下水、浄水、下水、排水等);固形物(土壌、燃え殻等)の懸濁液等を目的に応じて適宜用いることができる。また、前記試料としては、適宜、希釈液で適宜希釈又は懸濁したものであっても、pH調整したものであってもよい。前記希釈液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液等の緩衝液が挙げられる。前記試料から標的核酸を抽出する方法としては、適宜公知の方法を採用することができる。
【0020】
(標的領域)
本発明において、「標的領域」とは、前記標的核酸上の、本発明の核酸増幅方法によって検出することを目的とする領域を示し、前記標的核酸が断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸である場合、当該標的領域は、前記標的核酸の全部であってもよい。また、下記の工程Aにおいては、一本鎖又は動的平衡状態にある二本鎖であることが好ましい。下記のBwアダプタープライマー及びFwアダプターヌクレオチドとの対応を示すために、以下場合により、便宜的に、標的領域を「標的領域N」とし、その5’末端側の塩基配列を「塩基配列N5」、3’末端側の塩基配列を「塩基配列N3」とする。また、標的領域Nは、塩基配列N5及び塩基配列N3からなるもの(すなわち、N=5’−N5−N3−3’)、又は、塩基配列N5と塩基配列N3との間に介在塩基配列を含むもの(すなわち、N=5’−N5−介在塩基配列−N3−3’)であるものとする。
【0021】
本発明に係る標的領域Nの長さとしては、通常、5〜5,000塩基長である。また、本発明の核酸増幅方法は、直接増幅することが困難な短鎖核酸に対しても好適に実施することができるため、標的領域Nの長さが、10〜100塩基長、さらには、20〜50塩基長、あるいは20〜25塩基長であっても、検出の目的とすることが可能である。
【0022】
(Bwアダプタープライマー)
本発明に係る「Bwアダプタープライマー」は、下記の構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
を含むプライマーである。
【0023】
構造(a)中、「N3c」は、前記標的核酸の標的領域N(図1では、11)の3’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列からなるアニール領域(図1では、24)を示す。なお、本明細書中、Bwアダプタープライマーのアニール領域N3cがアニールする対象となる標的領域N上の塩基配列を「塩基配列N3」という。これにより、Bwアダプタープライマー(図1では、20)が標的領域Nの塩基配列N3とアニール(本明細書中、「ハイブリダイズ」もアニールと同義で用いる)して二量体を形成する。
【0024】
本発明において、ある配列に対して「相補的な塩基配列」とは、互いにハイブリダイズして二本鎖を形成可能な塩基配列であればよく、完全に相補的でなくともよい。本発明において、かかるハイブリダイズの条件としては、「塩基配列Xと塩基配列Yとが二本鎖を形成可能」又は「塩基配列Xが塩基配列Yに対して相補的な塩基配列である」という場合、塩基配列Xと塩基配列Yとの配列相補性としては、80%以上、90%以上、95%以上、(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)であることが好ましい。なお、前記配列相補性は、当業者であれば公知の手法(例えば、BLAST(NCBI))を用いて適宜計算することができる。
【0025】
また、本発明において、前記ハイブリダイズの条件としては、「塩基配列Xと塩基配列Yとが二本鎖を形成可能」又は「塩基配列Xが塩基配列Yに対して相補的な塩基配列である」という場合、塩基配列Xは、塩基配列Yの全長に対して完全に相補的な塩基配列の1〜複数個所において、連続して1〜5塩基(好ましくは1〜3塩基、例えば、3塩基、2塩基、1塩基)の塩基が挿入、欠失、又は置換されたものであってもよい。
【0026】
このようなアニール領域N3cを構成する塩基配列は、上記ハイブリダイズの条件を満たすように、目的の標的領域N及び塩基配列N3の塩基配列に合わせて、より好ましくは他の領域にハイブリダイズすることがないように、適宜設計することができる。
【0027】
本発明に係るアニール領域N3cの長さとしては、5〜200塩基長であることが好ましく、5〜50塩基長であることがより好ましい。
【0028】
構造(a)中、「BL」は塩基配列B2を含むループ領域を示す。塩基配列B2は、下記のBwインナープライマーを第二の鋳型核酸の相補鎖(第三の鋳型核酸)にアニールさせるために設計される配列である。またこれにより、標的領域Nの相補鎖の5’末端側に当該ループ領域BLからなるループ構造が付加される。
【0029】
ループ領域BLとしては、下記のBwインナープライマーに対応する塩基配列B2のみからなる領域であっても、その5’末端側及び/又は3’末端側にスペーサー配列(スペーサーBS)を含む領域であってもよい。図1では、ループ領域BLの一例として、塩基配列B2(図1では、221)と、その3’末端側のスペーサーBS(図1では、222)とからなる構成を示すが、これに限定されるものではない。
【0030】
ループ領域BLがスペーサーBSを含む場合、そのスペーサーBSの長さ(塩基配列B2の5’末端側及び3’末端側の両端にある場合にはそれらの長さの合計)としては、1〜500塩基長であることが好ましく、1〜100塩基長であることが好ましく、10〜70塩基長であることがより好ましい。
【0031】
また、塩基配列B2の長さとしては、5〜200塩基長であることが好ましく、10〜50塩基長であることがより好ましい。
【0032】
さらに、ループ領域BLの長さは、スペーサーBSを含まない場合には塩基配列B2の長さに、スペーサーBSを含む場合にはスペーサーBSの長さ及び塩基配列B2の長さの合計に、それぞれ相当するが、5〜300塩基長であることがより好ましく、20〜120塩基長であることがさらに好ましい。ループ領域BLの長さが前記下限未満であると、ステムループ構造が形成されなくなったり安定性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、自己アニールが優先的に行われなくなって他のプライマー等とのミスマッチが生じやすくなる傾向にある。
【0033】
構造(a)中、「B1c」と「B1」とは、互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。ステム領域B1cとステム領域B1とは、互いにハイブリダイズしてステム構造(二本鎖)を形成するように設計される相補的な塩基配列である。またこれにより、標的領域Nの相補鎖の5’末端側に、ループ領域BL、並びに、ステム領域B1c及びステム領域B1からなるステムループ構造が付加される。
【0034】
ステム領域B1c及びステム領域B1としては、互いに二本鎖を形成可能な塩基配列が含まれていればよく、ステム領域B1cの5’末端側及び/又はステム領域B1の3’末端側に二本鎖を形成しない塩基配列(介在塩基配列)が含まれていてもよい。ただし、このような介在塩基配列の長さとしては、互いに独立して、5塩基長以下であることが好ましく、3塩基長以下であることがより好ましい。
【0035】
ステム領域B1cとステム領域B1との間で二本鎖を形成可能な塩基配列の長さとしては、互いに、5〜200塩基長であることが好ましく、10〜50塩基長であることがより好ましい。前記長さが前記下限未満であると、ステムループ構造が形成されなくなったり安定性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、自己アニールが優先的に行われなくなって他のプライマー等とのミスマッチが生じやすくなる傾向にある。
【0036】
さらに、ステム領域B1cの全体の長さ及びステム領域B1の全体の長さは、前記介在塩基配列を含まない場合には前記二本鎖を形成可能な塩基配列の長さに、前記介在塩基配列を含む場合には当該介在塩基配列の長さと前記二本鎖を形成可能な塩基配列の長さとの合計に、それぞれ相当するが、5〜200塩基長であることがより好ましく、10〜50塩基長であることがさらに好ましい。
【0037】
このようなBwインナープライマーの塩基配列は、標的領域N及び塩基配列N3の塩基配列に基づいて上記ハイブリダイズの条件を満たすように、上記のステムループ構造を形成可能となるように、また、ループ構造に含まれる塩基配列B2の配列がBwインナープライマーが他の領域にハイブリダイズするような配列とならないように、等を勘案して、適宜設計することができる。
