(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信機は、前記未知数の数よりも多くの前記ハートビートメッセージを受信し、閾値未満の送信時刻の差を有する前記ハートビートメッセージを選択する、請求項3に記載の車両。
前記プロセッサは、前記近傍車両から、複数の反復にわたって同期を行う近傍車両のグループを選択し、前記グループからの各近傍車両は、ハートビートメッセージ送信の頻度及び反復の所定数によって定義される持続時間にわたって通信範囲内に前記近傍車両がある前記車両の位置及び速度に対する位置及び速度を有する、請求項1に記載の車両。
前記プロセッサは、前記近傍車両のタイムスタンプ、位置及び速度をニューラルネットワークに提出し、信頼性の高い近傍車両のグループを選択する、請求項6に記載の車両。
前記近傍車両から、複数の反復にわたってクロックの同期を行う近傍車両のグループを選択することを更に含み、前記グループからの各近傍車両は、ハートビートメッセージ送信の頻度及び反復の所定数によって定義される持続時間にわたって通信範囲内に前記近傍車両がある前記車両の位置及び速度に対する位置及び速度を有する、請求項11に記載の方法。
前記選択することは、前記近傍車両の前記ハートビートメッセージからのデータをニューラルネットワークに提出し、前記近傍車両のグループを選択することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、いくつかの実施形態による、タイムセンシティブネットワーキングに参加し、サイレントクロック同期及び位置決定を行う車両100の概略図を示す。本明細書において用いられるとき、車両100は、客車、バス、又はローバー(rover:移動車)等の任意のタイプの装輪車両とすることができる。また、車両100は、自律車両又は半自律車両とすることができる。車両100は、車両の少なくとも1つの構成要素の動作を制御するコントローラ101を備える。車両100の制御可能な構成要素の例は、ステアリングシステム102、ブレーキシステム103、ナビゲーションシステム104等を含む。1つの実施形態では、ステアリングシステム102は、コントローラ101によって制御される。それに加えて又は代替として、ステアリングシステム102は、車両100の運転者によって制御することができる。
【0019】
車両100は、車両の構成要素の動作を同期させるタイミング及び/又はクロックを提供するクロック105と、車両の構成要素の動作の同期を調整する同期データを記憶する、例えば車両のクロックに対するクロックオフセットを記憶するメモリ106と、クロック及び位置計算を行うプロセッサ107と、ハートビートメッセージを含むV2Vメッセージを受信及び送信する送受信機108と、車両100の速度を測定する内部測定ユニット(IMU)109とを備える。また、車両100は、GNSS信号を受信するGNSS受信機110と、車両100のステータスを検知する1つ以上のセンサ111とを備えることができる。
【0020】
様々な実施形態において、送受信機108は、近傍車両からハートビートメッセージを受信する受信機を備え、近傍車両から受信される各ハートビートメッセージは、ハートビートメッセージの送信時刻、近傍車両の位置、及び近傍車両の速度を含む。受信機は、車両のクロックを用いて測定された対応する受信時刻に各ハートビートメッセージを受信する。
【0021】
ハートビートメッセージから索出されたデータに基づいて、プロセッサ107はメモリ106に記憶されたクロックオフセットを更新する。いくつかの実施形態では、プロセッサ107は、未知の位置にある車両と、ハートビートメッセージから索出された近傍車両の位置との間の距離を、ハートビートメッセージの送信時刻と、未知のクロックオフセットを用いて調整された対応する受信時刻との間に光が進行した距離と比較することによって、特定の時刻における車両の未知のクロックオフセット及び未知の位置を同時に求める。
【0022】
