(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電力としての出力周波数に合わせて単パルス出力するメインインバータと、前記メインインバータに直列接続された前記フルブリッジインバータとで階調制御インバータを構成したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1〜
図4は実施の形態1にかかる電力変換装置の構成および動作について説明するためのものであり、
図1は電力変換装置の構成を説明するための電源と負荷を含めた回路構成図、
図2は電力変換装置の制御装置の構成を説明するための機能ブロック図、
図3は電力変換装置の制御装置における2つの動作モードの動作比率の設定動作を説明するためのフローチャート、
図4は電力変換装置の出力波形と、サブインバータを構成する4つのスイッチング素子(半導体素子)それぞれのゲート波形を示す波形図である。
【0012】
そして、
図5〜
図11は、本願の電力変換装置が採用する階調制御インバータとしての一般的な構成と動作について説明するためのもので、
図5はメインインバータの出力波形とサブインバータの出力波形と電力変換装置、つまり階調制御インバータとしての出力波形の相ごとの関係を示す模式図、
図6A〜
図6Dそれぞれは、サブインバータで電圧出力を変化させるための、4つのスイッチング素子のスイッチングパターンにより形成された電流正極性時の電流経路を示す模式図、
図7はサブインバータで正電圧をPMW出力する際の2つのモードのうち、第一モードでのスイッチングパターンの変化を示す波形図、
図8は第二モードでのスイッチングパターンの変化を示す波形図である。なお、
図6〜
図8においては、複数の相のうちの任意の相のサブインバータを代表して記載している。
【0013】
図9は階調制御インバータのサブインバータを構成する2つのアームそれぞれを形成するモジュールが強制空冷方式による冷却器に実装された例を示す斜視図、
図10は階調制御インバータのサブインバータを構成する2つのアームそれぞれを形成するモジュールが自然空冷方式による冷却器に実装された例を示す側面図(
図10A)と
図10AのA−A線による断面図(
図10B)である。また、
図11A〜
図11Dそれぞれは、階調制御インバータにおける、サブインバータで電圧出力を変化させるためのスイッチングパターンにより形成された電流負極性時の電流経路を示す模式図であり、それぞれ
図6A〜
図6Dに対応する。
【0014】
電力変換装置1は
図1に示すように、直流源91とACモータのような交流の負荷92の間に接続され、直流電力(電圧)を所望の交流電力(電圧)に変換して負荷92を駆動させるものである。そして、階調制御インバータとして、メインインバータ2とサブインバータ3を直列接続したものである。直流源91としては、DC配線による供給の他、個別の直流電源システム、太陽電池などの蓄電システムでもよい。負荷92としては、例えば三相モータを想定しているが、これに限ることはない。
【0015】
メインインバータ2は三相インバータであり、本実施の形態においては3レベルインバータを記載していが、もちろん他の出力レベル数を持つインバータでもよい。メインインバータ2は、U相メインインバータアーム21U、V相メインインバータアーム21V、W相メインインバータアーム21Wの3出力相で構成されている。そして、出力相ごとにスイッチング能力を有するIGBT、MOSFET等の4つのスイッチング素子(半導体素子)と、整流能力を有するダイオードのような2つの整流素子で構成される。整流素子としては、ダイオードの代わりにIGBT、MOSFET等を利用することもできる。
【0016】
メインインバータ2のU相メインインバータアーム21U、V相メインインバータアーム21V、W相メインインバータアーム21Wそれぞれの出力端子にはサブインバータ3がそれぞれ直列に接続される。サブインバータ3を構成する相ごとの単位サブインバータ31を、U相サブインバータ31U、V相サブインバータ31V、W相サブインバータ31Wと称する。なお、アームについては相を区別する符号(U,V,W)を省略している。各単位サブインバータ31は2つのアーム(アーム311とアーム312)で構成されるフルブリッジインバータであり、ブリッジ(アーム)ごとにスイッチング能力を有するIGBT、MOSFET等の2つのスイッチング素子で構成される。
