特許第6972440号(P6972440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972440セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6972440
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20211111BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20211111BHJP
   H01M 8/243 20160101ALI20211111BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01M8/2465
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102A
   H01M8/12 102B
   H01M8/12 102C
   H01M8/243
   H01M8/2475
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2021-538475(P2021-538475)
(86)(22)【出願日】2021年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2021007219
【審査請求日】2021年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2020-34266(P2020-34266)
(32)【優先日】2020年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古内 史人
(72)【発明者】
【氏名】今仲 和也
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−215980(JP,A)
【文献】 特開2019−215989(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/0297
H01M 8/08− 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子部を有し、第1セルを含む複数のセルと、
酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する基材と、前記第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する被覆層とを備え、前記基材および前記被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有し、該露出面の表面粗さは、前記第1面または前記第1外面の表面粗さと異なる複合部材と、
前記素子部と前記被覆層の第1外面との間に位置する接合材と
を備え、
前記基材は、前記第1セルと対向する前記第1面、および前記露出面を含み前記第1セルと対向しない第2面を有し、
前記被覆層は、酸化雰囲気に露出する第2外面を有し、前記第2面をさらに覆い、
前記第2面は、前記第1面よりも表面粗さが小さく、前記第2外面よりも表面粗さが大きい
セルスタック装置
【請求項2】
素子部を有し、第1セルを含む複数のセルと、
酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する基材と、前記第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する被覆層とを備え、前記基材および前記被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有し、該露出面の表面粗さは、前記第1面または前記第1外面の表面粗さと異なる複合部材と、
前記素子部と前記被覆層の第1外面との間に位置する接合材と
を備え、
前記基材は、前記第1セルと対向する前記第1面、および前記第1セルと対向しない第2面を有し、
前記被覆層は、前記第2面を覆い、前記露出面を含む第2外面をさらに有し、該第2外面は、前記第1外面よりも表面粗さが小さく、
前記第2面は、前記第2外面よりも表面粗さが大きい
セルスタック装置。
【請求項3】
前記被覆層は、前記第1外面と前記第2外面との間に位置する第3外面を有する
請求項1または2に記載のセルスタック装置。
【請求項4】
前記第3外面は、前記接合材に面しており、前記第1外面よりも表面粗さが小さい
請求項に記載のセルスタック装置。
【請求項5】
素子部を有し、第1セルを含む複数のセルと、
酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する基材と、前記第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する被覆層とを備え、前記基材および前記被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有し、該露出面の表面粗さは、前記第1面または前記第1外面の表面粗さと異なる複合部材と、
前記素子部と前記被覆層の第1外面との間に位置する接合材と
を備え、
前記基材は、前記第1セルと対向する前記第1面、および前記露出面を含み前記第1セルと対向しない第2面を有し、
前記第2面は、前記第1面よりも表面粗さが小さく、
前記被覆層の外面と前記基材に面する前記被覆層の内面との中間に位置する前記被覆層の中間部位から前記内面までの内部領域に位置し、前記外面から前記中間部位までの外部領域および前記基材には位置しない1または複数の粒子体を含む
ルスタック装置。
【請求項6】
素子部を有し、第1セルを含む複数のセルと、
酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する基材と、前記第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する被覆層とを備え、前記基材および前記被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有し、該露出面の表面粗さは、前記第1面または前記第1外面の表面粗さと異なる複合部材と、
前記素子部と前記被覆層の第1外面との間に位置する接合材と
を備え、
前記基材は、前記第1セルと対向する前記第1面、および前記第1セルと対向しない第2面を有し、
前記被覆層は、前記第2面を覆い、前記露出面を含む第2外面をさらに有し、該第2外面は、前記第1外面よりも表面粗さが小さく、
前記被覆層の外面と前記基材に面する前記被覆層の内面との中間に位置する前記被覆層の中間部位から前記内面までの内部領域に位置し、前記外面から前記中間部位までの外部領域および前記基材には位置しない1または複数の粒子体を含む
セルスタック装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1つに記載のセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項8】
請求項に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数有する燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの1種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−162357号公報
