(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力リングが、各々がそれぞれの入力角度付きギヤ面を有する2つの軸方向に隣接するコンポーネントから形成され、前記それぞれの入力角度付きギヤ面が異なるねじれ角を有する、請求項2又は3に記載の変速装置。
前記入力ギヤが、第1の角度付き入力ギヤ面を有する第1の入力ギヤコンポーネントと、第2の角度付き入力ギヤ面を有する第2の入力ギヤコンポーネントとを含み、入力ギヤを前記外側軌道ローラとギヤ接触させ、且つ前記外側レースと同軸に配置する前記ステップが、前記第1の入力ギヤコンポーネントを、前記外側軌道ローラと、前記外側軌道ローラとギヤ接触している前記第1の角度付き入力ギヤ面とに同軸に配置するステップと、前記第2の入力ギヤコンポーネントを、前記外側軌道ローラと、前記外側軌道ローラとギヤ接触している前記第2の角度付き入力ギヤ面とに同軸に配置するステップとを含み、前記第1の角度付き入力ギヤ面と前記第2の角度付き入力ギヤ面が異なるねじれ角を有する、請求項6又は7に記載の方法。
前記第1の角度付き入力ギヤ面が、前記1組の内側軌道ローラを前記外側軌道ローラとギヤ接触させて配置する前記ステップの前に、前記外側軌道ローラとギヤ接触させて配置され、前記第2の角度付き入力ギヤ面が、前記内側レースの前記第1及び第2のコンポーネントを前記内側軌道ローラとギヤ接触させて配置する前記ステップの後に、前記外側軌道ローラとギヤ接触させて配置される、請求項8又は9に記載の方法。
前記入力ギヤが、第1の角度付き入力ギヤ面を有する第1の入力ギヤコンポーネントと、第2の角度付き入力ギヤ面を有する第2の入力ギヤコンポーネントとを含み、入力ギヤを前記内側軌道ローラとギヤ接触させ、且つ前記内側レースと同軸に配置する前記ステップが、前記第1の入力ギヤコンポーネントを、前記内側軌道ローラと、前記内側軌道ローラとギヤ接触している前記第1の角度付き入力ギヤ面とに同軸に配置するステップと、前記第2の入力ギヤコンポーネントを、前記内側軌道ローラと、前記内側軌道ローラとギヤ接触している前記第2の角度付き入力ギヤ面とに同軸に配置するステップとを含み、前記第1の角度付き入力ギヤ面と前記第2の角度付き入力ギヤ面が異なるねじれ角を有する、請求項11又は12に記載の方法。
前記第1の角度付き入力ギヤ面が、前記1組の外側軌道ローラを前記内側軌道ローラとギヤ接触させて配置する前記ステップの前に、前記内側軌道ローラとギヤ接触させて配置され、前記第2の角度付き入力ギヤ面が、前記外側レースの前記第1及び第2のコンポーネントを前記外側軌道ローラとギヤ接触させて配置する前記ステップの後に、前記内側軌道ローラとギヤ接触させて配置される、請求項13又は14に記載の方法。
前記内側ローラ及び外側ローラは、前記ギヤが形成される1組の公差を与えられると、前記ギヤが変形して負荷を分担するように十分に低い剛性になるように選択された材料で形成される、請求項1〜5、16又は17のいずれか一項に記載の変速装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載の実施形態には、「特許請求の範囲」で言及される内容から逸脱しない軽微な変更がなされてよい。
【0018】
本装置の実施形態は、内側固定リングから外側出力リングに、2列の遊星を介して直接トルクを伝達することによって、遊星キャリアの必要性を排除する。ギヤ減速比は、内側リングのODと外側リングのIDとの間の差によって決定され、内側遊星及び外側遊星は、それらの間のトルク伝達負荷経路として作用する。遊星が軌道を周回されると、外側リングは、約3:1、又は場合によってはより低く、又は約6:1まで、又は場合によってはより高い比率で回転する。内側リングのODが外側出力リングのIDに近いほど、比が大きくなる。
【0019】
本明細書に開示される装置の実施形態は、等しい円周間隔、並びにローラ及びレースの軸方向の整列を提供するための特徴の組み合わせを使用し、ローラとレースとの相互作用により、一部の用途における追加の軸受の必要性を排除し、又は、追加の軸受の強度(したがって、コスト及び重量)を低減して、内側レースから外側レースへの軸方向の整列を提供する。更に、本明細書に開示される装置の実施形態は、ローラに直接磁力を印加して、別個のモータロータの必要性を排除する構造を提供し、ローラが出力リングよりも高速で旋回しているため、ローラ自体が減速比を有するロータとして作用する。これにより、モータギヤボックスの組み合わせの製造及び組み立てを単純化する太陽リング入力の必要性を排除する。ローラ(したがって、収容された磁石)が回転しているという事実は、エアギャップ及びステータに磁束を依然として提供しているため、有意な不利益とは考えられない。
【0020】
装置の実施形態は、ギヤよりむしろ転がり接触のような作用及び感触を提供するのに十分に小さく、十分な数のギヤ又はローブを使用する。請求項において、用語「ローブ」はまた、用語「ギヤ」を包含する。ローブは、(くさびのように作用するギヤ歯を有するギヤとは対照的に)径方向に大きい表面領域を提供する利点を有する。一実施例では、ローブ又はギヤの圧力角は、20、30又は40度を超えてもよい。代替的な構成では、ローブの代わりに高角度のギヤを使用することができる。ギヤ又はローブをヘリングボーン構成に構成することにより、ローラのギヤ指定周方向位置決めの結果として周方向ローラ間隔と、ヘリングボーンヘリカルギヤの結果として、ローラとレース及び内側ローラと外側ローラとの軸方向の整列と、ローラ上のヘリングボーンギヤが多軸(すなわち、径方向及び軸方向の位置)制約を提供するため、内側レースと外側レースとの間の軸受の必要性を排除又は低減する機能と、を含むいくつかの特性を達成することができる。ローラに永久磁石を使用すると、装置の軸端部に配置された1つ又は好ましくは2つの電磁ステータを、ローラに回転トルク及び運動を与えるように整流でき、そうすることによって、外側リング上にトルクを発生させる(内側リングを固定基準としてこれらの非限定的な例で使用するが、外側リングを固定基準として使用することができ、内側リングは出力リングであってもよいことが理解される。ステータ(単数又は複数)は、どちらが固定であり、どちらが出力であるかに関わらず、内側又は外側リングに取り付けられ得ることも理解される。
【0021】
[永久磁石を含む実施形態]
遊星キャリアを含む典型的な従来のディファレンシャルギヤは、ピニオン内の軸受及びシャフトを必要とするため、遊星内でPM(永久磁石)を使用することはできない。更に、従来の遊星ギヤ(平面の単一の円形アレイを有する)が、固定太陽ギヤと共に遊星内のPMを使用する場合、減速機ではなく増速機として作用する。
【0022】