【0017】
メインインバータ2は3レベルインバータのため、DC母線電圧Vmを分割するための2直列のコンデンサが中性点接続されている。高電位側のコンデンサをP母線コンデンサ4、その電圧値をVmpと記し、低電位側のコンデンサをN母線コンデンサ5、その電圧値をVmnと記す。なお、サブインバータ3のDC母線電圧Vsはメインインバータ2のDC母線電圧Vmである直流源91の電圧よりも小さい。
【0018】
そして、制御装置6は、メインインバータ2との間で、メインインバータ2の動作状態を示す検知信号Ss2の受信と、メインインバータ2の動作制御のための駆動信号Sd2の送信を行う。同様に、サブインバータ3との間で、サブインバータ3の動作状態を示す検知信号Ss3の受信と、サブインバータ3の動作制御のための駆動信号Sd3の送信を行う。
【0019】
上述した構成は、階調制御インバータとしての一般的な構成と同様のものである。そして、本願の電力変換装置の構成は、サブインバータ3におけるアーム311、312ごとの状況に応じた動作比率を変化させる構成にあるが、特徴的な構成の前に、その前提となる階調制御インバータについての説明を行う。
【0020】
電力変換装置1としての出力電圧Veoは、
図5に示すように、メインインバータ2の出力電圧Vmoとサブインバータ3の出力電圧Vsoとの合算値として現れる。なお、図中、相ごとの電圧として区別するため、符号の末尾にU、V、Wを付記している。
【0021】
メインインバータ2のスイッチング周波数は、負荷92に対する交流電源としての電源周波数と同程度であり、本実施の形態では母線電圧の大きいメインインバータ2は1周期における正負の転換時に1回ずつスイッチングを行う。図中左上の波形がメインインバータ2の出力電圧Vmoの出力波形である。一方、母線電圧の小さいサブインバータ3はメインインバータ2よりも高周波でスイッチングを行う。サブインバータ3は電力変換装置1としての目標電圧とメインインバータ2の出力電圧の差分を出力する。図中左下の波形がサブインバータ3の出力電圧Vsoの出力波形である。
【0022】
そして、上述したようにメインインバータ2の出力(出力電圧Vmo)とサブインバータ3の出力(出力電圧Vso)が直列で加算されて電力変換装置1の出力(出力電圧Veo)として出力される。これにより、図中右側の波形の通り、正弦波に近いマルチレベルな波形を電力変換装置1の出力電圧Veoとして出力することができる。本実施の形態では、階調制御インバータとしては、7レベルの波形で出力している。
【0023】
階調制御インバータは、このように構成されているため、高周波のスイッチングは、DC母線電圧Vmよりも低いDC母線電圧Vsがかかるサブインバータ3側でのみ実行されることになる。そのため、一般的なインバータ(単段)と比べて、スイッチング損失とノイズが低くなる。よって、冷却器、ノイズフィルタ等の小型化が図れることから、階調制御インバータを用いた電力変換装置1は、単段のインバータよりも小型・軽量化が可能となる。
【0024】
ここで、フルブリッジインバータであるサブインバータ3での電圧出力を変化させるための4つの半導体素子Q5〜Q8による4つのスイッチングパターンについて、
図6を用いて説明する。パターンAは、
図6Aに示すように、半導体素子Q6、半導体素子Q8をオン状態(他はオフ、以下同様)とすることで、サブインバータ3の出力が0になる。パターンBは、
図6Bに示すように、半導体素子Q6、半導体素子Q7をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力がプラスVs(正電圧)になる。パターンCは、
図6Cに示すように、半導体素子Q5、半導体素子Q7をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力が0になる。パターンDは、
図6Dに示すように、半導体素子Q5、半導体素子Q8をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力がマイナスVs(負電圧)になる。なお、上記値は半導体素子、配線等による電圧降下を無視した値である。
【0025】
上述したパターンを
図7に示すように、順次切り替えることで、