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る複合部材は、基材と、被覆層とを備える。基材は、酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する。被覆層は、前記第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する。前記基材および前記被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有する。前記露出面の表面粗さは、前記第1面または前記第1外面の表面粗さと異なる。
【0005】
また、本開示のセルスタック装置は、複数のセルと、上記に記載の複合部材と、接合材とを備える。複数のセルは、素子部を有し、第1セルを含む。接合材は、前記素子部と前記被覆層の第1外面との間に位置する。前記基材は、前記第1セルと対向する前記第1面、および前記露出面を含み前記第1セルと対向しない第2面を有する。前記第2面は、前記第1面よりも表面粗さが小さい。
【0006】
また、本開示のモジュールは、上記に記載のセルスタック装置と、前記セルスタック装置を収納する収納容器とを備える。
【0007】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、前記モジュールの運転を行うための補機と、前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、実施形態に係るセルの一例を示す横断面図である。
図1B図1Bは、実施形態に係るセルの一例を空気極側からみた側面図である。
図1C図1Cは、実施形態に係るセルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
図2A図2Aは、実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示すX−X線の断面図である。
図2C図2Cは、実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
図3図3は、図2Cに示すY−Y線の断面図である。
図4A図4Aは、複合部材の別の例を示す斜視図である。
図4B図4Bは、複合部材の別の例を示す斜視図である。
図4C図4Cは、複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図5A図5Aは、実施形態の変形例1に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図5B図5Bは、実施形態の変形例2に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図6A図6Aは、実施形態の変形例3に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図6B図6Bは、実施形態の変形例4に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図6C図6Cは、実施形態の変形例5に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図7図7は、実施形態の変形例6に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図8図8は、実施形態の変形例7に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図9A図9Aは、実施形態の変形例8に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図9B図9Bは、実施形態の変形例9に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図10A図10Aは、実施形態の変形例10に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図10B図10Bは、実施形態の変形例11に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
図10C図10Cは、実施形態の変形例12に係る複合部材を拡大した断面図である。
図11図11は、実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
図12図12は、実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
図13A図13Aは、実施形態の変形例13に係る平板型セルを示す斜視図である。
図13B図13Bは、図13Aに示す平板型セルの部分断面図である。
図13C図13Cは、図13Bに示す領域Aの拡大図である。
図13D図13Dは、平板型セルの変形例に係る領域Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する複合部材、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0010】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
<セルの構成>
まず、図1A図1Cを参照しながら、実施形態に係るセルスタック装置を構成するセルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
【0012】
図1Aは、実施形態に係るセル1の一例を示す横断面図であり、図1Bは、実施形態に係るセル1の一例を空気極5側からみた側面図であり、図1Cは、実施形態に係るセル1の一例をインターコネクタ6側からみた側面図である。なお、図1A図1Cは、セル1の各構成の一部を拡大して示している。
【0013】
図1A図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm〜50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが1cm〜10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは1mm〜5mmである。
【0014】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部と、インターコネクタ6とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0015】
素子部は、支持基板2の平坦面n1上に設けられている。かかる素子部は、燃料極3と、固体電解質層4と、空気極5とを有している。また、図1Aに示す例では、平坦面n2上にインターコネクタ6が設けられている。
【0016】
また、図1Bに示すように、空気極5はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層4のみが表面に露出している。また、図1Cに示すように、インターコネクタ6がセル1の下端まで延びている。セル1の下端部では、インターコネクタ6および固体電解質層4が表面に露出している。なお、図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層4が露出している。
