特許第6972369号(P6972369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許6972369冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置
<>
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000002
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000003
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000004
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000005
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000006
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000007
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000008
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000009
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000010
  • 特許6972369-冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972369
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   F25B1/00 396B
   F25B1/00 396A
   F25B1/00 331E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-547863(P2020-547863)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2018036525
(87)【国際公開番号】WO2020066000
(87)【国際公開日】20200402
【審査請求日】2020年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】有井 悠介
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−182951(JP,A)
【文献】 特開平8−35725(JP,A)
【文献】 特開2018−21730(JP,A)
【文献】 特開2013−170797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置の室外機であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から出力される冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記室外機に接続される室内機の蒸発器に対して設定される蒸発温度に基づいて、前記蒸発器を流れる冷媒の圧力を目標圧力に制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧力と、前記圧力における冷媒の飽和液温度と飽和ガス温度との平均を示す露沸平均温度との関係を用いて、前記露沸平均温度が前記蒸発温度であるときの前記圧力を前記目標圧力として設定し、さらに、
前記凝縮器の出側に設けられ、前記凝縮器から出力される冷媒を冷却するように構成された過冷却器を備え、
前記制御装置は、冷媒が共沸冷媒であるか非共沸冷媒であるかに拘わらず、前記露沸平均温度が前記蒸発温度であるときの前記圧力を前記目標圧力として設定する、冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項2】
前記過冷却器は、
前記過冷却器の出側の冷媒の一部を、前記室内機を通過することなく前記圧縮機へ戻すように構成されたバイパス回路と、
前記バイパス回路に設けられる膨張弁と、
前記膨張弁から出力される冷媒と前記凝縮器から出力される冷媒との間で熱交換を行なうように構成された内部熱交換器とを含む、請求項1に記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の室外機と、
前記室外機に接続される室内機とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置を備える空気調和装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記冷凍サイクル装置において使用可能な冷媒毎に予め準備される、前記圧力と前記圧力における前記露沸平均温度との関係を示すマップを記憶する記憶部を含み、
