(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3熱交換器における熱交換量が基準量よりも小さいことを示す条件は、前記第1熱交換器および前記第3熱交換器の間を流れる前記冷媒の温度と前記第3熱交換器および前記第1減圧装置の間を流れる前記冷媒の温度との差が基準値よりも小さいという条件を含む、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示されるように、冷凍サイクル装置100は、室外機110と、室内機120とを備える。室外機110は、圧縮機1と、四方弁2(第2流路切替部)と、室外熱交換器3(第1熱交換器)と、電磁膨張弁31(第1減圧装置)と、流路切替部20(第1流路切替部)と、室外ファン41と、制御装置90と、温度センサ11〜15とを含む。室内機120は、室内熱交換器4(第2熱交換器)と、室内ファン42と、温度センサ16〜18とを含む。制御装置90は、室内機120に含まれていてもよいし、室外機110および室内機120とは別個に設けられていてもよい。
【0012】
冷凍サイクル装置100は、室内機120が配置されている空間に対して冷房運転および暖房運転が可能である。冷凍サイクル装置100においては、冷媒としてR290が使用される。
【0013】
冷房運転において四方弁2は、圧縮機1の吐出口Pdと室外熱交換器3とを連通させるとともに、室内熱交換器4と流路切替部20とを連通させる。冷房運転において冷媒は、圧縮機1の吐出口Pd、四方弁2、室外熱交換器3、電磁膨張弁31、室内熱交換器4、四方弁2、流路切替部20、および圧縮機1の吸入口Psの順に循環する。
【0014】
暖房運転において四方弁2は、圧縮機1の吐出口Pdと室内熱交換器4とを連通させるとともに、室外熱交換器3と流路切替部20とを連通させる。暖房運転において冷媒は、圧縮機1の吐出口Pd、四方弁2、室内熱交換器4、電磁膨張弁31、室外熱交換器3、四方弁2、流路切替部20、および圧縮機1の吸入口Psの順に循環する。
【0015】
図1とともに
図2も併せて参照しながら、圧縮機1の周囲には、圧縮機1からの熱を受ける蓄熱材10が配置されている。蓄熱材10は、吸入口Psが形成されている部分を除いて、圧縮機1の側面を覆っている。圧縮機1と蓄熱材10との間には、蓄熱材10と冷媒との熱交換を促進するため、熱伝導性の高い、金属、グリス、あるいはジェル状シート等が設けられてもよい。蓄熱材10の外周部をベルト等で締めて圧縮機1に密着させることによって、蓄熱材10と冷媒との熱交換を促進してもよい。
【0016】
流路切替部20は、流路FP1(第1流路)および流路FP2(第2流路)を形成可能である。流路FP1およびFP2の少なくとも一方は開放されている。流路FP1から流出する冷媒は、蓄熱材10を経由せずに圧縮機1の吸入口Psに至る。流路FP2から流出する冷媒は、蓄熱材10を経由して圧縮機1の吸入口Psに至る。蓄熱材10内の流路は、
図3に示されるように蛇行するように形成されてもよいし、
図4に示されるように複数の流路が並列に形成されてもよい。
【0017】
再び
図1を参照しながら、制御装置90は、室外熱交換器3と電磁膨張弁31との間を流れる冷媒の温度T11を温度センサ11から取得する。制御装置90は、室外熱交換器3を流れる冷媒の温度T12を室外熱交換器3の中間部に設置された温度センサ12から取得する。制御装置90は、室外機110が配置されている室外空間の温度T13を温度センサ13から取得する。
【0018】
制御装置90は、蓄熱材10の温度T14を温度センサ14から取得する。蓄熱材10が加熱されると蓄熱材10の内部で対流が生じ、密度が小さい高温の流体が蓄熱材10の上部に集まる。後に説明するように、温度センサ14によって計測される温度T14は、蓄熱材10による加熱が可能かどうかの判定に用いられる。温度センサ14が蓄熱材10の上部に設置されると、蓄熱材10全体としては十分な熱が蓄積されていないにも関わらず、蓄熱材10による加熱が可能と判定され得る。そのため、温度センサ14によって測定される温度は、できるだけ低温の流体が集まる蓄熱材10の部分の温度であることが好ましい。温度センサ14は、蓄熱材10の上部から蓄熱材の高さの1/3以下の位置に設置されることが好ましい。温度センサ14は、蓄熱材10の上部から蓄熱材の高さの1/2以下の位置に設置されることがさらに好ましい。
【0019】
