(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既設杭より大きい内径を有し且つオーガを介して吊下支持されるケーシングの下端部に、掘削刃と切断機構を備えるとともに、該ケーシングの上端部には上記切断機構を駆動する駆動機構が備えられた既設杭の切断除去装置であって、
上記切断機構が、
上記ケーシングの内側に配置される揺動体であって、所定幅の板材を略半円状に成形されるとともに、その周方向の両端部が上記ケーシングの弦方向の同軸上位置に設けた枢支軸により枢支されて該枢支軸回りに上記ケーシングの軸心に接離する方向へ上記駆動機構によって揺動駆動される揺動体と、
上記揺動体の上記ケーシングの軸心寄りの端縁に、該端縁から揺動方向前方側へ延出した状態で着脱自在に取り付けられた第1ビットと、
上記揺動体の内面上に該揺動体の幅方向に延出状態で取り付けられた第2ビットと、
を備えて構成されていることを特徴とする既設杭切断除去装置。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設された既設杭の除去方法としては、既設杭を一体的に引き抜いて除去する引き抜き除去方法と、既設杭をその上端側から所定長さだけ切断して除去する切断除去方法が知られている。特に後者は、既設杭を全て除去する必要はなく、地表側の所定深さまでの部分のみを除去し、それ以下の部分はそのまま残存させれば十分という場合に有効な方法であり、施工コスト面の有利さもあって近年多用される傾向にあり、特許文献1及び特許文献2にはその工法が示されている。
【0003】
特許文献1に示されるものは、地中障害物撤去装置であって、地中障害物を囲繞するように軸周りに回転しながら建て込まれる筒状ケーシング100の内側に配置され、筒状ケーシング内周と前記地中障害物外周との間に掘進嵌入するグラブ保持部5と、両端に枢着軸18を有し下縁に切断刃21を有する半円状に構成され、上記グラブ保持部5の下部に上記枢着軸18周りに回動自在に配置された一対のグラブシェル7と、上記グラブシェル7よりも上方位置に設けられ、上記グラブシェル7を回動させる切断刃回動手段13,14と、上記グラブシェル7の前記切断刃21の反対側のレバー連結位置22と上記切断刃回動手段13,14とを連結する動作レバー15とを有し、上記動作レバー15が上昇することで上記グラブシェル7が内周側に回動し、上記切断刃21によって地中障害物を切断するとされている。
【0004】
特許文献2に示される地中杭の切断装置は、ケーシングドライバと、このケーシングドライバにより回転駆動されるケーシング5と、このケーシング5の内壁に開閉可能に取付けられ、水平断面形状が弧状をなし、下辺に掘削爪22を有する複数の掘削体20と、ケーシング5の内壁における掘削体20の上部に縦向きにそれぞれ取付けられ、対応する掘削体21を開閉する液圧シリンダ23とを備えたものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の地中障害物撤去装置では、上記グラブ保持部5と上記グラブシェル7と上記切断刃回動手段13,14と上記動作レバー15を一体として装備し、これを撤去作業に際して上記筒状ケーシング100内に収容して固定することから、作業が煩雑であり、また上記筒状ケーシング100内に地中障害物の頭部側を進入させても、その進入量は上記グラブシェル7とその上方に位置する上記グラブ保持部5との間隔以下に制限され、切除される杭の長さも短いものとなり、例えば、必要とされる切除長さが長い場合は、係る切断作業を何回か繰り返して行う必要があり、これらのことから、作業効率が悪く、杭の切断除去コストが高くつくという問題があった。
【0007】
さらに、前記グラブシェル7の前記切断刃21は、該グラブシェル7の前縁に沿って複数個設けられたチップ状の切断刃であるため、杭内に埋設された鉄筋を切り残す場合も有り得るが、係る場合には、切断作業を一旦停止し、筒状ケーシング100を引き上げ、他の適当な手法によって鉄筋を切断することが必要であり、作業途中での段取り替え等によって作業効率が悪く、杭の切断除去コストが高くつくという問題もあった。
【0008】
一方、特許文献2の地中杭の切断装置では、上記ケーシング5の内壁側に、上記複数の掘削体20と、該掘削体20を開閉する液圧シリンダ23を配置していることから、これらの配置スペース及び作動スペースの確保上、上記ケーシング5の内径に対して該ケーシング5内において切断される杭の外径が小さくなり、その結果、装置全体のコストパフォーマンスが低く、延いては杭の切断除去コストが高くつくという問題があった。
【0009】
