(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972439
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車載機、制御システム、制御回路、記憶媒体および送信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 12/06 20210101AFI20211111BHJP
H04W 12/12 20210101ALI20211111BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20211111BHJP
【FI】
H04W12/06
H04W12/12
H04W4/40
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-535212(P2021-535212)
(86)(22)【出願日】2019年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2019049012
(87)【国際公開番号】WO2021117238
(87)【国際公開日】20210617
【審査請求日】2021年6月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】平 明▲徳▼
【審査官】
石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−175358(JP,A)
【文献】
特開2012−209652(JP,A)
【文献】
特開2012−123527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機である車載機と子機である電子キーとの間で信号の送受信に使用される周波数が既知であり、前記電子キーが前記車載機から希望信号の受信を完了すると規定された期間内に前記希望信号に対する応答信号を送信する制御システムにおける前記車載機であって、
規定された周波数帯に含まれる第1の周波数によって前記希望信号を送信する第1の送信部と、
前記規定された周波数帯に含まれ、前記第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信する第2の送信部と、
前記電子キーから前記希望信号に対する前記応答信号を受信する受信部と、
信号の切れ目を電力検知する機器が前記希望信号の送信停止タイミングを検知できないように、前記第1の送信部による前記希望信号の送信停止より前から、前記受信部による前記応答信号の受信開始より後までの期間において、前記第2の送信部から前記ダミー信号を送信させる制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする車載機。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の送信部による前記希望信号の送信と、前記第2の送信部による前記ダミー信号の送信とを同時に開始させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載機。
【請求項3】
前記希望信号および前記応答信号の送信可能な期間が時間スロットで規定されている場合、
前記制御部は、前記第1の送信部が前記希望信号を送信する時間スロットから、前記電子キーが前記応答信号を送信し、前記受信部が前記応答信号を受信する時間スロットにまたがって、前記第2の送信部から前記ダミー信号を送信させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載機。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信部が前記応答信号の受信を開始してから、前記第2の送信部による前記ダミー信号の送信を停止させる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の車載機。
【請求項5】
前記規定された周波数帯は、Ultra High Frequencyの通信で使用される周波数帯であり、
前記ダミー信号は、前記希望信号と異なるチャネルの信号またはチャネル間のキャリア信号である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の車載機。
【請求項6】
前記規定された周波数帯は、Bluetoothの通信で使用される周波数帯であり、
前記ダミー信号は、前記希望信号と異なるチャネルの信号またはチャネル間のキャリア信号である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の車載機。
【請求項7】
前記規定された周波数帯は、Wireless Local Area Networkの通信で使用される周波数帯であり、
前記ダミー信号は、前記希望信号と異なるチャネルの信号またはチャネル間のキャリア信号である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の車載機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車載機と、
前記車載機から希望信号の受信を完了すると規定された期間内に前記希望信号に対する応答信号を送信する電子キーと、
