(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車両の乗員により操作又は把持され、前記自車両の進行方向を調節する操作部と、前記乗員により前記操作部が操作又は把持されたことを検出する検出部と、を備える前記自車両に搭載された車載コンピュータが、
前記自車両の周辺状況を認識し、
前記認識した周辺状況に基づいて、前記自車両が自車線から隣接車線へと車線変更するための条件を満たすか否かを判定し、
前記条件を満たすと判定した場合に、前記自車両の加減速および操舵を制御して、前記自車両を前記自車線から前記隣接車線へと車線変更させる車線変更制御を行い、
前記車線変更制御を抑制し、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、かつ前記自車両の速度が所定速度を超える場合、前記車線変更制御を抑制せず、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に前記他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、前記自車両の速度が前記所定速度以下であり、かつ前記検出部によって前記操作部が操作又は把持されたことが検出された場合、前記車線変更制御を抑制せず、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に前記他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、前記自車両の速度が前記所定速度以下であり、かつ前記検出部によって前記操作部が操作又は把持されたことが検出されない場合、前記車線変更制御を抑制する、
車両制御方法。
自車両の乗員により操作又は把持され、前記自車両の進行方向を調節する操作部と、前記乗員により前記操作部が操作又は把持されたことを検出する検出部と、を備える前記自車両に搭載された車載コンピュータに、
自車両の周辺状況を認識すること、
前記認識した周辺状況に基づいて、前記自車両が自車線から隣接車線へと車線変更するための条件を満たすか否かを判定すること、
前記条件を満たすと判定した場合に、前記自車両の加減速および操舵を制御して、前記自車両を前記自車線から前記隣接車線へと車線変更させる車線変更制御を行うこと、
前記車線変更制御を抑制すること、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、かつ前記自車両の速度が所定速度を超える場合、前記車線変更制御を抑制しないこと、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に前記他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、前記自車両の速度が前記所定速度以下であり、かつ前記検出部によって前記操作部が操作又は把持されたことが検出された場合、前記車線変更制御を抑制しないこと、
前記隣接車線上において少なくとも前記自車両よりも後方に前記他車両が存在することを認識せず、前記条件を満たすと判定し、前記自車両の速度が前記所定速度以下であり、かつ前記検出部によって前記操作部が操作又は把持されたことが検出されない場合、前記車線変更制御を抑制すること、
を実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御システム、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
[全体構成]
図1は、第1実施形態の車両制御システムを利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機を備える場合、電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、車室内カメラ70と、ウィンカー(方向指示器)80と、運転操作子90と、自動運転制御ユニット100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。自車両Mの前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0023】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
ファインダ14は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度、移動方向などを認識する。認識される物体は、例えば、車両や、ガードレール、電柱、歩行者、道路標識といった種類の物体である。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御ユニット100に出力する。また、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、またはファインダ14の検出結果を、そのまま自動運転制御ユニット100に出力してよい。
【0026】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0027】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどの各種表示装置や、車線変更開始スイッチ30aなどの各種ボタン、スピーカ、ブザー、タッチパネル等を含む。HMI30の各機器は、例えば、インストルメントパネルの各部、助手席や後部座席の任意の箇所に取り付けられる。車線変更開始スイッチ30aは、乗員がステアリングホイール90aを操作することなく自車両Mを車線変更させる制御(以下、自動車線変更と称する)を開始させるためのスイッチである。また、後述するウィンカーレバー90dも、自動車線変更を開始させるためのスイッチとして機能してよい。
【0028】
車両センサ40は、自車両Mの速度V
Mを検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。車両センサ40に含まれる各センサは、検出結果を示す検出信号を自動運転制御ユニット100に出力する。
【0029】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員から入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。経路決定部53により決定された地図上経路は、MPU60に出力される。また、ナビゲーション装置50は、経路決定部53により決定された地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。なお、ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから返信された地図上経路を取得してもよい。
【0030】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61として機能し、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0031】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20を用いて他装置にアクセスすることにより、随時、アップデートされてよい。
【0032】
車室内カメラ70は、例えば、車室内に設置されたシートに着座する乗員(特に、運転席に着座する乗員)の顔を中心に撮像する。車室内カメラ70は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ70は、例えば、周期的に乗員を撮像する。車室内カメラ70により生成された撮像画像は、自動運転制御ユニット100に出力される。
【0033】
