特許第6972463号(P6972463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972463
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ブラインド
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/384 20060101AFI20211111BHJP
   E06B 9/386 20060101ALI20211111BHJP
   E06B 9/303 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   E06B9/384
   E06B9/386
   E06B9/303
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-232444(P2017-232444)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-100094(P2019-100094A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−088898(JP,U)
【文献】 実開昭63−040494(JP,U)
【文献】 特開平09−032441(JP,A)
【文献】 特開2016−006294(JP,A)
【文献】 米国特許第04792427(US,A)
【文献】 独国実用新案第202010011106(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24 − 9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回転軸を有するヘッドボックスと、
前記ヘッドボックスから垂下され、前記回転軸の回転に連動して第1の方向及び当該第1の方向とは逆の第2の方向へ傾動可能な複数のラダーコードと、
前記ラダーコードに整列状態で支持された複数のスラットと、
前記ヘッドボックスから垂下され、前記スラットを昇降可能な複数の昇降コードと、
を具備し、
前記スラットは、
前記回転軸の垂直方向に第1の幅を有する長片と、
前記垂直方向に前記第1の幅よりも短い第2の幅を有し、前記第2の幅方向の一端を前記長片と共有する頂辺として前記長片と所定角度をなすように接続され、前記第2の幅方向の他端に前記昇降コードを挿通させる切欠部を有する短片と、を有し、
前記ラダーコードの前記第1の方向への傾動により、前記昇降コードが前記切欠部に接触した状態で前記長片の主面が略垂直となる角度まで回転し、
前記ラダーコードの前記第2の方向への傾動により、前記昇降コードが前記切欠部から離間した状態で前記短片の主面が略垂直または垂直を超える角度まで回転する
ブラインド。
【請求項2】
内部に回転軸を有するヘッドボックスと、
前記ヘッドボックスから垂下され、前記回転軸の回転に連動して第1の方向及び当該第1の方向とは逆の第2の方向へ傾動可能な複数のラダーコードと、
前記ラダーコードに整列状態で支持された複数のスラットと、
前記ヘッドボックスから垂下され、前記スラットを昇降可能な複数の昇降コードと、
を具備し、
前記スラットは、
前記回転軸の垂直方向に第1の幅を有する長片と、
前記垂直方向に前記第1の幅よりも短い第2の幅を有し、前記第2の幅方向の一端を前記長片と共有する頂辺として前記長片と所定角度をなすように接続され、前記第2の幅方向の他端に前記昇降コードを挿通させる切欠部を有する短片と、を有し、
前記昇降コードは、
前記ラダーコードの前記第1の方向への傾動により、前記垂下方向において前記短片が前記長片の上方に位置する状態において、前記切欠部に接触し、
前記ラダーコードの前記第2の方向への傾動により、前記垂下方向において前記短片が前記長辺の下方に位置する状態において、前記頂辺に接触する
ブラインド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブラインドであって、
前記昇降コードは、前記スラットの長手方向の一端側から他端側に亘って3本設けられ、両端側の2つの昇降コードは前記スラットの前記幅方向の一端近傍に配され、前記2つの昇降コードの間の1つの昇降コードは前記スラットの前記幅方向の他端近傍に配され
