(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6972405
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】熱間プレス成型用金型および熱間プレス成型用金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 37/16 20060101AFI20211111BHJP
F16J 13/00 20060101ALI20211111BHJP
B21D 37/20 20060101ALI20211111BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20211111BHJP
B21D 39/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B21D37/16
F16J13/00
B21D37/20 Z
B21D24/00 M
B21D39/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-32312(P2021-32312)
(22)【出願日】2021年3月2日
【審査請求日】2021年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 賢一
(72)【発明者】
【氏名】横田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】糸井 宏樹
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開2020−175447(JP,A)
【文献】
特開平08−294943(JP,A)
【文献】
特開2014−108609(JP,A)
【文献】
特開平08−117952(JP,A)
【文献】
実開昭57−034410(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第03163143(EP,A1)
【文献】
特開2016−036844(JP,A)
【文献】
特開昭58−181610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/16
F16J 13/00
B21D 37/20
B21D 22/20 − 24/00
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間プレス成型用の金型材料によって形成された金型本体と、
前記金型本体の内部に形成された冷媒通路を有する冷却構造とを備え、
前記冷媒通路は、前記金型本体の外面に開口する通路孔を含み、
前記通路孔の前記外面に開口する開口部は、栓部材によって閉塞され、
前記栓部材は、前記金型本体より熱膨張率が大きい材料によって形成されているとともに前記開口部に圧入状態で嵌合するピンによって形成され、熱処理を施すことで前記金型本体と拡散接合されたものであることを特徴とする熱間プレス成型用金型。
【請求項2】
前記栓部材は銅、純銅、銅合金、テルル銅、タフピッチ銅のいずれかであり、金型本体は機械構造用炭素鋼またはホットプレス金型用鋼である、請求項1の熱間プレス成型用金型。
【請求項3】
成型面を有しかつ前記熱間プレス成型用の金型材料によって形成された金型本体と、前記金型本体の内部に形成された冷媒通路を有する冷却構造とを備え、
前記冷媒通路は、前記金型本体の外面に開口する通路孔を含み、
前記通路孔の前記外面に開口する開口部は、栓部材によって閉塞され、
前記栓部材は、前記開口部に圧入状態で嵌合するピンによって形成され、
前記成型面には金型部品が突出し、
前記通路孔は、
前記成型面の近傍で前記成型面に沿って金型本体の一方の側面から金型部品の近傍まで延びる第1の通路孔と、
前記金型本体の前記成型面とは反対側の底面から前記成型面に向けて延びる非貫通孔からなる第2の通路孔と、
前記金型本体の前記一方の側面から前記金型部品と前記金型本体の前記底面との間を通って前記第2の通路孔に接続される第3の通路孔とを含み、
前記第1の通路孔と前記第2の通路孔が交差し、
前記第2の通路孔と前記第3の通路孔が交差し、
前記栓部材は、先端が前記他の通路孔と隣り合うように形成され、
前記第2の通路孔から前記第3の通路孔の空洞部分に至る断面L字状の通路が形成されている、請求項1の熱間プレス成型用金型。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の熱間プレス成型用金型の製造方法であって、 前記栓部材は、前記金型本体より熱膨張率が大きい材料によって形成され、
前記金型本体に前記通路孔を穿設するステップと、
前記通路孔の前記開口部に前記栓部材を圧入して嵌合させるステップと、
