(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学層が、ブリュースター角に傾斜した状態で入射するS偏光の偏光軸と前記光学層の遅相軸との角度が45°±3°の範囲内である位置関係で配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機等の運転者に情報を表示する方法として、ナビゲーションシステムやヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」ともいう)システム等が用いられている。HUDは液晶表示体(以下、「LCD」ともいう)等の画像投影手段から投射された画像を、例えば自動車のフロントガラス等に投影するシステムである。
【0003】
画像表示手段から出射した出射光は、反射鏡にて反射し、さらにフロントガラスで反射した後、観察者へ到達する。観察者はフロントガラスに投影された画像を見ているが、画像はフロントガラスよりも遠方の画像位置にあるように見える。この方法では、運転者はフロントガラスの前方を注視した状態でほとんど視線を動かすことなく、様々な情報を入手することができるため、視線を移さなければならなかった従来のカーナビゲーションに比べ安全である。
【0004】
HUDには、表示情報を実際にフロントガラスから見える景色に重ねて投影されるため、視界を遮ることなく、明るく見やすい画像が表示されることが望ましい。そのためには、前景が十分に見える透過性と、HUDによる表示画像が十分に見える反射性とを兼ね備える必要がある。しかしながら、表示光はフロントガラスの室内側と室外側の2つの表面で反射されるため、反射像が二重像となり、表示情報が見づらいという問題があった。
【0005】
この問題に対して、偏光方向を90°変えることができる旋光子を自動車用フロントガラスに用いることにより、反射像が二重像になるという問題を改善できることが知られている。例えば、特許文献1には、フィルム状の旋光子を内部に具備する自動車用フロントガラスにS偏光の表示光をブリュースター角で入射した場合には、車内側のフロントガラスの表面でS偏光の一部を反射させ、当該表面を透過したS偏光を旋光子によりP偏光に変換し、さらに車外側のフロントガラスの表面でP偏光の全てを車外に出射して二重像の発生を防ぐことが開示されている。また、特許文献1には、自動車用フロントガラスにP偏光の表示光をブリュースター角で入射した場合には、車内側のフロントガラスの表面ではP偏光を反射させず、当該表面を透過したP偏光を旋光子によりS偏光に変換し、かつ、車外側のフロントガラスの表面でS偏光のほぼ全てを反射させ、再度旋光子によりS偏光をP偏光に変換させて二重像の発生を防ぐことが開示されている。
【0006】
路面等からの反射光による眩しさの低減のために、サングラスを用いる場合がある。一般に、路面での反射光は偏光になる性質があるため、これらの反射光に対しては偏光サングラスの使用が有効である。しかしながら、偏光サングラスは、その防眩機能から、一般的にS偏光成分をカットするように構成されている。そのため、視認者が偏光サングラスを着用した場合には、表示光の主成分がS偏光であると、偏光サングラスに表示光が透過する際に、その表示光の輝度(表示輝度)が大きく低下する。よって、視認者が偏光サングラスを着用するか否かによって虚像の見え方が大きく変わってしまうことから、視認者に違和感を与えることが懸念される。
【0007】
特許文献2には、コレステリック液晶層が2枚の1/4波長板で挟持されるように積層された光制御フィルムを備える機能性ガラスを自動車用フロントガラスに用いた場合、偏光サングラスを着用しても高い視認性が得られることが開示されている。具体的には、このような機能性ガラスにP偏光の表示光をブリュースター角で入射させた後、透過光を車内側の1/4波長板で円偏光に変換し、さらに円偏光をコレステリック液晶層で反射させ、一方で、コレステリック液晶層で反射しなかった透過光を車外側の1/4波長板で再度P偏光に変換して車外に出射して二重像の発生を防ぐことが開示されている。しかしながら、この方法ではP偏光から円偏光への変換を要するため、その変換効率によっては輝度が十分ではない場合がある。そのため、より鮮明な表示画像の視認性が求められる。
【0008】
特許文献3には、S偏光成分とP偏光成分の両方を含む光源光を用いて画像を投影するヘッドアップディスプレイ装置において、フロントガラスに配置した位相差板のリタデーション値に応じて入射光が遮断される遮断軸を調整する偏光サングラスを用いることが開示されている。しかしながら、この方法によると、遮断軸を厳密にコントロールしなければ十分な防眩効果を得ることが困難であり、二重像の発生も懸念される。
【0009】
