(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(B2)は、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、及び、臭素化エポキシオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物。
前記成分(B1)及び前記成分(B2)の総量に対して、前記成分(B1)の含有割合が10〜99質量%である、請求項2又は3に記載の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物
本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物は、少なくとも下記の成分(B1)、成分(C)及び成分(D)を含む。
(B1)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、
(C)脂肪酸亜鉛、及び、
(D)脂肪酸金属塩(ただし、前記(C)成分は除く)。
【0013】
特に本発明に係る発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物において、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(C)の含有量が0.1〜15質量部であり、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(D)の含有量が1〜35質量部である。
【0014】
本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物を難燃剤としてスチレン樹脂に含有させることで、優れた難燃性及び耐熱性を有する押出発泡成形体を製造することができる。
【0015】
以下では、本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物を単に「難燃剤組成物」と略記し、本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物を含む難燃性発泡スチレン系樹脂組成物を単に「スチレン系樹脂組成物」と略記し、さらに、このスチレン系樹脂組成物を用いて得られる前記押出発泡成形体を単に「発泡成形体」と略記する。
【0016】
<成分(B1)>
難燃剤組成物に含まれる成分(B1)は、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)であって、難燃剤としての役割を果たす成分である。つまり、成分(B1)は臭素系難燃剤である。
【0017】
成分(B1)は公知の方法で製造して得ることができ、あるいは、市販品等から成分(B1)を入手することもできる。
【0018】
<その他の難燃剤>
難燃剤組成物は、本発明の効果が阻害されない限り、成分(B1)以外の難燃剤を含むこともでき、この場合、難燃性及び耐熱性が向上することもある。成分(B1)以外の難燃剤として、成分(B1)以外の臭素系難燃剤を挙げることができる。以下、この臭素系難燃剤を「成分(B2)」と略記する。
【0019】
成分(B2)としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ポリブロモジフェニルエーテル、ポリブロモジフェニルエタン、ビスポリブロモフェノキシエタン、ポリブロモフェニルインダン、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、エチレンビステトラブロモフタルイミド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、臭素化エポキシオリゴマー等を挙げることができる。成分(B2)は1種単独であってもよいし、2種以上を使用することもできる。
【0020】
難燃剤組成物の発泡成形体の難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、成分(B2)は、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、及び、臭素化エポキシオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
難燃剤組成物が成分(B1)と成分(B2)との両方を含む場合、両者の含有割合は特に限定されない。例えば、難燃剤組成物が優れた難燃性を付与しやすいという点で、成分(B1)及び成分(B2)の総量に対して、成分(B1)の含有割合が10〜99質量%とすることが好ましい。成分(B1)の含有割合は、成分(B1)及び成分(B2)の総量に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、成分(B1)の含有割合は、成分(B1)及び成分(B2)の総量に対して90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
難燃剤組成物は、成分(B1)及び成分(B2)以外の難燃剤を含むことができ、例えば、公知の難燃剤を広く挙げることができる。難燃剤組成物が成分(B1)及び成分(B2)以外の難燃剤を含む場合、その含有割合も特に限定されず、本発明の効果が阻害されない範囲で適宜調節することができる。コストが増加しにくいという観点で、斯かる難燃剤の含有割合は、成分(B1)及び成分(B2)の総質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下とすることができる。難燃剤組成物に含まれる難燃剤は、成分(B1)及び成分(B2)のみであってもよい。
