(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態) 本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
第1実施形態に係る緩衝器1は、自動車等のサスペンション装置のばね下(車輪)、ばね上(車体)間に装着される単筒式油圧緩衝器である。説明の便宜上、
図1、
図2における上下方向を、第1実施形態に係る緩衝器1における上下方向とする。
【0010】
図1を参照すると、シリンダ2の内側には、ピストン3が移動(摺動)可能に嵌装される。ピストン3は、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に画成する。ピストン3には、ピストンロッド4の一端側の軸部5(小径部)が連結される。他方、ピストンロッド4の他端側は、シリンダ2の上端部に装着されたロッドガイドおよびオイルシール(図示省略)に挿通され、当該シリンダ2の外部へ延出される。
【0011】
なお、シリンダ2内には、シリンダ2内を上下方向へ移動可能なフリーピストン(図示省略)が設けられる。該フリーピストンは、シリンダ2内をピストン3側のシリンダ下室2Bと底部側のガス室(図示省略)とに区画する。シリンダ上室2Aおよびシリンダ下室2Bには、作動流体として油液が封入される。また、ガス室には、作動流体として高圧ガス(窒素ガス)が封入される。
【0012】
ピストン3には、シリンダ上室2A、シリンダ下室2B間を連通させる複数本(
図1に「各々1本」のみ表示)の伸び側通路7および縮み側通路8が設けられる。ピストン3の下端側には、伸び側メインバルブ21が設けられる。該伸び側メインバルブ21は、伸び行程時に下流側の室となるシリンダ下室2Bに設けられる。伸び側メインバルブ21は、伸び行程時に、ピストン3の上方向(一方向)の摺動によって生じるシリンダ上室2A(上流側の室)からシリンダ下室2B(下流側の室)への油液の流れを制御することで、伸び側の減衰力を発生させる。
【0013】
また、ピストン3の下端側には、有底円筒形の背圧室形成部材22が設けられる。該背圧室形成部材22の内周側には、ピストンロッド4の軸部5が嵌合される略円筒形の内周部23が形成される。該内周部23は、軸部5に装着したナット11を締め付けることで生じる軸力(以下「ナット11の軸力」と称する)によって、ピストン3の内周部6とワッシャ12との間で保持される。さらに、背圧室形成部材22とワッシャ12との間には、上から順に、ディスク24、リテーナ26、およびディスク27が設けられる。ディスク24、リテーナ26、およびディスク27は、ナット11の軸力によって、背圧室形成部材22の内周部23とワッシャ12との間で挟持される。
【0014】
ピストン3の下端部の外周側には、環状のシート部32が設けられる。該シート部32には、ディスク状の伸び側メインバルブ21の外周部が着座される。伸び側メインバルブ21は、内周部がクランプされておらず、ピストンロッド4の軸部5に装着されたリテーナ33によって単純支持されている。リテーナ33の上端部には、伸び側メインバルブ21の内周面が摺動可能に嵌合される小径の軸部34が形成される。該軸部34の外周側には、伸び側メインバルブ21の内周部の背面(ピストン3のシート部32に着座される面に対して反対側の面)に当接する環状のシート部35が形成される。
【0015】
すなわち、伸び側メインバルブ21の内周部は、リテーナ33のシート部35に着座し、かつリテーナ33の軸部34によって上下方向へ移動可能に支持される。なお、リテーナ33の軸部34とピストン3の内周部6との間には、伸び側メインバルブ21の内周部の上方向への移動を規制するディスク状の規制部材36が設けられる。また、リテーナ33のシート部35は、先端(上端)に向かって外径が小さくなるように形成されている。
【0016】
図1、
図2を参照すると、伸び側メインバルブ21の背面には、ゴム等の弾性体からなるシール機構としての環状のパッキン37が固着される。パッキン37は、背圧室形成部材22の円筒部39の内周面40に摺動可能に当接される外周側シール部38(シール機構)と、リテーナ33の外周面42に摺動可能に当接される内周側シール部41(遮断部材)と、を有する。これにより、背圧室形成部材22の内部には、伸び側メインバルブ21の背圧室43が区画され形成される。なお、パッキン37は、外周側シール部38、内周側シール部41、およびベースとなる基部44が一体に形成される。
