(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムの全体構成を例示したブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム100は、室外機10と、複数の空調機としての室内機20A〜20Cと、複数の室内機20A〜20Cのそれぞれに設けられた人感センサ30と、管理装置40と、記憶装置80と、を有している。
【0010】
室外機10と室内機20A〜20Cとは、それぞれ、液配管及びガス配管を含む冷媒配管を介して接続されている。管理装置40と、室外機10及び室内機20A〜20Cとの間は、信号線によって接続されている。また、管理装置40と各人感センサ30との間は、それぞれ、室内機20A〜20Cを介して、又は直接、信号線によって接続されている。なお、管理装置40と、室外機10、室内機20A〜20C、及び各人感センサ30との間は、有線ではなく、無線により接続してもよい。
【0011】
室外機10は、例えば屋外に設置され、外気の吸気及び排気を行う。室外機10には、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機、冷暖切換用の四方弁及び室外熱交換器と、室外熱交換器に室外空気を送風する室外送風機と、圧縮機、四方弁、及び室外送風機を制御する室外制御部と、が収容されている。
【0012】
室内機20A〜20Cは、例えば屋内に設置され、所定の空調空間Kを空調エリア毎に分担して空調するものである。本実施の形態における室内機20A〜20Cは、4方向に吹出口を有する天井カセット型の室内機である。
【0013】
室内機20A〜20Cのそれぞれには、冷凍サイクルの一部を構成する膨張弁及び室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送風する室内送風機22(
図2参照)と、膨張弁及び室内送風機22を制御する室内制御部23と、が収容されている。室内送風機22は、例えば遠心式の送風機であり、回転数を制御することにより、室内機から送り出す空気の量を調節することができる。室内送風機22により送風された空気は、室内熱交換器を通過して空調空気となり、例えば4方向に設けられた吹出口から、互いに異なる4方向に吹き出される。空調空気には、空気調和システム100の冷房運転時に吹き出される冷房空気と、空気調和システム100の暖房運転時に吹き出される暖房空気とがある。
【0014】
室内機20A〜20Cの各吹出口には、それぞれ、室内制御部23の制御により、各吹出口から吹き出される空調空気の上下方向の向きを個別に調整するフラップ21(
図2参照)が設けられている。室内機20A〜20Cは、それぞれ、吹き出す空調空気の風量を吹出方向毎に調整する機能を有している。すなわち、室内機20A〜20Cは、室内送風機22から送り出される空気の量の調節と、各フラップ21による各吹出口から吹き出される空気の角度調節とを組み合わせることにより、吹出方向毎に可変の風量で空調空気を吹き出すことができる。また、各吹出口には、室内制御部23の制御により、左右方向の風向を所定の角度範囲で調節可能な風向板がそれぞれ設けられている。ここで、吹出方向とは、各吹出口から吹き出される空調空気の方向であり、フラップ21の角度によって上下方向の向きが決まり、風向板の角度によって左右方向の向きが決まる。
【0015】
室内機20A〜20Cは、各吹出口から空調空気を吹き出すことにより、それぞれが分担する空調エリアの空気環境を調整するようになっている。室内機20A〜20Cは、それぞれ、有線又は無線によって接続されたリモートコントローラなどを用いて操作できるものであってよい。
【0016】
また、室内機20A〜20Cには、それぞれ、例えばサーミスタからなり、空調空間Kの温度を測定する温度センサ25が設けられている。温度センサ25は、例えば吸込口に設けられる。室内機20A〜20Cのそれぞれの室内制御部23は、温度センサ25において測定された温度の情報である測定温度を取得し、管理装置40などに出力する。
【0017】
人感センサ30は、赤外線又は超音波などを用いて、所定の検知エリア内の人の存在を検知するセンサである。人感センサ30は、室内機20A〜20Cのそれぞれに内蔵されていてもよく、外付けされていてもよい。本実施の形態において、各人感センサ30は、室内機20A〜20Cのそれぞれの空調エリアに応じて検知エリアが設定されている。すなわち、各人感センサ30は、それぞれ、自身が設けられている室内機の空調エリア内の人の存在を検知することができる。人感センサ30は、人の存否を示す検知信号を、自身が設けられている室内機の室内制御部23又は管理装置40へ出力する。
【0018】
管理装置40は、例えば、空気調和システム100を統括的に管理する集中コントローラである。管理装置40は、少なくとも室内機20A〜20Cの監視及び制御を行い管理する。つまり、ユーザは、管理装置40を用いて、室内機20A〜20Cのそれぞれを監視し、操作することができる。
【0019】
記憶装置80は、インターネットなどのネットワークを介してアクセス可能なデータ保存領域である。つまり、記憶装置80は、例えば、クラウドコンピューティングに基づくデータベース又はサーバである。記憶装置80は、管理装置40が処理する各種のデータを保存するために活用する。もっとも、記憶装置80は、SDカードなどの不揮発性の外部保存媒体であってもよい。
【0020】
図2は、
図1の空調システムにおける各室内機のそれぞれの空調エリアと空調空間とを平面的に例示した説明図である。
図2では、室内機20A〜20Cの構成を概略的に示すと共に、室内機20Aと室内機20Bと室内機20Cとが直線状に配置された例を示している。また、室内機20Aが空調する領域を空調エリアAとし、室内機20Bが空調する領域を空調エリアBとし、室内機20Cが空調する領域を空調エリアCとする。空調エリアA〜Cは、それぞれ、室内機20A〜20Cの位置、吹出方向、能力、及び室内の空調負荷などに基づき、例えば管理装置40によって決定される。
【0021】
図2に示すように、室内機20Aの図中右方に隣接して室内機20Bが配置されており、室内機20Bのさらに図中右方に隣接して室内機20Cが配置されている。したがって、空調エリアAと空調エリアBとが互いに隣接し、空調エリアBと空調エリアCとが互いに隣接する。
【0022】
室内機20A〜20Cのそれぞれは、風向板がフラップ21の長手方向に垂直な状態において、平面視で互いに直交する4方向に向けて、放射状に空調空気を吹き出すようになっている(
図2の白抜き矢印参照)。そのため、
