(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るドハティ増幅器1を備える通信装置を示す構成図である。
図1において、ドハティ増幅器1は、通信用信号を第1の信号と第2の信号とに分配し、第1の信号及び第2の信号のそれぞれを増幅する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るドハティ増幅器1を示す構成図である。
図2において、入力端子11は、通信信号が入力される端子である。
入力整合回路12は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、コイルとコンデンサとを用いているL−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
入力整合回路12の一端は、入力端子11と接続されており、入力整合回路12の他端は、分配器13の入力端子13aと接続されている。
入力整合回路12は、入力端子11のインピーダンスを分配器13の入力インピーダンスに変換し、入力端子11から入力された通信信号を分配器13に出力する。
【0013】
分配器13は、例えば、ウィルキンソン分配器又はハイブリッド回路によって実現される。
分配器13の入力端子13aは、入力整合回路12の他端と接続されている。
分配器13の出力端子13bは、位相補正回路14の一端と接続され、分配器13の出力端子13cは、入力整合回路16の一端と接続されている。
分配器13は、入力整合回路12から出力された通信信号を第1の信号と第2の信号とに分配して、出力端子13bから第1の信号を位相補正回路14の出力し、出力端子13cから第2の信号を入力整合回路16に出力する。
【0014】
位相補正回路14は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
位相補正回路14は、分配器13の出力端子13bから合成回路24の合成点25までの、キャリア増幅器17側の経路の電気長と、分配器13の出力端子13cから合成点25までの、ピーク増幅器18側の経路の電気長とを同じ電気長に揃える回路である。
ただし、キャリア増幅器17側の経路の電気長と、ピーク増幅器18側の経路の電気長とは、厳密に同じ電気長であるものに限るものではなく、実用上問題のない範囲で、キャリア増幅器17側の経路の電気長と、ピーク増幅器18側の経路の電気長とが異なっていてもよい。
【0015】
入力整合回路15は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
入力整合回路15の一端は、位相補正回路14の他端と接続されており、入力整合回路15の他端は、キャリア増幅器17の入力端子17aと接続されている。
入力整合回路15は、位相補正回路14のインピーダンスをキャリア増幅器17の入力インピーダンスに変換し、位相補正回路14から出力された第1の信号をキャリア増幅器17の入力端子17aに出力する。
【0016】
入力整合回路16は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
入力整合回路16の一端は、分配器13の出力端子13cと接続されており、入力整合回路16の他端は、ピーク増幅器18の入力端子18aと接続されている。
入力整合回路16は、分配器13の出力端子13cのインピーダンスをピーク増幅器18の入力インピーダンスに変換し、分配器13の出力端子13cから出力された第2の信号をピーク増幅器18の入力端子18aに出力する。
【0017】
キャリア増幅器17は、例えば、FET(Field Effect Transistor)、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)又はHEMT(High Electron Mobility Transistor)によって実現される。
図2に示すドハティ増幅器1では、キャリア増幅器17が、ソース接地のトランジスタである例を示している。キャリア増幅器17の入力端子17aであるゲート端子は、入力整合回路15の他端と接続されており、キャリア増幅器17の出力端子17bであるドレイン端子は、第1の出力回路19の一端と接続されている。第1の出力回路19については、後述する。
【0018】
キャリア増幅器17の入力端子17aは、A級からB級の間でバイアスされている。
キャリア増幅器17は、非線形の出力容量を有しており、入力整合回路15から出力された第1の信号を増幅し、増幅後の第1の信号を第1の出力回路19に出力する。
キャリア増幅器17を等価回路で表すと、キャリア増幅器17は、電流源31及び出力容量を有するキャパシタ32によって表すことができる。
【0019】
ピーク増幅器18は、例えば、FET、HBT又はHEMTによって実現される。
図2に示すドハティ増幅器1では、ピーク増幅器18が、ソース接地のトランジスタである例を示している。ピーク増幅器18の入力端子18aであるゲート端子は、入力整合回路16の他端と接続されており、ピーク増幅器18の出力端子18bであるドレイン端子は、第2の出力回路20の一端と接続されている。第2の出力回路20については、後述する。
【0020】
ピーク増幅器18の入力端子18aは、C級でバイアスされている。
ピーク増幅器18は、入力整合回路16から出力された第2の信号を増幅し、増幅後の第2の信号を第2の出力回路20に出力する。
ピーク増幅器18を等価回路で表すと、ピーク増幅器18は、電流源41及び出力容量を有するキャパシタ42によって表すことができる。
キャパシタ42が有する出力容量は、ピーク増幅器18の出力電力の増加に伴って、非線形に増加する。
ピーク増幅器18は、自己の非線形の出力容量によって、ピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスの誘導性の成分を減らすように作用する。
【0021】
第1の出力回路19は、例えば、90度未満の電気長を有する伝送線路によって実現される。
第1の出力回路19の一端は、キャリア増幅器17の出力端子17bと接続されており、第1の出力回路19の他端は、合成回路24の入力端子24aと接続されている。
第1の出力回路19は、キャリア増幅器17から出力された第1の信号を伝送して、第1の信号を合成回路24に出力する。
第1の出力回路19は、ピーク増幅器18が増幅動作しない場合に、キャリア増幅器17の出力側から見たときに、第2の出力回路20のリアクタンス性を補償する、90度未満の電気長を有している。