いくつかの実施形態は、タイムセンシティブネットワーキングは、自動車業界が車両通信ネットワークを形成する車両のリアルタイム制御を達成するための解決策を提供するという認識に基づく。タイムセンシティブネットワーキングは、ネットワーク単位の同期を要する。このため、参加する車両が自身の動作を協調させることを可能にする、タイムセンシティブ車両通信ネットワークは、ネットワークの形成に参加する車両のクロックを同期させることによって達成することができる。
【0023】
車両のクロックを、車両の全地球航法衛星システム(GNSS)受信機との通信においてGNSSのクロックと同期させることができる。しかしながら、いくつかの実施形態は、GNSSのクロックに対する車両のクロックの個々の同期は、異なる車両が有し得る異なるクロックオフセット誤差に起因して、車両通信ネットワークにおける車両の同期を保証しないという認識に基づく。
【0024】
そのために、車両100がタイムセンシティブネットワーキングに参加するには、クロック同期が必要とされる。車両通信ネットワークにおけるクロック同期は、他のネットワークにおけるクロック同期と異なり、これにより、追加のメッセージ交換が必要となる場合がある。
【0025】
様々な規格が、クロックの相互同期のためのプロトコルを提供している。例えば、IEEEは、高精度時間プロトコル(PTP)ベースの同期規格を開発している。しかしながら、これらのプロトコルは、同期デバイス間の情報交換を要し、これは多用途車両通信ネットワークとの関連では実現困難である可能性がある。
【0026】
図2は、IEEE高精度時間プロトコル(PTP)ベースの同期における同期メッセージ交換を示す。そのような同期は、マスター及びスレーブ間の少なくとも2つのメッセージ交換を要する。まず、マスターが時刻T
1にSyncメッセージをスレーブに送信する。スレーブは、時刻T
2にSyncメッセージを受信する。SyncメッセージであってもタイムスタンプT
1を含むが、より正確な同期のために、マスターは、正確なタイムスタンプT
1を含むFollow_Upメッセージをスレーブに送信することができる。マスターから受信したSyncメッセージ及びFollow_Upメッセージを処理した後、スレーブは、時刻T
3にDelay_Reqメッセージをマスターに送信する。マスターが時刻T
4にDelay_Reqメッセージを受信すると、マスターは、タイムスタンプT
4を含むDelay_Respメッセージをスレーブに返送する。4つのタイムスタンプT
1、T
2、T
3及びT
4を用いて、スレーブはメッセージ伝播時間及びクロックオフセットを計算し、したがって、スレーブのクロックをマスターのクロックに同期させる。例えば、対称リンクについて、伝播時間t
p及びクロックオフセットt
oは以下のように計算することができる。
【数1】
及び
【数2】
【0027】
いくつかの実施形態は、車両通信ネットワークが、参加車両に対し特殊な要件を有するという認識に基づく。他のネットワークにおけるノードと異なり、車両通信ネットワークにおける車両は、自身の存在を周期的にアナウンスする。例えば、車両環境における無線アクセス(WAVE)のためのIEEE専用短距離通信(DSRC)において、車両は、自身の存在を近傍車両にアナウンスするハートビートメッセージを100msごとに送信することを要求される。ハートビートメッセージの属性は、一時ID、時刻、緯度、経度、高度、位置精度、速度及び変速、方位、加速度、ハンドル角、ブレーキシステムステータス、並びに車両サイズのうちの1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施形態は、このハートビートメッセージが必要な同期データを含み、したがって同期のために用いることができるという認識に基づく。この手法により、ネットワークトラフィックが低減し、干渉が軽減される。同期データが自動的に送信されることで、車両は従来の同期方法において行われるメッセージ交換を行うことなくサイレント同期を達成することができる。
【0029】
