特許第6972465号(P6972465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972465不混和液の分散のシミュレーションされた重力による分離に特に関する、多相分離装置の分析及び最適化のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972465
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】不混和液の分散のシミュレーションされた重力による分離に特に関する、多相分離装置の分析及び最適化のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/12 20060101AFI20211111BHJP
   B01D 17/00 20060101ALI20211111BHJP
   B01D 17/032 20060101ALI20211111BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20211111BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20211111BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20211111BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20211111BHJP
   G06F 30/28 20200101ALI20211111BHJP
   G06F 111/02 20200101ALN20211111BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20211111BHJP
【FI】
   B01D17/12 Z
   B01D17/00 503A
   B01D17/032
   G16Y40/10
   G16Y40/35
   G06F30/10
   G06F30/20
   G06F30/28
   G06F111:02
   G06F113:08
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-551944(P2018-551944)
(86)(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公表番号】特表2019-520188(P2019-520188A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】US2017027016
(87)【国際公開番号】WO2017192248
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年3月31日
(31)【優先権主張番号】15/145,606
(32)【優先日】2016年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(74)【代理人】
【識別番号】100178445
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194892
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 麻美
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】オシノウ,オランレワジュ,マルコム
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0125868(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0166158(US,A1)
【文献】 特表2014−524837(JP,A)
【文献】 特開2002−069460(JP,A)
【文献】 特開2009−034618(JP,A)
【文献】 N. Kharoua et al.,American Journal of Fluid Dynamics,2013, 3(4), p.101-118
【文献】 Christine Noik et al.,Journal of Dispersion Science and Technology,2013, 34, p.1029-1042
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D17/00−17/12
C10G1/00−99/00
G16Y10/00−40/60
G06F30/00−30/398
G06F111:02
G06F113:08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多液及び多相の非混和性分散液を分離するための多相の分離装置のシステムの性能を評価する、コンピュータで実行される方法であって、
コントローラ・コンピュータ・デバイスのハードウェアのプロセッサにおける動作の入力パラメータを提供するステップを含み、前記プロセッサは、1つまたは複数のソフトウェアモジュールの形態であって非一時的な記憶媒体に格納されたプログラムコードを実行することによって構成され、前記動作の入力パラメータには、
密度、粘性及び表面張力、前記非混和性分散液の静的及び動的沈降のデータの1つまたは複数を含む、前記非混和性分散液に関する流体の特性のデータと、
前記分離装置内に1つまたは複数の内部の幾何学的な構成要素を含む、前記分離装置の内部容量の幾何学形状と
が含まれ、
前記プロセッサにより、前記分離装置のシステムの計算流体力学(CFD)モデルを生成するステップを含み、前記CFDモデルの生成には、
前記プロセッサにより、前記幾何学形状に基づき、前記分離装置の前記内部容量及び前記分離装置内の前記内部の構成要素の3次元幾何学モデルを規定し、
前記プロセッサにより、前記3次元幾何学モデルに基づき、前記分離装置の前記内部容量を表す計算メッシュを規定し、
前記プロセッサにより、前記内部容量内に含まれる前記非混和性分散液の最初の小滴サイズの分布を判定し、
オイラーの多相モデルを使用して、前記分離装置の前記内部容量内の気、重い液相、及び軽い液相の各々に関する容量を示し、
前記内部容量内の分散した液相の容量に関し、ポピュレーションバランスモデリングを用いて小滴サイズの分布を示し、前記分布は、多変数の方法に従ってポピュレーションバランス方程式を解くことによってモデル化され、
前記プロセッサにより、集合カーネル及び分離カーネルを適用して、小滴サイズと、前記非混和性分散液に関する静的及び動的沈降のデータを含む前記流体の特性のデータとの関数として、前記分散した液相の集団における小滴サイズの発達をモデル化し、
前記連続した液相と、前記分散した液相との間の相の相互作用をモデル化し、前記相の相互作用のモデルは、前記分散した液相の容量の希釈状態と半希釈状態と濃縮状態との間の分散した相の画分の濃度の関数であるとともに、前記分散した液相の小滴サイズの発達と分散した液相の粘度との関数である
ことが含まれ、
前記プロセッサにより、前記CFDモデルに基づき、前記動作の入力パラメータの1つまたは複数を出力するステップを含み、1つまたは複数の動作の入力パラメータの出力は、前記CFDモデルに基づいて調整されて前記分離装置の分離効率を最大化する、コンピュータで実行される方法。
【請求項2】
