(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの温度検出部の、それぞれ温度変化の傾向が異なる出力に基づいて得られる環境温度に基づき、電動モータの温度を推定して前記電動モータを制御することを特徴とする電動モータの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態としての電動ブレーキ装置1の主要部を示すブロック図である。
図2は、
図1の電動ブレーキ装置1の、モータ制御装置20の主要部を示すブロック図である。電動ブレーキ装置1は、車両の各車輪(図示は省略する)と共に回転するディスクDを挟持することにより、車輪毎に制動力を付与する制動装置である。この電動ブレーキ装置1は、
図1に示されるように、ディスクDに押圧されるブレーキパッド2、3と、ブレーキパッド2、3を移動させるピストン4とを含むブレーキ機構10を、この電動ブレーキ装置1の制動対象となる車輪毎に備えている。ブレーキ機構10は、さらに、電動モータ11と、電動モータ11の回転を直線運動に変換してピストン4に伝達する回転−直動変換機構12とを含んでいる。
【0010】
尚、上述したように、電動ブレーキ装置1は、電動ブレーキ装置1の制動対象となる車輪毎にブレーキ機構10を備えており、典型的には、複数の(例えば、四輪車両の場合、全四輪用の)ブレーキ機構10が存在する。但し、本明細書では、図示及び説明を簡明にするために、主として1つのブレーキ機構10及びその構成要素に関連させて電動ブレーキ装置1を説明する。この際、特に明示して断らない限り、1つのブレーキ機構10に関連させて説明した事項は、他の任意のブレーキ機構についても同様のものである。
【0011】
電動ブレーキ装置1は、さらに、電動モータ11の動作を制御するモータ制御装置20を備えている。ここで、
図1では、電動モータ11、回転−直動変換機構12、及び制御装置20は、それぞれキャリパ5とは別のブロックとしてキャリパ5外に示されているが、これは、電動モータ11、回転−直動変換機構12、及びモータ制御装置20をそれぞれ機能ブロックとして模式的に示すものに過ぎず、これらの構成要素11、12、20の空間的配置構成を何ら限定するものではない。一般に、電動ブレーキ装置1において、電動モータ11及び回転−直動変換機構12は、ピストン4ととともにキャリパ5に配設され、または、制御装置20も同様にキャリパ5に配設されている。
【0012】
また、本実施形態におけるブレーキ機構10は、車輪と共に回転するディスクDを挟持することにより、車輪毎に制動力を付与する制動装置として機能するために適切な他の任意の構成要素(例えば、電動モータ11の回転を減速させる減速機構)を含むものであってもよい。
【0013】
図2に示すように、モータ制御装置20は、該装置が備える制御基板20a上にそれぞれ実装されたモータ駆動部21及びコントローラ26を含む(尚、
図2では、モータ制御装置20を示す実線が、同時にモータ制御装置20が有する制御基板20aを示すものとする)。また、電動ブレーキ装置1において、電動モータ11は、例えば三相同期モータからなる。これに対応して、モータ駆動部21は、電源37を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換して電動モータ11に出力する、三相インバータ装置から構成される。コントローラ26は、三相インバータ装置を構成する半導体スイッチ素子(例えば、MOS−FETからなる)22のオン/オフを制御するスイッチ制御信号31をモータ駆動部21に出力し、モータ駆動部21は、このスイッチ制御信号31に従って、パルス幅変調(PWM)制御により電動モータ11の駆動を制御する。
【0014】
電動ブレーキ装置1において、電動モータ11には、回転位置検出部38が備えられており、モータ制御装置20のコントローラ26には、回転位置検出部38から電動モータ11の回転位置に相当する回転位置信号36が入力される。また、コントローラ26には、モータ駆動部21から、各相のモータ駆動電流(巻線電流)に相当する電流信号32が入力される。コントローラ26は、これらの情報に基づいて、電動モータ11の回転数をベクトル制御可能なように構成される。
【0015】
モータ制御装置20の制御基板20a上には、さらに、例えばサーミスタからなる第1の温度検出部23及び第2の温度検出部24が実装されており、コントローラ26には、第1及び第2の温度検出部23、24でそれぞれ測定された温度に相当する温度信号33、34が入力される。ここで、第1の温度検出部23は、モータ制御装置20の制御基板20a上の発熱部に設けられ、第2の温度検出部24は、モータ制御装置20の制御基板20a上の、非発熱部であって、かつ発熱部から離間した位置に設けられている。