【0017】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0018】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aを流れる燃料ガスを燃料極3まで透過させる。支持基板2は、導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部で生じた電気をインターコネクタ6に集電する。
【0019】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。たとえば、鉄族金属成分はNi(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば特定の希土類元素酸化物であってもよい。
【0020】
燃料極3の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極3は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrOと、Niおよび/またはNiOを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物としては、たとえば、Yなどが用いられる。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrOを安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含む。
【0021】
固体電解質層4は、電解質であり、燃料極3と空気極5との間のイオンの橋渡しをする。同時に、固体電解質層4は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0022】
固体電解質層4の材料は、たとえば、3モル%〜15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrOであってもよい。この希土類元素酸化物としては、たとえば、Yなどが用いられる。なお、上記特性を有する限りにおいては、固体電解質層4の材料に他の材料などを用いてもよい。
【0023】
空気極5の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極5の材料は、たとえば、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物などの導電性セラミックスであってもよい。
【0024】
空気極5の材料は、たとえば、AサイトにSrとLaが共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaSr1−xCoFe1−y、LaSr1−xMnO、LaSr1−xFeO、LaSr1−xCoOなどが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0025】
また、空気極5は、ガス透過性を有している。空気極5の開気孔率は、たとえば20%以上、特に30%〜50%の範囲であってもよい。
【0026】
インターコネクタ6の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO系酸化物)などを用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされない。
【0027】
また、インターコネクタ6は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ6は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
【0028】
<セルスタック装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係るセルスタック装置10について、図2A図2Cを参照しながら説明する。図2Aは、実施形態に係るセルスタック装置10の一例を示す斜視図であり、図2Bは、図2Aに示すA−A線の断面図であり、図2Cは、実施形態に係るセルスタック装置10の一例を示す上面図である。
【0029】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0030】
固定部材12は、接合材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。接合材13は、セル1と支持部材14とを接合する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、たとえば金属製である。
【0031】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、接合材13で接合されている。
【0032】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された固定材21によって、ガスタンク16に固定されている。
【0033】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(図11参照)で生成される。
【0034】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0035】
図2Aに示す例では、2列のセルスタック11、2つの支持体15、およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11はそれぞれ、複数のセル1を有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
【0036】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(図1A参照)の長さよりも大きい。
【0037】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部は、接合材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0038】
接合材13および固定材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。接合材13および固定材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0039】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO−CaO系、MgO−B系、La−B−MgO系、La−B−ZnO系、SiO−CaO−ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO−MgO系の材料を用いてもよい。
【0040】
また、図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極3と他方のセル1の空気極5とを電気的に直列に接続する。より具体的には、隣接する一方のセル1の燃料極3と電気的に接続されたインターコネクタと、他方のセル1の空気極5とを接続している。
【0041】
また、図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0042】