【0017】
外周側シール部38は、基部44から下方向へ延びる環状の壁であり、外径および内径が下方向に向かって略円錐状に大きくなるように形成されている。これにより、外周側シール部38は、背圧室43の圧力を受けて背圧室形成部材22の円筒部39の内周面40に押し付けられる。なお、ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ上室2A(上流側の室)の油液が、後述する伸び側背圧導入通路を介して、背圧室43に導入される。また、パッキン37の外周部と背圧室形成部材22の円筒部39との間には、ピストンロッド4の軸線を含む平面による断面(以下「軸平面よる断面」と称する)が楔形の環状の隙間45が形成され、該隙間45はシリンダ下室2Bに開口(連通)する。
【0018】
内周側シール部41は、基部44から下方向へ延びる環状の壁であり、外径および内径が下方向に向かって略円錐状に大きくなるように形成されている。これにより、内周側シール部41は、背圧室43の圧力を受けてリテーナ33の外周面42に押し付けられる。なお、内周側シール部41の外周側には、環状の凹部50が形成される。内周側シール部41は、凹部50の形状(深さ等)によって背圧室43の圧力を受ける面積を調節することができる。
【0019】
背圧室形成部材22の内周部23の内周面には、当該内周部23の上側端面に開口する環状の通路46と、内周部23の下側端面に開口する環状の通路47と、が設けられる。上側の通路46と下側の通路47とは、ピストンロッド4の軸部5の外周面に形成された上下方向へ延びる溝形状の通路14によって連通される。背圧室形成部材22の内周部23とリテーナ33との間には、ディスク48が介在する。背圧室43は、ディスク48に形成されたスリット状の通路49、および背圧室形成部材22の内周部23の上側の通路46を介して軸部5の通路14に連通される。
【0020】
一方、ピストン3の上端側には、縮み側メインバルブ51が設けられる。該縮み側メインバルブ51は、縮み行程時に下流側の室となるシリンダ上室2Aに設けられる。縮み側メインバルブ51は、縮み行程時に、ピストン3の下方向の摺動によって生じるシリンダ下室2B(上流側の室)からシリンダ上室2A(下流側の室)への油液の流れを制御することで、縮み側の減衰力を発生させる。
【0021】
また、ピストン3の上端側には、有底円筒形のケース部材としての背圧室形成部材52が設けられる。該背圧室形成部材52の内周側には、ピストンロッド4の軸部5が嵌合される略円筒形の内周部53が形成される。該内周部53は、ナット11の軸力によって、ピストン3の内周部6とワッシャ13との間で保持される。さらに、背圧室形成部材52とワッシャ13との間には、下から順に、ディスク54、リテーナ56、およびディスク57が設けられる。ディスク54、リテーナ56、およびディスク57は、ナット11の軸力によって、背圧室形成部材52の内周部53とワッシャ13との間で挟持される。
【0022】
ピストン3の上端部の外周側には、環状のシート部62が設けられる。該シート部62には、ディスク状の縮み側メインバルブ51の外周部が着座される。縮み側メインバルブ51は、内周部がクランプされておらず、ピストンロッド4の軸部5に装着されたリテーナ63によって単純支持されている。リテーナ63の下端部には、縮み側メインバルブ51の内周面が摺動可能に嵌合される小径の軸部64が形成される。該軸部64の外周側には、縮み側メインバルブ51の内周部の背面(ピストン3のシート部62に着座される面に対して反対側の面)に当接する環状のシート部65が形成される。
【0023】
すなわち、縮み側メインバルブ51の内周部は、リテーナ63のシート部65に着座し、かつリテーナ63の軸部64によって上下方向へ移動可能に支持される。なお、リテーナ63の軸部64とピストン3の内周部6との間には、縮み側メインバルブ51の内周部の下方向への移動を規制するディスク状の規制部材66が設けられる。また、リテーナ63のシート部65は、先端(下端)に向かって外径が小さくなるように形成されている。
【0024】