一方、車体のフロントガラスには通常無機ガラスが用いられているが、近年、軽量化による燃費低減、周囲部品との一体形成性、デザイン性の観点から樹脂化が求められている。フロントガラスの樹脂化の際には中間膜を介した合わせガラスの構成ではなく、一枚の透明樹脂基材が主な構成部材となると予想される。この場合にも二重像の改善が要求されている上、変換効率の影響を受けた輝度の低下、省エネルギーについて更なる改善が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、外部からの入射光に対する防眩効果を確保しつつ、鮮明な表示画像の視認を実現できる画像表示システム及びこれを用いたヘッドアップディスプレイシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、S偏光を表示媒体で反射させて表示画像を視認する画像表示システムにおいて、入射した光の偏光方向を90°変換させる光学層を有する光学積層体を表示媒体として使用し、さらに、所定の偏光制御機能を有する偏光制御部を設けることにより、二重像の発生を抑制しつつ、外部から入射される路面での反射光等が視認者への到達することを遮断し、十分な防眩効果及び鮮明な表示画像の視認を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下1)〜13)に関するものである。
1)
(A)(a−1)入射した光の偏光方向を90°変換させる光学層、及び(a−2)少なくとも1つの透明樹脂基材を含む光学積層体と、
(B)前記光学積層体にS偏光を出射する表示画像投影手段と、
(C)(c−1)S偏光を透過し、P偏光を遮断するP偏光制御部、又は(c−2)入射した光の偏光方向を90°変換し、S偏光を遮断するS偏光制御部を有する偏光制御部と、を備え、
前記光学積層体で反射したS偏光が前記偏光制御部に入射されるヘッドアップディスプレイ用画像表示システム。
2)
前記光学層が1/2波長板である、上記1)に記載の画像表示システム。
3)
前記光学積層体が、さらに(a−3)少なくとも1つのガラス板を有する、上記1)又は2)に記載の画像表示システム。
4)
前記偏光制御部がS偏光制御部を有する、上記1)乃至3)のいずれか一つに記載の画像表示システム。
5)
前記S偏光制御部が、(c−2a)入射した光の偏光方向を90°変換させる位相差フィルムを有する、上記4)に記載の画像表示システム。
6)
前記S偏光制御部が、(c−2a)入射した光の偏光方向を90°変換させる位相差フィルムと(c−2b)S偏光を遮断する偏光フィルムとを有する、上記4)に記載の画像表示システム。
7)
前記位相差フィルムが1/2波長板である、上記6)に記載の画像表示システム。
8)
前記S偏光制御部が、前記位相差フィルムと前記偏光フィルムとの積層体である、上記6)又は7)に記載の画像表示システム。
9)
前記位相差フィルムと前記偏光フィルムが、観察者を基準として外側からこの順序で配置されている、上記6)乃至8)のいずれか一つに記載の画像表示システム。
10)
前記偏光制御部がアイウェアに備えられている、上記1)乃至9)のいずれか一つに記載の画像表示システム。
11)
前記偏光制御部が自動車内バイザーに備えられている、上記1)乃至9)のいずれか一つに記載の画像表示システム。
12)
前記位相差フィルムが自動車内バイザーに備えられ、前記偏光フィルムがアイウェアに備えられている、上記6)又は7)に記載の画像表示システム。
13)
前記光学層が、ブリュースター角に傾斜した状態で入射するS偏光の偏光軸と前記光学層の遅相軸との角度が45°±3°の範囲内である位置関係で配置されている、上記1)乃至12)のいずれか一つに記載の画像表示システム。
14)
上記1)乃至13)のいずれか一つに記載の画像表示システムを備えるヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部からの入射光に対する防眩効果を確保しつつ、鮮明な表示画像の視認を実現できる画像表示システム及びこれを用いたヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従う実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、下記の実施形態は、本発明のいくつかの代表的な実施形態を例示したにすぎず、本発明の範囲において、種々の変更を加えることができる。また、図面は説明を明確にするために実際の態様に比べて幅、大きさ、厚み、形状等について模式的に表しているが、これもあくまで一例である。さらには、図面は本発明の効果を説明する上で不要な部分は適宜省略しているが、その省略したことについては本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
本発明の画像表示システムは、(A)(a−1)入射した光の偏光方向を90°変換させる光学層、及び(a−2)少なくとも1つの透明樹脂基材を含む光学積層体と、(B)光学積層体にS偏光を出射する表示画像投影手段と、(C)(c−1)S偏光を透過し、P偏光を遮断するP偏光制御部、又は(c−2)入射した光の偏光方向を90°変換し、S偏光を遮断するS偏光制御部を有する偏光制御部と、を備える。光学積層体で反射したS偏光が偏光制御部に入射され、偏光制御部を透過したS偏光又はP偏光を介して、観察者は光学積層体に表示された画像を視認できる。そのため、光学積層体の観察者側で反射された虚像を視認することになる。一方、光学積層体を透過したS偏光は、光学層によってP偏光へと変換され、P偏光は光学積層体の外側を透過する。その結果、二重像の発生を大幅に抑制することができる。また、光学積層体の外側(観察側の反対側)から入射される路面での反射光等の外部からの光には、S偏光成分が多いため、光学層によってP偏光へと変換されるが、偏光制御部によって観察者への反射光の到達が遮断される。その結果、十分な防眩効果及び鮮明な表示画像の視認を実現できる。