そこで本願発明は、上記の如き問題に鑑み、杭の切断除去コストを低く抑えつつ的確な切断除去を可能とする既設杭切断除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明では、既設杭より大きい内径を有し且つオーガを介して吊下支持されるケーシングの下端部に、掘削刃と切断機構を備えるとともに、該ケーシングの上端部には上記切断機構を駆動する駆動機構が備えられた既設杭の切断除去装置において、上記切断機構を、上記ケーシングの内側に配置される揺動体であって、所定幅の板材を略半円状に成形されるとともに、その周方向の両端部が上記ケーシングの弦方向の同軸上位置に設けた枢支軸により枢支されて該枢支軸回りに上記ケーシングの軸心に接離する方向へ上記駆動機構によって揺動駆動される揺動体と、上記揺動体の上記ケーシングの軸心寄りの端縁に、該端縁から揺動方向前方側へ延出した状態で着脱自在に取り付けられた第1ビットと、上記揺動体の内面上に該揺動体の幅方向に延出状態で取り付けられた第2ビットとを備えて構成したことを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る既設杭切断除去装置において、上記揺動体が、上記第1ビットが上記ケーシングの内周寄りに後退して該内周面と上記既設杭の外周面との隙間部分にて待機する非作動時位置と、上記第1ビットが上記ケーシングの中心寄りに延出する作動時位置の間で揺動進退するとともに、該作動時位置においては上記揺動体と上記第1ビットによって上記既設杭の切断された部分をその下側から支持し得るように構成されていることを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明では、上記第1または第2の発明に係る既設杭切断除去装置において、上記第2ビットを、上記揺動体の内面上に着脱自在に取り付けたことを特徴としている。
【0014】
本願の第4の発明では、上記第1、第2または第3の発明に係る既設杭切断除去装置において、上記切断機構を、上記ケーシングの周方向に複数個配置したことを特徴としている。
【0015】
本願の第5の発明では、上記第1、第2
または第3の発明に係る既設杭切断除去装置において
、上記駆動機構を、上記ケーシングの上部に配置された油圧シリンダと、
該油圧シリンダと上記揺動レバーを連結するロッドを備えて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る既設杭切断除去装置によれば、上記揺動体を上記駆動機構によって上記ケーシングの中心方向へ揺動進出させて上記第1ビット及び第2ビットを上記既設杭の外周面に押し付けながら、上記ケーシングを上記オーガによって回転させることで、該既設杭は、これがPC杭である場合には、その外周側からコンクリート部分が次第に切削され、さらに鉄筋部分及び内周寄りのコンクリート部分が順次切削されて切断される。
【0017】
この場合、鉄筋が上記第1ビットによって完全に切削されることなく、該第1ビットの回転に押されて次第に杭中心寄りに変形して逃げることもあり得るが、係る場合には、上記第1ビットが上記揺動体の縁部分から上記既設杭の中心寄りに延出していることから、この第1ビットの延出部分が上記鉄筋に引っ掛かり、且つこの状態のまま上記ケーシングと一体的に回転することで、該鉄筋は次第に捩じ切られることになる。
【0018】
また、上記第1ビットでの切削が進行して該第1ビットが既設杭の中心側へ切れ込むと、既設杭の未切削部分と干渉してそれ以上の切削進行が阻害されることになるが、この場合には、上記揺動体の幅方向に取り付けられた上記第2ビットが上記第1ビットの切れ込み部分よりも上側の部分を順次切削することで、上記第1ビットの切込みスペースが確保され該第1ビットによる切削作業の継続が可能となる。
【0019】
さらに、上記第1ビットが上記揺動体に対して着脱自在に取り付けられているので、例えば、既設杭の径寸法に応じて上記第1ビットの設置数を変更して杭切断作業の効率化を図ることもできる。
【0020】
以上のように、上記第1ビットの切削作用によって上記鉄筋が切断されるか否かにかかわらず、上記既設杭は上記切断機構によって確実に切断され、この切断部よりも上側の部分は、それより下側で土中に埋設状態にある残存部分と切り離されることになり、例えば、従来の装置のように鉄筋部分の切断を、コンクリート部分の切断と別工程で行う必要がある場合に比して、切断作業効率が高く、施工コストの低減が可能となる。