を備えることを特徴とする制御システム。
【請求項9】
親機である車載機と子機である電子キーとの間で信号の送受信に使用される周波数が既知であり、前記電子キーが前記車載機から希望信号の受信を完了すると規定された期間内に前記希望信号に対する応答信号を送信する制御システムにおける前記車載機を制御する制御回路であって、
規定された周波数帯に含まれる第1の周波数によって前記希望信号を送信、
前記規定された周波数帯に含まれ、前記第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信、
前記電子キーから前記希望信号に対する前記応答信号を受信、
信号の切れ目を電力検知する機器が前記希望信号の送信停止タイミングを検知できないように、前記希望信号の送信停止より前から、前記応答信号の受信開始より後までの期間において、前記ダミー信号を送信させる制御、
を前記車載機に実施させることを特徴とする制御回路。
【請求項10】
親機である車載機と子機である電子キーとの間で信号の送受信に使用される周波数が既知であり、前記電子キーが前記車載機から希望信号の受信を完了すると規定された期間内に前記希望信号に対する応答信号を送信する制御システムにおける前記車載機を制御するプログラムを記憶した記憶媒体であって、前記プログラムは、
規定された周波数帯に含まれる第1の周波数によって前記希望信号を送信、
前記規定された周波数帯に含まれ、前記第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信、
前記電子キーから前記希望信号に対する前記応答信号を受信、
信号の切れ目を電力検知する機器が前記希望信号の送信停止タイミングを検知できないように、前記希望信号の送信停止より前から、前記応答信号の受信開始より後までの期間において、前記ダミー信号を送信させる制御、
を前記車載機に実施させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項11】
親機である車載機と子機である電子キーとの間で信号の送受信に使用される周波数が既知であり、前記電子キーが前記車載機から希望信号の受信を完了すると規定された期間内に前記希望信号に対する応答信号を送信する制御システムにおける前記車載機の送信制御方法であって、
第1の送信部が、規定された周波数帯に含まれる第1の周波数によって前記希望信号を送信する第1のステップと、
第2の送信部が、前記規定された周波数帯に含まれ、前記第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信する第2のステップと、
受信部が、前記電子キーから前記希望信号に対する前記応答信号を受信する第3のステップと、
制御部が、信号の切れ目を電力検知する機器が前記希望信号の送信停止タイミングを検知できないように、前記第1の送信部による前記希望信号の送信停止より前から、前記受信部による前記応答信号の受信開始より後までの期間において、前記第2の送信部から前記ダミー信号を送信させる制御を行う第4のステップと、
を含むことを特徴とする送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーとの間で認証を行う車載機、制御システム、制御回路、記憶媒体および送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された親機である車載機とユーザが携帯する子機である電子キーとが無線通信を行い、車載機が、電子キーを認証し、ユーザからドアの開錠、ドアの施錠、エンジンスタートなどの操作を受け付けるスマートキーシステムがある。このようなスマートキーシステムに対して、中継器を用いて車載機と宅内など遠距離にある電子キーとの間の無線通信の通信距離を延長させ、車載機が搭載された車両を不正に動作可能な状態にして盗難する、いわゆるリレーアタックと呼ばれる盗難方法が知られている。
【0003】
現在、リレーアタックによる車両の盗難を防止するための様々な技術が提案されている。特許文献1には、車両から近距離通信に使用されるLF(Low Frequency)で電子キーにポーリング信号を送信し、電子キーからUHF(Ultra High Frequency)による微弱な応答信号を送信する技術が開示されている。特許文献1では、車両から電子キー方向の無線通信でリレーアタックが行われることを想定して、電子キーは、微弱な応答信号を送信する。これにより、特許文献1では、仮に電子キーがリレーアタックによって車両からのポーリング信号を受信しても、車両と電子キーとの間が遠距離の場合、電子キーからの応答信号が車両に到達しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−54662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、電子キーから送信される微弱なUHFの応答信号が中継器によって中継されてしまうと、応答信号が車両に届いてしまい、車両が不正に動作可能な状態になってしまう、という問題があった。また、将来的には、LFの信号を廃して、車両からもUHFによる信号が送信されることが予想される。