運転操作子90は、例えば、ステアリングホイール90aや、複数の操作量検出センサ90b、接触検出センサ90c、ウィンカー80を作動させるウィンカーレバー(方向指示スイッチ)90d、レバー操作検出センサ90e、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバーなどの各種操作子を含む。ステアリングホイール90aは、「操作部」の一例である。
【0034】
運転操作子90の各操作子には、例えば、乗員による操作の操作量を検出する操作量検出センサ90bが取り付けられている。例えば、ステアリングホイール90aに取り付けられた操作量検出センサ90bは、ステアリングホイールの操舵角や操舵トルクなどを検出し、アクセルペダルやブレーキペダルに取り付けられた操作量検出センサ90bは、各ペダルの踏込量を検出する。各操作量検出センサ90bは、検出結果を示す検出信号を自動運転制御ユニット100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力する。操作量検出センサ90bは、「検出部」の一例である。
【0035】
また、ステアリングホイール90aには、接触検出センサ90cが取り付けられている。接触検出センサ90cは、例えば、ステアリングホイール90aの周方向に沿うように設けられた静電容量センサである。接触検出センサ90cは、ステアリングホイール90aに物体が近接または接触したことを、静電容量の変化として検出する。接触検出センサ90cは、検出した静電容量が閾値以上である場合、所定の検出信号を自動運転制御ユニット100に出力する。この閾値は、例えば、乗員がステアリングホイール90aを把持している場合に生じる静電容量よりも低い値に設定される。また、接触検出センサ90cは、静電容量が閾値以上であるか否かに関わらずに、静電容量を示す検出信号を自動運転制御ユニット100に出力してもよい。接触検出センサ90cは、「検出部」の他の例である。
【0036】
レバー操作検出センサ90eは、ウィンカーレバー90dが操作されたことを検出し、その検出結果を示す検出信号を自動運転制御ユニット100に出力する。
【0037】
自動運転制御ユニット100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、第3制御部180とを備える。第1制御部120、第2制御部160、および第3制御部180の各構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。自動運転制御ユニット100の詳細については後述する。
【0038】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するパワーECU(Electronic Control Unit)とを備える。パワーECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子90から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0039】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子90から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子90に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0040】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子90から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0041】
[自動運転制御ユニットの機能構成]
図2は、自動運転制御ユニット100の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。行動計画生成部140は、「判定部」の一例である。
【0042】
第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデル(ニューラルネットワークなどの学習器)による機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現される。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0043】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。また、認識部130は、カメラ10の撮像画像に基づいて、自車両Mがこれから通過するカーブの形状を認識する。認識部130は、カーブの形状をカメラ10の撮像画像から実平面に変換し、例えば、二次元の点列情報、或いはこれと同等なモデルを用いて表現した情報を、カーブの形状を示す情報として行動計画生成部140に出力する。
【0044】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)、並びに走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢を認識する。認識部130は、例えば、カメラ10によって撮像された画像から道路の区画線LMを認識し、認識した区画線LMの中で自車両Mに最も近い2本の区画線LMにより区画された車線を走行車線として認識する。そして、認識部130は、認識した走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。
【0045】
図3は、認識部130により走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢が認識される様子を示す図である。認識部130は、例えば、区画線LM1からLM3を認識し、自車両Mに最も近い区画線LM1およびLM2の間の領域を自車両Mの走行車線L1として認識する。そして、認識部130は、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識する。なお、これに代えて、認識部130は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0046】
また、認識部130は、例えば、自車線に隣接する隣接車線を認識してよい。例えば、認識部130は、自車線を区画する区画線の次に自車両Mに近い区画線と、自車線の区画線との間の領域を隣接車線として認識する。
図2の例では、例えば、認識部130は、自車線の区画線LM2と、その区画線LM2の次に自車両Mに近い区画線LM3との間の領域を右隣接車線L2として認識する。
【0047】
なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識してもよい。
【0048】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、推奨車線が決定された経路において順次起動するイベントを計画する。イベントには、例えば、自車両Mを自車線から隣接車線へと車線変更させる車線変更イベント、合流地点で自車両Mを本線に合流させる合流イベント、道路の分岐地点で自車両Mを目的側の車線に分岐させる分岐イベント、一定速度で同じ車線を走行する定速走行イベント、自車両Mの前方の所定距離(例えば100[m]程度)以内に存在する他車両(以下、前走車両と称する)に自車両Mを追従させる追従走行イベントなどが含まれる。「追従」とは、例えば、自車両Mと前走車両との相対距離(車間距離)を一定に維持させる走行態様である。また、イベントには、例えば、自車両Mを一旦隣接車線に車線変更させて前走車両を隣接車線において追い越してから再び元の車線へと車線変更させる追い越しイベント、障害物との接近を回避するための制動および/または操舵を行う回避イベント、カーブを走行するカーブ走行イベント、交差点や横断歩道、踏切などの所定のポイントを通過する通過イベント、自動停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバイベントなどが含まれてよい。
