(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備は、溶鋼を用いて鋳片を生産する設備であって、溶鋼が貯留されるタンディッシュと、タンディッシュの溶鋼を供給されて鋳片状に1次凝固させる鋳型、及び鋳型から鋳片を引き抜き、且つ、2次冷却させるセグメントから構成される。このとき、セグメントは、鋳片の移動経路に沿って鋳型の下側に連続して配列される。
【0003】
従来のセグメントは、鋳型の下側に連続して配列されて鋳片を案内し且つ押下する複数のガイドロールと、ガイドロールの両端部を回転自在に支持する複数のローラー組立て体と、鋳型の下側に連続して配列され、鋳片の移動経路を挟んで向かい合うように離間し、複数のローラー組立て体がそれぞれ取り付けられて支持される上フレーム及び下フレームと、互いに離間して向かい合う上フレームと下フレームとを連結する複数のタイロッドと、鋳片に押下力を与えるように互いに離間して向かい合う上フレームと下フレームとの間隔を調節可能な油圧シリンダーと、を備える。
【0004】
油圧シリンダーを有する従来のセグメントは、高温・多湿の操業環境と鋳片の内部の高い溶鋼静圧により頻繁に破損が生じている。このとき、主として破損される部分が油圧シリンダーの部分であり、したがって、最近には、油圧シリンダーを外し、ロールギャップを固定した構造のセグメントを主として用いている。
【0005】
一方、鋳造中に溶鋼が流出したり鋳片が渋滞したりするなどの非常状況が生じると、設備の修復のために、セグメントの内部の鋳片を切断し、セグメントを鋳片とともに持ち出した後、整備を完了して待ち中の新規なセグメントに置き替えるといった一連の手順を移動経路の上流から下流まで順番に行う。
【0006】
このとき、鋳片の厚さが厚い場合、鋳片を切断することが不可能であり、このため、セグメントを別途に持ち出さなければならないが、上述した非常状況下では、ほとんどのローラーが鋳片に融着した状態であるため、設備の修復のためのセグメントの分離を行うことが困難であるため、上記の非常状況に対応し難いのが現状である。
【0007】
本発明の背景となる技術は、下記の特許文献に掲載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、処理物の移動経路からローラーを後退させることのできるローラー組立て体を提供する。
【0010】
本発明は、非常時に移動経路上の鋳片に融着されたローラーを引き離すことのできる鋳造装置を提供する。
【0011】
本発明は、非常時に移動経路上の鋳片に融着されたローラーを引き離すことのできるローラーの引き離し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係るローラー組立て体は、処理物の移動経路からローラーを後退させ得るローラー組立て体であって、前記移動経路に配置された前記ローラーを回転自在に支持する支持体と、前記支持体の背面に取り付けられ、少なくとも一部が伸縮可能な固定軸と、前記支持体の背面側において前記固定軸を包み込むように取り付けられる胴体と、前記胴体と前記固定軸とを連結して取り付けられ、少なくとも一部が前記移動経路に対して前後進できるように形成されるプランジャーと、を備える。
【0013】
前記プランジャーは、油圧を用いて少なくとも一部が後進し、前記固定軸を前記移動経路から後退させ得るように形成されてもよい。
【0014】
前記プランジャーは、前記胴体の背面を貫通して取り付けられ、前記固定軸の後端に連なってもよい。
【0015】
前記プランジャーは、前端が前記胴体の背面に取り付けられ、内周面に段差が形成され、前記段差を中心として後端の内径が前端の内径よりも大きな中空状の外筒と、前記外筒を貫通して取り付けられ、外周面に段付部が形成され、外周面が前記外筒の内周面に触れる内筒と、前記内筒の前端から突出して形成され、前記胴体の背面を貫通して前記固定軸の後端に連なる連結軸と、前記段差と段付部とにより形成される油圧空間に流体を注入して油圧を形成できるように前記外筒を貫通して取り付けられる注入口と、を備えていてもよい。
【0016】
前記プランジャーは、前記注入口に取り付けられ、断続方式により開かれる注入口弁をさらに備えていてもよい。
【0017】
また、本発明の実施の形態に係る鋳造装置は、鋳片を鋳造する鋳造装置であって、鋳型から引き抜かれる鋳片の移動を案内するように前記鋳型の下側に連続して配列される複数のセグメントを備え、前記セグメントは、前記鋳片の移動経路を挟んで向かい合うように離間し、前記移動経路に沿って連続して配列される複数本のローラーと、前記複数本のローラーに取り付けられ、少なくとも一部が前記移動経路に対して前後進できるように形成される複数のローラー組立て体と、を備える。
【0018】