前記切欠部は、前記両端側の2つの昇降コードを挿通させるか、または、前記2つの昇降コードの間の1つの昇降コードを挿通させる
ブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、短片と長片とが両者間で所定角度をなすように形成されたスラットを有するブラインドが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、短片と長片とを有する角度付スラットにおいて、短片と長片とを結ぶ頂点の角度が130°〜170°であり、短片の長手(長さ)方向の縁部から18〜26%、短片の短手(幅)方向の縁部から25〜50%の位置に昇降コード挿通孔を形成し、スラットが完全閉鎖位置にあるときに長片が均等に垂直になるようにすることが開示されている。
【0004】
この技術によれば、スラットが長片側に向かって回転したときは、長片側が均等に垂直角度まで回転して遮蔽性が高くなる特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6167938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、スラットが短片側に向かって回転したときは、短片側には昇降コードが挿通しているため、緊張状態にある昇降コードによって短片の回転が阻害されて垂直角度までは回転することができず、十分な遮蔽性を得ることはできないという課題があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、所定角度をなす短片と長片を有するスラットを、短片側と長片側のいずれの方向に回転させても高い遮蔽性を得ることが可能なブラインドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るブラインドは、ヘッドボックス、複数のラダーコード、複数のスラット、及び複数の昇降コードを有する。上記ヘッドボックスは、内部に回転軸を有する。上記複数のラダーコードは、上記ヘッドボックスから垂下され、上記回転軸の回転に連動して第1の方向及び当該第1の方向とは逆の第2の方向へ傾動可能である。上記複数のスラットは、上記ラダーコードに整列状態で支持される。上記複数の昇降コードは、上記ヘッドボックスから垂下され、上記スラットを昇降可能である。また上記スラットは、長片及び短片を有する。上記長片は、上記回転軸の垂直方向に第1の幅を有する。上記短片は、上記垂直方向に上記第1の幅よりも短い第2の幅を有し、上記第2の幅方向の一端を上記長片と共有する頂辺として上記長片と所定角度をなすように接続され、上記第2の幅方向の他端に上記昇降コードを挿通させる切欠部を有する。そして上記スラットは、上記ラダーコードの上記第1の方向への傾動により、上記昇降コードが上記切欠部に接触した状態で上記長片の主面が略垂直となる角度まで回転し、上記ラダーコードの上記第2の方向への傾動により、上記昇降コードが上記切欠部から離間した状態で上記短片の主面が略垂直または垂直を超える角度まで回転する。
【0009】
この構成によれば、スラットが短片の他端に形成した切欠部を昇降コードが挿通する構成とすることで、昇降コードはスラットに近接した状態と離間した状態をとることができるようになり、ラダーコードの一方向への傾動では、昇降コードが切欠き部を挿通した状態で長片側が略垂直となるまで回転し、ラダーコードの他方向への傾動では、昇降コードが切欠部から離間して短片側が略垂直あるいは垂直を超える角度となるまで回転することができ、スラットはいずれの方向に回転しても高い遮蔽性を得ることができる。
【0010】
本発明の他の形態に係るブラインドは、ヘッドボックス、複数のラダーコード、複数のスラット、及び複数の昇降コードを有する。上記ヘッドボックスは、内部に回転軸を有する。上記複数のラダーコードは、上記ヘッドボックスから垂下され、上記回転軸の回転に連動して第1の方向及び当該第1の方向とは逆の第2の方向へ傾動可能である。上記複数のスラットは、上記ラダーコードに整列状態で支持される。上記複数の昇降コードは、上記ヘッドボックスから垂下され、上記スラットを昇降可能である。また上記スラットは、長片及び短片を有する。上記長片は、上記回転軸の垂直方向に第1の幅を有する。上記短片は、上記垂直方向に上記第1の幅よりも短い第2の幅を有し、上記第2の幅方向の一端を上記長片と共有する頂辺として上記長片と所定角度をなすように接続され、上記第2の幅方向の他端に上記昇降コードを挿通させる切欠部を有する。そして上記昇降コードは、上記ラダーコードの上記第1の方向への傾動により、上記垂下方向において上記短片が上記長片の上方に位置する状態において、上記切欠部に接触し、上記ラダーコードの上記第2の方向への傾動により、上記垂下方向において上記短片が上記長辺の下方に位置する状態において、上記頂辺に接触する。