図1では、装置10の非限定的な例示的実施形態の一部の簡略化された概略図が示されている。内側レース12は固定又は基準レースとして作用し、外側レース14は出力部材として作用し、内側ローラ16及び外側ローラ18のそれぞれのアレイは、軌道を周回するときに、内側レース12から外側レース14にトルクを与える。ローラを周回させるために、装置の実施形態は、1つ以上のローラに、好ましくは、
図1に示されるように、全ての内側ローラ及び外側ローラに埋め込まれた永久磁石20を有する。
【0023】
図2は、破線で表される電磁ステータ磁極/ポスト22を有する装置10の実施形態の簡略化された概略図を示す。72個のステータポスト及び68個のローラなどの従来の電動モータ及びステータに使用することができるような、ローラ及びポストの数の範囲を使用することができる。この非限定的な例におけるローラの数は、34個の内側ローラ及び34個の外側ローラを含む。ステータは、ポスト又は空芯コイルを含む電磁石を有してもよい。また、
図2には、
図3の断面図が切断される箇所を示す切断線A−Aも示されている。切断線は、外側ローラを通って、内側ローラの間を切断する。空芯コイルが使用される場合、各空芯コイル22から各隣接する空芯コイル22へ磁束を搬送する軟磁性材料backiron26を有することが好ましい。
【0024】
図3は、
図2の非限定的な例示的実施形態の概略断面図を示し、部分的に組み立てられたステータがローラの両方の軸端部にある。(電磁素子上のコイルは示されていない)。永久磁石20の配置は、2つの磁石が使用され、両端部から外側ローラ18内に配置され、それらは分離又は軸方向位置決め部材24にまたがって一緒に引っ張り合うように配置される。これにより、追加の固定手段を必要とせずに磁石をローラに保持することができる。これは、電磁ステータ磁極22と相互作用するときに、推進力用の磁石の完全端を提供する。磁石を挿入及び固定する他の手段も使用されてもよい。内側ローラは、外側ローラと同じ又は異なる配置を使用してもよい。磁極(ここでは空芯コイル)22及びbackiron26を含むステータ要素が概略的に示されている。図示のように、ステータ要素は、装置10の両方の軸方向側にあってもよい。ステータは、固定要素、ここでは内側レース12に取り付けられてもよい。ここで、スペーサ28は、backiron26を内側レース12に接続するために使用される。
【0025】
軸方向位置決め部材24は、磁石を分離する必要はない。部材24は、磁石が一緒に移動するのを単に防止する。(プラスチックギヤが使用される場合)プラスチックのリングによって分離された2つの単純な円筒形PMで分離して軸方向位置決め部材24を形成する場合、鋼などの軟磁性材料ディスク112である必要がある。これは、コスト及び簡潔さの観点から好ましい構造である。
【0026】
軸方向位置決め要素24は、好ましくは、ローラの少なくとも内側部分114(内径)を有する1つの部品として成形又は作製される。ローラ全体を単一の部品として形成することができるか、又はローラのギヤ面は、内側部分114が挿入される1つ以上の別個の部品であってもよい。鋼ディスク112などの軟磁性材料は、2つの磁石間の磁束連結経路として使用されることが好ましい。PMはまた、軟磁性材料ディスクの代わりに、より小さい直径の円筒形端部セクションを有し得る。単純な円筒形磁石は、構築するのにより安価であると考えられ、それらの間の磁束結合のための鋼ディスクスペーサの使用により、このディスクを理想的な厚さに容易に調整することができる(一方、PMは、同じ公差に機械加工することがより困難である)。
【0027】
図1〜3に示される実施形態は、同様のサイズの2列のピニオン(ローラ)を有し、各列のピニオン内に磁石を含む。磁石は、
図1及び2に見られるように、(1つの軸方向側から見て)1つのアレイ内に全てNと、他のアレイ内に全てSを有する。いくつかの構成は、他よりもはるかに小さい1つのアレイのピニオンを使用する。この場合、より大きなピニオンのみに磁石を入れることがより良好であり得る。利点としては、より小さい径方向寸法に起因するより軽いステータが挙げられる。磁石は、ピニオンのサイズに関わらず、1つの列に制限され得る。
図4〜5に1列当たり16個及び14個のピニオンを有するバージョンで示される例は、外側アレイのみに磁石20を有するより大きい外側ローラ18を有する。
【0028】
この単一列の磁石構成は、PMピニオンの単一アレイ内の磁石の交番する極性を有する。
【0029】
ステータは、いくつかの磁極を有してもよい。各磁極は、例えば、ポスト又は空芯コイルを有する電磁石であり得る。従来の3相モータに関して、ステータは、3によって分割可能ないくつかの磁極を有する必要がある(ステータを参照するとき、「磁極」又は「ポスト」という用語は、空芯コイルが使用される場合、各個々のポスト及びコイル、又はコイルを指す)。4によって分割可能な磁極の数を有することも有用であり得、3及び4の両方によって分割可能である場合、12によって分割可能である。
【0030】
ロータポストの数(ここではロータポストは、磁石を含む隣接するローラに対して交番する磁極の永久磁石を含むローラの数を指す)は、ステータポストの数に基づいており、集中巻の場合、ロータポストの数は、ステータポストの数よりも多いか、又はそれより少ない。例えば、−2又は+2であるが、−4又は+4が好ましく、これは、エアギャップの周りに磁力を分配してステータ上の曲げ負荷を低減するためである。他の違いもまた機能するであろう。
【0031】
ここで、ロータポストの数は、それらの中の磁石を含むピニオンの数であり、典型的には、ピニオンの総数又はピニオンの列の1つにおけるピニオンの数のいずれかである。
【0032】
列における好適な数のピニオンの例は、1列のピニオンに磁石を有する実施形態では、
図4に示すように16個である。
【0033】
図1〜5に示される実施形態は、本明細書では、太陽なし(sunless)自己増力(self-energizing)ギヤボックスと呼ばれる。これらの実施形態は、非常に単純である。それらはそれぞれ、1つの(典型的には固定された)内側リングと、1つの外側リング(典型的には、出力に接続される)のみを有する。ローラは軸受として作用し、従来の軸受の必要性を低減又は排除する。これは、外骨格のような高速を必要とする任意の単純且つ低コストのアクチュエータである。本出願に開示されている実施形態は、例えば、米国特許出願公開第2017/0181916号に開示されているようなエクソスケルトンで使用することができる。
【0034】
図6は、1列当たり14個のピニオンを有する実施形態を示し、
図5よりもピニオンサイズの差が小さい。磁石は示されていない。これらの実施形態の全ては、磁石と共に、又は磁石なしで使用することができる。磁石なしで、入力力は、以下に記載及び図示されるように、入力ギヤによって供給され得る。
【0035】
[ギヤ又はローブ構成]