【0038】
また、Bwインナープライマーを得る方法としては、特に制限されず、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、例えば、市販の合成機によって化学的に合成し、合成DNAとして製造することができる。また、Bwインナープライマーは、天然のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチド)のみから構成されていなくともよく、また例えば、前記非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよいが、安定性の観点から、天然又は非天然のデオキシリボヌクレオチドのみから構成されることが好ましい。
【0039】
(第一の鋳型核酸)
本発明に係る「第一の鋳型核酸」は、下記の構造(b):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−3’・・・(b)
からなる核酸である。第一の鋳型核酸(図1では、40)は、Bwアダプタープライマーと、標的領域N(塩基配列N3)とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として合成された、標的領域Nの相補鎖の5’末端にステムループ構造が付加された核酸である。かかる第一の鋳型核酸としては、デオキシリボヌクレオチドからなるものであってもリボヌクレオチドからなるものであってもこれらが混在するものであってもよいが、核酸増幅反応の安定性の観点から、デオキシリボヌクレオチドのみからなるものであることが好ましい。
【0040】
構造(b)中、「N5c」は、標的領域Nの5’末端側の塩基配列N5と相補的な塩基配列を示し、下記のFwアダプターヌクレオチドのアニール領域N5’がアニールする対象となる塩基配列を示す。N3c及びN5cを含む塩基配列は標的領域Nと相補的な塩基配列Ncを示す。図1において、塩基配列N5c(25)と塩基配列N3c(24)とは隣接しているが、塩基配列Ncにおいて、塩基配列N5cと塩基配列N3cとの間には、介在塩基配列(すなわち、塩基配列N5と塩基配列N3との間の介在塩基配列と相補的な塩基配列)をさらに含んでいてもよい。
【0041】
(Fwアダプターヌクレオチド)
本発明に係る「Fwアダプターヌクレオチド」は、下記の構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているヌクレオチドである。
【0042】
構造(c)中、「N5’」は、第一の鋳型核酸(図1では、40)の3’末端側の塩基配列N5c(図1では、25)と相補的な塩基配列からなるアニール領域(図1では、34)を示す。これにより、Fwアダプターヌクレオチド(図1では、30)が第一の鋳型核酸の塩基配列N5cとアニールして二量体を形成する。
【0043】
本発明に係るアニール領域N5’は、原理的には、標的領域Nの塩基配列N5と同じ配列であるが、例えば、標的領域NがRNAであり、かつ、FwアダプターヌクレオチドがDNAである場合には互いに対応する配列であればよい。また、塩基配列N5cとアニール領域N5’とが上記ハイブリダイズの条件を満たす限り、塩基配列N5とアニール領域N5’とは完全に対応する配列でなくともよい。
【0044】
このようなアニール領域N5’を構成する塩基配列は、上記ハイブリダイズの条件を満たすように、第一の鋳型核酸及び塩基配列N5c(あるいは、目的の標的領域N及び塩基配列N5)の塩基配列に合わせて、より好ましくは他の領域にハイブリダイズすることがないように、適宜設計することができる。
【0045】
本発明に係るアニール領域N5’の長さとしては、5〜200塩基長であることが好ましく、5〜50塩基長であることがより好ましい。
【0046】
構造(c)中、「FL」は塩基配列F2を含むループ領域を示す。塩基配列F2は、下記のFwインナープライマーを第二の鋳型核酸にアニールさせるために設計される配列である。またこれを鋳型とすることにより、第一の鋳型核酸の3’末端側に、当該ループ領域FLと相補的な、下記の塩基配列FLcからなるループ構造が付加される。
【0047】
ループ領域FLとしては、下記のFwインナープライマーに対応する塩基配列F2のみからなる領域であっても、その5’末端側及び/又は3’末端側にスペーサー配列(スペーサーFS)を含む領域であってもよい。図1では、ループ領域FLの一例として、塩基配列F2(図1では、321)と、その3’末端側のスペーサーFS(図1では、322)とからなる構成を示すが、これに限定されるものではない。
【0048】
ループ領域FLがスペーサーFSを含む場合、そのスペーサーFSの長さ(塩基配列F2の5’末端側及び3’末端側の両端にある場合にはそれらの長さの合計)としては、1〜500塩基長であることが好ましく、1〜100塩基長であることが好ましく、10〜70塩基長であることがより好ましい。
【0049】
また、塩基配列F2の長さとしては、5〜200塩基長であることが好ましく、10〜50塩基長であることがより好ましい。
【0050】
さらに、ループ領域FLの長さは、スペーサーFSを含まない場合には塩基配列F2の長さに、スペーサーFSを含む場合にはスペーサーFSの長さ及び塩基配列F2の長さの合計に、それぞれ相当するが、5〜300塩基長であることがより好ましく、20〜120塩基長であることがさらに好ましい。ループ領域FLの長さが前記下限未満であると、ステムループ構造が形成されなくなったり安定性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、自己アニールが優先的に行われなくなって他のプライマー等とのミスマッチが生じやすくなる傾向にある。
【0051】
構造(c)中、「F1c」と「F1」とは、互いに相補的な塩基配列からなる領域であって二本鎖を形成可能なステム領域を示す。ステム領域F1cとステム領域F1とは、互いにハイブリダイズしてステム構造(二本鎖)を形成するように設計される相補的な塩基配列である。またこれらを鋳型とすることにより、第一の鋳型核酸の3’末端側にループ領域FLと相補的な塩基配列FLc、並びに、ステム領域F1c及びステム領域F1と相補的な塩基配列(それぞれステム領域F1及びステム領域F1c)からなるステムループ構造が付加される。
【0052】
ステム領域F1c及びステム領域F1としては、互いに二本鎖を形成可能な塩基配列が含まれていればよく、ステム領域F1cの5’末端側及び/又はステム領域F1の3’末端側に二本鎖を形成しない塩基配列(介在塩基配列)が含まれていてもよい。ただし、このような介在塩基配列の長さとしては、互いに独立して、5塩基長以下であることが好ましく、3塩基長以下であることがより好ましい。
【0053】
ステム領域F1cとステム領域F1との間で二本鎖を形成可能な塩基配列の長さとしては、互いに、5〜200塩基長であることが好ましく、10〜50塩基長であることがより好ましい。前記長さが前記下限未満であると、ステムループ構造が形成されなくなったり安定性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記上限を超えると、自己アニールが優先的に行われなくなって他のプライマー等とのミスマッチが生じやすくなる傾向にある。
【0054】
さらに、ステム領域F1cの全体の長さ及びステム領域F1の全体の長さは、前記介在塩基配列を含まない場合には前記二本鎖を形成可能な塩基配列の長さに、前記介在塩基配列を含む場合には当該介在塩基配列の長さと前記二本鎖を形成可能な塩基配列との長さの合計に、それぞれ相当するが、5〜200塩基長であることがより好ましく、10〜50塩基長であることがさらに好ましい。
【0055】
このようなFwアダプターヌクレオチドの塩基配列は、標的領域N及び塩基配列N5の塩基配列に基づく第一の鋳型核酸の塩基配列に基づいて上記ハイブリダイズの条件を満たすように、上記のステムループ構造を形成可能となるように、また、ループ構造に含まれる塩基配列F2の配列がFwインナープライマーが他の領域にハイブリダイズするような配列とならないように、等を勘案して、適宜設計することができる。
【0056】