前記セグメントは、前記移動経路を挟んで向かい合うように離間し、複数のローラー組立て体がそれぞれ支持される第1のフレーム及び第2のフレームを備え、前記ローラー組立て体は、油圧を用いて少なくとも一部が後進し、前記ローラーを前記移動経路から後退させ得るように形成されてもよい。
【0019】
前記ローラー組立て体は、前記ローラーを回転自在に支持する支持体と、前記支持体の背面に取り付けられ、少なくとも一部が伸縮可能な固定軸と、前記支持体の背面側において前記固定軸を包み込むように取り付けられる胴体と、前記胴体の背面を貫通して取り付けられ、前記固定軸の後端に連なり、少なくとも一部が油圧を用いて前記移動経路に対して前後進できるように形成されるプランジャーと、を備えていてもよい。
【0020】
本発明の実施の形態に係るローラーの引き離し方法は、移動経路上の鋳片からローラーを引き離すローラーの引き離し方法であって、鋳型から鋳片を引き抜く手順と、移動経路に沿って連続して配列された複数のセグメントを用いて、前記鋳型から引き抜かれる鋳片の移動を案内する手順と、前記鋳片の移動中または停止時に、前記セグメントに配備された複数本のローラーに取り付けられ、少なくとも一部が前記移動経路に対して前後進できるように形成される複数のローラー組立て体を前記移動経路から後退させて前記ローラー組立て体に支持されたローラーを鋳片から離間させる手順と、を含む。
【0021】
前記ローラーを鋳片から離間させる手順は、前記ローラー組立て体の内部に油圧を印加して、前記ローラー組立て体の一部を前記移動経路から後退させる手順と、前記ローラー組立て体の一部に連結されたローラーを前記移動経路から後退させる手順と、を含んでいてもよい。
【0022】
前記ローラーを鋳片から離間させる手順は、前記ローラー組立て体の内部に油圧を印加するときに断続方式で印加する手順と、をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施の形態によれば、装置の一部のみを手軽に後退させ得るように設けられたプランジャー構造を用いて、処理物の移動経路に沿って連続して配列された複数本のローラーをそれぞれ処理物の移動経路から容易に後退させることができる。
【0024】
例えば、連続鋳造設備に適用されれば、セグメントのローラー組立て体をプランジャー構造が適用されたローラー組立て体として構成し、溶鋼が流出したり鋳片が渋滞したりするなどの原因により鋳片にローラーが融着すれば、プランジャー構造を用いてローラー組立て体の内部に油圧を形成し、この油圧を用いてローラー組立て体の固定軸を鋳片の移動経路から後退させることができ、固定軸に支持されたローラーを鋳片から手軽に引き離すことができる。
【0025】
すなわち、溶鋼の流出や鋳片の渋滞などの非常状況下でローラー組立て体のプランジャーに油圧を印加してローラーを鋳片から強制的に離間させて引き離すことができるので、非常時に鋳片と連続鋳造設備とを手軽に且つ速やかに分離することができ、設備の修復にかかる時間と手間を大幅に節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施の形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されるであろう。単にこれらの実施の形態は本発明の開示を完全たるものにし、当該技術分野において通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。本発明の実施の形態について説明するに当たって、図面は誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る鋳造装置の概略図である。
【0029】
図1に基づいて、本発明の実施の形態に係る鋳造装置について説明する。本発明の実施の形態に係る鋳造装置は、鋳型30を用いて、処理物、例えば、鋳片1を鋳造する鋳造装置であって、鋳型30から引き抜かれる鋳片1の移動を案内するように鋳型30の下側に連続して配列される複数のセグメント500を備える。
【0030】
セグメント500は、鋳型30の下側に鋳片1の移動経路40を形成するように所定の向きに連続して配列されてもよい。すなわち、それぞれのセグメント500は、鋳型30の下側に配設されて鋳片1の移動経路40を形成してもよい。このとき、移動経路40の形状と形態は多岐にわたってもよい。例えば、移動経路40は、湾曲状や垂直湾曲状であってもよく、また、垂直状であってもよい。一方、鋳片1の移動経路40を冷却ラインと称し、複数のセグメント500をまとめて冷却帯と称することがある。
【0031】
それぞれのセグメント500は、複数本のローラーと冷媒ノズル(図示せず)を備えていてもよい。それぞれのセグメント500は、複数本のローラーを用いて、鋳型30から引き抜かれる鋳片1を案内し、鋳片1を押下及び成形し、複数の冷媒ノズルを用いて、鋳片1に冷媒、例えば、冷却水を噴射し、鋳片1を凝固及び冷却させてもよい。