図3は、1つの実施形態による、受信したハートビートメッセージに基づいた車両のサイレント同期のための制御システム300のブロック図を示す。制御システム300は、メモリ106及び送受信機108に接続されたプロセッサ107を備える。車両100の送受信機108が近傍車両からハートビートメッセージ302を受信すると、プロセッサ107は、ハートビートメッセージ302を処理して、ハートビートメッセージ302の送信時刻を示すタイムスタンプ、送信時刻における近傍車両の位置、送信時刻における近傍車両の速度等の必要な情報を取得する。プロセッサ107は、この情報をメモリ106に記憶することができる。次に、プロセッサ107は、車両100の新たなクロックオフセット303、新たな位置304及び他のメトリックを計算する。制御システム300は、新たな速度305を測定する内部測定ユニット109も用いることができる。これらの新たなメトリックは、メモリ106に記憶される。新たなメトリックに基づいて、ハートビートメッセージ306が制御システム300によって生成される。次に、車両100の新たなハートビートメッセージ306が、車両100によって送受信機108を介して送信される。そのようにして、車両及び近傍車両は、互いにクロックを反復的に同期させる。
【0030】
GNSS受信機110及びナビゲーションシステム104を有する車両について、クロックオフセット、位置及び他のメトリックの2つのセットを維持することができる。1つのセットは、いくつかの実施形態に従って計算され、別のセットはGNSSシステムから計算される。メトリックの第1のセットは、タイムセンシティブネットワーキングに参加するために用いられる。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態による車両の近傍の例を示す。
図4に示すように、車両100について、車両通信ネットワークにおける近傍は、アラートメッセージ又は制御コマンドメッセージを送信することができる近傍車両400又は路側機(RSU)410とすることができる。RSU410は固定の位置を有し、移動しない。
【0032】
図5A及び
図5Bは、車両のクロックのサイレント同期のためにいくつかの実施形態によって用いられる三辺測量の例を示す。特に、いくつかの実施形態は、車両のクロックオフセット及び車両の位置が未知であるという仮定の下で、複数のハートビートメッセージにおいて受信される情報の三辺測量に基づいて車両のクロックを他の車両のクロックに対し同期させることができるという認識に基づく。一般に、三辺測量は、円、球及び/又は三角形等の形状を用いて、距離の測定により点の絶対位置又は相対位置を求めるプロセスである。
【0033】
いくつかの実施形態では、車両の三辺測量は、2種類の距離を比較するために2種類の方法を用いて行うことができる。本明細書において第1の三辺測量と呼ばれる1つの三辺測量510は、未知のクロックオフセットの関数である、ハートビートメッセージの送信時刻及び受信時刻間で光が進行する距離を用いる。本明細書において第2の三辺測量と呼ばれる別の三辺測量520は、特定の時刻における複数の車両の位置と車両の未知の位置との間の距離を用いる。2つの三辺測量を比較することによって、特定の時刻における車両の未知のクロックオフセット及び未知の位置を同時に求めることが可能である。
【0034】
三辺測量510及び520は、1つの平面に位置する車両位置のサイレント同期のための設計である。
図5Bは、各々が3次元座標系における車両のサイレント同期のための4つの式を含む、三辺測量515及び525の例を示す。
【0035】
いくつかの実施形態は、上述した方法を、GNSS等のナビゲーションシステムを有する車両、又はナビゲーションシステムのない車両のために用いることができるという認識に基づく。この理由は、クロックを用いるナビゲーションシステムを用いて位置が求められるとき、クロックオフセットにおける誤りが位置測定に伝播するためである。このため、いくつかの実施形態はその位置を信頼せず、その後、意図的に三辺測量を用いて、(オフセット及び位置のいくつかの値がわかっている場合であっても)未知のクロックオフセット及び未知の位置を同時に求める。そのようにして、位置の不確実性を生じるオフセットの不確実性を補正することができる。
【0036】