【0023】
<成分(C)>
難燃剤組成物に含まれる成分(C)は、脂肪酸亜鉛である。難燃剤組成物が脂肪酸亜鉛を含むことで、難燃剤組成物は、押出発泡成形体に優れた難燃性及び耐熱性を付与することができ、特に難燃性能を向上させることができる。
【0024】
脂肪酸亜鉛において、脂肪酸部位(脂肪酸亜鉛における亜鉛以外の部位)は、飽和脂肪酸亜鉛及び不飽和脂肪酸亜鉛のいずれであってもよく、また、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。難燃性及び耐熱性が向上しやすいという点で、脂肪酸亜鉛は直鎖状飽和脂肪酸亜鉛及び直鎖状不飽和脂肪酸亜鉛等が好ましい。
【0025】
脂肪酸亜鉛において、脂肪酸部位の炭素数(カルボキシ炭素も含む)は特に限定されない。難燃性及び耐熱性が向上しやすいという点で、脂肪酸部位の前記炭素数は、2以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上が特に好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、25以下が特に好ましい。
【0026】
脂肪酸亜鉛において、脂肪酸部位には、一個以上の置換基を有することもできる。斯かる置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アミノ基等を挙げることができる。脂肪酸部位に一個以上の置換基が存在する場合、その置換基としては水酸基であることが好ましい。また、脂肪酸部位に一個以上の置換基が存在する場合、その置換基の個数は、例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個である。
【0027】
脂肪酸亜鉛としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0028】
難燃剤組成物に含まれる成分(C)(脂肪酸亜鉛)は、1種単独とすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。成分(C)は公知の方法で製造して得ることができ、あるいは、市販品等から成分(C)を入手することもできる。
【0029】
前述のように、難燃剤組成物において、成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量は0.1〜15質量部である。つまり、難燃剤組成物において、
{成分(C)の質量/成分(B1)の質量}×100
の値が0.1〜15の範囲である。これにより、成分(B1)の難燃剤の効果を高めることができ、優れた難燃性能を発揮することができる。
【0030】
成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量は、0.15質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.4質量部以上であることが特に好ましい。また、成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましく、4.5質量部以下であることが特に好ましい。最も好ましくは、成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量が0.4〜4.5質量であり、この場合、難燃剤組成物は、難燃性及び耐熱性の両方を向上させることができる。
【0031】
<成分(D)>
難燃剤組成物に含まれる成分(D)は、脂肪酸金属塩である。ただし、斯かる(D)脂肪酸金属塩は前記(C)成分、つまり、前記脂肪酸亜鉛以外を意味する。要するに、成分(D)において、脂肪酸金属塩の金属は亜鉛以外である。
【0032】
難燃剤組成物が成分(D)を含むことで、難燃性能をさらに高めることができ、また、押出発泡成形体に優れた耐熱性を付与でき、成形性に優れる押出発泡成形体を得ることができる。
【0033】
脂肪酸金属塩において、脂肪酸部位(脂肪酸金属塩における金属以外の部位)は、飽和脂肪酸亜鉛及び不飽和脂肪酸亜鉛のいずれであってもよく、また、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。難燃性及び耐熱性が向上しやすいという点で、脂肪酸金属塩は直鎖状飽和脂肪酸金属塩及び直鎖状不飽和脂肪酸金属塩等が好ましい。
【0034】
脂肪酸金属塩において、脂肪酸部位の炭素数(カルボキシ炭素も含む)は特に限定されない。難燃性及び耐熱性が向上しやすいという点で、脂肪酸金属塩における脂肪酸部位の前記炭素数は、2以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上が特に好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、25以下が特に好ましい。
【0035】
脂肪酸金属塩において、脂肪酸部位には、一個以上の置換基を有することもできる。斯かる置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、ハロン原子、アミノ基等を挙げることができる。脂肪酸部位に一個以上の置換基が存在する場合、その置換基としては水酸基であることが好ましい。また、脂肪酸部位に一個以上の置換基が存在する場合、その置換基の個数は、例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個である。