図2では、空調エリアA〜Cを、それぞれ、室内機20A〜20Cを中心とした円形状の領域で例示している。もっとも、空調エリアA〜Cの形状は、円形状に限らず、矩形状などの他の形状により定義してもよい。なお、本実施の形態では、室内機20A〜20Cが、何れも同一の能力を有する場合を想定している。そのため、空調エリアA〜Cの各々を示す破線内の平面的な面積は、互いに等しくなっている。
【0023】
隣接する空調エリアAと空調エリアBとは、一部で重なっており、隣接する空調エリアBと空調エリアCとは、一部で重なっている。これは、各空調エリアが、隣接する空調エリアの室内機の影響を受けることを示している。空調空間Kのほぼ全域は、空調エリアA〜Cを含む複数の空調エリアでカバーされるようになっている。なお、本実施の形態では、室内機20A〜20Cが一次元的に配列されているが、これに限定されない。室内機20A〜20Cは、二次元的に配列してもよいし、例えば、室内機として、吹出し高さの異なる天井カセット型、壁掛け型、又は床置き型などの室内機を組み合わせることにより、三次元的に配列していてもよい。
【0024】
図3は、
図1の管理装置の機能的構成を例示したブロック図である。
図4は、
図3の記憶部に格納される暖房運転用のアシストテーブルを例示した表である。
図5は、
図3の記憶部に格納される冷房運転用のアシストテーブルを例示した表である。
図6は、
図1の各室内機の室内制御部の機能的構成と共に、管理装置と各室内機との間でやり取りされるデータを例示したブロック図である。
図6では、各室内機の構成部材として、室内制御部23だけを例示している。
図3〜
図6を参照して、管理装置40及び室内機20A〜20Cの機能的構成について説明する。
【0025】
空気調和システム100は、管理装置40により、室内機20A〜20Cのそれぞれに対し、個別の運転制御を行うことができる。
図3に示すように、管理装置40は、制御装置50と、入力装置60と、表示装置70と、を有している。
【0026】
入力装置60は、マウス又はキーボードなどのポインティングデバイスからなり、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作の内容に応じた信号を制御装置50へ出力する。例えば、入力装置60は、アシスト制御の動作モードの設定操作を受け付ける。ここで、アシスト制御とは、能力不足の室内機を、他の室内機にアシストさせる制御のことである。つまり、アシスト制御とは、能力不足の室内機を除く室内機のうちの少なくとも1台に、能力不足の室内機の空調エリアの空調を補完させる処理である。また、入力装置60は、後述する過去運転復元モードにおいて、制御指定データを指定する操作を受け付ける。以降では、能力不足の室内機の空調エリアのことを「能力不足エリア」ともいう。
【0027】
表示装置70は、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)からなり、制御装置50からの指示により、種々の情報を表示する。例えば、表示装置70は、過去運転復元モードにおいて、1又は複数の制御指定データを表示する。ここで、表示装置70は、文字又は画像等の表示を行う表示パネルと、当該表示パネルの表側に積層された検出手段と、を含むタッチパネルであってもよい。この場合、検出手段は、オペレータによってタッチされた位置を検出し、検出した位置の情報を制御装置50へ出力することにより、入力装置60が有する一部又は全ての機能を実現することができる。
【0028】
制御装置50は、後述するアシスト運転開始処理及びアシスト運転停止処理を実行するものである。制御装置50は、運転情報管理部51と、記憶部52と、アシスト処理部53と、を有している。
【0029】
運転情報管理部51は、室内機20A〜20Cのそれぞれの運転状態を示す運転状態情報を管理する。すなわち、運転情報管理部51は、室内機20A〜20Cの各々から運転状態情報を定期的に取得し、取得した運転状態情報を記憶部52又は記憶装置80に記憶させる。
図3の運転状態蓄積データ52aは、運転情報管理部51が運転状態情報を経時的に蓄積させたデータである。
【0030】
運転状態情報には、例えば、設定温度、空調エリア内の温度である室内温度、風量、風向、及び消費電力量などの情報が含まれている。設定温度は、室内機20A〜20C毎に設定されている。室内温度は、室内機20A〜20Cにそれぞれ設けられた温度センサ25により測定される測定温度であり、各室内機周辺の温度、又は吸込口から吸い込まれる空気の温度である。運転状態情報には、室内機がセーブ運転状態にあるか否かを示す室内機状態情報が含まれていてもよい。セーブ運転状態とは、室内機の室内温度が設定温度近辺を推移している状態のことである。
【0031】
記憶部52には、室内機20A〜20Cのそれぞれの設定温度の情報など、アシスト制御に関連する種々の情報などが記憶される。また、記憶部52には、制御装置50の動作プログラムの他、室内機20A〜20Cの配置を示すレイアウト情報52bが予め記憶されている。レイアウト情報52bは、室内機20A〜20Cのそれぞれの設置位置を示す情報である。レイアウト情報52bは、室内機20A〜20Cのそれぞれの位置の情報の他、室内機20A〜20Cのそれぞれの吹出方向及び能力などの情報を含んでいてもよい。
【0032】
レイアウト情報52bは、例えば、室内機20A〜20Cを設置する際、ユーザによって登録される。もっとも、レイアウト情報52bは、GPS(Global Positioning System)などを利用した位置情報取得機器を管理装置40に設けることで、自動的に登録されるようにしてもよい。また、記憶部52には、アシスト制御の動作モードの設定状態を示すモード情報が記憶される。なお、
図3では、記憶部52に運転状態蓄積データ52aが記憶されている。
【0033】
アシスト処理部53は、アシスト制御の要否及び可否を判断し、必要に応じてアシスト制御を実行する。アシスト処理部53は、運転情報管理部51又は記憶部52から運転状態情報を取得する。もっとも、アシスト処理部53は、室内機20A〜20Cの各々から、直接的に運転状態情報を取得してもよい。アシスト処理部53は、能力判定部53aと、存否判定部53bと、選定処理部53cと、入出力処理部53dと、を有している。
【0034】
能力判定部53aは、室内機20A〜20Cの何れかが能力不足であるか否かを判定する。つまり、能力判定部53aは、室内機20A〜20Cのそれぞれの運転状態情報に基づき、室内機20A〜20Cの何れかが運転能力不足の状態にあるか否かを判定する。ここで、空調負荷に対して十分な空調能力のある室内機は、運転を継続していれば、室内温度が設定温度に近づいて安定する。しかし、室内機のフィルタ目詰まりなどの異常が発生して空調能力が低下している状況、又は室内に存在する人もしくは発熱体などの影響により空調負荷が増加している状況などにあっては、室内機が能力不足となることがある。すなわち、運転能力不足の状態とは、空調負荷に対して空調能力が不足している状態のことである。