【0016】
ここで、上記発熱部は、動作によって発熱する部品、典型的にはその発熱量が比較的大きい部品、が実装されている箇所を含む、制御基板20a上の局所的な領域である。また、上記非発熱部は、動作によって発熱する部品が実装されていないか、もしくは、その領域内に何らかの部品が実装されている場合、それらの部品の発熱量が比較的小さい、制御基板20a上の局所的な領域である。
【0017】
モータ制御装置20では、モータ駆動部21、より具体的には、発熱部品である半導体スイッチ素子22を含む局所的な領域が、典型的な発熱部の1つである。
図2に示す例では、第1の温度検出部23は、半導体スイッチ素子22の直近に設けられており、この意味で第1の温度検出部23を発熱部に設けた例となっている。但し、モータ制御装置20の発熱部は、これに限定されず、例えば、コントローラ26を含む領域、及び、制御基板20aにインバータ装置のプリドライバー(図示は省略する)が実装されている場合には、そのプリドライバーを含む領域も、発熱部と考えられる。本発明において、第1の温度検出部23を設ける位置は、制御基板20a上への部品の実装条件等も勘案の上、適切に設定されるものである。その際、第1の温度検出部23は、上述したような発熱部の近傍に配置されるものであってもよい。
【0018】
また、
図2に示す例において、第2の温度検出部24は、モータ制御装置20の制御基板20aの縁部に設けられている。この例では、第2の温度検出部24が設けられた局所的な領域は、その領域内に動作によって発熱する部品が、好ましくはどんな部品も、実装されていないという意味で、非発熱部であることが想定されている。さらに、第2の温度検出部24が設けられた局所的な領域は、モータ駆動部21及びコントローラ26等をそれぞれ含む全ての発熱部から離間した位置でもあり、好ましくは、全ての発熱部から最も離間した位置が望ましい。
【0019】
一般に、モータ制御装置20の制御基板20aは、モータ制御装置20の作動を要因としてその温度が上昇するが、その結果として生じる温度は制御基板20aにわたって一様ではなく、制御基板20a上のそれぞれの位置に実装される部品の発熱特性等に応じて、モータ制御装置20の作動時の温度分布に局所的なムラが生じる。上述した発熱部及び発熱部の近傍は、このような温度分布において、比較的高温を示す領域に相当し、非発熱部及び発熱部から離間した位置は、比較的低温を示す領域に相当する。
【0020】
ここで、コントローラ26は、車両データバス(図示は省略する)に接続され、この車両データバスを介した通信により互いに及び/または他の電子制御装置(ECU)と、後述するモータの駆動制御及び温度推定に必要な情報を含む各種の情報の授受を行うものであってもよい。
【0021】
また、コントローラ26は、好ましくは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びI/O(Input/Output)インターフェース等を備える、周知のマイクロコンピュータシステムとして構成される。但し、コントローラ26は、その詳細を後述するモータの駆動制御及び温度推定を実行可能な限り、その一部または全部が、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、もしくはそれらの組み合わせにより構成されるものであってもよい。
【0022】
以上のように構成された電動ブレーキ装置1では、コントローラ26の制御の下にモータ駆動部21によって駆動される電動モータ11の回転が、ブレーキ機構10の回転−直動変換機構12によって直線運動に変換され、この直線運動によりピストン4に推力が伝達されて、ピストン4によって移動するブレーキパッド2、3がディスクDを押圧することにより制動力が発生するものである。
【0023】
以下、
図1、2とともに
図3を参照しつつ、電動ブレーキ装置1における電動モータ11の温度(言い換えれば、電動モータ11の巻線温度)の推定について説明する。ここで、モータ制御装置20のコントローラ26は、電動モータ11の巻線材料の温度係数α及び電動モータ11のトルク定数を予め保存しているか、または、必要に応じて、車両上の他の電子制御装置から取得可能であるものとする。