【0036】
脂肪酸金属塩において、亜鉛以外である限りは金属の種類は特に限定されず、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、ナトリウム等を挙げることができる。
【0037】
脂肪酸金属塩としては、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、ベヘン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸及びオレイン酸等の金属塩(金属は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム又はナトリウム)を挙げることができる。
【0038】
難燃剤組成物に含まれる成分(D)(脂肪酸金属塩)は、1種単独とすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。成分(D)は公知の方法で製造して得ることができ、あるいは、市販品等から成分(D)を入手することもできる。
【0039】
前述のように、難燃剤組成物において、成分(B1)100質量部あたりの成分(D)の含有量は1〜35質量部である。つまり、難燃剤組成物において、
{成分(D)の質量/成分(B1)の質量}×100
の値が1〜35の範囲である。これにより、難燃性能をさらに高めることができ、また、押出発泡成形体に優れた耐熱性を付与でき、成形性に優れる押出発泡成形体を得ることができる。
【0040】
成分(B1)100質量部あたりの成分(D)の含有量は、2質量部以上であることが好ましく、2.5質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以上であることが特に好ましい。また、成分(B1)100質量部あたりの成分(D)の含有量は、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、17質量部以下であることが特に好ましい。最も好ましくは、成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量が4〜17質量であり、この場合、難燃剤組成物は、難燃性及び耐熱性の両方を顕著に向上させることができる。
【0041】
難燃剤組成物では、構成成分として、前記成分(C)と成分(D)とを組み合わせていることで、従来トレードオフに関係にあって両立させることが難しかった難燃性及び耐熱性の両方を向上させることができ、それらの含有量が特定の範囲であることで、難燃性及び耐熱性の両方を顕著に向上させることができ、しかも、押出発泡成形体の成形性も損なわれにくい。
【0042】
<成分(E)>
難燃剤組成物は、成分(A)〜(D)以外に、例えば、成分(E)として熱安定剤を含むことができる。なお、難燃剤組成物は成分(E)を含まず、後記するスチレン系樹脂組成物が成分(E)を含むこともできる。熱安定剤は、発泡成形体の熱安定性をさらに向上させることができる。
【0043】
熱安定剤の種類は特に限定されず、例えば、発泡成形体に使用され得る公知の熱安定剤を広く挙げることができる。熱安定剤としては、例えば、チオエーテル化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、有機スズ化合物、リン酸エステルおよびハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0044】
チオエーテル化合物としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリストリルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0045】
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどが挙げられる。
【0046】
ヒンダードアミン化合物の例は、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリニジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
【0047】
有機スズ化合物の例はジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエートなどが挙げられる。
【0048】
成分(E)としてのリン酸エステルとしては、例えば、ホスファイト化合物を挙げることができる。当該ホスファイト化合物としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイトを挙げることができ、その他、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト等のアルキルアリルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデン−ビス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−オキシフェニル)−3−メチルプロパントリホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)モノ−p−ノニルフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、テトラアルキル(C=12〜16)−4,4’−イソプロピリデン−(ビスフェニル)ジホスファイトが挙げられる。