【0049】
また、行動計画生成部140は、自車両Mが走行している際に認識部130により認識された周辺の状況に応じて、既に決定したイベントを他のイベントに変更したり、新たなイベントを計画したりする。例えば、行動計画生成部140は、定速走行イベントが計画された区間を自車両Mが走行しているときに、前走車両と自車両Mとの車間距離が所定距離未満となった場合において、認識部130により隣接車線が認識されている場合、定速走行イベントを追い越しイベントに変更してよい。
【0050】
また、行動計画生成部140は、レバー操作検出センサ90eによってウィンカーレバー90dが操作されたことが検出された場合や、車線変更開始スイッチ30aが操作された場合、現在起動しているイベント、または現在起動しているイベントの次に計画されたイベントを、車線変更イベントに変更してよい。
【0051】
行動計画生成部140は、各イベントに応じて、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0052】
例えば、行動計画生成部140は、車線変更イベントが計画された区間や、合流イベント、分岐イベント、追い越しイベントなどの車線変更を伴うイベントが計画された区間に自車両Mが到達した場合、これらの各種イベントを起動して、自車両Mを車線変更させるための目標軌道を生成する。
【0053】
例えば、行動計画生成部140は、隣接車線において車線変更先とする目標位置(以下、車線変更ターゲット位置TAと称す)を設定し、この車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在しているか否かを判定する。
【0054】
図4は、隣接車線に車線変更ターゲット位置TAが設定される様子を模式的に示す図である。図中L1は自車線を表し、L2は右隣接車線を表している。また、矢印dは自車両Mの進行(走行)方向を表している。例えば、行動計画生成部140は、自車両Mが走行する自車線L1に対して隣接する隣接車線であって、車線変更先の隣接車線L2を走行する一以上の他車両の中から任意の2台の他車両(例えば自車両Mに相対的に近い2台の車両)を選択し、選択した2台の他車両の間に車線変更ターゲット位置TAを設定する。例えば、車線変更ターゲット位置TAは、隣接車線の中央に設定される。以下、設定した車線変更ターゲット位置TAの直前に存在する他車両を「前方基準車両mB」と称し、車線変更ターゲット位置TAの直後に存在する他車両を「後方基準車両mC」と称して説明する。車線変更ターゲット位置TAは、自車両Mと前方基準車両mBおよび後方基準車両mCとの位置関係に基づく相対的な位置である。
【0055】
行動計画生成部140は、車線変更ターゲット位置TAを設定した後、車線変更ターゲット位置TAの設定位置を基に、図中に示すような禁止領域RAを設定する。例えば、行動計画生成部140は、自車両Mを車線変更先の隣接車線L2に射影し、射影した自車両Mの前後に若干の余裕距離を持たせた領域を禁止領域RAとする。禁止領域RAは、隣接車線L2を区画する一方の区画線LMから他方の区画線LMまで延在する領域として設定される。
【0056】
そして、行動計画生成部140は、設定した禁止領域RAに他車両の一部も存在せず、自車両Mと前方基準車両mBとの衝突余裕時間TTC(Time-To-Collision)(B)が閾値Th(B)よりも大きく、且つ自車両Mと後方基準車両mCとの衝突余裕時間TTC(C)が閾値Th(C)よりも大きい場合に、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないと判定する。「禁止領域RAに他車両が一部も存在しない」とは、例えば、上方から見て禁止領域RAと他車両を示す領域とが互いにオーバーラップしないことである。また、衝突余裕時間TTC(B)は、例えば、自車両Mの前端を隣接車線L2側に仮想的に延出させた延出線FMと前方基準車両mBとの距離を、自車両Mおよび前方基準車両mBの相対速度で除算することで導出される。また、衝突余裕時間TTC(C)は、例えば、自車両Mの後端を隣接車線L2側に仮想的に延出させた延出線RMと後方基準車両mCとの距離を、自車両Mおよび後方基準車両mCの相対速度で除算することで導出される。閾値Th(B)と閾値Th(C)は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0057】
車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していると判定した場合、行動計画生成部140は、右隣接車線L2に存在する他車両の中から他の2台の車両を選択し、新たに車線変更ターゲット位置TAを設定することで、車線変更ターゲット位置TAに他車両が存在しているか否かの判定処理を繰り返し行う。この際に、自動運転制御ユニット100は、他車両が存在していない車線変更ターゲット位置TAが設定されるまで、自車両Mを自車線で待機させる目標軌道を生成してよい。自車両Mを自車線で待機させる場合、行動計画生成部140は、目標軌道に速度要素として含める目標速度を、自車両Mの現在の速度が維持されるような速度に決定したり、前走車両mAとの車間距離が一定となるような速度に決定したり、車線変更ターゲット位置TAの側方に自車両Mが移動するように速度に決定したりしてよい。
【0058】
なお、車線変更ターゲット位置TAの設定時に隣接車線L2に他車両が一台も存在しない場合、行動計画生成部140は、禁止領域RAに干渉する他車両が存在しないことから、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないと判定してよい。また、車線変更ターゲット位置TAの設定時に隣接車線L2に他車両が一台のみ存在する場合、行動計画生成部140は、その他車両の前方や後方の任意の位置に車線変更ターゲット位置TAを設定してよい。
【0059】
行動計画生成部140は、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないと判定した場合、車線変更のための目標軌道を生成する。
【0060】
図5は、目標軌道を生成する場面の一例を示す図である。例えば、行動計画生成部140は、図示のように、前走車両mA、前方基準車両mBおよび後方基準車両mCが所定の速度モデルで走行するものと仮定し、これら3台の車両の速度モデルと自車両Mの速度V
Mとに基づいて、自車両Mが前走車両mAと干渉せずに、将来のある時刻において前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間に位置するように軌道を生成する。例えば、行動計画生成部140は、現在の自車両Mの位置から、将来のある時刻における前方基準車両mBの位置や、車線変更先の車線の中央、且つ車線変更の終了地点までをスプライン曲線等の多項式曲線を用いて滑らかに繋ぎ、この曲線上に等間隔あるいは不等間隔で軌道点Kを所定個数配置する。この際、行動計画生成部140は、軌道点Kの少なくとも1つが車線変更ターゲット位置TA内に配置されるように軌道を生成する。これによって、自車両Mを自車線から隣接車線へと車線変更させる目標軌道が生成される。
【0061】
また、行動計画生成部140は、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないことに加えて、更に、車線変更先の車線と自車線との間を区画する区画線が、車線変更の禁止(はみ出しの禁止)を表す道路標示(例えば黄色実線)でないこと、車線変更先の車線が認識されていること(実在していること)、車両センサ40により検出されたヨーレートが閾値未満であること、車線変更時に出力されることが想定される自車両Mの速度V