Fwアダプターヌクレオチドを得る方法としては、特に制限されず、Bwアダプタープライマーを得る方法と同様に従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができる。また、Fwアダプターヌクレオチドは、天然のヌクレオチドのみから構成されていなくともよく、例えば、前記非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよいが、安定性の観点から、天然又は非天然のデオキシリボヌクレオチドのみから構成されることが好ましい。
【0057】
本発明において、Fwアダプターヌクレオチドは、3’末端に伸長化阻害修飾がなされている。これにより、BwアダプタープライマーとFwアダプターヌクレオチドとのミスマッチ伸長による非特異増幅が抑制されるものと考えられる。Fwアダプターヌクレオチドの3’末端の伸長化阻害修飾としては、ヌクレオチドの3’末端の伸長化反応を阻害可能な修飾であれば特に制限されない。例えば、ポリヌクレオチドの末端のリボースの3’位のOH基を、リン酸基等の他の物質に置換する修飾を行うことにより、ポリメラーゼによる伸長化反応を阻害(好ましくは停止)することができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
(第二の鋳型核酸)
本発明に係る「第二の鋳型核酸」は、下記の構造(d):
5’−B1c−BL−B1−N3c−N5c−F1c−FLc−F1−3’・・・(d)
からなる核酸である。第二の鋳型核酸(図1では、50)は、Fwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点として合成された、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された核酸である。かかる第二の鋳型核酸としては、デオキシリボヌクレオチドからなるものであってもリボヌクレオチドからなるものであってもこれらが混在するものであってもよいが、核酸増幅反応の安定性の観点から、デオキシリボヌクレオチドのみからなるものであることが好ましい。
【0059】
構造(d)中、「FLc」は、FwアダプターヌクレオチドのFLと相補的な塩基配列を示す。そのため、塩基配列FLcは、ループ領域FLに対応して、塩基配列F2に相補的な塩基配列(本明細書中、場合により「塩基配列F2c」という)のみからなる領域であっても、その5’末端側及び/又は3’末端側にスペーサーFSに相補的な塩基配列(本明細書中、場合により「塩基配列FSc」という)を含む領域であってもよい。図1では、塩基配列FLcの一例として、塩基配列F2に相補的な塩基配列F2c(図1では、361)と、その5’末端側の、スペーサーFSに相補的な塩基配列FSc(図1では、362)とからなる構成を示すが、これに限定されるものではない。塩基配列FLc、塩基配列F2c、及び塩基配列FScの好ましい態様としては、それぞれ、上記のループ領域FL、塩基配列F2、及びスペーサーFSにおいて挙げた各好ましい態様に対応する。
【0060】
(Fwインナープライマー)
本発明に係る「Fwインナープライマー」は、下記の構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むプライマー(図1では、60)である。
【0061】
構造(e)中、「F1c」及び「F2」は、上記Fwアダプターヌクレオチドにおける「F1c」及び「F2」とそれぞれ同義である。これにより、第二の鋳型核酸(図1では、50)のループ構造上にある塩基配列F2c(図1では、361)に、Fwインナープライマーの塩基配列F2がアニールし、同Fwインナープライマーの3’末端を起点として、第二の鋳型核酸の相補鎖(第三の鋳型核酸)を合成することができる。
【0062】
このようなFwインナープライマーの塩基配列は、Fwアダプターヌクレオチドに対応させて、上記ハイブリダイズの条件を満たすように、適宜設計することができる。また、Fwインナープライマーを得る方法としては、特に制限されず、Bwアダプタープライマーを得る方法と同様に従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができる。Fwインナープライマーは、天然のヌクレオチドのみから構成されていなくともよく、例えば、前記非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよいが、安定性の観点から、天然又は非天然のデオキシリボヌクレオチドのみから構成されることが好ましい。
【0063】
(第三の鋳型核酸)
本発明に係る「第三の鋳型核酸」は、下記の構造(g):
5’−F1c−FL−F1−N5’’−N3’’−B1c−BLc−B1−3’・・・(g)
からなる核酸である(図示せず)。第三の鋳型核酸は、第二の鋳型核酸と、Fwインナープライマーとをアニールさせ、同Fwインナープライマーの3’末端を起点として合成される、第二の鋳型核酸の相補鎖である。
【0064】
構造(g)中、「N5’’」及び「N3’’」は、それぞれ、第二の鋳型核酸の塩基配列N5c及びN3cと相補的な塩基配列を示し、N5’’及びN3’’を含む塩基配列は、第二の鋳型核酸の塩基配列Ncと相補的な塩基配列N’’(本明細書中、場合により「塩基配列Ncの相補鎖N’’」ともいう)を示す。塩基配列N’’は、原理的には、標的領域Nと同じ配列であるが、例えば、標的領域NがRNAであり、かつ、第三の鋳型核酸がDNAである場合には互いに対応する配列であればよい。
【0065】
構造(g)中、「BLc」は、第二の鋳型核酸のBLと相補的な塩基配列を示す。そのため、塩基配列BLcは、ループ領域BLの塩基配列に対応して、塩基配列B2に相補的な塩基配列(本明細書中、場合により「塩基配列B2c」という)のみからなる領域であっても、その5’末端側及び/又は3’末端側にスペーサーBSに相補的な塩基配列(本明細書中、場合により「塩基配列BSc」という)を含む領域であってもよい。塩基配列BLc、塩基配列B2c、及び塩基配列BScの好ましい態様としては、それぞれ、上記のループ領域BL、塩基配列B2、及びスペーサーBSにおいて挙げた各好ましい態様に対応する。
【0066】
(Bwインナープライマー)
本発明に係る「Bwインナープライマー」は、下記の構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むプライマー(図示せず)である。
【0067】
構造(f)中、「B1c」及び「B2」は、上記Bwアダプタープライマーにおける「B1c」及び「B2」とそれぞれ同義である。これにより、第三の鋳型核酸のループ構造上にある塩基配列B2cに、Bwインナープライマーの塩基配列B2がアニールし、同Bwインナープライマーの3’末端を起点として、さらに第三の鋳型核酸の相補鎖を合成することができる。
【0068】
このようなBwインナープライマーの塩基配列は、Bwアダプタープライマーに対応させて、上記ハイブリダイズの条件を満たすように、適宜設計することができる。また、Bwインナープライマーを得る方法としては、特に制限されず、Bwアダプタープライマーを得る方法と同様に従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができる。Bwインナープライマーは、天然のヌクレオチドのみから構成されていなくともよく、例えば、前記非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよいが、安定性の観点から、天然又は非天然のデオキシリボヌクレオチドのみから構成されることが好ましい。
【0069】
Bwアダプタープライマー及びFwアダプターヌクレオチドにおいて、アニール領域N3c及びアニール領域N5’は、それぞれ、標的領域Nの塩基配列に応じて個別に設計する必要があるが、それ以外の領域(ループ領域BL及びループ領域FL;ステム領域B1c、B1及びステム領域F1c、F1等)や、Fwインナープライマー及びBwインナープライマーについては、必ずしも標的領域Nの塩基配列に応じて設計する必要はなく、多種の標的核酸の検出において、共通の塩基配列とすることができる。したがって、本発明の核酸増幅方法においては、各プライマー及びヌクレオチドの設計において、アニール領域N3c及びアニール領域N5’のポリヌクレオチド部分だけを標的領域Nの塩基配列に応じて設計すればよく、簡便にプライマーを設計することが可能である。
【0070】
(工程A)