縮み側メインバルブ51の背面には、ゴム等の弾性体からなる環状のパッキン67が固着される。パッキン67は、背圧室形成部材52の円筒部69の内周面70に摺動可能に当接される外周側シール部68と、リテーナ63の外周面72に摺動可能に当接される内周側シール部71(遮断部材)と、を有する。これにより、背圧室形成部材52の内部には、縮み側メインバルブ51の背圧室73が形成される。なお、パッキン67は、外周側シール部68、内周側シール部71、およびベースとなる基部74が一体に形成される。なお、内周側シール部71(遮断部材)は、本実施の形態では縮み側メインバルブ51の背面に固着して設ける構成としたが、例えばリテーナ63と縮み側メインバルブ51の間にOリングを配する構成や、縮み側メインバルブ51の内周側に表裏に跨るシールを固着する構成などでもよい。
【0025】
外周側シール部68は、基部74から上方向へ延びる環状の壁であり、外径および内径が上方向に向かって略円錐状に大きくなるように形成されている。これにより、外周側シール部68は、背圧室73の圧力を受けて背圧室形成部材52の円筒部69の内周面70に押し付けられる。なお、ピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の油液が、後述する縮み側背圧導入通路を介して、背圧室73に導入される。また、パッキン67の外周部と背圧室形成部材52の円筒部69との間には、軸平面よる断面が楔形の環状の隙間75が形成され、該隙間75はシリンダ上室2Aに開口(連通)する。
【0026】
内周側シール部71は、基部74から上方向へ延びる環状の壁であり、外径および内径が上方向に向かって略円錐状に大きくなるように形成されている。これにより、内周側シール部71は、背圧室73の圧力を受けてリテーナ63の外周面72に押し付けられる。なお、内周側シール部71の外周側には、環状の凹部80が形成される。内周側シール部71は、凹部80の形状(深さ等)によって背圧室73の圧力を受ける面積を調節することができる。
【0027】
背圧室形成部材52の内周部53の内周面には、当該内周部53の下側端面に開口する環状の通路76と、内周部53の上側端面に開口する環状の通路77と、が設けられる。下側の通路76と上側の通路77とは、ピストンロッド4の軸部5の外周面に形成された通路14によって連通される。背圧室形成部材52の内周部53とリテーナ63との間には、ディスク78が介在する。背圧室73は、ディスク78に形成されたスリット状の通路79、および背圧室形成部材52の内周部53の下側の通路76を介して軸部5の通路14に連通される。
【0028】
そして、ピストンロッド4の伸び行程時には、ピストン3が上方向へ移動するのに伴い、シリンダ上室2A(上流側の室)の油液が、ディスク54の内周側に形成された通路16、背圧室形成部材52に形成された通路77、ピストンロッド4の軸部5に形成された通路14、およびディスク48に形成された通路49によって構成される伸び側背圧導入通路を介して、伸び側メインバルブ21の背圧室43に導入される。
【0029】
他方、ピストンロッド4の縮み行程時には、ピストン3が下方向へ移動するのに伴い、シリンダ下室2B(上流側の室)の油液が、
ディスク24の内周側に形成された通路18、背圧室形成部材22に形成された通路47、ピストンロッド4の軸部5に形成された通路14、およびディスク78に形成された通路79によって構成される縮み側背圧導入通路を介して、縮み側メインバルブ51の背圧室73に導入される。
【0030】
次に、第1実施形態の作用を説明する。
ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動(上方向への移動)に伴う、シリンダ上室2A(上流側の室)からシリンダ下室2B(下流側の室)への油液の流れを制御することにより、減衰力を発生させる。当該伸び行程では、シリンダ上室2Aの油液(圧力)が、前述した伸び側背圧導入通路を介して伸び側メインバルブ21の背圧室43に導入される。
【0031】
伸び行程におけるピストン3の上下方向の速度(以下「ピストン速度」と称する)の極低速域では、シリンダ上室2Aの油液が、ディスク54の内周側に形成された通路16、背圧室形成部材52の内周部53に形成された通路77、ピストンロッド4の軸部5に形成された通路14、背圧室形成部材22の内周部23に形成された通路47、およびディスク24の内周側に形成された通路18を介してシリンダ下室2Bへ流れることにより、オリフィス特性の減衰力が発生する。
【0032】
ピストン速度の上昇によって伸び側メインバルブ21が開弁すると、当該伸び側メインバルブ21の開度に応じたバルブ特性の減衰力が発生する。
