特許第6972418号(P6972418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972418酸化処理装置及び酸化処理方法、並びに改質燃料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6972418
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】酸化処理装置及び酸化処理方法、並びに改質燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 9/06 20060101AFI20211111BHJP
   C10B 57/08 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C10L9/06
   C10B57/08
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-104606(P2021-104606)
(22)【出願日】2021年6月24日
【審査請求日】2021年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】関本 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森 英一朗
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−071791(JP,A)
【文献】 特開平09−104871(JP,A)
【文献】 特開昭62−050393(JP,A)
【文献】 特開2015−150520(JP,A)
【文献】 特開2019−099777(JP,A)
【文献】 特開2016−040364(JP,A)
【文献】 特開2015−030736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 9/00
C10B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を酸化処理する酸化処理装置であって、
前記原料を流動させながら酸化させる流動層を形成する本体部と、
前記本体部の下部から、前記原料が流動するように150〜300℃の酸素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記本体部から前記流動層を通過したガスを排出するガス排出部と、
前記本体部よりも下流に前記原料を酸化させて得られる酸化処理物を冷却する冷却部と、
前記冷却部から前記酸化処理物を導出する導出部と、を備え、
前記本体部は、フリーボード部に第1圧力測定部を有するとともに、前記流動層が通過する部分に第2圧力測定部を有し、
前記導出部は、前記第1圧力測定部で測定される圧力と、前記第2圧力測定部で測定される圧力との差圧に基づいて前記酸化処理物の導出量を調節する導出量調節部を有する、酸化処理装置。
【請求項2】
前記原料は前記バイオマス半炭化物を含む、請求項1に記載の酸化処理装置。
【請求項3】
前記冷却部は、不活性ガスによって前記酸化処理物を60℃以下に冷却する、請求項1又は2に記載の酸化処理装置。
【請求項4】
前記本体部の内部空間の上部を複数に区画する仕切り板を備え、
前記仕切り板によって区画される複数のゾーンは、前記原料の流通方向に沿って互いに隣り合うように並んでいる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化処理装置。
【請求項5】
前記複数のゾーンのそれぞれの温度を個別に調節可能に構成される、請求項4に記載の酸化処理装置。
【請求項6】
前記酸素含有ガスの酸素濃度を13体積%以下に調節する酸素濃度調節部を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸化処理装置。
【請求項7】
前記ガス排出部から排出される前記ガスを前記ガス供給部に循環する循環流路と、
前記循環流路を流通する循環ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
前記酸素濃度測定部の測定結果に基づいて、前記ガス供給部から供給される前記酸素含有ガスの酸素濃度を調節する酸素濃度調節部と、を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化処理装置。
【請求項8】
前記ガス排出部から排出される前記ガスに含まれる固形分を回収する回収部を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化処理装置。
【請求項9】
前記ガス供給部と前記流動層との間に配置され、前記流動層を支持するとともに、前記酸素含有ガスが通過可能に構成される支持部材と、前記支持部材を振動させる振動機構と、を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化処理装置。
【請求項10】
乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を酸化処理する酸化処理方法であって、
150〜300℃の酸素含有ガスを本体部の下方から上方に向かって供給することによって、前記原料が流動する流動層を形成するガス供給工程と、
前記本体部において前記酸素含有ガスによって前記流動層に含まれる前記原料を酸化させる酸化工程と、
前記原料を酸化させて得られる酸化処理物を冷却部で冷却する冷却工程と、
冷却工程で冷却された前記酸化処理物を前記冷却部から導出する導出工程と、を有し、
前記導出工程は、前記本体部のフリーボード部における圧力と、前記本体部の前記流動層が通過する部分における圧力との差圧に基づいて前記酸化処理物の導出量を調節する、酸化処理方法。
【請求項11】
乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料から改質燃料を製造する改質燃料の製造方法であって、
150〜300℃の酸素含有ガスを本体部の下方から上方に向かって供給することによって、前記原料が流動する流動層を形成するガス供給工程と、
前記本体部において前記酸素含有ガスによって前記流動層に含まれる前記原料を酸化させて、改質燃料を得る酸化工程と、
前記原料を酸化させて得られる酸化処理物を冷却部で冷却する冷却工程と、