【0049】
難燃剤脂組成物において、成分(E)の含有量は特に限定されず、本発明の効果が阻害されない範囲において適宜の量とすることができる。例えば、成分(E)の含有量は、成分(B1)の全質量に対し、0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%である。
【0050】
<成分(F)>
難燃剤組成物は、成分(A)〜(D)以外に、例えば、成分(F)として難燃増強剤を含むことができる。なお、難燃剤組成物は成分(F)を含まず、後記するスチレン系樹脂組成物が成分(F)を含むこともできる。難燃増強剤は、発泡成形体の熱安定性をさらに向上させることができる。
【0051】
難燃増強剤の種類は特に限定されず、例えば、発泡成形体に使用され得る公知の難燃増強剤を広く挙げることができる。難燃増強剤としては、例えば、前記成分(E)以外のリン酸エステルを挙げることができる。斯かるリン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニルクレジルホスファイト、ジフェニルキシレニルホスファイト、レゾルシノールジキシレニルホスファイト等のホスファイト化合物;トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のホスフェート化合物;等を挙げることができる。その他、難燃増強剤としては、クメンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ジクミルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が挙げられる。また、難燃増強剤としてはフタロシアニン鉄、フタロシアニンマンガン、フタロシアニンコバルト等のフタロシアニン金属錯体、ゼオライト等も挙げられる。
【0052】
難燃剤脂組成物において、成分(F)の含有量は特に限定されず、本発明の効果が阻害されない範囲において適宜の量とすることができる。例えば、成分(F)の含有量は、成分(B1)の全質量に対し、0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。
【0053】
<成分(H)>
難燃剤脂組成物は、成分(A)〜(D)以外に、例えば、成分(H)として発泡核剤を含むことができる。なお、難燃剤組成物は成分(H)を含まず、後記するスチレン系樹脂組成物が成分(H)を含むこともできる。発泡核剤は、スチレン系樹脂組成物の発泡成形体の気泡を形成しやすくし、気泡径の調整も容易になるので発泡成形体の強度等の調節に役立ちやすい。
【0054】
発泡核剤の種類は特に限定されず、例えば、発泡成形体に使用され得る公知の発泡核剤を広く挙げることができる。発泡核剤としては、例えば、タルク、ベントナイト、カオリン、マイカ、シリカ、クレー、珪藻土等の無機材料が挙げられる。
【0055】
<その他成分>
難燃剤脂組成物は、上記各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の各種成分を含むことができる。難燃剤脂組成物がその他成分を含む場合、その含有割合は特に限定されず、例えば、前記(B1)、成分(C)及び成分(D)の全質量に対して、50質量%以下とすることができ、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0056】
難燃剤脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、公知の難燃剤脂組成物の調製方法と同様とすることができる。
【0057】
2.難燃性発泡スチレン系樹脂組成物
本発明の難燃性発泡スチレン系樹脂組成物(スチレン系樹脂組成物)は、前記難燃剤組成物に加えて、さらに成分(A)スチレン系樹脂を含む。つまり、本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物は、成分(A)、成分(B1)、成分(C)及び成分(D)を含む。(A)スチレン系樹脂
(B1)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)
(C)脂肪酸亜鉛、及び、
(D)脂肪酸金属塩(ただし、前記(C)成分は除く)
を含む。
念のための注記に過ぎないが、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(C)の含有量が0.1〜15質量部であり、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(D)の含有量が1〜35質量部である。
【0058】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、押出機内で溶融しつつ、溶融物に発泡剤を圧入して押し出し成形することによって発泡体を形成することができ、斯かる発泡体は、優れた難燃性及び耐熱性を有する。つまり、本発明のスチレン系樹脂組成物によれば、優れた難燃性及び耐熱性を有する押出発泡成形体を製造することができる。
【0059】
スチレン系樹脂組成物に含まれる成分(A)は、スチレン樹脂である。このスチレン系樹脂はスチレン系樹脂組成物の主たる成分であり、つまり、発泡成形体における主成分である。