冷媒は、蓄熱材10の内部に形成された流路を通過する。そのため、温度センサ14は、蓄熱材10の内部の温度を直接計測可能であることが好ましい。蓄熱材10の内部の温度を直接計測することが困難な場合には、熱伝導率の高い物体(たとえば棒状の金属)の一方端が蓄熱材10の外部に露出するように当該物体の他方端を蓄熱材10の内部に挿入し、当該物体の一方端の温度を温度センサ14によって計測してもよい。
【0020】
制御装置90は、吸入口Psを通過する冷媒の温度T15を温度センサ15から取得する。制御装置90は、室内熱交換器4と電磁膨張弁31との間を流れる冷媒の温度T16を温度センサ16から取得する。制御装置90は、室内熱交換器4を通過する冷媒の温度T17を室内熱交換器4の中間部に設置された温度センサ17から取得する。制御装置90は、室内機120が配置されている室内空間の室内温度T18を温度センサ18から取得する。
【0021】
制御装置90は、圧縮機1の駆動周波数を制御することにより、室内温度T18が目標温度(たとえばユーザによって設定された温度)となるように圧縮機1が単位時間あたりに吐出する冷媒量を制御する。制御装置90は、四方弁2を制御して、冷媒の循環方向を切り替える。制御装置90は、流路切替部20を制御して、流路FP1および流路FP2各々を単位時間当たりに通過する冷媒量を調節する。
【0022】
制御装置90は、圧縮機1に吸入される冷媒の過熱度、および凝縮器として機能する熱交換器から流出する冷媒の過冷却度の一方あるいは両方が所望の範囲の値となるように電磁膨張弁31の開度を制御する。凝縮器として機能する熱交換器は、冷房運転においては室外熱交換器3であり、暖房運転においては室内熱交換器4である。
【0023】
たとえば、圧縮機1に吸入される冷媒の過熱度を所望の範囲の値とする場合、圧縮機1に吸入される冷媒の温度T15と蒸発器として機能する熱交換器を流れる温度(温度T12またはT17)との温度差に基づいて電磁膨張弁31の開度を制御する。蒸発器として機能する熱交換器は、冷房運転においては室内熱交換器4であり、暖房運転においては室外熱交換器3である。凝縮器として機能する熱交換器から流出する冷媒の過冷却度を所望の範囲の値とする場合、凝縮器として機能する熱交換器を流れる冷媒の温度(温度T12またはT17)と当該熱交換器から流出する冷媒の温度(温度T11またはT16)との温度差に基づいて電磁膨張弁31の開度を制御する。
【0024】
制御装置90は、室外ファン41および室内ファン42の単位時間当たりの送風量を制御する。室外ファン41に関しては、室内の目標温度と室内温度T18との温度差から自動的に設定される運転モード(たとえば高速回転の定格モードあるいは低速回転の中間モード)に応じて、各運転モードに対して予め設定された回転速度でファンが駆動される。室内ファン42に関しては、ユーザによる設定(たとえば弱風モードあるいは強風モード)に応じた回転速度でファンが駆動される。なお、室内ファン42に関しても、たとえばユーザによって自動モードが選択された場合等、制御装置90による自動的なファンの回転速度の変更が許容される場合には、室外ファンと同様にファンが駆動されてもよい。
【0025】
なお、圧縮機1の吐出口Pdを通過する冷媒の温度を検出する温度センサを設置してもよい。当該温度センサの検出結果と予め設定されている目標吐出温度との温度差に基づいて、圧縮機1の駆動周波数、室外ファン41および室内ファン42各々の単位時間当たりの送風量、および電磁膨張弁31の開度が制御されてもよい。
【0026】
近年、地球温暖化防止の観点から、GWP(地球温暖化係数:Global Warming Potential)のより低い冷媒が求められている。従来から使用されていた冷媒(たとえばR410A)よりもGWPを低減可能な冷媒には、たとえばR32あるいはR290を挙げることができる。
【0027】
R32は、動作圧力が高いため、比較的小型の圧縮機によっても冷凍サイクル装置の冷凍効果を高めることができる。また、R32は、毒性を有さない。しかし、R32のGWPは、F−gas規制あるいはモントリオール議定書の規制値に対しては不十分である。一方、R290のGWPは、R32のGWPよりも低い。R290は、これらの規制に対して有効な冷媒の一つとして知られている。
【0028】
R290には、R32およびR410Aと異なり、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が大きいほど冷凍サイクル装置の理論COP(Coefficient of Performance)が大きいという特性を有する(