図7は、内側ローラ16上の内側ヘリングボーンギヤ又はローブ30、及び外側ローラ18上の外側ヘリングボーンギヤ又はローブ32の非限定的な例を示す。ギヤ又はローブ30及び32は、線によって概略的に示されている。ギヤ又はローブ30及び32は噛み合うが、この図では、ギヤはわずかに分離されていると思われる。ヘリングボーンギヤ又はローブは、ローラの軸方向の位置決めを拘束するのに役立つ。軸方向の位置決めは、表面又は別のローラと同時に接触するローラの異なる部分において異なるねじれ角を有するギヤ又はローブの任意の使用によって拘束されてもよい。
図7に示すヘリングボーン形状は、この一例に過ぎない。以下に定義される「圧力角」と区別するために、この段落で言及される角度は、軸方向から離れるローブ山部又は谷部の角度であり、ねじれ角と呼ばれる。(ローブ30を示す線を軸に平行な点線に接続する弧によって表される)ねじれ角34は、この実施形態では、ローラの異なる軸方向部分に対向する。この対向する非ゼロ角度は、異なる軸方向部分上の異なるねじれ角の一例である。
【0036】
この装置は、トラクション面と協働するように構成され得るが、例えば
図8に示されるようなローブの使用は、ギヤ間のより高い角度での摺動を防止することによって、見かけの摩擦係数を増加させる効果を有する。したがって、負荷下のときの平均最大圧力角が、ローブ又はギヤの面が係合解除するのを防ぐのに十分低い限り、正弦波プロフィールなどの、高有効圧力角のローブを使用することができる。
【0037】
高有効圧力角のローブプロフィールの簡略化された例を
図8に示す。高有効圧力角のローブ形状は、径方向に活性である表面領域を増加させることによって、高い転がり接触能力を可能にすると考えられる。増大したトルクを有する径方向接触力を増大させる自己カム効果と、この低有効圧力角のローブ形状との組み合わせは、最小限の摺動、したがって低転がり摩擦をもたらすことが期待される。
【0038】
高有効圧力角−従来のギヤボックスでは、高圧力角は、トルク伝達中にギヤ間の高い分離力をもたらすであろう。装置の実施形態では、ローブ圧力角は、カム角度が確立されるように、接触領域の有効摩擦係数を増加させるのに十分低い。この臨界有効摩擦係数(EFC)が確立されると、自己増力効果により、ローラは、摺動又は省くのではなく、トラクション圧力を増加させる。
図8は、ローラとレースとの間のローブ接触を示す。破線の曲線は、底部のローラのピッチ直径及び上部のより大きい直径のレースを表す。長破線Aは、非ギヤ境界面である場合の実際の接触角を表し、ローラの軸に対して径方向である。線Bは、ローラがレース上で転がるときのローブ噛み合い中の最大圧力角を表し、ローブの表面に垂直である。線Cは、ローラがレース上で転がるときの負荷噛み合い中の最小圧力角を表し、ローブの表面に垂直である。トルク伝達中、接触圧は一方向に付勢されるため、接触線Bの反対方向に効果的な接触がない。この接触パターンの結果として、平均有効圧力角は線Dに沿って、線Bと線Cとの間のほぼ中間である。
【0039】
(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)国際公開第2013173928(A1)号に記載されているように、内側レース及び外側レースのそれぞれは、円形であってもよく、軸を中心に置かれてもよい。トラクション角度φ
iは、以下のように定義されてもよく、第1の外側ローラに接触する第1の内側ローラの各対に対して、トラクション角度φ
iは、第1の内側ローラの中心を通って軸から外向きに延びる第1の線と、第1の外側ローラと外側レースとの接点及び第1の内側ローラと内側レースとの接点から延びる第2の線との間の角度として定義される。ローラの軌道運動は、内側レースと外側レースとの間の差動運動をもたらし、したがって、トルク力は、ローラを介して内側レース及び外側レースとの間で伝達される。このトルク力は、隣接するローラの接点間で伝達され、したがって、周方向成分と、トラクション角度の接線に等しい径方向成分との比を有するトラクション角度で伝達される。したがって、国際公開第2013173928(A1)号に記載されているように、内側レースと内側ローラとの間の摩擦係数が角度の接線よりも大きい場合、トルクは、大きな予圧又は径方向負荷を増加させるための任意の追加の機構を必要とせずに、トルクが増加するにつれてトラクションを維持するのに十分な径方向成分を生成する。これは、本明細書では「カム効果」と呼ばれる。このカム効果を呈する装置はまた、本明細書では「自己増力」と呼ばれてもよい。
【0040】
ローラ上のギヤ又はローブを用いて、摩擦係数は、ローラを互いに回転摺動させないように自己増力効果を生じさせるために依拠されない。その代わりに、ギヤ又はローブは、ローラを互いに及びそれらのそれぞれのレースに時機を合わせるように機能する。
【0041】
図7に示される実施形態では、ローブは、ローラの実質的に全径方向表面を覆い、内側ローラローブは、外側ローラローブ及び内側レースローブの両方と噛み合い、外側ローラローブは、内側ローラローブ及び外側レースローブの両方と噛み合う。しかしながら、ローラの一部分のみにローブを有することも可能である。また、隣接ローラではなく、対応するレースと接触しているローラの異なる部分、したがって、異なるローブを有することが可能である。異なる接点のためのローブ、ギヤ、又はトラクション面の異なる選択を有してもよい。
【0042】
[ギヤ歯プロフィール]
本発明の装置の実施形態は、遊星の2つの列との間、及び遊星とレースとの間のギヤ接触を使用する。このギヤ接触は、より大きいカム角度及び潜在的により高いトルク伝達を可能にする。ギヤ接触で解決しようとする1つの課題は、ギヤ付きコンポーネント間の径方向圧縮が、非共役運動をもたらすことができ、また、噛み合い遊星の受容歯間に強制的に作用するくさびとして作用する1つの遊星の歯のくさび効果の結果として、高摩擦及びコギングをもたらすことができることである。このくさび効果は、ギヤ接触面に平面に位置するピニオン間の径方向力の高い機械的利点をもたらし、高摩擦及び摩耗をもたらす。ギヤを径方向に共に強制することはまた、ピニオン回転中のギヤ歯接触の異なる位相全体にわたって機械的利点が変化するにつれて、可変摩擦力をもたらす。この可変摩擦力は、コギング及び不規則な摩耗をもたらす可能性がある。
【0043】
装置のための新しいギヤ歯プロフィールは、転がり接触によってもたらされないトルク伝達の残りを提供する複雑なギヤ歯プロフィールと組み合わされた、トラクション係数での転がり接触の組み合わせを提供する。
【0044】
本明細書に記載されるように、スパーギヤと共に使用される場合、ギヤ歯間の円筒形の転がり接触面の使用は、ギヤ接触の量を低減する(すなわち、接触比を減少させる)。円筒形の転がり接触の十分に高い割合で、1未満のギヤ接触比が生じる。この比率までの比率では、1を超える転がり接触比を達成することは困難であるか、又は不可能である。本明細書に記載されるようなはすばパターンの使用は、ギヤ間の連続するギヤ接触、並びに滑らかな回転接触及び中断されないギヤトルク伝達を提供することができる。ローラの異なる軸方向部分に螺旋方向を有するはすばは、ヘリングボーン歯を形成することができる。