前記制御装置は、冷媒が共沸冷媒であるか非共沸冷媒であるかに拘わらず、前記冷凍サイクル装置において使用されている冷媒の前記マップを用いて、前記露沸平均温度が前記蒸発温度であるときの前記圧力を前記目標圧力として設定する、請求項1又は請求項2に記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化への影響に配慮して、低GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)の非共沸冷媒を用いる冷凍サイクル装置が注目されている。たとえば、特開平8−75280号公報には、非共沸混合冷媒を用いた冷凍空調装置が開示されている。この冷凍空調装置では、蒸発器の蒸発圧力が目標値に一致するように、室外機のファンの回転数が制御される。蒸発圧力の目標値は、蒸発温度が0℃となる圧力として設定される。
【0003】
非共沸混合冷媒は、圧力一定の下で、冷媒の乾き度に応じて飽和温度(蒸発温度)が勾配を有する。そこで、この冷凍空調装置では、非共沸混合冷媒の蒸発温度を、飽和ガス温度と飽和液温度との平均値として定義し、この蒸発温度が0℃となる圧力目標値に蒸発圧力が制御される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−75280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷凍空調装置では、飽和ガス温度と飽和液温度との平均値で蒸発温度を代表しているが、飽和液温度と蒸発器入側の冷媒温度とが乖離すると、上記の平均値と実際の蒸発温度との乖離が大きくなり、蒸発温度の制御の精度が低下する。この場合に、たとえば、蒸発器入側の冷媒温度を温度センサで検出し、当該温度センサの検出値を飽和液温度に代えて用いることも考えられるが、そのような温度センサを設けることは、装置のコスト増を招く。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、冷凍サイクル装置において非共沸冷媒が用いられる場合に、蒸発温度の制御の精度向上を低コストで実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の室外機は、冷凍サイクル装置の室外機であって、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から出力される冷媒を凝縮する凝縮器と、制御装置と、過冷却器とを備える。制御装置は、室外機に接続される室内機の蒸発器に対して設定される蒸発温度に基づいて、蒸発器を流れる冷媒の圧力を目標圧力に制御する。制御装置は、冷媒の圧力と、その圧力における冷媒の飽和液温度と飽和ガス温度との平均を示す露沸平均温度との関係を用いて、露沸平均温度が設定蒸発温度であるときの圧力を目標圧力として設定する。過冷却器は、凝縮器の出側に設けられ、凝縮器から出力される冷媒を冷却するように構成される。
【0008】
この室外機においては、露沸平均温度が設定蒸発温度であるときの圧力が目標圧力として設定され、蒸発器を流れる冷媒の圧力がその目標圧力に制御される。これにより、圧力一定の下で冷媒の乾き度に応じて蒸発温度が勾配を有する非共沸冷媒が用いられる場合においても、蒸発温度の制御を行なうことができる。
【0009】
ここで、蒸発器入側の冷媒は、通常、気液二相状態となっており、蒸発器入側の冷媒は、飽和液温度よりも高い。そして、蒸発器入側の冷媒温度と飽和液温度とが乖離すると、上述のように蒸発温度の制御の精度が低下する。そこで、この室外機では、凝縮器の出側に過冷却器が設けられる。過冷却器を設けることによって、蒸発器入側の冷媒温度を低下させて飽和液温度に近づけることができる。これにより、蒸発器入側の冷媒温度と飽和液温度との乖離を抑制し、蒸発温度の制御の精度向上を図ることができる。また、この室外機によれば、蒸発器入側の冷媒温度を検出する温度センサを設ける必要がないので、装置のコストも抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の室外機、冷凍サイクル装置、及び空気調和装置によれば、非共沸冷媒が用いられる場合に、蒸発温度の制御の精度向上を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に従う室外機が用いられる冷凍装置の全体構成図である。
図2】共沸冷媒の性質を説明するp−h線図である。
図3】非共沸冷媒の性質を説明するp−h線図である。
図4】本開示の冷凍装置において、非共沸冷媒が用いられる場合の冷媒の状態を示すp−h線図である。
