特許第6972375号(P6972375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972375
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車両情報管理装置および充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/13 20190101AFI20211111BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20211111BHJP
   B60L 50/15 20190101ALI20211111BHJP
【FI】
   B60L58/13
   B60L50/61
   B60L50/15
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-551613(P2020-551613)
(86)(22)【出願日】2018年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2018038301
(87)【国際公開番号】WO2020079728
(87)【国際公開日】20200423
【審査請求日】2021年1月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】安東 永昇
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−054387(JP,A)
【文献】 特開2016−140204(JP,A)
【文献】 特許第6151090(JP,B2)
【文献】 特開2015−172840(JP,A)
【文献】 特開2017−046379(JP,A)
【文献】 特開2017−144801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/00 − 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車で発生した電力を蓄電池に充電する制御を行う車両情報管理装置であって、
前記列車の現在の運行状態の情報を取得する情報取得部と、
前記列車に搭載されるエンジンを用いて発電された電力で前記蓄電池を充電する際の制御内容が前記列車の運行状態に応じて設定された充電制御情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記列車の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得し、取得した充電制御情報に基づいて、前記蓄電池の充電を制御する制御部と、
を備え、
前記情報取得部は、前記列車の現在の運行状態の情報として、前記蓄電池の現在の充電率、前記列車の現在の列車位置、および前記列車の現在の乗車率を取得し、
前記制御部は、前記記憶部から、前記列車の現在の乗車率および前記列車の現在の列車位置に合致した充電制御情報を取得し、取得した充電制御情報および前記蓄電池の現在の充電率を用いて、前記蓄電池の充電を発電開始指令または発電停止指令によって制御する、
ことを特徴とする車両情報管理装置。
【請求項2】
列車で発生した電力を蓄電池に充電する制御を行う車両情報管理装置の充電制御方法であって、
情報取得部が、前記列車の現在の運行状態の情報を取得する第1のステップと、
制御部が、前記列車に搭載されるエンジンを用いて発電された電力で前記蓄電池を充電する際の制御内容が前記列車の運行状態に応じて設定された充電制御情報を記憶する記憶部から、前記列車の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得する第2のステップと、
前記制御部が、取得した充電制御情報に基づいて、前記蓄電池の充電を制御する第3のステップと、
を含み、
前記第1のステップにおいて、前記情報取得部は、前記列車の現在の運行状態の情報として、前記蓄電池の現在の充電率、前記列車の現在の列車位置、および前記列車の現在の乗車率を取得し、
前記第2のステップにおいて、前記制御部は、前記記憶部から、前記列車の現在の列車位置および前記列車の現在の乗車率に合致した充電制御情報を取得し、
前記第3のステップにおいて、前記制御部は、取得した充電制御情報および前記蓄電池の現在の充電率を用いて、前記蓄電池の充電を発電開始指令または発電停止指令によって制御する、
ことを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車に搭載される車両情報管理装置および充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車において、回生ブレーキで得られた回生電力を蓄電池に充電させることが行われている。特許文献1には、車両が、蓄電池の電圧が設定電圧に達していないときは回生電力を用いて蓄電池を充電し、蓄電池の電圧が設定電圧に達しているときは回生電力を熱に変換して消費する技術が開示されている。特許文献1では、極力、回生電力を熱として消費しないように、予め回生電力による電圧上昇を見越した電圧で蓄電池を運用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−171772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、回生電力を熱として消費しないためには、運用可能な最大の電圧に対して、最大の回生電力が発生した場合の電圧上昇分低い電圧で蓄電池を運用しなければならない。そのため、回生電力が発生しない状況では、蓄電池の能力を活かしきれない状態で蓄電池の運用を続けなければならない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、列車の運行状態に応じて蓄電池を充電可能な車両情報管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、列車で発生した電力を蓄電池に充電する制御を行う車両情報管理装置である。