第1の出力回路19の特性インピーダンスは、キャリア増幅器17の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスRoptと一致している。ただし、第1の出力回路19の特性インピーダンスは、最適負荷インピーダンスRoptと厳密に一致しているものに限るものではなく、実用上問題のない範囲で、最適負荷インピーダンスRoptからずれていてもよい。
【0022】
第2の出力回路20は、90度よりも大きく、180度よりも小さい電気長を有しており、2つの伝送線路として、伝送線路21及び伝送線路23を備えている。接続点22は、伝送線路21と伝送線路23とが接続されている点である。
図2に示すドハティ増幅器では、第2の出力回路20が、伝送線路21及び伝送線路23を備えている。しかし、これは一例に過ぎず、第2の出力回路20が、伝送線路21と伝送線路23とが一体形成されている1つの伝送線路によって実現されていてもよい。
第2の出力回路20の一端は、ピーク増幅器18の出力端子18bと接続されており、第2の出力回路20の他端は、合成回路24の入力端子24bと接続されている。
第2の出力回路20は、ピーク増幅器18から出力された第2の信号を伝送して、第2の信号を合成回路24に出力する。
第2の出力回路20の特性インピーダンスは、ピーク増幅器18の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスRoptと一致している。ただし、第2の出力回路20の特性インピーダンスは、最適負荷インピーダンスRoptと厳密に一致しているものに限るものではなく、実用上問題のない範囲で、最適負荷インピーダンスRoptからずれていてもよい。
ここでは、第2の出力回路20が、90度よりも大きく、180度よりも小さい電気長を有しているものを示している。しかし、これは一例に過ぎず、第2の出力回路20が、左手系で−90度よりも大きく、0度よりも小さい電気長を有していてもよい。第2の出力回路20が、左手系で−90度よりも大きく、0度よりも小さい電気長を有している場合には、第2の出力回路20が、左手系のフィルタ回路を備えている。
【0023】
第2の出力回路20は、ピーク増幅器18が増幅動作する際に、ピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成する。
第2の出力回路20は、ピーク増幅器18が停止しているバックオフ時には、ピーク増幅器18と合成回路24との間である接続点22にショート点を形成する。
第2の出力回路20は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときは、ピーク増幅器18のバックオフ量に応じて、ピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成する。
このとき、ピーク増幅器18は、キャパシタ42が有する出力容量によって、ピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスの誘導性の成分を減らす。
【0024】
伝送線路21は、90度の電気長を有している。
伝送線路21の一端は、ピーク増幅器18の出力端子18bと接続されており、伝送線路21の他端は、接続点22と接続されている。
伝送線路23は、90度よりも小さい電気長を有している。
伝送線路23の一端は、接続点22と接続されており、伝送線路23の他端は、合成回路24の入力端子24bと接続されている。
【0025】
合成回路24は、第1の出力回路19から出力された第1の信号と第2の出力回路20から出力された第2の信号とを合成する合成点25を有している。
合成回路24の入力端子24aは、第1の出力回路19の他端と接続されている。
合成回路24の入力端子24bは、伝送線路23の他端と接続されている。
合成回路24は、第1の出力回路19から出力された第1の信号と第2の出力回路20から出力された第2の信号とを合成する。
合成回路24は、第1の信号と第2の信号との合成信号を出力整合回路26に出力する。
合成点25は、第1の出力回路19から出力された第1の信号と第2の出力回路20から出力された第2の信号との合成点である。合成点25には、出力整合回路26の一端が接続されている。
【0026】
出力整合回路26は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
出力整合回路26の一端は、合成点25と接続されており、出力整合回路26の他端は、ドハティ増幅器1の外部の負荷27と接続されている。
出力整合回路26は、合成点25のインピーダンスを負荷27のインピーダンスに変換する。
負荷27は、出力整合回路26の他端と接続されているドハティ増幅器1の外部の負荷である。
【0027】
次に、
図2に示すドハティ増幅器1の動作について説明する。
入力整合回路12は、入力端子11から入力された通信信号を受けると、入力端子11のインピーダンスを分配器13の入力インピーダンスに変換し、通信信号を分配器13に出力する。
分配器13は、入力整合回路12から通信信号を受けると、通信信号を第1の信号と第2の信号とに分配する。
分配器13は、出力端子13bから第1の信号を位相補正回路14の出力し、出力端子13cから第2の信号を入力整合回路16に出力する。
【0028】
位相補正回路14は、分配器13の出力端子13bから第1の信号を受けると、第1の信号を入力整合回路15に出力する。
このとき、位相補正回路14は、分配器13の出力端子13bから合成点25までの、キャリア増幅器17側の経路の電気長と、分配器13の出力端子13cから合成点25までの、ピーク増幅器18側の経路の電気長とを同じ電気長に揃えるように作用する。
【0029】
入力整合回路15は、位相補正回路14から第1の信号を受けると、位相補正回路14のインピーダンスをキャリア増幅器17の入力インピーダンスに変換し、第1の信号をキャリア増幅器17の入力端子17aに出力する。
キャリア増幅器17は、入力整合回路15から第1の信号を受けると、第1の信号を増幅し、増幅後の第1の信号を第1の出力回路19に出力する。
第1の出力回路19は、キャリア増幅器17から増幅後の第1の信号を受けると、第1の信号を伝送して、第1の信号を合成回路24に出力する。
【0030】