図5図1に示す制御装置により実行される蒸発温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】圧力−露沸平均温度マップの一例を示す図である。
図7】変形例における蒸発温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に従う室外機が用いられる冷凍装置の全体構成図である。
図9】実施の形態1に従う室外機が用いられる冷凍サイクルを備える空気調和装置の全体構成図である。
図10】実施の形態2に従う室外機が用いられる冷凍サイクルを備える空気調和装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に従う室外機が用いられる冷凍装置の全体構成図である。図1を参照して、冷凍装置1は、室外機2と、室内機3とを備える。室外機2は、圧縮機10と、凝縮器20と、ファン22と、過冷却器40と、ファン42と、配管80,81,83,85と、圧力センサ90と、制御装置100とを含む。室内機3は、膨張弁50と、蒸発器60と、ファン62と、配管84とを含む。室内機3は、配管83,85を通じて室外機2に接続されている。
【0014】
配管80は、圧縮機10の吐出ポートと凝縮器20とを接続する。配管81は、凝縮器20と過冷却器40とを接続する。配管83は、過冷却器40と膨張弁50とを接続する。配管84は、膨張弁50と蒸発器60とを接続する。配管85は、蒸発器60と圧縮機10の吸入ポートとを接続する。
【0015】
圧縮機10は、配管85から吸入される冷媒を圧縮して配管80へ出力する。圧縮機10は、制御装置100からの制御信号に従って回転数を調整するように構成される。圧縮機10の回転数を調整することで冷媒の循環量が調整され、冷凍装置1の能力を調整することができる。なお、後述のように、この実施の形態1では、圧縮機10の回転数を調整することで、冷凍装置1の低圧側圧力(膨張弁50の出側から圧縮機10の入側の冷媒圧力)が制御される。圧縮機10には種々のタイプのものを採用可能であり、たとえば、スクロールタイプ、ロータリータイプ、スクリュータイプ等のものを採用し得る。
【0016】
凝縮器20は、圧縮機10から配管80に出力された冷媒を凝縮して配管81へ出力する。凝縮器20は、圧縮機10から出力された高温高圧のガス冷媒が外気と熱交換(放熱)を行なうように構成される。この熱交換により、冷媒は凝縮されて液相に変化する。ファン22は、凝縮器20において冷媒が熱交換を行なう外気を凝縮器20に供給する。ファン22の回転数を調整することにより、圧縮機10出側の冷媒圧力(高圧側圧力)を調整することができる。
【0017】
過冷却器40は、凝縮器20から配管81に出力された液冷媒がさらに外気と熱交換(放熱)を行なうように構成される。冷媒は、過冷却器40を通過することによって、過冷却度がさらに高められた液冷媒となる。ファン42は、過冷却器40において冷媒が熱交換を行なう外気を過冷却器40に供給する。過冷却器40が設けられることにより、室内機3に供給される冷媒の温度を低下させ、蒸発器60の入側の冷媒温度を飽和液温度に近づけることができる。
【0018】
なお、過冷却器40は、上記のようなファン42を用いた空冷のものに限定されず、水冷のものであってもよいし、別の冷凍サイクルによって冷却された冷媒を用いるものであってもよい。なお、凝縮器20と過冷却器40との間に、凝縮器20から出力された液冷媒を一時的に貯留する液溜器を設けてもよい。
【0019】
膨張弁50は、過冷却器40から配管83へ出力された冷媒を減圧して配管84へ出力する。膨張弁50の開度を閉方向に変化させると、膨張弁50出側の冷媒圧力は低下し、冷媒の乾き度は上昇する。膨張弁50の開度を開方向に変化させると、膨張弁50出側の冷媒圧力は上昇し、冷媒の乾き度は低下する。
【0020】
蒸発器60は、膨張弁50から配管84へ出力された冷媒を蒸発させて配管85へ出力する。蒸発器60は、膨張弁50により減圧された冷媒が室内機3内の空気と熱交換(吸熱)を行なうように構成される。冷媒は、蒸発器60を通過することにより蒸発して過熱蒸気となる。ファン62は、蒸発器60において冷媒が熱交換を行なう外気を蒸発器60に供給する。圧力センサ90は、圧縮機10の吸入側の冷媒圧力(低圧側圧力)LPを検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。
【0021】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)102と、メモリ104(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))と、各種信号を入出力するための入出力バッファ(図示せず)等を含んで構成される。CPU102は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置100の処理手順が記されたプログラムである。制御装置100は、これらのプログラムに従って、室外機2における各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0022】