したがって、1つの実施形態は、車両の少なくとも1つの構成要素の動作を制御するコントローラを含む車両を開示する。車両の構成要素とは、車両の構成要素の動作を同期させるクロックと、車両の構成要素の動作の同期を調整する、車両のクロックに対するクロックオフセットを記憶するメモリと、近傍車両からハートビートメッセージを受信する受信機であって、近傍車両から受信される各ハートビートメッセージは、ハートビートメッセージの送信時刻、近傍車両の位置、及び近傍車両の速度を含み、受信機は、車両のクロックを用いて測定された対応する受信時刻に各ハートビートメッセージを受信する、受信機と、ハートビートメッセージの送信時刻と、未知のクロックオフセットを用いて調整された対応する受信時刻との間に光が進行した距離の第1の三辺測量と、未知の位置にある車両と、ハートビートメッセージから索出された近傍車両の位置との間の距離の第2の三辺測量とを比較することによって、特定の時刻における車両の未知のクロックオフセット及び未知の位置を同時に求めることに応答して、メモリに記憶されたクロックオフセットを更新するプロセッサと、である。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態では、プロセッサは、例えば、タイムスタンプ、位置、速度移動方向、加速度等を含む、ハートビートメッセージから索出された同期データを用いる。サイレント同期を達成するために、同期ノード、すなわち制御システムは、平面上にある3つの車両、又は同じ平面上にない4つの車両を選択して、そのクロック同期及び位置推定を行う。
図7に示すように、同期車両100が4つの近傍車両V
i(i=1,2,3,4)からハートビートメッセージを受信すると仮定する。同期車両100が近傍車両からハートビートメッセージを受信する、以下の2つの事例が存在する。1)同期車両100が近傍車両から同時にハートビートメッセージを受信する、及び、2)同期車両100が近傍車両から異なる時刻にハートビートメッセージを受信する。
【0038】
同期車両がハートビートメッセージを同時に受信する場合、以下の4つの式を用いて、同期車両100のクロックオフセットc
o及び位置(x,y,z)を計算する。
【数3】
ここで、cは光の速度であり、t
ti(i=1,2,3,4)は、近傍車両V
i(i=1,2,3,4)がハートビートメッセージ302において同期データを送信した時刻であり、t
ri(i=1,2,3,4)は、同期車両100が近傍車両V
i(i=1,2,3,4)から同期データを受信した時刻であり、(x
i,y
i,z
i)は、近傍車両V
i(i=1,2,3,4)の位置である。同期車両100は4つのハートビートメッセージを同時に受信するため、t
ri(i=1,2,3,4)は同じであり、位置(x,y,z)は、4つのハートビートメッセージの受信時刻における同期車両100の未知の位置である。しかしながら、t
ti(i=1,2,3,4)は、4つの近傍車両のクロックに従って測定されたため、異なっている。未知のクロックオフセットは、原子クロックに対するオフセット、又は近傍車両の4つのクロックから計算された最適クロックに対するオフセット、例えば4つのクロックオフセットの平均とすることができる。
【0039】
4つの近傍車両が同じ平面上にない場合であっても、車両100は、そのクロックオフセットc
o及び位置(x,y,z)を一意に計算することができる。全ての近傍車両が同じ平面上にある場合、座標のうちの1つが全ての近傍車両について同じである。同期車両100はこの共通座標を自身の対応する座標として用い、同じ線上にない3つの近傍車両を用いて、自身のクロックオフセットc
o及び位置の他の2つの座標を計算する。全ての近傍車両が同じ線上にある場合、座標のうちの2つが全ての近傍車両について同じである。同期車両100は、これらの共通座標を自身の対応座標として用い、異なる位置を有する2つの近傍車両を用いて、自身のクロックオフセットc
o及び自身の位置の残りの1つの座標を計算する。
【0040】
近傍車両のハートビートメッセージが異なる時刻に受信されるとき、異なるハートビート送信について車両100の位置が一定であるという要件が違反される。そのために、いくつかの実施形態は、車両100の速度を用いて、異なるハートビート送信について車両100の位置を調整する。例えば、1つの実施形態では、車両のIMU109は、車両の速度を求め、プロセッサは、異なるハートビートメッセージの受信時刻の差及び車両の速度に基づいて、距離の第2の三辺測量において特定の時刻における車両の未知の位置を調整する。
【0041】