また、図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0043】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0044】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0045】
<複合部材とセルとの接合>
つづいて、複合部材とセルとの接合について、図3を参照しながら説明する。図3は、図2Cに示すY−Y線の断面図である。
【0046】
図3に示すように、支持体15は、接合材13を介して第1セルとしてのセル1と接合されている。
【0047】
支持体15は、基材151と、被覆層152とを有する複合部材である。基材151は、耐熱性を有する。基材151は、クロムを含有する。基材151は、たとえば、ステンレス鋼である。基材151は、たとえば、金属酸化物を含有してもよい。
【0048】
被覆層152は、基材151を被覆する。被覆層152は、基材151の第1面151aと接合材13との間に位置している。
【0049】
被覆層152の材料は、たとえば、無機酸化物である。無機酸化物は、たとえば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化シリコン(シリカ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化クロム(クロミア)、酸化チタン(チタニア)およびこれらの複合酸化物などであってもよい。ジルコニアは、安定化ジルコニアでもよい。複合酸化物は、たとえばフォルステライトおよびコージェライトなどから選択してもよい。被覆層152の材料は、導電率の低い材料でもよく、絶縁性の材料でもよい。被覆層152の材料が導電率の低い材料、または絶縁性の材料であることで、高い耐電圧および高い絶縁抵抗を有するセルスタック装置10とすることができる。
【0050】
特にアルミナおよびフォルステライトは、基材151との熱膨張係数の差が小さく、これらを被覆層152に用いると、温度差によって基材151との間に生じる熱応力が小さくなる。したがって、被覆層152を基材151に強固に接合することができ、被覆層152が基材151から剥離しにくくなる。
【0051】
また、接合材13は、第1セルとしてのセル1と支持体15とを接合する。接合材13は、セル1の固体電解質層4と支持体15の被覆層152との間に位置し、セル1と被覆層152の第1面152aとを接合する。第1面152aは、第1外面の一例である。
【0052】
被覆層152は、接合材13と基材151との間に位置することにより、たとえば熱膨張率の相違に起因して接合材13と基材151との間で生じる応力を緩和し、接合材13におけるクラック発生を低減する。
【0053】
しかしながら、支持体15は、異種材料で構成されており、動作環境によっては被覆層152にクラックが生じ、あるいは基材151から被覆層152が剥離するおそれがあった。その結果、支持体15に生じた隙間から燃料ガスのリークが生じ、依然としてセルスタック装置10の耐久性が低下するおそれがあった。また、支持体15に含まれるクロム(Cr)が酸化雰囲気中に脱離してセル1に達し、セル1の性能が低下して、セルスタック装置10の耐久性が低下するおそれがあった。
【0054】
そこで、実施形態では、基材151の酸化雰囲気に露出する面の表面粗さと、酸化雰囲気に露出しない面の表面粗さとを異ならせることとした。実施形態では、被覆層152に面することにより酸化雰囲気に露出しない基材151の第1面151aは、酸化雰囲気に露出する基材151の他の部分の表面、たとえば、第2面151bよりも表面粗さが大きい。
【0055】
これにより、被覆層152と基材151との密着性を高めることができる。このため、基材151から被覆層152が剥離しにくくなり、あるいは被覆層152が破断して燃料ガスのリークが生じにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができる。
【0056】
一方で、基材151のうち、被覆層152が位置しない第2面151bは、外部空間23に露出している。かかる外部空間23は、セル1の空気極5(図1参照)が露出する空間であり、空気などの酸素含有ガスで満たされる。すなわち、外部空間23は、酸化雰囲気である。
【0057】
このような環境下で用いられる基材151は、外部空間23の酸化雰囲気に露出する第2面151bの表面粗さを小さくすることで、比表面積を小さくしてもよい。たとえば、実施形態では、第2面151bは、第1面151aよりも表面粗さが小さい。
【0058】
これにより、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が酸化雰囲気である外部空間23に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなり、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0059】
<各種変形例>
つづいて、実施形態の各種変形例に係る支持体15について、図4A図10Cを参照しながら説明する。図4A図4Bは、複合部材の別の例を示す斜視図である。
【0060】
図4Aに示すような平板状の支持体15を用いる場合には、ガスタンク16(図2A参照)を平板状である支持体15の下面に接合することによって内部空間22(図4C参照)が形成される。また、図4Bに示す支持体15は、複数の挿入孔15aを有している。この場合、支持体15の複数の挿入孔15aのそれぞれにセル1が1つずつ挿入されていてもよいし、支持体15の複数の挿入孔15aのそれぞれにセル1が複数個ずつ挿入されていてもよい。
【0061】
図4Cは、複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。図4Cに示すように、支持体15は平板状を有している。支持体15は、接合材13によりセル1と接合されている。
【0062】
支持体15は、基材151と、被覆層152とを有している。基材151は、第1面151aと、第2面151bと、内面151eとを有している。第1面151aは、被覆層152に面している。第2面151bは、外部空間23の酸化雰囲気に露出している。内面151eは、内部空間22の還元雰囲気に露出している。
【0063】
被覆層152は、基材151を被覆する。被覆層152は、基材151の第1面151aと接合材13との間に位置している。
【0064】
また、接合材13は、セル1と支持体15とを接合する。接合材13は、セル1の固体電解質層4(図1A参照)と支持体15の被覆層152との間に位置し、セル1と被覆層152の第1外面としての第1面152aとを接合する。
【0065】
実施形態に係る支持体15では、基材151の第1面151aは、外部空間23の酸化雰囲気に露出する基材151の第2面151bよりも表面粗さが大きい。
【0066】
被覆層152に面する第1面151aの表面粗さが第2面151bの表面粗さよりも大きいことにより、被覆層152が基材151から剥離しにくくする、あるいは被覆層152が破断して燃料ガスのリークが生じにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができる。
【0067】