入力整合回路16は、分配器13の出力端子13cから第2の信号を受けると、分配器13の出力端子13cのインピーダンスをピーク増幅器18の入力インピーダンスに変換し、第2の信号をピーク増幅器18の入力端子18aに出力する。
ピーク増幅器18は、入力整合回路16から第2の信号を受けると、第2の信号を増幅し、増幅後の第2の信号を第2の出力回路20に出力する。
第2の出力回路20は、ピーク増幅器18から増幅後の第2の信号を受けると、第2の信号を伝送して、第2の信号を合成回路24に出力する。
【0031】
合成回路24は、第1の出力回路19から出力された第1の信号と第2の出力回路20から出力された第2の信号とを合成する。
合成回路24は、第1の信号と第2の信号との合成信号を出力整合回路26に出力する。
出力整合回路26は、合成回路24から合成信号を受けると、合成点25のインピーダンスを外部の負荷27のインピーダンスに変換して、合成信号を負荷27に出力する。
【0032】
次に、ピーク増幅器18が停止しているバックオフ時のドハティ増幅器1の動作について説明する。
図3は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作を示す説明図である。
図3では、出力整合回路26の記載を省略している。
図4は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作での負荷変成を示す説明図である。
バックオフ時では、ピーク増幅器18は、停止しているため、
図3に示すように、ピーク増幅器18の出力インピーダンスがOpenの状態となる。
ピーク増幅器18の出力インピーダンスは、90度の電気長を有する伝送線路21によって変成され、接続点22にショート点が形成される。
接続点22にショート点が形成されることで、合成点25からピーク増幅器18を見ると、伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能するようになる。
【0033】
伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能することで、
図4に示すように、合成点25から負荷27を見たインピーダンスΓ
1である出力負荷Roptが、インピーダンスΓ
2に変成される。
インピーダンスΓ
2は、
図4に示すように、第1の出力回路19によって、実軸上のインピーダンスΓ
3に変成される。
インピーダンスΓ
3は、キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスであり、一般的なドハティ増幅器におけるキャリア増幅器の出力負荷インピーダンス2×Roptよりも大きくなる。ここでの一般的なドハティ増幅器とは、キャリア増幅器の飽和出力電力とピーク増幅器の飽和出力電力とが同じドハティ増幅器であって、バックオフ量が6dBのドハティ増幅器である。
したがって、
図2に示すドハティ増幅器1のバックオフ量を、一般的なドハティ増幅器のバックオフ量よりも大きくすることができる。
【0034】
次に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の動作について説明する。
図5は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の動作を示す説明図である。
図5では、出力整合回路26の記載を省略している。
図6は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の負荷変成を示す説明図である。
【0035】
まず、第1の出力回路19の電気長EL
1は、以下の式(1)及び式(3)に示すように、所望のバックオフ量OBOに応じて、決定される。
第2の出力回路20の電気長EL
2は、以下の式(2)及び式(3)に示すように、所望のバックオフ量OBOに応じて、決定される。
【0036】
キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスは、ピーク増幅器18の出力電力に従って負荷変成される。具体的には、キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスは、
図6に示すように、実軸上のインピーダンスΓ
3から、実軸上のインピーダンスΓ
0まで負荷変成される。インピーダンスΓ
0は、キャリア増幅器17の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスRoptである。
【0037】
ピーク増幅器18の出力負荷インピーダンスは、以下のように変成される。
ここでは、説明の便宜上、ピーク増幅器18の出力容量である、キャパシタ42が有する出力容量を、
図5に示すように、第2の信号の信号レベルが小さいときの出力容量を有するキャパシタ43と、第2の信号の信号レベルが大きくなることで増加した出力容量の増加分を有するキャパシタ44とに分解する。
【0038】
ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときは、伝送線路23から合成点25を見たインピーダンスΓ
5は、
図6に示すように、容量性の領域のインピーダンスである。
インピーダンスΓ
5は、伝送線路23が有する90度未満の電気長の分だけインピーダンス変成され、接続点22から伝送線路23を見たインピーダンスがΓ
6になる。インピーダンスΓ
6は、
図6に示すように、容量性の領域のインピーダンスである。
インピーダンスΓ
6は、伝送線路21が有する90度の電気長の分だけインピーダンス変成され、キャパシタ43とキャパシタ44との間から伝送線路21を見たインピーダンスがΓ
7になる。
第2の出力回路20は、バックオフ時に仮想的なショートスタブとして機能する誘導性の回路であるため、
図6に示すように、インピーダンスΓ
7は、誘導性の領域のインピーダンスに変成される。
【0039】
図2に示すドハティ増幅器1では、ピーク増幅器18が、出力容量の増加分を有するキャパシタ44を備えている。したがって、インピーダンスΓ
7は、キャパシタ44が有する出力容量の増加分だけ、実軸に近づくようにインピーダンス変成され、ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスがΓ
8になる。
ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスΓ
8は、ピーク増幅器18の出力電力に応じて、