図5参照)。しかし、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を大きくするために蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒の温度を上昇させると、当該熱交換器の性能が低下することが知られている。
【0029】
また、凝縮器として機能する熱交換器から流出する冷媒の温度と蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒の温度との温度差がほとんどない場合、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を確保し難くなる。このような状況は、たとえば低負荷での冷房運転に生じ得る。
【0030】
図6は、比較例に係る冷凍サイクル装置の低負荷での冷房運転におけるエンタルピ、圧力、および温度の関係を示すp−h線図である。
図6において、曲線LC,GCは、それぞれ飽和液線、および飽和蒸気線を表す。飽和液線および飽和蒸気線は、臨界点CPにおいて接続されている。後に説明する
図14においても同様である。状態C1からC2の過程は、圧縮機による断熱圧縮過程を示す。状態C2からC3への過程は、凝縮器として機能する熱交換器による凝縮過程を表す。状態C3からC4への過程は、膨張弁による減圧過程を表す。状態C4からC1への過程は、蒸発器として機能する熱交換器による蒸発過程を表す。
図6には、室外温度T1の等温線が示されている。
【0031】
図6に示されるように、凝縮器として機能する熱交換器から流出する冷媒の状態を表す状態C3の温度が室外温度T1に近い場合、減圧過程、および蒸発過程を経て圧縮機に吸入される冷媒の状態を表す状態C1は、室外温度T1の等温線上の状態となり得る。低負荷の冷房運転においては、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が想定よりも小さくなり得る。
【0032】
そこで、冷凍サイクル装置100においては、圧縮機1に発生した熱を蓄熱材10に蓄積し、冷媒が当該蓄熱材10を経由して圧縮機1に吸入されるように流路FP2を形成する。蓄熱材10に蓄積された熱を利用することによって、蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒の温度の上昇を抑制しながら、圧縮機1に吸入される冷媒の過熱度を高めることができる。その結果、蒸発器として機能する熱交換器の性能低下を抑制しながら、GWPを低減するためにR290が使用される冷凍サイクル装置100の理論COPを向上させることができる。
【0033】
図7は、
図1の制御装置90によって行なわれる流路切替部20に対する処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示される処理は、冷凍サイクル装置100の統合的な制御を行なう不図示のメインルーチンによって一定時間間隔毎に呼び出される。なお、以下ではステップを単にSと記載する。
【0034】
制御装置90は、S101において蓄熱材10の温度T14が基準温度Tr1以上であるという条件(特定条件)が成立するか否かを判定する。蓄熱材10の温度T14が基準温度Tr1(たとえば30°)より小さい場合(S101においてNO)、制御装置90は、S102において流路FP1を通過する単位時間当たりの冷媒量が流路FP2を通過する単位時間当たりの冷媒量よりも多くなるように流路切替部20を制御して処理をメインルーチンに返す。蓄熱材10の温度T14が基準温度Tr1以上である場合(S101においてYES)、制御装置90は、蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒を加熱可能な熱が蓄熱材10に蓄積されているとして、S103において流路FP2を通過する単位時間当たりの冷媒量が流路FP1を通過する単位時間当たりの冷媒量よりも多くなるように流路切替部20を制御して処理をメインルーチンに返す。
【0035】