【0032】
本発明の実施の形態に係る鋳造装置は、溶融物、例えば、溶鋼を運搬する取鍋10と、取鍋10から溶鋼を供給されて一時的に貯留するタンディッシュ20と、タンディッシュ20から溶鋼を供給されて鋳片状に凝固させる鋳型30と、をさらに備えていてもよい。
【0033】
上述した取鍋10と、タンディッシュ20及び鋳型30の構成と方式は多岐にわたってもよく、これを本発明の実施の形態において特に限定する必要がない。本発明の要旨を曖昧にしないために、これらについての詳細な説明を省略する。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係るセグメント500の概略図である。
図2に基づいて、本発明の実施の形態に係るセグメント500について説明する。
【0035】
本発明の実施の形態に係るセグメント500は、鋳片1の移動経路40を挟んで向かい合うように離間し、移動経路40に沿って連続して配列される複数本のローラー510と、複数本のローラー510に取り付けられ、少なくとも一部が移動経路40に対して前後進できるように形成される複数のローラー組立て体520と、を備える。
【0036】
また、セグメント500は、移動経路40を挟んで向かい合うように離間し、複数のローラー組立て体520がそれぞれ支持される第1のフレーム530a及び第2のフレーム530bを備えていてもよい。
【0037】
図2に示すように、複数本のローラー510は、前後方向に互いに離間した位置から移動経路40が延びた方向に連続して配列されてもよい。このとき、前後方向は、
図2に示すように、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとが互いに離間した方向であってもよい。いうまでもなく、複数本のローラー510は、上下方向に互いに離間した位置から移動経路40が延びた方向に連続して配列されてもよい。この場合、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとが上下方向に互いに離間して配置されてもよい。すなわち、移動経路40が延びた方向に応じて、複数本のローラー510と第1のフレーム530a及び第2のフレーム530bはそれぞれ多種多様に配置されてもよい。
【0038】
複数本のローラー510は、左右方向にそれぞれ延びてもよい。ここで、左右方向は、上述した前後方向と上下方向の両方ともに交差する方向であり、いわば移動経路40を横切る方向であってもよい。
【0039】
第1のフレーム530aと第2のフレーム530bは、セグメント500の本体であって、
図2に示すように、前後方向に互いに離間してもよい。いうまでもなく、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bは、上下方向に互いに離間してもよい。
【0040】
第1のフレーム530aと第2のフレーム530bは、それぞれの位置に固設されてもよく、相互間の間隔が所定の間隔に固定されてもよい。第1のフレーム530aと第2のフレーム530bの向かい合うそれぞれの面に複数本のローラー510が配置され、鋳片1は、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとの間に引き込まれて複数本のローラー510により支持されながら移動してもよい。
【0041】
複数本のローラー510は、左右方向の軸(図示せず)を中心として軸回転自在に配設されてもよく、このために、複数本のローラー510は、それぞれの左右方向の両側の端部にローラー組立て体520がそれぞれ配設されてもよい。複数のローラー組立て体520は、それぞれのローラー510を左右方向に軸回転自在に支持してもよい。
【0042】
複数のローラー組立て体520は、前後方向に離間して向かい合う複数本のローラー510を挟んで前後方向に互いに離間し、複数本のローラー510のうち第1のフレーム530a側のローラー510を第1のフレーム530aにそれぞれ連結し、第2のフレーム530b側のローラー510を第2のフレーム530bにそれぞれ連結するように、各ローラー510の端部に前後方向に取り付けられてもよい。
【0043】
上述した構造のセグメント500を固定ロールギャップ型セグメントと称することがある。
【0044】
これに対し、本発明の上述した実施の形態とは異なる構造であって、いわゆる比較例に係るセグメント(図示せず)は、例えば、第1のフレームと第2のフレームとがタイロッドにより互いに連結されて配設され、油圧シリンダーにより第1のフレームと第2のフレームとの間隔が調節される構造に構成される。このとき、比較例に係るセグメントを、いわば油圧シリンダー型ロールギャップ調整装置を有するセグメントまたは可変型ロールギャップ型セグメントと称する。
【0045】