【0011】
この構成によれば、スラットが短片の他端に形成した切欠き部を昇降コードが挿通する構成とすることで、スラットがいずれの方向に回転しても、スラットの前後方向において少なくとも頂辺がスラット縁部とほぼ一致する程度の角度まで回転でき、昇降コードはスラットを起立させる方向に押圧するように頂辺に接触するため、高い遮蔽性を得ることができる。
【0012】
上記昇降コードは、上記スラットの長手方向の一端側から他端側に亘って3本設けられてもよい。この場合、両端側の2つの昇降コードは上記スラットの上記幅方向の一端近傍に配され、上記2つの昇降コードの間の1つの昇降コードは上記スラットの上記幅方向の他端近傍に配されてもよい。
【0013】
短片と長片とを有するスラットでは、スラットを畳み上げたときに重心が中心からずれていることによって長片側に傾きやすくなるが、この構成によれば、3本以上の昇降コードをスラットの前後方向に交互に配置したことで、重心の位置にかかわらずスラットを前後に傾けることなく畳み上げることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、所定角度をなす短片と長片を有するスラットを、短片側と長片側のいずれの方向に回転させても高い遮蔽性を得ることができる。しかし、当該効果は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るブラインドの正面図である。
図2】上記ブラインドの右側面図である。
図3】上記ブラインドのスラットの斜視図である。
図4】上記スラットの各部の長さ及び角度、並びに上記ブラインドのラダーコードの各部の長さを定義するための図である。
図5】上記スラットの長片と短片とがなす角度の設定手法を説明した図である。
図6】上記スラットの切欠部の深さの設定手法を説明した図である。
図7】上記スラットの水平時の状態を示した側面及び断面図である。
図8】上記スラットの全閉時の状態を示した側面、断面及び斜視図である。
図9】上記スラットの逆全閉時の状態を示した側面、断面及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
[ブラインドの構成]
図1は、本実施形態に係るブラインドの、スラットの水平時(全開時)における正面図である。また図2は、上記ブラインドの、スラットの水平時における右側面図(同図A)及びスラットを畳み上げた状態の右側面図(同図B)である。
【0018】
両図に示すように、ブラインド100は、ヘッドボックス1と、複数のスラット2と、複数のラダーコード3と、複数の昇降コード4と、ボトムレール6とを有する。
【0019】
ラダーコード3は、ヘッドボックス1から垂下されており、ラダーコード3によって複数のスラット2が整列状態で支持されている。ラダーコード3の下端は、スラット2の下方に設けられたボトムレール6に連結される。
【0020】
図2及び図3に示すように、ラダーコード3は、ヘッドボックス1から垂下される前後の垂直コード3aと、上下方向(Y方向)において所定間隔を空けた位置で当該前後の垂直コード3a間に架設される中段コード3bとからなる。当該中段コード3bは、一対の僅かに上下に離れた上下コードからなり、当該上下コード間に上記スラット2が挿入されることでスラット2が支持される。
【0021】
昇降コード4は、ヘッドボックス1から垂下され、スラット2の短手方向(図1及び2のZ方向)の中心部からオフセットされた前後位置に配設され、その下端はボトムレール6に連結されることで、スラット2を昇降可能とされている。
【0022】
図1において、昇降コード4は、スラット2の長手方向の一端側から他端側に亘って、両端と中央に計3本設けられる。具体的には、昇降コード4は、上記長手方向の両端側の2つの昇降コード4は、上記スラット2の幅方向(Z方向)の一端(ブラインド100の背面側)近傍に配され、上記2つの昇降コード4の間の中央の1つの昇降コードは、スラット2の幅方向(Z方向)の他端(ブラインド100の正面側)近傍に配される。ただし、これらの数及び位置は本実施形態で示したものに限られない。