図6に示す実線上のいずれかのインピーダンスとなる。
図6に示す実線は、実軸に近い領域に存在している。
よって、ピーク増幅器18の出力電力が零であるバックオフ時から、ピーク増幅器18の出力電力が飽和出力電力になるまでの間、ピーク増幅器18の出力負荷インピーダンスは、オープン点から、
図6に示す実線を経由して、実軸上のインピーダンスΓ
0まで負荷変成される。
図6において、オープン点は、“P小”と記載されている点であり、“P小”は、出力電力が零であることを意味する。Γ
0は、“P大”と記載されている点であり、“P大”は、出力電力が飽和出力電力であることを意味する。
【0040】
特許文献1に開示されているドハティ増幅器では、ピーク増幅器が、飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときには、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスが容量性の領域のインピーダンスに変成される。ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離は、
図2に示すピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスΓ
7’の実軸からの距離とほぼ等しい。
また、特許文献1に開示されているドハティ増幅器では、ピーク増幅器の出力容量によって、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの容量性の成分がさらに大きくなる。したがって、ピーク増幅器の出力容量によって、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離が大きくなるように、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスが変成される。
図2に示すドハティ増幅器1では、誘導性の領域に変成されたインピーダンスΓ
7が、キャパシタ44が有する出力容量の増加分によって、誘導性の成分が減らされている。したがって、ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスΓ
8の実軸からの距離が、特許文献1に開示されているドハティ増幅器におけるピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離よりも小さくなる。
よって、
図2に示すドハティ増幅器1では、特許文献1に開示されているドハティ増幅器よりも、実軸に近い領域へのインピーダンス変成を実現することが可能である。
【0041】
図7は、実施の形態1に係るドハティ増幅器1の効率と、特許文献1に記載のドハティ増幅器1の効率とのシミュレーション結果を示す説明図である。
特許文献1に記載のドハティ増幅器では、
図7に示すように、ピーク増幅器の出力電力が、効率ピーク点が現れる電力から、飽和出力電力になるまでの間で、効率が大きく劣化している。即ち、ピーク増幅器の出力電力が、零の電力から飽和出力電力になるまでの間で、効率が大きく劣化する出力電力がある。
実施の形態1に係るドハティ増幅器1では、ピーク増幅器18の出力電力が、零の電力から飽和出力電力になるまでの間で、効率が大きく劣化する出力電力がなく、特許文献1に記載のドハティ増幅器よりも効率が高くなっている。
【0042】
以上の実施の形態1では、ピーク増幅器18が増幅動作する際に、第2の出力回路20が、ピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成するように、ドハティ増幅器1を構成した。したがって、ドハティ増幅器1は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときの効率の劣化を防ぐことができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態2では、ピーク増幅器18の飽和出力電力が、キャリア増幅器17の飽和出力電力よりも大きいドハティ増幅器1について説明する。
実施の形態2のドハティ増幅器1の構成は、実施の形態1のドハティ増幅器1の構成と同様であり、実施の形態2のドハティ増幅器1を示す構成図は、
図2である。
【0044】
次に、ピーク増幅器18が停止しているバックオフ時のドハティ増幅器1の動作について説明する。
図8は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作を示す説明図である。
図8では、出力整合回路26の記載を省略している。
図9は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作での負荷変成を示す説明図である。
実施の形態2のドハティ増幅器1では、キャリア増幅器17の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスがRoptであり、ピーク増幅器18の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスがK×Roptであるとする。Kは、1よりも小さく、0よりも大きい値である。
合成点25から負荷27を見たインピーダンスΓ
1は、最適負荷インピーダンスRoptと、最適負荷インピーダンスK×Roptとの合成インピーダンスになるため、
図9に示すように、0.5×Roptよりも小さいインピーダンスになる。
したがって、実施の形態2のドハティ増幅器1におけるインピーダンスΓ
1は、実施の形態1のドハティ増幅器1におけるインピーダンスΓ
1よりも小さいインピーダンスになる。
【0045】
バックオフ時では、ピーク増幅器18は、停止しているため、
図8に示すように、ピーク増幅器18の出力インピーダンスがOpenの状態となる。
ピーク増幅器18の出力インピーダンスは、90度の電気長を有する伝送線路21によって変成され、接続点22にショート点が形成される。
接続点22にショート点が形成されることで、合成点25からピーク増幅器18を見ると、伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能するようになる。
【0046】
伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能することで、合成点25から負荷27を見たインピーダンスΓ