例えば、車両100は、同期プロセスにおいて、未知の位置にある車両と、ハートビートメッセージから索出された近傍車両の位置との間の距離の第2の三辺測量を、ハートビートメッセージの送信時刻と、未知のクロックオフセットを用いて調整された対応する受信時刻との間に光が進行した距離の第1の三辺測量と比較することによって、4つの未知数、すなわち、自身のクロックオフセット及び自身の位置(x,y,z)を同時に求める必要がある。サイレント同期を達成するために、車両100は、同じ平面上にない4つ以上の近傍車両を選択して、クロック同期及び位置決定を行う。
【0042】
図7は、1つの実施形態による、4つの近傍車両V
1、V
2、V
3及びV
4からハートビートメッセージ302を受信する車両100の概略図を示す。4つの近傍からハートビートメッセージを受信することに加えて、車両100はまた、自身の内部測定ユニット(IMU)109を用いて自身の速度を測定する。受信したハートビートメッセージ及び測定された速度を用いて、実施形態により以下の4つの式を用いて車両100のクロックオフセットc
o及び車両100の位置(x,y,z)を計算する。
【数4】
ここで、cは光の速度であり、t
ti(i=1,2,3,4)は、近傍車両V
i(i=1,2,3,4)がハートビートメッセージ302を送信した時刻であり、t
ri(i=1,2,3,4)は、車両100が近傍車両V
i(i=1,2,3,4)からハートビートメッセージ302を受信した時刻であり、(x
i,y
i,z
i)は、近傍車両V
i(i=1,2,3,4)が自身のハートビートメッセージ302を送信した、近傍車両V
iの位置であり、t
mi=min{t
r1,t
r2,t
r3,t
r4}であり、(x
0,y
0,z
0)は、時刻t
miにおける車両100の位置であり、(v
x,v
y,v
z)は、IMU109を用いて時刻t
miに測定された車両100の速度である。式(3)〜式(6)は、クロックオフセットc
o及び位置(x
0,y
0,z
0)について解く。したがって、時刻t
ma=max{t
r1,t
r2,t
r3,t
r4}において、車両100の位置(x,y,z)は、(x,y,z)=(x
0,y
0,z
0)+(t
ma−t
mi)*(v
x,v
y,v
z)として計算することができる。この場合、t
ri(i=1,2,3,4)は異なる。
【0043】
式(7)〜式(10)の各式において、式の左辺は、未知の位置にある車両と、ハートビートメッセージから索出された近傍車両の位置との間の距離の第2の三辺測量であり、式の右辺は、ハートビートメッセージの送信時刻と、未知のクロックオフセットを用いて調整された対応する受信時刻との間に光が進行した距離の第1の三辺測量である。
【0044】
4つの近傍車両が同じ平面上にないため、車両100は、そのクロックオフセットc
o及び位置(x,y,z)を一意に計算することができる。全ての近傍車両が同じ平面上にある場合、座標のうちの1つは全ての近傍車両について同じである。車両100は、その共通座標を自身の対応する座標として用い、同じ線上にない3つの近傍車両を用いて、自身のクロックオフセットc
o及び位置の他の2つの座標を計算する。全ての近傍車両が同じ線上にある場合、座標のうちの2つが全ての近傍車両について同じである。車両100は、これらの共通座標を自身の対応座標として用い、異なる位置を有する2つの近傍車両を用いて、自身のクロックオフセットc
o及び自身の位置の残りの1つの座標を計算する。
【0045】
図6は、いくつかの実施形態による、車両のグループ間の反復的なサイレント同期の方法のブロック図を示す。タイムセンシティブネットワークを形成する車両が、同期の反復を行って、より正確なクロックオフセット計算を達成する。1つの任意選択の実施態様では、車両100はまず、初期クロック同期及び位置推定を行う(610)。例えば、車両100は、GNSS受信機を用いて初期クロック同期を行うことができ、GNSS受信機を用いた位置推定及び/又はIMUの移動推定を行うことができる。
【0046】