冷却工程で冷却された前記酸化処理物を前記冷却部から導出する導出工程と、を有し、
前記導出工程は、前記本体部のフリーボード部における圧力と、前記本体部の前記流動層が通過する部分における圧力との差圧に基づいて前記酸化処理物の導出量を調節する、改質燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化処理装置及び酸化処理方法、並びに改質燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
褐炭及び亜瀝青炭等の低品位炭を乾留すると、表面が活性化され、空気中の酸素と反応して自然発熱する。このような自然発熱を低減するため、酸素を含有する処理ガスを用いて乾留炭を不活性化する技術が知られている。例えば、特許文献1では、40〜95℃の温度範囲にある処理ガスを用いて、石炭の乾燥及び乾留によって得られた乾留炭の不活性化処理を行う技術が提案されている。処理ガスとしては、空気に窒素を混合して酸素濃度が5〜10%程度に調整されたガスが用いられている。
【0003】
石炭を不活性化させる装置としては、充填層を備える装置及びロータリーキルンを備える装置が知られている。例えば、特許文献2,3では、酸素を含有する処理ガスで乾留炭を不活性化する処理装置として、ロータリーキルンを備えるもの提案されている。特許文献2,3には、ロータリーキルンを備える処理装置を用いることによって、不活性化した石炭を短時間で製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−139537号公報
【特許文献2】特開2014−169375号公報
【特許文献3】特開2015−150520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石炭等の固体の不活性化は気固反応であり、酸素と固体中の官能基との酸化反応によって不活性される。ところが、特許文献1のように、40〜95℃の温度範囲で不活性化処理を行っても、官能基の酸化が十分に進行しないため、自然発熱性を十分に低減することが困難である。一方、特許文献2,3のように不活性化をロータリーキルンで行うと、キルンの回転によって定期的に固体は撹拌されるものの、固体が底部に滞留している間は固体周辺に酸素が供給され難くなる。このため、固体の酸化反応が進行すると固体周辺の酸素濃度が低下する。これによって、固体内部への酸素の拡散速度が下がり、固体内部における気固反応が遅くなる。
【0006】
また、ロータリーキルンは、その構造上、処理物の温度に応じて細かな運転調整を行うことが難しく、また、運転調整に対するレスポンスが遅い傾向にある。さらに、ロータリーキルンの場合、長手方向に沿って複数のガス吹き込み管、冷却管及び支持具等を設置する必要があるため、設備コストが増大する傾向がある。
【0007】
本開示は、自然発熱性を有する原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することが可能な酸化処理装置及び酸化処理方法を提供する。また、本開示は、自然発熱性が十分に低減された改質燃料を、短時間で円滑に製造することが可能な酸化処理物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一つの側面において、乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を酸化処理する酸化処理装置であって、原料を流動させながら酸化させる流動層を形成する本体部と、本体部の下部から、原料が流動するように150〜300℃の酸素含有ガスを供給するガス供給部と、本体部から流動層を通過したガスを排出するガス排出部と、を備える、酸化処理装置を提供する。
【0009】
上記酸化処理装置は、本体部の下部から150〜300℃の酸素含有ガスを供給して、本体部に流動層を形成し、原料を流動させながら酸化させている。150〜300℃の酸素含有ガスを用いていることから、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる。また、流動層を形成していることから、原料周辺にはガス供給部からの酸素含有ガスが十分に供給される。酸化反応後のガスは、酸素含有ガスに速やかに置換され、ガス排出部から排出されるため、原料周辺のガス中の酸素濃度を十分に高く維持することができる。したがって、原料表面及び内部への酸素の拡散速度が維持され、気固反応の速度を十分に高くすることができる。これらの要因によって、ロータリーキルンよりも、原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することができる。
【0010】
また、原料表面及び内部への酸素の拡散速度を維持できるため、粒度分布が広い原料であっても、酸化のばらつきを十分に低減することができる。また、上記酸化処理装置は、流動層を形成できればよいことから、ロータリーキルンを用いる設備に比べて、設備の簡素化を図ることもできる。
【0011】
上記酸化処理装置は、本体部よりも下流に原料を酸化させて得られる酸化処理物を冷却する冷却部と、冷却部から酸化処理物を導出する導出部と、を備えてもよい。これによって、酸化反応を速やかに停止し、高い安全性で酸化処理物を導出することができる。また、酸化処理物の自然発熱性を一層低減することができる。
【0012】
上記酸化処理装置は、本体部よりも下流に原料を酸化させて得られる酸化処理物の導出量を調節する導出量調節部を備えてもよい。これによって、本体部において酸化される原料及び酸化処理物の滞留時間を円滑に調整することができる。したがって、酸化処理物の酸化のばらつきを一層低減することができる。
【0013】
上記酸化処理装置は、本体部の内部空間の上部を複数に区画する仕切り板を備え、仕切り板によって区画される複数のゾーンは、原料の流通方向に沿って互いに隣り合うように並んでいてよい。これによって、酸化反応の進行度合いに応じて、ゾーン毎に個別に運転条件(例えば、温度、及び酸素濃度)を調整することができる。したがって、運転条件をより高い精度で調整することが可能となり、酸化処理物の酸化のばらつきを一層低減することができる。
【0014】
上記酸化処理装置は、複数のゾーンのそれぞれの温度を個別に調節可能に構成されてよい。これによって、酸化反応の進行度合いに応じて、ゾーン毎に温度を調節することができる。したがって、酸化処理物の酸化のばらつきを一層低減することができる。