図5左下で示したような出力電圧の変化を実現できる。サブインバータ3はユニポーラ変調を実施しており、正電圧(+Vs)をPWM出力する場合は、パターンAとパターンBを切り替えて利用する。また負電圧(−Vs)をPWM出力する場合は、パターンCとパターンDを切り替えて利用する。これをPWMモード1(第一モード)と称する。
【0026】
さらに、上述したパターンを
図8に示すように、順次切り替えることでも、
図5左下で示したような出力電圧の変化を実現できる。正電圧(+Vs)をPWM出力する場合は、パターンCとパターンBを切り替えて利用する。また負電圧(−Vs)をPWM出力する場合は、パターンAとパターンDを切り替えて利用する。これをPWMモード2(第二モード)と称する。
【0027】
いずれのモードでも、PWM出力が可能であるが、モードによって高周波スイッチング動作の対象となる半導体素子が異なる。PWMモード1で正電圧を出力する場合は、半導体素子Q5と半導体素子Q6をそれぞれオフとオンに固定し、半導体素子Q7と半導体素子Q8を高周波で交互にスイッチングし、パターンAとパターンBを交互に切り替えることになる。そして、負電圧を出力する場合は、半導体素子Q5と半導体素子Q6をそれぞれオンとオフに固定し、半導体素子Q7と半導体素子Q8を高周波で交互にスイッチングし、パターンCとパターンDを交互に切り替えることになる。
【0028】
一方、PWMモード2で正電圧を出力する場合は、半導体素子Q7と半導体素子Q8をそれぞれオンとオフに固定し、半導体素子Q5と半導体素子Q6を高周波で交互にスイッチングし、パターンCとパターンBを交互に切り替えることになる。そして、負電圧を出力する場合は、半導体素子Q7と半導体素子Q8をそれぞれオフとオンに固定し、半導体素子Q7と半導体素子Q8を高周波で交互にスイッチングし、パターンAとパターンDを交互に切り替えることになる。
【0029】
PWMモード1での高周波スイッチングの対象は半導体素子Q7と半導体素子Q8であり、半導体素子Q5と半導体素子Q6はサブインバータ3の出力電圧極性の正負が切り替わるタイミングでのみスイッチングする。そのため、スイッチング損失差から半導体素子Q7と半導体素子Q8の方が、半導体素子Q5と半導体素子Q6よりも、発熱量が大きくなる。
【0030】
逆に、PWMモード2での高周波スイッチングの対象は半導体素子Q5と半導体素子Q6であり、半導体素子Q7と半導体素子Q8はサブインバータ3の出力電圧極性の正負が切り替わるタイミングでのみスイッチングする。そのため、スイッチング損失差から半導体素子Q5と半導体素子Q6の方が、半導体素子Q7と半導体素子Q8よりも、発熱量が大きくなる。
【0031】
ここで、半導体素子Q5と半導体素子Q6が実装されたモジュールと、半導体素子Q7と半導体素子Q8が実装されたモジュールでの放熱特性に差がなければ、PWMモード1とPWMモード2の動作比率を1対1に設定すれば両モジュールの温度は均一となる。しかし、実際には、冷却器に取り付ける位置によって放熱特性は異なることになる。
【0032】
例えば、
図9に示すように、強制空冷の冷却器8にモジュールM31aおよびモジュールM31b(両者を区別しない場合、モジュールM31と称する。)が配置された場合について検討する。ここで、モジュールM31aおよびモジュールM31bは、それぞれ半導体素子Q5と半導体素子Q6、および半導体素子Q7と半導体素子Q8が、2直列に接続されて実装され、それぞれアーム311、312を構成する2in1タイプのパワーモジュールである。冷媒C8(空気)の顕熱により冷却する場合、冷却器8では、流路8pにおいて、入口8pi側から排気口に向かって冷媒C8の温度が上昇していくため、入口8pi側の方が排気側に比べ冷媒C8との温度差(伝熱の駆動力)が大きく、放熱特性は良好である。つまり、
図9の配置では、モジュールM31bの方が、モジュールM31aより放熱特性がよくなる傾向になる。なお、図では、強制空冷方式としているが、顕熱で冷却している限り、水冷方式でも同様である。
【0033】
また、
図10(
図10A、
図10B)に示すように、自然空冷の冷却器8にモジュールM31aおよびモジュールM31bを鉛直方向Dvに沿って直列に配置するような場合が考えられる。熱せられた空気は比重が軽くなり、上方に向けて流れる。そのため、フィン8fの間に上下方向に流路8pが形成される場合、空気はフィン8fからの熱を受けることで、天面8stに向かって流路8p内を上昇するように流れるため、底面8sbに近い方が冷媒温度は低くなり、天面8st側に比べ放熱特性は良好となる。つまり、モジュールM31aよりもモジュールM31bの方が冷却効率は高くなる。