この場合、UHFによる車両から電子キー方向および電子キーから車両方向の双方向の中継が可能な中継器が出現することが考えられ、リレーアタックが容易に行われてしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電子キーとの間の無線通信において、不正な中継を防止可能な車載機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、親機である車載機と子機である電子キーとの間で信号の送受信に使用される周波数が既知であり、電子キーが車載機から希望信号の受信を完了すると、規定された期間内に希望信号に対する応答信号を送信する制御システムにおける、車載機である。車載機は、規定された周波数帯に含まれる第1の周波数によって希望信号を送信する第1の送信部と、規定された周波数帯に含まれ、第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信する第2の送信部と、電子キーから希望信号に対する応答信号を受信する受信部と、
信号の切れ目を電力検知する機器が希望信号の送信停止タイミングを検知できないように、第1の送信部による希望信号の送信停止より前から、受信部による応答信号の受信開始より後までの期間において、第2の送信部からダミー信号を送信させる制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車載機は、電子キーとの間の無線通信において、不正な中継を防止できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る制御システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1で想定しているリレーアタックを行う中継器の動作を示す図
【
図3】実施の形態1で想定しているリレーアタックを行う中継器の時分割動作による中継のイメージを示す図
【
図4】実施の形態1に係る制御システムによる中継器の中継を防止する動作のイメージを示す図
【
図5】実施の形態1に係る車載機および電子キーの動作を示すフローチャート
【
図6】実施の形態1に係る車載機が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る車載機が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【
図8】実施の形態2に係る制御システムによる中継器の中継を防止する動作のイメージを示す第1の図
【
図9】実施の形態2に係る制御システムによる中継器の中継を防止する動作のイメージを示す第2の図
【
図10】実施の形態2に係る制御システムによる中継器の中継を防止する動作のイメージを示す第3の図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態に係る車載機、制御システム、制御回路、記憶媒体および送信制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る制御システム1の構成例を示す図である。制御システム1は、親機である車載機10と、子機である電子キー20と、を備える。本実施の形態では、制御システム1において、車載機10は、自動車などの車両15に搭載され、電子キー20は、ユーザが携帯して持ち運べることを想定している。また、制御システム1では、車載機10と電子キー20とが、規定された周波数帯で通信を行う、すなわち信号の送受信を行う。制御システム1では、車載機10と電子キー20との間で信号の送受信に使用される周波数が既知である。以降では、規定された周波数帯が、具体的に、UHFの通信で使用される周波数帯である場合を例にして説明する。車載機10は、電子キー20に対して、認証を開始するための信号である希望信号を送信する。電子キー20は、車載機10からの希望信号の受信が完了すると、規定された期間内に希望信号に対する応答信号を送信する。
【0012】
車載機10の構成について説明する。車載機10は、第1の送信部11と、第2の送信部12と、受信部13と、制御部14と、を備える。第1の送信部11は、規定された周波数帯、すなわちUHFの周波数帯に含まれる第1の周波数によって希望信号を送信する。第2の送信部12は、規定された周波数帯、すなわちUHFの周波数帯に含まれ、第1の周波数と異なる第2の周波数によってダミー信号を送信する。ダミー信号は、例えば、希望信号と異なるチャネルの信号である。例えば、第1の送信部11は、第1の周波数による第1のチャネルによって希望信号を送信し、第2の送信部12は、第2の周波数による第2のチャネルによってダミー信号を送信する。なお、ダミー信号については、希望信号と干渉しなければよいので、チャネルとして使用可能な各周波数帯の間、すなわちチャネル間のキャリア信号であるトーン信号を用いてもよい。受信部13は、電子キー20から、希望信号に対する応答信号を受信する。制御部14は、第1の送信部11による希望信号の送信停止より前から、受信部13による応答信号の受信開始より後までの期間において、第2の送信部12からダミー信号を送信させる制御を行う。また、制御部14は、受信部13で応答信号が受信されると、電子キー20との間で認証処理などを行う。
【0013】