【0015】
上記酸化処理装置は、酸素含有ガスの酸素濃度を13体積%以下に調節する酸素濃度調節部を備えてもよい。これによって、酸化反応が急激に進行することを十分に抑制することができる。また、本体部内の温度調整を高精度に行うことが可能となり、酸化処理物の酸化のばらつきを一層低減することができる。
【0016】
上記酸化処理装置は、ガス排出部から排出されるガスをガス供給部に循環する循環流路と、循環流路を流通する循環ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、酸素濃度測定部の測定結果に基づいて、ガス供給部から供給される酸素含有ガスの酸素濃度を調節する酸素濃度調節部と、を備えてもよい。これによって、ガスの有効利用を促進し、運転コストを低減することができる。
【0017】
上記酸化処理装置は、ガス排出部から排出されるガスに含まれる固形分を回収する回収部を備えてもよい。回収部で回収される固形分は、酸化の状態に応じて、酸化処理物としてもよいし、原料として再利用してもよい。このようにして、原料の有効利用を図り、運転コストを低減することができる。
【0018】
上記酸化処理装置は、ガス供給部と流動層との間に配置され、流動層を支持するとともに、酸素含有ガスが通過可能に構成される支持部材と、支持部材を振動させる振動機構と、を備えてもよい。これによって、流動層を構成する原料の流動を一層円滑にし、滞留時間を高い精度で調整することができる。
【0019】
本開示は、一つの側面において、乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を酸化処理する酸化処理方法であって、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層を形成するガス供給工程と、酸素含有ガスによって流動層に含まれる原料を酸化させる酸化工程と、を有する、酸化処理方法を提供する。
【0020】
上記酸化処理方法では、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層を形成し、流動層に含まれる原料を酸化させている。150〜300℃の酸素含有ガスを用いていることから、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる。また、流動層を形成していることから、原料周辺にはガス供給部からの酸素含有ガスが十分に供給される。酸化反応後のガスは、酸素含有ガスに速やかに置換されるため、原料周辺のガス中の酸素濃度を十分に高く維持することができる。したがって、原料表面及び内部への酸素の拡散速度が維持され、気固反応の速度を十分に高くすることができる。これらの要因によって、原料の酸化処理を短時間で円滑に行いつつも、酸化のばらつきを十分に低減することができる。また、原料表面及び内部への酸素の拡散速度を維持できるため、粒度分布が広い原料であっても、酸化のばらつきを十分に低減することができる。
【0021】
本開示は、一つの側面において、乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料から改質燃料を製造する改質燃料の製造方法であって、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層を形成するガス供給工程と、酸素含有ガスによって流動層に含まれる原料を酸化させて、改質燃料を得る酸化工程と、を有する、改質燃料の製造方法を提供する。
【0022】
上記製造方法では、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層を形成し、流動層に含まれる原料を酸化させている。150〜300℃の酸素含有ガスを用いていることから、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる。また、流動層を形成していることから、原料周辺にはガス供給部からの酸素含有ガスが十分に供給される。酸化反応後のガスは、酸素含有ガスに速やかに置換されるため、原料周辺のガス中の酸素濃度を十分に高く維持することができる。したがって、原料表面及び内部への酸素の拡散速度が維持され、気固反応の速度を十分に高くすることができる。これらの要因によって、原料の酸化処理を短時間で円滑に行いつつも、改質燃料の酸化のばらつきを十分に低減することができる。したがって、自然発熱性が十分に低減された改質燃料を、短時間で円滑に製造することができる。また、原料表面及び内部への酸素の拡散速度を維持できるため、粒度分布が広い原料を用いても、酸化のばらつきが十分に低減された改質燃料を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
自然発熱性を有する原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することが可能な酸化処理装置及び酸化処理方法を提供することができる。また、自然発熱性が十分に低減された改質燃料を、短時間で円滑に製造することが可能な酸化処理物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】酸化処理装置を示す図である。
図2図1の酸化処理装置を側面から見たときの本体部の内部を示す図である。
図3】酸素含有ガスの供給フローの一例を示す図である。
図4】酸素含有ガスの供給フローの別の例を示す図である。
図5】酸化処理物の自然発火性評価試験の結果を示すグラフである。
図6】酸化処理物の自然発火性評価試験の結果を示すグラフである。
図7】参考例1の重量変化比率の経時変化を示すグラフである。
図8】参考例1の重量変化比率の経時変化を示すグラフである。
図9】参考例3,4,5で用いた酸化処理装置を説明するための図である。
図10】参考例3のDSC発熱量の測定結果を示すグラフである。
図11】参考例4のDSC発熱量の測定結果を示すグラフである。
図12】参考例5のDSC発熱量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
図1の酸化処理装置100は、原料を流動させながら酸化させる流動層20を形成する本体部10と、本体部10の下部から、原料が流動するように150〜300℃の酸素含有ガスを供給するガス供給部12と、本体部10の上部から流動層20を通過したガスを排出するガス排出部14と、本体部10に原料を導入する導入部16と、原料を酸化して得られる酸化処理物(改質燃料)を導出する導出部19と、を備える。