図3は、第1の温度検出部23から得られる温度41及び第2の温度検出部24から得られる温度42の経時変化を、想定される環境温度43及び電動モータ11の巻線温度40の経時変化とともに示すグラフである。
【0024】
電動ブレーキ装置1では、まず、次のようにして電動モータ11の巻線の初期抵抗Riが取得される。
図3に示す期間Aは、モータ制御装置20が稼働している状態であり、このとき、一般に、モータ制御装置20の制御基板20aの温度41、42は、制御基板20a上に実際されている部品の動作による発熱のため、環境温度43よりも高い。また、
図3に示す例では、電動モータ11の巻線温度40は、制御基板20aの温度41、42よりもさらに高いことが想定されている。そして、上述したように、第1の温度検出部23は制御基板20a上の発熱部に設けられ、第2の温度検出部24は制御基板20a上の非発熱部に設けられているため、温度41は、温度42よりも高い。
【0025】
時点Pにおいて、車両が停止し、イグニッションがオフとされる。時点P以後の期間Bの間、後述する初期抵抗取得動作を実行するまで、モータ駆動部21の動作、ひいては電動モータ11への通電は停止されるが、モータ制御装置20自体への通電は維持される。このとき、モータ駆動部21が動作を停止するため、温度41及び温度42は、環境温度43に向かって低下し、同時に、通電が停止された電動モータ11の巻線温度も、環境温度43に向かって低下することが予想される。
【0026】
コントローラ26は、期間Bの間、温度41と温度42の差を継続的に監視し、その差が所定のしきい値以下となるか否かを判別する。ここで、所定のしきい値は、温度41と温度42との差がこのしきい値以下の場合、温度41と温度42とは実質的に(例えば、誤差の範囲内で)一致していると考えられる値に設定される。そして、このように、温度の変化傾向が異なる2つの位置のそれぞれに設けられた第1の温度検出部23から得られる温度41と、第2の温度検出部検出部24から得られる温度42とが一致することは、両方の温度41、42が環境温度43に到達したことを意味し、ひいては、その到達に十分な時間を経て、電動モータ11の巻線温度も環境温度43に到達したものと推定することができる。
したがって、このとき、
温度41=温度42=環境温度43=電動モータ11の巻線温度40・・・(1)が成立する。
【0027】
図3に示すグラフでは、コントローラ26は、領域Cに含まれるいずれかの時点で、温度41と温度42の差が所定のしきい値以下であると判別し、次のような初期抵抗取得動作を行う。この動作において、コントローラ26は、スイッチ制御信号31により、電動モータ11のq軸電流をゼロとし、d軸のみに通電する(以下、単にd軸通電ともいう)ようにモータ駆動部21を制御し、それによって、電動モータ11を回転させることなく巻線電流を通電させる。そして、コントローラ26は、入力される巻線電流(電流信号32)に基づいて、次の(2)式により、電動モータ11の巻線の初期抵抗Riを算出する。
Ri=インバータ電圧×DUTY/巻線電流 ・・・(2)
ここで、インバータ電圧は、電源37の電源電圧、DUTYは、モータ駆動部21の半導体スイッチ素子22のオン/オフ動作におけるデューティー比、巻線電流は、電流信号32に相当する電流値である。
【0028】
そして、コントローラ26は、算出された初期抵抗Ri及び式(1)で示される温度である初期温度Tiを、コントローラ26または車両上の他の電子制御装置が備える不揮発性の記憶部に保存する。以上のような初期抵抗取得動作の終了後、時点Qにおいて、モータ制御装置20への通電は停止される。
【0029】
初期抵抗取得動作が実行された後、任意の時点において、電動モータ11の巻線温度は、次のようにして推定される。
まず、その時点における巻線の抵抗(以下、現在抵抗ともいう)Rcを、次の(3)式により算出する。
Rc=(インバータ電圧−トルク定数×回転数)×DUTY/巻線電流・・・(3)
ここで、インバータ電圧は、電源37の電源電圧、DUTYは、モータ駆動部21の半導体スイッチ素子22のオン/オフ動作におけるデューティー比、巻線電流は、電流信号32に相当する電流値、トルク定数は、電動モータ11に固有のトルク定数、回転数は、回転位置信号36に基づいて得られる、この推定時点における電動モータ11の回転数である。
【0030】
尚、上式(3)が回転数をゼロとすることによって、電動モータ11の回転が停止している場合にも適用されることは言うまでもない。また、例えば車両の停車時のように、電動モータ11の回転が停止しているときに、現在抵抗Rcを取得する際には、初期抵抗取得動作時と同様に、電動モータ11をd軸通電により駆動することによって、電動モータ11を回転させることなく、巻線電流の電流値を得ることが好ましい。