【0060】
スチレン系樹脂の種類は特に限定されず、例えば、発泡成形用に用いられる公知のスチレン系樹脂を広く用いることができる。
【0061】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン単量体の単独重合体、スチレンと他の単量体との共重合体を挙げることができる。他の単量体としては、例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、p−(N,N−ジエチルアミノエチル)スチレン、p−(N,N−ジエチルアミノメチル)スチレン等のスチレン系重合性単量体を挙げることができる。他の単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0062】
スチレン系樹脂を構成する単量体単位は、スチレン単量体を50質量%以上含むことができ、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。スチレン系樹脂は、ポリスチレンのホモポリマーであってもよい。
【0063】
スチレン系樹脂は、本発明の効果が阻害されない限り、他の成分を含有することもできる。他の成分は、例えば、ゴム状重合体が挙げられる。ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ブチルゴム、エチレン−α−オレフィン系共重合体(エチレン−プロピレンゴム)、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、シリコーンゴム、アクリル系ゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)等が挙げられる。
【0064】
スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体は、1種のもであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系樹脂組成物にゴム状重合体が含まれる場合、その含有割合は、スチレン系樹脂を構成する単量体成分に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0065】
スチレン系樹脂の分子量等は特に限定されず、目的の用途等に応じて、発泡成形が可能な範囲で適宜の分子量に調節することができ、例えば、公知の発泡成形体と同様の範囲とすることができる。
【0066】
スチレン系樹脂は、本発明の効果が阻害されない限り、さらに他の添加剤を含むこともできる。添加剤としては、例えば、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、無機粒子等の充填剤、顔料、着色剤、防カビ剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上がスチレン系樹脂に含まれていてもよい。スチレン系樹脂が他の添加剤を含む場合、その含有割合は、スチレン系樹脂全質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0067】
スチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法で製造することで、成分(A)であるスチレン系樹脂を得ることができる。あるいは、スチレン系樹脂は、例えば、市販品等から入手することができる。
【0068】
スチレン系樹脂組成物に含まれる成分(B1)の含有量は特に限定されない。難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、成分(B1)の含有量は、例えば、0.05質量部以上とすることができ、0.1質量部以上とすることが好ましく、0.5質量部以上とすることがより好ましく、0.9質量部以上とすることがさらに好ましく、1質量部以上とすることが特に好ましい。また、スチレン系樹脂組成物に含まれる成分(B1)の含有量は、難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、20質量部以下とすることができ、18質量部以下とすること好ましく、10質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以下とすることがさらに好ましく、4質量部以下とすることがよりさらに好ましく、3質量部以下とすることが特に好ましい。
【0069】
スチレン系樹脂組成物が成分(B1)と成分(B2)との両方を含む場合、スチレン系樹脂組成物の発泡成形体の難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、成分(B1)と成分(B2)の総質量は、例えば、スチレン系樹脂100質量部あたり、0.1質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。成分(B1)と成分(B2)の総質量は、スチレン系樹脂100質量部あたり、1質量部以上とすることが好ましく、1.5質量部以上とすることがより好ましく、2質量部以上とすることがさらに好ましく、2.5質量部以上とすることが特に好ましい。また、成分(B1)と成分(B2)の総量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、10質量部以下とすることが好ましく、9質量部以下とすることがより好ましく、8質量部以下とすることがさらに好ましく、6質量部以下とすることが特に好ましい。