なお、蓄熱材10の温度T14が基準温度Tr1に達する時間を短縮するため、蓄熱材10の比熱は、水の比熱よりも低いことが好ましい。基準温度Tr1は、蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒を加熱可能な熱が蓄熱材10に蓄積されていることを示す温度であり、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜算出することができる。
【0036】
図8は、
図1の流路切替部20の具体的な構成を示す図である。
図8に示されるように、流路切替部20は、電磁開閉弁21および22を含む。電磁開閉弁21は、流路FP1に設けられている。電磁開閉弁21が開放されている場合、冷媒は流路FP1を通過することができる。電磁開閉弁21が閉止されている場合、冷媒は流路FP1を通過することができない。電磁開閉弁22は、流路FP2に設けられている。電磁開閉弁22が開放されている場合、冷媒は流路FP2を通過することができる。電磁開閉弁22が閉止されている場合、冷媒は流路FP2を通過することができない。制御装置90は、
図7のS102において電磁開閉弁21を開放するとともに、電磁開閉弁22を閉止する。制御装置90は、
図7のS103において電磁開閉弁21を閉止するとともに、電磁開閉弁22を開放する。
【0037】
図9は、
図1の流路切替部20の他の例である流路切替部20Aの具体的な構成を示す図である。
図9に示されるように、流路切替部20Aは、電磁膨張弁21Aおよび22Aを含む。電磁膨張弁21Aは、流路FP1に設けられている。制御装置90は、電磁膨張弁21Aの開度を調節することにより、流路FP1を通過する単位時間当たりの冷媒量を調節する。電磁膨張弁22Aは、流路FP2に設けられている。制御装置90は、電磁膨張弁22Aの開度を調節することにより、流路FP2を通過する単位時間当たりの冷媒量を調節する。
【0038】
図1の流路切替部20が流路切替部20Aである場合、制御装置90は、電磁膨張弁21Aおよび22A各々の開度を調節することにより、流路FP1を通過する単位時間当たりの冷媒量と流路FP2を通過する単位時間当たりの冷媒量との流量比率を制御する。
【0039】
冷凍サイクル装置100によれば、圧縮機1から発生した熱を、蓄熱材10を介して冷媒の加熱に用いるため、冷凍サイクル装置のエネルギー効率が向上する。また、蓄熱材10による冷媒の加熱により、暖房運転および低負荷の冷房運転においても圧縮機1に吸入される冷媒の過熱度を大きくすることができる。
【0040】
圧縮機1の潤滑油への冷媒の溶解量は冷媒の温度が高いほど少ない。圧縮機1に吸入される冷媒の温度が上昇することに伴って圧縮機1から吐出される冷媒の温度も上昇するため、潤滑油への冷媒の溶解量が低下する。冷媒が潤滑油へ溶解することによる冷凍サイクル装置を循環する冷媒量の低下を抑制することができるため、冷凍サイクル装置の安定的な運転に必要な冷媒量を削減することができる。
【0041】
室外温度が比較的低い場合(たとえば冬季)において、蓄熱材10の温度が蒸発器として機能する熱交換器から流出する冷媒の温度よりも低くなり得る。そのような場合に冷媒が蓄熱材10を通過すると、冷媒が蓄熱材10によって冷却される。蓄熱材10の温度によっては、冷媒が凝縮して液体の冷媒(液冷媒)となる可能性がある。液冷媒が圧縮機1に吸入されると、圧縮機1の性能が低下するとともに故障の可能性が高まる。冷凍サイクル装置100においては、そのような場合(
図7のS101においてNO)、蓄熱材10を経由せずに圧縮機1に冷媒を戻すことができる。その結果、圧縮機1の性能低下を抑制することができる。
【0042】
蓄熱材が覆う圧縮機1の側面は、たとえば
図10に示される蓄熱材10Aのように、発熱量が多い圧縮機1内のモータの周囲の側面部分に限定されてもよい。また、蓄熱材が覆う圧縮機1の側面は、
図11に示される蓄熱材10Bのように、流路FP2からの冷媒を圧縮機1の吸入口Psに導く流路の周囲の部分に限定されていてもよい。このように蓄熱材の形成される側面を限定することにより、蓄熱材のコストを削減することができる。
【0043】
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置に使用される冷媒は、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が大きいほど冷凍サイクル装置の理論COP(Coefficient of Performance)が大きいという特性が失われない程度に、R290以外の冷媒を含んでいてもよい。
【0044】