前記栓部材を前記通路孔に圧入した後に前記金型本体に熱処理を施すことで前記金型本体と拡散接合するステップとによって実施することを特徴とする熱間プレス成型用金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒が流れる通路孔の開口部に栓部材を備えた熱間プレス成型用金型およびこの熱間プレス成型用金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱間プレス成型用金型としては、例えば
図6に示すように構成されたものがある。
図6に示す従来の熱間プレス成型用金型1は、成型面2を有する金型本体3と、この金型本体3を冷却するための冷却構造4とを備えている。金型本体3は、熱間プレス成型用の金型材料によって所定の形状に形成されている。
【0003】
冷却構造4は、金型本体3の内部に形成された冷媒通路5を有し、この冷媒通路5に冷媒を流すように構成されている。冷媒通路5は、金型本体3に形成された複数の通路孔5a〜5eによって形成されている。通路孔5a〜5eは、例えばドリルによって形成され、金型本体3の外面に開口している。通路孔5b〜5dの開口部は、栓部材6によって閉塞されている。
栓部材6は、例えば特許文献1に記載されているように、スクリュープラグによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−236301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通路孔の開口部を閉塞するためにスクリュープラグを用いる従来の熱間プレス成型用金型では、以下の二つの問題があった。
第1の問題点は、製造するにあたり工数が多くなるという問題である。この理由は、スクリュープラグがねじ込まれるねじ穴(テーパータップ)を形成するタップ加工を全ての通路孔について行わなければならないからである。
第2の問題点は、スクリュープラグのねじ込み部から冷媒が漏洩するおそれがあるということである。このため、通路孔にねじ込まれているスクリュープラグを再度ねじ込み、確実に締結されているか否かを確認する必要がある。また、冷媒が漏洩した場合は、スクリュープラグを取り外してシールを交換する必要があるが、スクリュープラグが通路孔に固着して容易に外すことができないことがあり、作業が面倒になる。
【0006】
本発明の目的は、金型本体の通路孔を栓部材で簡単にかつ確実に閉塞することが可能な熱間プレス成型用金型および熱間プレス成型用金型の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る熱間プレス成型用金型は、熱間プレス成型用の金型材料によって形成された金型本体と、前記金型本体の内部に形成された冷媒通路を有する冷却構造とを備え、前記冷媒通路は、前記金型本体の外面に開口する通路孔を含み、前記通路孔の前記外面に開口する開口部は、栓部材によって閉塞され、前記栓部材は、前記開口部に圧入状態で嵌合するピンによって形成されているものである。
【0008】
本発明は、前記熱間プレス成型用金型において、前記通路孔は、前記金型本体の内部で他の通路孔と交差し、前記栓部材は、先端が前記他の通路孔と隣り合うように形成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記熱間プレス成型用金型において、前記栓部材は、前記金型本体より熱膨張率が大きい材料によって形成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る熱間プレス成型用金型の製造方法は、前記熱間プレス成型用金型の製造方法であって、前記金型本体に前記通路孔を穿設するステップと、前記通路孔の前記開口部に前記栓部材を圧入して嵌合させるステップと、前記栓部材を前記通路孔に圧入した後に前記金型本体に熱処理を施すステップとによって実施する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱間プレス成型用金型においては、通路孔の開口部にタップ加工が不要になる。栓部材は、圧入によって通路孔に簡単に取付けることができる。したがって、金型本体の通路孔を栓部材で簡単にかつ確実に閉塞することが可能な熱間プレス成型用金型を提供することができる。
【0012】
本発明に係る熱間プレス成型用金型の製造方法においては、金型本体に圧接している栓部材が熱処理を施すステップで金型本体とともに加熱される。すなわち、このステップで金型本体と栓部材との接触部において原子が拡散可能になる。
したがって、この発明によれば、いわゆる拡散接合の原理で栓部材と金型本体との間の漏洩経路が遮断されるようになるから、通路孔を栓部材で簡単かつ確実に閉塞することが可能な熱間プレス成型用金型の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る熱間プレス成型用金型の断面図である。