【0045】
図9に示される一実施形態では、例示的な修正された複雑な形状を有するヘリカルギヤ60が、遊星の内側列に使用される。内側遊星ギヤ60は、外側遊星ギヤ62と噛み合う。内側遊星ギヤ歯64のODは必ずしも修正する必要はないが、遊星の外側列との転がり接触を提供するために、内側遊星歯の根元部66は、通常の円筒形表面70よりも大きく作られて、外側遊星歯68の先端部と円筒形の転がり接触をもたらす。外側遊星歯の根元部74は修正されていないが、従来のギヤ歯プロフィール76と比較して、外側遊星歯68のODは、短縮された先端を有するように作られ、先端は、内側遊星の根元部66との転がり接触で噛み合う円筒形表面72を有する。このようにして、ヘリカルギヤ歯プロフィールと組み合わされると、非常に大きな円筒形表面領域70と非常に大きい円筒形表面領域72との間で常に、転がり接触を維持することができ、ギヤ接触もまた常に維持することができる。このギヤ歯プロフィールの最適化された構成では、ギヤ面の複雑な形状は、両方のギヤのピッチ直径として使用される転がり接触直径を有する共役ギヤ運動を提供するように調整される。なお、このギヤ歯形状では、1つのギヤの平底根元部に対応する領域78の円筒距離は、他のギヤの平らな頂部の先端に対応する領域80の円筒距離にほぼ等しいことに留意されたい。この角度距離は、
図10の薄い歯84によって示されるように、歯の角度寸法を減少させることによって増加させることができる。
【0046】
同じ転がり/ギヤ接触原理は、外側リングギヤ(
図9及び10には示されていない)と噛み合う外側遊星に適用される。この場合、外側リングギヤ歯の根元部は円筒形であり、従来のギヤと比較して低減されたIDを有する。外側ギヤロールの円筒形根元部は、短縮された外側遊星ギヤ歯の円筒形OD上にある。
【0047】
内側固定リングギヤ歯は、リングギヤ歯の根元部が比較的修正されず、内側固定リングギヤの円筒形IDが低減されて、この円筒形表面の表面領域を増加させることによって、内側遊星ギヤと噛み合う。
【0048】
このようにして(又は他の変形によって)材料が、噛み合いセット内の第1の噛み合いギヤの根元部に加えられ、それによって、転がり接触のための円筒形表面の根元部の材料が増え、一方、材料が第2の噛み合いギヤ歯の歯の先端部から除去され、それにより第1のギヤ上の歯の根元部が、第2のギヤの歯の先端上で転がる。次いで、(
図9に82で示すように)第1のギヤの先端部と第2のギヤの根元部との間に隙間が形成されるため、ギヤのピッチ直径と同軸ではないこれらの先端部及び根元部の相対運動は、ギヤ噛み合いの摩擦を増加させない。
【0049】
多くのロボット用途などの多くの用途では、円筒形の回転面間のトラクションが方向変化中のバックラッシュの感触を低減するため、いくつかのバックラッシュは、ギヤ噛み合いの周方向に許容される。これにより、ギヤ歯のタイミング及び軸方向位置を提供する小型ギヤの歯と低摩擦でトルクを滑らかに伝達する。本装置のカム作用は、トルクの一部が、転がり接触のトラクションを介して伝達されるため、より小さいギヤ歯をトルク伝達に使用することを可能にする。
【0050】
[ローブギヤ]
正弦波形状のギヤ形状を使用する、比較的単純なギヤ歯プロフィールを有する合理的な性能が示されている。この形状は、純粋な正弦波、又はローブを形成する一連の連結された弧などの近似正弦波であってもよい。十分に多くのローブを有すると、歯の高さは、滑らかな転がり接触のために、径方向のローブの先端部及び根元部に十分な表面領域を提供しながら、ギヤ歯間の摺動運動を低減するために、十分に低い。例えば、ローブ高さは、ギヤ、例えば、内側ローラギヤ又は外側ローラギヤの半径の1/20、1/30又は1/40未満であってもよい。高いねじれ角の使用は、接線方向における一貫した径方向接触及び一貫したトルク伝達表面領域を提供する。このローブ形状が本装置の自己カム形状で使用されるとき、トラクション角度は、接線接触によってトルク伝達がどの程度提供されるか、そして歯の先端部との半転がり接触における歯根元部のトラクションを介してどの程度提供されるかを決定する。
【0051】
[トルク伝達]
装置の実施形態は、プラスチックから構築された場合でも、非常に堅固なトルク伝達を表す。装置の実施形態の回転剛性ポテンシャルは、従来の遊星ギヤ列による可能性よりもはるかに高いと考えられる。これは、内側ギヤ及び外側ギヤを介して、ほぼ直線のアレイを介して内側ギヤから外側ギヤに伝達されるためである。この直線トルク伝達は、
図11の簡略化されたFEA分析で示される。
図11により明るい陰影で示される応力線110をマークするために、矢印が追加される。
【0052】
増加した径方向予圧は、剛性を増加させることができるが、転がり摩擦も増加する。転がり摩擦の増加は常に有益ではないが、有用な場合がある。機械加工では、例えば、工具負荷又は振動の結果としてギヤボックスのバックドライブを防止することが望ましい。他の用途では、安全ブレーキが必要とされる用途のように、高い予圧を使用して、特定のバックドライブトルクよりも下でギヤボックスのバックドライブを行うことができる。これにより、例えば、電流と係合解除されなければならないブレーキのコスト及び複雑さ及び電力消費を低減する。
【0053】
[入力リングを有する実施形態]
一実施例では、ギヤボックスの自己増力部分は、17個の均等に離間配置された内側遊星と噛み合う固定内側太陽ギヤメッシュからなり、これは次に17個の均等に離間配置された外側遊星と噛み合う。次いで、外側遊星は、外側リングと噛み合う。この段の入力は、遊星の軌道であり、出力は外側リングの運動である。入力段は、遊星ギヤを使用することによって、自己増力段で遊星を駆動する。この段では、入力としての太陽、出力としての遊星回転、及びアイドラ外側リングを使用する。45°ヘリカルプロフィールは、各ギヤのヘリングボーン構成で使用される。
【0054】
本実施形態で使用されるギヤ歯の直径及び数を表1に示す。
【0056】
装置の実施形態のトラクション及びギヤ構成は、国際公開第2013173928(A1)号に記載されている。本開示は、ギヤ入力及びギヤ歯プロフィールを使用する構成と、遊星を均等に離間して(円周方向及び軸方向に)維持する効果的な方法、非対称入力を介して部品数を最小化する方法(単数及び複数)、並びに、内側又は外側遊星アレイへの非対称太陽リング入力を介して減速比を増大させる簡略化された方法を含む利点を提供する構成とを含む。
【0057】
図12及び