【0023】
複数のスラット2は、ラダーコード3の傾動によるスラット間の開放及び閉塞により、ブラインド100が設置された窓や壁面等において、外光を室内に導いたり遮蔽したりするための遮蔽材として機能する。
【0024】
ヘッドボックス1は、例えばその上面から背面にかけて設けられたブラケット11によって窓枠や壁等の所定面にネジ等により固定される。ヘッドボックスの左右側面には、ヘッドボックスキャップ12が着脱可能に設けられる。
【0025】
図示しないが、ヘッドボックス1の内部には、上記ラダーコード3及び昇降コード4の各上端が導入される昇降回転装置が設けられる。当該昇降回転装置には、ヘッドボックス1内で回転可能な回転軸が設けられている。
【0026】
回転軸は、操作コード7に連結されており、当該操作コード7に対するユーザの操作に連動していずれかの方向に回転可能とされている。上記ラダーコード3は、上記回転軸の回転に連動して、第1の方向(図2に示した状態において反時計回り方向)及び当該第1の方向とは逆の第2の方向(同じく時計回り方向)へ傾動可能である。
【0027】
当該昇降回転装置は、上記回転軸の他、ドラム受けと、当該ドラム受けに上記回転軸を介して回転可能に支持された回転ドラム及び昇降ドラムを有する。
【0028】
回転ドラムにはラダーコード3の上端が掛け渡される。ラダーコード3は、操作コード7がユーザに操作されると、回転ドラムの所定角度範囲の回転に連動して傾動することでスラット2を回転させる。これによりスラット2の傾斜角(スラット2間の開放状態と閉塞状態)が調整される。
【0029】
昇降ドラムは、その外周面の一端で昇降コード4の上端と連結されている。操作コード7がユーザに操作されると、昇降ドラムの外周面上に昇降コード4が巻き取られ、または昇降ドラムの外周面から昇降コード4が巻き解かれることで、スラット2がボトムレール6上に積層されながら昇降される。
【0030】
[スラットの構成]
次に、上記ブラインド100のうちスラット2について説明する。
【0031】
複数のスラット2は、それらの間の開放及び閉塞により、ブラインド100が設置された窓や壁面等において、日射等の外光を室内に導いたり遮蔽したりするための遮蔽材として機能する。スラット2は例えば木製であるが、アルミニウム等の他の素材で製造されても構わない。
【0032】
図3は、1枚のスラット2の斜視図である。同図に示すように、スラット2は、長片2a及び短片2bを有する。長片2aは、上記回転軸の垂直方向(Z方向)において第1の幅を有し、短片2bは、上記垂直方向(Z方向)において上記第1の幅よりも短い第2の幅を有する。
【0033】
長片2aと短片2bとは、上記第1の幅方向及び上記第2の幅方向の各一端を共有する頂辺2cとして、それらの主面が所定角度(鈍角)をなすように接続されている。
【0034】
短片2bは、上記第2の幅方向の他端(短手方向の縁部)に、上記昇降コード4を挿通(収容)させる切欠部21を有する。当該切欠部21は、例えば、矩形状の凹部と、当該凹部の両解放端から斜め外側へ向かう2つの面取部を有する。
【0035】
当該切欠部21は、各スラット2において、ブラインド100の背面(後)側左右両端に1本ずつ、計2つ設けられる。すなわち、切欠部21は、上記3本の昇降コード4のうち、左右両端の背面側の昇降コード4に対応して設けられている。ただし、当該切欠部21の位置及び数はこれに限られない。
【0036】
また図1及び図2に示すように、上記複数のスラット2のうち、最上段のスラット2の、上記切欠部21が設けられた位置には、誘導部材5が取り付けられている。当該誘導部材5は、上記切欠部21の面取部に沿った斜面部を有しており、当該斜面部により、スラット2の上昇時において、上記昇降コード4を、上記スラット2の短手方向の外側から切欠部21へ誘導することが可能である。また誘導部材5は、スラット2とラダーコード3の中段コード3bとを固定するスラットクリップとしても機能する。
【0037】