【0018】
ここで、光学積層体の観察者側とは、観察者(視認者)に近い光学積層体の一方の表面、すなわち、表示画像投影手段からのS偏光(以下、「表示光」ともいう)が到達する側であり、光学積層体の外側とは、観察者(視認者)から遠い光学積層体の他方の表面、すなわち、表示画像投影手段からのS偏光が到達せず、外部からの光が到達する側を意味する。また、後述する観察者(視認者)を基準として外側とは、偏光制御部に光学積層体からの偏光が入射する側を意味する。
【0019】
(A)光学積層体
本発明の画像表示システムに使用される光学積層体は、光学層と、少なくとも1つの透明樹脂基材とを備える。光学積層体は、更に少なくとも1つのガラス板を備えていてもよい。
図1には、本発明の画像表示システムが有する光学積層体の一実施形態が示されており、光学積層体1は、光学層2と、光学層2の両面に配置された透明樹脂基材3とを有しており、透明樹脂基材3の両面には更にガラス板4が設けられている。光学積層体1は、例えば、光学層2の両面に各透明樹脂基材3を設け、ガラス板4で挟み高温・高圧にて圧着し、作製することができる。
【0020】
(a−1)光学層
光学層は、入射した光の偏光方向を90°変換させる機能、すなわち、P偏光をS偏光に、又はS偏光をP偏光に変換する機能を有する。このような機能を有する光学層として、旋光子、例えば位相差値が所望の波長の1/2である1/2波長板単体、複数の位相差板の積層体、例えば2枚の1/4波長板の積層体等が挙げられる。これらのうち、光学層は1/2波長板であることが好ましい。
【0021】
(1/2波長板)
1/2波長板は、P偏光をS偏光に、又はS偏光をP偏光に変換する、すなわち偏光軸を変換する機能を持つ位相差素子であり、例えば、ポリカーボネート又はシクロオレフィンポリマーで作製されたフィルムを位相差が波長の1/2となるように一軸延伸したり、水平配向する重合性液晶を位相差が波長の1/2となるような厚さで配向させたりすることによって得ることができる。一般に、水平配向する重合性液晶を使用した1/2波長板は、偏光軸を変換させる作用を有する層としての重合性液晶層と、当該重合性液晶層を形成する塗布液が塗布される支持基板とから構成されている。このような1/2波長板の厚みの上限値は、液晶の配向性の観点から10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。一方、1/2波長板の厚みの下限値は、液晶の重合性の観点から0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。光が1/2波長板の表面に対して斜めの位置から入射する場合、光の入射角によって位相差が変化する場合がある。このような場合、より厳密に位相差を適合させるため、例えば、位相差素子の屈折率を調整した位相差素子を用いることにより、入射角に伴う位相差の変化を抑制することができる。例えば、位相差素子の面内での遅相軸方向の屈折率をnx、位相差素子の面内でnxと直交する方向の屈折率をny、位相差素子厚さ方向の屈折率をnzとするとき、下記式(1)で示される係数Nzが、好ましくは0.3以上1.0以下、より好ましくは0.5以上0.8以下となるように制御する。
【0023】
このような1/2波長板を使用した画像表示装置において、S偏光をP偏光に効率的に変換するために、光学積層体の表面に垂直な軸から45°以上65°以下に傾斜した位置から入射するS偏光の偏光軸と、1/2波長板の遅相軸とのなす角度θを、35°以上47°以下に制御することが好ましい。1/2波長板に入射するS偏光の入射角を45°以上65°以下の範囲にすることにより、P偏光の反射率を理論的に2%以下に抑制することができ、二重像の発生を抑制できる。すなわち、入射したS偏光は光学積層体の表面で反射し、このS偏光が観察者に到達する。透過したS偏光は1/2波長板によりP偏光に変換し、変換されたP偏光は入射側と反対側の光学積層体の空気との界面で反射されず、通過する。このように、光学積層体に入射するS偏光の入射角を制御することにより、二重像の発生を抑制することができる。また、角度θが35°未満又は47°よりも大きい場合、光学積層体に入射したS偏光をP偏光に変換する偏光軸変換性能が低く、その結果、ディスプレイ上の表示画像も暗くなってしまい、アイウェアを使用する場合にはその防眩効果を損なうおそれがある。そのため、この角度θを適切に制御することにより、1/2波長板は良好な偏光軸変換性能を示し、その結果、表示画像はより鮮明に視認できるようになる。
【0024】