【0070】
スチレン系樹脂組成物において、成分(C)の含有量は特に限定されない。例えば、難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、成分(C)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、0.001質量部以上とすることができ、0.002質量部以上とすることが好ましく、0.005質量部以上とすることがより好ましく、0.01質量部以上とすることがさらに好ましく、0.02質量部以上とすることが特に好ましい。また、難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、成分(C)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、5質量部以下とすることができ、1質量部以下とすることが好ましく、0.8質量部以下とすることがより好ましく、0.5質量部以下とすることがさらに好ましく、0.3質量部以下とすることが特に好ましい。
【0071】
スチレン系樹脂組成物において、成分(D)の含有量は特に限定されない。例えば、難燃性及び耐熱性が向上しやすい点で、スチレン系樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、0.01質量部以上とすることが好ましく、0.02質量部以上とすることがより好ましく、0.03質量部以上とすることがさらに好ましく、0.04質量部以上とすることが特に好ましい。また、成分(D)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、5質量部以下とすることができ、3質量部以下とすることが好ましく、1質量部以下とすることがより好ましく、0.8質量部以下とすることがさらに好ましく、0.5質量部以下とすることが特に好ましい。
【0072】
スチレン系樹脂組成物に成分(E)が含まれる場合、その含有量は特に限定されない。例えば、発泡成形体の熱安定性が向上しやすい点で、成分(E)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、0.001質量部以上とすることができ、0.01質量部以上とすることが好ましく、0.02質量部以上とすることがより好ましく、0.03質量部以上とすることがさらに好ましい。また、発泡成形体の熱安定性が向上しやすい点で、成分(E)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、1質量部以下とすることが好ましく、0.8質量部以下とすることがより好ましく、0.6質量部以下とすることがさらに好ましく、0.4質量部以下とすることが特に好ましい。
【0073】
スチレン系樹脂組成物に成分(F)が含まれる場合、その含有量は特に限定されない。例えば、発泡成形体の難燃性が向上しやすい点で、成分(F)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、0.01質量部以上、0.5質量部以下とすることが好ましい。
【0074】
スチレン系樹脂組成物に成分(H)が含まれる場合、その含有量は特に限定されない。例えば、成分(H)の含有量は、前記スチレン系樹脂100質量部あたり、0.1質量部以上、5質量部以下とすることができる。
【0075】
スチレン系樹脂組成物は、上記各成分以外にも各種成分を含むことができる。例えば、後記する(G)成分である発泡剤を含むことができる。発泡剤は、後記するスチレン系樹脂組成物の発泡工程において、スチレン系樹脂組成物に配合してもよく、あるいは、スチレン系樹脂組成物を発泡する前にあらかじめ発泡核剤をスチレン系樹脂組成物に配合することもできる。
【0076】
その他、本発明の効果を損なわない範囲内で、スチレン系樹脂組成物は、各種の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定化剤、重金属不活性剤、耐衝撃改良剤、着色剤、滑剤、滴下防止剤、結晶核剤、帯電防止剤、相溶化剤などの公知の樹脂添加剤を挙げることができる。スチレン系樹脂組成物が添加剤を含む場合、その含有割合は、例えば、スチレン系樹脂の質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下とすることができる。
【0077】
スチレン系樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、公知の発泡用スチレン系樹脂組成物の調製方法と同様とすることができる。例えば、難燃剤組成物と、(A)成分と、その他必要に応じて添加する1種以上の成分とを所定の混合割合で混合することでスチレン系樹脂組成物を調製することができる。
【0078】
スチレン系樹脂組成物は、例えば、各種発泡方法により、発泡成形体を形成することができる。例えば、スチレン系樹脂組成物を押出発泡することによって、スチレン系樹脂組成物の押出発泡成形体を得ることができる。
【0079】
押出発泡成形体を製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、押出発泡成形体は、下記押出発泡成形工程を備える製造方法により、製造することができる。