電子キー20の構成について説明する。電子キー20は、受信部21と、送信部22と、制御部23と、を備える。受信部21は、車載機10の第1の送信部11から送信される希望信号を受信する。送信部22は、車載機10に対して、希望信号に対する応答信号を送信する。制御部23は、受信部21において車載機10からの希望信号の受信を完了すると、送信部22から、規定された期間内に希望信号に対する応答信号を送信させる制御を行う。なお、電子キー20では、受信部21は、車載機10の第2の送信部12から送信されるダミー信号を受信してもよいが、制御部23は、ダミー信号に対しての応答は行わない。
【0014】
ここで、本実施の形態の制御システム1に対してリレーアタックを行う中継器について説明する。
図2は、実施の形態1で想定しているリレーアタックを行う中継器31,32の動作を示す図である。なお、
図2において、車載機100および電子キー200は比較例としての一般的な機器とする。リレーアタックで使用される中継器31,32については、中継動作として、時分割動作を行う場合、および全二重中継を行う場合が考えられる。時分割動作とは、
図2に示すように、車載機100から電子キー200の方向への中継と、電子キー200から車載機100の方向への中継とを時間を分割して行う方式である。全二重中継とは、車載機100から電子キー200の方向への中継と、電子キー200から車載機100の方向への中継とを同時に行う方式である。ただし、全二重中継については、回り込みの問題があり、中継器31,32を低コストで実現することは困難と考えられる。そのため、本実施の形態の制御システム1に対してリレーアタックを行う中継器31,32については、時分割動作で中継を行うものとする。
【0015】
図3は、実施の形態1で想定しているリレーアタックを行う中継器31,32の時分割動作による中継のイメージを示す図である。
図3において、横軸は時間を示す。
図3では、車載機100から電子キー200の方向の無線通信を下り、電子キー200から車載機100の方向の無線通信を上りとしている。また、
図3では、車載機100および電子キー200が信号送信可能な期間が時間スロットTS1〜TS5によって規定されており、車載機100および電子キー200の間で、時間スロットTS1〜TS5が既知であるとする。中継器31,32は、時間スロットTS1の期間において、車載機100から送信されたUHFによる希望信号を電子キー200へ中継し、時間スロットTS2の期間において、電子キー200から送信されたUHFによる応答信号を車載機100へ中継する。同様に、中継器31,32は、時間スロットTS3,TS4の期間において、車載機100から送信されたUHFによる希望信号を電子キー200へ中継し、時間スロットTS5の期間において、電子キー200から送信されたUHFによる応答信号を車載機100へ中継する。中継器31,32は、一般的に、車載機100と電子キー200との間の通信で使用される周波数は既知ではない。また、中継器31,32は、多くの車種、すなわち多くの車載機100および電子キー200の組み合わせに対応できるように、広い周波数帯を対象にして中継できるようにされている。中継器31,32は、正規の無線通信プロトコルを実装することは高コストになるため、上り下りの中継の切り替えについては、信号の切れ目を電力検知して実現することが考えられる。
【0016】
上記のような動作を行う中継器31,32に対して、中継、すなわちリレーアタックを防止する制御システム1の動作について説明する。
図4は、実施の形態1に係る制御システム1による中継器31,32の中継を防止する動作のイメージを示す図である。車載機10は、時間スロットTS1でUHFによる希望信号を送信するとともに、希望信号とは異なるチャネルのUHFによるダミー信号を時間スロットTS1,TS2で送信する。車載機10と電子キー20とは、通信のタイミングが同期しており、信号の送信に使用される周波数が既知であるとする。そのため、電子キー20は、車載機10から送信されたUHFの希望信号を受信することができる。電子キー20は、時間スロットTS1で希望信号を受信すると、規定された期間内で次の時間スロットTS2の期間において、希望信号に対する信号であって、UHFの応答信号を送信する。このとき、車載機10は、希望信号とともにダミー信号をUHFの信号として送信している。そのため、中継器31,32は、車載機10が希望信号の送信を停止しても車載機10からダミー信号の送信が継続されているため、車載機10が希望信号の送信を停止したタイミングを検知できない。中継器31,32は、ダミー信号の送信が停止した時間スロットTS2のタイミングで車載機10による信号の送信が停止したことを検知できるが、時間スロットTS2では既に電子キー20が応答信号の送信を開始している。そのため、中継器31,32は、電子キー20から送信される応答信号の中継が出来ず、応答信号の中継に失敗する。
【0017】
時間スロットTS3〜TS5の期間についても同様である。車載機10は、時間スロットTS3,TS4でUHFによる希望信号を送信するとともに、希望信号とは異なるチャネルのUHFによるダミー信号を時間スロットTS3〜TS5で送信する。電子キー20は、時間スロットTS3,TS4で希望信号を受信すると、規定された期間内で次の時間スロットTS5の期間において、希望信号に対する信号であって、UHFの応答信号を送信する。このとき、車載機10は、希望信号とともにダミー信号をUHFの信号として送信している。そのため、中継器31,32は、車載機10が希望信号の送信を停止しても車載機10からダミー信号の送信が継続されているため、車載機10が希望信号の送信を停止したタイミングを検知できない。中継器31,32は、ダミー信号の送信が停止した時間スロットTS5のタイミングで車載機10による信号の送信が停止したことを検知できるが、時間スロットTS5では既に電子キー20が応答信号の送信を開始している。そのため、中継器31,32は、電子キー20から送信される応答信号の中継が出来ず、応答信号の中継に失敗する。