さらに、第2面151bの表面粗さが、第1面151aの表面粗さよりも小さいことにより、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなり、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0068】
図5A図5Bは、実施形態の変形例2、3に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。図6A図6Bは、実施形態の変形例4、5に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
【0069】
図5A図6Aに示すように、支持体15の基材151は、第1面151aと第2面151bとの間に位置する中間面151cをさらに有してもよい。中間面151cは、第3面の一例である。
【0070】
中間面151cは、被覆層152に面している。中間面151cは、たとえば、第1面151aよりも表面粗さが小さい。
【0071】
中間面151cは、第1面151aよりも酸化雰囲気に近い部位に位置している。たとえば、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が被覆層152と基材151との界面およびその近傍を介して外部空間23の酸化雰囲気に脱離するおそれがあった。被覆層152に面する基材151のうち、酸化雰囲気から離れた部位に位置する第1面151aよりも中間面151cの表面粗さを小さくすることにより、たとえば、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなり、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。なお、中間面151cの表面粗さは、たとえば第2面151bの表面粗さと同じであってもよい。また、中間面151cが、たとえば第1面151aと第2面151bとの中間の表面粗さを有していてもよい。
【0072】
一方、図5B図6Bに示すように、支持体15の基材151は、第1面151aと第2面151bとの間に位置する中間面151dをさらに有してもよい。中間面151dは、第3面の一例である。
【0073】
中間面151dは、外部空間23の酸化雰囲気に露出している。中間面151dは、たとえば、第2面151bよりも表面粗さが大きくてもよい。なお、中間面151dの表面粗さは、たとえば第1面151aの表面粗さと同じであってもよい。また、中間面151dが、たとえば第1面151aと第2面151bとの中間の表面粗さを有していてもよい。
【0074】
また、図5A図6Bの各変形例では、中間面151c,151dの一方のみを有する例について示したが、中間面151c,151dの両方を有してもよい。
【0075】
図6Cは、実施形態の変形例5に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
【0076】
図6Cに示すように、支持体15の被覆層152が、第1面152aよりも外部空間23の酸化雰囲気の近くに位置し、接合材13に面する面152cを有することを除き、図6Aに示す支持体15と同じ構成を有している。
【0077】
面152cは、たとえば、第1面152aよりも表面粗さが小さくてもよい。接合材13に面した被覆層152のうち、酸化雰囲気から離れた部位に位置する第1面152aよりも面152cの表面粗さを小さくすることにより、たとえば、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気にさらに脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなり、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0078】
また、面152cは、たとえば、第1面152aよりも表面粗さが大きくてもよい。接合材13に面する被覆層152のうち、第1面152aよりも面152cの表面粗さを大きくすることにより、たとえば、酸化雰囲気に近い部位に位置する接合材13と支持体15の被覆層152との密着性を高めることができる。このため、接合材13と支持体15の被覆層152とが剥離しにくくなり、あるいは接合材13または被覆層152が破断しにくくなり、その結果燃料ガスのリークを生じにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができる。
【0079】
図7は、実施形態の変形例6に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。図8は、実施形態の変形例7に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
【0080】
図7図8に示すように、支持体15の被覆層152が、基材151の第2面151bをさらに覆うことを除き、図3図4Cに示す支持体15と同じ構成を有している。
【0081】
被覆層152は、接合材13に面する第1面152aと、外部空間23の酸化雰囲気に露出する第2面152bとを有している。第1面152aは、第1外面の一例である。第2面152bは、第2外面の一例である。
【0082】
実施形態の変形例6、7に係る支持体15は、被覆層152の酸化雰囲気に露出する面の表面粗さが、基材151の酸化雰囲気に露出しない面の表面粗さと異なる。たとえば、基材151の、酸化雰囲気に露出しない第2面151bの表面粗さが、被覆層152の、酸化雰囲気に露出する第2面152bの表面粗さよりも大きい。
【0083】
被覆層152に面する第2面151bの表面粗さが第2面152bの表面粗さよりも大きいことにより、被覆層152と基材151との密着性が高まる。このため、被覆層152が基材151から剥離しにくくなり、あるいは被覆層152が破断しにくくなり、その結果燃料ガスのリークを生じにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができる。また、剥離または破断した部分から高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0084】
さらに、外部空間23の酸化雰囲気に露出する第2面152bの表面粗さが、被覆層152に覆われた第2面151bの表面粗さよりも小さいことにより、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が被覆層152の第2面152bを介して外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0085】
一方、実施形態の変形例6、7に係る支持体15において、たとえば、被覆層152のうち酸化雰囲気に露出しない第1面152aの表面粗さが、被覆層152のうち酸化雰囲気に露出する第2面152bの表面粗さよりも大きくてもよい。
【0086】
接合材13に面する第1面152aの表面粗さが外部空間23の酸化雰囲気に露出する第2面152bの表面粗さよりも大きいことにより、被覆層152と接合材13との密着性が高まる。このため、接合材13が基材151から剥離しにくくなり、あるいは被覆層152が破断しにくくなり、その結果燃料ガスのリークを生じにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができる。
【0087】