押出発泡工程;スチレン系樹脂組成物を押出機内で溶融混合し、(G)成分としての発泡剤(G)を押出機内に圧入し、次いで、押出機口金から大気中へ押出す工程。
【0080】
斯かる押出発泡工程によってスチレン系樹脂が発泡成形され、スチレン系樹脂組成物の押出発泡成形体が得られる。
【0081】
押出発泡工程では、押出機内に成分(A)、成分(B1)、成分(C)、及び成分(D)を任意の順序で供給し、押出機内で溶融混合して、発泡成形することができる。あるいは、各成分のいくつか又は全部をあらかじめ混合して混合物とした後に、当該混合物を押出機内に供給することができる。
【0082】
発泡剤としては、例えば、発泡成形で使用される公知の発泡剤を広く使用することができる。具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、モノクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルなどの揮発性有機発泡剤;水、窒素、炭酸ガスなどの無機発泡剤;アゾ化合物などの化学発泡剤;等が例示される。発泡剤は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0083】
発泡剤の配合量は所望の発泡体の性能及び採用する成形方法等に応じて適宜設定することができる。例えば、スチレン系樹脂100質量部に対し、発泡剤を0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部とすることができる。
【0084】
上記のように得られるスチレン系樹脂組成物の押出発泡成形体は、少なくとも成分(A)、成分(B1)、成分(C)及び成分(D)を含み、かつ、成分(C)及び成分(D)の含有量がそれぞれ特定の範囲である。これにより、押出発泡成形体は、優れた難燃性及び耐熱性を有し、しかも、成形性にも優れる。従って、押出発泡成形は、例えば、高い難燃レベルが求められる各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0086】
実施例および比較例に用いた原料は以下の通りとした。
【0087】
<成分(A)>
(A)スチレン系樹脂
・GP−PS(PSジャパン社製「PSJポリスチレン G9305」
【0088】
<成分(B1)>
テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)(第一工業製薬社製「ピロガード SR−130」)
【0089】
<成分(B2)>
・B2−1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(第一工業製薬社製「ピロガード SR−720N」)
・B2−2:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(第一工業製薬社製「ピロガード SR−750」)
・B2−3:トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(第一工業製薬社製「ピロガード SR−245」)
・B2−4:臭素化エポキシオリゴマー(阪本薬品工業社製「SR−T1000」)
【0090】
<成分(C)>
(C)脂肪酸亜鉛
・C−1:ステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製「Zn−St」)
・C−2:12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製「ZS−6」)
・C−3:モンタン酸亜鉛(日東化成工業社製「ZS−8」)
・C−4:オレイン酸亜鉛
・C−5:ラウリン酸亜鉛(日東化成工業社製「ZS−3」)
【0091】
<成分(D)>
(D)脂肪酸金属塩
・D−1:ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製「Ca−St」)
・D−2:ステアリン酸マグネシウム(日東化成工業社製「Mg−St」)
・D−3:ステアリン酸アルミニウム(日東化成工業社製「Al−St」)
・D−4:ステアリン酸リチウム(日東化成工業社製「LI−ST」)
・D−5:ステアリン酸ナトリウム(日東化成工業社製「NA−ST」)
・D−6:12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製「CS−6」)
・D−7:ラウリン酸カルシウム(日東化成工業社製「CS−3」)
・D−8:ラウリン酸マグネシウム
・D−9:モンタン酸カルシウム(日東化成工業社製「CS−8」)
・D−10:モンタン酸マグネシウム(日東化成工業社製「MS−8」)
【0092】
<成分(E)>
(E)熱安定剤
ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」)
【0093】
<成分(F)>
(F)難燃増強剤
・F−1:2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日油社製「ノフマーBC−90」)
・F−2:トリフェニルホスフェート(大八化学工業社製「TPP」)
【0094】
<成分(G)>
(G)発泡剤
・G−1:イソブタン
・G−2:ジメチルエーテル
【0095】
<成分(H)>
(H)発泡核剤
・タルクMS(日本タルク工業(株)製)
【0096】
(実施例1)