1/2波長板が重合性液晶層を含む場合、重合性液晶層を構成する液晶組成物が支持基板上に塗布される。このような支持基板は、1/2波長板がHUDに使用される際、表示画像の視認性を保つために、可視光領域において、透明であることが好ましく、具体的には波長380nm以上780nm以下の可視光線透過率が50%以上であればよく、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、支持基板は、着色されていてもよいが、着色されていないか、着色が少ないことが好ましい。さらに、支持基板の屈折率は1.2以上2.0以下であることが好ましく、1.4以上1.8以下であることがより好ましい。支持基板の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、好ましくは5μm以上1000μm以下であり、より好ましくは10μm以上250μm以下であり、特に好ましくは15μm以上150μm以下である。
【0025】
支持基板は、単層であっても2層以上の積層体であってもよい。支持基板の材料の例としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらのなかでも、複屈折性の少ないトリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン及びアクリルなどが好ましい。
【0026】
次に、上記の重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いて、1/2波長板を作製する方法を説明する。このような方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを溶剤に溶解させ、次いで光重合開始剤を添加する。このような溶剤は、使用する液晶モノマーを溶解できれば、特に限定されるものではないが、例えば、シクロペンタノン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、シクロペンタノン及びトルエン等が好ましい。その後、この溶液を支持基板として用いられるPETフィルム又はTACフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱により溶剤を除去させながら、支持基板上で液晶となって配向するような温度条件で一定時間放置させる。このとき、プラスチック基板表面を塗布前に所望とする配向方向にラビング処理、又は偏光照射により光配向性を発揮する光配向材料をプラスチック基板表面に成膜し偏光照射する等の配向処理をしておくことで、液晶の配向をより均一にすることができる。これにより、1/2波長板の遅相軸を所望とする角度に制御し、かつ、1/2波長板のヘイズ値を低減することが可能となる。次いでこの配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等でネマチック液晶モノマーに紫外線を照射し、液晶の配向を固定化させることにより、所望とする遅相軸を有する1/2波長板を得ることができる。
【0027】
光学層として使用される1/2波長板の主な役割は、表面で反射されず透過したS偏光をP偏光に変換することである。これにより、光学積層体の外側に配置する透明基材からの反射を低減し、二重像の発生を抑制することが可能である。また、路面での反射光等の外部からの光をP偏光に変換することでもある。1/2波長板の波長分散性は特に制限はないが、ヘッドアップディスプレイ用途に適することが好ましく、特に、可視光領域の広い波長範囲で正確に偏光変換させるために1/2波長板は逆波長分散性を有することが望ましい。一般に高分子は複屈折の絶対値が短波長側で大きくなる正常分散をとるが、可視光の各波長の複屈折Δnの値を制御することによって長波長側で複屈折が大きくなるような液晶化合物であれば逆波長分散性が得られる。また、液晶化合物の波長分散特性に応じた適切な位相差値を有する複数の位相差板を、適切な遅相軸の組合せで積層させることによっても逆波長分散性が得られる。なお、S偏光をP偏光に効率的に変化するためには、光学層としての1/2波長板が、ブリュースター角に傾斜した状態で入射するS偏光の偏光軸と1/2波長板の遅相軸との角度が45°±3°の範囲内である位置関係で配置されていることが好ましく、当該角度は、45°±2°の範囲内であることがより好ましく45°±1°の範囲内であることが更に好ましい。
【0028】
(a−2)透明樹脂基材
光学積層体は、少なくとも1つの透明樹脂基材を有し、好ましくは2枚の透明樹脂基材を有する。この場合、光学層が2枚の透明樹脂基材で挟持されていることが好ましい。2枚の透明樹脂基材は互いに同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。透明樹脂基材は特に制限はないが、ヘッドアップディスプレイ用途に適することが好ましく、この場合、可視光透過率、ヘイズ値については一定の制約がある。例えば、可視光透過率は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、85%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。また、ヘイズ値は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。また、透明樹脂基材は光学異方性を有していないことが好ましい。
【0029】