【
図3】
図3は、熱間プレス成型用金型の製造方法を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、通路孔どうしの間隔を説明するための正面図である。
【
図5】
図5は、熱間プレス成型用金型の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、従来の熱間プレス成型用金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る熱間プレス成型用金型および熱間プレス成型用金型の製造方法の一実施の形態を
図1〜
図5を参照して詳細に説明する。
[熱間プレス成型用金型の説明]
図1に示す熱間プレス成型用金型11は、金型本体12と、この金型本体12に設けられた金型部品13および冷却構造14などによって構成されている。金型本体12は、熱間プレス成型用の金型材料によって形成されている。この金型材料としては、例えば機械構造用炭素鋼やホットプレス金型用鋼などを用いることができる。
【0015】
金型本体12の表面(
図1において上側の面)には成型面15が形成されている。成型面15は、加熱された金属板材(図示せず)を他の金型(図示せず)と協働して挟んで成型品となるように成型する。なお、金型本体12の成型面15を含む外面は、後述する冷却構造14が実現された状態で熱処理が施されて焼き入れされている。この金型本体12によって成型する金属板材は、例えば自動車車体部品用の金属板材を用いることができる。
【0016】
成型面15には金型部品13が突出している。金型部品13としては、例えばパイロットピンが挙げられる。
冷却構造14は、金型本体12の内部に形成された第1〜第5の通路孔21〜25からなる冷媒通路26と、第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aを閉塞する第1〜第3の栓部材31〜33などによって構成されている。
冷媒通路26は、液状の冷媒(図示せず)あるいは気体からなる冷媒が流される通路で、第1〜第5の通路孔21〜25を組み合わせて一つの通路となるように形成されている。液状の冷媒としては、水や、薬剤を含む冷却液などを用いることができる。
【0017】
第1〜第5の通路孔21〜25は、金型本体12の外から例えばドリルによって形成されており、金型本体12の内部で他の通路孔と交差している。第1の通路孔21と第5の通路孔25は、成型面15の近傍で成型面15に沿って金型本体12の側面12a,12bから金型部品13の近傍まで延びている。第2の通路孔22は、金型本体12の成型面15とは反対側に位置する底面12cから第1の通路孔21の先端部を横切るように形成されている。第4の通路孔24は、金型本体12の底面12cから第5の通路孔25の先端部を横切るように形成されている。第3の通路孔23は、金型本体12の一方の側面12aから第2の通路孔22と第4の通路孔24とを横切るように形成されている。
【0018】
第1〜第5の通路孔21〜25のうち、第1の通路孔21と第5の通路孔25とを除く他の通路孔、すなわち第2〜第4の通路孔22〜24は、金型本体12の外面(側面12a、12b、底面12c)に開口する開口部22a〜24aが第1〜第3の栓部材31〜33によって閉塞されている。このため、これらの第1〜第5の通路孔21〜25からなる冷媒通路26は、第1の通路孔21が冷媒入口となり、第5の通路孔25が冷媒出口となるように形成されている。
【0019】
第1〜第3の栓部材31〜33は、
図2に示すように円柱状のピンによって形成され、第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aにそれぞれ圧入状態で嵌合している。第1〜第3の栓部材31〜33の外径は、第2〜第4の通路孔22〜24の孔径と同じか僅かに小さい。この実施の形態による第1〜第3の栓部材31〜33は、銅材料によって形成されている。ここでいう銅材料とは、純銅と銅合金とを含む。銅材料の熱膨張率は、金型本体12を形成する金型材料の熱膨張率より大きい。第1〜第3の栓部材31〜33を銅合金によって形成する場合は、テルル銅やタフピッチ銅を用いることが好ましい。なお、第1〜第3の栓部材31〜33を形成する材料は、銅材料に限定されることはなく、熱間ダイス鋼や、金型本体12と同一の材料でもよい。
【0020】
第3の通路孔23の開口部23aを閉塞する第1の栓部材31は、先端が第2の通路孔22と隣り合うように形成されている。この実施の形態においては、第1の栓部材31の先端が第2の通路孔22の孔壁面に連なるように構成されている。このため、第1の栓部材31の先端が実質的に第2の通路孔22の延長部となり、第2の通路孔22から第3の通路孔23の空洞部分に至る断面L字状の通路が形成される。