<共沸冷媒と非共沸冷媒の説明>
本開示における冷凍装置1は、共沸冷媒と非共沸冷媒とのいずれを用いても動作するように構成される。共沸冷媒は、組成が単一の冷媒(単一冷媒)であってもよいし、複数の冷媒を混合した冷媒(混合冷媒)であってもよい。共沸冷媒は、たとえばR410A、R404A等であるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
非共沸冷媒は、混合冷媒であり、一定の圧力の下で、冷媒の乾き度(湿り度)に応じて飽和温度が勾配を有する。具体的には、一定の圧力の下で、乾き度が増加するとともに蒸発温度が上昇する。非共沸冷媒は、たとえば、R407C、R448A、R463A等であるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
図2は、共沸冷媒の性質を説明するp−h線図である。図2において、縦軸は圧力pを示し、横軸は比エンタルピh(kJ/kg)(以下、単に「エンタルピ」と称する。)を示す。なお、この図2は、本開示の冷凍装置1における冷媒の状態を示すものではなく、共沸冷媒が用いられた一般的な冷凍装置における冷媒の状態を説明するものである。
【0025】
図2を参照して、点P11〜P14を結ぶ実線は、冷媒装置を循環する冷媒の圧力及びエンタルピの変化を示す。点P14→点P11は、圧縮機における冷媒の圧縮を示し(等エントロピ変化)、点P11→点P12は、凝縮器における等圧冷却を示す。また、点P12→点P13は、膨張弁における減圧を示し、点P13→点P14は、蒸発器における等圧加熱を示す。点線は、冷媒の等温線を示し、圧力が低いほど温度は低い。
【0026】
共沸冷媒は、圧力一定の下で、冷媒の相変化の間、飽和温度が一定となる。たとえば、図示されるように、冷凍装置の低圧側圧力(蒸発圧力)が一定の圧力peの下では、蒸発温度は、冷媒の相変化の間、冷媒の乾き度に拘わらず一定の温度Teとなる。
【0027】
図3は、非共沸冷媒の性質を説明するp−h線図である。この図3も、本開示の冷凍装置1における冷媒の状態を示すものではなく、非共沸冷媒が用いられた一般的な冷凍装置における冷媒の状態を説明するものである。
【0028】
図3を参照して、点P11〜P14を結ぶ実線は、図2に示したものと同じである。非共沸冷媒は、圧力一定の下で、冷媒の相変化の間、冷媒の乾き度(湿り度)に応じて飽和温度が勾配を有する。たとえば、図示されるように、冷凍装置の低圧側圧力(蒸発圧力)が一定の圧力peの下で、飽和液温度TLと飽和ガス温度TGとは互いに異なり、飽和ガス温度TGは、飽和液温度TLよりも高い。蒸発器入側の冷媒の温度Tiと、出側の冷媒の温度Toとも互いに異なり、蒸発器出側の過熱度が0であったとしても、温度Toは温度Tiよりも高くなる。
【0029】
<蒸発温度制御の説明>
冷凍装置においては、要求される冷凍能力に応じて蒸発器の蒸発温度(低圧側の飽和温度)の目標値が設定され、蒸発温度が目標値に一致するように低圧側圧力(蒸発器を流れる冷媒の圧力)が制御される。より詳しくは、蒸発温度の目標値に対応する目標圧力が決定され、低圧側圧力が目標圧力に一致するように、圧縮機の回転数等が調整される。
【0030】
共沸冷媒が用いられる場合は、蒸発温度の目標値に対応する目標圧力は一定値となり、その目標圧力からの圧力偏差に基づくフィードバック制御が行なわれる。低圧側圧力が目標圧力に制御されることにより、蒸発温度が目標値に制御される(以下では、このような蒸発温度の制御を「蒸発温度制御」と称する。)。
【0031】
一方、非共沸冷媒が用いられる場合は、上述のように、一定の圧力の下で、冷媒の相変化の間、冷媒の乾き度に応じて蒸発温度が勾配を有する。言い換えると、冷媒の相変化の間、蒸発温度の目標値に対応する目標圧力が変化する。具体的には、冷媒の乾き度が高くなるにつれて目標圧力は低下する。
【0032】
このような圧力変化を考慮して、蒸発器での蒸発過程において冷媒に圧力損失を与えることで蒸発温度を維持することも考えられる。しかしながら、このような構成は、圧縮機の吸入圧を低下させるため、圧縮機の負荷が増大し、冷凍装置の性能が低下する。
【0033】
そこで、この実施の形態1に従う冷凍装置1では、ある圧力における冷媒の飽和液温度と飽和ガス温度との平均を示す露沸平均温度で、その圧力における蒸発温度を代表する。そして、露沸平均温度が蒸発温度の目標値となる圧力を目標圧力とし、その目標圧力からの圧力偏差に基づくフィードバック制御が行なわれる。これにより、共沸冷媒の使用時に行なわれる上記の蒸発温度制御を非共沸冷媒の使用時にも適用することができる。