【0034】
このように、モジュールM31の配置位置によって放熱特性、つまり冷却効率が異なる。そのため、モジュールM31aとモジュールM31bの特性が概ね同じである場合でも、PWMモード1とPWMモード2の動作比率を1対1に固定した場合、特性の悪い側に配置されているモジュールM31aの方が半導体の温度が高くなる。なお、特性が「概ね同じ」と記したのは、半導体ごとに、あるいはロットごとに特性誤差が生じるため、全く同じとなる可能性が低いためである。
【0035】
そこで、本実施の形態にかかる電力変換装置1は、
図2に示すように、制御装置6に、モジュールM31の放熱、発熱等の熱に関する状況に応じて、PWMモード1とPWMモード2の動作比率を設定する動作比率設定部62を設けるようにした。熱に関するデータに関しては、設置状況等のモジュールM31の状況を示すデータ(状況データ)を受信するデータ受信部63と、状況データと放熱特性との相関データを保持する相関データデータベース64を設ける。そして、データ受信部63が受信したデータと保持された相関データに基づいて、放熱特性の違いに起因する温度の偏りを分析する偏り分析部65を設ける。これにより、動作比率設定部62は、偏り分析部65が分析した偏りの情報に基づいて動作比率を設定し、駆動信号Sd3を生成する主制御部61に設定した動作比率の情報を出力するように構成する。
【0036】
ここで、
図9、
図10で説明した状況と切り離し、2つのモジュールM31をモジュールA、モジュールBと呼称して、モジュールBの方がモジュールAよりも放熱特性が悪くなる状況に対する動作について、
図3のフローチャートを参考にして説明する。なお、単位サブインバータ31の2つのアーム311、312のうちの一方(アーム311)を構成する半導体素子Q5と半導体素子Q6がモジュールAに実装され、他方(アーム312)を構成する半導体素子Q7と半導体素子Q8がモジュールBに実装されているとする。
【0037】
この場合、上述したPWMモード1では半導体素子Q7と半導体素子Q8が高周波なPWMスイッチングを行うため、モジュールAの損失(発熱)よりもモジュールBの損失の方が大きくなる。一方、PWMモード2では半導体素子Q5と半導体素子Q6が高周波なPWMスイッチングを行うため、モジュールBの損失(発熱)よりもモジュールAの損失の方が大きくなる。
【0038】
このような状況で電力変換装置1を動作させた場合、データ受信部63は、例えば、モジュールBがモジュールAに対し、強制冷却における冷媒の流通路における下流側に位置するとの状況データを受信する(ステップS110)。このとき、相関データデータベース64には、上流側と下流側では放熱特性に2倍の差があるとの相関データが保存されているとする。
【0039】
すると、偏り分析部65は、相関データデータベース64に保存された相関データを用い、モジュールAの放熱特性は、モジュールBの放熱特性の2倍になり、それに起因してモジュールBの方が温度上昇するとの偏りを分析する(ステップS120)。そして、動作比率設定部62は、偏りに応じ、PWMモード1とPWMモード2の動作比率を2対1に設定し(ステップS130)、設定した動作比率(2対1)の情報を主制御部61に出力する。なお、モジュールAの放熱特性がモジュールBの放熱特性の2倍であるとの状況データをデータ受信部63が直接受信してもよく、その場合、必ずしも相関データデータベース64の相関データを用いる必要はない。
【0040】
このように、モジュールの状況に応じて動作比率を設定することで、サブインバータ3では、
図10に示すような波形で動作する。つまり、PWMモード2よりもPWMモード1の比率を増加させることで、1対1で固定した場合と比べて、モジュールBの損失値を減らし、放熱特性のよいモジュールA側の損失を増加させることができる。
【0041】
上述したように、サブインバータ3を構成するモジュールM31ごとの放熱特性の比率に合わせてPWMモード1とPWMモード2の動作比率を変更できるように構成した。これにより、半導体素子の温度上昇の偏りを抑制でき、モジュール、冷却器8を小型化できる。
【0042】