【0021】
第2の通路孔22の開口部22aを閉塞する第2の栓部材32は、先端が第3の通路孔23と隣り合うように形成されている。この実施の形態においては、第2の栓部材の先端が第3の通路孔23の孔壁面に連なるように構成されている。
第4の通路孔24の開口部24aを閉塞する第3の栓部材33は、先端が第3の通路孔23と隣り合うように形成されている。この実施の形態においては、第3の栓部材33の先端が第3の通路孔23の孔壁面に連なるように構成されている。
【0022】
第1〜第5の通路孔21〜25は、
図1の紙面と直交する方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の位置にそれぞれ形成されている。互いに隣り合う二つの第1の通路孔21,21の間隔d(
図4参照)は、3mm〜10mmで、好ましくは3mmである。なお、間隔dが3mm未満であると、金型としての強度が足りなくなる。
図4中に二点鎖線で示す二つの円は、第1〜第3の栓部材31〜33の代わりにスクリュープラグ(図示せず)を使用する場合のテーパータップの開口形状を示している。スクリュープラグを使う場合は、第1の通路孔21より径が大きいテーパータップを形成しなければならないために、第1の通路孔21どうしの間隔が間隔dより大きくなる。言い換えれば、この実施の形態を採ることにより、スクリュープラグを使用する場合と較べて、冷媒通路26どうしを近接させることができ、冷却効率を高くすることが可能になる。
【0023】
[熱間プレス成型用金型の製造方法の説明]
次に、
図5に示すフローチャートを参照してこの実施の形態による熱間プレス成型用金型の製造方法を説明する。
図1に示す熱間プレス成型用金型11を製造するためには、先ず、
図5の通路孔穿設ステップS1を実施する。この通路孔穿設ステップS1は、
図3(A)〜(F)に示すように行う。すなわち先ず、
図3(A)に示すように、金型本体12を形成し、この金型本体12に成型面15を形成する。
【0024】
次に、
図3(B)に示すように、金型本体12に成型面15から突出する金型部品13を取付けるための場所(座面13a)を形成する。
その後、
図3(C)に示すように、金型本体12の底面12cが上方を指向するように金型本体12の姿勢を変える。そして、金型本体12の成型面15とは反対側の底面12cから成型面15に向けて非貫通孔からなる第2の通路孔22と第4の通路孔24を座面13aがこれらの第2および第4の通路孔22,24によって挟まれるように形成する。
【0025】
次に、
図3(D)に示すように、成型面15が上方を指向するように金型本体12の姿勢を変えた状態で、金型本体12の一方の側面12a{
図3(D)においては左側の側面}から非貫通孔からなる第1の通路孔21を形成する。第1の通路孔21は、成型面15の近傍で金型本体12の一方の側面12aから成型面15に沿って延びて第2の通路孔22の先端部に接続されるように形成する。その後、
図3(E)に示すように、第1の通路孔21と金型本体12の底面12cとの間に非貫通孔からなる第3の通路孔23を形成する。第3の通路孔23は、金型本体12の一方の側面12aから座面13aと金型本体12の底面12cとの間を通って第2の通路孔22と第4の通路孔24とに接続されるように形成する。
【0026】
第3の通路孔23を形成した後、
図3(F)に示すように、金型本体12の他方の側面12bから非貫通孔からなる第5の通路孔25を形成する。第5の通路孔25は、成型面15の近傍で金型本体12の他方の側面12bから成型面15に沿って延びて第4の通路孔24の先端部に接続されるように形成する。
第1〜第5の通路孔21〜25を形成した後、圧入嵌合ステップS2を実施する。圧入嵌合ステップS2においては、第2、第4の通路孔22,24の開口部22a,24aおよび第3の通路孔23の開口部23aに
図1に示すように第1〜第3の栓部材31〜33を打ち込んで圧入する。第1〜第3の栓部材31〜33が開口部22a〜24aに打ち込まれることにより、第1〜第3の栓部材31〜33の外周面の全域が第2〜第4の通路孔22〜24の孔壁面に密着し、第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aが閉塞される。
【0027】
このように第1〜第3の栓部材31〜33が第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aに圧入されることにより、第1の通路孔21から第2の通路孔22と、第3の通路孔23と、第4の通路孔24とを経て第5の通路孔25に至る一つの冷媒通路26が形成される。
第1〜第3の栓部材31〜33を圧入した後、熱処理ステップS3を実施する。熱処理ステップS3は、