【0027】
原料は、乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む。乾留炭は、石炭を乾留する乾留工程によって得ることができる。乾留工程では、石炭を無酸素の雰囲気下で400〜800℃の温度範囲に加熱する。これによって、石炭の揮発分を低減し、発熱量を十分に高くすることができる。石炭は、褐炭及び亜瀝青炭の少なくとも一方を含む低品炭であってよい。これによって、資源の有効利用を図ることができる。このように低品位炭を用いても、酸化処理装置100を用いることによって、自然発熱性が抑制された改質燃料を製造することができる。
【0028】
バイオマスとは、化石燃料以外の生物由来の資源をいう。バイオマスとしては、間伐材、剪定枝、廃材、樹皮チップ、その他の木材、竹、草、やし殻、パームオイル残渣、野菜、果実、食品残渣、汚泥等を挙げることができる。バイオマスは、間伐材、剪定枝、廃材、樹皮チップ、その他の木材等の木質系バイオマスを含んでよい。バイオマス半炭化物は、バイオマスを200〜450℃の温度(半炭化温度)に加熱する半炭化工程によって得ることができる。半炭化工程は、空気との接触をほぼ又は完全に遮断した状態で行うことができる。設備としては、例えば竪型シャフト炉又はキルン等を用いてよい。
【0029】
本開示における「半炭化物」とは、炭化処理が施されてバイオマスの一部が炭化されているものの完全には炭化されておらず、炭化される余地がまだ残っている状態をいう。完全炭化せずに半炭化の状態に留めることによって、バイオマス半炭化物(乾留物)の歩留を十分に確保でき、バイオマスが本来有する熱量を十分に有効活用することができる。
【0030】
乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料は、導入部16から本体部10に導入される(導入工程)。本体部10の内部空間の上部(フリーボード部22)には、仕切り板15が設けられている。この仕切り板15によって、本体部10の内部空間は、4つのゾーン10a,10b,10c,10dに区画されている。4つのゾーン10a,10b,10c,10dは、原料の流通方向に沿って互いに隣り合うように並んでいる。具体的には、上流側から下流側に向かって、第1ゾーン10a、第2ゾーン10b、第3ゾーン10c、第4ゾーン10dの順に並んでいる。仕切り板15の下端と本体部10の下部に配置される支持部材25との間を、原料が流動層20を形成しながら通過する。
【0031】
ガス供給部12は、酸素含有ガスを本体部10の下部から上方に向かって供給する(ガス供給工程)。酸素含有ガスの酸素濃度は、原料の酸化反応の急激な進行を抑制する観点から、13体積%以下であってよく、10体積%以下であってもよい。酸素含有ガスの酸素濃度は、原料の酸化反応の進行を促進する観点から、3体積%以上であってよく、6体積%以上であってもよい。酸素含有ガスとしては、例えば、石炭の乾留工程、及び/又はバイオマスの半炭化工程で生じる可燃性ガスを燃焼して得られる燃焼ガスであってもよいし、不活性ガスと空気との混合ガスであってもよい。本開示における酸素濃度の「体積%」は、標準状態(25℃、100kPa)の条件における体積比率である。
【0032】
酸化処理装置100のガス供給部12は、酸素含有ガスを本管12Aに吐出するブロア12Bと、本管12Aから分岐する4つの分岐管12a,12b,12c,12dとを有する。4つの分岐管12a,12b,12c,12dは、本体部10における各ゾーン10a,10b,10c,10dのそれぞれに酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスは、本体部10の下部におけるプレナム室21、及び、支持部材25をこの順に通過して、本各ゾーン10a,10b,10c,10dに供給される。プレナム室21の天板をなす支持部材25は、目皿板、パンチングプレート、網板又はグレーチングであってよい。これによって、酸素含有ガスを鉛直上方に向かって通過可能としつつ、本体部10内の原料がプレナム室21に落下しないように支持している。このように、支持部材25を下方から上方に向かって通過し、本体部10の下部から吹き込まれる酸素含有ガスによって、原料が浮遊して流動層20が形成される。
【0033】
支持部材25は、図示しない振動機構によって、上下方向又は水平方向に沿って振動するように構成されていてもよい。これによって、原料(流動層20)の流動を十分円滑にすることができ、本体部10内に供給される酸素含有ガス量を少なくすることができる。振動機構は、支持部材25が振動可能に構成されればよい。例えば、支持部材25又は支持部材25が固定される本体部10の下部11bに、振動モータのような加振源を接続して構成してもよい。この場合、本体部10の上部11aと下部11bとを例えば蛇腹等で接続すれば、上部11aには加振源からの振動が伝わらないようにすることができる。
【0034】
本体部10内に供給される酸素含有ガスは150〜300℃の温度を有している。このような酸素含有ガスが原料と接触すると、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる(酸化工程)。酸化を一層促進する観点から、本体部10内に供給される酸素含有ガスの温度は180℃以上であってもよい。原料を酸化して得られる改質燃料の熱量を十分に維持する観点から、本体部10内に供給される酸素含有ガスの温度は、260℃以下であってよく、240℃以下であってもよい。
【0035】
原料は流動層20の状態で酸素含有ガスと接することになるため、酸化反応後のガスは酸素含有ガスに速やかに置換される。このため、原料周辺のガス中の酸素濃度を十分に高く維持することができる。したがって、原料表面及び内部への酸素の拡散速度が維持され、気固反応の速度を十分に高くすることができる。
【0036】
流動層20内において、酸素含有ガスと原料の官能基とが反応して生じる反応ガスは、本体部10の上部に接続されるガス排出部14から本体部10の外部に排出される(ガス排出工程)。ガス排出部14から排出されるガスは、未反応の酸素含有ガスを含んでいてもよい。ガス排出部14は、各ゾーン10a,10b,10c,10dの上部に接続される4つの分岐管14a,14b,14c,14dと、これらを合流させる本管14Aとを有する。ガス排出部14の下流には、ガス排出部14から排出されるガスに含まれる固形分を回収する回収部23が設けられている。具体的には、ガス排出部14の本管14Aが回収部23に接続されている。回収部23は、バグフィルタ及び/又はサイクロンを有していてよい。