透明樹脂基材の厚さは0.5mm以上25mm以下であることが好ましい。透明樹脂基材の厚さの上限は20mmであることがより好ましく、15mmであることが更に好ましい。また、透明樹脂基材の厚さの下限は0.6mmであることがより好ましく、0.7mmであることが更に好ましい。透明樹脂基材としては、例えば、環状ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等などが挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルブチラールが好ましい。透明樹脂基材は、1種単独であっても2層以上の積層体であってもよい。
【0030】
特に、ポリカーボネート樹脂は透明性に優れるとともに、衝撃吸収性が高く衝突時の安全性が向上し、さらに、耐衝撃性に優れ軽衝突においては破損しにくいため好ましい。ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等には、本発明の特性が損なわれない範囲で、主成分の樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合して樹脂組成物として用いることができる。なお、光学積層体が後述するガラス板を更に備え、ガラス板によって光学積層体層を支持又は挟持する場合には、透明樹脂基材はポリビニルブチラールであることが好ましい。なお、光学積層体の片面に(a−3)ガラス板を配置する場合を支持、両面に配置する場合を挟持として表現する。
【0031】
(a−3)ガラス板
光学積層体層は更にガラス板を有していてもよく、ガラス板で支持又は挟持された機能性ガラスとして使用してもよい。ガラス板は、例えば、機能性ガラスをフロントガラスとして利用しても、前方の景色が十分に視認可能な透明性があれば特に限定されるものではない。また、ガラス板の屈折率は1.2以上2.0以下であることが好ましく、1.4以上1.8以下であることがより好ましい。また、ガラス板の厚み、形状等も、表示光の反射に影響を与えない範囲であれば、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設計することができる。また、これらガラス板には反射面に多層膜からなる増反射膜、遮熱機能をも兼ねる金属薄膜等が設けられていてもよい。これらの膜は入射する偏光の反射率を向上させることができるが、自動車用フロントガラスとして、機能性ガラスを用いる場合は、機能性ガラスの可視光線透過率が70%以上となるように反射率を調整することが好ましい。なお、ガラス板には、例えばウインドシールドの様な曲面形状のガラスも含まれる。
【0032】
光学積層体層にガラス板に貼り合わせる方法としては、例えば、透明樹脂基材として熱可塑性樹脂を使用し、光学層を2枚の熱可塑性樹脂に挟持し、更に2枚のガラスで挟持し、高温・高圧にて圧着する方法が好ましい。この場合、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂(PVB)、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)又はエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂(EVA)が好ましく、PVBがより好ましい。2枚の透明樹脂基材の厚み、硬さは、表示光の反射に影響を与えない範囲であれば、特に限定されるものではなく、用途に応じてUVカット、遮熱、遮音や調光等の機能を適宜設計することができる。また、2枚の透明樹脂基材の厚み、硬さは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。
【0033】
こうして得られた機能性ガラスは、普通自動車、小型自動車、軽自動車などともに、大型特殊自動車、小型特殊自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラスとして使用できる。更に、機能性ガラスは、鉄道車両、船舶、航空機の窓としても、また、建材用及び産業用の窓材としても使用できる。機能性ガラスの使用の形態については、UVカット機能、遮熱機能、遮音機能及び調光機能の少なくとも1つの機能を有する部材と、積層又は貼合して用いることができる。
【0034】
(B)表示画像投影手段
本発明の画像表示システムは、S偏光を出射する表示画像投影手段を備える画像表示システムに使用される表示画像投影手段は、光学積層体の表面に対する入射角がブリュースター角近傍の角度になるようにS偏光の表示光を出射する。ここで、ブリュースター角近傍の角度とは、光学積層体の表面に対するS偏光のブリュースター角をαとしたとき、光学積層体に入射するS偏光の入射角が、α−10°以上α+10°以下の範囲であることを意味する。表示画像投影手段からのS偏光がブリュースター角近傍の角度で光学積層体に入射すると、多くのS偏光は反射し、観察者に到達するため、観察者は虚像を視認することができる。一方、光学積層体の表面で反射できずに光学積層体を透過したS偏光は、光学層でP偏光に変換され、変換されたP偏光は光学積層体を透過する。その結果、光学積層体の外側からの反射が防止され、二重像の発生を抑制することができる。なお、表示画像投影手段に到達する光がS偏光であれば、表示画像投射手段から出射される光はP偏光であってもよい。この場合、出射されたP偏光をS偏光へ変換する必要があるため、例えば、光学積層体にP偏光が到達する前に1/2波長板を備えることが好ましい。