【0018】
このように、希望信号および応答信号の送信可能な期間が時間スロットで規定されている場合、車載機10の制御部14は、第1の送信部11が希望信号を送信する時間スロットから、電子キー20が応答信号を送信し、受信部13が応答信号を受信する時間スロットにまたがって、第2の送信部12からダミー信号を送信させる。
【0019】
車載機10および電子キー20の動作を、フローチャートを用いて説明する。
図5は、実施の形態1に係る車載機10および電子キー20の動作を示すフローチャートである。車載機10において、第1の送信部11は、制御部14の制御によって、電子キー20との間で認証を開始するための希望信号をUHFの第1のチャネルによって送信する(ステップS101)。
【0020】
電子キー20において、受信部21は、車載機10から送信された希望信号を受信する(ステップS201)。
【0021】
車載機10において、第2の送信部12は、制御部14の制御によって、希望信号と異なる周波数、すなわちチャネルであって、中継器31,32によるリレーアタックを防止するためのダミー信号をUHFの第2のチャネルの信号によって送信する(ステップS102)。本実施の形態では、制御部14は、第1の送信部11による希望信号の送信と、第2の送信部12によるダミー信号の送信とを同時に開始させている。第1の送信部11は、制御部14の制御によって、規定された期間、
図4の例では希望信号を送信可能な時間スロットの期間が経過すると、UHFの第1のチャネルによる希望信号の送信を停止する(ステップS103)。
【0022】
電子キー20において、送信部22は、制御部23の制御によって、希望信号に対する、UHFによる応答信号を送信する(ステップS202)。
【0023】
車載機10において、受信部13は、電子キー20から送信された応答信号を受信する(ステップS104)。制御部14は、受信部13で受信された応答信号を用いて、電子キー20の認証を行う(ステップS105)。なお、制御システム1において、車載機10と電子キー20との間の認証方法は一般的な手法でよいため、詳細な説明については省略する。第2の送信部12は、制御部14の制御によって、UHFの第2のチャネルによるダミー信号の送信を停止する(ステップS106)。なお、制御部14は、ステップS105の前にステップS106を行ってもよいし、ステップS105とステップS106とを並行して行ってもよい。いずれの場合においても、制御部14は、受信部13が応答信号の受信を開始してから、第2の送信部12によるダミー信号の送信を停止させる。
【0024】
なお、本実施の形態では、車載機10が希望信号を送信する期間、および電子キー20が応答信号を送信する期間が時間スロットによって規定されている場合について説明したが、一例であり、これに限定されない。前述のように、車載機10は、希望信号をUHFの第1のチャネルで送信し、ダミー信号をUHFの第2のチャネルで送信し、希望信号の送信を停止後、電子キー20から応答信号を受信した後にダミー信号の送信を停止することができれば、信号の送信期間が時間スロットによって規定されていない場合にも適用可能である。
【0025】
また、規定された周波数帯として、UHFの通信で使用される周波数帯で、車載機10が希望信号およびダミー信号を送信する場合について説明したが、これに限定されない。車載機10は、規定された周波数帯として、Bluetooth(登録商標)の通信で使用される周波数帯で希望信号およびダミー信号を送信してもよいし、WLAN(Wireless Local Area Network)の通信で使用される周波数帯で希望信号およびダミー信号を送信してもよい。車載機10は、BluetoothおよびWLANのいずれの場合においても、希望信号およびダミー信号を異なるチャネルの信号として送信することが可能である。車載機10は、ダミー信号について、希望信号と干渉しなければよいので、チャネルとして使用可能な各周波数帯の間、すなわちチャネル間のキャリア信号であるトーン信号を用いてもよい。また、車載機10は、規定された周波数帯として、LFの通信で使用される周波数帯で希望信号およびダミー信号を送信してもよい。Bluetoothのように周波数ホッピングする通信方式においては、希望信号およびダミー信号の送信に使用される周波数は、周期的に変更されてもよい。
【0026】
車載機10から電子キー20の方向の無線通信において、車載機10および電子キー20が規定された周波数としてUHF、Bluetooth、WLAN、およびLFのいずれの周波数帯を使用する場合においても、中継器31,32は、中継器31,32の間の信号の中継についてはUHFの周波数帯を使用することを想定している。
【0027】
つづいて、車載機10のハードウェア構成について説明する。車載機10において、第1の送信部11および第2の送信部12は送信機により実現される。受信部13は受信機により実現される。制御部14は処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0028】
