【実施例】
【0059】
調製例:
式(I)の化合物の結晶形Aについての調製方法
調製方法I:5.0gの式(I)の化合物を取り、75mLのアセトンを加え、式(I)の化合物を磁気撹拌下で溶解させ、白色の固体が直ちに沈殿し、5時間撹拌後、それを吸引により濾過して白色粉末を得、それを減圧下35℃で16時間乾燥させて、XRPD試験により結晶形Aと同定された固体を得た。
【0060】
調製方法II:500mgの式(I)の化合物を取り、15mLのイソプロパノールを加え、式(I)の化合物を透明になるまで(4.0時間以内に)油浴中で80℃で撹拌しながら溶解させ、自然に室温(32℃)に冷却して白色の固体を沈殿させ、更に室温で12時間撹拌し、15℃に冷却し、4.0時間撹拌し、吸引により濾過して固体を得た。それを減圧下45℃で16時間乾燥させて、XRPD及び
1H−NMR解析により結晶形Aと同定した。
【0061】
調製方法III:5.0gの式(I)の化合物を取り、100mLの三口フラスコに入れ、75mLのsec−ブタノールを加え、油浴の温度を95℃に制御し、0.5時間機械的に撹拌しながらそれを溶解させ、透明になった。次いで、油浴を70℃に冷却し、約25mgの種結晶(調製方法IまたはIIにより調製した結晶形A)を添加し、白色固体が徐々に沈殿し始め、油浴を更に60℃に冷却し、0.5時間一定温度に保ち、55°Cに冷却し、0.5時間一定温度に保ち、更に約20°Cに冷却し、それを更に1.5時間撹拌し、吸引により濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(2×10mL)で濯いで固体を得、それを減圧下65℃で24時間乾燥させた。
1H−NMR検出により残留溶媒がないことが示され、XRPD分析により固体が結晶形Aであることが示されている。
【0062】
調製方法IV:
1)種結晶の調製:40gの式(I)の化合物及び300gのn−ペンタノールを取り、そして75℃に加熱した;R=300回転/分の撹拌パドル回転速度で約0.5時間後、原料が溶解し始めた;完全に溶解して透明になった後、原料を更に75℃で0.5時間保持した。撹拌速度をR=150回転/分に低下させ、透明な溶液を約0.5時間以内に55℃に急冷した。55℃に到達後、撹拌速度をR=300回転/分に上昇させ、系を更に9℃/時間で5℃に冷却し、徐々に混濁し、固体が沈殿した。5℃に到達後、系を2時間一定温度に保ち、吸引により濾過して固体、即ち種結晶を得た。
【0063】
2)結晶形Aについての調製方法:50gの式(I)の化合物を300gのn−ペンタノール中に分散させ、85℃に加熱し、完全に溶解させて透明にし、58℃に急冷(85〜58℃/時間)した。1)における上記の種結晶0.1gを加え、温度を60分間一定に保った。この時の系は、白い固体が現れるまで徐々に混濁した。系を6℃/時間の速度で5℃に徐々に冷却し、更に一晩一定温度に保ち、次いで吸引により濾過した。結果生じる固体を減圧乾燥装置に入れ、100℃で6時間乾燥させた。結果生じる乾燥固体を減圧下65℃で24時間乾燥させた。
1H−NMR検出により残留溶媒がないことが示され、XRPD分析により固体が結晶形Aであることが示されている。
【0064】
調製方法I〜IVにより得られた生成物に関する試験により、結晶形Aの純度が99.7%と高く、単一の最大不純物の含有量が0.08%未満であり、溶媒が殆ど残っていないことが示されている。
【0065】
XRPD試験
用いた装置:Bruker D2 X線粉末回折計。
X線反射パラメータ:Cu、Kα;入口スリット:0.6mm;発散スリット:1mm;スキャンモード:連続;スキャン範囲:3.0〜45.0°;サンプリング間隔:0.02°;間隔あたりのスキャン時間:19.8秒;及び検出器の角度:2.0°。
【0066】
式(I)の化合物の結晶形Aは、