実施の形態1においては、1つの室外機と1つの室内機とを備える冷凍サイクル装置について説明した。冷凍サイクル装置は、複数の室内機を備える構成であってもよいし、複数の室外機を備える構成でもよい。
【0045】
実施の形態1においては冷房運転および暖房運転が切替可能なルームエアコンあるいはパッケージエアコンのような冷凍サイクル装置について説明した。冷凍サイクル装置は、四方弁のような流路切替弁を含まない、冷凍機のような冷却運転専用の構成であってもよい。
【0046】
以上、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置によれば、GWPを低減しながら、冷凍サイクル装置の性能低下を抑制することができる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態2においては、内部熱交換器(第3熱交換器)を備える冷凍サイクル装置について説明する。内部熱交換器においては、冷房運転が行われている場合に、圧縮機から吐出された後、膨張弁による減圧が行なわれる前の冷媒(高圧側冷媒)と、膨張弁による減圧が行なわれた後、圧縮機に吸入されるまでの冷媒(低圧側冷媒)との間で熱交換が行なわれる。実施の形態2においては、冷房運転が行われている場合に、内部熱交換器による冷媒の加熱および蓄熱材による冷媒の加熱のうち、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度をより上昇させることができる方が選択される。
【0048】
図12は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置200の構成を示す機能ブロック図である。冷凍サイクル装置200の構成は、
図1の冷凍サイクル装置100に内部熱交換器51と、温度センサ19が追加されているとともに、制御装置90が92に置き換えられている点である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0049】
図12に示されるように、内部熱交換器51は、流路FP1と圧縮機1の吸入口Psとの間に接続されているとともに、室外熱交換器3と電磁膨張弁31との間に接続されている。制御装置92は、内部熱交換器51と電磁膨張弁31との間を流れる冷媒の温度T19を温度センサ19から取得する。冷房運転が行なわれている場合、内部熱交換器51において、凝縮器として機能する室外熱交換器3からの高圧側冷媒と、流路FP1からの低圧側冷媒との間で熱交換が行なわれ、低圧側冷媒が高圧側冷媒によって加熱される。
【0050】
図13は、
図12の制御装置92によって冷房運転において行なわれる流路切換部20に対する処理の流れを示すフローチャートである。
図13に示される処理は、冷凍サイクル装置200の統合的な制御を行なう不図示のメインルーチンによって一定時間間隔毎に呼び出される。
図13に示されるフローチャートは、
図7に示されるフローチャートのS101がS201に置き換えられたフローチャートである。なお、暖房運転においては
図7に示される処理が行われる。
【0051】
図13に示されるように、制御装置92は、S201において、温度T14が基準温度Tr1以上であり、かつ、温度T11とT19との差が基準値Tdr2以下であるという条件(特定条件)が成立するか否かを判定する。温度T11とT19との差が基準値Tdr2以下であるという条件は、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいことを示す条件である。基準値Tdr2は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜算出される。
【0052】
温度T14が基準温度Tr1より小さいか、または、温度T11とT19との差が基準値Tdr2より大きい場合(S201においてNO)、制御装置92は、実施の形態1と同様にS102を行なって処理をメインルーチンに返す。温度T14が基準温度Tr1以上であり、かつ、温度T11とT19との差が基準値Tdr2以下である場合(S201においてYES)、制御装置92は、実施の形態1と同様にS103を行なって処理をメインルーチンに返す。なお、S201においては、温度T14が基準温度Tr1以上であるか、または、温度T11とT19との差が基準値Tdr2以下であるという条件が判定されてもよい。
【0053】
実施の形態2の変形例.