【0034】
しかしながら、冷媒の飽和液温度と蒸発器入側の冷媒温度とが乖離していると、蒸発温度制御の精度が低下する。蒸発器入側の冷媒は、膨張弁を通過することで気液二相状態となっており、蒸発器入側の冷媒温度は、飽和液温度よりも高い。そして、蒸発器入側の冷媒温度が飽和液温度と乖離していると、露沸平均温度と実際の蒸発温度との乖離が大きくなり、蒸発温度制御の精度が低下する。
【0035】
この場合に、蒸発器入側の冷媒温度を温度センサで検出し、当該温度センサの検出値を飽和液温度に代えて用いることも考えられるが、そのような温度センサを設けることは、装置のコスト増を招く。
【0036】
そこで、この実施の形態1に従う冷凍装置1では、凝縮器20の出側に過冷却器40が設けられており、室内機3に供給される冷媒の過冷却度が高められている。これにより、蒸発器60の入側の冷媒温度が低下し、飽和液温度に近づく。したがって、蒸発器入側の冷媒温度と飽和液温度との乖離が抑制され、蒸発温度制御の精度が向上する。また、蒸発器60の入側の冷媒温度を検出する温度センサを設ける必要がないので、装置のコストも抑制される。
【0037】
図4は、本実施の形態1における冷凍装置1において非共沸冷媒が用いられる場合の冷媒の状態を示すp−h線図である。図4を参照して、点P21〜P25を結ぶ実線は、冷媒装置1を循環する冷媒の圧力及びエンタルピの変化を示す。点P25→点P21は、圧縮機10における冷媒の圧縮を示し(等エントロピ変化)、点P21→点P22は、凝縮器20における等圧冷却を示す。点P22→点P23は、過冷却器40における等圧冷却を示す。点P23→点P24は、膨張弁50における減圧を示し、点P24→点P25は、蒸発器60における等圧加熱を示す。
【0038】
この冷凍装置1では、過冷却器40が設けられることにより、冷媒の過冷却度SCが増加し、その結果、蒸発器60の入側の冷媒温度Ti(点P24)を飽和液温度TLに近づけることができている。蒸発器60の入側の冷媒温度Tiが飽和液温度TLに近づくことで、飽和液温度TLと飽和ガス温度TGとの平均を示す露沸平均温度Teは、蒸発器60を流れる冷媒の温度の平均値(入側温度Tiと出側温度Toとの平均)に近づく。したがって、この冷凍装置1では、露沸平均温度Teによって、蒸発器60を流れる冷媒の温度を精度良く代表することができているといえる。
【0039】
図5は、図1に示した制御装置100により実行される蒸発温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、冷凍装置1の運転中、繰り返し実行される。
【0040】
図5を参照して、制御装置100は、設定された蒸発温度を取得する(ステップS10)。この蒸発温度は、冷凍装置1のユーザが直接設定するものであってもよいし、ユーザが設定した温度設定(たとえば、冷凍装置1が設置される倉庫内の温度設定)に基づいて設定されるものであってもよいし、予め設定されているものであってもよい。
【0041】
次いで、制御装置100は、冷凍装置1で使用されている冷媒の圧力−露沸平均温度マップを読込む(ステップS20)。このマップは、使用されている冷媒の圧力とその圧力における露沸平均温度との関係を示す一覧表であり、このマップを用いて、ある露沸平均温度に対応する圧力を取得することができる。冷凍装置1において使用可能な冷媒(共沸冷媒及び非共沸冷媒の双方を含む)毎に、マップが予め準備されてメモリ104のROMに記憶されている。
【0042】
図6は、圧力−露沸平均温度マップの一例を示す図である。図6を参照して、ある冷媒について、飽和液温度TL及び飽和ガス温度TGは、圧力peによって一意に定まる物性値である。露沸平均温度Teは、飽和液温度TLと飽和ガス温度TGとの平均値であり、この露沸平均温度Teも、圧力peによって一意に定まる。圧力−露沸平均温度マップでは、圧力Pe毎に露沸平均温度Teが対応付けられている。このような圧力−露沸平均温度マップが、冷凍装置1において使用可能な冷媒毎に予め準備されている。
【0043】
再び図5を参照して、制御装置100は、ステップS20において読込まれた圧力−露沸平均温度マップを用いて、ステップS10において取得された設定蒸発温度に相当する露沸平均温度に対応する圧力を、蒸発温度制御の目標圧力として決定する(ステップS30)。なお、ステップS10において取得された設定蒸発温度に一致する露沸平均温度がマップに示されていない場合は、制御装置100は、設定蒸発温度に近い露沸平均温度を用いて補間計算を行なうことにより、目標圧力を決定する。
【0044】
次いで、制御装置100は、圧力センサ90から圧力LPの検出値を取得する(ステップS40)。そして、制御装置100は、取得された圧力LPの検出値が、ステップS30において決定された目標圧力よりも高いか否かを判定する(ステップS50)。