図3(G)に示すように、金型本体12を加熱炉41に挿入し、所定の温度に加熱して行う。この熱処理を行う際の温度は、たとえば1020℃とすることができる。なお、銅の融点は、熱処理時の温度より高い1085℃であるので、熱処理ステップで栓部材が溶融することはない。このように熱処理を行うことにより金型本体12が焼き入れされ、所定の硬度を有する熱間プレス成型用金型11が完成する。
【0028】
[実施の形態による効果の説明]
この実施の形態による熱間プレス成型用金型11においては、従来の熱間プレス成型用金型とは異なり、第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aを閉塞するにあたってスクリュープラグを使用していないから、スクリュープラグを取付けるために行われていたタップ加工が不要になる。この実施の形態による熱間プレス成型用金型11において第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aを閉塞するために用いる第1〜第3の栓部材31〜33は、圧入によって第2〜第4の通路孔22〜24に取付けられているから、簡単に取付けることができる。
したがって、この実施の形態によれば、金型本体の通路孔を栓部材で簡単にかつ確実に閉塞することが可能な熱間プレス成型用金型を提供することができる。
【0029】
この実施の形態による熱間プレス成型用金型11の製造方法によれば、金型本体12に第1〜第3の栓部材が取付けられた後に熱処理が行われるから、第1〜第3の栓部材を取付けた部分において高いシール性が得られる。この理由は、熱処理ステップS3において、金型本体12に圧接している第1〜第3の栓部材31〜33に金型本体12の熱が伝導され、第1〜第3の栓部材31〜33が金型本体12と同等の温度に加熱されるからである。このように第1〜第3の栓部材31〜33が金型本体12に圧接した状態で加熱されることにより、金型本体12を構成する原子と、第1〜第3の栓部材31〜33を構成している原子とが金型本体12と第1〜第3の栓部材31〜33との境界面を越えて拡散可能になる。原子の拡散が起こることにより、いわゆる拡散接合によって第1〜第3の栓部材31〜33が金型本体12に接合されるようになる。すなわち、いわゆる拡散接合の原理で第1〜第3の栓部材31〜33と金型本体12との間の漏洩経路が遮断されるようになるから、この実施の形態による熱間プレス成型用金型の製造方法によれば、通路孔の開口部を栓部材で簡単かつ確実に閉塞することが可能になる。
【0030】
この実施の形態による第1〜第5の通路孔21〜25は、金型本体12の内部で他の通路孔と交差している。第1〜第3の栓部材31〜33は、先端が他の通路孔と隣り合うように形成されている。このため、複数の通路孔を交差させて冷媒通路26を形成しているにもかかわらず、冷媒が滞留する部分が生じることを防ぐことができる。したがって、この実施の形態によれば、冷媒が途中で滞留せずに無駄なく流れるようになるから、冷媒を効率よく流すことができ、冷却性能が高い熱間プレス成型用金型を提供することができる。
【0031】
この実施の形態による第1〜第3の栓部材31〜33は、金型本体12より熱膨張率が大きい材料によって形成されている。このため、第2〜第4の通路孔22〜24に圧入されている第1〜第3の栓部材31〜33が熱処理ステップS3で膨張することによって、第2〜第4の通路孔22〜24の孔壁面により一層強く押し付けられるようになる。このため、熱処理ステップS3を実施しているときに、金型本体12を構成する原子と、第1〜第3の栓部材31〜33を構成している原子とが拡散するための障壁が低くなると考えられ、いわゆる拡散接合が起こる可能性が高くなる。
【符号の説明】
【0032】
11…熱間プレス成型用金型、12…金型本体、14…冷却構造、21…第1の通路孔、22…第2の通路孔、22a,23a,24a…開口部、23…第3の通路孔、24…第4の通路孔、25…第5の通路孔、26…冷媒通路、31…第1の栓部材、32…第2の栓部材、33…第3の栓部材、S1…通路孔穿設ステップ、S2…圧入嵌合ステップ、S3…熱処理ステップ。
【要約】
【課題】金型本体の通路孔を栓部材で簡単にかつ確実に閉塞することが可能な熱間プレス成型用金型を提供する。
【解決手段】熱間プレス成型用の金型材料によって形成された金型本体12を備える。金型本体12の内部に形成された冷媒通路26を有する冷却構造14を備える。冷媒通路26は、金型本体12の外面(側面12a,12b、底面12c)に開口する第1〜第5の通路孔21〜25を含む。第2〜第4の通路孔22〜24の開口部22a〜24aは、第1〜第3の栓部材31〜33によって閉塞される。第1〜第3の栓部材31〜33は、開口部22a〜24aに圧入状態で嵌合するピンによって形成されている。
【選択図】
図1