【0035】
(C)偏光制御部
本発明の画像表示システムは、(c−1)S偏光を透過し、P偏光を遮断するP偏光制御部、又は(c−2)入射した光の偏光方向を90°変換し、S偏光を遮断するS偏光制御部を有する偏光制御部を備える。S偏光を透過し、P偏光を遮断するP偏光制御部として、例えば、レンズ自体がS偏光を透過し、P偏光を遮断するように偏光フィルターの吸収軸を垂直にしてレンズを作製した偏光サングラス、又は、S偏光を透過し、P偏光を遮断するように偏光フィルターの吸収軸を垂直にした偏光フィルム等が挙げられる。
【0036】
S偏光制御部は、(c−2a)入射した光の偏光方向を90°変換させる、すなわち、P偏光をS偏光又はS偏光をP偏光に変換させる位相差フィルムを有することが好ましい。このような位相差フィルムとしては、例えば、1/2波長板が挙げられる。また、S偏光制御部は、位相差フィルムの他に、S偏光を遮断する偏光フィルム又はS偏光を遮断する偏光サングラスを有することが好ましい。S偏光を遮断する偏光フィルムとしては、例えば、吸収軸が路面からの反射光、すなわち、偏光フィルムに入射するS偏光の偏光軸に対して水平である偏光フィルムが挙げられる。また、S偏光を遮断する偏光サングラスとして、例えば、偏光フィルターの吸収軸が偏光フィルターに入射するS偏光の偏光軸に対して水平である偏光サングラスが挙げられる。これらのうち、S偏光制御部は、(c−2a)入射した光の偏光方向を90°変換させる位相差フィルムと(c−2b)S偏光を遮断する偏光フィルムとを有することが好ましい。特に、位相差フィルムと偏光フィルムとを併用する場合、S偏光制御部は、位相差フィルムとS偏光を遮断する偏光フィルムとの積層体であってもよく、これらは別々に配置されていてもよいが、位相差フィルムと偏光フィルムは、観察者を基準として外側からこの順序で配置されていることが好ましい。
【0037】
図2は、本発明の画像表示システムが有する偏光制御部の一実施形態を示す概略図である。偏光制御部10は、位相差フィルム10Bと、S偏光を遮断する偏光フィルム10Aとを備えるS偏光制御部である。
図2において、位相差フィルム10Bは、観察者を基準として偏光フィルム10Aよりも外側に配置されている。そのため、位相差フィルム10Bにより偏光制御部10に入射する偏光の偏光方向が90°変換される。変換された偏光がS偏光である場合、偏光フィルム10AによりS偏光は遮断され、変換された偏光がP偏光である場合、P偏光は偏光フィルム10Aを透過して観察者に到達する。なお、
図2に示す偏光制御部10では、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとは、それぞれ離間して配置されているが、偏光制御部10は位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとの積層体であってもよい。以下詳細に述べるが、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとがそれぞれ離間して配置されている例としては、例えば、バイザーに位相差フィルム10Bを配置し、偏光フィルム10Aを備えるアイウェアを使用する場合、一般的な偏光サングラスに対して位相差フィルム10Bをクリップで取り付ける方法(クリップオンタイプ)等が挙げられる。また、偏光制御部10が位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとの積層体である場合とは、例えば、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aを、粘着剤又は接着剤を介して貼合した複合フィルムをアイウェアに使用する態様を例示することができる。
【0038】
S偏光制御部が、位相差フィルムとしての1/2波長板と、吸収軸が偏光フィルムに入射するS偏光の偏光軸に対して水平な偏光フィルムとの組合せである場合、表示画像を視認する方法として、これらを重ねた又は貼り合わせた複合フィルムを自動車内バイザー又はアイウェアに装着し、複合フィルムを介して、表示画像を視認する方法が挙げられる。また、位相差フィルムとしての1/2波長板を自動車内バイザーに装着し、偏光フィルムをアイウェアに装着して、自動車内バイザーに設けられた1/2波長板を介してアイウェアで表示画像を視認する方法が挙げられる。画像表示システムを備えるHUDにこれら方法を利用する場合、自動車内バイザーに装着する位相差フィルムのサイズをヘッドアップディスプレイの画像の表示範囲に合わせることが好ましい。これにより、偏光フィルターの吸収軸が水平である一般的な偏光サングラスで表示画像の視認性を考慮して設計されているセンターコンソール部のカーナビゲーションシステム、メーター、クラスター、電子ミラー等の他の車載ディスプレイの視認性への影響を低減することができる。
【0039】