【0035】
ここで、能力判定部53aは、空気調和システム100が起動してから予め決められた設定時間が経過したときに上記の判定を行うようになっている。したがって、能力判定部53aにより、複数の室内機のうちの何れかが運転能力不足の状態にあると判定された場合は、室内温度がいつまで経っても設定温度に近づかない室内機が存在していることになる。設定時間は、空気調和システム100の構成及び設置環境などに応じて設定するとよい。
【0036】
より具体的に、能力判定部53aは、室内機20A〜20Cについて、設定温度と室内温度との差分である実測温度差ΔTを求める。能力判定部53aは、暖房運転時には、設定温度から室内温度を減算することにより、実測温度差ΔTとしての暖房温度差ΔThを求める。一方、能力判定部53aは、冷房運転時には、室内温度から設定温度を減算することにより、実測温度差ΔTとしての冷房温度差ΔTcを求める。そして、能力判定部53aは、求めた実測温度差ΔTが不足閾値以下であれば、室内機が運転能力不足の状態にないと判定し、求めた実測温度差ΔTが不足閾値より大きければ、室内機が運転能力不足の状態にあると判定する。不足閾値は、暖房運転用の暖房閾値と、冷房運転用の冷房閾値とが設定されている。もっとも、暖房閾値と冷房閾値とを個別に設定せず、暖房運転と冷房運転とに共通の不足閾値を用いてもよい。
【0037】
ここで、運転状態情報に室内機状態情報が含まれている場合、能力判定部53aは、室内機状態情報をもとに、室内機20A〜20Cの何れかが運転能力不足の状態にあるか否かを判定してもよい。これは、設定温度と室内温度の差が小さい場合には、室内機がセーブ運転状態になることを利用したものである。
【0038】
能力判定部53aは、実測温度差ΔT又は室内機状態情報を用いた上記の判定により、能力不足の室内機を特定する。そして、能力判定部53aは、能力不足の室内機を示す不足室内機情報を存否判定部53bに出力する。ところで、能力判定部53aは、室外機10から取得した圧縮機稼働情報をもとに、室内機20A〜20Cの何れかが運転能力不足の状態にあるか否かを判定してもよい。これは、設定温度と室内温度の差が小さい場合には、圧縮機は動作せずに、全ての室内機がセーブ運転の状態となることを利用したものである。そして、能力判定部53aは、圧縮機稼働情報から圧縮機が停止していないと判定した場合に、実測温度差ΔT又は室内機状態情報を用いた判定を行うことにより、能力不足の室内機を特定してもよい。
【0039】
存否判定部53bは、室内機20A〜20Cの何れかが能力不足である場合に、人感センサ30からの検知信号に基づいて能力不足エリアに人が存在するか否かを判定する。つまり、存否判定部53bは、能力判定部53aから不足室内機情報が出力されたとき、能力不足の室内機の人感センサ30からの検知信号に基づいて、能力不足エリアに人が存在するか否かを判定する。そして、存否判定部53bは、判定の結果を選定処理部53cへ出力する。
【0040】
選定処理部53cは、レイアウト情報52bをもとに、室内機20A〜20C及び空調エリアA〜Cの位置関係を把握し、特定の室内機に隣接する室内機がどれであるかを認識する。選定処理部53cは、室内機20A〜20Cから送信された運転状態情報、人感センサ30からの検知信号などに基づき、室内機20A〜20Cの室内制御部23に、アシスト開始指令及びアシスト停止指令などの制御信号を送信する。
【0041】
ここで、人がいない空調エリアに対してアシスト制御を実施するのは、エネルギーの無駄となるため、選定処理部53cは、能力不足エリアに人が居る場合に限り、アシスト開始指令を送信する。すなわち、選定処理部53cは、存否判定部53bにおいて能力不足エリアに人が存在すると判定された場合に、能力不足エリアに対して制御の補完を行うアシスト制御を実行する。選定処理部53cは、アシスト制御中において、室内機毎に、室内温度、消費電力量、風量、風向などの情報を、時系列に沿って、記憶部52又は記憶装置80に記憶させる。
【0042】
選定処理部53cは、アシスト制御の動作モードとして、電力量抑制モードと、快適性重視モードと、過去運転復元モードと、を有している。選定処理部53cは、ユーザの設定に基づく記憶部52内のモード情報を参照し、電力量抑制モード、快適性重視モード、及び過去運転復元モードのうちの何れかによってアシスト制御を行う。
【0043】
(電力量抑制モード)
選定処理部53cは、電力量抑制モードの場合、能力不足の室内機の温度センサ25による測定温度とレイアウト情報52bとを用いて、他の室内機のうちの少なくとも1台を選定すると共に風量の設定量を求める。以降では、風量の設定量を「風設定量」ともいう。そして、選定処理部53cは、選定した室内機の、能力不足エリアに向かう方向の風量を風設定量まで増加させる。以降では、能力不足エリアに向かう方向を「アシスト方向」ともいう。つまり、選定処理部53cは、選定した室内機に、アシスト方向及び風設定量の情報を含むアシスト開始指令を送信する。
【0044】
ただし、アシスト開始指令の送信には、送信先の室内機が能力不足になっていないことが条件となっている。より具体的に、アシスト開始指令の送信には、送信先の室内機に空調能力の余力があることが条件となる。以降では、空調能力の余力のことを「余力」ともいう。本実施の形態の選定処理部53cは、セーブ運転状態の室内機にだけ、アシスト開始指令を送信するようになっている。
【0045】
本実施の形態において、選定処理部53cは、能力不足の室内機の温度センサ25による測定温度と、能力不足の室内機の設定温度との差分である実測温度差ΔTに応じて、室内機の選定台数と、選定した室内機の風設定量と、を求めるようになっている。例えば、記憶部52には、実測温度差ΔTと、室内機の選定台数と、風設定量とを関連づけたアシストテーブルが記憶されている。そして、選定処理部53cは、実測温度差ΔTをアシストテーブルに照らして、室内機の選定台数と、選定した室内機の風設定量とを求める。なお、選定処理部53cは、実測温度差ΔTを能力判定部53aから取得してもよいし、能力判定部53aと同様の演算により求めてもよい。
【0046】
ここで、アシストテーブルには、暖房運転用の暖房アシストテーブルと、冷房運転用の冷房アシストテーブルがある。
図4は暖房アシストテーブルの一例であり、
図5は冷房アシストテーブルの一例である。
図4において、測定温度Th0、測定温度Th1、測定温度Th2、測定温度Th3、測定温度Th4、測定温度Th5、・・・の間には、「Th0<Th1<Th2<Th3<Th4<Th5<・・・」の関係がある。