1である出力負荷L×0.5×Roptが、インピーダンスΓ
2に変成される。Lは、1よりも小さく、0よりも大きい値である。
インピーダンスΓ
2は、
図9に示すように、第1の出力回路19によって、実軸上のインピーダンスΓ
3に変成される。
インピーダンスΓ
3は、キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスであり、バックオフ量が6dBであるときの一般的なドハティ増幅器のインピーダンス2×Roptよりも大きくなる。
したがって、実施の形態2のドハティ増幅器1のバックオフ量を、一般的なドハティ増幅器のバックオフ量よりも大きくすることができる。
【0047】
次に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の動作について説明する。
図10は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の動作を示す説明図である。
図10では、出力整合回路26の記載を省略している。
図11は、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときのドハティ増幅器1の負荷変成を示す説明図である。
【0048】
キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスは、ピーク増幅器18の出力電力に従って負荷変成される。具体的には、キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスは、
図11に示すように、実軸上のインピーダンスΓ
3から、実軸上のインピーダンスΓ
0まで負荷変成される。インピーダンスΓ
0は、キャリア増幅器17の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスRoptである。
【0049】
ピーク増幅器18の出力負荷インピーダンスは、以下のように変成される。
ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときは、伝送線路23から合成点25を見たインピーダンスΓ
5は、
図11に示すように、容量性の領域のインピーダンスである。
インピーダンスΓ
5は、伝送線路23が有する90度未満の電気長の分だけインピーダンス変成され、接続点22から伝送線路23を見たインピーダンスがΓ
6になる。インピーダンスΓ
6は、
図11に示すように、容量性の領域のインピーダンスである。
インピーダンスΓ
6は、伝送線路21が有する90度の電気長の分だけインピーダンス変成され、キャパシタ43とキャパシタ44との間から伝送線路21を見たインピーダンスがΓ
7になる。
第2の出力回路20は、バックオフ時に仮想的なショートスタブとして機能する誘導性の回路であるため、
図11に示すように、インピーダンスΓ
7は、誘導性の領域のインピーダンスに変成される。
【0050】
実施の形態2のドハティ増幅器1では、ピーク増幅器18が、出力容量の増加分を有するキャパシタ44を備えている。したがって、インピーダンスΓ
7は、キャパシタ44が有する出力容量の増加分だけ、実軸に近づくようにインピーダンス変成され、ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスがΓ
8になる。
ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスΓ
8は、ピーク増幅器18の出力電力に応じて、
図11に示す実線上のいずれかのインピーダンスとなる。
図11に示す実線は、実軸に近い領域に存在している。
よって、ピーク増幅器18の出力電力が零であるバックオフ時から、ピーク増幅器18の出力電力が飽和出力電力になるまでの間、ピーク増幅器18の出力負荷インピーダンスは、オープン点から、
図11に示す実線を経由して、実軸上のインピーダンスΓ
0まで負荷変成される。
【0051】
特許文献1に開示されているドハティ増幅器では、ピーク増幅器が、飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときには、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスが容量性の領域のインピーダンスに変成される。ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離は、
図2に示すピーク増幅器18から合成回路24を見たインピーダンスΓ
7’の実軸からの距離とほぼ等しい。
また、特許文献1に開示されているドハティ増幅器では、ピーク増幅器の出力容量によって、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの容量性の成分がさらに大きくなる。したがって、ピーク増幅器の出力容量によって、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離が大きくなるように、ピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスが変成される。
実施の形態2のドハティ増幅器1では、誘導性の領域に変成されたインピーダンスΓ
7が、キャパシタ44が有する出力容量の増加分によって、誘導性の成分が減らされている。したがって、ピーク増幅器18の電流源41から合成点25を見たインピーダンスΓ
8の実軸からの距離が、特許文献1に開示されているドハティ増幅器におけるピーク増幅器から出力合成点を見たインピーダンスの実軸からの距離よりも小さくなる。
よって、実施の形態2のドハティ増幅器1では、特許文献1に開示されているドハティ増幅器よりも、実軸に近い領域へのインピーダンス変成を実現することが可能である。
【0052】
ピーク増幅器18の飽和出力電力が、キャリア増幅器17の飽和出力電力よりも大きいドハティ増幅器1でも、実施の形態1のドハティ増幅器1と同様に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときの効率の劣化を防ぐことができる。
ピーク増幅器18の飽和出力電力が、キャリア増幅器17の飽和出力電力よりも大きくなるように、ドハティ増幅器1を構成することで、実施の形態1のドハティ増幅器1よりも、効率ピーク点が現れるバックオフ量を大きくすることができる。
【0053】
実施の形態3.