図13は、ギヤボックス40の実施形態のそれぞれ正面等角図及び背面等角図を示す。図から分かるように、内側ギヤ42上のヘリングボーン形状ギヤ歯46と、外側ギヤ上の噛み合いヘリングボーン形状ギヤ歯48を含む内側ギヤ42及び外側ギヤ44がある。この実施形態では、内側ギヤ42のみがギヤボックスの後方に延在する。外側レース50は、遊星ギヤを駆動し、内側ギヤ42は、異なるサイズの内側レース52及び54に接触して、1つの内側レース52を他方の内側レース54に対して駆動する。
【0058】
[軸方向外向き太陽ギヤ入力]
遊星とリングギヤとの間のギヤ接触の使用は、それらを均等に円周方向に離間させる。ヘリングボーンギヤ又はローブ歯の使用は、軸方向におけるギヤの移動を防止する。これにより、ギヤは、径方向及び軸方向(スラスト軸受)方向の両方において、内側固定ギヤと外側出力ギヤとの相対位置の軸受として使用することができる。これは、複雑性及びコストを低減する利点である。
【0059】
ヘリングボーンギヤ又はローブのこの組み合わせの別の利点は、ギヤボックスの径方向軸を中心にねじれることなく、ギヤボックスの一方の側のみから内側又は外側遊星を駆動する能力を改善することである。(この部分組み立てスケッチに示されるように)外側遊星92に、あるいはローラが固定される同じ又は異なるピッチ直径の内側ローラ94に固定される
図14のギヤ90を使用することにより、太陽ギヤ96の入力を使用することによって減速(又は逆の場合速度増加)比を増加させることができる。この片面駆動はまた、螺旋状に整列された2つ以上のアレイの代わりに単一のギヤアレイを使用することを可能にするため、組み立てにも有益である。これらのヘリカルギヤは、組み立て中に一緒に螺合されなければならず、そのため、軸方向に1組の遊星のみを有することにより、内側固定リングギヤ及び/又は外側出力ギヤは、2つの部品で製造され、両方の軸端部から一緒に螺合されることを可能にする。
【0060】
装置の非限定的な例示的実施形態の組み立て方法の例では、以下は、本明細書に記載される原理に従って幾何学的形状が作成される場合に、装置を組み立てることができる1つの方法について記載する。
【0061】
[組み立て]
図15は
図14の装置の分解図であり
図16は
図14の切取り図である。
図14に示される部品はまた、
図15に存在する。加えて、外側遊星を一時的に整列させるためのピン98と、ピンを受容するための孔102を有する外側出力ギヤ100と、入力太陽ギヤ96と結合する入力太陽リング104と、固定太陽ギヤ108と結合する固定太陽リング106とがある。
【0062】
組み立ての順序は以下の通りであり、
図16のステップ番号を含むボックスによって示される。ステップ1において、外側遊星92は外側出力ギヤ100に挿入される。それらは装着される第1のコンポーネントであるため、径方向の運動を介してそれらを配置する余地があり、ヘリングボーン噛み合いにも関わらず、外側出力ギヤ及び外側遊星が1つの部品として作製され得る。ステップ1Aにおいて、ピン98は、外側遊星92の孔及び外側出力ギヤ100の孔102を通って挿入される。これらのピンは一時的な位置合わせのためのものであり、必要がなくなった場合、除去されてもよい。ステップ2では、入力太陽リング104が挿入され、外側遊星ギヤ92に固定されたギヤ90の第1の半体と噛み合いする。ステップ3では、内側遊星94が設置される。これらはまた、径方向に挿入することができる。ステップ4では、固定太陽リング106が設置され、内側遊星ギヤ94の一部と噛み合いする。ステップ5では、固定太陽ギヤ108が挿入され、内側遊星ギヤ94の他の部分と噛み合いする。固定太陽リング106と固定太陽ギヤ108は、一緒に固定されてもよい。ステップ6では、入力太陽ギヤ96が挿入され、入力太陽リング104に固定されてもよい。
【0063】
この非限定的な実証例示的な実施形態を操作するために、太陽を回転させ、内側リングを保持することにより、外側リングを約7:1の低減された比率でスピンさせる。
【0064】
本明細書に示されるように、外側遊星が太陽ギヤによって駆動される場合、本明細書に示されるように、外側ピニオン直径より大きいギヤによって入力される場合、固定リングギヤのODよりも大きい、より大きい太陽入力リングギヤの最小寸法を有することが好ましい。このようにして、上述のように、内側太陽ギヤリング部材(2)が内側面外方からより大きい太陽入力ピニオンギヤに螺合された後、内側固定リング(4、5)の2つの半体が、ピニオンの内側列のいずれかの側から一緒に「螺合」され得るため、ギヤボックスの組み立てが可能になる。更に、内側固定リングのODが太陽入力リングの半体よりも小さい場合には、太陽入力リングギヤアセンブリは、軸受を必要としないように、ヘリングボーンプロフィールとすることができる。太陽入力リングの内側半体は、黄色の内側ピニオンが挿入される前に、アセンブリの内側から太陽ギヤ入力ピニオンギヤと係合するように「螺合される」ことができ、次いで、ピニオンの内側(黄色)列が挿入され、内側固定ギヤヘリングボーンの2つの半体が両方の軸端部から組み立てられた後に、太陽ギヤヘリングボーンの他の半体が、外側から螺合されて太陽ギヤの第1の半体にボルト締めされることができる。
【0065】
[ギヤの組み合わせ]
この装置の多くの潜在的な利点が存在するが、この時点では、完全なギヤ噛み合いを提供する既知のギヤの組み合わせが存在しないことが本発明者らによって示されている。
【0066】
これまでに、遊星及びギヤリングの遊星数及びギヤの歯数の100万以上の組み合わせが試験され、完全な解決策は可能ではない。これにより、可能性の不完全性を低減するように可能性を狭める必要がある。
【0067】
使用可能な組み合わせを選択するための制約は、以下を含む。
【0068】
2:1より大きい内側固定リングと外側出力リングとの間の減速比を提供するのに十分大きい太陽と外側リングの直径差(遊星の2つの軌道は、出力リングの1回以上の回転をもたらす)。最小5個から最大30個の範囲の遊星数であるが、遊星のこの範囲の超える追加の解決策が存在する。
【0069】
0.7mmより大きいギヤ歯ピッチ(これは、射出成形を含む一般的なギヤ製造方法による製造を可能にするためである)。
【0070】
約89.25mmの外側リングODは一定に設定し、ギヤ直径を必要に応じてより大きい又はより小さい直径に拡大縮小することができることが分かっている。用途により。この直径は、ロボット工学市場に有用なサイズのものとして選択された。
【0071】
不完全な解決策のみが見出されてきた。ギヤの組み合わせにおける欠点は、ギヤ歯の不完全な位置合わせ、又は噛み合いギヤのモジュールにおける不整合のいずれかとして示される。典型的には、遊星の内側列は内側固定ギヤとよく噛み合い、遊星の外側列は外側出力リングギヤとよく噛み合うが、内側遊星歯は、外側遊星列ギヤに位置合わせされない。一部の位置ずれは、材料のコンプライアンスに起因して許容され得るが、位置ずれが大きいほどギヤボックスのトルク伝達能力が低くなり、ギヤ間の干渉による摩擦が大きくなる。