図1中のX線粉末回折パターンにおいて示され、結晶形は、次の回折2θ角:6.6±0.2°、8.7±0.2°、10.0±0.2°、10.9±0.2°、13.2±0.2°、15.7±0.2°、16.4±0.2°、16.7±0.2°、17.4±0.2°、19.3±0.2°、20.1±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、23.3±0.2°、24.0±0.2°、25.9±0.2°、28.1±0.2°、及び30.4±0.2°でのピークを示す。
【0067】
示差走査熱量測定
式(I)の化合物の結晶形Aの固体状態の熱的特性は、示差走査熱量測定(DSC)により研究される。
用いた機器:TAから購入したQ2000示差走査熱量計。
測定条件:50ml/分で窒素パージし、25℃から220℃の間で10℃/分の加熱速度でデータを収集し、それを、吸熱ピークを下向きにしてプロットする。
測定結果:式(I)の化合物の結晶形Aは、195℃から215℃の範囲内に吸熱ピークを示し、示差走査熱量測定図は
図2に示す通りである。
【0068】
熱重量分析
用いた機器:TAから購入したQ50熱重量分析装置。
試験条件:60ml/分で窒素パージし、室温と350℃の間で10℃/分の加熱速度でデータを収集する。
測定結果:式(I)の化合物の結晶形Aは、0℃〜250℃の範囲内で明らかな重量損失を示さず、そのTG曲線は
図2に示す通りである。
核磁気分析(
1H−NMR)
機器:Bruker Advance III 400;溶媒:重水素化DMSO。
測定結果:式(I)の化合物の結晶形Aの
1H−NMRは、
図3に示す通りである。
【0069】
特性試験のための実験例:
実験例1 結晶形Aの性質の調査
1)安定性試験
試験物:上記の調製方法I、II、III又はIVに従って調製された式(I)の化合物の結晶形A。
実験方法:試験物を高湿度(25℃/相対湿度92.5%又は40℃/相対湿度75%)条件下又は60℃条件下に10日間置き、サンプルをそれぞれ5日目及び10日目に採取した;10日間、光(4500 LX±500 LX)条件下に置き、10日目にサンプルを採取して、類縁物質とXRPDについて試験し、それを0日目のサンプルと比較した。
類縁物質:中国薬局方、2015年版、第II巻、付録V D高速液体クロマトグラフィーに従って測定。
XRPD測定:中国薬局方、2015年版、第IV巻、0451 X線回折法に従って測定。
式(I)の化合物の結晶形Aに関する安定性実験の結果は、表1に示す通りである。
【0070】
【表1】
【0071】
2)式(I)の化合物及び結晶形Aに関する吸湿性試験
試験物:
特許出願第PCT/CN 2014/095615号の明細書中の実施例1の調製方法に従って調製された式(I)の化合物。
上記の調製方法I、II、III又はIVに従って調製された式(I)の化合物の結晶形A。
測定方法:中国薬局方、2015年版、第IV巻、一般原則、9103 医薬品の吸湿性試験の指針に従って測定。
吸湿性実験の結果については、表2を参照。
【0072】
【表2】
【0073】
3)結晶形Aの粒度測定試験
試験物:上記の調製方法I、II、III又はIVに従って調製された式(I)の化合物の結晶形A。
試薬:Tween 80及び超純水。
機器及び装置:レーザー粒度分析装置、及びサンプル分散機。
測定方法:
適量の試験物をとり、0.1mLの1%Tween 80溶液を加えて表面張力を低下させ、分散剤として水を用いて均一に分散した懸濁液を調製した。それをサンプル分散装置に入れ、撹拌速度を2000rpmに調整し、7KHzの超音波周波数で2分間超音波処理を行い、測定を行った。
実験結果:
式(I)の化合物の結晶形Aの粒度分布は以下の通りである:サンプルの10%が2.501μm以下であり、50%が10.432μm以下であり、及び90%が59.852μm以下である。
【0074】
実験例2 非晶形の式(I)の化合物の安定性の調査
試験物:特許出願第PCT/CN 2014/095615号の明細書中の実施例1の調製方法に従って調製された式(I)の化合物(即ち、非晶形)。
【0075】
実験方法:
試験物を25℃/相対湿度92.5%又は60℃の条件下に10日間置き、それぞれ5日目及び10日目にサンプリングした;試験物を光(4500 LX±500 LX)又は40℃/相対湿度75%の条件下に10日間置き、10日目にサンプリングして、類縁物質とXRPDについて試験し、0日目のサンプルと比較した。
類縁物質:中国薬局方、2015年版、第II巻、付録V D 高速液体クロマトグラフィーに従って測定。
XRPD測定:中国薬局方、2015年版、第IV巻、0451 X線回折法。
式(I)の化合物の非晶形に関する安定性実験の結果は、表3に示す通りである。
【0076】
【表3】
【0077】
実験の結論:
10日間60℃又は光条件下に置いた後、結晶形Aの外観、類縁物質、及びXRPD等の特性に明らかな変化はなかったが、非晶形には、光条件下で最大10.54%の類縁物質があった。
【0078】
結果は、本開示の結晶形Aが良好な安定性及び低吸湿性の特徴を示し、それは医薬品の製造、製剤の調製、輸送及び保管に便利であり、薬物使用の安定性と安全性を確保するのに更に寄与する。更に、非晶形と比較して、結晶形Aは、インビボでの良好な曝露及び/又は生物学的利用能、並びにインビボ及びインビトロでの良好な効力を示す。
【0079】
実験例3 式(I)の化合物の非晶形及び結晶形Aに関する圧縮性実験調査
試験物:上記の調製方法I、II、III又はIVに従って調製された式(I)の化合物の結晶形A;及び特許出願第PCT/CN 2014/095615号の明細書中の実施例1の調製方法に従って調製された式(I)の化合物の非晶形。
実験方法:
式(I)の化合物の結晶形A及び非晶形の適切な量をそれぞれ原料として取り、別々に打錠し、錠剤の重量を固定し、錠剤の厚さ(打錠力)を調整し、錠剤の硬度を測定した。錠剤の厚さによる錠剤硬度の変化を調査し、圧縮性を比較した。
実験結果については、表4を参照。
【0080】
【表4】
【0081】
表中4の実験結果から、同じ錠剤厚さでは、結晶形Aの錠剤硬度は非晶形のものよりも大きいことが理解され得る。更に、錠剤の厚さが減少する(打錠力が増大する)につれ、結晶形Aの錠剤硬度は最大約5.4kgに達し得るが、非晶形の最大硬度は約2.75kgであり;更に、打錠過程中に、非晶形は壁に付着しやすく、錠剤表面を粗くし又は傷付け、また非晶形はキャッピングしやすく、このことにより、結晶形Aは非晶形よりも圧縮性が良好であり、製剤製品の開発により寄与することが示される。
【0082】
実験例4 式(I)の化合物の非晶形及び結晶形Aに関する放出実験調査
試験物:上記の調製方法I、II、III又はIVに従って調製された式(I)の化合物の結晶形A;及び特許出願第PCT/CN 2014/095615号の明細書における実施例1の調製方法に従って調製された式(I)の化合物の非晶形。
実験方法:
40mgの結晶形A及び40mgの非晶形を取り、それぞれ同じタイプ及び量の補助剤に加え、それを錠剤に圧縮した。崩壊及び溶解を以下の条件下で調査した。
溶解方法:パドル法(中国薬局方、2015年版、第IV巻、0931溶解及び放出測定方法、方法II);培地:0.2%SDS水溶液;及び回転速度:50回転/分。
実験結果については、表5及び6を参照。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
表5及び表6中の実験結果は、結晶形Aがより速く崩壊及び溶解し、60分以内に完全に溶解するが、非晶形の崩壊及び溶解速度は、結晶形Aと比較して大幅に低下することを示している。このことにより、結晶形Aは、製剤の開発により好適であることが示される。
【0086】
最後に、上記の実施例は、本開示の技術的解決法を限定するのではなく、説明のためにのみ用いられることに留意されたい。本開示を、好ましい実施例を参照して詳細に説明してきたが、当業者は、本開示の特定の実施形態に対する修正又はそのいくつかの技術的特徴の均等的な置換が、なお本開示の技術的解決法の精神から逸脱することなくなされ得ることを理解するはずであり、それらはすべて、本開示によって特許請求される技術的解決法の範囲に含まれるべきである。