実施の形態2においては、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいか否かを温度差と基準値Tdr2との比較によって行なう場合について説明した。内部熱交換器51における熱交換量の指標となる温度差は、冷凍サイクル装置200の動作環境(たとえば室外温度T13)によって変化し得る。実施の形態2においては、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいか否かの判定精度が、冷凍サイクル装置200の動作環境の影響を受け易い。
【0054】
そこで、実施の形態2の変形例においては、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいか否かを、冷凍サイクル装置200の動作環境の変化によって変化し難い温度比率あるいはエンタルピ比率を用いて判定する。実施の形態2の変形例に係る冷凍サイクル装置によれば、冷凍サイクル装置の動作環境によらず、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいか否かの判定精度を維持することができる。
【0055】
実施の形態2の変形例に係る冷凍サイクル装置の構成は、
図13のS201のT11−T19≦Tdr2という条件が温度比率に関する条件あるいはエンタルピ比率に関する条件に変更された構成である。それ以外は同様であるため、以下では
図13の冷凍サイクル装置200も適宜参照しながら説明する。
【0056】
図14は、実施の形態2の変形例に係る冷凍サイクル装置において冷房運転が行なわれている場合のエンタルピ、圧力、および温度の関係を示すp−h線図である。状態C21からC22の過程は、圧縮機1による断熱圧縮過程を示す。状態C22からC25への過程は、室外熱交換器3による凝縮過程を表す。状態C25からC26への過程は、電磁膨張弁31による減圧過程を表す。状態C26からC21への過程は、室内熱交換器4による蒸発過程を表す。
図14においては、室外温度T13の等温線が示されている。
【0057】
図14に示されるように、凝縮過程の状態C23の温度は、温度センサ12によって検出される温度T12である。単一冷媒のR290の気液二相状態における温度はほぼ一定であるため、飽和液線上にある凝縮過程の状態C24の温度(飽和液の温度)は状態C23と同じ温度T12である。状態C25の温度は、温度センサ19によって検出される温度T19である。
【0058】
以下では、温度比率ΔTを、温度T12(第1温度)および室外温度T13の温度差ΔT1に対する温度T12および温度T19の温度差Δ2の比率とする。すなわち、ΔT=ΔT2/ΔT1である。また、エンタルピ比率Δhを、飽和液の状態C24のエンタルピh12(第1エンタルピ)および室外温度T13における液冷媒のエンタルピh13(第2エンタルピ)のエンタルピ差Δh1に対するエンタルピh24および状態C25のエンタルピh19(第3エンタルピ)のエンタルピ差Δh2の比率であるとする。すなわち、Δh=Δh2/Δh1である。
【0059】
冷凍サイクル装置の動作環境が変化した場合、温度差ΔT1およびΔT2の双方が同程度の割合で変化することが多い。温度比率ΔTの分母および分子の双方が同程度の割合で変化する場合、温度比率ΔTはほとんど変化しない。エンタルピ比率に関しても同様である。
【0060】
実施の形態2の変形例に係る冷凍サイクル装置においては、
図13のS201のT11−T19≦Tdr2という条件が、基準比率Rr1およびRr2を用いて、ΔT≧Rr1あるいはΔh≧Rr2という条件に置き換えられる。温度比率あるいはエンタルピ比率が予め定められた基準比率(たとえば0.8)と比較されることにより、冷凍サイクル装置の動作環境によらず、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいか否かの判定精度を維持することができる。基準比率Rr1およびRr2は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜算出される。基準比率Rr1およびRr2は、同じでもよい。
【0061】
以上、実施の形態2および変形例1に係る冷凍サイクル装置によれば、冷房運転において蓄熱材による加熱が行うことができない場合でも、内部熱交換器によって圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を上昇させることができる。その結果、GWPを低減しながら、冷凍サイクル装置の性能低下を実施の形態1よりもさらに抑制することができる。
【0062】
実施の形態3.