本発明の核酸増幅方法では、先ず、工程Aとして、Bwアダプタープライマーと、標的領域N(塩基配列N3)とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として標的領域Nの5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を合成し、標的領域Nの相補鎖Ncの5’末端にステムループ構造が付加された第一の鋳型核酸を得る(図1では(a)及び(b)上段)。
【0071】
工程Aでは、例えば、前記標的核酸(又は当該標的核酸を含みうる試料)に、Bwアダプタープライマー及び相補鎖合成酵素を添加することにより、目的の標的領域Nが存在する場合にはこれにBwアダプタープライマーがアニールして、標的領域Nの5’末端側の残りの塩基配列と相補的な塩基配列(塩基配列N5c又は介在塩基配列と塩基配列N5c)が合成され、第一の鋳型核酸を得ることができる。
【0072】
このとき、前記標的核酸が二本鎖である場合には、これを一本鎖又は動的平衡状態とするために、加熱することが好ましい。この場合には、本発明に係るBwアダプタープライマーのアニール領域N3cの塩基配列に基づいて、Tm(融解温度)を算出し、算出したTmよりも低い温度で加熱することが好ましい。
【0073】
前記標的核酸がRNAである場合、標的領域Nの相補鎖の合成は、RNAからDNAを合成する逆転写反応であることが好ましい。前記逆転写反応の場合の相補鎖合成酵素(すなわち、逆転写酵素;図1では、101)としては、特に制限されず、例えば、Avian Myeloblastosis Virus(AMV)由来組み換え酵素(AMV)、Cloned AMV、MML、VReconbinant HIVの逆転写酵素、SuperscriptII/III/IV、ReverTraAce、Thermoscript、Ominiscript、Sensiscriptのうちの1種又は2種以上の組み合わせを用いることができるが、これらに限定されるものではない。この場合の反応温度や時間、指摘pH等の反応条件としては、選択する逆転写酵素に応じて適宜調整することができる。
【0074】
前記標的核酸がDNAである場合、標的領域Nの相補鎖の合成は、DNAを伸長させる伸長化反応であることが好ましい。前記伸長化反応の場合の相補鎖合成酵素(すなわち、DNAポリメラーゼ)としては、特に制限されず、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、Bst2.0 Warm Start DNA ポリメラーゼ、Bca(exo−)DNA ポリメラーゼ、大腸菌DNA ポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Vent DNA ポリメラーゼ、Vent(Exo−)DNA ポリメラーゼ(Vent DNA ポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、DeepVent DNA ポリメラーゼ、DeepVent(Exo−)DNA ポリメラーゼ(DeepVent DNA ポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、Φ29ファージDNA ポリメラーゼ、MS−2ファージDNA ポリメラーゼ、Csa DNAポリメラーゼのうちの1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。これらの中でも、比較的活性が高く、かつ、Warm Start仕様であるために非特異増幅を抑制することができる観点から、Bst2.0 Warm Start DNA ポリメラーゼが好ましい。この場合の反応温度や時間、指摘pH等の反応条件としては、選択するDNAポリメラーゼに応じて適宜調整することができる。
【0075】
(工程B)
本発明の核酸増幅方法では、次いで、工程Bとして、Fwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点としてFwアダプターヌクレオチドの相補鎖を合成し、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された第二の鋳型核酸を得る(図1では(b))。
【0076】
工程Bでは、例えば、工程Aの反応産物に、Fwアダプターヌクレオチド及び必要に応じて相補鎖合成酵素を添加することにより、目的の標的領域Nが存在する場合に合成される第一の鋳型核酸に、Fwアダプターヌクレオチドがアニールして、Fwアダプターヌクレオチドと相補的な塩基配列:5’−F1c−FLc−F1−3’が合成され、第二の鋳型核酸を得ることができる。
【0077】
Fwアダプターヌクレオチドの相補鎖の合成は、DNAを伸長させる伸長化反応であることが好ましい。前記伸長化反応の場合の相補鎖合成酵素(すなわち、DNAポリメラーゼ)としては、上記の工程Aに挙げたものと同様のものが挙げられる。この場合の反応温度や時間、指摘pH等の反応条件としては、選択するDNAポリメラーゼに応じて適宜調整することができる。
【0078】
また、本発明の核酸増幅方法においては、工程Aと工程Bとを同一反応系で行うことが可能であり、さらなる簡便性の観点から好ましい。前記標的核酸がRNAであり、各プライマーとしてDNAを用いる場合には、例えば、工程Bにおける相補鎖合成酵素として、等温鎖置換活性型ポリメラーゼ酵素を用いることにより、逆転写酵素と同一容器において、同時に、工程Aの逆転写反応と工程Bの伸長化反応とを行うことができる。前記等温鎖置換活性型ポリメラーゼ酵素としては、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、Bca(exo−)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、Csa DNAポリメラーゼ、Bst2.0 Warm Start DNA ポリメラーゼのうちの1種又は2種以上の組み合わせを用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、Warm Start仕様であるために逆転写非特異増幅を抑制することができる観点から、Bst2.0 Warm Start DNA ポリメラーゼが好ましい。また、この場合の逆転写酵素としては、例えば、Avian Myeloblastosis Virus(AMV)由来組み換え酵素(AMV)が挙げられる。
【0079】
工程Aと工程Bとを同一反応系で行う場合の反応温度としては、30〜75℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。さらに、この場合の反応時間としては、5〜120分間であることが好ましく、15〜60分間であることがより好ましい。
【0080】
工程Bでは、Fwアダプターヌクレオチドの3’末端に伸長化阻害修飾がなされているため、同Fwアダプターヌクレオチドの3’末端を起点とする第一の鋳型核酸の相補鎖の合成が抑制される。そのため、鋳型核酸としては、図1の(d)に示すような、第三の鋳型核酸と同様の構造を有する核酸の合成は阻害される。
【0081】
(熱処理工程)
本発明の核酸増幅方法としては、次いで、下記の工程Cの前に、工程Bの反応産物を85℃以上に加熱する熱処理工程をさらに含むことが好ましい。これにより、下記のLAMP法においてFwインナープライマーが第二の鋳型核酸にアニールする効率が高まり、感度が向上する。
【0082】
前記熱処理における温度としては、85〜100℃であることが好ましく、90〜100℃であることがより好ましい。さらに、この場合の熱処理時間としては、1〜30分間であることが好ましく、1〜10分間であることがより好ましい。
【0083】
(工程C)
本発明の核酸増幅方法では、次いで、工程Cとして、第二の鋳型核酸を鋳型として、FwインナープライマーとBwインナープライマーとを用いて、LAMP法により第二の鋳型核酸の塩基配列Ncを増幅する(図1では(c))。
【0084】
第二の鋳型核酸は、上記のように両端にステムループ構造を有するいわゆるダンベル型の構造となっているため、これを鋳型としてLAMP法で増幅することにより、塩基配列Ncを増幅することができる。つまり、塩基配列Ncは標的領域Nの相補鎖であるから、これにより、標的領域Nを間接的に増幅することが可能となる。
【0085】
LAMP法による増幅方法としては、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第00/28082号に記載の方法を採用することができる。
【0086】