実施の形態3では、第1の出力整合回路51と、第2の出力整合回路52とを備えるドハティ増幅器1について説明する。
【0054】
図12は、実施の形態3に係るドハティ増幅器1を備える通信装置を示す構成図である。
図12において、
図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
第1の出力整合回路51は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
第1の出力整合回路51の一端は、キャリア増幅器17の出力端子17bと接続されており、第1の出力整合回路51の他端は、第1の出力回路19の一端と接続されている。
第1の出力整合回路51は、キャリア増幅器17の出力インピーダンスを第1の出力回路19のインピーダンスに変換する。
【0055】
第2の出力整合回路52は、例えば、集中定数素子を用いている回路、分布定数線路を用いている回路、集中定数と分布定数とが組み合わされている回路、L−C型整合回路、又は、4分の1波長線路によって実現される。
第2の出力整合回路52の一端は、ピーク増幅器18の出力端子18bと接続されており、第2の出力整合回路52の他端は、第2の出力回路20の一端と接続されている。
第2の出力整合回路52は、ピーク増幅器18の出力インピーダンスを第2の出力回路20のインピーダンスに変換する。
【0056】
図12に示すドハティ増幅器1は、第1の出力整合回路51と、第2の出力整合回路52とを備えている点以外は、
図2に示すドハティ増幅器1と同様である。
図12に示すドハティ増幅器1が、第1の出力整合回路51を備えることで、キャリア増幅器17から出力された第1の信号が第1の出力回路19に反射されるのを防ぐことができる。
図12に示すドハティ増幅器1が、第2の出力整合回路52を備えることで、ピーク増幅器18から出力された第2の信号が第2の出力回路20に反射されるのを防ぐことができる。
【0057】
実施の形態4.
実施の形態4では、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを変成する広帯域化回路60が、合成回路24と負荷27との間に挿入されているドハティ増幅器1について説明する。
【0058】
図13は、実施の形態4に係るドハティ増幅器1を示す構成図である。
図13において、
図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
広帯域化回路60は、伝送線路61及びオープンスタブ62を備えている。
広帯域化回路60の一端は、合成回路24の合成点25と接続されており、広帯域化回路60の他端は、出力整合回路26の一端と接続されている。
広帯域化回路60は、ピーク増幅器18が停止しているときに、キャリア増幅器17により増幅される第1の信号の周波数が、当該周波数の中心周波数よりも低域側にずれていれば、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを容量性の領域のインピーダンスに変成する。
広帯域化回路60は、第1の信号の周波数が、当該周波数の中心周波数よりも高域側にずれていれば、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成する。
図13に示すドハティ増幅器1は、
図2に示すドハティ増幅器1に広帯域化回路60が適用されているドハティ増幅器である。しかし、これは一例に過ぎず、
図12に示すドハティ増幅器1に広帯域化回路60が適用されているドハティ増幅器であってもよい。
【0059】
伝送線路61は、電気長がEL
3の線路である。
伝送線路61の一端は、合成回路24の合成点25と接続されており、伝送線路61の他端は、接続点63と接続されている。
90度の電気長から第1の出力回路19の電気長EL
1を引いた電気長がθ
aであるとすると、伝送線路61の電気長EL
3は、以下の式(4)のように表される。
【0060】
オープンスタブ62の一端は、接続点63と接続されている。
オープンスタブ62の電気長は、180度であり、オープンスタブ62の特性インピーダンスは、キャリア増幅器17の出力電力が飽和出力電力であるときの最適負荷インピーダンスRoptの半分である。
接続点63には、伝送線路61の他端、オープンスタブ62の一端及び出力整合回路26の一端のそれぞれが接続されている。
【0061】
次に、
図13に示すドハティ増幅器1の動作について説明する。ただし、広帯域化回路60以外は、
図2に示すドハティ増幅器1と同様であるため、ここでは、主に広帯域化回路60の動作について説明する。
ピーク増幅器18が停止しているときに、分配器13から出力された第1の信号の周波数が、中心周波数からずれていなければ、広帯域化回路60は、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを変成しない。
広帯域化回路60は、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも低域側にずれていれば、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを容量性の領域のインピーダンスに変成する。
広帯域化回路60は、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも高域側にずれていれば、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成する。
以下、広帯域化回路60によるインピーダンス変成を具体的に説明する。
【0062】
図14は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作を示す説明図である。
図14では、出力整合回路26の記載を省略している。
図15は、ドハティ増幅器1のバックオフ時動作での負荷変成を示す説明図である。
バックオフ時では、ピーク増幅器18は、停止しているため、
図14に示すように、ピーク増幅器18の出力インピーダンスがOpenの状態となる。
ピーク増幅器18の出力インピーダンスは、90度の電気長を有する伝送線路21によって変成され、接続点22にショート点が形成される。
接続点22にショート点が形成されることで、合成点25からピーク増幅器18を見ると、伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能するようになる。
【0063】