図5において、測定温度Tc0、測定温度Tc1、測定温度Tc2、測定温度Tc3、測定温度Tc4、測定温度Tc5、・・・の間には、「Tc0<Tc1<Tc2<Tc3<Tc4<Tc5<・・・」の関係がある。
【0047】
すなわち、アシストテーブルは、実測温度差ΔTが大きくなるほど、能力不足ではない室内機によるアシスト量が増えるようになっている。つまり、アシストテーブルは、実測温度差ΔTが大きくなると、選定台数及び風設定量が増加するように構成されている。なお、
図4及び
図5では、簡単のために、セーブ運転状態の室内機における各吹出口からの風量を弱風と考え、弱風よりも大きな風量を中風とし、中風よりも大きな風量を強風としている。
図4及び
図5の「中」は中風に対応し、「強」は強風に対応する。
【0048】
もっとも、アシストテーブルにおける選定台数及び風設定量の並びは、室内機の配置及び設置環境などに応じて変更することができる。例えば、2台の室内機を中風にするよりも、1台の室内機を強風にした方が、アシスト量が大きい場合は、「Th1≦ΔTh<Th2」及び「Tc1≦ΔTc<Tc2」に、選定台数「2台」と風量設定「中・中」とを割り当ててもよい。そして、「Th2≦ΔTh<Th3」及び「Tc2≦ΔTc<Tc3」に、選定台数「1台」と風量設定「強」とを割り当ててもよい。
【0049】
選定処理部53cは、アシストテーブルから選定台数「1台」を読み取った場合、能力不足の室内機に隣接する室内機の中から1台を選定する。室内機の余力に差がある場合は、最も余力のある室内機を選定する。ここで、室内機の余力とは、空調負荷に対する空調能力の余力であり、余力があるとは、隣接する室内機の空調エリアの空調を補助する能力が残っていることを意味する。そして、選定処理部53cは、選定した室内機の風量を風設定量に増加させる。
【0050】
選定処理部53cは、アシストテーブルから選定台数「2台」を読み取った場合、能力不足の室内機に隣接する2台の室内機を選定する。そして、選定処理部53cは、選定した2台の室内機の風量を、それぞれ、設定された風設定量に増加させる。例えば、風設定量が「中・強(中風と強風)」に設定されている場合、選定処理部53cは、選定した2台の室内機の余力に差があれば、余力の大きい方を強風にし、余力の小さい方を中風にする。
図4及び
図5では、
図1の状況を想定して、選定台数が3台以上の場合を省略しているが、アシストテーブルは、選定台数が3台以上の場合についても、選定台数が1台及び2台の場合と同様に設定される。そして、選定処理部53cは、選定台数が3台以上の場合にも、選定台数が1台及び2台の場合と同様に、室内機の選定処理と風量の増加処理とを実行する。
【0051】
(快適性重視モード)
選定処理部53cは、快適性重視モードの場合、レイアウト情報52bを用いて、他の室内機のうちの少なくとも1台を選定する。そして、選定処理部53cは、選定した室内機のアシスト方向の風量を最大量まで増加させる。すなわち、選定処理部53cは、選定した室内機に、アシスト方向の情報と風量を最大量に増加させる指示とを含むアシスト開始指令を送信する。
【0052】
(過去運転復元モード)
選定処理部53cは、アシスト制御を行う度に、能力不足の室内機の状態を示す情報と、選定した室内機に対する制御内容の情報とを含むアシスト制御データを記憶部52又は記憶装置80に記憶させる機能を有している。そして、過去運転復元モードは、過去のアシスト制御データを用いて室内機の制御を行う動作モードである。すなわち、選定処理部53cは、存否判定部53bにおいて能力不足エリアに人が存在すると判定された場合に、過去運転復元モードであれば、外部から指定された過去のアシスト制御データを用いて、能力不足の室内機に隣接する室内機の制御を行う。
【0053】
より具体的に、選定処理部53cは、過去運転復元モードの場合、記憶部52又は記憶装置80から過去のアシスト制御データを読み出す。そして、選定処理部53cは、読み出した過去のアシスト制御データをもとに、過去のアシスト制御の内容を示す制御指定データを生成して表示装置70に表示させる。
【0054】
制御指定データは、例えば、アシスト制御に関連する各種パラメータの情報を、棒グラフ形式もしくは表形式で表したものであり、ユーザによる指定が可能となっている。制御指定データは、アシスト運転を行った室内機の動作内容及び動作環境のデータを含んでいる。記憶部52及び記憶装置80のうちの少なくとも一方に、複数回分のアシスト制御データが記憶されている場合、選定処理部53cは、複数回分のアシスト制御のそれぞれについての制御指定データを生成する。そして、選定処理部53cは、予め設定された形式により、複数の制御指定データを表示装置70に表示させる。この場合、ユーザは、入力装置60を介して、複数の制御指定データのうちの何れか1つを指定することができる。選定処理部53cは、複数回分の制御指定データを生成した場合、生成した制御指定データを、時系列に沿って並べるようにしてもよい。
【0055】
選定処理部53cは、制御指定データに、過去のアシスト制御時の能力不足の室内機の動作内容及び動作環境を示す過去不足データを含めるようにしてもよい。この場合、選定処理部53cは、現在の能力不足の室内機の動作内容及び動作環境を示す現在不足データを、制御指定データと共に表示装置70に表示させるとよい。このようにすれば、現在不足データと過去不足データとをユーザに比較させることができるため、制御指定データの選択容易性を高めることができる。また、選定処理部53cは、現在の能力不足の室内機についての過去の制御指定データのみを生成して表示装置70に表示させてもよい。このようにすれば、制御指定データの選択肢が狭まるため、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0056】
選定処理部53cは、ユーザにより1つの制御指定データが指定されると、指定された制御指定データの元のアシスト制御データに応じて、能力不足の室内機に隣接する室内機のうちの少なくとも1台を選定すると共に、選定した室内機のアシスト方向の風設定量を定める。そして、選定処理部53cは、選定した室内機のアシスト方向の風量を、指定された制御指定データの元のアシスト制御データに定められている設定量まで増加させる。
【0057】
入出力処理部53dは、入力装置60を介して入力した情報を選定処理部53cに出力したり、記憶部52に記憶させたりする。また、入出力処理部53dは、表示装置70に、種々の情報を表示させる。例えば、入出力処理部53dは、過去運転復元モードの場合、表示装置70に1又は複数の制御指定データを表示させる。
【0058】