より具体的には、例えば、第二の鋳型核酸(又は、工程B若しくは熱処理工程の反応産物)と、Fwインナープライマーと、Bwインナープライマーと、相補鎖合成酵素と、を混合し、温度を一定範囲内に保つことにより、第二の鋳型核酸が存在する場合には、以下のステップが進行する。
【0087】
(ステップ1)
先ず、第二の鋳型核酸において、3’末端(ステム領域F1)を起点として、自己を鋳型としたDNA鎖が伸長化反応によって合成される。このとき、5’末端側のステムループ構造は剥がされて一本鎖となる。さらに、第二の鋳型核酸は、3’末端側に一本鎖のループ構造(塩基配列FLcからなる構造)を有するため、ここにFwインナープライマーの塩基配列F2がアニールすることができ、同Fwインナープライマーの3’末端を起点とする伸長化反応によって第二の鋳型核酸を鋳型としたDNA鎖(第三の鋳型核酸)が合成される。このとき、既にある二本鎖を剥がしながら第三の鋳型核酸の伸長化反応が進む。
【0088】
(ステップ2)
他方、Fwインナープライマーを起点とする第三の鋳型核酸の伸長化反応によって剥がされて一本鎖となったDNA鎖では、3’末端側に互いに相補的な塩基配列、すなわち、B1c及びB1を有しているため、ステムループ構造を形成する。
【0089】
(ステップ3)
次いで、このステムループ構造の3’末端(ステム領域B1)を起点として、一本鎖となった自己を鋳型とした新たなDNA鎖の合成が始まり、二本鎖を形成している、Fwインナープライマーから合成された第三の鋳型核酸を剥がしながら伸長する。
【0090】
(ステップ4)
また、上記の過程によって一本鎖となった、Fwインナープライマーから合成された第三の鋳型核酸は、その両端にそれぞれ相補的な塩基配列、すなわち、F1及びF1c、並びに、B1c及びB1を有しているため、自己アニールしてステムループ構造を形成する。この第三の鋳型核酸の構造は、上記のとおり、第二の鋳型核酸と全く相補的な構造となる。
【0091】
(ステップ5)
ステップ4で得られた構造では、ステップ1の第二の鋳型核酸と同様に、3’末端(ステム領域B1)を起点として、自己を鋳型としたDNA鎖が伸長化反応によって合成される。このとき、5’末端側のステムループ構造は剥がされて一本鎖となる。さらに、第三の鋳型核酸は、3’末端側に一本鎖のループ構造(塩基配列BLcからなる構造)を有するため、ここにBwインナープライマーの塩基配列B2がアニールすることができ、同Bwインナープライマーの3’末端を起点とする伸長化反応によって第三の鋳型核酸を鋳型としたDNA鎖が合成される。このとき、既にあるDNA鎖を剥がしながら新たなDNA鎖の伸長化反応が進む。
【0092】
(ステップ6)
ステップ5以降は、ステップ2〜4と同様の過程を経ることにより、再び第二の鋳型核酸の構造が得られる。
【0093】
(ステップ7)
また、ステップ3で得られた新たなDNA鎖においては、一本鎖となっているループ構造(塩基配列BLcからなる構造)にBwインナープライマーの塩基配列B2がアニールし、二本鎖部分を剥がしながらDNA鎖が合成される。
【0094】
以上のステップが繰り返されることにより、同一鎖上に、塩基配列Nc及びその相補鎖と、互いに相補的な塩基配列(すなわち、F1及びF1c、並びに、B1c及びB1)とを繰り返す構造の増幅産物を、様々なサイズで得ることができる。
【0095】
かかるLAMP法に用いる相補鎖合成酵素としては、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、Bca(exo−)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、Csa DNAポリメラーゼ、Bst2.0 Warm Start DNA ポリメラーゼのうちの1種又は2種以上の組み合わせを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本発明に係るLAMP法における反応温度としては、特に制限されないが、50〜70℃であることが好ましく、60〜70℃であることがより好ましい。さらに、本発明に係るLAMP法における反応時間としては、10〜60分間であることが好ましく、15〜40分間であることがより好ましい。
【0097】
(検出工程)
工程Cで得られた増幅産物(本明細書中、場合により「LAMP産物」ともいう)は、適宜公知の方法又はそれに準じた方法で検出することができる。これにより、塩基配列Nc又はその相補鎖を検出するが、塩基配列Ncは標的領域Nの相補鎖であるから、つまり、これにより、標的領域Nを間接的に検出することが可能となる。
【0098】
前記検出方法としては、例えば、得られたLAMP産物に蛍光色素(例えば、エチジウムブロマイド、Syber Green(登録商標)、SYTO63等)をインターカレートして蛍光強度を測定することにより、塩基配列Nc又はその相補鎖を定量し、標的領域Nの量とすることができる。また、前記LAMP法と検出工程とを、例えば、リアルタイムで行うことにより、前記定量を同時に行うことができる。このような方法としては、例えば、インターカレーション法(いわゆるSyber Green法)に代表される、蛍光色素の存在下でLAMP法を行う方法;ダブルダイプローブ法(いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法)に代表される、蛍光色素を結合させたオリゴヌクレオチドプローブ(以下、場合により単に「プローブ」という)を用いる方法が挙げられる。
【0099】
これらの中でも、本発明の核酸増幅方法としては、工程Cの後に、塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズするプローブ(より好ましくは、塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズする塩基配列のみからなるプローブ)を用いて塩基配列Ncを検出する(塩基配列Ncの相補鎖の検出による塩基配列Ncの検出を含む。以下同様)検出工程をさらに含むことが好ましい。塩基配列Nc又は塩基配列Ncの相補鎖上にハイブリダイズするように設計されたプローブを用いてこれらを検出することにより、プライマーダイマーに起因する非特異反応の検出をより低減することが可能となる。
【0100】
前記検出方法に係るプローブとしては、塩基配列Ncや塩基配列Ncの相補鎖の塩基配列に基づいて適宜設計することができるが、下記の第一のプローブ又は第二のプローブを用いることにより、さらに非特異反応の検出を低減することが可能となるため好ましい。
【0101】
〔第一のプローブ〕
前記検出方法に係るプローブを、塩基配列Ncの少なくとも一部にハイブリダイズするプローブ(「第一のプローブ」という)とする場合には、塩基配列Ncのうち、塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さが5塩基長以下であることが好ましい。これにより、すなわち、Bwアダプタープライマーの塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さも5塩基長以下となり、第一のプローブとBwアダプタープライマーとのハイブリダイズが抑制されるため、工程Cと検出工程とを同時に行う場合(すなわち、リアルタイムで行う場合)、かかるハイブリダイズによる非特異増幅反応をさらに低減することが可能となる。
【0102】
第一のプローブにおいて、塩基配列N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さとしては、5塩基長以下であることが好ましいが、4塩基長以下であることがより好ましく、3塩基長以下であることがさらに好ましい。
【0103】
〔第二のプローブ〕
また、前記検出方法に係る別の態様として、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズするプローブ(「第二のプローブ」という)とする場合には、その全長の塩基配列が、塩基配列N3c又は塩基配列N5cのいずれかに全て含まれるものではないことが好ましい。これにより、第二のプローブの塩基配列が、Bwアダプタープライマーの塩基配列N3c、又は、Fwアダプターヌクレオチドの塩基配列N5’の相補鎖(N5c)のいずれか一方に包含されることがないため、原理どおりに形成されたLAMP産物に完全一致する増幅産物のみを検出することができ、非特異検出をさらに低減することができる。
【0104】