伝送線路23が、仮想的なショートスタブとして機能することで、合成点25から負荷27を見たインピーダンスΓ
1’である出力負荷0.5×Roptが、
図15に示すように、インピーダンスΓ
2’に変成される。
インピーダンスΓ
2’は、
図15に示すように、第1の出力回路19によって、実軸上のインピーダンスΓ
3’に変成される。
インピーダンスΓ
3’は、キャリア増幅器17の出力負荷インピーダンスであり、バックオフ量が6dBであるときの一般的なドハティ増幅器のインピーダンス2×Roptよりも大きくなる。
したがって、
図13に示すドハティ増幅器1のバックオフ量を、一般的なドハティ増幅器のバックオフ量よりも大きくすることができる。
【0064】
図13に示すドハティ増幅器1では、オープンスタブ62の一端が接続点63に接続されているため、伝送線路61の他端から負荷27を見たインピーダンスΓ
9は、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも低域側にずれていれば、
図15に示すように、誘導性の領域のインピーダンスである。
伝送線路61の他端から負荷27を見たインピーダンスΓ
9は、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも高域側にずれていれば、
図15に示すように、容量性の領域のインピーダンスである。
【0065】
インピーダンスΓ
9は、伝送線路61によって、
図15に示すスミスチャート上で時計回りに回転されることで、インピーダンスΓ
1’に変成される。
このとき、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも低域側にずれていれば、インピーダンスΓ
9が、容量性の領域のインピーダンスΓ
1’に変成される。第1の信号の周波数が、中心周波数よりも高域側にずれていれば、インピーダンスΓ
9が、誘導性の領域のインピーダンスΓ
1’に変成される。
【0066】
インピーダンスΓ
1’は、伝送線路23が仮想的なショートスタブとして機能することで、
図15に示すように、誘導性の領域のインピーダンスΓ
2’に変成される。
インピーダンスΓ
2’は、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも低域側の周波数から、中心周波数よりも高域側の周波数まで変化しても、
図15に示すように、時計回りに回転するだけである。
インピーダンスΓ
2’は、
図15に示すように、第1の出力回路19によって、インピーダンスΓ
3’に変成される。合成回路24の出力側に広帯域化回路60が接続されていなければ、第1の信号の周波数が、中心周波数からずれていると、
図15に示すように、インピーダンスΓ
3’が実軸上から大きくずれてしまうことがある。
図13に示すドハティ増幅器1では、合成回路24の出力側に広帯域化回路60が接続されているため、第1の信号の周波数が、中心周波数からずれていても、
図15に示すように、インピーダンスΓ
3’が概ね実軸上に変成される。
【0067】
以上の実施の形態4では、ピーク増幅器18が停止しているときに、第1の信号の周波数が、中心周波数よりも低域側にずれていれば、広帯域化回路60が、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを容量性の領域のインピーダンスに変成する。第1の信号の周波数が、中心周波数よりも高域側にずれていれば、広帯域化回路60が、合成回路24から負荷27を見たインピーダンスを誘導性の領域のインピーダンスに変成するように、ドハティ増幅器1を構成した。したがって、ドハティ増幅器1は、
図2に示すドハティ増幅器1と同様に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときの効率の劣化を防ぐことができる。また、第1の信号の周波数が中心周波数からずれていても、ピーク増幅器18が停止しているときの効率の劣化を防ぐことができる。
【0068】
実施の形態5.
実施の形態5では、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72を備えるドハティ増幅器1について説明する。
【0069】
図16は、実施の形態5に係るドハティ増幅器1を示す構成図である。
図16において、
図2、
図12及び
図13と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
第1の伝送線路71は、180度のn(nは、正又は負の整数)倍の電気長を有している線路である。
第1の伝送線路71の一端は、第1の出力回路19の他端と接続されており、第1の伝送線路71の他端は、合成回路24の入力端子24aと接続されている。
第2の伝送線路72は、180度のm(mは、正又は負の整数)倍の電気長を有している線路である。
第2の伝送線路72の一端は、第2の出力回路20の他端と接続されており、第2の伝送線路72の他端は、合成回路24の入力端子24bと接続されている。
【0070】
図16に示すドハティ増幅器1は、
図2に示すドハティ増幅器1に、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72のそれぞれが適用されているドハティ増幅器である。しかし、これは一例に過ぎず、
図12又は
図13に示すドハティ増幅器1に、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72のそれぞれが適用されているドハティ増幅器であってもよい。
【0071】
図16に示すドハティ増幅器1は、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72を備えている点以外は、
図2に示すドハティ増幅器1と同様である。
図16に示すドハティ増幅器1では、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72を備えていても、
図2に示すドハティ増幅器1と同様に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときの効率の劣化を防ぐことができる。
図16に示すドハティ増幅器1では、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72を備えることで、例えば、
図16に示すドハティ増幅器1を実装する基板のサイズに合わせて、第1の伝送線路71及び第2の伝送線路72のそれぞれを引き回すことができる。
【0072】
実施の形態6.