【0045】
圧力LPが目標圧力よりも高ければ(ステップS50においてYES)、制御装置100は、圧縮機10の回転数を上げるように圧縮機10を制御する(ステップS60)。一方、ステップS50において圧力LPが目標圧力以下であると判定されると(ステップS50においてNO)、制御装置100は、圧縮機10の回転数を下げるように圧縮機10を制御する(ステップS70)。
【0046】
なお、圧力LPと目標圧力との偏差量に応じて圧縮機10の回転数の変更量を可変としてもよい。このように、圧力LPと目標圧力との偏差に基づいて圧縮機10の回転数を調整することにより、圧力LPが目標圧力近傍に調整される。その結果、露沸平均温度で代表される蒸発温度が設定蒸発温度に制御される。
【0047】
なお、上記では、圧縮機10の回転数を調整することにより圧力LPを調整するものとしたが、圧縮機10の回転数に代えて、蒸発器60のファン62の回転数、或いは膨張弁50の開度を調整することにより、圧力LPを調整してもよい。なお、蒸発器60のファン62の回転数、或いは膨張弁50の開度を調整する場合には、制御装置100が設けられる室外機2と、ファン62及び膨張弁50が設けられる室内機3との間で通信を行なう必要がある。
【0048】
なお、上記のフローチャートでは、冷凍装置1に使用される冷媒が非共沸冷媒であるか共沸冷媒であるかの判断を行なっていない。冷媒が共沸冷媒の場合には、露沸平均温度は蒸発温度そのものであるので、このフローチャートは、共沸冷媒が用いられる場合にもそのまま適用することができる。
【0049】
以上のように、この実施の形態1においては、ある圧力における露沸平均温度で、その圧力における蒸発温度を代表する。そして、露沸平均温度が設定蒸発温度となる圧力を目標圧力とし、その目標圧力からの圧力偏差に基づくフィードバック制御が行なわれる。これにより、共沸冷媒の使用時に行なわれる蒸発温度制御を非共沸冷媒の使用時にも適用することができる。
【0050】
そして、この実施の形態1では、凝縮器20の出側に過冷却器40が設けられ、冷媒の過冷却度が高められている。これにより、蒸発器60の入側の冷媒温度と飽和液温度との乖離が抑制され、蒸発温度制御の精度を向上させている。また、蒸発器60の入側の冷媒温度を検出する温度センサを設ける必要がないので、装置のコストも抑制される。
【0051】
変形例.
上記の実施の形態1では、使用されている冷媒が共沸冷媒であるか非共沸冷媒であるかを判別することなく、共沸冷媒の使用時も圧力−露沸平均温度マップを用いて目標圧力を決定するものとした。この変形例では、冷媒が共沸冷媒であるか非共沸冷媒であるかが判別され、共沸冷媒の使用時は、設定された蒸発温度から一意に定まる圧力(蒸発圧力)が目標圧力として設定される。
【0052】
図7は、変形例における蒸発温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図5のフローチャートに対応するものであり、このフローチャートに示される一連の処理も、冷凍装置1の運転中、繰り返し実行される。
【0053】
図7を参照して、ステップS110,S140〜S190の処理は、それぞれ図5に示したステップS10〜S70の処理と同じである。この変形例では、ステップS110において、設定された蒸発温度が取得されると、制御装置100は、冷凍装置1において使用されている冷媒が非共沸冷媒であるか否かを判定する(ステップS120)。冷媒が非共沸冷媒であるか否かは、たとえば、ユーザにより設定される使用冷媒の種類に基づいて判定することができる。
【0054】
ステップS120において、使用されている冷媒は非共沸冷媒ではない、すなわち共沸冷媒であると判定されると(ステップS120においてNO)、制御装置100は、設定された蒸発温度に基づいて目標圧力を設定する(ステップS130)。共沸冷媒では、圧力と蒸発温度との関係は1対1の関係にあり、設定された蒸発温度に基づいて目標圧力を決定することができる。なお、圧力と蒸発温度との関係は、マップとしてメモリ104のROMに記憶されている。そして、ステップS130の実行後、制御装置100は、ステップS160へ処理を移行し、圧力センサ90から圧力LPの検出値を取得する。
【0055】
一方、ステップS120において、使用されている冷媒は非共沸冷媒であると判定されると(ステップS120においてYES)、制御装置100は、ステップS140へ処理を移行し、使用されている冷媒の圧力−露沸平均温度マップをメモリ104から読込む。ステップS150以降の処理は、図5に示したフローチャートのステップS30以降と同じであるので、説明を繰り返さない。
【0056】
以上のように、この変形例によっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態2.