様々な実施形態において、車両100は、サイレント同期方法の複数の反復605を行うことによって、そのクロックオフセット及び/又は位置精度を改善する。各反復において、車両100は、近傍車両からハートビートメッセージを受信する(620)。1つの実施形態では、車両は、近傍車両のサブセットによって送信されたハートビートメッセージのサブセットを選択する(630)。例えば、車両は、車両100と共通の制御用途に参加している近傍車両によって送信されたハートビートメッセージを選択する。そのような制御用途の例は、車両のグループの隊列走行である。代替的な実施形態では、車両は、車両100との最小期間内に近傍車両によって送信されたハートビートメッセージを選択する。この実施形態は、サイレント同期を行うための複数の反復が、同期車両間の1ホップメッセージ交換の最小期間内で完了する必要があるという理解に基づく。
【0047】
いくつかの状況において、
図5Bに示す3D空間同期の場合、受信及び/又は選択されたハートビートメッセージの数は、4つのハートビートメッセージよりも大きい。これらの状況において、実施形態は、メッセージを選択及びグループ化して(630)、複数の三辺測量比較システムを形成する。次に、実施形態は、三辺測量比較、すなわち距離比較を用いてハートビートメッセージの各グループについて車両のクロックオフセット及び位置を求める(640)。
【0048】
いくつかの実施形態は、
図5A及び
図5Bの三辺測量比較システムが、近傍車両のハートビートメッセージが同時に受信されるときの状況により適しているという認識に基づく。この理由は、車両の三辺測量が一定の位置を仮定するためである。そのために、車両100の受信機が、未知数の数、例えば
図5Aのシステムにおける3つの未知数及び
図5Bのシステムにおける4つの未知数よりも多くのハートビートメッセージを受信するとき、車両のプロセッサ107は、送信時間の差が閾値未満のハートビートメッセージを選択及びグループ化する(630)。そのようにして、
図5A及び
図5Bの三辺測量比較システムを用いて計算を単純化することができる。
【0049】
例えば、いくつかの実施形態では、プロセッサは、近傍車両からM個の信頼性の高いハートビートメッセージを選択し(630)、そのクロック及び位置を更新する。このため、M個の信頼性の高い近傍から4つの近傍を選択する、
【数5】
個の可能な組み合わせが存在する。組み合わせごとに、式(7)〜式(10)を適用して、クロックオフセット
【数6】
及び位置(x
i,y
i,z
i)(i=1,2,...,K)を求める(640)。これらのオフセット及び位置を用いて、車両100は、車両のクロックオフセットを、以下の式
【数7】
に従って、対応する値の平均として更新し、位置を以下のように更新することができる(650)。
【数8】
【0050】
他の方法を用いて、
【数9】
及び(x
i,y
i,z
i)(i=1,2,...,K)に基づいて最適クロックオフセットc
o及び位置(x,y,z)を計算することもできる。
【0051】
クロック及び位置が更新された後、車両100は、IMU109を用いて自身の速度を測定する。次に、車両100は新たなハートビートメッセージを送信して(660)、自身の新たな情報をその近傍にアナウンスする。近傍は、車両100によって送信されたハートビートメッセージを用いて自身のクロックオフセット、位置を更新し、新たなハートビートメッセージを送信することができる。所定の数の反復605の後、車両100及びその近傍は、所望のクロック同期を達成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態は、車両通信環境において、データ送達は、高い移動性及び可能なサイバー攻撃に起因して信頼できないという認識に基づく。したがって、車両100は、より信頼性の高いハートビートメッセージを用いてクロック同期を行う必要がある。異なる実施形態は、異なる方式を用いて信頼性の高いハートビートメッセージを特定する。例えば、1つの実施形態は、データ分類において機械学習を適用する。ニューラルネットワークは、機械学習技法のうちの1つである。
【0053】
ニューラルネットワークがより信頼性の高いハートビートメッセージを学習するために、更なるハートビートメッセージを近傍から受信した方がよい。これを行うために、車両100は、近傍とのより長い通信持続時間を有することが必要である。しかしながら、車両通信ネットワークでは、車両100と近傍との間の通信持続時間に影響を及ぼす多くの要因、例えば、位置、速度、移動方向等が存在する。