そして、第1実施形態では、逆行程となるピストンロッド4の縮み行程時に、シリンダ下室2Bの圧力を受けてパッキン37の外周側シール部38(シール機構)が内周側に撓む(倒れる)ことにより、接触した状態から離間し(離接可能)、シリンダ下室2Bの油液(圧力)が背圧室43に導入されるチェックバルブとして機能する。これにより、伸び側メインバルブ21に作用する閉弁方向の力が、伸び側メインバルブ21に作用する開弁方向の力よりも大きくなる。その結果、逆行程時に伸び側メインバルブ21が開弁されるのを抑止することが可能であり、安定した減衰力を得ることができる。
【0033】
また、逆行程となるピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ下室2Bの油液(圧力)が、伸び側メインバルブ21の外周を介して背圧室43に導入されることにより、背圧室43の圧力を受けてパッキン37の内周側シール部41(遮断部材)がリテーナ33の外周面42に押し付けられる。これにより、縮み行程(逆行程)時に背圧室43に導入された油液(圧力)が、単純支持の伸び側メインバルブ21の内周部とリテーナ33との間を通って伸び側通路7へ流れるのを阻止することができ、当該油液がシリンダ上室2Aへ流れることによる、減衰力の抜けを防止することができる。
【0034】
一方、ピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動(下方向への移動)に伴う、シリンダ下室2B(上流側の室)からシリンダ上室2A(下流側の室)への油液の流れを制御することにより、減衰力を発生させる。当該縮み行程では、シリンダ下室2Bの油液(圧力)が、前述した縮み側背圧導入通路を介して縮み側メインバルブ51の背圧室73に導入される。
【0035】
縮み行程におけるピストン速度の極低速域では、シリンダ下室2Bの油液が、ディスク24の内周側に形成された通路18、背圧室形成部材22の内周部23に形成された通路47、ピストンロッド4の軸部5に形成された通路14、背圧室形成部材52の内周部53に形成された通路77、ディスク54の内周側に形成された通路16、を介してシリンダ上室2Aへ流れることにより、オリフィス特性の減衰力が発生する。
【0036】
ピストン速度の上昇によって縮み側メインバルブ51が開弁すると、当該縮み側メインバルブ51の開度に応じたバルブ特性の減衰力が発生する。
そして、第1実施形態では、逆行程となるピストンロッド4の伸び行程時に、シリンダ上室2Aの圧力を受けてパッキン67の外周側シール部68(可動部材)が内周側に撓む(倒れる)ことにより、シリンダ上室2Aの油液(圧力)が背圧室73に導入される。これにより、縮み側メインバルブ51に作用する閉弁方向の力が、縮み側メインバルブ51に作用する開弁方向の力よりも大きくなる。その結果、逆行程時に縮み側メインバルブ51が開弁されるのを抑止することが可能であり、安定した減衰力を得ることができる。
【0037】
また、逆行程となるピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ上室2Aの油液(圧力)が、縮み側メインバルブ51の外周を介して背圧室73に導入されることにより、背圧室73の圧力を受けてパッキン67の内周側シール部71(遮断部材)がリテーナ63の外周面72に押し付けられる。これにより、伸び行程(逆行程)時に背圧室73に導入された油液(圧力)が、単純支持の縮み側メインバルブ51の内周部とリテーナ63との間を通って縮み側通路8へ流れるのを阻止することができ、当該油液がシリンダ下室2Bへ流れることによる、減衰力の抜けを防止することができる。
【0038】
ここで、特許文献1に示されるように、逆行程時に上流側の室の油液を背圧室に導入するため、複数枚のディスク、および逆止弁を配置して通路(流路)を形成する場合、ピストンロッドの軸部の軸長、延いてはシリンダの全長が長くなることから、緩衝器の大型化を招いていた。
【0039】
これに対し、第1実施形態では、ピストンロッド4の逆行程時に、上流側となる室2B,2Aの作動流体を、メインバルブ21,51の外周を介して背圧室43,73に導入するようにしたので、逆行程時に上流側となる室2B,2Aの作動流体を背圧室43,73に導入するための通路(流路)を複数枚のディスク、および逆止弁を配置することで形成する必要がない。よって、ピストンロッド4の軸部5の軸長、延いてはシリンダ2の全長を短くすることが可能であり、緩衝器1を小型化することができる。