S偏光制御部が、位相差フィルムとしての1/2波長板と、偏光フィルターの吸収軸が偏光フィルターに入射するS偏光の偏光軸に対して水平である偏光サングラスとの組合せである場合、偏光サングラスに1/2波長板を設ける方法としては、例えば、1/2波長板を有するサングラスをオーバーグラスとして一般的な偏光サングラスの上から装着する方法、一般的な偏光サングラスの上にクリップで取り付ける方法(クリップオンタイプ)等が挙げられる。オーバーグラスの装着、クリップオンタイプは表示画像の視認時とそれ以外の平常時で偏光の遮断の切替えが容易となり平常時には通常の防眩効果が得られるため好ましい。特に、クリップオンタイプの場合、クリップを開閉式にすることで偏光の遮断の切替えがより容易となる。また、一般的な偏光サングラスの表面に粘着剤又は接着剤を介して、1/2波長板を含むフィルムを貼り合わせる方法も利用できる。粘着剤及び接着剤に特に制限はないが、1/2波長板を着脱できるようにする場合は、リワーク性に優れた粘着剤が好ましく、例えば、透明性にも優れたシリコーン粘着剤、アクリル系粘着剤等が好ましい。他の方法として、偏光サングラスのレンズ構成において偏光フィルターの光の入射側に予め1/2波長板が挿入されたレンズを成型加工する方法も挙げられる。
【0040】
1/2波長板に偏光フィルターの吸収軸が偏光フィルターに入射するS偏光の偏光軸に対して水平である一般的な偏光サングラスの光の入射側に設ける方式において、S偏光をP偏光に、又はP偏光をS偏光に効率的に変換するために、直線偏光の偏光軸と、1/2波長板の遅相軸とのなす角度θを、35°以上47°以下に制御することが好ましい。角度θが35°未満又は47°よりも大きい場合、1/2波長板に入射したS偏光をP偏光に変換する偏光軸変換性能が低く、その結果、ディスプレイ上の表示画像も暗くなってしまい、アイウェアを使用する場合にはその防眩効果を損なうおそれがある。そのため、この角度θを適切に制御することにより、1/2波長板は良好な偏光軸変換性能を示し、その結果、表示画像をより鮮明に視認できるようになる。また、1/2波長板の波長分散性はアイウェア用途に適するものであれば特に制限はないが、可視光領域の広い波長範囲で正確に偏光変換させるためには逆波長分散性を有することが望ましい。
【0041】
<第1の実施形態>
図3は本発明の画像表示システムを備えるヘッドアップディスプレイシステムの一実施形態を示す概略模式図である。
図3で示されるように、本実施形態のHUDシステム(画像表示システム)100は、表示画像を示す表示光としてS偏光を出射する表示画像投影手段101と、表示画像投影手段101から出射されたS偏光が入射される光学積層体1と、P偏光制御部として偏光制御部10’とを備えている。表示画像投影手段101から出射したS偏光を反射鏡102で反射させ、この反射された表示光が光学積層体1に到達する。光学積層体1は、
図1に示されるように、光学層2と、その両側に透明樹脂基材3、更にその両外側にガラス板4とを有している。
【0042】
このような構成のHUDシステムにおいて、表示画像投影手段101から出射されたS偏光の入射光201を光学積層体1にブリュースター角近辺の入射角で入射させる。入射光201は、光学積層体1の観察者側の表面と空気の界面で反射し、反射光202を生じる。反射光202はS偏光のため、P偏光を遮断するP偏光制御部を有する偏光制御部10’を使用してもS偏光はそのまま透過する。そのため、通過した反射光202は、表示画像として観察者に視認される。
【0043】
また、反射光202として反射されず、光学積層体1に入射する入射光201は、光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光201は、光学積層体1の外側に配置されたガラス板4と空気の界面をブリュースター角近辺で伝搬する。そのため、当該界面での反射光は実質的に0となり、P偏光に変換された入射光201は、透過光203として光学積層体1を透過する。
【0044】
一方、
図4は、
図3のHUDシステム(画像表示システム)100において、路面からの反射光が光学積層体に入射される場合の光の経路を示す。路面からの反射光にはS偏光成分が多く含まれるため、光学積層体1の外側からS偏光が入射する。入射したS偏光は光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光204が更に光学積層体1中を伝搬し、光学積層体1を透過すると、P偏光を遮断するP偏光制御部を有する偏光制御部10’で入射光204は透過されず、偏光制御部10’で遮断される。そのため、透過光は実質的に0となり、観察者に外部(車外)からの反射光が到達することを防止する。
【0045】
<第2の実施形態>
図5は本発明の画像表示システムを備えるヘッドアップディスプレイシステムの他の実施形態を示す概略模式図である。
図5で示されるように、本実施形態のHUDシステム(画像表示システム)100は、表示画像を示す表示光としてS偏光を出射する表示画像投影手段101と、表示画像投影手段101から出射されたS偏光が入射する光学積層体1と、S偏光制御部として、入射した光の偏光方向を90°変換させる位相差フィルム10B及びS偏光を遮断する偏光フィルム10Aとを備えている。
図5では、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとはそれぞれ別々に配置されており、位相差フィルム10Bは、観察者を基準として偏光フィルム10Aよりも外側、すなわち、光学積層体1からの偏光が入射する側に配置されている。