【0037】
回収部23で回収された固形分は、導出部19から導出される改質燃料に混合してもよいし、再び導入部16から本体部10に導入してもよい(回収工程)。これによって、原料の有効利用を図り、改質燃料の収率を高くすることができる。なお、回収部23で回収される固形分の酸化の程度に応じて、改質燃料に合流させるか、原料に合流させるかを選択するようにしてもよい。回収部23で固形分が分離されたガスは、必要に応じて洗浄された後、煙突24から大気放出されてよい。
【0038】
酸化処理装置100では、仕切り板15で区画される各ゾーン10a,10b,10c,10dごとに、ガス供給部12の分岐管12a,12b,12c,12d、及び、ガス排出部14の分岐管14a,14b,14c,14dが設けられている。これによって、各ゾーン10a,10b,10c,10dごとに、個別に運転条件を調整することができる。例えば、各ゾーン10a,10b,10c,10dにおけるそれぞれの温度を監視し、温度の測定値に基づいて、分岐管12a,12b,12c,12dのいずれか一つから供給される酸素含有ガスの供給量を調節したり、酸素含有ガスの供給温度を調節したりすることができる。これによって、酸化反応の反応速度を高精度に調整することができる。分岐管12a,12b,12c,12dは、それぞれ独立して、温度及び流量が調節可能に構成されていてよい。
【0039】
図2に示すように、本体部10内には、流動層20の温度を測定する第1温度測定部T1と、プレナム室21の温度を測定する第2温度測定部T2とが設けられている。第1温度測定部T1及び第2温度測定部T2は、ゾーン10a,10b,10c,10dごとに設けられていてよい。これによって、ゾーン10a,10b,10c,10dごとに温度を監視し、必要に応じてゾーンごとに温度を調節することができる。
【0040】
図1に戻り、本体部10の下流には、原料を酸化させて得られる酸化処理物(改質燃料)を冷却する冷却部18が設けられている。導出部19は、冷却部18から改質燃料を導出する。本体部10で原料を酸化させて得られる酸化処理物は、高い温度(例えば150〜300℃)を有する。このため、本体部10から改質燃料を直接大気中に導出すると、自然発熱し易くなる場合がある。そこで、本体部10と導出部19の間に、酸化処理物を冷却する冷却部18を設けることによって、導出される酸化処理物の自然発熱し易くなることを抑制することができる。冷却部18は、不活性ガスによって改質燃料を冷却してもよいし、熱交換器(例えば水冷式)を用いて改質燃料を冷却してもよい。冷却部18では、改質燃料を例えば60℃以下に冷却する(冷却工程)。
【0041】
導出部19は、酸化処理物の導出量を調節する導出量調節部を有してよい。導出量調節部は、例えばロータリーバルブであってよい。導出量調節部で改質燃料の抜き出し量を調節することによって、本体部10における原料及び酸化処理物の滞留時間を円滑に調整することができる。滞留時間の調節は、導入部16からの原料の導入量を変えることによって調整してもよい。
【0042】
図2に示すように、本体部10は、各ゾーン10a,10b,10c,10dのフリーボード部22及び流動層20が通過する部分に、それぞれ第1圧力測定部P1及び第2圧力測定部P2を有する。第1圧力測定部P1と第2圧力測定部P2の差圧によって、各ゾーン10a,10b,10c,10dにおける流動層20の高さを測定することができる。例えば、第1圧力測定部P1と第2圧力測定部P2の差圧に基づいて導出部19からの改質燃料の導出量を調節し、本体部10内における原料の滞留時間を調整してもよい。
【0043】
図3に示すように、ガス供給部12は、原料ガスの酸素濃度を測定する第1酸素濃度測定部O1と、第1酸素濃度測定部O1の測定結果に基づいて濃度調節用ガスを原料ガスに合流させる酸素濃度調節部42とを有してよい。濃度調節用ガスは、例えば、不活性ガス又は空気であってよい。これによって、本体部10に供給される酸素含有ガスの酸素濃度の変動を抑制することができる。ガス供給部12は、さらに、酸素含有ガスの一部を大気放出する放出部44を有してよい。このような放出部44と流量調節部45とを兼ね備えることによって、ガス供給部12から本体部10に供給する酸素含有ガスの流量調節を速やかに行うことができる。
【0044】
酸化処理装置100の変形例では、図4に示すように、ガス排出部14から排出されるガスをガス供給部12に循環する循環流路40と、循環流路40を流通する循環ガスの酸素濃度を測定する第2酸素濃度測定部O2と、を有する。この変形例では、回収部23とガス供給部12とが循環流路40で接続されている。第2酸素濃度測定部O2の測定結果に基づいて、酸素濃度調節部42から濃度調節用ガスを循環流路40に供給し、循環流路40を流通する循環ガスと濃度調節用ガスとを合流させて酸素含有ガスを得る。このようにして、ガス供給部12から供給される酸素含有ガスの酸素濃度を調節することができる。このようにガス排出部14から排出されるガスを循環して利用することによって、ガスの有効利用を促進し、酸化処理装置の運転コストを低減することができる(循環工程)。
【0045】
酸化処理装置100及びこの変形例では、原料を流動させながら酸化させる流動層を形成する本体部を備えるため、原料の酸化処理を短時間で円滑に行うとともに、原料の酸化のばらつきを十分に低減することができる。また、原料が広い粒度分布が有していても、自然発熱性が十分に低く、且つ自然発熱性のばらつきが十分に低減された改質燃料を安定的に製造することができる。
【0046】
導入部16から導入される原料の粒度の平均値は、例えば、0.1〜100mmであってよく、0.5〜50mmであってよい。粒度の平均値は、原料を篩にかけて粒度の分布を取った時の積算重量割合が50%となる粒度である。原料は、ブリケットであってもよい。
【0047】
原料を、空気中、107℃で20分間保持したときに生じる酸化発熱量(無水ベース)の積算値(DSC発熱量)は、30kJ/kg以上であってよく、40kJ/kg以上であってもよい。酸化処理装置100及びこの変形例では、このような原料の自然発熱性を十分に低減し、安全性を十分に向上することができる。酸化処理物の上記DSC発熱量は、10kJ/kg以下であってよく、5kJ/kg以下であってもよい。