さらに、第2面152bの表面粗さが、第1面152aの表面粗さよりも小さいことにより、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が被覆層152を介して外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0088】
なお、図7図8に示す支持体15では、基材151の第2面151bは、第1面151aよりも表面粗さが大きくてもよく、互いに同じであってもよい。ただし、第1面151aの表面粗さよりも第2面151bの表面粗さを小さくすると、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気にさらに脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能がさらに低下しにくくなることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。
【0089】
また、図8に示す変形例では、外部空間23の酸化雰囲気に露出する接合材13の端面131aと、被覆層152の第2面152bとが面一に位置しているが、これに限らず、たとえば、第2面152bが端面131aから酸化雰囲気である外部空間23側に突出するように位置してもよい。
【0090】
図9A図9Bは、実施形態の変形例8、9に係る複合部材とセルとの接合部を拡大した断面図である。図10A図10Bは、実施形態の変形例10、11に係る複合部材の別の例とセルとの接合部を拡大した断面図である。
【0091】
図9A図10Aに示すように、支持体15の被覆層152は、第1面152aと第2面152bとの間に位置する中間面である面152cをさらに有してもよい。面152cは、第3外面の一例である。
【0092】
面152cは、接合材13に面している。面152cは、たとえば、第1面152aよりも表面粗さが小さい。
【0093】
また、面152cは、第1面152aよりも酸化雰囲気に近い部位に位置している。たとえば、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が接合材13と被覆層152との界面およびその近傍を介して酸化雰囲気である外部空間23に脱離するおそれがあった。接合材13に面する被覆層152のうち、外部空間23の酸化雰囲気から離れた部位に位置する第1面152aよりも面152cの表面粗さを小さくすることにより、たとえば、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が接合材13と被覆層152との界面およびその近傍を介して酸化雰囲気に脱離することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。なお、面152cの表面粗さは、たとえば第2面152bの表面粗さと同じであってもよい。また、面152cが、たとえば第1面152aと第2面152bとの中間の表面粗さを有していてもよい。
【0094】
一方、図9B図10Bに示すように、支持体15の被覆層152は、第1面152aと第2面152bとの間に位置する中間面152dをさらに有してもよい。中間面152dは、第3外面の一例である。
【0095】
中間面152dは、外部空間23の酸化雰囲気に露出している。中間面152dは、たとえば、第2面152bよりも表面粗さが大きい。このように中間面152dを有した場合であっても、高温動作時に基材151に含まれるクロム(Cr)が外部空間23の酸化雰囲気に脱離しにくくすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の性能が低下しにくくなることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。なお、中間面152dの表面粗さは、たとえば第1面152aの表面粗さと同じであってもよい。また、中間面152dが、たとえば第1面152aと第2面152bとの中間の表面粗さを有していてもよい。
【0096】
また、図9A図10Bの各変形例では、面152cまたは中間面152dを有する例について示したが、面152cおよび中間面152dの両方を有してもよい。
【0097】
図10Cは、実施形態の変形例12に係る複合部材を拡大した断面図である。図10Cに示すように、被覆層152は、1または複数の粒子体Pを有してもよい。粒子体Pは、被覆層152の第1面152aと内面152eとの中間に位置する中間部位cpを規定したとき、中間部位cpから内面152eまでの内部領域152gに位置している。
【0098】
また、粒子体Pの材料は、たとえば、アルミナ、炭化珪素である。粒子体Pの材料は、第1面152aから中間部位cpまでの外部領域152fおよび基材151には位置しない。粒子体Pは、第1面152aと内面152eとの間隔をtとしたとき、内面152eからt/2以内の部分である内部領域152gに位置している。すなわち、粒子体Pの粒径は、t/2以下である。
【0099】
このように被覆層152の内部領域152gに粒子体Pを位置させることにより、たとえば、被覆層152と基材151との密着性が向上する。したがって、実施形態によれば、支持体15の耐久性を高めることができることから、セルスタック装置10の耐久性を高めることができる。なお、図10Cでは、粒子体Pが基材151に面する内面152eと第1面152aとの間に位置する例について図示したが、これに限らず、たとえば内面152eと第2面152bとの間に位置してもよい。
【0100】
(評価方法)
ここで、上記した各面(第1面151a、第2面151b、中間面151c,151d、第1面152a、第2面152b、面152cおよび中間面152d)および後述する各面の表面粗さの大小は、JIS B0633;2001に規定された算術平均粗さRaに基づいて判定することができる。算術平均粗さRaは、各面に垂直な断面の画像解析により算出する。まず、支持体15および接合材を切り出して、樹脂に埋め込み、面粗さを計測する面に垂直な断面を研磨砥粒、ラッピングフィルム(♯8000程度)等を用いて研磨し、鏡面状態の断面を得る。得られた断面を、走査型電子顕微鏡、光学式顕微鏡等を用いて撮影し、得られた画像を画像解析することで各面の算術平均粗さRaをそれぞれ算出することができる。
【0101】
(各面の表面粗さ)
上記したように算出された各面(第1面151a、第2面151b、中間面151c,151d、第1面152a、第2面152b、面152cおよび中間面152d)および後述する各面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、たとえば、0.1μm〜30μmであってもよい。第1面151aおよび第2面151bのうち、一方の表面粗さ(算術平均粗さRa)が、たとえば、0.1μm〜30μmであってもよい。また、第1面152aおよび第2面152bのうち、一方の表面粗さ(算術平均粗さRa)が、たとえば、0.1μm〜30μmであってもよい。また、第2面151b,152bのうち、一方の表面粗さ(算術平均粗さRa)が、たとえば、0.1μm〜30μmであってもよい。さらに、後述する各面についても、上記した各面と同程度の表面粗さ(算術平均粗さRa)とすることができる。
【0102】
(製法)