車両情報管理装置は、列車の現在の運行状態の情報を取得する情報取得部と、列車に搭載されるエンジンを用いて発電された電力で蓄電池を充電する際の制御内容が列車の運行状態に応じて設定された充電制御情報を記憶する記憶部と、記憶部から列車の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得し、取得した充電制御情報に基づいて、蓄電池の充電を制御する制御部と、を備える。情報取得部は、列車の現在の運行状態の情報として、蓄電池の現在の充電率、列車の現在の列車位置、および列車の現在の乗車率を取得する。制御部は、記憶部から、列車の現在の乗車率および列車の現在の列車位置に合致した充電制御情報を取得し、取得した充電制御情報および蓄電池の現在の充電率を用いて、蓄電池の充電を発電開始指令または発電停止指令によって制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両情報管理装置は、列車の運行状態に応じて蓄電池を充電できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両情報管理装置が搭載された列車の構成例を示す図
図2】車両情報管理装置が発電機で発電した電力で蓄電池を充電する際の蓄電池の充電率の目標値の第1の例を示す図
図3】車両情報管理装置が発電機で発電した電力で蓄電池を充電する際の蓄電池の充電率の目標値の第2の例を示す図
図4】車両情報管理装置が発電機で発電した電力で蓄電池を充電する際の蓄電池の充電率の目標値の第3の例を示す図
図5】車両情報管理装置が発電機で発電した電力で蓄電池を充電する際の蓄電池の充電率の目標値の第3の例を表形式で表した図
図6】車両情報管理装置がエンジンを用いて発電機で発電された電力で蓄電池を充電する動作を示すフローチャート
図7】車両情報管理装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図
図8】車両情報管理装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態に係る車両情報管理装置および充電制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る車両情報管理装置10が搭載された列車1の構成例を示す図である。列車1は、車両2,3を備える。ここでは列車1の車両数が2つであるが、一例であり、3つ以上であってもよい。また、列車1には、車両数が1つの単行の場合も含まれる。車両2は、車両情報管理装置10と、充放電部20と、蓄電池30と、車載機器40と、エンジン50と、発電機60と、モータ70と、を備える。
【0011】
車両情報管理装置10は、列車1で発生した電力を蓄電池30に充電させる制御を行う。具体的には、車両情報管理装置10は、エンジン50を用いて発電機60で電力を発生させる制御、すなわち発電させる制御を行う。車両情報管理装置10は、エンジン50を用いて発電機60で発電された電力、および列車1の減速時または停止時に発生した回生電力を、充放電部20を介して蓄電池30に充電させる制御を行う。回生電力は、列車1の走行に使用されるモータ70を回生ブレーキとして使用した際に、モータ70で発生する電力である。列車1では、蓄電池30の充電率が高い状態で回生電力が発生しても、回生電力の全部または一部が蓄電池30に充電されず、熱などに変換され無駄に使用されてしまう。そのため、本実施の形態において、車両情報管理装置10は、モータ70で発生する回生電力などを考慮して、列車1の現在の運行状態に応じて制御内容を決定し、蓄電池30の充電を制御する。また、車両情報管理装置10は、充放電部20を介して、蓄電池30の電力でモータ70を駆動し、列車1の走行に使用する制御を行う。車両情報管理装置10は、例えば、列車1の車両2,3に搭載された車載機器40の動作を管理するTIMS(Train Information Management System)である。
【0012】
充放電部20は、車両情報管理装置10の制御により、エンジン50を用いて発電機60で発電された電力、およびモータ70を回生ブレーキとして使用した際に発生した回生電力を蓄電池30に充電する。また、充放電部20は、車両情報管理装置10の制御により、蓄電池30の電力でモータ70を駆動し、蓄電池30の電力を列車1の走行に使用する。
【0013】
蓄電池30は、列車1で発生した電力を充電する。列車1で発生した電力は、前述のように、エンジン50を用いて発電機60で発電された電力、およびモータ70を回生ブレーキとして使用した際に発生した回生電力である。蓄電池30に充電された電力は、列車1の走行に使用される。また、蓄電池30に充電された電力は、車載機器40において使用される。
【0014】
車載機器40は、車両2,3に搭載された機器である。車載機器40は、例えば、各車両に搭載された空気調和機、停車駅を示す案内表示装置などであるが、これらに限定されない。
【0015】
エンジン50は、車両情報管理装置10の制御により、発電機60を駆動する。エンジン50は、列車1の外部から供給される電力を用いて発電機60を駆動してもよいし、燃料を用いて発電機60を駆動してもよい。
【0016】
発電機60は、エンジン50によって駆動する。発電機60は、車両情報管理装置10の制御により、電力を発生、すなわち発電する。発電機60は、発電した電力を、充放電部20を介して蓄電池30に充電する。
【0017】
モータ70は、列車1の走行に使用される。モータ70は、列車1を減速または停止させる回生ブレーキの際には発電機として動作し、回生電力を発生する。モータ70は、発生した回生電力を、充放電部20を介して蓄電池30に充電する。