【0040】
第1実施形態では以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端がピストンに連結され、他端がシリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、ピストンの一方向の移動によって生じる上流側の室から下流側の室への作動流体の流れを制御して減衰力を発生させるメインバルブと、下流側の室に配置され、メインバルブに閉弁方向の背圧を作用させる背圧室と、メインディスクの開弁時における外周部の移動と共に移動し、背圧室を区画するシール機構と、上流側の室の作動流体を背圧室へ導入するための背圧導入通路と、を備え、背圧室の背圧によってメインバルブの開弁を制御する緩衝器であって、シール機構は、ピストンの他方向の移動時に、ピストンの一方向の移動時の下流側の室の作動流体を背圧室に導入するバルブとなるので、ピストンロッドの逆行程時に上流側となる室の作動流体を背圧室に導入するため、複数枚のディスク、および逆止弁を配置して通路(流路)を形成する必要がなく、シリンダの軸長(全長)を短くすることが可能であり、緩衝器を小型化することができる。
【0041】
また、特許文献1に示されるようにメインバルブの内周部をクランプした場合、メインバルブを構成するディスクの曲げ剛性が高くなることから、ソフト側の減衰力を下げることが困難であったが、第1実施形態では、メインバルブを内周側がクランプされていない単純(片持ち)支持構造としたので、メインバルブをより低いピストン速度で開弁させることができる。これにより、ソフト側減衰力をより低く設定することが可能であり、車両の乗り心地を向上させることができる。さらに、発生させるソフト側減衰力が同じ場合、内周部をクランプしたメインバルブと比較して、より小さい外径のメインバルブを用いることができる。これにより、シリンダの外径を小さくすることが可能であり、緩衝器を小型化することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、メインバルブの内周側に遮断部材を設け、ピストンが他方向に摺動する逆行程時に作動流体が上流側の室へ流通するのを遮断するようにしたので、背圧室の作動流体が、単純支持のメインバルブの内周側を通って上流側の室へ流れるのを阻止することが可能であり、減衰力の抜けを防止することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、可動部材がメインバルブの外周に一体的に設けられるパッキンであるので、部品点数が減少して組立工数を削減することができる。さらに、第1実施形態では、パッキンの外周側に可動部材を形成し、パッキンの内周側に遮断部材を形成し、メインバルブ、可動部材、および遮断部材を一体的に設けたので、遮断部材を設けることによる部品の増加を防ぐことができる。
【0044】
なお、可動部材と遮断部材とは、1つのパッキンの外周側と内周側とに形成する必要はなく、メインバルブの外周側にパッキンからなる可動部材を設け、該メインバルブの内周側にパッキンからなる遮断部材を設けるようにして、可動部材と遮断部材とを別個に設けてもよい。
また、遮断部材は、パッキンの他、例えばOリング等とすることができる。
また、第1実施形態では、単筒式油圧緩衝器に適用した場合を説明したが、シリンダ2とアウタチューブとの間にリザーバが形成された複筒式油圧緩衝器への適用が可能である。この場合、フリーピストンは必要なく、シリンダ下室2Bとリザーバとの間にベースバルブが配置される。複筒化することによりシリンダの2の軸長をさらに短縮することができる。
【0045】
(第2実施形態) 次に、
図3、
図4を参照して第2実施形態を説明する。ここでは、主に第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼および符号を用い、重複する説明を省略する。
【0046】
第1実施形態に係る緩衝器1は、ピストン速度に対して単一の減衰力特性を持つ、いわゆるコンベンショナルサスペンション用ダンパである。これに対し、第2実施形態に係る緩衝器81は、減衰力可変機構82を備えた、いわゆるセミアクティブサスペンション用ダンパである。ここで、第2実施形態に係る緩衝器81の、減衰力可変機構82を含む基本構造は、従来のセミアクティブサスペンション用ダンパと同一である。よって、セミアクティブサスペンション用ダンパの基本構造に係る詳細な説明を省略する。