実施形態に係る基材151の第1面151aおよび第2面151bは、たとえば、酸化雰囲気である外部空間23側に位置する基材151表面のうち、第1面151aに相当する部分にサンドブラストなどの粗面化処理を行うことで第1面151aを形成し、残りの部分を第2面151bとすることができる。また、たとえば、酸化雰囲気である外部空間23側に位置する基材151表面のうち、第2面151bに相当する部分に研磨処理を行うことで第2面151bを形成し、残りの部分を第1面151aとしてもよい。また、たとえば、酸化雰囲気である外部空間23側に位置する基材151表面のうち、第1面151aおよび第2面151bに相当する部分にそれぞれ異なる表面処理を行うことで第1面151aおよび第2面151bをそれぞれ形成してもよい。さらに、第1面151aおよび第2面151bの中間に位置する中間面151c,151dについても、上記した第1面151aおよび第2面151bの製法を適宜組み合わせて形成することができる。
【0103】
また、実施形態に係る被覆層152は、たとえば、溶射法、蒸着法、電着法、スパッタリング法などの方法で位置させることができる。また、たとえば基材151表面に被覆材料を塗装し、その後焼成させて被覆層152としてもよい。
【0104】
また、被覆層152の第1面152aおよび第2面152bは、たとえば、第1面152aおよび第2面152bに対応する基材151の第1面151aおよび第2面151bの表面粗さの相違に基づいて形成することができる。また、第2面152bに相当する部分の厚さを第1面152aに相当する部分の厚さよりも大きくすることで形成してもよい。また、たとえば被覆層152表面のうち、第2面152bに相当する部分に研磨処理を行うことで第2面152bを形成し、残りの部分を第1面152aとしてもよい。さらに、上記した被覆層152の形成時における各種条件を変更することで第1面152aおよび第2面152bをそれぞれ形成してもよい。さらに、第1面152aおよび第2面152bの中間に位置する面152cおよび中間面152dについても、上記した第1面152aおよび第2面152bの製法を適宜組み合わせて形成することができる。
【0105】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本開示の実施形態に係るモジュール100について、図11を用いて説明する。図11は、実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図であり、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0106】
図11に示すように、モジュール100は、収納容器101内に、セルスタック装置10を収納して構成される。また、セルスタック装置10の上方には、セル1に供給する燃料ガスを生成するための改質器102が配置されている。
【0107】
かかる改質器102では、原燃料供給管103を通じて供給される天然ガスや灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成する。なお、改質器102は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる構造とすることが好ましい。改質器102は、水を気化させるための気化部102aと、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部102bとを備えることで水蒸気改質を行うことができる。
【0108】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20を通じて固定部材12に供給され、固定部材12よりセル1の内部に設けられたガス流路2a(図1A参照)に供給される。
【0109】
また、上述の構成のモジュール100においては、通常発電時においては、上記燃焼やセル1の発電に伴い、モジュール100内の温度は500〜1000℃程度となる。
【0110】
このようなモジュール100においては、上述したように、電池性能の低下を低減するセルスタック装置10を収納して構成されることにより、電池性能の低下を低減するモジュール100とすることができる。
【0111】
<モジュール収容装置>
図12は、実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケースと、図11で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補器は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補器は、外装ケース内に収容されている。なお、図12においては一部構成を省略して示している。
【0112】
図12に示すモジュール収容装置110の外装ケースは、支柱111と外装板112とを有する。仕切板113は、外装ケース内を上下に区画している。外装ケース内の仕切板113より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室114であり、外装ケース内の仕切板113より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室115である。なお、図12では、補機収容室115に収容する補機を省略して示している。
【0113】
また、仕切板113は、補機収容室115の空気をモジュール収容室114側に流すための空気流通口116を有している。モジュール収容室114を構成する外装板112は、モジュール収容室114内の空気を排気するための排気口117を有している。
【0114】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、電池性能の低下を低減するモジュール100をモジュール収容室114に備えていることにより、電池性能の低下を低減するモジュール収容装置110とすることができる。
【0115】
<その他の変形例>
つづいて、実施形態のその他の変形例に係るセルスタック装置について、図13A図13Dを参照しながら説明する。
【0116】
上述の実施形態では、支持基板の表面に燃料極、固体電解質層および空気極を含む素子部が1つのみ設けられたいわゆる「縦縞型」を例示したが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う素子部の間が電気的に接続されたいわゆる「横縞型」のセルを積層した横縞型セルスタック装置に適用することができる。
【0117】
また、本実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。また、後述するように、いわゆる「平板型」のセルを厚み方向に積層した平板型セルスタック装置に適用することもできる。
【0118】
また、上記実施形態では、支持基板上に燃料極が設けられ、空気極がセルの表面に配置された例を示したが、これとは逆の配置、すなわち支持基板上に空気極が設けられ、燃料極がセルの表面に配置されたセルスタック装置に適用することもできる。
【0119】
また、上記実施形態では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。
【0120】
図13Aは、実施形態の変形例13に係る平板型セルを示す斜視図である。図13Bは、図13Aに示す平板型セルの部分断面図である。図13Cは、図13Bに示す領域Aの拡大図である。
【0121】