実施の形態2においては、冷房運転が行われている場合に、内部熱交換器による冷媒の加熱および蓄熱材による冷媒の加熱のうち、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度をより上昇させることができる方が選択される場合について説明した。実施の形態3においては、暖房運転においても、内部熱交換器による冷媒の加熱および蓄熱材による冷媒の加熱のうち、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度をより上昇させることができる方が選択される場合について説明する。
【0063】
図15は、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置300の構成を示す機能ブロック図である。冷凍サイクル装置300の構成は、
図12の冷凍サイクル装置200に電磁膨張弁32(第2減圧装置)および温度センサ19Aが追加されているとともに、制御装置92が93に置き換えられた構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0064】
図15に示されるように、電磁膨張弁32は、室外熱交換器3と内部熱交換器51との間に接続されている。制御装置93は、電磁膨張弁32と内部熱交換器51との間を流れる冷媒の温度T19Aを温度センサ19Aから取得する。制御装置93は、冷房運転においては冷媒の減圧を行なわない電磁膨張弁32を全開とし、電磁膨張弁31の開度を制御する。制御装置93は、暖房運転においては冷媒の減圧を行なわない電磁膨張弁31を全開とし、電磁膨張弁32の開度を制御する。
【0065】
図16は、
図15の制御装置93によって暖房運転において行なわれる流路切換部20に対する処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示されるフローチャートは、
図13のS201がS301に置き換えられたフローチャートである。なお、冷房運転においては
図13に示される処理が行われる。
【0066】
図16に示されるように、制御装置93は、S301において、温度T14が基準温度Tr1以上であり、かつ、温度T16とT19Aとの差が基準値Tdr3以下であるという条件(特定条件)が成立するか否かを判定する。温度T16とT19Aとの差が基準値Tdr3以下であるという条件は、内部熱交換器51における熱交換量が基準量よりも小さいことを示す条件である。基準値Tdr3は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜算出することができる。
【0067】
温度T14が基準温度Tr1より小さいか、または、温度T16とT19Aとの差が基準値Tdr3より大きい場合(S301においてNO)、制御装置93は、実施の形態1と同様にS102を行なって処理をメインルーチンに返す。温度T14が基準温度Tr1以上であり、かつ、温度T16とT19Aとの差が基準値Tdr3以下である場合(S301においてYES)、制御装置93は、実施の形態1と同様にS103を行なって処理をメインルーチンに返す。
【0068】
なお、S301においては、温度T14が基準温度Tr1以上であるか、または、温度T16とT19Aとの差が基準値Tdr3以下であるという条件が判定されてもよい。また、S301においては、実施の形態2の変形例と同様に、温度比率に関する条件あるいはエンタルピ比率に関する条件が用いられてもよい。その場合、実施の形態2の変形例の温度T12、T13、およびT19が、それぞれ温度T17、T18、およびT19Aにそれぞれ置き換えられる。
【0069】
実施の形態3の変形例1.