【0021】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係る既設杭切断除去装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記揺動体が、上記第1ビットが上記ケーシングの内周寄りに後退して該内周面と上記既設杭の外周面との隙間部分にて待機する非作動時位置と、上記第1ビットが上記ケーシングの中心寄りに延出する作動時位置の間で揺動進退するとともに、該作動時位置においては上記揺動体と上記第1ビットによって上記既設杭の切断された部分をその下側から支持し得るように構成されていることから、上記揺動体を作動時位置に設定して上記既設杭の切断作業を行って、この切断部から上側部分(以下においては「切除杭」という)を、それより下側の埋設残存部分(以下においては「残存杭」という)と切り離した後は、上記ケーシングを引き上げることで、上記揺動体及び上記第1ビットによってその下側から支持されている切除杭は、該ケーシングと一体に引き上げて除去されることになる。即ち、この発明の切断除去装置においては、既設杭の切断から切除杭の除去に至るまでの一連の作業を、同じ装置を用いて、しかも作業途中での段取り替え等を行うこともなく、連続的に且つ的確に行うことができ、延いては杭切断除去作業における施工コストのさらなる低減が可能となる。
【0022】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係る既設杭切断除去装置によれば、上記(a)または(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第2ビットを、上記揺動体の内面上に着脱自在に取り付けているので、例えば、既設杭が鋼管杭である場合のように、上記第1ビットの杭表面からの必要食込み量が少ない場合には、上記第2ビットを取り外すことで該第2ビットによる不必要な切断作業を回避することができる。
【0023】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係る既設杭切断除去装置によれば、上記(a)、(b)または(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記切断機構を、上記ケーシングの周方向に複数個配置したことから、既設杭の切断時における該既設杭に対する押圧力がその全周において可及的に均等化され、切断作業に伴う上記ケーシングの横揺れ振動が抑えられ、切断作業の静粛化が促進され、特に市街地での作業においては極めて有効である。
【0024】
(e)本願の第5の発明
本願の第5の発明に係る既設杭切断除去装置によれば、上記(a)、(b)または(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記駆動機構が、上記ケーシングの上部に配置された油圧シリンダと、
該油圧シリンダと上記揺動レバーを連結するロッドを備えた機械的な構成であることから、作動上の信頼性が高く、耐久性に優れた装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「既設杭の切断除去装置Zの全体構成」
図1には、本願発明の実施形態に係る既設杭の切断除去装置Zを示している。この切断除去装置Zは、リーダ等の支持基台に吊下支持されるオーガ3の下側にスイベルジョイント2を介してケーシング1を連結して構成される。
【0027】
上記ケーシング1は、切断除去対象の既設杭よりも所定寸法だけ大きい内径寸法(例えば、500mm〜600mm程度)を有する管体で構成されるもので、この実施形態では、順次同軸上に連結される上部ケーシング11と中間ケーシング12及び下部ケーシング13から成る三分割構造としており、上記上部ケーシング11の上端が上記スイベルジョイント2の下側に連結される。
【0028】
そして、このケーシング1は、上記オーガ3により回転させられながら、既設杭4(
図4、
図5参照)を内包した状態でこれに沿って土中に打ち込まれて該既設杭4の周囲の土壌を縁切りするものであって、最下端に位置する上記下部ケーシング13の下端には、
図3に拡大図示するように、該下端周壁に取り付けられた複数の先端掘削刃14と、下端外周よりも径方向外側に突出状態で取り付けられた複数の外側掘削刃15が備えられている。
【0029】
そして、上記各先端掘削刃14によって上記既設杭4の外周に接した土壌が該外周から適宜離間した位置で切断され、縁切りが行われる。さらに、上記縁切り部分の外側部分が上記複数の外側掘削刃15によって所定幅の円環状に掘削され、該下部ケーシング13の下端外周に設けられた後述のガイドケース34の進行隙間が形成される。なお、符号17は、掘削土を排出するためのスパイラル羽根である。
【0030】