第二のプローブとしては、塩基配列N3cに含まれる塩基配列、及び塩基配列N5cに含まれる塩基配列が、それぞれ、プローブの全長の90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
【0105】
前記検出方法に係るプローブとしては、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、各ハイブリダイズ対象の領域に特異的にハイブリダイズするものが好ましく、例えば、上記ハイブリダイズの条件を満たすことが好ましく、各ハイブリダイズ対象の領域の塩基配列情報に基づいて、従来公知の方法又はそれに準じた方法で設計することができる。
【0106】
前記検出方法に係るプローブの鎖長は、少なくとも5塩基である。通常は、5〜100塩基であり、好ましくは5〜30塩基である。当該プローブは、例えば、市販のオリゴヌクレオチド合成機により合成することができる。また、前記プローブは、天然のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチド)のみから構成されていなくともよく、例えば、前記非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよい。
【0107】
また、前記プローブとしては、適宜、標識物質によって標識されていることが好ましい。これにより、前記標識物質に応じたシグナルを、塩基配列Nc又はその相補鎖の指標として検出することができる。前記「シグナル」には、呈色(発色)、反射光、発光、消光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた測定方法・装置によって確認できるものも含まれる。
【0108】
前記標識物質としては、例えば、FITC、FAM、DEAC、R6G、TexRed、TAMRA、Pacific Blue、Cy5、BODIPY FL等の蛍光物質;β−D−グルコシダ―ゼ、ルシフェラーゼ、HRP等の酵素;H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体;ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質;ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質が挙げられる。
【0109】
<プライマーセット、プローブ、キット>
本発明は、上記の本発明の核酸増幅方法に用いるためのプライマーセット、プローブ、及びキットも提供する。
【0110】
本発明の核酸増幅方法用プライマーセットは、
構造(a):
5’−B1c−BL−B1−N3c−3’・・・(a)
を含むBwアダプタープライマーと、
構造(c):
5’−F1c−FL−F1−N5’−3’・・・(c)
を含み、かつ、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、
を備える、本発明の核酸増幅方法に用いるためのプライマーセットである。本発明の核酸増幅方法用プライマーセットとしては、
構造(e):
5’−F1c−F2−3’・・・(e)
を含むFwインナープライマーと、
構造(f):
5’−B1c−B2−3’・・・(f)
を含むBwインナープライマーと、
をさらに備えることが好ましい。また、本発明の核酸増幅方法用プローブは、
塩基配列Ncの少なくとも一部、又は、塩基配列Ncの相補鎖の少なくとも一部にハイブリダイズする、本発明の核酸増幅方法に用いるためのプローブである。
【0111】
さらに、本発明の核酸増幅方法用キットは、本発明の核酸増幅方法用プライマーセットを備える、本発明の核酸増幅方法に用いるためのキットであり、本発明の核酸増幅方法用プローブをさらに備えることが好ましい。
【0112】
上記の本発明の核酸増幅方法に用いるためのプライマーセット、プローブ、及びキットにおいて、Bwアダプタープライマー、Fwアダプターヌクレオチド、Fwインナープライマー、Bwインナープライマー、及びプローブとしては、その好ましい態様も含めて、それぞれ、本発明の核酸増幅方法において述べたとおりである。
【0113】
本発明の核酸増幅方法用プライマーセット、及びプローブにおいて、各プライマー、ヌクレオチド、及びプローブとしては、緩衝液、安定剤、保存剤、防腐剤等の他の成分が添加してあってもよい。
【0114】
また、本発明の核酸増幅方法用キットとしては、標的核酸を抽出、精製するための試薬や希釈液:各酵素反応に必要な酵素、緩衝液、pH調整剤等の試薬;標準核酸;使用説明書等をさらに備えていてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、下記試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0116】
(試験例1)アダプタープライマーのステムループ構造による反応への影響
(1)逆転写反応・伸長化反応(鋳型核酸合成)
逆転写反応及び伸長化反応は、KCl、Tween MgSO dNTPを含むバッファーにおいて、終濃度で、125nMのBwアダプタープライマー、5nMのFwアダプターヌクレオチド、0.9U AMV(Roche)、及び3.6U Bst2.0 Warm Start DNA Polymerase(New England Biolabs社製)を混合し、標的核酸として、miRNAであるmiR−21−5p(塩基配列を配列番号:3に示す)又はLet−7a−5p(塩基配列を配列番号:6に示す)を、各10コピー添加して、又は添加せず(NC)、42℃において45分間行い、鋳型核酸を合成した。miR−21−5p及びLet−7a−5pに対して用いたBwアダプタープライマー及びFwアダプターヌクレオチドの組み合わせを、それぞれ、下記の表1に示す。表1において、Bwアダプタープライマーの「CT」は、ステムループ構造を持つプライマーを示し、その対照として、「ST1」及び「ST2」は、それぞれステムループ構造を形成しないプライマー(BwアダプタープライマーのB1cに相当する領域をB1に相当する領域と塩基対を形成しない配列に置換したもの)を示し、「D1」は、BwアダプタープライマーのB1cに相当する領域を欠損させたプライマーを示す。また、表1の各Fwアダプターヌクレオチドの配列中、「‐」で区切った各ブロックは、5’末端側から順に、F1c、F2、FS、F1、N5’に相当する塩基配列を示し、各Bwアダプタープライマーの配列中、「‐」で区切った各ブロックは、5’末端側から順に、B1c、B2、BS、B1、N3cに相当する塩基配列を示す。
【0117】
【表1】
【0118】
(2)PCR増幅反応・蛍光検出
上記の逆転写反応・伸長化反応後の反応液に、終濃度で、1μMのPCR−F―プライマー(塩基配列を配列番号:12に示す)、1μMのPCR−B―プライマー(塩基配列を配列番号:13に示す)、SYTO63(Thermo Fisher Scientific社製)、及び0.03U/μM Takara Ex Taq(タカラバイオ社製)を添加し、PCR増幅反応液を調製した。各PCRプライマー(F―プライマー/B―プライマー)は、各Bwアダプタープライマー及びFwアダプターヌクレオチドの各々のループ領域の配列上に設計した。PCR増幅反応は、前記PCR増幅反応液について、95℃を10秒維持した後、[95℃で15秒、60℃で60秒]×40サイクルで行った。PCR産物量は、リアルタイムで、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(Roche社製)を用いて、励起波長618nm、測定波長660nmの条件下で蛍光強度を検出して測定した。
【0119】
測定して得られた蛍光強度−反応時間曲線から各Ct値を求め、NCのCt値との差(NCのCt値−標的核酸10コピーのCt値)をΔCtとして算出した。結果を下記の表2、3に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表2、3に示したように、標的核酸としてmiR−21−5pを用いた場合及びLet−7a−5pを用いた場合のいずれにおいても、BwアダプタープライマーとしてCTを用いたときのΔCT値と比較して、ST1、ST2、及びD1を用いたときのΔCT値は低下した(すなわち、Ct値が上昇した)。これらの結果より、Bwアダプタープライマーの構造をリニア構造からステムループ構造として鋳型核酸にステムループ構造を導入することによって、増幅サイクルが早くなって反応性が向上することが示唆された。
【0123】
(試験例2)伸長化反応後の熱処理効果の検証