【0048】
酸化処理装置100で得られる酸化処理物は、固形燃料として用いてもよい。原料に含まれる官能基が酸化されているため、酸化処理物は改質燃料と称することもできる。酸化処理物の用途は、固形燃料に限定されず、他の用途に用いてもよい。
【0049】
一実施形態に係る酸化処理方法は、酸化処理装置100又はその変形例を用いて行ってよい。この場合の酸化処理方法は、本体部10に乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を導入する導入工程と、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層20を形成するガス供給工程と、酸素含有ガスによって流動層20に含まれる原料を酸化させる酸化工程と、本体部10で得られる酸化処理物を冷却部18で冷却する冷却工程と、冷却工程で冷却された酸化処理物を冷却部18から導出する導出工程と、ガス排出部14から本体部10の外部にガスを排出するガス排出工程と、ガス排出工程で排出されたガスに含まれる固形分を回収部23で回収する回収工程を有する。酸化処理方法の変形例では、ガス排出工程で排出されたガスから回収工程で固形分を回収した後、当該ガスをガス供給工程の酸素含有ガスの一部として再利用する循環工程を有していてもよい。
【0050】
酸化処理方法は、酸化処理装置100又はその変形例以外の装置を用いて行ってもよい。この場合、さらに別の工程を有していてもよいし、上述の一部の工程を有していなくてもよい。
【0051】
上述の酸化処理方法も、150〜300℃の酸素含有ガスを用いていることから、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる。また、流動層20を形成していることから、原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することができる。また、粒度分布が広い原料であっても、酸化のばらつきを十分に低減することができる。
【0052】
一実施形態に係る改質燃料の製造方法は、酸化処理装置100又はその変形例を用いて行ってよい。この場合の改質燃料の製造方法は、本体部10に乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を導入する導入工程と、150〜300℃の酸素含有ガスを下方から上方に向かって供給することによって、原料が流動する流動層20を形成するガス供給工程と、酸素含有ガスによって流動層20に含まれる原料を酸化させる酸化工程と、本体部10で得られる改質燃料を冷却部18で冷却する冷却工程と、冷却工程で冷却された改質燃料を冷却部18から導出する導出工程と、ガス排出部14から本体部10の外部にガスを排出するガス排出工程と、ガス排出工程で排出されたガスに含まれる固形分を回収部23で回収する回収工程を有する。改質燃料の製造方法の変形例では、ガス排出工程で排出されたガスから回収工程で固形分を回収した後、当該ガスをガス供給工程の酸素含有ガスの一部として再利用する循環工程を有していてもよい。
【0053】
改質燃料の製造方法は、酸化処理装置100又はその変形例以外の装置を用いて行ってもよい。この場合、さらに別の工程を有していてもよいし、上述の一部の工程を有していなくてもよい。
【0054】
上述の製造方法も、150〜300℃の酸素含有ガスを用いていることから、原料に含まれる官能基を十分に酸化することができる。また、流動層20を形成していることから、原料の酸化処理を短時間で円滑に行いつつ、改質燃料の酸化のばらつきを十分に低減することができる。また、粒度分布が広い原料であっても、酸化のばらつきが十分に低減された改質燃料を製造することができる。このように、自然発熱性が十分に低減された改質燃料を、短時間で円滑に製造することができる。
【0055】
以上、本開示の一実施形態及び変形例について説明したが、本開示は上記実施形態及び変形例に何ら限定されるものではない。例えば、酸化処理装置100の本体部10は4つのゾーン10a,10b,10c,10dを有していたが、ゾーンの数は4つに限定されない。別の幾つかの実施形態では、本体部はゾーンに区画されていなくてもよい。すなわち、仕切り板を備えていなくてよい。
【実施例】
【0056】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
図1に示すような構造を有する酸化処理装置を用いて、褐炭を乾留して得られた乾留炭の酸化処理を行った。ガス供給部から本体部内に供給する酸素含有ガスの酸素濃度は8体積%、及び温度は200℃とした。酸素含有ガスは、酸素と窒素の混合ガスであった。本体部内における原料(乾留炭)の滞留時間は、40分間とした。酸化処理前の乾留炭と、酸化処理によって得られた酸化処理物(改質燃料)の工業分析及び元素分析を行うとともに、高位発熱量を測定した。工業分析は、JIS M 8812:2006「石炭類及びコークス類−工業分析方法」に準拠して行った。元素分析は、JIS M 8819:1997「石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法」に準拠して行った。結果は、表1及び表2に示すとおりであった。各測定結果は、無水ベースの値である。
【0058】
(実施例2)
ガス供給部から本体部内に供給する酸素含有ガスの温度を240℃としたこと、及び、本体部内における滞留時間を70分間としたこと以外は、実施例1と同様にして酸化処理を行った。得られた酸化処理物(改質燃料)の工業分析及び元素分析の結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
【0059】
(比較例1)
実施例1と同様の乾留炭を用いて酸化処理を行った。この乾留炭の工業分析及び元素分析の結果は表1及び表2に示すとおりであった。酸化処理は、外熱式のロータリーキルン(内径:250mm、長さ:400mm)を用いて行った。ロータリーキルン内に乾留炭を収容し、酸素と窒素の混合ガス(酸素濃度:8体積%)を30〜50Nm/hの流速で流通させた。ロータリーキルン内における乾留炭の充填率は15体積%とした。ロータリーキルン内の温度を200℃に調節し、上述の混合ガスを流通させるとともにロータリーキルンを回転させながら、40分間の酸化処理を行った。得られた酸化処理物(改質燃料)の工業分析及び元素分析の結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