Mが上限速度(例えば135[km/h]程度)未満であること、といった各種条件を満たす場合に、目標軌道を生成してもよい。車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないことや、車線変更先の車線と自車線との間を区画する区画線が、車線変更の禁止(はみ出しの禁止)を表す道路標示でないこと、車線変更先の車線が認識されていること、ヨーレートが閾値未満であること、車線変更時に出力されることが想定される自車両Mの速度V
Mが上限速度未満であること、といった各種条件は、「自車両が自車線から隣接車線へと車線変更するための条件」の一例である。
【0062】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。第2制御部160は、「走行制御部」の一例である。
【0063】
第2制御部160は、例えば、第2制御部側取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。第2制御部側取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に速度要素として含まれる目標速度に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合(曲率)に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0064】
例えば、メモリに記憶された目標軌道が車線変更イベントや車線変更を伴うイベントに応じて生成された目標軌道である場合、速度制御部164および操舵制御部166は、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御して、自車両Mを車線変更させる自動車線変更を実施する。なお、第2制御部160は、自動車線変更を実施する際、ウィンカー80を作動させてよい。「作動」とは、例えば、点灯していないウィンカー80を点灯させること、点灯しているウィンカー80を消灯させること、ウィンカー80を点滅させることを含む。
【0065】
第3制御部180は、行動計画生成部140によって計画された複数のイベントの中から所定のイベントが起動される場合、自車両Mの速度V
Mに応じて、所定イベントに基づく第2制御部による自車両Mの走行制御を抑制する。所定のイベントとは、上述した車線変更イベントや、合流イベント、分岐イベント、追い越しイベントなどの車線変更を伴うイベントである。
【0066】
第3制御部180は、例えば、第3制御部側取得部182と、切替制御部184と、HMI制御部186と、乗員状態判定部188と、抑制制御部190とを備える。
【0067】
第3制御部側取得部182は、行動計画生成部140によって所定のイベントが起動され目標軌道が生成される際に、所定のイベントが起動されることを示すイベント起動情報を行動計画生成部140から取得する。
【0068】
切替制御部184は、カメラ10やレーダ装置12、ファインダ14、物体認識装置16、車両センサ40、操作量検出センサ90b、接触検出センサ90cなどの検出結果と、後述する乗員状態判定部188による判定結果に基づいて、自車両Mの制御モードを制御する。自車両Mの制御モードには、例えば、手動運転モード、第1自動運転モード、第2自動運転モードなどが含まれる。第1自動運転モードは、「第1モード」の一例であり、第2自動運転モードは、「第2モード」の一例である。
【0069】
手動運転モードは、自車両Mの乗員によって操作されたときの運転操作子90の操作量に応じて、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220が制御されるモードである。
【0070】
第1自動運転モードは、自車両Mの乗員がステアリングホイール90aを把持している状態(以下、ハンズオン状態と称する)である場合に、第2制御部160によって、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220が制御されるモードである。第1自動運転モードは、例えば、高速道路のランプウェイなどの高低差があるカーブ路や料金所付近、交差点など、単純な直線形状の道路と比べて自動運転の難易度が高い区間で実行される。第1自動運転モードは、「第1モード」の一例である。
【0071】
第2自動運転モードは、第1自動運転モードに比して、乗員に要求されるタスクが低いモードであり、自車両Mの乗員がステアリングホイール90aを把持していない状態(以下、ハンズオフ状態と称する)である場合に、第2制御部160によって、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220が制御されるモードである。第2自動運転モードは、例えば、第1自動運転モードに比して自動運転の難易度が低い、道路の形状が直線形状である区間(例えば高速道路の本線など)で実行される。従って、第2自動運転モードでは、第1自動運転モードに比して自動運転の制御の度合が高くなる。なお、第2自動運転モードでは、必ずしも乗員がハンズオフ状態である必要はなく、ハンズオン状態であってもよい。第2自動運転モードは、「第2モード」の一例である。
【0072】
例えば、切替制御部184は、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が高速道路のランプウェイでのイベントを表している場合、自車両Mの制御モードを第1自動運転モードに切り替える。
【0073】
また、例えば、切替制御部184は、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が高速道路の本線でのイベントを表している場合、自車両Mの制御モードを第2自動運転モードに切り替える。
【0074】
また、例えば、切替制御部184は、自車両Mの制御モードが第1自動運転モードまたは第2自動運転モードである場合に、自車両Mの乗員が、アクセルペダル、ブレーキペダル、またはステアリングホイール90aのうち少なくとも一つ以上を所定の操作量以上で操作した場合に、自車両Mの制御モードをいずれかの自動運転モードから手動運転モードに切り替える。
【0075】
また、例えば、切替制御部184は、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が所定のイベントであることを表し、更に、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th(例えば50[km/h]や60[km/h]程度)以下である場合に、自車両Mの制御モードを第1自動運転モードに切り替える。すなわち、切替制御部184は、車線変更が行われる場合に自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合、自動運転によって車線変更を実施するために、自車両Mの制御モードを、乗員にハンズオンを要求するモードに切り替える。
【0076】
HMI制御部186は、例えば、切替制御部184により自車両Mの制御モードが切り替えられた場合、そのモードの切り替えに関する情報を、HMI30の各表示装置やスピーカなどに出力させる。
【0077】
乗員状態判定部188は、例えば、ステアリングホイール90aに設けられた操作量検出センサ90bの検出結果や、接触検出センサ90cの検出結果に基づいて、自車両Mの乗員がハンズオン状態であるのか、またはハンズオフ状態であるのかを判定する。例えば、乗員状態判定部188は、ステアリングホイール90aに設けられた操作量検出センサ90bによって検出された操舵トルクが閾値以上である場合、自車両Mの乗員がハンズオン状態であると判定してよい。この閾値は、例えば、乗員がステアリングホイール90aを把持している場合にシャフトに与えられる操舵トルクよりも低い値に設定されている。また、乗員状態判定部188は、接触検出センサ90cから静電容量が閾値以上であることを示す所定の検出信号が入力された場合、自車両Mの乗員がハンズオン状態であると判定してよい。また、乗員状態判定部188は、車室内カメラ70の撮像画像を解析して、自車両Mの乗員がハンズオン状態であるか否かを判定してもよい。