【0047】
第2実施形態における伸び側メインバルブ21は、ピストンケース83の軸部84に装着されたリテーナ33によって単純支持される。伸び側メインバルブ21の背面には、パッキン37が固着される。パッキン37は、外周側シール部38が背圧室形成部材22の円筒部39の内周面40に摺動可能に当接し、内周側シール部41がリテーナ33の外周面33に摺動可能に当接される。これにより、背圧室形成部材22の内部には、環状の背圧室43が形成される。なお、第1実施形態では、リテーナ33の軸部34とピストン3の内周部6との間に設けられた規制部材36によって、伸び側メインバルブ21の移動を規制していたが、第2実施形態では、ピストン3の内周部6によって伸び側メインバルブ21の移動を規制する。
【0048】
一方、ピストン3の上端部には、環状のシート部87が設けられる。該シート部87には、複数枚のディスクからなるディスクバルブ88が着座される。ピストンケース83の軸部84の上端部には、環状のバルブ部材89が装着される。該バルブ部材89の下端部には、ピストンケース83の軸部84に装着されたディスクバルブ90が設けられる。該ディスクバルブ90は、バルブ部材89の下端部の外周縁部に設けられた環状のシート部91と、該シート部91に対して内周側に設けられた環状のシート部92と、に着座される。
【0049】
そして、ピストンロッド4の伸び行程時には、ピストン3が上方向へ移動(摺動)するのに伴い、シリンダ上室2A(上流側の室)の油液が、バルブ部材89の外周側のシート部91に形成されたオリフィス93、バルブ部材89の内周側のシート部92に形成された通路94、バルブ部材89の内周部の下端部に形成された通路95、ピストンケース83の軸部8に形成された通路14、およびディスク48に形成された通路49によって構成される伸び側背圧導入通路を介して、伸び側メインバルブ21の背圧室43に導入される。
【0050】
次に、第2実施形態の作用を説明する。
ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動にによってシリンダ上室2A側の油液(作動流体)が加圧されると、弁体96の閉弁状態では、シリンダ上室2A(上流側の室)の油液が、前述した伸び側背圧導入通路を介して背圧室43に導入される。そして、ソレノイド97の推力(制御電流)を制御して背圧室43の圧力、すなわち、伸び側メインバルブ21の背圧を可変させることにより、伸び側メインバルブ21のセット荷重(開弁圧力)を調節することができる。
【0051】
一方、縮み行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動によってシリンダ下室2B側の油液(作動流体)が加圧されることにより、シリンダ下室2Bの油液は、縮み側通路20を通過し、ディスクバルブ88を開弁させてシリンダ上室2Aへ流通する。このとき、ディスクバルブ88によるバルブ特性の減衰力が得られる。また、縮み行程時には、ソレノイド97の推力(制御電流)を制御して弁体98のセット荷重(開弁圧)を可変させることにより、ソレノイド97の推力に抗して弁体98が開弁されると、シリンダ下室2B側の油液は、通路99、室100、通路101、および環状通路102を通過し、さらに通路93(背圧室導入通路)が形成されたディスクバルブ90を開弁させてシリンダ上室2Aへ流通する。このとき、ディスクバルブ90によるバルブ特性の減衰力を得ることができる。
【0052】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0053】
(第3実施形態) 次に、
図5を参照して第3実施形態を説明する。ここでは、主に第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼および符号を用い、重複する説明を省略する。
【0054】
第1実施形態では、パッキン37の外周側シール部38(シール機構)を背圧室形成部材22の円筒部39の内周面40に摺動可能に当接させることにより、伸び側メインバルブ21の背圧室43が形成される。これに対し、第3実施形態では、円筒形の円筒部材としてのバルブシート111(シール機構)を伸び側メインバルブ21の外周部の背面(ピストン3のシート部32に着座される面に対して反対側の面)に当接させることにより、伸び側メインバルブ21の背圧室43が形成される。