実施の形態3の変形例1においては、2つの電磁膨張弁の各々に並列に逆止弁を接続することにより、圧力損失が低減される構成について説明する。
【0070】
図17は、実施の形態3の変形例1に係る冷凍サイクル装置300Aの構成を示す機能ブロック図である。冷凍サイクル装置300Aの構成は、
図15の冷凍サイクル装置300に逆止弁61および62が追加されているとともに、制御装置93が93Aに置き換えられた構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0071】
図17に示されるように、逆止弁61は、室内熱交換器4と内部熱交換器51との間において電磁膨張弁31に対して並列に接続されている。逆止弁61の順方向は、室内熱交換器4から内部熱交換器51に向かう方向である。逆止弁61の順方向に冷媒が流れる場合の圧力損失は、全開の電磁膨張弁31を冷媒が流れる場合の圧力損失よりも小さい。
【0072】
逆止弁62は、室外熱交換器3と内部熱交換器51との間において電磁膨張弁32に対して並列に接続されている。逆止弁62の順方向は、室外熱交換器3から内部熱交換器51へ向かう方向である。逆止弁62の順方向に冷媒が流れる場合の圧力損失は、全開の電磁膨張弁32を冷媒が流れる場合の圧力損失よりも小さい。
【0073】
冷房運転において制御装置93Aは、電磁膨張弁32を閉止する。冷房運転において、室外熱交換器3からの冷媒は、逆止弁62、内部熱交換器51、および電磁膨張弁31の順に通過する。暖房運転において制御装置93Aは、電磁膨張弁31を閉止する。暖房運転において、室内熱交換器4からの冷媒は、逆止弁61、内部熱交換器51、および電磁膨張弁32の順に通過する。
【0074】
冷凍サイクル装置300Aにおいては、冷媒の減圧を行なわない電磁膨張弁を閉止して、圧力損失がより小さい逆止弁を冷媒が通過するように流路を形成することにより、冷凍サイクル装置300よりも電磁膨張弁の圧力損失による性能低下を抑制することができる。ユーザは、2つの逆止弁の追加することによるコストの上昇および性能の向上を考慮して、冷凍サイクル装置300および300Aを適宜選択することができる。
【0075】
実施の形態3の変形例2.
実施の形態3および変形例1においては、内部熱交換器51において、凝縮器として機能する熱交換器からの高圧側冷媒と、流路FP1からの低圧側冷媒との間で熱交換が行なわれる場合について説明した。実施の形態3の変形例2においては、高圧側冷媒が圧縮機1から吐出された冷媒である場合について説明する。
【0076】
図18は、実施の形態3の変形例2に係る冷凍サイクル装置300Bの構成を示す機能ブロック図である。冷凍サイクル装置300Bの構成は、
図12の内部熱交換器51および温度センサ19に替えて内部熱交換器51Bおよび温度センサ19Bが追加され、制御装置92が93Bに置き換えられ、温度センサ11Bおよび電磁膨張弁32Bが追加された構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0077】
図18に示されるように、内部熱交換器51Bは、流路FP1と圧縮機1の吸入口Psとの間に接続されている。内部熱交換器51Bおよび電磁膨張弁32Bは、圧縮機1の吐出口Pdと、室外熱交換器3および電磁膨張弁31の間の流路との間においてこの順に直列に接続されている。内部熱交換器51Bにおいては、圧縮機1から吐出された高圧側冷媒と、流路FP1からの低圧側冷媒との間で熱交換が行なわれ、低圧側冷媒が高圧側冷媒によって加熱される。
【0078】
制御装置93Bは、電磁膨張弁32Bの開度を制御する。制御装置93Bは、内部熱交換器51Bと電磁膨張弁32Bとの間を流れる冷媒の温度T19Bを温度センサ19Bから取得する。制御装置93Bは、圧縮機1の吐出口Pdを通過する冷媒の温度T11Bを温度センサ11Bから取得する。
【0079】
制御装置93Bによって冷房運転および暖房運転において行なわれる流路切換部20に対する処理の流れは、
図13の温度T11、T19および基準値Tdr2が、温度T11B、T19Bおよび基準値Tdr4にそれぞれ置き換えられた構成である。基準値Tdr4は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜決定される。基準値Tdr4は、基準値Tdr2と同じでもよい。
【0080】
以上、実施の形態3、変形例1および2に係る冷凍サイクル装置によれば、冷房運転および暖房運転の双方において、蓄熱材による加熱が行うことができない場合でも、内部熱交換器によって圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を上昇させることができる。その結果、GWPを低減しながら、冷凍サイクル装置の性能低下を実施の形態2よりもさらに抑制することができる。
【0081】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。