なお、ここでは図示していないが、実際には、上記下部ケーシング13の先端側には噴流ノズルが設けられ、該上記ケーシング1の上端側から供給される水を該噴流ノズルから下部ケーシング13の先端近傍に噴射して土壌の崩壊を促進させながら、上記先端掘削刃14及び外側掘削刃15による掘削作業が行われる。
【0031】
さらに、上記ケーシング1には、該ケーシング1を既設杭4の周囲に所定深さまで打ち込んだ後に該既設杭4を切断するとともに、切断後においては切除杭をその下側から支持する杭支持機構としても機能する切断機構30と、該切断機構30を駆動する駆動機構19が備えられている。以下、この切断機構30および駆動機構19についてそれぞれ説明する。
【0032】
「切断機構30」
上記切断機構30は、
図4〜
図7に示すように、上記下部ケーシング13の下端近傍の内周面に取り付けられた揺動体44と、該揺動体44の外周中央に連結された揺動レバー41と、該揺動レバー41と係合可能に上記下部ケーシング13に設けられたカム体33とを備えて構成される。なお、この実施形態では、上記切断機構30を、上記下部ケーシング13の軸心を挟んで対向する二位置にそれぞれ配置している。
【0033】
上記揺動体44は、
図4〜
図7に示すように、所定幅の板材を、上記下部ケーシング13の内面に沿うように略半円状に湾曲成形して構成され、且つその両端部はそれぞれ斜め上方へ延出するように形成されている。そして、この揺動体44は、その両端部を、
図5に示すように、上記下部ケーシング13の軸心を通って直交方向に延びる二本の中心線L
b、L
cのうちの一方の中心線L
bに対して所定間隔だけ平行に離間した枢支軸線L
d上に配置した一対の枢支軸43によって揺動可能に枢支されている。
【0034】
したがって、上記揺動体44は、
図4に示すようにその外面が上記下部ケーシング13の内面と略平行となる位置(以下、この時の揺動体44の位置を「非作動時位置」という)と、
図6に示すように上記下部ケーシング13の軸線L
a寄りに振り出されて該軸線L
aに近接した位置(以下、この時の揺動体44の位置を「作動時位置」という)の間で揺動可能とされる。
【0035】
また、上記揺動体44の上記中心線L
c上の外面には、上記揺動レバー41の一端が連結ピン42によって枢支されている。この揺動レバー41の他端は、上記ガイドケース34側に設けたガイド長穴35に沿って上下方向に移動する枢支ピン32を介して後述する駆動機構19の下部ロッド23に連結されている。また上記下部ケーシング13の上記開口18の下縁部分には、上記揺動体44の一端側の周面で構成されるカム面に摺接係合するカム体33が設けられている。
【0036】
上記揺動レバー41は、その「第1の位置」では、
図4に示すように、上記下部ロッド23によって上方に引き上げられて、その全体が上記ガイドケース34の内部に収納された状態となっている。この時、上記揺動レバー41の一端側のカム面は上記カム体33の上縁部に当接または近接対向しており、上記連結ピン42によって該揺動レバー41の一端側に連結された上記揺動体44は、上記「非作動時位置」に設定されている。
【0037】
また、上記揺動レバー41は、その「第2の位置」では、
図6に示すように、上記下部ロッド23によって下方に押し下げられてその下端側のカム面が上記カム体33の下縁部に摺接することで、その下半部が上記下部ケーシング13の中心寄りに押し出されている。この揺動レバー41の変位を受けて、上記揺動体44は上記枢支軸43を中心として、上記下部ケーシング13の中心寄りに揺動変位し、上記「作動時位置」に位置決めされる。
【0038】
さらに、上記揺動体44には、次述の第1ビット51と第2ビット52が取り付けられている。
【0039】
上記第1ビット51は、
図11及び
図12に示すように、1面が傾斜した略矩形ブロック状の形態を有し且つその傾斜面から底面にかけての部分に超硬合金製の切り刃51cを備えた本体部51aと、該本体部の上記切り刃51cから遠い位置に立設され且つボルト固定孔51dを備えた二枚の板状の固定部51bを備えて構成される。したがって、この第1ビット51においては、上記切り刃51c部分は、上記固定部51bに対して、斜め下方へ延出した状態となっている。そして、この第1ビット51は、特にコンクリート及び金属材の双方に対して高い切削能力をもつものである。
【0040】
上記第1ビット51は、
図4及び
図5に示すように、上記揺動体44の上記中心線L
c上の位置と、該中心線L
c上の位置から周方向両側へそれぞれ適宜寸法だけ離間した二位置の合計三位置において、該揺動体44の揺動方向の前方側(即ち、上記下部ケーシング13の軸線L
a寄り)の端縁部分に設けた受部44a(