本発明の実施の形態に係るセグメント500は、比較例に係るセグメントに比べて、設備の点検とメンテナンスを行い易いというメリットを有する。また、比較例に係るセグメントは、鋳造装置の高温・多湿の環境下での破損に弱いタイロッドと油圧シリンダーにより運用及び取扱いを行い難いが、本発明の実施の形態に係るセグメント500は、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとが所定の位置に固設されるため、運用及び取り扱いを相対的に行い易い。
【0046】
一方、溶鋼の流出や鋳片の渋滞などの非常状況下で鋳片にローラー510が融着することがあるが、このとき、本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520を用いて、ローラー510を鋳片から強制的に引き離すことができる。このとき、油圧を用いて、例えば、ローラー組立て体520の後述するプランジャー524の内部に油圧を注入してローラー組立て体520の固定軸522を後退させて、固定軸522に連結されたローラー510を後退させてもよい。したがって、ローラー510の鋳片からの引き離しを簡単することができる。
【0047】
すなわち、本発明の実施の形態に係るセグメント500は、第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとの間隔が固定された固定ロールギャップ型セグメントであって、構造が強固であり、取り扱い易いものの、非常状況下で鋳造装置の修復のための鋳片との鋳造装置との分離が手軽に行われ、詳しくは、ローラー組立て体520を用いて、非常時に全体の装置の損傷なしに鋳片からのローラー510の引き離しが行われやすい。
【0048】
図3は、本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520の概略図であり、
図4は、本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520の作動図である。このとき、
図4の(a)は、正常操業時において、移動経路上のローラー510を支持する様子を示すローラー組立て体520の作動図であり、
図4の(b)は、非常時において、ローラー組立て体520がローラー510を移動経路から後退させる様子を示すローラー組立て体の作動図である。
【0049】
本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520は、鋳造装置のセグメント500へのローラーの支持装置及びそれからの後退装置として用いられ、この他にも、様々な処理物設備の移動経路に配設されて処理物の移動を案内する各種のローラーの支持及び後退の装置として用いられてもよい。
【0050】
図3及び
図4に基づいて、本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520について詳しく説明する。本発明の実施の形態に係るローラー組立て体520は、処理物、例えば、鋳片の移動経路に配置されたローラー510を鋳片の移動経路から後退させ得るローラー組立て体520であって、ローラー510を軸回転自在に支持する支持体521と、支持体521の背面に取り付けられ、少なくとも一部が伸縮可能な固定軸522と、支持体521の背面側において固定軸522を包み込むように取り付けられ、鋳片の移動経路を包み込むように配設される所定のフレームに固定される胴体523と、胴体523の背面を貫通して取り付けられ、固定軸522の後端に連なるプランジャー524と、を備える。
【0051】
このとき、プランジャー524は、少なくとも一部が油圧を用いて鋳片の移動経路に対して前後進できるように形成され、プランジャー524により固定軸522が後進し、ローラー510を鋳片の移動経路から後退させることができる。
【0052】
特に、厚肉の鋳片を鋳造するとき、各種の非常状況が生じると、ローラー510を鋳片から強制的に離間させることができて、今後の整備と修復が行われ易い。
【0053】
一方、以下において実施の形態の説明のために用いる方向は、本発明の限定のためのものではない。移動経路の延長方向とローラー510の配置方向へのローラー組立て体520の各構成部の配設方向及び延長方向などは、種々に変更可能である。
【0054】
支持体521は、鋳片の移動経路に配置されたローラー510を軸回転自在に支持してもよい。支持体521は、ローラー510の端部が手軽に取り付けられて支持可能な様々な形状に形成されてもよい。例えば、支持体521は、前方を向く一方の側がローラー510よりも小さな直径を有する円板状に形成されてローラー510の端部と左右方向に向かい合い、後方を向く他方の側がバー状に形成されて固定軸522の前面と前後方向に向かい合ってもよい。支持体521は、一方の側の中心にローラー510が軸回転自在に取り付けられ、他方の側の背面に固定軸522が取り付けられてもよい。