なお、上記動作比率は、動作中に適宜変更してもよい。例えば、冷媒の流れ方向における位置関係が固定されている場合でも、航空機のように、飛行高度によって気圧、温度等の冷媒C8の質が変化することがある。その場合、冷媒C8の質に応じて放熱特性の偏りが変化するのであれば、偏り分析部65は、例えば相関データを用い、飛行高度に応じて偏りを修正し、動作比率設定部62に通知するようにしてもよい。
【0043】
また、上記例では、電流正極性時の動作について説明したが、これに限ることはない。電流負極性時においても、フルブリッジインバータであるサブインバータ3での電圧出力を変化させるための4つの半導体素子Q5〜Q8による4つのスイッチングパターンについて、
図11を用いて説明する。
【0044】
パターンEは、
図11Aに示すように、半導体素子Q6、半導体素子Q8をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力が0になる。パターンFは、
図11Bに示すように、半導体素子Q6、半導体素子Q7をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力がプラスVs(正電圧)になる。パターンGは、
図11Cに示すように、半導体素子Q5、半導体素子Q7をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力が0になる。パターンHは、
図11Dに示すように、半導体素子Q5、半導体素子Q8をオン状態とすることで、サブインバータ3の出力がマイナスVs(負電圧)になる。
【0045】
これらのパターンEは
図6で説明したパターンAと、パターンFはパターンBと、パターンGはパターンCと、パターンHはパターンDと、それぞれ同様である。そのため、電流負極性時においても電流正極性時と同様に、PWMモード1とPWMモード2の動作比率によって損失の比率を制御することが可能となる。
【0046】
なお、制御装置6は、ハードウエアの一例を
図12に示すように、プロセッサ601と記憶装置602を備えたひとつのハードウエア600によって構成することも考えられる。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ601は、記憶装置602から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ601にプログラムが入力される。また、プロセッサ601は、演算結果等のデータを記憶装置602の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0047】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、モジュールの放熱特性から温度の偏りを分析し、動作比率を設定する例について説明した。本実施の形態2では、モジュールの温度の測定値に基づいて動作比率を設定する例について説明する。
【0048】
図13と
図14は、本実施の形態2にかかる電力変換装置について説明するためのもので、
図13は電力変換装置のサブインバータを構成する2つのアームそれぞれを形成するモジュールが冷却器に実装された例を示す斜視図、
図14は電力変換装置の制御装置において温度情報を用いた制御系統を示すブロック図である。なお、熱に関する情報として温度の測定値を用いた偏りの分析と動作比率の設定以外の構成と動作については、実施の形態1と同様であり、実施の形態1で用いた
図1〜
図11を援用し、同様部分の説明については省略する。
【0049】
本実施の形態2においても、単位サブインバータ31の2つのアーム311、312のうちのアーム311を構成する半導体素子Q5と半導体素子Q6がモジュールAに実装され、アーム312を構成する半導体素子Q7と半導体素子Q8がモジュールBに実装されているとする。そして、本実施の形態2においては、
図13に示すように、モジュールAの温度を測定する温度センサ7aと、モジュールBの温度を測定する温度センサ7bを設けているとする。
【0050】
そして、実施の形態1で説明した設置状況のデータに代わり、温度センサ7aの検出値T1、温度センサ7bからの検出値T2が、