【0031】
次いで、コントローラ26は、算出された巻線の現在抵抗Rc、保存されている巻線の初期抵抗Ri及び初期温度Ti、並びに保存されている巻線材料の温度係数αに基づいて、次の(4)式により、電動モータ11の巻線の推定される現在の温度Tcを得る。
Tc=(Rc−Ri)/(α×Ri)+Ti ・・・(4)
【0032】
ここで、巻線材料が銅(α=0.393%/℃)、初期温度Ti=25℃の場合に、推定される巻線の現在温度Tcの一例を挙げれば、次の通りである。まず、初期抵抗取得動作において、インバータ電圧を12V、デューティー比を50%とし、そのときの巻線電流を30Aとすれば、(2)式より、巻線の初期抵抗Riは、0.2Ωである。また、温度推定を行う時点において、インバータ電圧を12V、デューティー比を100%、電動モータ11の逆起電力(すなわち、トルク定数×回転数)を3Vとし、そのときの巻線電流を30Aとすれば、(3)式より、巻線の現在抵抗Rcは、0.3Ωである。この場合、(4)式より、推定される巻線の現在の温度Tcは、約152℃となる。
【0033】
尚、上述した初期抵抗取得動作は、車両の使用寿命にわたって、好ましくは初期的に1回実施されるものであってもよく、または、必要に応じて複数回実施されるものであってもよい。複数可実施される場合には、巻線の現在の温度Tcを推定するために、最新の初期抵抗Ri及び初期温度Tiが使用されるものであってもよく、または、複数の初期抵抗Ri及び初期温度Tiから、例えば平均を取ることにより、それぞれの代表値を取得し、その代表値が使用されるものであってもよい。
【0034】
また、モータ制御装置20の制御基板20a上には、第1及び第2の温度測定部23、24の2つの温度測定部を設けるものとしたが、本発明において、温度測定部は、温度変化傾向の異なる2以上の位置(例えば、2以上の発熱部及び/または2以上の非発熱部)に、それぞれ対応する温度測定部を設けるものであってもよい。
【0035】
ここで、従来のブレーキ装置では、電動モータの巻線温度を推定するために、電動モータのハウジングにネジ式のサーミスタを取り付け、このサーミスタから得られるハウジングの温度、発熱/放熱の時定数、巻線電流の積算値等から電動モータの巻線温度を推定した。この方式では、ホイールハウス等の限られたスペースに配設すべき部品点数が増大する、バネ下等の振動要件の厳しい箇所に、温度測定用の物理的接続点を設ける必要がある、電動モータの近傍の温度から電動モータの温度(巻線温度)を推定するための複雑なロジックが必要となるといった問題があった。
また、例えば特許文献1に記載の方式では、電動モータの初期的な巻線抵抗を、低抵抗を測定するための高度な計測機器を用いて、製品毎に、予め測定する必要があるため、製造工程における工数の増加、ひいては製造コストの増大につながるという問題があった。
【0036】
これに対し、本発明のブレーキ装置(電動ブレーキ装置1)及びモータ制御装置(モータ制御装置20)は、電動モータ11の駆動を制御する制御基板20a上の、温度の変化傾向の異なる少なくとも2つの位置に温度測定部(第1及び第2の温度測定部23、24)を有しているため、特殊な温度センサを直接電動モータの近傍に取り付ける必要がなく、また、電動モータの近傍の温度から電動モータの温度(巻線温度)を推定するための複雑なロジックを要することもなく、電動モータ11の温度(巻線温度)を、その作動による変化を勘案してより直接的に推定することが可能となり、ひいては電動モータ11の温度(巻線温度)を、より簡易で小規模のロジックにより、高精度に推定することが可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態におけるブレーキ装置(電動ブレーキ装置1)及びモータ制御装置(モータ制御装置20)では、上記温度検出部(第1及び第2の温度検出部23、24)の出力に基づいて得られる環境温度に基づき、電動モータ11の温度の推定を行うものとしたため、電動ブレーキ装置1及び/またはモータ制御装置20の製造工程の間に、電動モータの巻線抵抗を、低抵抗を測定するための高度な計測機器を用いて、製品毎に、予め測定する必要がなくなり、この結果、製造工程における工数の増加、ひいては製造コストの増大を、抑制または解消することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態におけるブレーキ装置(電動ブレーキ装置1)及びモータ制御装置(モータ制御装置20)では、制御基板20a上の発熱部もしくは該発熱部の近傍に第1の温度検出部23を設け、制御基板20aの非発熱部もしくは前記発熱部から離間した位置に第2の温度検出部24を設けたことにより、環境温度(したがって、初期的な電動モータ11の温度)、したがって初期的な電動モータ11の温度(巻線温度)を、第1及び第2の温度検出部23から得られる温度が経時的に収束する値として、高精度に推定することが可能となり、ひいては、現在の電動モータ11の温度(巻線温度)を高精度に推定することが可能となる。これによって、出力の漸減処置等の高温時に必要な電動モータ11の保護動作を確実に実行することができる。