【0078】
抑制制御部190は、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が所定のイベントであることを表し、且つ車両センサ40により検出された自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合に、所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づく制御を抑制するように第2制御部160に指示する。すなわち、抑制制御部190は、車線変更イベントまたは車線変更を伴うイベントが実行される場合に、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合、第2制御部160による自動車線変更を抑制する。なお、抑制制御部190は、自動車線変更を抑制するよう第2制御部160に指示する代わりに、所定のイベントに応じた目標軌道の生成を停止するように行動計画生成部140に指示してもよい。また、抑制制御部190は、上記の各種条件を判定させる処理を抑制させる(例えば停止させる)ことで、行動計画生成部140が目標軌道を生成することを停止させてもよい。これによって、第2制御部160による自動車線変更が抑制される。
【0079】
[処理フロー]
以下、第3制御部180による一連の処理の流れを、フローチャートを用いて説明する。
図6は、第1実施形態の第3制御部180による一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が所定のイベントを表す情報である場合に実行される。すなわち、本フローチャートの処理は、所定のイベントが計画された区間に自車両Mが到達した場合や、車線変更開始スイッチ30aまたはウィンカーレバー90dが操作された場合に実行される。また、本フローチャートの処理は、HMI30に含まれる各種スイッチやレバーが自車両Mの乗員によって操作された場合に開始されてもよい。以下の説明では、車線変更ターゲット位置TAを設定する際に、前方基準車両mBと後方基準車両mCとのうち、少なくとも後方基準車両mCとなる他車両が認識部130によって認識されていないものとして説明する。すなわち、レーダ装置12やファインダ14といった各種センサの検出範囲内において、自車両Mの後側方に他車両が存在していないものとする。後側方とは、例えば、自車線に隣接する隣接車線において、自車両Mのドアミラーの位置よりも車両後方側の領域である。また、後側方に対して前側方とは、自車線に隣接する隣接車線において、自車両Mのドアミラーの位置よりも車両前方側の領域である。
【0080】
なお、本フローチャートの処理とは別に、行動計画生成部140によって、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していないことや、車線変更先の車線と自車線との間を区画する区画線が車線変更の禁止(はみ出しの禁止)を表す道路標示でないこと、車線変更先の車線が認識されていること、ヨーレートが閾値未満であること、車線変更時に出力されることが想定される自車両Mの速度V
Mが上限速度未満であること、といった各種条件が満たされるか否かに応じて隣接車線への車線変更が可能であるか否かが判定される。
【0081】
まず、抑制制御部190は、車両センサ40から入力された情報に基づいて、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する(ステップS100)。例えば、自車両Mの前方に前走車両mAが存在し、この前走車両mAが自車両Mよりも遅い場合、行動計画生成部140によって追い越しイベントが計画される。このような場合、隣接車線への車線変更が可能であると判定されるまで(上記判定条件が満たされるまで)、行動計画生成部140は、前走車両mAとの車間距離が一定となるように自車両Mを徐々に減速させる目標軌道を生成し、これを第2制御部160に出力する。これによって、自車両Mは減速しながら自車線上で車線変更を待機することになる。このとき、減速の加減によっては自車両Mの速度V
Mがやむなく所定速度V
Th以下となる場合がある。また、自車線の制限速度が所定速度V
Th以下に設定されていたり、自車両Mの乗員によって上限速度が所定速度V
Th以下に設定されていたりする場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となる。
【0082】
抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Thを超えると判定した場合、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる(ステップS102)。例えば、仮に、自車両Mの後側方のセンサの検出範囲外に他車両が存在し、この認識できていない他車両の速度が80[km/h]〜100[km/h]程度の大きい速度であっても、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Thを超えているため、認識できていない他車両と自車両Mとの相対速度が小さくなる。この結果、車線変更を開始した後に、センサの検出範囲外に存在する他車両がセンサの検出範囲内に進入した場合であっても、車線変更先の隣接車線において他車両との間に十分な車間距離を保つことができるため、車線変更を途中で中断したり、車線変更中に自車両Mを急に加速させたりするのを抑制することができる。
【0083】
一方、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であると判定した場合、自車両Mの速度V
Mと、車線変更先である隣接車線の基準速度との速度差分を導出する(ステップS104)。例えば、抑制制御部190は、認識部130によって隣接車線の速度制限標識が認識された場合、その速度制限標識に表示された数字から隣接車線の制限速度を特定し、特定した制限速度を隣接車線の基準速度として導出する。また、抑制制御部190は、認識部130によって隣接車線上で認識された一以上の他車両の平均速度などを隣接車線の基準速度として導出してもよい、そして、抑制制御部190は、導出した隣接車線の基準速度と自車両Mの速度V
Mとを比較して、これらの速度差分を導出する。
【0084】
次に、抑制制御部190は、速度差分が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS106)。抑制制御部190は、速度差分が閾値以下であると判定した場合、S102に処理を進め、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる。
【0085】
一方、抑制制御部190は、速度差分が閾値を超えると判定した場合、第2制御部160による自動車線変更を抑制する(ステップS108)。例えば、抑制制御部190は、自動車線変更に伴う第2制御部160の制御の一部を停止させることで自動車線変更を抑制してもよいし、全部を停止させることで自動車線変更を抑制してもよい。例えば、抑制制御部190は、第2制御部160に対して、隣接車線へ向けた自車両Mの操舵制御を中止させ、車線維持といった操舵制御や、定速走行といった速度制御などは継続させることで、自動車線変更を抑制する。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0086】
図7は、自動車線変更が抑制される場面の一例を示す図である。例えば、時刻t1の場面では、前走車両mAの速度V
mAが所定速度V
Th以下であり、自車両Mの速度V
Mが前走車両mAの速度V