この実施の形態2は、過冷却器の構成が実施の形態1と異なる。
【0057】
図8は、実施の形態2に従う室外機が用いられる冷凍装置の全体構成図である。図8を参照して、この冷凍装置1Aは、室外機2Aと、室内機3とを備える。室外機2Aは、図1に示した実施の形態1の室外機2において、過冷却器40及び圧縮機10に代えて、それぞれ過冷却器40A及び圧縮機10Aを含むとともに、配管83から分岐して圧縮機10Aに冷媒を戻すバイパス回路をさらに含む。
【0058】
過冷却器40Aは、内部熱交換器44と、膨張弁46とを含む。内部熱交換器44は、凝縮器20の出側の配管81を流れる冷媒と、バイパス回路を構成する配管87を流れる冷媒との間で熱交換を行なうように構成される。
【0059】
膨張弁46は、配管83から分岐する配管86を流れる冷媒を減圧して配管87へ出力する。膨張弁46を通過した冷媒は、膨張弁46により減圧されるとともに温度が低下する。これにより、過冷却器40Aにおいて、配管87を流れる冷媒によって、凝縮器20から出力される冷媒をさらに冷却することができる。すなわち、凝縮器20から配管81へ出力された冷媒は、過冷却器40Aを通過することによって、過冷却度が高められる。
【0060】
圧縮機10Aは、インジェクションポートを有する。配管87をインジェクションポートに接続してバイパス回路を流れる冷媒をインジェクションポートに戻すことにより、圧縮機10Aから吐出される冷媒の温度を下げることができる。なお、この例では、インジェクションの効果を得るために、冷媒の過冷却を必要としない共沸冷媒の使用時においても、バイパス回路に冷媒が流される。
【0061】
なお、この実施の形態2に従う室外機2A及びそれが用いられる冷凍装置1Aの構成は、上述した構成を除いて、図1に示した構成と同じである。制御装置100により実行される蒸発温度制御の処理手順についても、図5に示したフローチャートと同じであり、変形例として、図7に示したフローチャートを採用することもできる。
【0062】
なお、上記においては、バイパス回路を流れる冷媒は、圧縮機10Aのインジェクションポートに戻されるものとしたが、圧縮機10Aに代えて、インジェクションポートを有さない圧縮機10を採用し、バイパス回路を流れる冷媒を圧縮機10の吸入側の配管85に戻してもよい。この場合、共沸冷媒が用いられるときは、膨張弁46を全閉にしてバイパス回路を遮断し、非共沸冷媒が用いられるときは、膨張弁46を開にして(絞り有)バイパス回路及び過冷却器40Aを機能させるようにしてもよい。
【0063】
以上のように、この実施の形態2によれば、内部熱交換器44によって過冷却器40Aを構成することができるので、外部熱源を用いるための構成を別途設けることなく、冷媒の過冷却を拡大させることができる。そして、このような過冷却器40Aが設けられることによって、蒸発器60の入側の冷媒温度と飽和液温度との乖離が抑制され、蒸発温度制御の精度を向上させることができる。
【0064】
上記の実施の形態1,2及び変形例では、倉庫やショーケース等に主に用いられる室外機及び冷凍装置について代表的に説明したが、本開示に従う室外機は、図9,10に示されるように、冷凍サイクルを用いた空気調和装置200,200Aにも適用可能である。
【0065】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1A 冷凍装置、2,2A 室外機、3 室内機、10,10A 圧縮機、20 凝縮器、22,42,62 ファン、40,40A 過冷却器、44 内部熱交換器、46,50 膨張弁、60 蒸発器、80〜87 配管、90 圧力センサ、100 制御装置、102 CPU、104 メモリ、200,200A 空気調和装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10