(1)逆転写反応・伸長化反応(鋳型核酸合成)
逆転写反応及び伸長化反応は、KCl、Tween MgSO dNTPを含むバッファーにおいて、終濃度で、5nMのBwアダプタープライマー(配列番号:2、5)、Fwアダプターヌクレオチドとして、配列番号1、4に示す塩基配列において3’末端がリン酸化されていないアダプターヌクレオチドを5nM、0.9U AMV(Roche)、及び3.6U Bst2.0 Warm Start DNA Polymerase(New England Biolabs社製)を混合し、miR−21−5p(配列番号:3)又はLet−7a−5p(配列番号:6)を、各10コピー、10コピー、又は1011コピー添加して、又は添加せず(NC)、42℃において45分間行い、鋳型核酸を合成した。その後、95℃で5分間加熱して熱処理した。また、この対照として、同様に逆転写反応・伸長化反応後を行った後、熱処理を行わなかった。
【0124】
(2)LAMP増幅反応・蛍光検出
上記の熱処理後(熱処理あり)、又は逆転写反応・伸長化反応後(熱処理なし)の反応液に、終濃度で、0.8μMのFwインナープライマー(塩基配列を配列番号:14に示す)、0.8μMのBwインナープライマー(塩基配列を配列番号:15に示す)、SYTO63(Thermo Fisher Scientific社製)、及び2.4U Bst2.0 Warm Start DNA Polymeraseを添加し、LAMP増幅反応液を調製した。かかる反応液について、62℃において60分間、LAMP増幅反応を行った。LAMP産物量は、リアルタイムで、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(Roche社製)を用いて、励起波長618nm、測定波長660nmの条件下で蛍光強度を検出して測定した。測定して得られた蛍光強度−反応時間曲線を図2A及び図2Bに示す。図2Aは標的核酸としてmiR−21−5pを用いた結果を示し、図2Bは標的核酸としてLet−7a−5pを用いた結果を示し、図2A及び図2B中、それぞれ、(a)は熱処理なしの結果を示し、(b)は熱処理ありの結果を示す。
【0125】
図2A及び図2Bに示したように、標的核酸としてmiR−21−5pを用いた場合及びLet−7a−5pを用いた場合のいずれにおいても、熱処理なし(a)では、標的核酸のコピー数が少なくなると、蛍光強度−反応時間曲線の立ち上がりが遅くなる現象が確認された。一方、熱処理あり(b)では、標的核酸のコピー数が少なくても前記曲線の十分な立ち上がりが確認された。ただし、Let−7a−5pを用いた場合には熱処理ありのNCにおいても、前記曲線の立ち上がりが早くなった(図2B(b))。これらの結果から、相補鎖合成後の熱処理が増幅産物の検出の感度向上に寄与することが確認された。
【0126】
(試験例3)Fwアダプターヌクレオチドの3’末端リン酸化効果(3’末端伸長化阻害修飾効果)の検証
試験例2において、Let−7a−5pを用いた場合にNCでの非特異増幅反応が確認されたことから、かかる非特異増幅反応の抑制を目的として、Fwアダプターヌクレオチドの3’末端リン酸化効果を検証した。
【0127】
すなわち、先ず、試験例2の(1)と同様の方法で、miR−21−5p(配列番号:3)又はLet−7a−5p(配列番号:6)を、各1011コピー添加して、又は添加せず(NC)、逆転写反応・伸長化反応を行った(リン酸化なし)。また、Fwアダプターヌクレオチドとして、表1及び配列番号1、4に示す塩基配列の3’末端がリン酸化されたアダプターヌクレオチドをそれぞれ用いたこと以外は同様にして、逆転写反応・伸長化反応を行った(リン酸化あり)。次いで、各逆転写反応・伸長化反応の後、95℃で5分間加熱して熱処理した。次いで、試験例2の(2)と同様の方法で、LAMP増幅反応及び蛍光検出を行い、各蛍光強度−反応時間曲線を得た。得られた蛍光強度−反応時間曲線を図3A及び図3Bに示す。図3Aは標的核酸としてmiR−21−5pを用いた結果を示し、図3Bは標的核酸としてLet−7a−5pを用いた結果を示し、図3A及び図3B中、それぞれ、(a)はリン酸化なしの結果を示し、(b)はリン酸化ありの結果を示す。
【0128】
図3A及び図3Bに示したように、標的核酸としてmiR−21−5pを用いた場合及びLet−7a−5pを用いた場合のいずれにおいても、Fwアダプターヌクレオチドの3’末端のリン酸化がない場合(a)には、NCにおいて反応時間が20分〜30分の間で蛍光強度−反応時間曲線の立ち上がりが確認された。一方、リン酸化がある場合(b)には、いずれにおいても、NCにおける当該立ち上がりが確認されなかった。また、標的核酸が1011コピーにおける立ち上がり時間は、Fwアダプターヌクレオチドの3’末端のリン酸化の有無で、ほとんど差はなかった。これらの結果から、Fwアダプターヌクレオチドの3‘末端リン酸化は、標的核酸の存在における検出には影響せずに、非特異増幅反応を抑制できることが確認された。
【0129】
(試験例4)蛍光消光プローブ検出
(1)逆転写反応・伸長化反応(鋳型核酸合成)
Bwアダプタープライマー(配列番号:2、5)を終濃度で125nMとし、Fwアダプターヌクレオチドとして、表1及び配列番号1、4に示す塩基配列の3’末端がリン酸化されたアダプターヌクレオチドをそれぞれ用い、かつ、Fwアダプターヌクレオチド(配列番号:1、4)を終濃度で50nMとしたこと以外は、試験例2の(1)と同様の方法で、miR−21−5p(配列番号:3)又はLet−7a−5p(配列番号:6)を、各1011コピー添加して、又は添加せず(NC)、逆転写反応・伸長化反応を行い、鋳型核酸を合成した。その後、95℃で5分間加熱して熱処理した。
【0130】
(2)LAMP増幅反応
上記の熱処理後の反応液に、終濃度で、0.8μMのFwインナープライマー(配列番号:14)、0.8μMのBwインナープライマー(配列番号:15)、2.4U Bst2.0 Warm Start DNA Polymerase、及び0.04μMの蛍光消光プローブ(蛍光色素:BODIPY FL)を添加し、LAMP増幅反応液を調製した。miR−21−5p及びLet−7a−5pに対して用いた蛍光消光プローブを、それぞれ、下記の表4に示す。表4において、「miR−21−5p領域設計プローブ」は、標的核酸miR−21−5pの塩基配列(配列番号:3)にハイブリダイズするように設計したプローブ(塩基配列を配列番号:16に示す)であり、「Let−7a−5p領域設計プローブ」は、標的核酸Let−7a−5pの塩基配列(配列番号:6)にハイブリダイズするように設計したプローブ(塩基配列を配列番号:17に示す)であり、その対照として、「ループ領域設計プローブ」は、各Bwアダプタープライマー(配列番号:2、5)のループ領域(BL、特にB2に相当する領域)の相補鎖にハイブリダイズするように設計したプローブ(塩基配列を配列番号:18に示す)である。LAMP増幅反応は、前記LAMP増幅反応液について、62℃で60分間行った。
【0131】
【表4】
【0132】
(3)融解曲線解析
上記のLAMP増幅反応後の反応液を95℃で5分間加熱して熱変性せしめ、次いで、20℃まで温度を下げながら、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(Roche社製)を用い、励起波長465nm、測定波長510nmの条件下で蛍光強度を測定し、融解曲線を得た。測定して得られた融解曲線を図4A及び図4Bに示す。図4Aは標的核酸としてmiR−21−5pを用いた結果を示し、図4Bは標的核酸としてLet−7a−5pを用いた結果を示し、図4A及び図4B中、それぞれ、(a)は各標的核酸の塩基配列にハイブリダイズするように設計したプローブ(配列番号:16又は配列番号:17)を用いた結果を示し、(b)は各Bwアダプタープライマーのループ領域の相補鎖にハイブリダイズするように設計したプローブ(配列番号:18)を用いた結果を示す。
【0133】
図4A及び図4Bに示したように、標的核酸としてmiR−21−5pを用いた場合及びLet−7a−5pを用いた場合のいずれにおいても、Bwアダプタープライマーのループ領域の相補鎖にハイブリダイズするように設計したプローブを用いた場合(b)には、標的核酸の存在条件下だけではなく、NCにおいても消光が観測された。一方、標的核酸の塩基配列にハイブリダイズするように設計したプローブを用いた場合(a)には、標的核酸の存在条件下で消光が観測され、NCにおいては観測されなかった。これらの結果から、プローブによってLAMP増幅産物を検出する場合には、標的核酸の塩基配列にハイブリダイズするように、すなわち、鋳型核酸の標的核酸に対応する領域上にプローブを設計することにより、非特異消光が抑制され、より特異的な検出が可能となることが確認された。