【0072】
より多く、より小さい歯の使用は、潜在的な選択肢の数を増加させるが、小さいギヤ歯は製造及び組み立てをより困難にし、小さい歯はまた、場合によってはトルク伝達を低減し得る。
【0073】
より少ない遊星の使用は、遊星の製造性を増加させるが、より多くの遊星は、負荷が遊星間で共有されると仮定して、より大きな最大トルクを可能にし、追加の解決策を提供する。
【0074】
これらの考慮事項の全てが考慮されると、使用可能な組み合わせの数は、驚くほど少ない。不正確指標を使用して、さまざまな選択肢を、特定の選択肢に対する遊星間噛み合いのずれを示す指標と比較した。
【0075】
潜在的に使用可能な構成は、0.0004未満のRMS誤差係数を有する解決策に限定されており、以下の表に示される。示されるものよりも高い誤差係数は、特定の用途に適している。加えて、図示された構成は、歯の数を一定に保ちながら幾何学的に拡大縮小されてもよい。
【0076】
以下の表2に示される誤差係数は、角度誤差及び直径誤差の両方を考慮している。所与の比は、入力が入力太陽の回転であり、内側リングが静止状態に保持され、外側リングが出力であると仮定する。
【0078】
少なくとも1mmのギヤ/ローブ歯を選択し(3D印刷用)、誤差率を最小化して、アルゴリズムによる発見分析は、数百万個の可能性を反復的に調査した後、数百の正の選択肢のみを生成した。
【0080】
ギヤの組み合わせに含まれるのは、同位相及びずれた位相の両方のギヤである。位相がずれたギヤを含むと、同位相解決策のみと比較して解決策の数が著しく増加する。加えて、誤差係数は、位相ずれ解決策では低くなる傾向がある。
【0081】
[試験台]
出力トルク能力を試験するために、ギヤボックスの固定及び入力コンポーネントに固定されるように、別個のコンポーネントが設計され、3D印刷された。
図17は、レバーアーム上の質量をギヤボックスに接続し、質量を持ち上げるために必要なトルクを測定するために使用されるトルク試験セットアップを示す。
図17に示すように、1フィートのレバーアーム112を出力外側リングに接続して、ギヤボックスの出力をロードし、出力トルクは、取付点114に取り付けられた質量(図示せず)をアームの長さで乗算して計算した。装置を介するトルク伝達のために、レンチ(図示せず)をアームの入力116に取り付けた。
【0082】
[アイドラリング]
図18に示すように、大ギヤ90上の大径外側遊星ギヤ歯の周りのアイドラリング118を挿入して、ギヤが通電される際に遊星ギヤと入力太陽ギヤ歯との間の分離を防止することができる。
【0083】
[対称構成]
遊星の曲げを防止するために、自己増力ギヤは、
図19及び20に示されるように、入力の両側に配置され得る。この構成により、遊星がギヤボックスの中心軸に平行に留まることを確実にする。外側入力リング120は、固定リング122によって両側に取り囲まれ、内側遊星ギヤ124と噛み合い、内側遊星ギヤ124を駆動する。内側遊星ギヤ124及び外側遊星ギヤ126は、2列ローラシステムを形成し、固定リング122に対して出力太陽リング128を駆動する。
【0084】
[主ローラ直径での入力リングの噛み合い]
図21は、片面入力自己増力ギヤボックスの非限定的な例示的実施形態の切取り等角図を示す。ここでは固定リングである内側リング130は、ギヤ付き内側ローラ132のアレイと接触している。ここで出力リングである外側リング134はまた、ギヤ付き外側ローラ136のアレイとギヤ接触しており、ギヤ付き外側ローラ136のそれぞれは、2つのギヤ付き内側ローラ132と接触している。入力トルクは、ギヤ入力リング138を使用して供給される。図示の実施形態では、ギヤ入力リング138は、外側ローラとギヤ接触する径方向外側に面する部分を有する。この実施形態では、外側ローラ136は、内側ローラ132と噛み合う第1の部分140と、入力リング138と噛み合う第2の部分142と、同じ直径を有する。第1の部分140及び第2の部分142の両方は、外側リング134と噛み合う。ここで、第1及び第2の部分は、ローラ136のそれぞれの端部を含むが、
図20に示されるような対称配置を使用することもできる。外側ローラと外側リングギヤとの係合は、それらの長さに沿った全ての方法により、ローラが整列した状態を維持するのに役立つ。示される実施形態では、単一のギヤ噛み合いは、第1の部分140及び第2の部分142の両方を覆うが、これらの部分はまた、別個のギヤ噛み合いを有してもよい。図示される実施形態は、直線状の切断ギヤを有するが、ヘリカルギヤも使用することができ、また上述のようにヘリングボーンギヤも使用することができる。
【0085】
入力リング138にトルクが加えられると、その個々の軸の周りのローラのそれぞれへの回転トルク伝達に加えて、外側ローラ136に伝達されるねじれのねじれ負荷が存在する。2列のローラを介する内側リング130と外側リング134との間の自己増力(又はカム)効果の結果として、2列のローラ上のギヤ並びに内側リング130及び外側リング134は、装置のトルク出力が増加するにつれて比例的に係合される。特定の長さの外側ギヤ付きローラ及び特定の減速比では、ギヤを互いに噛み合わせる自己増力効果は、入力太陽ギヤ138からの入力のねじれ効果よりも外側ローラに対してより大きな矯正効果を有する。最も長いローラの長さは、軸方向における装置の全幅に対応してもよい。ギヤを噛み合い解除してギヤのねじれをもたらし得るギヤの分離力ではなく、ギヤを噛み合わせるカム効果を生じる、内側リング130から外側リング134に伝達される出力トルクの結果により、入力ギヤ138にトルクが加えられるときに、外側ローラ136と外側リング134との噛み合いが外側ローラ136を矯正することを確実にするために、この幅と減速比との組み合わせは当業者によって計算されることができる。ギヤボックスのギヤ比のため、入力ギヤ138上の入力トルクは、遊星136及び132を介して伝達されるトルクよりも著しく低くなる。7:1の比率では、入力トルクは出力トルクのおよそ1/7である。その結果、外側遊星136の主な力は、内側リング130から外側リング134へのトルク伝達による負荷である。カム効果からの径方向負荷コンポーネントは、外側遊星136の接触ギヤ歯が外側リング134内の対応するギヤ歯に径方向に押し込まれることを確実にする。この径方向負荷は、入力ギヤ138からの入力トルクに起因するねじれ効果に対抗する矯正効果をもたらす。この効果は、ギヤ歯内のより大きい圧力角、又はギヤにおける径方向負荷の増加によるより大きいカム角度でより強くなる。
【0086】