後掲の表1に示す配合割合で発泡剤を除く各成分を、口径65mmの押出機に投入し、機内を200℃に加熱して溶融して可塑化し、混練を続けることで、押出機内でスチレン系樹脂組成物を調製した。押出機は、口径65mmから口径90mmに直列連結した二段押出機を使用した。各成分の配合量は、表1に示すように、成分(A)を100質量部、成分(B1)を0.9質量部、成分(B2)としてB2−1を2.1質量部、成分(C)としてC−1を0.03質量部、成分(D)としてD−1を0.1質量部、成分(E)を0.05質量部とした。
【0097】
続いて、65mm押出機先端(口径90mmの押出機の口金と反対側)に別ラインで、所定量の発泡剤を圧入し、口径90mmの押出機で樹脂温度(機内温度)を120℃に冷却した。表1に示すように、成分(G)である発泡剤としてG−1を3質量部及びG−2を3質量部(スチレン系樹脂100質量部あたり)とした。その後、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2.5mm、幅方向45mmの長方形断面のダイリップより大気中に樹脂組成物を押し出すことにより、直方体状であるスチレン系樹脂の押出発泡成形体を得た。
【0098】
(実施例2〜36)
表1及び表2に示すように各成分の種類と配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法で押出発泡成形体を得た。
【0099】
(比較例1〜8)
後掲の表3に示すように各成分の種類と配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法で押出発泡成形体を得た。
【0100】
(評価方法)
<難燃性>
JISK−7201に従って酸素指数を測定し、下記判断基準に基づいて難燃性能を評価した。
◎:酸素指数が26.5以上であり、特に優れた難燃性を有していた。
〇:酸素指数が26.0以上26.5未満であり、優れた難燃性を有していた。
×:酸素指数が26.0未満であり、優れた難燃性を有していなかった。
【0101】
<耐熱性>
各実施例及び比較例で得られた発泡成形体の黄変度合い(YI:イエローインデックス)から、発泡成形体の耐熱性を評価した。具体的に、試験中の押出発泡成形体をカッターでスライスしてボードとし、2軸ロールで圧縮した後粉砕機で粗砕した。粗砕物をラボプラストミルに投入し、200℃で溶融混練後すぐ取り出して冷却プレスにて3.2mm厚の板状に成形した。このように得られた板状成形品を220℃の熱プレスにて40分加熱後、冷却プレスにて冷却した。冷却後の板状成形品を塩化メチレンに10質量%となるように溶解させ、溶解液を0.45μmのフィルターに通し濾過した後の溶解液を耐熱試験サンプルとした。該サンプルのYI値を、分光色差計(日本電色工業(株)製SE−6000)を用いた透過法にて測定し、下記判断基準に基づいて耐熱性能を評価した。
◎:YI値が10以下であり、特に優れた耐熱性を有していた。
〇:YI値が10を超え、15以下であり、優れた耐熱性を有していた。
×:YI値が15を超え、優れた耐熱性を有していなかった。
【0102】
<成形性>
各実施例及び比較例で得られた発泡成形体の成形性については、下記判断基準に基づいて評価した。
〇:発泡体表面にボイド、突起物、異物及び変色はいずれも見られず、平滑で外観良好であった。
×:発泡体表面にボイド、突起物、異物及び変色の少なくともが一つが存在し、平滑さも外観も悪いものであった。
【0103】
表1及び2は、各実施例で使用した各成分の配合量(質量部)、並びに得られた発泡成形体の評価結果を示している。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表3は、各比較例で使用した各成分の配合割合、並びに得られた発泡成形体の評価結果を示している。なお、表1〜3において、「(C/B1)*100」及び「(D/B1)*100」はそれぞれ、成分(B1)100質量部あたりの成分(C)の含有量、及び、成分(B1)100質量部あたりの成分(D)の含有量を意味する。
【0107】
【表3】
【0108】
表1〜2から明らかなように、各実施例にて調製したスチレン系樹脂の押出発泡体は、優れた難燃性を有し、また、耐熱性にも優れていた。しかも、各実施例にて得られた押出発泡体は成形性にも優れるもののであった。これに対し、各比較例にて調製したスチレン系樹脂の押出発泡体は、成分(A)〜(D)のすべてを含む組成物から形成されていないため、難燃性及び耐熱性の両方を満足することができないものであった。特に、比較例1〜4と実施例との対比から、成分(C)及び成分(D)の両方を所定の含有量で含むことが、互いにトレードオフの関係にある難燃性及び耐熱性を顕著に向上させる上で重要であることがわかる。
【課題】優れた難燃性及び耐熱性を有する発泡成形体を製造するために使用することができる発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物、難燃性発泡スチレン系樹脂組成物及びその押出発泡成形体を提供する。
【解決手段】本発明の発泡スチレン樹脂用難燃剤組成物は、少なくとも成分(B1)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、成分(C)脂肪酸亜鉛、及び、成分(D)脂肪酸金属塩(ただし、前記(C)成分は除く)を含み、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(C)の含有量が0.1〜15質量部であり、前記成分(B1)100質量部あたりの前記成分(D)の含有量が1〜35質量部である。