【0018】
車両情報管理装置10の構成について説明する。車両情報管理装置10は、情報取得部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。
【0019】
情報取得部11は、列車1の現在の運行状態の情報を取得する。列車1の現在の運行状態の情報には、列車1の現在の列車位置、および蓄電池30の現在の充電率が含まれる。また、列車1の現在の運行状態の情報には、列車1の現在の乗車率、列車1での現在の空気調和機の稼働状態などが含まれていてもよい。情報取得部11は、取得した列車1の現在の運行状態の情報を制御部13に出力する。車両情報管理装置10が前述のようにTIMSである場合、車両情報管理装置10は、列車1の現在の列車位置、蓄電池30の現在の充電率、列車1の現在の乗車率、列車1での現在の空気調和機の稼働状態などの情報を取得する機能を有している。
【0020】
記憶部12は、列車1に搭載されるエンジン50を用いて発電機60で発電された電力で蓄電池30を充電する際の制御内容が列車1の運行状態に応じて設定された充電制御情報を記憶する。制御内容は、制御部13が蓄電池30の充電を制御する際に使用するものである。ここで、本実施の形態において、車両情報管理装置10で設定される蓄電池30の充電率について説明する。
【0021】
図2は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値の第1の例を示す図である。図2において、横軸は、駅Aから駅Bまでの走行区間における列車1の列車位置を示し、縦軸は、蓄電池30の充電率を示す。列車1が走行する走行区間は既知である。列車1が下り坂を走行する走行区間では、回生電力によって蓄電池30が充電され、図2に示すように、蓄電池30の充電率21が上昇する。そのため、列車1が下り坂を走行する走行区間では、列車1が駅Aを出発する時点において、蓄電池30の充電率21が上昇してもピーク22で蓄電池30の充電率が100%に到達しないように、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値23を設定する。図2に示す充電率の目標値23については、列車1を運行する鉄道会社の担当者などが、駅Aから駅Bまでの走行区間における地理的情報、列車1の車両性能などを考慮して予め設定しておく。地理的情報とは、例えば、勾配、カーブなどである。充電率の目標値23は、走行区間において得られる回生電力を考慮して設定してもよい。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値の第2の例を示す図である。図3において、縦軸および横軸は図2の場合と同様である。列車1が上り坂を走行する走行区間では、蓄電池30の電力が使用され、図3に示すように、蓄電池30の充電率31が低下する。そのため、列車1が上り坂を走行する走行区間では、列車1が駅Aを出発する時点において、列車1が下り坂を走行する走行区間よりも、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値32を高く設定する。図3に示す充電率の目標値32については、列車1を運行する鉄道会社の担当者などが、駅Aから駅Bまでの走行区間における地理的情報、列車1の車両性能などを考慮して予め設定しておく。充電率の目標値32は、走行区間において得られる回生電力を考慮して設定してもよい。
【0023】
図4は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値の第3の例を示す図である。図4において、縦軸および横軸は図2の場合と同様である。前述の図2および図3では、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値を、列車1が駅Aを出発する時点において設定していたが、これに限定されない。具体的には、駅Aと駅Bとの間の列車1の列車位置に応じて、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値を設定する。
【0024】
図4において、列車位置が駅Aから距離0の地点#1での蓄電池30の充電率の目標値は50%である。図4では、列車1が、地点#1において、蓄電池30の充電率が25%まで低下するとエンジン50を用いて発電機60で発電を開始し、蓄電池30の充電率が目標値である50%まで上昇するとエンジン50を用いた発電機60での発電を停止することを示している。同様に、図4において、列車位置が駅Aから距離500の地点#2での蓄電池30の充電率の目標値は65%である。図4では、列車1が、地点#2において、蓄電池30の充電率が30%まで低下するとエンジン50を用いて発電機60で発電を開始し、蓄電池30の充電率が目標値である65%まで上昇するとエンジン50を用いた発電機60での発電を停止することを示している。同様に、図4において、列車位置が駅Aから距離950の地点#3での蓄電池30の充電率の目標値は90%である。図4では、列車1が、地点#3において、蓄電池30の充電率が50%まで低下するとエンジン50を用いて発電機60で発電を開始し、蓄電池30の充電率が目標値である90%まで上昇するとエンジン50を用いた発電機60での発電を停止することを示している。同様に、図4において、列車位置が駅Bから距離0の地点#4での蓄電池30の充電率の目標値は80%である。図4では、列車1が、地点#4において、蓄電池30の充電率が40%まで低下するとエンジン50を用いて発電機60で発電を開始し、蓄電池30の充電率が目標値である80%まで上昇するとエンジン50を用いた発電機60での発電を停止することを示している。
【0025】