ピンオン長さ対ピニオン直径のアスペクト比が大きいほど、太陽リング入力からのねじれ力の結果として、ねじれてしまう可能性が低い。この関係は、2つの理由から存在する。一般的に言えば、所与のギヤボックスOD及び幅に対するアスペクト比が大きいほど、ピニオン径が小さくなり、したがって減速比が高くなる。一般的な傾向として、減速比が大きくなると、太陽リング入力で低いトルクを必要とする増大した低減率により、太陽の入力によって生成される低減されたねじれ力と比較して、ピンオンとリングとの間により深い噛み合いを生成するために使用することができるピンオン上の径方向力が大きくなり、したがって、位置合わせ効果が大きくなる。このため、本発明者は、ギヤボックスが太陽入力から出力リングにトルクを伝達しているときに、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1より大きいピニオン長さ対直径比が、ピンオンを自己整合させるのに好適であると考える。
【0087】
代替的な構成では、外側リング134を固定することができ、内側リング130を出力として使用することができる。この構成は、ギヤ比が1だけ低減され、出力方向が逆転されるが同様に機能する。また、外側リング及び内側リングは両方とも移動可能であり得、ギヤボックスは、これらの間の差を出力として、内側リング及び外側リングの移動に依存するギヤ比で提供する。
【0088】
別の可能性は、自己増力ギヤボックスをツール出力装置として使用することである。具体的には、モータが太陽ギヤ入力に取り付けられ、内側リングが、反時計回りに回転しなければならないシャフトに取り付けられた外側出力リング内で時計回りに回転するシャフトに取り付けられている場合、逆動差動接合部が形成され得る。
【0089】
入力リングが、例えば、外側ローラ及び入力リングとそれぞれ噛み合う第1及び第2の部分を有する内側ローラ132の外側と噛み合い、両方の部分が内側リング130と噛み合う場合、同じ原理が適用されることが理解される。
【0090】
この設計は、直線的な切断ギヤ歯、ヘリカルギヤ歯、ローブ、又は他のプロフィールを使用することができる。
【0091】
上述したもののような直線的な切断のギヤ歯設計は、ヘリングボーン設計と比較したときに著しく少ない部品数と、一方の側からギヤをアセンブリに挿入することを可能にする設計とを有することが有利であり得る。
【0092】
直線的な切断のギヤ歯設計は、ヘリングボーン設計のような遊星上に軸方向拘束を有しておらず、したがって、遊星を軸方向に拘束するための何らかの機構を必要とする。この設計により、いずれかの軸端部にフェンス(
図21には示されていない)を使用することにより、遊星がギヤボックスから軸方向に浮遊するのを防止する。遊星の軸端部を覆い、潤滑を加えることによって、摩擦による損失が最小限に抑えられる。
【0093】
[負荷共有]
典型的な遊星ギヤボックスでは、3を超える多くの遊星が、非常に正確な公差なしでは、均等に負荷を共有しないことが予想される。自己増力ギヤボックスは、3つを超える遊星対を有し、追加の遊星の強度の使用を最良にするために負荷共有が存在することを確実にするための何らかの機構を有さなければならない。このギヤボックスが、このギヤボックスの異常な負荷分布を利用する本明細書に記載されているいくつかの非限定的な機構を利用することができるいくつかの機構がある。
【0094】
自己増力ギヤボックスにおける負荷共有の1つの非限定的な機構は、遊星、内側リング、外側リング、又はこれらの任意の組み合わせの径方向可撓性である。上記の遊星のカム効果により、外側リング、遊星、及び内側リングの間で伝達される、ギヤボックス内に強力な径方向負荷コンポーネントが存在する。これらのギヤのいずれかが径方向の可撓性を有する場合、ギヤは、カム効果の径方向負荷下で圧縮することができる。この可撓性のために、多数の遊星の公差帯域を受け入れることができ、それにより、遊星が負荷を共有することが可能となる。この径方向の可撓性は、これらに限定されるものではないが、薄い壁、より低い材料剛性、又は歯間の径方向スロットなどのギヤ歯根元延長部が挙げられるが、これらに限定されなくてもよい。
【0095】
負荷共有機構に関わらず、径方向(カム)負荷が高くなるほど、より大きな負荷共有効果に起因して遊星負荷はより類似する。より高い径方向負荷は、ギヤ歯形状のより高い圧力角、並びに遊星接点のより高いカム角度を伴い存在する。
【0096】
別の負荷共有機構は、ギヤボックスの2レベルの遊星構造から生じる。遊星が互いにカム取り付けされると、内側遊星と外側遊星との間の負荷がかかっていない遊星−遊星噛み合いは、負荷がかかった遊星−遊星噛み合いを安定化させるように作用する。その結果、所定の位置に「ロック」するために十分な径方向負荷を発生させる前に、遊星位置に少量のシフトがあると考えられる。この効果は、遊星間の負荷共有を増加させることが期待され、より低い圧力角でより強い効果であることが予想される。
【0097】
負荷下の自己増力されたギヤボックス上の応力分布は、これらのコンポーネントに径方向負荷を誘発する。この径方向負荷は、これらのコンポーネントを更に変形させ、自己増力されたコンポーネントをより変形しやすくすることによって、それらを負荷共有させるために使用することができる。これは、自己増力されたコンポーネント(すなわち、外側リング、遊星、及び内側リング)の全体的な剛性を低減することによって達成することができる。この種類の剛性変化を達成するために、3つの異なる方法を実施することができる(
図22A〜22C)。第1の方法は、材料剛性の変化を使用して、そのようなコンポーネントの全体的な剛性を低減し、これは、コンポーネントが同じ径方向負荷下でより変形し、ギヤ歯が受ける同様の接線負荷下で変形しやすくなることを意味する。径方向及び接線方向の負荷によって生じる変形は、より効率的な負荷共有及び全体的なより剛性のギヤボックスに向けて有利であろう。十分に低い剛性の程度は、ギヤ公差に依存する。22Aは、低剛性材料で形成され得る公称厚さギヤ150の例示的な部分を示す。第2の方法は、幾何学的アプローチ(例えば薄い壁)を使用して、これらのコンポーネントの全体的な剛性を変化させる。これにより、コンポーネントの剛性が低くなり、特定の径方向負荷下でより変形しやすくなる。
図22Bは、薄壁ギヤ152の例示的な部分を示す。第3の方法は、壁厚が公称サイズに留まる更に別の幾何学的アプローチを使用するが、歯の幾何学的形状は、根元部に径方向スロットを有するように修正される。この方法では、径方向及び接線方向の負荷の両方はギヤ可撓性に影響を及ぼし、より効果的な負荷共有を可能にする。
図22Cは、根元部に径方向スロット156を有する公称厚さギヤ154の例示的な部分を示す。
【0098】
開示される設計は、入力が入力リングによって供給されるため、遊星キャリア及び軸受の必要性を排除することができ、周方向の位置はギヤによって与えられ、軸方向位置は、例えば、フェンス、先細ローラ、又は異なる角度のギヤを有する部分によって供給されてもよい。
【0099】