【0055】
固定軸522は、支持体521の背面に前後方向に取り付けられてもよい。固定軸522は、複数の分割型や分離型の軸が互いに結合されて形成されてもよい。一方、ローラー510が鋳片に密着して鋳片を押下するとき、鋳片の溶鋼静圧による反発力が支持体521を介して固定軸522に軸力の形で伝わってもよい。固定軸522は、軸力を収容して消散させ、軸力による破損を防ぐように、少なくとも一部が前後方向に伸縮自在に形成されてもよい。
【0056】
固定軸522は、前後方向に延び、支持体521の背面に取り付けられる第1の軸522a、第1の軸522aの背面を貫通して前後方向に延びる第1の軸の孔、第1の軸522aの背面に取り付けられる第1の軸のカバー522bと、第1の軸のカバー522bを前後方向に貫通し、前方を向く一方の側が第1の軸の孔の内部に配置されるが、第1の軸の孔の内部面から離間し、後方を向く他方の側が胴体523の背面の中心を前後方向に貫通して取り付けられる第2の軸522cと、第2の軸522cの一方の側の外周面に突設されるリング状の突起、リング状の突起の前方において第2の軸522cの一方の側の外周面に支持され、前後方向に触れ合う弾性部材、例えば、複数のカップばね522d、複数のカップばね522dの前後方向に配置されて第2の軸522cの一方の側の外周面にそれぞれ支持され、リング状の突起により第1の軸の孔とリング状の突起の向かい合うそれぞれの面に密着され、複数のカップばね522dに密着される一対のシザーズワッシャー522e、第2の軸522cの他方の側を胴体523の背面に固定するように第2の軸522cの他方の側の外周面に取り付けられるスナップリング522fを備えていてもよい。
【0057】
第2の軸522cは、胴体523の背面に取り付けられて前後方向への動きが拘束され、第1の軸522aは、第2の軸522cの外周面に支持されて前後進してもよい。このとき、第1の軸の孔と複数のカップばね522dが第1の軸522aの前後進の動きを案内及び収容してもよい。このため、固定軸522が前後方向に伸縮可能であり、軸力を収容して消散させ、軸力による破損を防ぐことができる。
【0058】
胴体523は、前後方向に延び、内部が前方に向かって開かれてもよく、支持体521の背面側において固定軸522を包み込むように取り付けられてもよい。胴体523は、矩形状の柱状であってもよいが、これに特に限定されない。胴体523は、支持体521の後方に離れて配置され、胴体523の内部に固定軸522が配設されてもよい。胴体523の背面に固定軸522の第2の軸522cが取り付けられて支持されてもよい。胴体523の内部に固定軸522が収容され、胴体523の内部面に固定軸522が支持されてもよい。固定軸522は、胴体523の内部を前後方向に貫通して配置されてもよい。胴体523の外部面は、第1のフレーム530aや第2のフレーム530bに取り付けられて支持されてもよい。胴体523の前端は、支持体521の背面から所定の間隔dだけ離間してもよい。
【0059】
プランジャー524は、胴体523の背面を貫通して取り付けられてもよく、固定軸522の後端に連なってもよい。プランジャー524は、胴体523と固定軸522とを連結して取り付けられてもよい。プランジャー524は、少なくとも一部が鋳片の移動経路に対して前後進できるように形成されてもよく、油圧を用いて少なくとも一部が後進し、固定軸522を鋳片の移動経路から後退させ得るように形成されてもよい。プランジャー524を介して固定軸522に鋳片から遠ざかる向きに油圧を印加することができ、これにより、固定軸522が定められた距離に見合う分だけ後退して支持体521を後方に引っ張り、その結果、ローラー510が鋳片の移動経路から後退しながら鋳片から離間して引き離されることが可能になる。すなわち、プランジャー524は、鋳片からローラー510を引き離す役割を果たす。
【0060】
プランジャー524は、前端が胴体523の背面に取り付けられ、内周面に段差524eが形成され、段差524eを中心として後端の内径が前端の内径よりも大きな中空状の外筒524aと、外筒524aの中心を貫通して取り付けられ、外周面に段付部524fが形成され、外周面が外筒524aの内周面に触れる内筒524bと、内筒524bの前端から突出して形成され、胴体523の背面を貫通して固定軸522の後端、例えば、第1の軸のカバー522bに連結される複数本の連結軸524cと、段差524eと段付部524fとにより形成される油圧空間524gに流体を注入して油圧を形成できるように外筒524aを貫通して取り付けられる注入口524dと、を備え、注入口524dに取り付けられ、断続方式により開かれる注入口弁(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0061】