図6は、実施の形態1に係る車載機10が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。
図6に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、制御部14の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路により実現される各機能を車載機10に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0029】
車載機10において、上記プログラムは、第1の送信部11が、規定された周波数帯に含まれる第1の周波数による希望信号を送信する第1のステップと、第2の送信部12が、規定された周波数帯に含まれ、第1の周波数と異なる第2の周波数によるダミー信号を送信する第2のステップと、受信部13が、電子キー20から希望信号に対する応答信号を受信する第3のステップと、制御部14が、第1の送信部11による希望信号の送信終了より前から、受信部13による応答信号の受信開始より後までの期間において、第2の送信部12からダミー信号を送信させる制御を行う第4のステップと、を車載機10に実行させるプログラムであるとも言える。
【0030】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0031】
図7は、実施の形態1に係る車載機10が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。
図7に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0032】
電子キー20のハードウェア構成も同様である。電子キー20において、受信部21は受信機により実現される。送信部22は送信機により実現される。制御部23は処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、制御システム1において、車載機10は、希望信号をUHFの第1のチャネルで送信し、ダミー信号をUHFの第2のチャネルで送信し、希望信号の送信を停止後、電子キー20から応答信号を受信した後にダミー信号の送信を停止することとした。中継器31,32は、車載機10が希望信号の送信を停止したタイミングを検知できず、電子キー20から送信される応答信号の中継に失敗する。これにより、車載機10は、中継器31,32による中継を防止でき、リレーアタックを防止することができる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態1では、車載機10が、希望信号およびダミー信号を同じタイミングで送信を開始する場合について説明した。実施の形態2では、車載機10が、希望信号の送信を開始するタイミングと異なるタイミングでダミー信号の送信を開始する場合について説明する。
【0035】
実施の形態2において、制御システム1の構成は、
図1に示す実施の形態1のときと同様である。
図8は、実施の形態2に係る制御システム1による中継器31,32の中継を防止する動作のイメージを示す第1の図である。
図8は、
図4に示す車載機10から電子キー20の方向、および電子キー20から車載機10の方向の無線通信について、時間スロットTS1,TS2の部分を抜き出したものである。実施の形態1で説明したように、車載機10は、希望信号の送信を停止したタイミングが中継器31,32に検知されないように、希望信号の送信を停止してもダミー信号の送信を継続している。すなわち、車載機10は、希望信号の送信を停止するより前からダミー信号の送信を開始し、応答信号の受信を開始した後までダミー信号の送信を継続できれば、
図8に示すように、ダミー信号の送信期間自体は短くてもよい。
【0036】
なお、車載機10は、希望信号の送信開始のタイミングよりも、ダミー信号の送信開始を早くすることも可能である。
図9は、実施の形態2に係る制御システム1による中継器31,32の中継を防止する動作のイメージを示す第2の図である。また、車載機10が搭載される車両15において消費電力の問題が無ければ、車載機10は、希望信号を複数回送信する期間において、ダミー信号を停止することなく継続して送信し続けることも可能である。
図10は、実施の形態2に係る制御システム1による中継器31,32の中継を防止する動作のイメージを示す第3の図である。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、制御システム1は、
図8から
図10に示すいずれの場合においても、実施の形態1のときと同様の効果を得ることができる。なお、実施の形態2において、制御システム1は、実施の形態1のときと同様、信号の送信期間が時間スロットによって規定されていない場合にも適用可能である。
【0038】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 制御システム、10,100 車載機、11 第1の送信部、12 第2の送信部、13,21 受信部、14,23 制御部、15 車両、20,200 電子キー、22 送信部、31,32 中継器。