mAを超える速度であることを表している。このような場合、自車両Mに前走車両mAを追い越させるために、図示のように、自車両Mの乗員がウィンカーレバー90dを右側に倒し、自動運転制御ユニット100に車線変更を指示することが想定される。ウィンカーレバー90dが操作された場合、行動計画生成部140は、自車両Mを自車線L1から右側の隣接車線L2へと車線変更させる車線変更イベントを計画する。なお、上述したように、ウィンカーレバー90dが操作されるほか、分岐地点や合流地点の手前に自車両Mが到達した場合や、前走車両mAを追い越す場合に、行動計画生成部140は、車線変更イベントや車線変更を伴う他のイベントを計画してよい。
【0087】
そして、行動計画生成部140は、隣接車線L2上に車線変更ターゲット位置TAを設定し、上述した各種条件を満たすか否かを判定する。時刻t2の場面では、前方基準車両mBと後方基準車両mCとのうち、後方基準車両mCが認識部130によって認識されていないことから、車線変更ターゲット位置TAは、前方基準車両mBの後方に設定される。
【0088】
例えば、行動計画生成部140は、隣接車線L2上に車線変更ターゲット位置TAを設定したものの、車線変更ターゲット位置TAに他車両が障害物として存在していたり、車線変更先の車線と自車線との間を区画する区画線が車線変更の禁止する区間線であったりした場合、車線変更を可能と判定する条件を満たさないことから、自車線L1を維持させる目標軌道を生成し続ける。この際、行動計画生成部140は、自車両Mと前走車両mAとの相対距離を一定に保つため、目標軌道に速度要素として含める目標速度を小さくすることで、自車両Mを減速させる。この結果、時刻t2の場面のように、自車両Mの速度V
Mが前走車両の速度V
mAと数[%]〜十数[%]程度の誤差の範囲で同じになり、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となる場合がある。この場合、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mと隣接車線L2の基準速度V
L2との速度差分を求め、この速度差分が閾値を超える場合、時刻t3の場面で示すように、仮に、時刻t2から時刻t3の間において行動計画生成部140によって車線変更が可能であると判定された場合であっても、第2制御部160による自動車線変更を抑制する。これを受けて、行動計画生成部140は、自車両Mに自車線L1を維持させるような目標軌道を生成し、第2制御部160に出力する。このような制御によって、自車両Mが所定速度V
Thよりも遅い場合、後方基準車両mCの候補となる他車両が、センサの検出範囲外から自車両Mの速度V
Mよりも大きい速度(例えば速度差分が閾値以上となる速度)で進入してくることを考慮して、車線変更をせずに自車線L1上で待機させておくことができる。
【0089】
[その他(1)の処理フロー]
また、第3制御部180は、
図8に示すフローチャートに従って自動車線変更を抑制するか否かを決定してもよい。
図8は、第1実施形態の第3制御部180による一連の処理の流れの他の例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理も、
図6に例示したフローチャートの処理と同様に、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が所定のイベントを表す情報である場合に実行される。また、本フローチャートの処理とは別に、行動計画生成部140によって隣接車線への車線変更が可能であるか否かが判定されるものとする。
【0090】
まず、抑制制御部190は、車両センサ40から入力された情報に基づいて、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する(ステップS200)。
【0091】
抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Thを超えると判定した場合、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる(ステップS202)。
【0092】
一方、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であると判定した場合、自車両Mの制御モードが第1自動運転モード(ハンズオンが必要な自動運転モード)であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0093】
抑制制御部190は、自車両Mの制御モードが第1自動運転モードであると判定した場合、すなわち、自車両Mの乗員がハンズオン状態である場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であっても自動車線変更が可能であることから、S202に処理を進め、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる。
【0094】
一方、抑制制御部190によって自車両Mの制御モードが第1自動運転モードでなく、第2自動運転モード(ハンズオンが必要ない自動運転モード)であると判定された場合、すなわち、自車両Mの乗員がハンズオフ状態である場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるという条件下において自動車線変更を行うために、HMI制御部186は、HMI30の各表示装置に、自車両Mの乗員にハンズオンを要求する画面を表示させる(ステップS206)。なお、この際、HMI制御部186は、HMI30のスピーカから、ハンズオンを要求する音声を出力させてもよい。
【0095】
図9は、ハンズオンを要求する画面の一例を示す図である。図示の例のように、HMI制御部186は、「ステアリングホイール90aを掴んでください」といった文字や画像などを画面に表示させてよい。
【0096】
次に、乗員状態判定部188は、ステアリングホイール90aに設けられた操作量検出センサ90bの検出結果や、接触検出センサ90cの検出結果、車室内カメラ70の撮像画像の解析結果に基づいて、自車両Mの乗員がハンズオン状態であるのか否かを判定する(ステップS208)。
【0097】
乗員状態判定部188によって自車両Mの乗員がハンズオン状態であると判定された場合、切替制御部184は、自車両Mの制御モードを第2自動運転モードから第1自動運転モードに切り替える。これによって、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるときに自動車線変更を実施するための条件が成立するため、抑制制御部190は、S202に処理を進め、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる。
【0098】
一方、乗員状態判定部188によって自車両Mの乗員がハンズオン状態ではなく、ハンズオフ状態であると判定された場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である条件下において自車両Mの制御モードを第2自動運転モードから第1自動運転モードに切り替えることができないため、抑制制御部190は、第2制御部160による自動車線変更を抑制する(ステップS210)。これによって本フローチャートの処理が終了する。このように、自動運転制御ユニット100は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合、本来であれば自動車線変更を抑制するところが、自車両Mの乗員がハンズオン状態であれば、乗員のステアリングホイール90aの操作によって咄嗟の操舵制御を行うことができるため、自動車線変更を抑制せずに、自動車線変更を実施させる。
【0099】