図11、
図12参照)に、上記固定部51bを嵌合させ且つ固定ボルトで締結することで取り付けられ、この取り付け状態においては、該揺動体44の内面上から所定の傾斜角で斜め下方に所定量だけ延出している。
【0041】
なお、この実施形態では、上述のように上記第1ビット51を一つの揺動体44に対して、上記下部ケーシング13の軸線L
aに指向するように放射状に三個配置しているが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、切断対象となる既設杭の種類、径寸法等の諸条件に合わせて増減設定することは可能である。
【0042】
一方、上記第2ビット52は、上記揺動体44の幅寸法に略合致する長さを持つ三角柱状の形体を有し、その一の稜線部分を切り刃としている。そして、この第2ビット52は、上記揺動体44の軸方向に向け、且つ上記切り刃に対向する面を上記揺動体44の内面の衝合させた状態で該揺動体44の内面上に溶接固定されている。
【0043】
なお、この実施形態では、上記第2ビット52を上記揺動体44の内面上に溶接固定するようにしているが、他の実施形態においては、上記第2ビット52を上記揺動体44の内面上に着脱自在に固定するように構成することも可能である。
【0044】
このように構成された上記揺動体44は、後述する駆動機構19によって駆動される上記揺動レバー41の変位を受けて上記「非作動状態位置」と「作動時位置」の間で」揺動変位することで、上記第1ビット51及び第2ビット52によって上記既設杭4を切断するものである。
【0045】
「駆動機構19」
上記駆動機構19は、
図1及び
図2に示すように、上記ケーシング1の上部ケーシング11の上端側に取り付けられた油圧シリンダ20と、該油圧シリンダ20と上記切断機構30側の上記揺動レバー41を連結するロッド21を備えて構成される。また、上記ロッド21は、丸棒で構成される上部ロッド22と角棒で構成される下部ロッド23の2分割構造とされ、該下部ロッド23の下端が上記揺動レバー41に連結されている。
【0046】
なお、この実施形態では、上記切断機構30が2組備えられていることに対応して、上記駆動機構19も、上記ケーシング1の軸心を径方向に挟んだ2位置にそれぞれ設けられている。そして、上記油圧シリンダ20の伸縮動を受けて上記切断機構30側の上記揺動レバー41が作動することで、上記揺動体44は「非作動時位置」と「作動時位置」の間で揺動進退される。
【0047】
「切断除去装置Zの作動説明」
ここで上記切断除去装置Zによる既設杭4の切断及び除去に関する作動状態を説明する。
【0048】
A:事前作業
まず、上記切断除去装置Zをリーダ等の支持基台に吊下支持し、作業対象とする既設杭4の直上に位置決め配置する。そして、上記駆動機構19の上記油圧シリンダ20を縮小させて、上記切断機構30の上記揺動体44を「非作動時位置」に設定する。なお、ここでは、上記既設杭4として、中空円筒状のPC杭またはPHC杭を想定している。
【0049】
B:掘削作業
次に、上記オーガ3を駆動して上記ケーシング1を回転させながら、該ケーシング1を降下させ、該ケーシング1の内側に内包状態で位置する既設杭4の周囲を掘削しながら降下させる。そして、上記切断機構30が目的とする上記既設杭4の切断位置に達した時点で上記ケーシング1の降下を停止させる。この時点では、上記左右一対の切断機構30は、
図4に示す「非作動時位置」に位置決めされており、該揺動体44の上記第1ビット51及び第2ビット52は共に上記既設杭4の外周面に対して非接触状態を維持している。
【0050】
C:切断作業
次に、上記ケーシング1を回転させながら、上記駆動機構19の上記油圧シリンダ20を伸長させ、上記揺動レバー41を介して上記揺動体44を「非作動時位置」から「作動時位置」側へ変化させ、上記第1ビット51及び第2ビット52を上記既設杭4の外周面に押圧付勢させる。すると、上記第1ビット51によって上記既設杭4はその外周面から軸心方向に向かって切削され、該既設杭4の外周に沿って周回する切削溝が形成され、上記第1ビット51は切削の進行とともに該切削溝内に没入していく(
図8の切削面P
b参照)。この第1ビット51の切削溝内への没入量が所定量に達すると、上記第2ビット52が上記切削溝の上側部分に押圧され、該第2ビット52によって該切削溝の上側部分が上向き傾斜状に切削され(
図8の切削面P
a参照)、上記第1ビット51の切込みスペースが確保され、該第1ビット51による切削作業の継続が可能となる。
【0051】