【0054】
図8は、1つの実施形態による、車両100と近傍車両840との間の通信持続時間を計算する概略図を示す。この実施形態において、車両100は方向
【数10】
810に移動しており、近傍車両840は方向
【数11】
820に移動しており、通信範囲はR830である。車両100が(x
0,y
0,z
0)に位置し、近傍840が(x
1,y
1,z
1)に位置しているときに、車両100が時刻t
0に近傍840から第1のハートビートメッセージを受信すると仮定する。
【0055】
車両100と近傍840との間の通信持続時間c
dは以下のように計算される。c
dは、近傍840が車両100の通信範囲から出るときの時刻であることに留意されたい。時刻t
0+c
dにおいて、車両100は新たな位置
【数12】
に移動し、近傍840は新たな位置
【数13】
に移動する。近傍840は、車両100の通信範囲から出ているため、その位置は、車両100の位置を中心とした球の表面上になくてはならない。したがって、以下の式が成り立たなくてはならない。
【数14】
【0056】
式(13)において、c
dは唯一の未知数である。このため、式(13)を解くことにより、車両100と近傍840との間の通信持続時間が得られる。式(13)を解くために、
【数15】
及び
【数16】
とすると、通信持続時間c
dは以下によって与えられる。
【数17】
ここで、A=(u
x−v
x)
2+(u
y−v
y)
2+(u
z−v
z)
2、B=(x
1−x
0)(u
x−v
x)+(y
1−y
0)(u
y−v
y)+(z
1−z
0)(u
z−v
z)及び
【数18】
である。
【0057】
Dは、第1のハートビートメッセージが受信されるときの車両100と近傍車両840との間の距離であることを見てとることができる。
【0058】
いくつかの実施形態は、車両100が、より長い通信持続時間を有する複数の近傍を有することができるという認識に基づく。この場合、車両100は、より長い通信持続時間を有する近傍の中から、より信頼性の高い近傍を選択する必要がある。
【0059】
機械学習は、近傍を分類する方式を提供する。車両100が、より長い通信持続時間を有するN個(N≧4)の近傍を有すると仮定する。車両100は、次に、M個(N≧M≧4)の信頼性の高い近傍から受信したハートビートメッセージを選択して、クロック同期及び位置決定を行う。ニューラルネットワークは、M個の信頼性の高い近傍を選択する方式を提供する。
【0060】
図9は、サイレント同期のための近傍車両のグループを選択するようにいくつかの実施形態に従って設計されたフィードフォワードニューラルネットワーク900を示す。ニューラルネットワーク900は、入力層910と、隠れ層920と、出力層930とを含む。ニューラルネットワークにおけるノードはニューロンと呼ばれる。フィードフォワードニューラルネットワークにおいて、入力層におけるニューロンは、隠れ層におけるニューロンに接続し、隠れ層におけるニューロンは、出力層におけるニューロンに接続する。各接続は重みを割り当てられる。したがって、入力層から隠れ層までの全ての接続が、重みベクトルW
i940を構築し、隠れ層から出力層までの全ての接続が、重みベクトルW
o950を構築する。
【0061】
入力層におけるニューロンの数は、入力データの数に依拠する。近傍によって送信されるハートビートメッセージは、タイムスタンプt、位置(x,y,z)、速度(v
x,v
y,v
z)、加速度及び他のデータからなる。タイムスタンプt、位置(x,y,z)及び速度(v
x,v
y,v
z)が入力データとして用いられるとき、各ハートビートメッセージは、7つの入力を提供する。N個の近傍の場合、入力層は7*N個のニューロンを有する。隠れ層におけるニューロンの数は、トレーニングプロセス中に求められる。出力層におけるニューロンの数は、各ニューロンが近傍に対応するようにNにセットされる。出力値1は、対応する近傍の信頼性が高いことを示し、出力値0は、対応する近傍の信頼性がないことを示す。
【0062】