図6に示すように、室内機20A〜20Cのそれぞれの室内制御部23は、送風制御部23aと、存否検知部23bと、を有している。存否検知部23bは、人感センサ30から出力される検知信号をもとに、検知エリア内の人の存否を判定し、判定の結果を示す存否情報を制御装置50へ送信する。もっとも、人感センサ30による検知信号が直接的に制御装置50へ出力される場合は、存否判定部53bが検知信号をもとに検知エリア内の人の存否を判定する。
【0059】
送風制御部23aは、室内送風機22から送り出される空気の量と、各フラップ21による各吹出口から吹き出される空調空気の角度とを制御することにより、各吹出口のそれぞれから吹き出される空調空気の風量を個別に調節する。送風制御部23aは、フラップ制御部231と、風向板制御部232と、ファン制御部233と、を有している。
【0060】
フラップ制御部231は、フラップ21の動作を制御することにより、各吹出口から吹き出される空調空気の上下方向の角度を調節する。風向板制御部232は、風向板の動作を制御することにより、各吹出口から吹き出される空調空気の左右方向の角度を調節する。ファン制御部233は、室内送風機22を制御することにより、室内送風機22が外部に送り出す空気の量を調節する。
【0061】
次に、
図6を参照して、制御装置50と室内機20A〜20Cとの間でのアシスト制御に関連するデータのやり取りについて説明する。制御装置50は、室内機20A〜20Cの各々から、定期的に運転状態情報を取得する(
図6の(1))。ここでは、室内機20Bが運転能力不足の状態にあるものとする。また、室内機20A及び20Cは、何れもセーブ運転中であり、アシスト運転を行う余力があるものとする。
【0062】
制御装置50は、室内機20A〜20Cの各々から取得した運転状態情報に基づき、室内機20A〜20Cの運転状態を把握する。制御装置50は、室内機20Bが運転能力不足の状態にあること、及び空調エリアBに人が存在することなどの諸条件を満たしている場合、能力不足の室内機20Bの空調エリアBに対して制御の補完を行うアシスト制御を行う。本実施の形態において、制御装置50は、室内機20A及び20Cのうちの少なくとも1台に、アシスト運転の開始を指示するアシスト開始指令を送信する。
図6では、制御装置50が室内機20A及び20Cの双方を選定したことを想定している(
図6の(2))。
【0063】
アシスト開始指令を受信した室内機20A及び20Cは、アシスト開始指令に応じて、各フラップ21の角度、各風向板の角度、室内送風機22の回転数などを調整し、隣接する室内機20Bの空調能力を補うアシスト運転を実行する(
図6の(3))。
【0064】
図7は、
図1の各室内機が行うアシスト運転の例を示す概念図である。
図7を参照して、電力量抑制モードによるアシスト制御の特徴について追記する。
図7では、
図6の場合と同様に、室内機20Bが運転能力不足の状態にあり、室内機20A及び20Cがセーブ運転中であるものとする。そして、
図7では、各方向への吹出風量を白抜き矢印の長さ及び太さで表現している。すなわち、制御装置50は、電力量抑制モード、又は電力量抑制モードの状態を復元した過去運転復元モードによりアシスト制御を行っている。
【0065】
能力不足エリアの室内機20Bを選定した制御装置50は、室内機20Bに隣接する室内機20A及び20Cに対してアシスト開始指令を送信する。ここでは、実測温度差ΔTが、
図4の「Th3≦ΔTh<Th4」の範囲内、又は
図5の「Tc3≦ΔTc<Tc4」の範囲内にあることを想定する。加えて、制御装置50が、室内機20Aの風量を強風に増加させ、室内機20Cの風量を中風に増加させることを想定する。
【0066】
よって、アシスト開始指令を受けた室内機20Aは、アシスト方向、つまり能力不足エリアの方向の風量を強風に増加する。また、アシスト開始指令を受けた室内機20Cは、能力不足エリアの方向の風量を中風に増加する。また、制御装置50は、アシスト開始指令に、上下方向及び左右方向のうちの少なくとも一方向の風向を指示する風向情報を含めることができる。したがって、室内機20A及び室内機20Cは、アシスト開始指令が風向情報を含む場合、アシスト方向の風量と共に、フラップ21及び風向板のうちの少なくとも1つの角度を調整する。なお、室内機20A及び室内機20Cは、アシスト方向以外の3方向の吹出口からの風量を、弱風(小風量)のまま維持している。
【0067】
ここで、制御装置50は、マイコンなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させる動作プログラムとによって構成することができる。なお、記憶部52は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)などにより構成してもよい。
【0068】
図8は、
図1の空気調和システムの動作のうち、制御装置によるアシスト運転開始処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すアシスト運転開始処理は、空気調和システム100が起動してから設定時間が経過した後、空気調和システム100の運転中に、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0069】
まず、制御装置50は、室内機20A〜20Cのそれぞれから運転状態情報を取得する。室内機20A〜20Cは、運転状態情報を定期的に制御装置50へ送信してもよいし、制御装置50からの要求信号に応じて運転状態情報を送信してもよい。また、制御装置50は、室外機10から圧縮機の稼働状況を示す圧縮機稼働情報を取得する(ステップS101)。
【0070】
その際、制御装置50は、監視対象としている全ての室内機から運転状態情報を取得したか否かを判定する(ステップS102)。制御装置50は、全ての室内機から運転状態情報を取得していなければ(ステップS102/No)、継続して運転状態情報の取得処理を行う。
【0071】
一方、制御装置50は、全ての室内機からの運転状態情報の取得が完了したとき(ステップS102/Yes)、各室内機20A〜20Cから得られた運転状態情報に基づき、能力不足となっている室内機があるか否かを判定する。この判定は、上記の通り、各室内機20A〜20Cの設定温度と室内温度との差をもとに行ってもよいし、室内機状態情報をもとに行ってもよい。また、室外機10から取得した圧縮機稼働情報に基づく判定を採り入れてもよい(ステップS103)。
【0072】
そして、制御装置50は、能力不足の室内機がないと判定した場合(ステップS103/No)、そのままアシスト運転開始処理を終了する。一方、制御装置50は、能力不足の室内機があると判定した場合(ステップS103/Yes)、能力不足の室内機、及びその室内機に隣接する室内機のそれぞれの環境情報を取得して記憶装置80に記憶させる。環境情報とは、室内温度、消費電力量、風量、及び風向などの情報である。もっとも、環境情報は、記憶部52に記憶させてもよい(ステップS104)。