実施の形態6では、第1の入力信号源81及び第2の入力信号源82を備えるドハティ増幅器1について説明する。
【0073】
図17は、実施の形態6に係るドハティ増幅器1を示す構成図である。
図17において、
図2、
図12、
図13及び
図16と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
信号源80は、第1の入力信号源81及び第2の入力信号源82を備えている。
信号源80は、当該信号源80に入力された通信信号を2つの信号に分配する。
信号源80は、2つの信号のうちの一方の信号を第1の入力信号源81に出力し、他方の信号を第2の入力信号源82に出力する。
【0074】
第1の入力信号源81は、例えば、直交変調器、DAC(Digital Analog Convertor)及びDDS(Direct Digital Synthesize)によって実現される。
第1の入力信号源81は、第1の信号を、入力整合回路15を介して、キャリア増幅器17の入力端子17aに出力する。第1の信号は、一方の信号に含まれている情報と同じ情報を含んでいる。
第2の入力信号源82は、例えば、直交変調器、DAC及びDDSによって実現される。
第2の入力信号源82は、第2の信号を、入力整合回路16を介して、ピーク増幅器18の入力端子18aに出力する。第2の信号は、他方の信号に含まれている情報と同じ情報を含んでいる。
【0075】
図17に示すドハティ増幅器1は、
図2に示すドハティ増幅器1に信号源80が適用されているドハティ増幅器である。しかし、これは一例に過ぎず、
図12、
図13又は
図16に示すドハティ増幅器1に信号源80が適用されているドハティ増幅器であってもよい。
【0076】
図17に示すドハティ増幅器1では、キャリア増幅器17の入力端子17aには、スレッシュホルド電圧と概ね同じバイアス電圧が印加されている。キャリア増幅器17は、入力端子17aの電圧がスレッシュホルド電圧よりも大きければ、信号の増幅動作を行い、入力端子17aの電圧がスレッシュホルド電圧以下であれば、信号の増幅動作を行わない。
したがって、キャリア増幅器17の入力端子17aに対する第1の信号の有無で、キャリア増幅器17の動作を切り替えることが可能である。
【0077】
ピーク増幅器18の入力端子18aには、スレッシュホルド電圧と概ね同じバイアス電圧が印加されている。ピーク増幅器18は、入力端子18aの電圧がスレッシュホルド電圧よりも大きければ、信号の増幅動作を行い、入力端子18aの電圧がスレッシュホルド電圧以下であれば、信号の増幅動作を行わない。
したがって、ピーク増幅器18の入力端子18aに対する第2の信号の有無で、ピーク増幅器18の動作を切り替えることが可能である。
【0078】
次に、
図17に示すドハティ増幅器1の動作について説明する。
信号源80は、当該信号源80に入力された通信信号を2つの信号に分配する。
信号源80は、2つの信号のうちの一方の信号を第1の入力信号源81に出力し、他方の信号を第2の入力信号源82に出力する。
【0079】
第1の入力信号源81は、一方の信号を受けると、第1の信号を、入力整合回路15を介して、キャリア増幅器17の入力端子17aに出力する。
キャリア増幅器17は、第1の信号を増幅し、増幅後の第1の信号を第1の出力回路19に出力する。
【0080】
第2の入力信号源82は、他方の信号を受けると、第2の信号を、入力整合回路16を介して、ピーク増幅器18の入力端子18aに出力する。
ただし、バックオフ時では、第2の入力信号源82は、第2の信号を、入力整合回路16を介して、ピーク増幅器18の入力端子18aに出力しない。第2の入力信号源82から第2の信号が出力されなければ、ピーク増幅器18は、信号の増幅動作を行わない。
ドハティ増幅器1が、バックオフ時よりも大きな電力を出力するときには、第2の入力信号源82第2の入力信号源82は、第2の信号を、入力整合回路16を介して、ピーク増幅器18の入力端子18aに出力する。
ピーク増幅器18は、第2の信号を増幅し、増幅後の第2の信号を第2の出力回路20に出力する。
【0081】
第1の入力信号源81及び第2の入力信号源82を備えるドハティ増幅器1でも、
図2に示すドハティ増幅器1と同様に、ピーク増幅器18が飽和出力電力よりも低い電力を出力しているときの効率の劣化を防ぐことができる。
図17に示すドハティ増幅器1では、第1の入力信号源81及び第2の入力信号源82を備えることで、ピーク増幅器18における信号の増幅動作を制御して、
図2に示すドハティ増幅器1よりも効率を高めることができる。
【0082】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。