上記第1ビット51による既設杭4の切削進行とともに、該第1ビット51が埋設されている縦筋5及び横筋6に達してこれを切断するとともに、さらに該縦筋5及び横筋6より中心寄りにあるコンクリート部分を切削する。そして、上記第1ビット51が既設杭4の内周面に達した時点で、該既設杭4は切削部位よりも上側にある切除杭4Bと、それよりも下側にある残存杭4に切断される。
【0052】
なお、稀なケースであるが、作業状況等の条件によっては、上記縦筋5とか横筋6が上記第1ビット51によって完全に切削されず、該第1ビット51の回転に押されて次第に杭中心寄りに変形して逃げることも起こり得る。しかし、係る場合には、上記第1ビット51が上記揺動体44の縁部分から上記既設杭4の中心寄りに延出していることから、この第1ビット51の延出部分が上記鉄筋5及び横筋6に引っ掛かり、且つこの状態のまま上記ケーシング1と一体的に回転することで、該鉄筋5及び横筋6は強制的に捩じ切られ、該第1ビット51によって切断される場合と同様の状態が得られることから、何ら問題は生じない。即ち、上記縦筋5及び横筋6の切断形態に左右されることなく、上記既設杭4は上記切断機構30によって確実に切断されるものである。
【0053】
D:切除杭4Bの除去作業
上記既設杭4が所定位置で切断され、上記残存杭4Aと切除杭4Bに分断されると、上記ケーシング1の回転を停止させる一方、上記切断機構30の上記揺動体44は「作動時位置」のまま保持する。この状態においては、上記切除杭4Bは、上記揺動体44そのもの、及びこれに取り付けられた上記第1ビット51によって、その下側から支持された状態で保持されている。したがって、このまま上記ケーシング1を引き上げると、上記切除杭4Bは該ケーシング1と一体的に掘削穴から除去されることになる。
【0054】
E:上記既設杭4が中実の場所打ち杭である場合の切断及び除去作業
この場合も、既設杭4の切断作業と切除杭4Bの除去作業は、上記既設杭4が中空のPC杭、PHC杭である場合と基本的には同じであって、該PC杭、PHC杭に対する切断作業が杭軸心近くまで継続されるに過ぎず、また縦筋、横筋に対する切断についても同様である。即ち、
図9に示すように、上記切除杭4Bにおいては切断部分に大きな略円錐台部分(切削面Pa参照)凹状部が形成され、また残存杭4Aにおいてはその切断部分に凹状部(切削面Pb参照)が形成される。したがって、上記切除杭4Bの除去についても何ら問題なく上記切断除去装置Zによって行うことができる。
【0055】
F:上記既設杭4が鋼管杭である場合の切断及び除去作業
上記既設杭4が鋼管杭である場合の切断及び除去作業
この場合も、基本的には、既設杭4の切断作業と切除杭4Bの除去作業は、上記既設杭4が中空のPC杭、PHC杭である場合とか、場所打ち杭である場合と、同じであるが、鋼管杭の場合は切削切込み量が、PC杭、PHC杭とか、場所打ち杭の場合に比べて小さいことから、特有の対応が必要となる。
【0056】
即ち、鋼管杭の場合には、PC杭とかPHC杭の場合に比べて管壁厚さが小さく、上記第1ビット51の切込み量が少ない段階で杭の切断作業が完了するため、例えば、PC杭の場合のように上記第2ビット52によって上記第1ビット51の切込みスペースを確保する必要性は殆どない。このため、予め、上記揺動体44に対して上記第2ビット52を着脱自在に取り付けるように構成しておき、
図10に示すように、鋼管杭の切断に際しては、上記第2ビット52を上記揺動体44から取り外し、上記第1ビット51のみで鋼管杭の切断作業を行えば好適である。このようにすれば、切除杭4B側においては、その切削面Paが鋼管の軸芯に略直交する平面に可及的に近づき、無用な切削部分が無くなるため、切断作業全体としての作業性が向上することになる。
【0057】
G:その他
(1)上記実施形態では、上記切断除去装置Zが左右一対の切断機構30を備えたものを示したが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記切断機構30を一個だけ備えたもの、及び三個以上備えたものにも適用できるものである。
【解決手段】ケーシングの下端部に、掘削刃14と切断機構30を備えるとともに、ケーシングの上端部には駆動機構が備えられた既設杭4の切断除去装置において、切断機構30を、ケーシングの内側に配置される揺動体44であって、略半円状に成形され且つその周方向の両端部がケーシングの弦方向の同軸上位置に設けた枢支軸43により枢支されてケーシングの軸心に接離する方向へ揺動駆動される揺動体44と、揺動体44の端縁に着脱自在に取り付けられた第1ビット51と、揺動体30の内面上に取り付けられた第2ビット52を備えて構成する。係る構成によれば、既設杭4は切断機構30によって確実に切断され、作業効率が高く、施工コストの低い既設杭の切断除去が実現される。