【0073】
また、制御装置50は、能力不足の室内機に設けられた人感センサ30から検知信号を取得し(ステップS105)、検知信号に基づき、能力不足エリアに人が存在するか否かを判定する(ステップS106)。
【0074】
制御装置50は、能力不足エリアに人が存在しないと判定した場合(ステップS106/No)、そのままアシスト運転開始処理を終了する。これは、能力不足エリアに人が存在しない場合は、アシスト運転を実行して快適性を向上する必要がないためである。
【0075】
一方、制御装置50は、能力不足エリアに人が存在すると判定した場合(ステップS106/Yes)、アシスト制御の動作モードが、電力量抑制モード、快適性重視モード、及び過去運転復元モードのうちのどれに設定されているかを特定する。このとき、制御装置50は、動作モードの特定を促すモード選択情報をダイアログなどによって表示装置70に表示させ、ユーザに動作モードを特定させてもよい(ステップS107)。
【0076】
制御装置50は、電力量抑制モードに設定されている場合(ステップS107/M1)、能力不足の室内機の温度センサ25による測定温度とレイアウト情報52bとを用い、他の室内機のうちの少なくとも1台を選定すると共に、選定した室内機の風設定量を求める。ここで、他の室内機とは、能力不足の室内機以外の室内機のことである。つまり、制御装置50は、アシスト運転を実行させる室内機を選定し、選定した室内機の増加後の風量を風設定量として求める。その際、制御装置50は、レイアウト情報52bをもとにアシスト方向を特定する(ステップS108)。
【0077】
次いで、制御装置50は、選定した室内機に余力があるか否かを判定する(ステップS109)。制御装置50は、選定した室内機の中に、余力のある室内機がなければ(ステップS109/No)、そのままアシスト運転開始処理を終了する。これは、選定した室内機に、アシスト運転を実行させることができないためである。
【0078】
一方、制御装置50は、選定した室内機に余力があれば(ステップS109/Yes)、選定した室内機のアシスト方向の風量を風設定量に増加させる。制御装置50は、選定した室内機の中に、余力のある室内機と余力のない室内機とが混在している場合、余力のある室内機のアシスト方向の風量を増加させる。すなわち、制御装置50は、選定した室内機に対し、アシスト方向及び風設定量の情報を含むアシスト開始指令を送信する。アシスト開始指令を受信した室内機は、アシスト方向の風量を風設定量に増加させる(ステップS110)。
【0079】
制御装置50は、快適性重視モードに設定されている場合(ステップS107/M2)、レイアウト情報52bを用いて、他の室内機のうちの少なくとも1台を選定する。その際、制御装置50は、レイアウト情報52bをもとに、選定した室内機に対する能力不足の室内機の方向、つまりアシスト方向を特定する(ステップS111)。
【0080】
次いで、制御装置50は、選定した室内機に余力があるか否かを判定する(ステップS112)。制御装置50は、選定した室内機の中に、余力のある室内機がなければ(ステップS112/No)、ステップS109と同様に、そのままアシスト運転開始処理を終了する。
【0081】
一方、制御装置50は、選定した室内機に余力があれば(ステップS112/Yes)、選定した室内機のアシスト方向の風量を最大量まで増加させる。制御装置50は、選定した室内機の中に、余力のある室内機と余力のない室内機とが混在している場合、余力のある室内機のアシスト方向の風量を最大量まで増加させる。すなわち、制御装置50は、選定した室内機に対し、アシスト方向の情報を含むアシスト開始指令を送信する。アシスト開始指令を受信した室内機は、アシスト方向の風量を最大値まで増加させる(ステップS113)。
【0082】
制御装置50は、過去運転復元モードに設定されている場合(ステップS107/M3)、記憶部52又は記憶装置80から過去のアシスト制御データを読み出して、過去のアシスト制御の内容を示す制御指定データを生成する。そして、制御装置50は、制御指定データを、所定の形式で表示装置70に表示させる(ステップS114)。
【0083】
制御装置50は、ユーザによって制御指定データが指定されるまで待機する(ステップS115/No)。次いで、ユーザにより1つの制御指定データが指定される(ステップS115/Yes)。すると、制御装置50は、指定された制御指定データの元となったアシスト制御データに応じて、他の室内機のうちの少なくとも1台を選定すると共に、選定した室内機のアシスト方向の風設定量を定める(ステップS116)。
【0084】
次いで、制御装置50は、選定した室内機に余力があるか否かを判定する(ステップS117)。制御装置50は、選定した室内機の中に、余力のある室内機がなければ(ステップS117/No)、指定した制御指定データに基づくアシスト制御を実行できない旨の実施不可情報を表示装置70に表示させる。その際、制御指定データに他の選択肢がある場合、制御装置50は、指定されなかった制御指定データを、表示装置70に指定可能に表示させてもよい。このとき、ユーザが他の制御指定データを指定すれば、ステップS117の処理へ移行する。また、制御装置50は、実施不可情報を表示装置70に表示させてから一定の待ち時間が経過したとき、又は他の制御指定データが指定されなかったときは、ステップS109と同様に、そのままアシスト運転開始処理を終了する。
【0085】
一方、制御装置50は、選定した室内機に余力があれば(ステップS117/Yes)、選定した室内機のアシスト方向の風量を、指定された制御指定データの元となったアシスト制御データに定められている設定量まで増加させる(ステップS118)。
【0086】
図9は、
図1の空気調和システムの動作のうち、制御装置によるアシスト運転停止処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示すアシスト運転停止処理は、アシスト運転開始処理と共に、空気調和システム100の運転中に所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0087】
まず、制御装置50は、アシスト制御を実行中であるか否かを判定する(ステップS201)。制御装置50は、アシスト制御を実行していなければ、アシスト運転停止処理を終了する。制御装置50は、アシスト制御の実行中であれば、能力不足の室内機の人感センサ30から検知信号を取得し(ステップS202)、検知信号に含まれる存否情報をもとに、能力不足エリアに人が存在するか否かを判定する(ステップS203)。