図14に示すように、それぞれ制御装置(データ受信部63)に入力されるものとする(ステップS110に対応)。動作比率設定部62は、検出値T1と検出値T2の差(温度差ΔT)が目標温度差RefΔTに近づくように、PWMモード1とPWMモード2の動作比率を変更する。つまり、温度の偏りである温度差ΔTと目標温度差RefΔTとの差(ずれ量)を分析(ステップS120に対応)して、動作比率を設定する(ステップS130に対応)。
【0051】
より、具体的には、一般的な制御器のように、ΔTを目標温度差RefΔTから差し引いたずれ量に対して、設定動作比率に対応する制御量X(%)を演算する。例えば、
図2で説明した動作比率設定部62とデータ受信部63と偏り分析部65に対応する部分について、比例制御を実行する一般的なPI制御器(Proportional Integral Controller)に置き換えて構成してもよい。そして、PWMモード1の初期比率をX0(%)とすると、PWMモード1の動作比率はX0(%)にX(%)を加算したX1(%)となる。その場合、100%からX1(%)を引いた値がPWMモード2の動作比率となる。
【0052】
この制御により、モジュールAの温度(検出値T1)がモジュールBの温度(検出値T2)より高い場合(ΔT<0)、ずれ量はプラスの値となり、制御量Xも大きくなるため、PWMモード1の比率X1が高く、PWMモード2の比率が低くなる。そのため、モジュールBの損失が増加(発熱増大)、モジュールAの損失が低下(発熱減少)し、温度差ΔTは目標温度差RefΔTに近づく方向で発熱比率が変化する。
【0053】
一方、モジュールBの温度(検出値T2)がモジュールAの温度(検出値T1)より高い場合(ΔT>0)、ずれ量はマイナスの値となり、制御量Xは小さくなるため、PWMモード1の比率X1が低く、PWMモード2の比率が高くなる。そのため、モジュールAの損失が増加(発熱増大)、モジュールBの損失が低下(発熱減少)し、温度差ΔTは目標温度差RefΔTに近づく方向で発熱比率が変化する。
【0054】
なお、初期比率X0は50%とすればよい。しかし、50%(固定値)に限ることなく、例えば、実施の形態1で説明した設置状況に応じて設定される動作比率を初期比率X0として用いるようにすれば、動作初期段階から温度差を抑制することが可能となる。また、例示したPI制御に限ることなく、PID制御器(Proportional-Integral-Differential Controller、PID Controller)を用いてもよい。
【0055】
モジュールM31の温度のデータを用いることで、モジュールM31の設置状況等に起因する偏りだけでなく、モジュール特性ばらつきによる損失の不一致が発生する場合にも、温度上昇の偏りを抑制でき、モジュール、冷却器8を小型化できる。
【0056】
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は、特定の実施の形態で開示した構成の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態で開示した構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0057】
例えば、動作比率設定部62は、受信したデータに基づいて動作比率を設定する場合を例示したが、これに限ることはなく、設計時に温度上昇の偏りに基づいてあらかじめ動作比率を設定するようにしてもよい。その際、動作比率設定部62は、あらかじめ定められ、例えば入力された動作比率を保持することで、動作比率設定部としての機能を有するようにしてもよい。その際、主制御部61自体が動作比率設定部62として機能してもよく、主制御部61と動作比率設定部62とを別物と取り扱う必要もない。
【0058】
さらに、3相DC/ACインバータについて例示したが、これに限ることなく、単相でもよく、相線式に応じて適宜適用可能である。また、最適な適用例として、階調制御インバータで説明したが、これに限ることはなく、少なくともPWM制御を行うフルブリッジのインバータを構成する2つのアームが、それぞれ異なるモジュールM31に実装されていれば、適用可能である。また、主制御部61と動作比率設定部62等を一つの制御装置6内に形成する例を示したが、これに限ることなく、本願の特徴部分である動作比率設定部62、偏り分析部65等を例えば動作比率設定装置として、主制御部61と別体で設けるようにしてもよい。
【0059】