ここで、当該スラット2の各部の長さや角度(特に、長片2aと短片2bとがなす角度(夾角)及び切欠部21の深さ)の条件に関する発明者等の検討結果について説明する。図4は、は、上記スラット2の各部の長さ及び角度、並びに上記ラダーコード3の各部の長さを定義するための図である。また図5は、上記スラット2の長片2aと短片2bとがなす角度の設定手法を説明した図であり、図6は、上記スラット2の切欠部21の深さの設定手法を説明した図である。これらの図においては、スラット2の形状を線状に簡略化して示している。
【0038】
同図に示すように、スラット2の長片2aの幅をA、短片2bの幅をB、切欠部の深さ(Z方向の長さ)をC、スラット2の水平状態における幅をD、長片2aと短片2bとがなす角度をE、ラダーコード3の中段コード3bの垂直方向(Y方向)におけるピッチをF、ラダーコード3aの幅(中段コード3bのZ方向の長さ)をGと定義する。
【0039】
本実施形態では、スラット2が図2の反時計回り方向(第1の方向)へ回転した場合のみならず、図2の時計回り方向(時計回り方向)へ回転した場合であっても上下で隣接するスラット2が近接しながらスラット2間が遮蔽される状態(全閉状態)を実現することを課題の1つとしている。なお、後者の全閉状態を、前者の全閉状態と区別して「逆全閉状態」と称する。
【0040】
全閉状態においては、長片2aの主面は略垂直な状態(図2のY方向に平行)となり、逆全閉状態においては、頂辺2cが室外側に位置し、長片2aと短片2bとがなす凹部が室内側に位置することになる。
【0041】
図5では、上記図2の時計回り方向に回転して上下で隣接する2枚のスラット2が示されている。まず、長片2aと短片2bの夾角θについて検討する。また長片2aと頂辺2cを通る水平面とがなす角度をθαとし、スラット2の長片2aの端部から上方に位置するスラット2の短片2bの端部が近接する位置までの幅をA´とする。
【0042】
同図に示すように、上下に隣接するスラット2が近接(ほぼ接触する程度まで近づく)しつつ、上記全閉位置まで回転するための条件としては、以下の3つが挙げられる。
(1)Bcos(θ−θα)=(A−A´)cosθα
(2)(A−A´)sinθα+Bsin(θ−θα)=F
(3)Acosθα=g
【0043】
これら(1)、(2)、(3)より、以下の式が得られる。
sinθ=Fg/AB…[式1]
【0044】
また、スラット2の長片2aと短片2bの夾角の角度θは、以下のパラメータによって決定される。
・F:ラダーコード3(中段コード3b)のピッチ
・g:全閉時のラダーコード3(中段コード3b)の幅
・A:スラット2の長片2aの幅
・B:スラット2の短片2bの幅
【0045】
また、さらなる条件として、以下の点も要求される。
(4)A<F
(長片2aが全閉時に垂直となるための条件)
(5)D<G
(中段コード3a間へのスラット2の挿入による組立を可能とするための条件)
【0046】
ここで、ラダーコード3(中段コード3b)のピッチFについては、従来のラダーコードの仕様と同様とし、長片2aの長さAをそれよりも若干短くすることとした。
【0047】
また、全閉時のラダーコード3の幅gについては、ラダーコード3の中段コード3bの最大傾斜角を80°〜85°に設定することで決定され、スラット2の幅Dについては、ラダーコード3の幅Gとの相対関係でほぼ決まることから、短片2bの幅Bが決まれば、上記角度θも決まることになる。
【0048】
また、余弦定理より、以下の関係が成り立つ。
cosθ=(A+(B−C)−d)/2A(B−C)
(6)d=√(A+(B−C)−2A(B−C)cosθ
【0049】
本実施形態では、上記Fは42mm、上記gは6.2mm(実際には、スラット2の厚み(約2mm)を加味すると8.2mm)、上記Aは40mm、上記Bは13mmに設定された。
【0050】
上記設定及び条件(1)〜(6)により、本実施形態において、スラット2の長片2aと短片2bの夾角θは、"θ=150°"に設定された。
【0051】
続いて、上記切欠部21の深さ(Z方向の長さ)Cについて検討する。図6は、上記図5にスラット2の厚みの概念を加えた図である。同図において、スラット2の長片2aの外側端辺と切欠部21の深さ方向の端辺とを通る面が長片2aとなす角度をθ、長片2aと垂直面とがなす角度をθとする。
【0052】
上記スラット2の厚みをtとすると、中段コード3bのZ方向の長さGは、以下の式で表される。
(7)G≧d+g+t
【0053】