遊星キャリア及び軸受の必要性を排除することにより、これらの位置決め要素の公差の積み重ねが排除される。これにより、リングギヤを有する3つを超える遊星ギヤの噛み合いがはるかに一貫していることを可能にする。
【0100】
排除される公差積み重ね要素は、遊星キャリアピンの位置を含む。遊星キャリアの同心性、軸受の流出、及びピニオンのそれぞれの軸受孔とギヤのピッチ円との偏心。
【0101】
これらの公差積み重ね要因を排除することに加えて、径方向の可撓性を、いくつかの異なる方法で設計に導入することができる。径方向の可撓性を導入することは、ピニオンのサイズの変化に起因するピニオンからピニオンへの負荷変動を低減する効果を有する。
【0102】
また、遊星キャリアを排除する結果として、例えば、遊星は中空であり、したがって、径方向に可撓性であり得る。
【0103】
[2段式ギヤボックス]
上述のギヤボックスは、
図23〜25に示されるように、2段式ギヤボックスで作製することができる。
図23は、例示的な2段式ギヤボックス160の等角切取り図である。
図23に示すように、外側ハウジング162は、両方の段において共通の外側固定ギヤとして作用する。入力リング164は、第1の段の外側ギヤ168と噛み合う外面166を有する。第1の段の内側ギヤ170は第1の段内側リング172と噛み合い、外側ハウジング162に対して内側リング172を駆動する。この第1の段の内側リングは、第2の段の外側ギヤ178と噛み合う外面176を有する第2の段の入力ギヤ174に接続され、且つそれと共に1つの部品に形成されてもよい。第2の段の内側ギヤ180は、内側出力ギヤ182と噛み合うことにより、内側出力ギヤ182を外側ハウジング162に対して駆動し、差動運動は、2段式ギヤボックスの出力を提供する。
【0104】
図24は、
図23に示す2段式ギヤボックスを使用するアクチュエータを示す。
図23に示すコンポーネントに加えて、
図24は、入力リング164に接続されたフランジ184及び外側ハウジング162に接続された内側ハウジングコンポーネント163を示す。図示されていない電動モータロータ及びステータは、フランジ184及び内側ハウジング163に接続されて、フランジ184を内側ハウジングコンポーネント163に対して駆動して、2段式ギヤボックスを駆動することができる。また、
図24には、内側出力ギヤ182に接続された出力キャップ186、及び外側ハウジング162に接続された固定外側キャップ188が示される。
図25は、
図24の実施形態の詳細な断面図を示す。
【0105】
第1の段の外側リングギヤが、第2の段の他の外側リングギヤと同じピッチ直径及び同じ歯数であり、且つそれと1つの部品である場合、第1の段からの内側リングギヤが第2の段の入力ギヤに接続され、第2の段の内側リングギヤが第2の段の出力となる。
【0106】
内側リングギヤが両方の段によって共有される場合、第1の段の外側リングギヤが第2の段の入力ギヤに連結され、第2の段の外側リングギヤは、装置の出力となる。このようにして、2つ以上の段を接続することができる。
【0107】
[先細の実施形態]
片面自己増力ギヤボックスの別の例示的な実施形態は、
図26〜29に示す先細設計である。この設計では、より基本的な片面ギヤボックス設計の円筒形ギヤ歯は、先細ギヤで置き換えられ、ギヤ接触は先に述べたものと同じままであるが先細になっている。
【0108】
ギヤを先細にすることにより、遊星は軸方向に拘束され、
図26に示す位置でシムを調整することによって、バックラッシュを低減又は除去することができる。ギヤボックスは、そうでない場合、非先細バージョンと同じように機能する。
【0109】
先細ギヤプロフィールは、現在、ホビング又はスカイビングなどの従来のギヤ製造方法によって製造するのが困難である。したがって、射出成形、表面ミリング、粉末冶金、又はギヤ転造などが挙げられるが、これらに限定されない別の方法が使用される可能性がある。また、これらの先細の製造制限により、部品数の潜在的な増加もある。
【0110】
先細又は非先細の歯プロフィールのいずれかは、直線状、又はヘリカルギヤ又はローブを使用することができる。製造方法により、あるいは強度又はノイズを最適化するために、先細ギヤ上でねじれ角を使用することが有益であり得る。
【0111】
図26は、先細ヘリカル自己増力ギヤボックスの概略断面図を示し、製造及び組み立ての考慮によりギヤコンポーネントが分割される方法を示し、シムが挿入され得る。通常、内側ギヤと外側ギヤとが同じ周方向位置で内側レース及び外側レースと噛み合うことはないため、これは真の断面図ではないことに留意されたい。この実施形態における外側レース200は、内側ギヤ208に対応する軸方向位置で外側ギヤ206と接触する第1のコンポーネント202と、入力ギヤ210に対応する軸方向位置において外側ギヤ206と接触する第2のコンポーネント204とに分割される。内側レース212はまた、コンポーネント214及び216に分割されて示されている。外側シム218は、外側レース200のコンポーネント202と204との間に示され、内側シム220は、内側レースのコンポーネント214と216との間に示される。
【0112】
より長い(外側)ギヤはまた、射出成形が製造方法として選択される場合、射出成形を使用して製造を容易にするために、それらのネック部222において、スプリットを有してもよい。
【0113】
図27は、
図26に概略的に示されるギヤボックスの等角分解図を示し、追加の変更があり、外側レースの第1のコンポーネント202が、ここでは2つの更なるコンポーネント202A及び202Bに分割されて示されている。
【0114】
図28は
図27のギヤボックスの側面切取り図であり、外側ローラが除去されている。
図29は、
図27のギヤボックスの等角図である。
【0115】
先細ギヤは、直線状又は螺旋状で使用されてもよく、ヘリングボーン、ギヤを含む。先細は、いくつかの軸方向位置を提供することに加えて、シムによるバックラッシュ調整を可能にする。ヘリングボーン歯は、ピニオン及びリングギヤのより正確な正軸方向位置決めを可能にする。一緒に使用すると、全ての利点が実現されるが、一部の用途は、1つ又は他の用途から利益を得る。
【0116】
例えば、
図21に示されるように、歯を係合させ、したがってギヤ軸のねじれを排除する自己増力効果により、ヘリングボーン又は先細歯なしで、片面(非対称)入力が可能である。
【0117】
「特許請求の範囲」では、用語「含む、備える(comprising)」は、その包含的意味で使用されており、他の要素の存在を除外するものではない。請求特徴の前の不定冠詞「a」及び「an」は、複数の特徴の存在を除外するものではない。本明細書に記載されている個々の特徴のそれぞれは、1つ以上の実施形態で使用されてもよく、本明細書に記載されているという理由だけで、「特許請求の範囲」に定義される全ての実施形態に必須であると解釈されるべきではない。