図4に示すグラフ形式の情報を表形式にまとめたものを図5に示す。図5は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値の第3の例を表形式で表した図である。図5において、地点は、駅Aおよび駅B間での列車1の列車位置を示す。駅コードは、列車1が次に停車する駅を示す。駅間距離は、駅Aから駅Bの方向への距離を示す。駅コードおよび駅間距離を用いて、列車位置を特定することができる。充電率は、図5において充電率の隣の欄の発電開始または発電停止で示される、蓄電池30の充電を開始する充電率、または蓄電池30の充電を停止する充電率を示す。発電は、蓄電池30の充電率が前述の充電率の値になった場合の車両情報管理装置10の制御内容を示す。なお、図5に示す表は、列車1が次に停車する駅の駅コード単位でまとめられている。そのため、図4に示す地点4の情報は、駅Bの次の駅の駅コード単位でまとめられた表に記載されることになる。記憶部12は、車両情報管理装置10が発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の制御内容が列車1の運行状態に応じて設定された充電制御情報を、図4のグラフ形式で記憶していてもよいし、図5の表形式で記憶していてもよい。図4または図5に示す充電制御情報については、列車1を運行する鉄道会社の担当者などが、駅Aから駅Bまでの走行区間における地理的情報、列車1の車両性能などを考慮して予め設定しておく。
【0026】
記憶部12は、列車1の運行状態に応じた充電制御情報を記憶する。具体的には、記憶部12は、図4または図5に示す充電制御情報を、情報取得部11で取得される運行状態の情報毎に記憶する。記憶部12は、列車1の乗車率毎、例えば、列車1の乗車率が20%、40%、60%、80%、100%のときの充電制御情報を記憶する。乗車率によって列車1の走行時の負荷が異なり、蓄電池30で使用される電力が異なるためである。また、記憶部12は、列車1での車載機器40、例えば空気調和機の稼働状態毎の充電制御情報を記憶する。空気調和機の稼働状態、例えば、暖房、冷房などの運転モード、および設定温度によって列車1の走行時の負荷が異なり、蓄電池30で使用される電力が異なるためである。記憶部12は、列車1の乗車率、および列車1での空気調和機の稼働状態の両方を考慮した充電制御情報を記憶していてもよい。例えば、記憶部12は、列車1の乗車率が100%、かつ、空気調和機が設定温度26℃の冷房モードで稼働しているときの充電制御情報を記憶する。
【0027】
制御部13は、情報取得部11から、列車1の現在の運行状態の情報を取得する。制御部13は、記憶部12から列車1の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得する。制御部13は、取得した充電制御情報に基づいて、蓄電池30の充電を制御する。
【0028】
例えば、情報取得部11は、列車1の現在の運行状態の情報として、蓄電池30の現在の充電率、および列車1の現在の列車位置を取得する。この場合、制御部13は、記憶部12から、列車1の現在の列車位置に合致した充電制御情報を取得する。制御部13は、取得した充電制御情報および蓄電池30の現在の充電率を用いて、蓄電池30の充電を制御する。
【0029】
また、情報取得部11は、列車1の現在の運行状態の情報として、蓄電池30の現在の充電率、列車1の現在の列車位置、および列車1の現在の乗車率を取得する。この場合、制御部13は、記憶部12から、列車1の現在の乗車率および列車1の現在の列車位置に合致した充電制御情報を取得する。制御部13は、例えば、列車1の現在の乗車率に合致した図5の表のような充電制御情報から、列車1の現在の列車位置に合致した部分を読み取る。制御部13は、取得した充電制御情報および蓄電池30の現在の充電率を用いて、蓄電池30の充電を制御する。
【0030】
また、情報取得部11は、列車1の現在の運行状態の情報として、蓄電池30の現在の充電率、列車1の現在の列車位置、および列車1での現在の空気調和機の稼働状態を取得する。この場合、制御部13は、記憶部12から、列車1での現在の空気調和機の稼働状態および列車1の現在の列車位置に合致した充電制御情報を取得する。制御部13は、例えば、列車1での現在の空気調和機の稼働状態に合致した図5の表のような充電制御情報から、列車1の現在の列車位置に合致した部分を読み取る。制御部13は、取得した充電制御情報および蓄電池30の現在の充電率を用いて、蓄電池30の充電を制御する。
【0031】
つづいて、車両情報管理装置10が、エンジン50を用いて発電機60で発電された電力で蓄電池30を充電する動作について説明する。図6は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10がエンジン50を用いて発電機60で発電された電力で蓄電池30を充電する動作を示すフローチャートである。
【0032】
車両情報管理装置10において、情報取得部11は、列車1の現在の運行状態の情報を取得する(ステップS1)。情報取得部11は、取得した列車1の現在の運行状態の情報を制御部13に出力する。制御部13は、情報取得部11で取得された列車1の現在の運行状態に基づいて、記憶部12から列車1の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得する(ステップS2)。制御部13は、取得した充電制御情報および蓄電池30の現在の充電率を用いて、蓄電池30の充電を制御する(ステップS3)。
【0033】