【0055】
バルブシート111の上端部には、内周側に突出する突出部112が設けられる。該突出部112の内周部上面には、ピストン3のシート部32に対向して設けられる環状のシート部113が形成される。他方、突出部112の内周部下面には、環状のシート部114が形成される。バルブシート111のシート部114は、弾性を有するディスク115の外周縁部に着座される。バルブシート111は、ディスク115の弾性によって上方向へ付勢され、シート部113が伸び側メインバルブ21に押し付けられる。なお、ディスク115の内周部は、リテーナ33と環状の固定円板としての背圧室形成部材116(円筒部材)の内周部との間で挟持される。
【0056】
背圧室形成部材116は、ナット11の軸力によってピストンロッド4の軸部5に装着される。背圧室形成部材116の外周側端面117には、バルブシート111の内周面118が摺動可能に当接される。背圧室形成部材116の外周側端面117とバルブシート111の内周面118との間は、背圧室形成部材116の外周側端面117に設けられた環状のシール部119によって液密にシールされる。
【0057】
そして、ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ上室2A(上流側の室)の油液が、ピストンロッド5の軸部5に形成された通路14、背圧室形成部材116の内周面に形成された環状の通路120、およびディスク115の内周部に形成された通路121(切欠き)、を含む背圧導入通路を介して、背圧室43に導入される。なお、ディスク115と背圧室形成部材116との間には環状の室122が形成され、該室122と背圧室43とは、ディスク115の外周部に形成された通路123(切欠き)によって連通される。
【0058】
次に、第3実施形態の作用を説明する。
ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ上室2Aの油液(圧力)が、前述した伸び側背圧導入通路を介して伸び側メインバルブ21の背圧室43に導入される。ピストン速度の上昇によって伸び側メインバルブ21が開弁すると、当該伸び側メインバルブ21の開度に応じたバルブ特性の減衰力が発生する。
そして、逆行程となるピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ下室2Bの圧力を受けてバルブシート111(シール機構)が下方向へ移動(摺動)することでバルブシート111のシート部113が伸び側メインバルブ21から離座し、これにより、シリンダ下室2Bの油液(圧力)が、伸び側メインバルブ21の外周を介して背圧室43に導入される。これにより、伸び側メインバルブ21に作用する閉弁方向の力が、伸び側メインバルブ21に作用する開弁方向の力よりも大きくなる。その結果、逆行程時に伸び側メインバルブ21が開弁されるのを抑止することが可能であり、安定した減衰力を得ることができる。
【0059】
また、逆行程となるピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ下室2Bの油液(圧力)が、伸び側メインバルブ21の外周を介して背圧室43に導入されることにより、背圧室43の圧力を受けてパッキン124(遮断部材)がリテーナ33の外周面42に押し付けられる。これにより、縮み行程(逆行程)時に背圧室43に導入された油液(圧力)が、単純支持の伸び側メインバルブ21の内周部とリテーナ33との間を通って伸び側通路7へ流れるのを阻止することが可能であり、当該油液がシリンダ上室2Aへ流れることによる減衰力の抜けを防止することができる。
【0060】
このように、第3実施形態では、前述した第1実施形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0061】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0062】
本願は、2018年7月25日付出願の日本国特許出願第2018−139411号に基づく優先権を主張する。2018年7月25日付出願の日本国特許出願第2018−139411号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。