図3と同様、表示画像投影手段101から出射したS偏光を反射鏡102で反射させ、この反射された表示光が光学積層体1に到達する。光学積層体1は、
図1に示されるように、光学層2と、その両側に透明樹脂基材3、更にその両外側にガラス板4とを有している。
【0046】
このような構成のHUDシステムにおいて、
図3と同様、表示画像投影手段101から出射されたS偏光の入射光201を光学積層体1にブリュースター角近辺の入射角で入射させる。入射光201は、光学積層体1の観察者側の表面と空気の界面で反射し、反射光202を生じる。反射光202はS偏光のため、反射光202は位相差フィルム10BによりP偏光に変換される。P偏光に変換された反射光202は、S偏光を遮断する偏光フィルム10Aを使用してもP偏光はそのまま透過する。そのため、通過した反射光202は、表示画像として観察者に視認される。
【0047】
また、反射光202として反射されず、光学積層体1に入射する入射光201は、
図3と同様、光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光201は、光学積層体1の外側に配置されたガラス板4と空気の界面をブリュースター角近辺で伝搬する。そのため、当該界面での反射光は実質的に0となり、P偏光に変換された入射光201は、透過光203として光学積層体1を透過する。
【0048】
一方、
図6は、
図5のHUDシステム(画像表示システム)100において、路面からの反射光が光学積層体に入射される場合の光の経路を示す。
図4と同様、路面からの反射光にはS偏光成分が多く含まれるため、光学積層体1の外側からS偏光が入射する。入射したS偏光は光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光204が更に光学積層体1中を伝搬し、光学積層体1を透過すると、透過光204はP偏光のため、位相差フィルム10BによりS偏光に変換される。S偏光に変換された透過光204は、S偏光を遮断する偏光フィルム10Aで遮断される。そのため、透過光は実質的に0となり、観察者に外部(車外)からの反射光が到達することを防止する。
【0049】
<第3の実施形態>
図7は本発明の画像表示システムを備えるヘッドアップディスプレイシステムの一実施形態を示す概略模式図である。
図7で示されるように、本実施形態のHUDシステム(画像表示システム)100は、表示画像を示す表示光としてS偏光を出射する表示画像投影手段101と、表示画像投影手段101から出射されたS偏光が入射される光学積層体1と、S偏光制御部として、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとが直接積層された偏光制御部10とを備えている。偏光制御部10において、位相差フィルム10Bは、観察者を基準として偏光フィルム10Aよりも外側、すなわち、光学積層体1からの偏光が入射する側に配置されている。表示画像投影手段101から出射したS偏光を反射鏡102で反射させ、この反射された表示光が光学積層体1に到達する。光学積層体1は、
図1に示されるように、光学層2と、その両側に透明樹脂基材3、更にその両外側にガラス板4とを有している。
【0050】
このような構成のHUDシステムにおいて、
図3と同様、表示画像投影手段101から出射されたS偏光の入射光201を光学積層体1にブリュースター角近辺の入射角で入射させる。入射光201は、光学積層体1の観察者側の表面と空気の界面で反射し、反射光202を生じる。反射光202はS偏光のため、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとの積層体である偏光制御部10において、位相差フィルム10BによりP偏光に変換される。P偏光に変換された反射光202は、S偏光を遮断する偏光フィルム10Aを介してP偏光として透過する。そのため、通過した反射光202は、表示画像として観察者に視認される。
【0051】
また、反射光202として反射されず、光学積層体1に入射する入射光201は、
図3と同様、光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光201は、光学積層体1の外側に配置されたガラス板4と空気の界面をブリュースター角近辺で伝搬する。そのため、当該界面での反射光は実質的に0となり、P偏光に変換された入射光201は、透過光203として光学積層体1を透過する。
【0052】
一方、
図8は、
図7のHUDシステム(画像表示システム)100において、路面からの反射光が光学積層体に入射される場合の光の経路を示す。
図4と同様、路面からの反射光にはS偏光成分が多く含まれるため、光学積層体1の外側からS偏光が入射する。入射したS偏光は光学積層体1中を伝搬し、光学層2によりP偏光に変換される。P偏光に変換された入射光204が更に光学積層体1中を伝搬し、光学積層体1を透過すると、透過光204はP偏光のため、位相差フィルム10Bと偏光フィルム10Aとの積層体である偏光制御部10において、位相差フィルム10BによりS偏光に変換される。S偏光に変換された透過光204は、S偏光を遮断する偏光フィルム10Aで遮断される。そのため、透過光は実質的に0となり、観察者に外部(車外)からの反射光が到達することを防止する。