【0134】
(試験例5)プローブ設計領域の検証
試験例4において、鋳型核酸の標的核酸に対応する領域上にプローブを設計することによってより特異的な検出が可能となったことから、プローブの設計領域についてさらに詳細に検証した。
【0135】
すなわち、先ず、Bwアダプタープライマー(配列番号:2)を終濃度で125nMとし、Fwアダプターヌクレオチドとして、表1及び配列番号1に示す塩基配列の3’末端がリン酸化されたアダプターヌクレオチドを用い、かつ、Fwアダプターヌクレオチド(配列番号:1)を終濃度で50nMとしたこと以外は、試験例2の(1)と同様の方法で、miR−21−5p(配列番号:3)を10コピー添加して、又は添加せず(NC)、逆転写反応・伸長化反応を行い、鋳型核酸を合成した。その後、95℃で5分間加熱して熱処理した。次いで、下記の表5に示す蛍光消光プローブを用いたこと以外は、試験例4の(2)と同様の方法で、LAMP増幅反応を行った。表5中、「miRNA21Probe−1」〜「miRNA21Probe−7」は、標的核酸miR−21−5pの塩基配列(配列番号:3)又はその相補鎖にハイブリダイズするように、かつ、各ハイブリダイズする塩基数が異なるように設計したプローブ(Probe−2〜7の塩基配列を配列番号:19〜24に示す)であり、「miRNA21Probe−8」は、上記「miR−21−5p領域設計プローブ(配列番号:16)」と同じである。また、表5には、標的核酸miR−21−5pのセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列も合わせて示し、Bwアダプタープライマーの塩基配列N3c又はその相補鎖に対応する配列を下線で示す。
【0136】
【表5】
【0137】
(3)融解曲線解析
上記のLAMP増幅反応後の反応液を95℃で5分間加熱して熱変性せしめ、次いで、4℃まで温度を下げながら、CFX96 Touch Deep WellリアルタイムPCR解析システム(バイオラッド社製)を用い、励起波長450〜490nm、測定波長515〜530nmの条件下で蛍光強度を測定し、融解曲線を得た。測定して得られた融解曲線を図5に示す。図5中、各曲線の縦軸は−(d/dt)を示し、横軸は温度(℃)を示す。(a)はmiRNA21Probe−1、(b)はmiRNA21Probe−2、(c)はmiRNA21Probe−3、(d)はmiRNA21Probe−4、(e)はmiRNA21Probe−5、(f)はmiRNA21Probe−6、(g)はmiRNA21Probe−7、(h)はmiRNA21Probe−8、の各蛍光消光プローブを用いたときの結果を示す。
【0138】
図5に示したように、標的核酸のセンス鎖にプローブを設計する場合(標的核酸のアンチセンス鎖にハイブリダイズするようにプローブを設計する場合)、すなわち、鋳型核酸上の、前記センス鎖に相補的な塩基配列(塩基配列Nc)にハイブリダイズするようにプローブを設計した場合((a)〜(f))においては、miRNA21Probe−1〜4((a)〜(d))で、標的核酸の存在条件下においてのみ消光が観測され、miRNA21Probe−5〜6((e)〜(f))ではNCにおいても消光が観測された。miRNA21Probe−5〜6では、Bwアダプタープライマーがプローブに干渉し、非特異増幅が生じたと考えられた。
【0139】
他方、標的核酸のアンチセンス鎖にプローブを設計する場合(標的核酸のセンス鎖の塩基配列にハイブリダイズするようにプローブを設計する場合)、すなわち、鋳型核酸上の、塩基配列Ncの相補鎖にハイブリダイズするようにプローブを設計した場合((g)〜(h))においては、miRNA21Probe−7(g)で、NCにおいても消光が観測され、miRNA21Probe−8では、標的核酸の存在条件下においてのみ消光が観測された。
【0140】
これらの結果から、標的核酸のセンス鎖にプローブを設計する場合、すなわち、鋳型核酸の塩基配列Ncにハイブリダイズするようにプローブを設計する場合は、Bwアダプタープライマーに結合可能な長さ(N3cとハイブリダイズする塩基配列の長さ)が短くなるように設計することにより、一方、標的核酸のアンチセンス鎖にプローブを設計する場合、すなわち、鋳型核酸の塩基配列Ncの相補鎖にハイブリダイズするようにプローブを設計する場合は、プローブの全配列が、少なくともBwアダプタープライマーの塩基配列に含まれないように(特に、プローブの全配列が、塩基配列N3cの相補鎖にハイブリダイズすることがないように)、設計することにより、非特異消光が抑制され、より特異的な検出が可能となることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上説明したように、本発明によれば、断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸であっても、それを鋳型として簡便かつ特異的に核酸を増幅することができる核酸増幅方法、並びに、これに用いる核酸増幅方法用プライマーセット、プローブ、及びキットを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0142】
11…標的核酸(標的領域N)、20…Bwアダプタープライマー、21…ステム領域B1c、221…塩基配列B2、222…スペーサーBS、23…ステム領域B1、24…アニール領域N3c、25…塩基配列N5c、30…Fwアダプターヌクレオチド、31…ステム領域F1c、321…塩基配列F2、322…スペーサーFS、33…ステム領域F1、34…アニール領域N5’、361…塩基配列F2に相補的な塩基配列F2c、362…スペーサーFSに相補的な塩基配列FSc、40…第一の鋳型核酸、50…第二の鋳型核酸、60…Fwインナープライマー、101…逆転写酵素、102…DNAポリメラーゼ。
【配列表フリーテキスト】
【0143】
配列番号:1
<223> miR−21−5p Fwアダプターヌクレオチド
配列番号:2
<223> miR−21−5p Bwアダプタープライマー CT
配列番号:4
<223> Let−7a−5p Fwアダプターヌクレオチド
配列番号:5
<223> Let−7a−5p Bwアダプタープライマー CT
配列番号:7
<223> miR−21−5p Bwアダプタープライマー ST1
配列番号:8
<223> miR−21−5p Bwアダプタープライマー ST2
配列番号:9
<223> Let−7a−5p Bwアダプタープライマー D1
配列番号:10
<223> Let−7a−5p Bwアダプタープライマー ST1
配列番号:11
<223> Let−7a−5p Bwアダプタープライマー ST2
配列番号:12
<223> PCR−F―プライマー
配列番号:13
<223> PCR−B―プライマー
配列番号:14
<223> Fwインナープライマー
配列番号:15
<223> Bwインナープライマー
配列番号:16
<223> miR−21−5p領域設計プローブ
配列番号:17
<223> Let−7a−5p領域設計プローブ
配列番号:18
<223> ループ領域設計プローブ
<223> nはイノシンを示す
【要約】      (修正有)
【課題】断片DNAやmiRNA等の短鎖核酸を鋳型として簡便且つ特異的に増幅する、核酸増幅方法を提供する。
【解決手段】Bwアダプタープライマーと、標的核酸の標的領域とをアニールさせ、Bwアダプタープライマーの3’末端を起点として標的領域の5’末端側の塩基配列と相補的な塩基配列を合成し、標的領域の相補鎖の5’末端にステムループ構造が付加された第一の鋳型核酸を得る工程Aと、3’末端に伸長化阻害修飾がなされているFwアダプターヌクレオチドと、第一の鋳型核酸とをアニールさせ、第一の鋳型核酸の3’末端を起点としてFwアダプターヌクレオチドの相補鎖を合成し、第一の鋳型核酸の3’末端にステムループ構造が付加された構造からなる第二の鋳型核酸を得る工程Bと、第二の鋳型核酸を鋳型としてFwインナープライマーとBwインナープライマーとを用いて、LAMP法により第二の鋳型核酸を増幅する工程Cと、を含む核酸増幅方法。
【選択図】なし
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]