図4および図5に示す充電制御情報を用いた、制御部13の具体的な動作について説明する。例えば、制御部13は、駅Aから駅Bまでの走行区間の地点#1において蓄電池30の充電率が25%まで低下した場合、エンジン50および発電機60に対して、エンジン50を用いた発電の開始を指示するための発電開始指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電開始指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を開始する。制御部13は、エンジン50を用いて発電機60が発電することによって蓄電池30の充電率が上昇し、蓄電池30の充電率が50%まで上昇した場合、エンジン50および発電機60に対してエンジン50を用いた発電の停止を指示するための発電停止指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電停止指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を停止する。
【0034】
同様に、制御部13は、駅Aから駅Bまでの走行区間の地点#2において蓄電池30の充電率が30%まで低下した場合、エンジン50および発電機60に対して発電開始指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電開始指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を開始する。制御部13は、エンジン50を用いて発電機60が発電することによって蓄電池30の充電率が上昇し、蓄電池30の充電率が65%まで上昇した場合、エンジン50および発電機60に対して発電停止指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電停止指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を停止する。
【0035】
同様に、制御部13は、駅Aから駅Bまでの走行区間の地点#3において蓄電池30の充電率が50%まで低下した場合、エンジン50および発電機60に対して発電開始指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電開始指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を開始する。制御部13は、エンジン50を用いて発電機60が発電することによって蓄電池30の充電率が上昇し、蓄電池30の充電率が90%まで上昇した場合、エンジン50および発電機60に対して発電停止指令を出力する。エンジン50および発電機60は、制御部13から発電停止指令を取得すると、エンジン50を用いた発電を停止する。
【0036】
なお、記憶部12は、図4および図5に示す駅Aから駅Bまでの走行区間において多数の地点が設定された充電制御情報を記憶していてもよい。この場合、制御部13は、第1の地点から次の地点である第2の地点までの走行区間では、第1の地点の制御内容で蓄電池30の充電を制御してもよい。
【0037】
つづいて、車両情報管理装置10のハードウェア構成について説明する。車両情報管理装置10において、記憶部12は、メモリである。情報取得部11および制御部13は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0038】
図7は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、車両情報管理装置10の処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、車両情報管理装置10の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。また、これらのプログラムは、車両情報管理装置10の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0039】
ここで、プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ92には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0040】
図8は、本実施の形態に係る車両情報管理装置10が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアで構成される場合、図8に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。車両情報管理装置10の各機能を機能別に処理回路93で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路93で実現してもよい。
【0041】
なお、車両情報管理装置10の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両情報管理装置10は、列車1の現在の運行状態の情報を取得し、列車1に搭載されるエンジン50を用いて発電された電力で蓄電池30を充電する際の制御内容が列車1の運行状態に応じて設定された充電制御情報から、列車1の現在の運行状態に合致した充電制御情報を取得し、取得した充電制御情報に基づいて、蓄電池30の充電を制御することとした。これにより、車両情報管理装置10は、列車1の運行状態に応じて蓄電池30を充電することができる。車両情報管理装置10は、例えば、列車1が下り坂を走行する場合、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値を下り坂の手前で低く設定し、列車1が上り坂を走行する場合、発電機60で発電した電力で蓄電池30を充電する際の蓄電池30の充電率の目標値を上り坂の手前で高く設定することができる。
【0043】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 列車、2,3 車両、10 車両情報管理装置、11 情報取得部、12 記憶部、13 制御部、20 充放電部、30 蓄電池、40 車載機器、50 エンジン、60 発電機、70 モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8