【0060】
(比較例2)
ロータリーキルン内の温度を240℃に調節したこと、及び、酸化処理の時間を120分間にしたこと以外は、比較例1と同様にして乾留炭の酸化処理を行った。得られた酸化処理物(改質燃料)の工業分析及び元素分析の結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
実施例1と比較例1は、酸化処理の温度及び滞留時間が同一である。原料である乾留炭と酸化処理後の酸化処理物の酸素濃度の差(Δ)を比較すると、流動層を用いた実施例1の方が、ロータリーキルンを用いた比較例1よりも酸化が進行していることが確認された(実施例1:Δ=1.7重量%,比較例1:Δ=0.7重量%)。また、実施例2は、比較例2よりも滞留時間が短いにも関わらず、酸化が十分に進行していることが確認された(実施例2:Δ=7.8重量%,比較例2:Δ=2.4重量%)。これらの結果から、ロータリーキルンよりも、流動層の方が乾留炭の酸化が円滑に進行することが確認された。
【0064】
各実施例、各比較例及び原料として用いた乾留炭の発熱量を評価した。具体的には、国際連合危険物輸送勧告試験[クラス4、区分4.2(自然発火性物質・自己発熱性物質)]に準じた手法によって、得られた酸化処理物の自然発火性評価試験を行った。この試験では、金網で形成された、一辺が10cmの立方体形状を有する容器の中に酸化処理物又は乾留炭を入れ、140℃の空気中に保管して発熱温度の経時変化を調べた。実施例1及び比較例1の結果は、図5に示すとおりであった。実施例2及び比較例2の結果は、図6に示すとおりであった。図5及び図6には、実施例1,2で原料として用いた乾留炭、比較用として乾留していない亜瀝青炭、及び瀝青炭の結果も併せて示した。図5及び図6に示すとおり、実施例1,2の酸化処理物の方が、比較例1,2の酸化処理物よりも発熱性が十分に抑制されていることが確認された。
【0065】
(参考例1)
褐炭を乾留して得られた乾留炭(約10mg)の酸化処理を行って、酸素吸着に伴う重量変化を測定した。TG−DSC試験装置(NETZSCH製、STA449F3)を用いて、酸素濃度が一定の酸素含有ガスを供給しながら、表3に示す温度でそれぞれ加熱して、重量変化比率を測定した。加熱時間は表3に示すとおりとした。重量変化比率の測定結果は、図7図8及び表3に示すとおりであった。これらの結果から、180℃程度の温度で十分に酸化が進行することが確認された。なお、温度が高くなり過ぎると、重量減少が生じることが分かった。これは、熱分解によるものと考えられる。
【0066】
【表3】

【0067】
(参考例2)
参考例1で得られた酸化処理物のDSC発熱量を測定した。秤量した試料をTG−DSC試験装置のサンプルホルダーに入れて、窒素雰囲気中(窒素ガス流量:100mL/min)、3℃/分で20℃から107℃に昇温した。107℃に到達した後に、窒素ガスから空気(流量:100mL/min)に切り替えた。切り替え後、20分間(1200秒間)試料を保持し、その間の酸化発熱量(無水ベース)を測定した。このようにして測定した酸化発熱量の積算値(以下、「DSC発熱量」という。)は、表4に示すとおりであった(表4中の数値の単位は「kJ/kg_dry」である。)。酸化処理前の乾留炭のDSC発熱量は、54.6kJ/kg_dryであった。これに対し、表4の酸化処理物はいずれも大幅に小さいDSC発熱量を示した。
【0068】
【表4】
【0069】
(実施例3)
冷却部18を有しないこと以外は図1の酸化処理装置と同様の構造を有する酸化処理装置を用いて、乾留炭の酸化処理を行った。乾留炭は、褐炭を、無酸素雰囲気下、540℃で1時間加熱することによって調製した。導入部から乾留炭を50〜60kg/hの導入速度で連続的に本体部10に導入し、乾留炭の酸化を行った。本体部10に供給する酸素含有ガスの温度は170〜180℃とし、酸素濃度は7〜8体積%とした。本体部10に供給される酸素含有ガスの流量は2400Nm/h、流速は2.5m/secとした。本体部10における乾留炭の滞留時間は100分間とした。
【0070】
第3ゾーン10cと第4ゾーン10dを流動する流動層から酸化処理物のサンプルを採取し、DSC発熱量を測定した。測定は、参考例2と同じ手順で行った。酸化処理前の乾留炭と導出部から導出された酸化処理物のDSC発熱量も測定した。なお、導出部から導出された酸化処理物は、目開き2mmの篩を用いて振り分けを行い、篩上と篩下のDSC発熱量をそれぞれ測定した。結果は、表5に示すとおりであった。
【0071】
(実施例4)
実施例3と同じ酸化処理装置を用いて、実施例3で導出部から導出された酸化処理物(篩い分け前)を再び酸化処理した。本体部10に供給する酸素含有ガスの温度は170〜190℃、本体部10における酸化処理物の滞留時間は100分間とした。その他の運転条件は実施例3と同じとした。
【0072】
実施例3と同様に、第3ゾーン10cと第4ゾーン10dを流動する流動層から酸化処理物のサンプルを採取し、DSC発熱量を測定した。導出部から導出された酸化処理物(篩下及び篩上)のDSC発熱量も実施例3と同様にして測定した。結果は、表5に示すとおりであった。
【0073】
(実施例5)
乾留炭の代わりにバイオマス半炭化物(パイン)を用い、実施例3と同様にして酸化処理を行った。バイオマス半炭化物は、パインを、無酸素雰囲気下、340℃で1時間加熱することによって調製した。導入部からバイオマス半炭化物を50〜60kg/hの導入速度で連続的に本体部10に導入し、バイオマス半炭化物の酸化を行った。本体部に供給する酸素含有ガスの温度は160〜170℃とし、酸素濃度は6〜8体積%とした。本体部10に供給される酸素含有ガスの流量は1000Nm/h、流速は1.0m/secとした。本体部10におけるバイオマス半炭化物の滞留時間は62分間とした。
【0074】
第2ゾーン10b、第3ゾーン10c、及び第4ゾーン10dを流動する流動層から、酸化処理物のサンプルをそれぞれ採取してDSC発熱量を測定した。測定は、参考例2と同じ手順で行った。酸化処理前のバイオマス半炭化物と導出部から導出された酸化処理物のDSC発熱量も測定した。結果は、表5に示すとおりであった。
【0075】
(実施例6)