【0088】
制御装置50は、能力不足の空調エリアに人が存在しないと場合(ステップS203/No)、後述するステップS207の処理へ移行する。なぜなら、能力不足エリアに人が存在しなくなったことにより、アシスト運転を実行して快適性を向上する必要がなくなったためである。
【0089】
制御装置50は、能力不足エリアに人が存在する場合(ステップS203/Yes)、アシスト運転中の室内機の人感センサ30から検知信号を取得する(ステップS204)。そして、制御装置50は、検知信号に含まれる存否情報をもとに、アシスト運転中の室内機の空調エリアに人が存在するか否かを判定する。以降では、アシスト運転中の室内機の空調エリアのことを「アシストエリア」ともいう(ステップS205)。
【0090】
制御装置50は、アシストエリアに人が存在しない場合には(ステップS205/No)、そのままアシスト運転停止処理を終了する。これは、アシストエリアに人が存在しない場合には、アシスト運転を継続しても、アシストエリアの過剰空調によって快適性が低下しないためである。このとき、制御装置50は、アシスト運転中の室内機に対し、アシスト運転の継続を指示するアシスト運転継続指令を送信してもよい。
【0091】
一方、制御装置50は、アシストエリアに人が存在する場合(ステップS205/Yes)、アシストエリアにおいて過剰空調が行われているか否か、つまりアシストエリアが冷暖過多状態であるか否かを判定する。この判定は、例えば、室外機10から取得した圧縮機稼働情報と、アシスト運転中の室内機から取得した設定温度及び室内温度の情報とを用いて行う。すなわち、制御装置50は、冷房運転時において、圧縮機が動作しており、かつアシストエリアの室内温度が設定温度よりも低い場合に、過剰冷房が行われていると判定する。また、制御装置50は、暖房運転時において、圧縮機が動作しており、かつアシストエリアの室内温度が設定温度よりも高い場合に、過剰暖房が行われていると判定する(ステップS206)。
【0092】
制御装置50は、アシストエリアで過剰空調が行われている場合(ステップS206/Yes)、アシスト運転中の室内機に対し、アシスト運転の停止を指示するアシスト停止指令を送信する。これは、アシストエリアに人が存在するにもかかわらず、アシストエリアで過剰空調が行われている場合は、アシスト運転を継続することにより快適性の低下が促進されるためである(ステップS207)。なお、ステップS203のNoを経てステップS207へ移行した場合、つまり能力不足の空調エリアに人が存在しない場合は、アシスト運転を実行する必要がないためである。
【0093】
ところで、複数台の室内機がアシスト運転を行っている場合において、アシストエリアで過剰空調が行われている室内機と、アシストエリアで過剰空調が行われていない室内機とが混在する場合も想定される。よって、このような状況でのステップS207において、制御装置50は、アシストエリアで過剰空調が行われている室内機だけにアシスト停止指令を送信する。
【0094】
アシスト停止指令を受信した室内機は、アシスト運転を停止する。アシスト運転を一旦停止した室内機は、停止してから所定時間が経過するまでアシスト運転を再開しないようにしてもよい。これは、アシスト運転の開始動作及び停止動作が短時間で繰り返されてしまうのを防ぐためである。
【0095】
一方、制御装置50は、アシストエリアで過剰空調が行われていない場合(ステップS206/No)、そのままアシスト運転停止処理を終了する。これは、アシストエリアで過剰空調が行われていない場合は、アシスト運転を継続しても快適性の低下が生じないためである。このとき、制御装置50は、アシスト運転中の室内機に対して、アシスト運転継続指令を送信してもよい。
【0096】
図8及び
図9に示す処理により、アシストエリアで過剰空調となってしまうアシスト運転は、長時間連続して実行されることなく、所定の時間間隔で断続的に行われることになる。なお、アシスト運転の実行間隔は、ユーザが任意に設定できるようにするとよい。
【0097】
以上のように、本実施の形態の管理装置40は、能力不足の室内機の温度センサ25による測定温度とレイアウト情報52bとを用いて室内機と風量の設定量とを求め、選定した室内機のアシスト方向の風量を設定量まで増加させる。よって、能力不足の室内機の温度センサによる測定温度に応じた台数及び風量により、能力不足の室内機の能力を補うことができるため、能力不足エリア及びアシストエリアの快適性低下を抑制し、電力消費量を削減することができる。
【0098】
すなわち、空気調和システム100は、複数の室内機の各々に、隣接する室内機の空調能力を補完する機能を持たせたため、能力不足エリアに対する冷暖房能力不足を軽減することができる。また、選定処理部53cは、能力不足エリアに人が存在する場合にアシスト制御を行うようになっているため、能力不足エリアの快適性の改善と省エネルギー化とをバランスよく実現することができる。そして、選定処理部53cは、人感センサ30との連携により、必要以上に部屋が冷え過ぎる、必要以上に部屋を暖め過ぎるといった状況を回避することができる。
【0099】
本実施の形態において、選定処理部53cは、能力不足の室内機の温度センサ25による測定温度と、能力不足の室内機の設定温度との差分である実測温度差に応じて、室内機の選定台数と、選定した室内機の風量の設定量とを求める。すなわち、管理装置40は、実測温度差、つまり能力不足の程度に応じて、アシスト運転させる室内機の台数と、アシスト運転における風量の増加量とを決定することができる。そのため、能力不足の室内機の能力を補填しつつ、アシストエリアの過剰空調を抑制することができる。
【0100】
また、選定処理部53cは、実測温度差をアシストテーブルに照らして、アシスト運転させる室内機の台数と、アシスト運転における風設定量と、を求める機能を有している。ここで、アシストテーブルは、能力不足の程度が反映される実測温度差と、室内機の台数と、風設定量とを関連づけたテーブル情報である。そのため、管理装置40は、能力不足エリアの空調の補完制御と、アシストエリアの過剰空調の抑制とを、より柔軟に行うことができる。
【0101】
加えて、選定処理部53cは、1台の室内機を選定する場合において、能力不足の室内機に隣接する室内機が2台以上あり、これらの空調能力の余力に差があるときは、最も余力のある室内機を選定してアシスト運転を実行させる。これにより、アシスト運転を実行させる室内機に対し、過度の負荷を与える状況を抑制することができる。また、選定処理部53cは、複数台の室内機を選定したときに、選定した複数台の室内機に異なる風量を設定する場合において、選定した複数台の室内機の空調能力の余力に差があるときは、余力の大きな室内機から順に大きな風量を設定する。このように、アシスト運転を実行させる各室内機の余力に応じて負荷を調整することにより、各室内機の負担のバランスを調整することができる。