ニューラルネットワーク900は、ラベル付けされたデータを用いてトレーニングされる。トレーニングプロセスは、隠れ層におけるニューロンの数、並びに重みベクトルW
i及びW
oを求める。次に、トレーニングされたニューラルネットワークを車両100によって用いて、サイレント同期を行うためにより信頼性の高い近傍車両を選択する。
【0063】
図10は、本発明の1つの実施形態による、タイムセンシティブネットワーキングにおける受信した制御コマンドメッセージを処理するコントローラ101のブロック図を示す。V2V送受信機108がアラートメッセージ又は制御コマンド1000を受信すると、コントローラ101のプロセッサ1010は、受信したメッセージ1000を処理して、行われるアクション、アクションを行う時刻及び/又は位置を取得する。次に、コントローラ101は、対応するデバイス1002が特定の時刻及び/又は特定の位置においてアクションを行うためのアクションメッセージ1001を生成する。アクションデバイス1002は、車両100のハンドル102、ブレーキシステム103及び他の構成要素とすることができる。アクションは、加速、減速、左折、右折等とすることができる。
【0064】
図11は、1つの実施形態による、車両100のコントローラ101とコントローラ1100との間のインタラクションの概略図を示す。この実施形態は、コントローラ101によって生成されたアクションメッセージ1001を、車両100の他のコントローラによって後に処理されるタイムセンシティブコマンドとすることができるという理解に基づく。例えば、いくつかの実施形態では、車両100のコントローラ1100は、車両の回転及び加速を制御するステアリングコントローラ1110及び/又はブレーキ/スロットルコントローラ1120である。そのような場合、コントローラ101は、コントローラ1110及び1120に制御入力を出力して、車両の状態を制御することができる。コントローラ1100は、コントローラ101の制御入力を更に処理する高レベルコントローラ、例えば、車線逸脱防止支援コントローラ1130も含むことができる。最終的に、コントローラ1100は、車両の動きを制御するために、コントローラ101の出力を用いて、車両の少なくとも1つのアクチュエータ、例えば、車両のハンドル及び/又はブレーキを制御する。
【0065】
本発明の上記で説明した実施形態は、多数の方法のうちの任意のもので実施することができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられるのか又は複数のコンピュータ間に分散されるのかにかかわらず、任意の適したプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行することができる。そのようなプロセッサは、1つ以上のプロセッサを集積回路部品に有する集積回路として実装することができる。ただし、プロセッサは、任意の適したフォーマットの回路類を用いて実装することができる。
【0066】
また、本明細書において略述された様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の1つを用いる1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化することができる。加えて、そのようなソフトウェアは、複数の適したプログラミング言語及び/又はプログラミングツール若しくはスクリプティングツールのうちの任意のものを用いて記述することができ、実行可能機械語コード、又はフレームワーク若しくは仮想機械上で実行される中間コードとしてコンパイルすることもできる。通常、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望に応じて組み合わせることもできるし、分散させることもできる。
【0067】
さらに、本発明の実施形態は、方法として具現化することができ、この方法の一例が提供されている。この方法の一部として実行される動作は、任意の適した方法で順序付けることができる。したがって、例示したものと異なる順序で動作が実行される実施形態を構築することができ、この順序は、いくつかの動作が例示の実施形態では順次的な動作として示されていても、それらの動作を同時に実行することを含むことができる。