また、gα=(B−C)sin(180°−θ−θ)であり、これと上記式(6)及び(7)から、中段コード3bの長さG、全閉時のラダーコード3の幅g、長片2aの幅A、短片2bの幅B、及び切欠部21の深さCは、下記の関係式で表すことができる。
G≧d+(B−C)sin(180°−θ−θ)+t
g=Asinθ…[式2]
【0054】
ここで、g=6.2mm、A=40mmとすると、
sinθ=0.155
ここで、θ≦90°であるため、
θ=8.9°
となる。
【0055】
さらに、θ=150°、t=2mm、G=56mmとすると、
"B−C≦11.9mm"
となり、上記B−Cの長さが11.9mm以下となるように切欠部21の深さを設定すればよいことが見出された。
【0056】
[ブラインドの動作]
次に、以上のように構成されたブラインド100の動作について説明する。
【0057】
図7は、スラット2の水平状態を示した側面図(同図A)及び断面図(同図B)である。図8は、スラット2の全閉状態を示した側面図(同図A)、断面図(同図B)及び斜視図(同図C)である。図9は、スラット2の逆全閉状態を示した側面図(同図A)、断面図(同図B)及び斜視図(同図C)である。
【0058】
各スラット2は、図7に示した水平状態から、上記ラダーコード3の上記第1の方向(同図反時計回り方向)への傾動により、図8(特に同図B及びC)に示すように、昇降コード4が上記切欠部21に接触した状態で、上記長片2aの主面が略垂直となる角度まで回転する。
【0059】
またこの場合昇降コード4は、図8に示すように、Y方向において短片2bが長片2aの上方に位置する状態において、切欠部21に接触する。
【0060】
一方、各スラット2は、図7に示した水平状態から、上記ラダーコード3の上記第2の方向(同図時計回り方向)への傾動により、図9(特に同図B及びC)に示すように、上記昇降コード4が上記切欠部21から離間した状態で、上記短片2bの主面が略垂直または垂直を超える角度まで回転する。
【0061】
またこの場合昇降コード4は、図9に示すように、Y方向において上記短片2bが長辺2aの下方に位置する状態において、上記頂辺2cに接触する。
【0062】
このように、昇降コード4は、スラット2に近接した状態と離間した状態をとることができるようになり、スラット2はいずれの方向に回転しても高い遮蔽性を得ることができる。
【0063】
また、スラット2がいずれの方向に回転しても、スラット2の前後方向において少なくとも頂辺2cがスラット2の端部とほぼ一致する程度の角度まで回転でき、昇降コード4が、スラット2を起立させる方向に押圧するように頂辺2cに接触するため、高い遮蔽性を得ることができる。
【0064】
また一般に、短片と長片とを有するスラットでは、スラットを畳み上げたときに重心が中心からずれていることによって長片側に傾きやすくなるが、本実施形態によれば、3本以上の昇降コード4をスラット2の前後方向に交互に配置したことで、図2に示したように、重心の位置にかかわらずスラット2を前後に傾けることなく畳み上げることが可能となる。
【0065】
<変形例>
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更され得る。
【0066】
上述の実施形態で示したスラット2の長片2a及び短片2bの幅やそれらがなす夾角は一例であり、上記図4乃至図6で示した条件に矛盾しない限り適宜変更可能である。
【0067】
上述の実施形態では、1つのスラット2につき切欠部21は背面側両端部に2つ設けられたが、正面側または背面側の中央に1つのみ設けられてもよく、また正面側または背面側に3つ以上設けられてもよい。この場合、複数の切欠き部21はスラット2の長手方向の長さを2分する上記Y方向の線に対して対称に設けられてもよい。
【0068】
またその場合、上記昇降コード4は、全ての切欠部21に1対1で対応するように設けられてもよいし、上述の実施形態と同様に、正面側と背面側(前後)で交互に設けられ、少なくともそれらの一部が切欠部21に対応していてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ヘッドボックス
2…スラット
2a…長片
2b…短片
2c…頂辺
3…ラダーコード
4…昇降コード
21…切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9