【0102】
さらに、選定処理部53cは、アシスト制御を行う度にアシスト制御データを記憶部52又は記憶装置80に記憶させる機能を有している。そして、選定処理部53cは、過去運転復元モードにおいて、能力不足エリアに人が存在する場合に、過去のアシスト制御データを用いて室内機の制御を行う。すなわち、管理装置40は、ユーザの指定操作に応じて、過去のアシスト制御データに基づくアシスト制御を復元することができる。このように、過去の運転実績から、アシスト制御の内容をユーザが指定できるため、ユーザの嗜好に応じた柔軟な補完制御を実現することができる。加えて、管理装置40は、アシスト制御の動作モードとして、快適性重視モードを有するため、ユーザの設定に応じて、能力不足エリアの快適性を優先したアシスト制御を実行することができる。
【0103】
ところで、室内機は、アシスト運転を行う場合、能力不足の室内機の負荷を補うために運転負荷を増加させる。そのため、アシストエリアは、特に吹出風量が増加する部分が過剰空調となり、当該部分の快適性が低下するおそれがある。よって、アシスト運転は、長時間連続して実行せずに、所定の時間間隔で断続的に実行するようにしてもよい。ここで、アシストエリアに人が存在しない場合は、アシスト運転を長時間連続して実行しても人にとっての快適性を低下させるおそれはない。したがって、本実施の形態では、アシストエリア内の人の存否の情報をもとに、アシスト運転の実行を停止するか否かを判定する。つまり、管理装置40は、アシストエリアに人が存在しない場合、アシスト運転を連続的に実行させる。一方、管理装置40は、アシストエリアに人が存在する場合、アシストエリアで過剰空調が行われているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、アシスト運転の実行と停止とを切り替える。よって、空気調和システム100によれば、能力不足エリアの快適性を改善しつつ、アシストエリアの過剰空調による快適性低下を精度よく抑制することができる。
【0104】
また、本実施の形態におけるアシスト制御は、動作モードとして、電力量抑制モードと快適性重視モードと過去運転復元モードとを含んでいる。すなわち、空気調和システム100は、アシスト制御の動作モードをユーザが選択できるようになっている。つまり、ユーザは、能力不足エリアの快適性の改善レベルを適宜選択することができる。よって、ユーザは、消費電力量、快適性、及び作業性を考慮して、柔軟に動作モードを選択することができるため、利便性の向上を図ることができる。なお、制御装置50は、アシスト制御の動作モードとして、快適性重視モード及び過去運転復元モードのうちの少なくとも1つを有さなくてもよい。
【0105】
<変形例>
図10は、本発明の実施の形態の変形例に係る空気調和システムの各室内機が行うアシスト運転の例を示す概念図である。本変形例の空気調和システムの基本的な構成は、
図1〜
図7に例示した構成と同様であるため、同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0106】
本変形例の空気調和システム100は、複数の空調機として、室内機20A〜20Eを有している。そして、室内機20Aが空調する領域を空調エリアAとし、室内機20Bが空調する領域を空調エリアBとし、室内機20Cが空調する領域を空調エリアCとする。加えて、室内機20Dが空調する領域を空調エリアDとし、室内機20Eが空調する領域を空調エリアEとする。したがって、本変形例のレイアウト情報52bは、
図10に示すような室内機20A〜20Eのそれぞれの設置位置を示す情報である。
【0107】
すなわち、
図2等では、室内機20A及び20Cの吹出口が、室内機20Bの吹出口に対して正面に位置する場合を例示したが、
図10のように、室内機20A及び20Cの吹出口が、室内機20Bの吹出口に対して斜めに位置する場合も想定される。
図10では、室内機20D及び20Eの吹出口も、室内機20Bの吹出口に対して斜めに位置している。
【0108】
このように、各室内機が直線状に配置されていない状況において、例えば、室内機20Bが能力不足の場合、制御装置50は、室内機20A及び20C〜20Eのうちの少なくとも1台にアシスト運転を実行させる。その際、制御装置50は、
図10に示すように、選定した室内機の風量を増加させる。そして、制御装置50は、レイアウト情報52bに基づき、風向板を制御して左右方向の風向を調節することにより、能力不足の室内機の空調エリアに向かう方向、つまりアシスト方向の風量を増加させる。したがって、本変形例の空気調和システム100によっても、能力不足エリア及びアシストエリアの快適性低下を抑制し、電力消費量を削減することができる。他の効果については、
図1等に例示した空気調和システム100の場合と同様である。
【0109】
上述した実施の形態は、空気調和システムにおける好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、
図1等では、複数の空調機として3台の室内機を例示し、
図10では、複数の空調機として5台の室内機を例示しているがこれに限らず、空気調和システム100は、複数の空調機として、2台以上の室内機を有していればよい。また、
図2等では、天井埋込カセット型4方向の室内機を例示したが、これに限らず、空気調和システム100を構成する室内機は、天井埋込カセット型2方向の室内機、又は天井埋込カセット型1方向の室内機などであってもよい。加えて、空気調和システム100を構成する室内機としては、壁掛け型又は床置き型などの他の型式の室内機を採用してもよい。
【0110】
さらに、上記実施の形態では、冷暖切換型の空気調和システム100を例に挙げたが、これに限らず、空気調和システム100は、冷房専用又は暖房専用の空気調和システムであってもよい。また、上記実施の形態では、管理装置40が集中コントローラである場合を例示したが、これに限らず、例えば、室内機に接続されたリモートコントローラなどを管理装置40として機能させてもよい。加えて、制御装置50の一部又は全ての機能は、複数の室内機のうちの何れかの室内制御部23に持たせてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、室内機の風量設定が3段階の場合を例示したが、これに限らず、室内機の風量設定は4段階以上であってもよい。この場合、例えば
図4及び
図5に示すアシストテーブルは、さらに細かくアシスト制御の選定台数と風設定量とを規定することになる。加えて、風設定量は、現在の風量からの増加量を示す情報であってもよい。