実施例5と同じ酸化処理装置を用いて、実施例5の導出部から導出された酸化処理物を再び酸化処理した。本体部10に供給する酸素含有ガスの温度は200〜210℃、本体部10における酸化処理物の滞留時間は62分間とした。その他の運転条件は実施例5と同じとした。導出部から導出された酸化処理物のDSC発熱量を、実施例5と同様にして測定した。結果は、表5に示すとおりであった。
【0076】
【表5】
【0077】
表5中に示す数字の単位は、[kJ/kg_dry]である。括弧内の数値は本体部10における総滞留時間を示している。実施例3,4の「導出口」の結果は、上段が篩上で下段が篩下である。実施例4における回収部の数値は、バグフィルタで捕集された固形分のDSC発熱量である。
【0078】
表5に示すとおり、本体部10での滞留時間を長くすることによって、自然発熱性を十分に低減できることが確認された。実施例4,5では、第4ゾーン10dよりも導出口で得られたサンプルの方が、DSC発熱量が高くなっていた。これは、導出直後に大気下で酸化が急激に進んで酸化分解反応が起こりサンプル表面に新たな官能基が露出した結果、自然発熱性が再び上昇したと推測される。このような現象を抑制するためには、本体部の下流に冷却部を設け、導出前に酸化処理物を冷却することが有効であると考えられる。
【0079】
(参考例3)
褐炭を、無酸素雰囲気下、480℃で1時間加熱して乾留し、粒径の異なる3種類の乾留炭50a,50b,50cを得た。これらの乾留炭の高位発熱量はいずれも7000kcal/kgであり、DSC発熱量はいずれも40.6kJ/kgであった。
・乾留炭50a・・・粒径:約0.1mm
・乾留炭50b・・・粒径:2〜3mm
・乾留炭50c・・・ブリケット(10mm×10mm×20mm)
【0080】
図9に示すように、円柱状の外形を有する試験容器10Aを準備した。試験容器10Aの内部に目皿網25Aを設置し、目皿網25A上に、乾留炭50a,50b,50cを載置した。その後、乾留炭50a,50b,50cを収容した試験容器10Aを恒温槽に入れた。ガス供給部12から試験容器10A内に酸素含有ガスを供給して酸化処理を行った。酸素含有ガスの温度及び酸素濃度、並びに酸化処理時間は、表6に示すとおりとした。得られた各酸化処理物のDSC発熱量を測定した。結果は、表6及び図10に示すとおりであった。
【0081】
【表6】
【0082】
(参考例4)
褐炭を、無酸素雰囲気下、540℃で1時間加熱して乾留し、粒径の異なる3種類の乾留炭51a,51b,51cを得た。これらの乾留炭の高位発熱量はいずれも7490kcal/kgであり、DSC発熱量はいずれも44.8kJ/kg_dryであった。
・乾留炭51a・・・粒径:約0.1mm
・乾留炭51b・・・粒径:2〜3mm
・乾留炭51c・・・ブリケット(10mm×10mm×20mm)
【0083】
乾留炭50a,50b,50cの代わりに、乾留炭51a,51b,51cを用いたこと以外は、参考例3と同様にして酸化処理を行った。酸素含有ガスの温度及び酸素濃度、並びに酸化処理時間は表7に示すとおりとした。得られた各酸化処理物のDSC発熱量を測定した。結果は、表7及び図11に示すとおりであった。
【0084】
【表7】
【0085】
(参考例5)
ユーカリを、無酸素雰囲気下、380℃で1時間加熱して乾留し、粒径の異なる2種類のバイオマス半炭化物52a,52bを得た。これらのバイオマス半炭化物の高位発熱量はいずれも6760kcal/kgであり、DSC発熱量はいずれも35.2kJ/kg_dryであった。
・バイオマス半炭化物52a・・・粒径:約0.1mm
・バイオマス半炭化物52b・・・粒径:2〜3mm
【0086】
乾留炭50a,50b,50cの代わりに、バイオマス半炭化物52a,52bを用いたこと以外は、参考例3と同様にして酸化処理を行った。酸素含有ガスの温度及び酸素濃度、並びに酸化処理時間は表8に示すとおりとした。得られた各酸化処理物のDSC発熱量を測定した。結果は、表8及び図12に示すとおりであった。
【0087】
【表8】
【0088】
表6〜表8、及び、図10図12に示すとおり、乾留炭及びバイオマス半炭化物の粒度(サイズ)が異なっても、酸化処理が十分に進行し、自然発熱性が低減されることが確認された。したがって、粒度分布が広い原料であっても、酸化のばらつきを十分に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
自然発熱性を有する原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することが可能な酸化処理装置及び酸化処理方法を提供することができる。また、自然発熱性が十分に低減された改質燃料を、短時間で円滑に製造することが可能な酸化処理物の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…本体部、10A…試験容器、10a…第1ゾーン(ゾーン)、10b…第2ゾーン(ゾーン)、10c…第3ゾーン(ゾーン)、10d…第4ゾーン(ゾーン)、11a…上部、11b…下部、12…ガス供給部、12A,14A…本管、12B…ブロア、12a,12b,12c,12d,14a,14b,14c,14d…分岐管、14…ガス排出部、15…仕切り板、16…導入部、18…冷却部、19…導出部、20…流動層、21…プレナム室、22…フリーボード部、23…回収部、24…煙突、25…支持部材、25A…目皿網、40…循環流路、42…酸素濃度調節部、44…放出部、45…流量調節部、50a,50b,50c…乾留炭、100…酸化処理装置、O1…第1酸素濃度測定部、O2…第2酸素濃度測定部、P1…第1圧力測定部、P2…第2圧力測定部、T1…第1温度測定部、T2…第2温度測定部。
【要約】
【課題】自然発熱性を有する原料の酸化処理を短時間で円滑に行うこと、及び、酸化のばらつきを十分に低減することが可能な酸化処理装置を提供すること。
【解決手段】乾留炭及びバイオマス半炭化物の少なくとも一方を含む原料を酸化処理する酸化処理装置100であって、原料を流動させながら酸化させる流動層20を形成する本体部10と、本体部10の下部から、原料が流動するように150〜300℃の酸素含有ガスを供給するガス供給部12と、本体部10から流動層20を通過したガスを排出するガス排出部14と、を備える、酸化処理装置100を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12