図13Aに示すように、セルスタック装置は、燃料極3、固体電解質層4および空気極5が積層されたセル1Aを有している。また、図13Bに示すように、セル1Aは、固体電解質層4が、燃料極3および空気極5に挟まれた素子部90を有している。複数の平板型セルを積層させたセルスタック装置は、たとえば複数のセル1Aが有する各素子部90が、互いに隣り合う金属層である導電部材91,92により電気的に接続されている。導電部材91,92は、隣接するセル1Aの素子部90同士を電気的に接続するとともに、燃料極3または空気極5にガスを供給するガス流路を有している。
【0122】
図13Bに示すように、平板型セルスタックは燃料ガスの流路98と酸素含有ガスの流路97とを気密に封止する封止材を有している。封止材はセルの固定部材96であり、接合材93およびフレームである支持部材94,95を有する。接合材93は、ガラスであってもよいし、銀ロウなどの金属材料であってもよい。
【0123】
支持部材94は、燃料ガスの流路98と酸素ガスの流路97とを区画するいわゆるセパレータであってもよい。支持部材94,95の材料は、例えば導電性の金属であってもよいし、絶縁性のセラミックスであってもよい。接合材93が、絶縁性の例えばガラスであった場合、支持部材94,95は両方が金属であってもよいし、いずれか一方が絶縁性の材料であってもよい。接合材93が、導電性の金属であった場合、支持部材94,95は両方またはいずれか一方が絶縁性の材料であってもよい。支持部材94,95が金属であった場合、支持部材94,95は導電部材92と一体化していてもよい。
【0124】
接合材93、支持部材94,95のうちいずれか1つは絶縁性であり、平板型セルを挟む2つの導電部材91,92を互いに電気的に絶縁している。
【0125】
本変形例に係る平板型セルは、図13Cに示すように、支持部材94と接合材93とを備える。支持部材94は、基材941と、被覆層942とを有する。基材941は、第1面941aおよび第2面941bを有し、クロムを含有する。被覆層942は、基材941の第1面941aを覆う。接合材93は、素子部90の固体電解質層4と被覆層942の第1面942aとの間に位置する。
【0126】
そして、基材941の第2面941bは、第1面941aよりも小さい表面粗さを有し、酸化雰囲気(流路97)に露出する。
【0127】
被覆層942に面する第1面941aの表面粗さが第2面941bの表面粗さよりも大きいことにより、被覆層942が基材941から剥離し、あるいは被覆層942が破断して燃料ガスのリークが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、支持部材94の耐久性を高めることができる。
【0128】
さらに、第2面941bの表面粗さが、第1面941aの表面粗さよりも小さいことにより、高温動作時に基材941に含まれるクロム(Cr)が酸化雰囲気(流路97)に脱離することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、支持部材94の耐久性を高めることができることから、セルスタック装置の耐久性を高めることができる。
【0129】
図13Dは、平板型セルの変形例に係る領域Aの拡大図である。図13Dに示すように、被覆層942が基材941の第2面941bをさらに覆っている点で図13Cに示す平板型セルと相違する。そして、被覆層942の第2面942bは、接合材93に面する第1面941aよりも小さい表面粗さを有し、酸化雰囲気(流路97)に露出する。
【0130】
接合材93に面する第1面942aの表面粗さが第2面942bの表面粗さよりも大きいことにより、接合材93と被覆層942との密着性が向上する。このため、接合材93と被覆層942とが剥離し、あるいは被覆層942が破断して燃料ガスのリークが生じることを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、支持部材94の耐久性を高めることができる。
【0131】
さらに、第2面942bの表面粗さが、第1面942aの表面粗さよりも小さいことにより、高温動作時に基材941に含まれるクロム(Cr)が被覆層942を介して酸化雰囲気(流路97)に脱離することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、支持部材94の耐久性を高めることができることから、セルスタック装置の耐久性を高めることができる。
【0132】
なお、図13C図13Dに示した例では、被覆層942は還元雰囲気(流路98)に面する基材941の面941eを覆うように位置させているが、これに限らず、面941eを還元雰囲気(流路98)に露出させてもよい。
【0133】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0134】
以上のように、実施形態に係る複合部材(支持体15)は、基材151と、被覆層152とを備える。基材151は、酸化雰囲気に露出しない第1面151aを有し、クロムを含有する。被覆層152は、第1面151aを覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面(第1面152a)を有する。基材151および被覆層152のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有する。露出面の表面粗さは、第1面151aまたは第1外面(第1面152a)の表面粗さと異なる。これにより、複合部材(支持体15)の耐久性を高めることができる。
【0135】
また、実施形態に係るセルスタック装置10は、複数のセル1と、上記に記載の複合部材(支持体15)と、接合材13とを備える。複数のセル1は、素子部を有し、第1セルを含む。接合材13は、素子部と被覆層152の第1外面(第1面152a)との間に位置する。基材151は、第1セルと対向する第1面151a、および露出面を含み第1セルと対向しない第2面151bを有する。第2面151bは、第1面151aよりも表面粗さが小さい。これにより、セルスタック装置10の電池性能の低下を低減することができる。
【0136】
また、実施形態に係るモジュール100は、上記に記載のセルスタック装置10と、セルスタック装置10を収納する収納容器101とを備える。これにより、電池性能の低下を低減するモジュール100とすることができる。
【0137】
また、実施形態に係るモジュール収容装置110は、上記に記載のモジュール100と、モジュール100の運転を行うための補機と、モジュール100および補機を収容する外装ケースとを備える。これにより、電池性能の低下を低減するモジュール収容装置110とすることができる。
【0138】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 セル
10 セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 接合材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 導電部材
23 外部空間
100 モジュール
110 モジュール収容装置
【要約】
複合部材は、基材と、被覆層とを備える。基材は、酸化雰囲気に露出しない第1面を有し、クロムを含有する。被覆層は、第1面を覆い、酸化雰囲気に露出しない第1外面を有する。基材および被覆層のうち少なくとも1つは、酸化雰囲気に露出する露出面を有する。露出面の表面粗さは、第1面または第1外面の表面粗さと異なる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D