図10は、自動車線変更が抑制されない場面と抑制される場面とを対比させた図である。例えば、時刻t1の場面において、ウィンカーレバー90dが操作され、行動計画生成部140によって、自車両Mを自車線L1から右側の隣接車線L2へと車線変更させる車線変更イベントが計画されたとする。この場合、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する。例えば、時刻t1の次の時刻t2の場面では、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となっているため、自車両Mの乗員にハンズオンが要求される。しかしながら、時刻t2の場面では、乗員がステアリングホイール90aから手を離し、ハンズオフ状態となっている。このような場合、抑制制御部190は、時刻t3の場面のように、第2制御部160による自動車線変更を抑制し、自車両Mを車線変更させずに自車線L1上で待機させる。
【0100】
一方、時刻t1の次の時刻t2#の場面では、時刻t2の場面と同様に、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となっているため、自車両Mの乗員にハンズオンが要求される。時刻t2#の場面では、乗員がステアリングホイール90aに手を触れているため、ハンズオン状態となっている。従って、抑制制御部190は、時刻t3#の場面のように、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、自動車線変更を実施させる。
【0101】
[その他(2)の処理フロー]
また、第3制御部180は、
図11に示すフローチャートに従って自動車線変更を抑制するか否かを決定してもよい。
図11は、第1実施形態の第3制御部180による一連の処理の流れの他の例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理も、
図6や
図8に例示したフローチャートの処理と同様に、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が所定のイベントを表す情報である場合に実行される。また、本フローチャートの処理とは別に、行動計画生成部140によって隣接車線への車線変更が可能であるか否かが判定されるものとする。
【0102】
まず、抑制制御部190は、車両センサ40から入力された情報に基づいて、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する(ステップS300)。
【0103】
抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Thを超えると判定した場合、行動計画生成部140によって既に隣接車線への車線変更が可能であると判定されているか否かを判定し(ステップS302)、行動計画生成部140によって未だ隣接車線への車線変更が可能であると判定されていない場合、S300に処理を戻す。
【0104】
一方、抑制制御部190は、行動計画生成部140によって既に隣接車線への車線変更が可能であると判定されている場合、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる(ステップS304)。
【0105】
一方、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であると判定した場合、自車両Mの制御モードが第1自動運転モード(ハンズオンが必要な自動運転モード)であるか否かを判定する(ステップS306)。抑制制御部190は、自車両Mの制御モードが第1自動運転モードであると判定した場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である条件下で自車両Mの乗員がハンズオン状態であるため、S302に処理を進める。
【0106】
一方、抑制制御部190は、自車両Mの制御モードが第1自動運転モードでなく、第2自動運転モード(ハンズオンが必要ない自動運転モード)であると判定した場合、S302の処理と同様に、行動計画生成部140によって既に隣接車線への車線変更が可能であると判定されているか否かを判定し(ステップS308)、行動計画生成部140によって未だ隣接車線への車線変更が可能であると判定されていない場合、S300に処理を戻す。
【0107】
一方、行動計画生成部140によって既に隣接車線への車線変更が可能であると判定されている場合、自車両Mの乗員をハンズオン状態にさせ、自車両Mの制御モードを第2自動運転モードから第1自動運転モードに切り替えるために、HMI制御部186は、HMI30の各表示装置に、自車両Mの乗員にハンズオンを要求する画面を表示させたり、スピーカからハンズオンを要求する音声を出力させたりする(ステップS310)。
【0108】
次に、乗員状態判定部188は、ステアリングホイール90aに設けられた操作量検出センサ90bの検出結果や、接触検出センサ90cの検出結果、車室内カメラ70の撮像画像の解析結果に基づいて、自車両Mの乗員がハンズオン状態であるのか否かを判定する(ステップS312)。
【0109】
乗員状態判定部188によって車両Mの乗員がハンズオン状態であると判定されるまで、HMI制御部186は、HMI30にハンズオンを要求する画面を表示させたり、ハンズオンを要求する音声を出力させたりすることで、乗員にハンズオンを要求し続ける。なお、ハンズオンを要求してから所定時間内に乗員がハンズオン状態とならなかった場合、抑制制御部190は、第2制御部160による自動車線変更を抑制してよい。
【0110】
乗員状態判定部188によって車両Mの乗員がハンズオン状態であると判定された場合、切替制御部184は、自車両Mの制御モードを第2自動運転モードから第1自動運転モードに切り替える。これによって、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるときに自動車線変更を実施するための条件が成立するため、抑制制御部190は、S304に処理を進め、第2制御部160による自動車線変更を抑制せず、行動計画生成部140によって所定のイベントに応じて生成された目標軌道に基づいて、第2制御部160に自動車線変更を行わせる。これによって本フローチャートの処理が終了する。このように、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合に、行動計画生成部140によって既に車線変更が可能であると判定されている場合、自車両Mの乗員がハンズオン状態となるまでは判定結果を保持し続けると共に、自動車線変更を抑制し、乗員がハンズオン状態となったタイミングで自動車線変更を実施させるため、センサの検出範囲外の他車両の存在を考慮しながら、車線変更が必要な場面でよりスムーズに車線変更を行うことができる。
【0111】
図12は、隣接車線への車線変更が可能であると判定された場合に、ハンズオン状態となるまで自動車線変更が抑制される場面の一例を示す図である。例えば、時刻t1の場面において、ウィンカーレバー90dが操作され、行動計画生成部140によって、自車両Mを自車線L1から右側の隣接車線L2へと車線変更させる車線変更イベントが計画されたとする。この場合、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する。例えば、時刻t1の次の時刻t2の場面では、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となっているため、自車両Mの乗員によるハンズオンが必要となる。しかしながら、時刻t2の場面では、乗員がステアリングホイール90aから手を離し、ハンズオフ状態となっているため、次の時刻t3の場面では、HMI制御部186が、HMI30にハンズオンを要求する画面を表示させたり、ハンズオンを要求する音声を出力させたりすることで、乗員にハンズオンを要求する。この間、行動計画生成部140によって既に車線変更が可能であると判定されている場合であっても、抑制制御部190は、第2制御部160による自動車線変更を抑制し続ける。次に、時刻t4の場面において、乗員がステアリングホイール90aに手を触れ、ハンズオン状態となった場合に、次の時刻t5において、自動車線変更の抑制をキャンセルし、第2制御部160に自動車線変更を実施させる。