以上のように、各実施の形態にかかる電力変換装置1によれば、それぞれ異なるモジュールM31に実装された2つのアーム311、アーム312で構成したフルブリッジインバータ(サブインバータ3、あるいは単位サブインバータ31)、2つのアームのうちの第一アーム(例えば、アーム311)に出力の極性を決めるための第一周波数(低周波)でスイッチング動作をさせ、第二アーム(例えばアーム312)に第一周波数よりも高周波の第二周波数(高周波)でPWM変調のためのスイッチング動作をさせる第一モードと、第二アーム(同アーム312)に第一周波数(低周波)でスイッチング動作をさせ、第一アーム(同アーム311)に第二周波数(高周波)でスイッチング動作をさせる第二モードとの間で、設定された動作比率に基づき動作モードを切り替えながらフルブリッジインバータ(サブインバータ3)を駆動制御する主制御部61、およびモジュールM31間での温度上昇の偏りに基づいて動作比率を設定する動作比率設定部62、を備えるようにした。これにより、モジュールM31ごとの放熱特性、モジュール特性(発熱性)にばらつきがあっても、高周波スイッチングで駆動する期間を調整することでモジュール間の温度の偏りを抑制できるので、小型で高効率な電力変換装置を得ることができる。
【0060】
交流電力としての出力周波数に合わせて単パルス出力するメインインバータ2と、メインインバータ2に直列接続された上述したフルブリッジインバータ(サブインバータ3)とで階調制御インバータを構成したので、より一層小型化、高効率化が可能となる。
【0061】
さらに、モジュールM31ごとの熱に関するデータを受信するデータ受信部63、およびデータに基づいて、モジュールM31間での温度上昇の偏りを分析する偏り分析部65、を備え、動作比率設定部62は、第一アームが実装された第一モジュール(例えば、モジュールM31a)の方が、第二アームが実装された第二モジュール(例えば、モジュールM31b)よりも温度が高くなるとの分析結果を受けると、動作比率における第一モードの割合を減少させ、逆の分析結果を受けると、第一モードの割合を増加させるようにした。これにより、モジュールM31ごとの放熱特性、モジュール特性(発熱性)にばらつきがあっても、熱に関するデータに基づいて高周波スイッチングで駆動する期間を適切に調整することでモジュール間の温度の偏りを抑制できる。
【0062】
偏り分析部65は、モジュールM31ごとの放熱特性に関するデータから温度上昇の偏りを分析するようにすれば、モジュールM31間での冷媒流路上での位置関係、自然冷却における上下の位置関係、あるいは放熱フィンとの接続状況等に違いがあっても、モジュールM31間の温度の偏りを確実に抑制できる。
【0063】
その際、モジュールM31ごとの冷却器8における配置位置と放熱特性との相関データを保持する相関データデータベース64を備え、偏り分析部65は、モジュールM31ごとの冷却器8における配置位置に関するデータと相関データから温度上昇の偏りを分析するように構成すれば、複雑な演算を行うことなく、容易にモジュールM31間の温度の偏りを抑制できる。
【0064】
さらには、モジュールM31ごとの温度を測定する温度センサ7a、7bを備え、偏り分析部65(あるいは動作比率設定部62として)は、温度センサの検出値に基づいて、温度上昇の偏りを分析するようにすれば、温度の測定値で直接偏りを分析するので、モジュールM31ごとの特性の違い、あるいは動作中に状況変化が生じても、モジュールM31間の温度の偏りを確実に抑制できる。
【0065】
第一モジュール(例えば、モジュールM31a)と第二モジュール(例えば、モジュールM31b)が、冷媒C8の流通経路における上流側と下流側に分かれて直列に配置されている場合でも、上述したように温度の偏りを抑制できるので、設計自由度が向上し、小型化、冷却の効率化が図れる。
それぞれ異なるモジュール(M31)に実装された2つのアーム(311)、アーム(312)で構成したフルブリッジのサブインバータ(3)、第一アームに低周波スイッチング動作をさせ、第二アームに高周波スイッチング動作をさせる第一モードと、第二アームに低周波スイッチング動作をさせ、第一アームに高周波スイッチング動作をさせる第二モードとの間で、動作モードを切り替えながらサブインバータ(3)を駆動制御する主制御部(61)、およびモジュール(M31)間での温度上昇の偏りに基づいて動作比率を設定する動作比率設定部(62)、を備えるようにした。