【0039】
さらに、本実施形態におけるブレーキ装置(電動ブレーキ装置1)及びモータ制御装置(モータ制御装置20)では、車両の停車時(初期抵抗取得動作時を含む)において、d軸通電により電動モータ11を回転させずに、その巻線抵抗を測定することによって、車両のユーザに不快感を与えることなく、かつ高精度に(例えば、トルク定数のばらつきの影響を受けることなく)巻線の抵抗(例えば、初期抵抗Ri、及び、車両停車時の現在抵抗Rc)を測定することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置60を、
図4を参照して、主に第1実施形態との相違部分を中心に説明する。尚、第1実施形態と共通または対応する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0041】
ブレーキ装置60は、車両の各車輪(図示は省略する)と共に回転するディスクDを挟持することにより、車輪毎に制動力を付与する液圧式の制動装置である。このブレーキ装置60は、ディスクDに押圧されるブレーキパッド2、3と、キャリパ5のシリンダ66の内周に摺動可能に設けられ、ブレーキパッド2、3を移動させるピストン4とを含むブレーキ機構61を、このブレーキ装置60の制動対象となる車輪毎に備えている。
【0042】
ブレーキ装置60は、さらに、キャリパ5のシリンダ66内に供給する液圧を発生させるマスタシリンダ67と、マスタシリンダ67に伝達する電動倍力装置70を備える。電動倍力装置70は、マスタシリンダ67内の液圧を調整可能なブースタピストン(図示は省略する)を駆動する電動モータ11と、電動モータ11の回転を直線運動に変換してブースタピストンに伝達する回転−直動変換機構72とを含んでいる。電動倍力装置70は、ブレーキペダル(図示は省略する)の踏み込み操作とともに、または、ブレーキペダルの操作に関わらず、後述するモータ制御装置20によって駆動制御される電動モータ11により、回生協調制御、ブレーキアシスト、自動ブレーキ等の様々なブレーキ制御を実行可能なものである。
【0043】
ブレーキ装置60は、電動モータ11の動作を制御するモータ制御装置20を備えており、モータ制御装置20による駆動制御の下に駆動する電動モータ11により、マスタシリンダ67に液圧が発生し、ひいては各車輪のブレーキ機構61に制動力が発生するように構成される。
【0044】
ここで、ブレーキ装置60の電動モータ11は、第1実施形態における電動ブレーキ装置1の対応する構成要素と共通のものであり、ブレーキ装置60におけるモータ制御装置20は、電動モータ11の駆動に関して、第1実施形態における電動ブレーキ装置1のモータ制御装置20と同等の機能を果たすものである。
【0045】
以上のような構成により、ブレーキ装置60及びモータ制御装置20は、第1実施形態の電動ブレーキ装置1及びモータ制御装置に関連させて上述した作用効果と同等の作用効果を奏する。
【0046】
以上、本発明に係る電動モータ11の制御装置20を、車両のブレーキ装置に関連させて説明したが、本発明に係る電動モータの制御装置は、これに限定されるものではなく、例えば、電動パワートレイン装置及び電動パワーステアリング装置等の車両上の他のシステム、並びに、車両上の装置に限定されない他の装置に対しても適用可能である。また、本発明は、電動モータ11と制御装置20とが離間して配置されているシステムに対しても、適用可能である。
【0047】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
本願は、2018年3月27日付出願の日本国特許出願第2018−060443号に基づく優先権を主張する。2018年3月27日付出願の日本国特許出願第2018−060443号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。