【0112】
以上説明した第1実施形態によれば、自車両Mの周辺状況を認識する認識部130と、認識部130により認識された周辺状況に基づいて、自車両Mが自車線から隣接車線へと車線変更するための条件を満たすか否かを判定し、行動計画生成部140により車線変更するための条件を満たすと判定した場合、自車両Mに車線変更させるための目標軌道を生成する行動計画生成部140と、行動計画生成部140により生成された目標軌道に基づいて自動車線変更制御を行う第2制御部160と、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下の場合に、第2制御部160に自動車線変更制御を抑制させたり、行動計画生成部140に車線変更の可否の判定処理を抑制させたりする抑制制御部190と、を備えることによって、車線変更先の走行状況に合わせた車線変更を行うことができる。
【0113】
例えば、自車両Mの後側方のセンサの検出範囲外に、認識できていない他車両が存在すると仮定した場合、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合、認識できていない他車両の速度は、自車両Mと比べて相対的に大きくなる蓋然性が高い。この場合、認識できていない他車両と自車両Mとの相対速度が大きくなりやすいため、自車両Mが車線変更を開始した後に、センサの検出範囲外に存在する他車両がセンサの検出範囲内に進入してくると、車線変更先の隣接車線において他車両との間に十分な車間距離を保つことができない場合が生じる。これに対して、本実施形態では、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合、車線変更を抑制するため、車線変更開始時には未だ認識できていない車線変更先の他車両の存在を考慮した上で車線変更を行うことができる。
【0114】
また、上述した第1実施形態によれば、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下である場合に、乗員がハンズオン状態である場合、自動車線変更を抑制しないため、より柔軟に自動車線変更を実施することができる。
【0115】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるときに、行動計画生成部140によって起動されるイベントが、車線変更イベントや、合流イベント、分岐イベント、追い越しイベントなどの車線変更を伴うイベントである場合、すなわち所定のイベントである場合、抑制制御部190が、これらのイベントに応じて生成された目標軌道に基づく自動車線変更を抑制するものとして説明した。これに対して、第2実施形態では、所定のイベントであってもイベントの必要不可否に応じて自動車線変更を抑制するか否かを決定する点で、上述した第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
【0116】
第2実施形態における抑制制御部190は、例えば、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるときに、第3制御部側取得部182によって取得されたイベント起動情報が、追い越しイベントといった目的地に到達するまでに必ずしも行う必要のない所定のイベントを表している場合、自動車線変更を抑制し、イベント起動情報が、合流イベントや分岐イベントといった目的地に到達するまでに必要不可欠な所定のイベントを表している場合、自動車線変更を抑制しない。
【0117】
図13は、所定のイベント時に自動車線変更が抑制されない場面の一例を示す図である。例えば、自車両Mの前方に分岐地点が存在し、行動計画生成部140によって分岐イベントが計画されたとする。この場合、抑制制御部190は、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下であるか否かを判定する。例えば、時刻t1の次の時刻t2の場面では、自車両Mの速度V
Mが所定速度V
Th以下となっているため、自車両Mの乗員によるハンズオンが必要となる。しかしながら、時刻t2の場面では、乗員がステアリングホイール90aから手を離し、ハンズオフ状態となっている。しかしながら、分岐イベントは目的地に到達するまでに必要不可欠なイベントであることから、時刻t3の場面に示すように、抑制制御部190は、分岐イベントによる自動車線変更を抑制せず、第2制御部160に自動車線変更を行わせる。
【0118】
一方で、自車両Mの前方に分岐地点や合流地点が存在せず、前走車両mAが自車両Mよりも遅いことに起因して計画された追い越しイベントの場合、抑制制御部190は、上述した第1実施形態と同様に、自動車線変更を抑制する。
【0119】
以上説明した第2実施形態によれば、車線変更をせずに自車線を走行したままでも目的地に到達できるような場合には、センサの検出範囲外から他車両が進行してくることを考慮して自動車線変更を抑制し、車線変更をしなければ目的地に到達できない、或いは目的地に到達するまでに大幅にタイムロスしてしまう場合には、自動車線変更を抑制せずに、自動車線変更を実施するため、車線変更先の走行状況に合わせながら、目的地に到達することを優先した車線変更を行うことができる。
【0120】
[ハードウェア構成]
上述した実施形態の自動運転制御ユニット100は、例えば、
図14に示すようなハードウェアの構成により実現される。
図14は、実施形態の自動運転制御ユニット100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0121】
自動運転制御ユニット100は、通信コントローラ100−1、CPU100−2、RAM(Random Access Memory)100−3、ROM(Read Only Memory)100−4、フラッシュメモリやHDD等の二次記憶装置100−5、およびドライブ装置100−6が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。ドライブ装置100−6には、光ディスク等の可搬型記憶媒体が装着される。二次記憶装置100−5に格納されたプログラム100−5aがDMAコントローラ(不図示)等によってRAM100−3に展開され、CPU100−2によって実行されることで、第1制御部120、第2制御部160、および第3制御部180が実現される。また、CPU100−2が参照するプログラムは、ドライブ装置100−6に装着された可搬型記憶媒体に格納されていてもよいし、ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてもよい。
【0122】
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
情報を記憶するストレージと、
前記ストレージに格納されたプログラムを実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
自車両の周辺状況を認識し、
前記認識した周辺状況に基づいて、前記自車両が自車線から隣接車線へと車線変更するための条件を満たすか否かを判定し、
前記条件を満たすと判定した場合に、前記自車両の加減速および操舵を制御して、前記自車両を前記自車線から前記隣接車線へと車線変更させる車線変更制御を行い、
前記自車両の速度が所定速度以下の場合に、前記車線変更制御を抑制するように構成された、
車両制御システム。
【0123】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、上述した実施形態の車両システム1は、ALC(Auto Lane Change)等の運転支援を行うシステムに適用されてもよい。