外筒524aは、前後方向に延び、中空状のシリンダー状に形成されてもよい。内筒524bは、外筒524aの中心を貫通して前後方向に可動となるように取り付けられてもよい。内筒524bは、内部が前方に向かって開かれ、外筒524aの内部に配置され、内部に第2の軸522cの他方の側が収容されてもよい。外筒524aと内筒524bは、向かい合うそれぞれの外周面と内周面とが互いに触れたり密着したりしてもよく、これらの間に油圧空間524gが形成されてもよい。一方、油圧の印加のための流体の注入が行われ易いように、注入口524dに接する内筒524bの一方の側の段付部524fには傾斜面が形成されてもよい。
【0062】
連結軸524cは、ボルト状に形成されてもよく、その前端が固定軸522の後端に取り付けられ、後端が内筒524bの前端に連なり、内筒524bの動きに連動して動くことができる。このため、連結軸524cを介して固定軸522と内筒524bとが一緒に同じ方向に動くことができる。
【0063】
注入口弁(図示せず)は、油圧のための流体が注入されるとき、注入口524dを断続方式で開いて油圧を段階的に印加してもよい。すなわち、油圧空間524gが一つの連なった空間であっても、油圧を段階的に印加してもよく、これにより、ローラー510と鋳片との融着状態に応じて、適量の流体を油圧空間524gに分けて供給することができる。
【0064】
以下、プランジャー524を用いたローラー510の後退手順について説明する。
【0065】
例えば、グリースガンを用いて注入口524dに油圧形成用の流体を注入すれば、油圧空間524gが広がりながら内筒524bが後進し、このため、連結軸524cが後進して固定軸522を後退させる。このとき、固定軸522の動きは、第1の軸の孔と複数のカップばね522dにより収容されてもよい。固定軸522が支持体521と胴体523とのギャップdに見合う分だけ後退すれば、ローラー510もまた当該ギャップdに見合う分だけ後退することができる。このとき、ローラー510の後退のために、油圧空間524gに印加される油圧は、例えば、グリースガンなどの携帯型の油圧印加装置でも十分に印加することができる。ローラー510の後退によりローラー510が鋳片から強制的に離間し、鋳片に融着されたローラー510が鋳片から引き離される。このようにすることで、溶鋼の流出に際して鋳片とローラー510とが融着される状況下で、装置の損傷なしにローラー510を鋳片から手軽に引き離すことができ、今後、鋳造装置の修復作業を手軽に行うことができる。
【0066】
図1から
図4に基づいて、本発明の実施の形態に係る鋳造装置のローラーの引き離し方法について説明する。本発明の実施の形態に係るローラーの引き離し方法は、移動経路上の鋳片からローラーを引き離すローラーの引き離し方法であって、鋳型から鋳片を引き抜く手順と、移動経路に沿って連続して配列された複数のセグメントを用いて、鋳型から引き抜かれる鋳片の移動を案内する手順と、鋳片の移動中または停止時に、セグメントに配備された複数本のローラーに取り付けられ、少なくとも一部が鋳片の移動経路に対して前後進できるように形成された複数のローラー組立て体を鋳片の移動経路から後退させてローラー組立て体に支持されたローラーを鋳片から離間させる手順と、を含む。
【0067】
まず、本発明の上述した実施の形態に係る鋳造装置を設け、鋳型30に溶融物、例えば、溶鋼を注入して鋳片として冷却させ、下側に連続して引き抜く。
【0068】
次いで、鋳片1をセグメント500の第1のフレーム530aと第2のフレーム530bとの間に通過させ、ローラー510を用いて鋳片の移動を案内する。次いで、溶鋼の流出や鋳片の渋滞など様々な非常状況が生じると、鋳造を中止する。このとき、鋳片は、停止状態であってもよく、移動状態であってもよい。
【0069】
次いで、ローラー組立て体520のプランジャー524の内部に流体を注入して油圧を形成し、ローラー組立て体520の一部、例えば、固定軸522を後退させる。固定軸522を後退させることにより、支持体521に支持されたローラー510を鋳片の移動経路から後退させて鋳片から離間させることができる。このとき、プランジャー524の内部に油圧を断続方式で印加してもよく、所要の油圧を印加して効率よく作業を行うことができる。
【0070】
本発明の前記実施の形態は、本発明の説明のためのものであり、本発明の制限のためのものではない。本発明の前記実施の形態に開示されている構成と方式は、互いに組み合わせたり交換したりして様々な形状に変形可能であり、これらの変形例もまた、本発明の範疇とみなし得ることに留意すべきである。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及びこれと均等な技術的思想の範囲内において異なる様々な形態に具体化できる筈であり、本発明が属する技術分野における当業者であれば、本発明の技術的思想の範囲内において様々な実施の形態が可能であるということが理解できる筈である。