前記非混和性分散液が、水中油のエマルジョン、油中水のエマルジョン、水中油中水のエマルジョン、及び油中水中油のエマルジョンで構成されたグループから選択されたエマルジョンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離装置から出力された、前記処理された液体の流れが、水の液体の流れと、油の液体の流れとを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
静的または動的沈降データを提供することが、前記分離装置内の沈降または浮上する相の時間変化する鉛直方向の分布を判定するために、前記非混和性分散を監視することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記時間変化する鉛直方法の分布が、前記非混和性分散の、超音波測定、ガンマ線濃度測定、核磁気共鳴NMR測定、及び電子トモグラフィ測定の1つまたは複数を取るように構成されたセンサデバイスを使用して、前記プロセッサによって判定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記時間変化する鉛直方向の分布が、前記分離装置によって処理されるバッチからリアルタイムで測定されるか、1つまたは複数の以前のバッチの間に測定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサで、前記集合カーネル及び前記分散カーネルを、前記静的または動的沈降データに基づいて選択することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記流体の特性のデータには、密度、粘性、表面張力、運動量、速度、乱流のエネルギ消失量、乱流の運動エネルギ、及び、解乳化剤または表面活性剤の濃度を含む、1つまたは複数の変数に係る値または値の勾配が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
小滴サイズの進展が、小滴サイズ、及び、前記流体の特性のデータの変数の1つまたは複数の関数としてモデル化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
多相の分離装置システムにおける液体−液体の分離効率を最適化する方法であって、
気相、油相、及び水相を含む多液及び多相の非混和性分散液を受領するための流入部を有する多相の分離装置を提供するステップを含み、
前記非混和性分散液を前記分離装置に送るステップを含み、
接続された電子デバイスからコントローラ・コンピュータ・デバイスのハードウェアのプロセッサに動作の入力パラメータを電子的に提供するステップを含み、前記プロセッサは、1つまたは複数のソフトウェアモジュールの形態であって非一時的な記憶媒体に格納されたコードを実行することによって構成され、前記動作の入力パラメータには、
密度、粘性及び表面張力、前記非混和性分散液の静的及び動的沈降のデータの1つまたは複数を含む、前記非混和性分散液に関する流体の特性のデータと、
前記分離装置内に1つまたは複数の内部の幾何学的な構成要素を含む、前記分離装置の内部容量の幾何学形状と
が含まれ、
前記プロセッサにより、前記分離装置のシステムの計算流体力学(CFD)モデルを生成するステップを含み、前記CFDモデルの生成には、
CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサにより、前記幾何学形状に基づき、前記分離装置の前記内部容量及び前記分離装置内の前記内部の構成要素の3次元幾何学モデルを規定し、
前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサにより、前記3次元幾何学モデルに基づき、前記分離装置の前記内部容量を表す計算メッシュを規定し、
入力パラメータモジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサを伴う前記プロセッサにより、前記内部容量内に含まれる前記非混和性分散液の最初の小滴サイズの分布を判定し、
前記入力パラメータモジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行するプロセッサを伴う前記プロセッサにより、オイラーの多相モデルを使用して、前記分離装置の前記内部容量内の気、重い液相、及び軽い液相の各々に関する容量を示し、
前記入力パラメータモジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサにより、前記内部容量内の分散した液相の容量に関し、ポピュレーションバランスモデリングを用いて小滴サイズの分布を示し、前記分布は、多変数の方法に従って複数の速度グループの関数としてポピュレーションバランス方程式を解くことによってモデル化され、
前記入力パラメータモジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行するプロセッサを伴う前記プロセッサにより、集合カーネル及び分離カーネルを適用して、小滴サイズと、前記非混和性分散液に関する静的及び動的沈降のデータを含む前記流体の特性のデータとの関数として、前記分散した液相の集団における小滴サイズの発達をモデル化し、
シミュレーションモジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサにより、前記連続した液相と、前記分散した液相との間の前記相の相互作用を、モデル化し、前記相の相互作用のモデルは、前記分散した液相の容量の希釈状態と半希釈状態と濃縮状態との間の分散した相の画分の濃度の関数であるとともに、前記分散した液相の小滴サイズの発達と分散した液相の粘度との関数である
ことが含まれ、
調整モジュール及び前記CFDモデル生成モジュールを含むコードを実行する前記プロセッサにより、前記CFDモデルに基づき、前記動作の入力パラメータの1つまたは複数を調整して、前記液体−液体の分離効率を最大化するステップを含み、
前記非混和性分散液から分離され、前記非混和性分散液を最小量だけ含む、処理された液体の1つまたは複数の流れを前記分離装置から排出するステップを含む、方法。
【請求項11】
前記非混和性分散液が、水中油のエマルジョン、油中水のエマルジョン、水中油中水のエマルジョン、及び油中水中油のエマルジョンで構成されたグループから選択されたエマルジョンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分離装置から出力された、前記処理された液体の流れが、水の液体の流れと、油の液体の流れとを含み、前記入力パラメータが、前記処理された液体の流れの中の油中水エマルジョン及び水中油エマルジョンの出力を最小にするように調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
静的または動的沈降データを提供することが、前記分離装置内の沈降または浮上する相の時間変化する鉛直方向の分布を判定するために、前記非混和性分散液を監視することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記時間変化する鉛直方法の分布が、前記非混和性分散の、超音波測定、ガンマ線濃度測定、核磁気共鳴NMR測定、及び電子トモグラフィ測定の1つまたは複数を取るように構成されたセンサデバイスを使用する前記プロセッサによって判定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記時間変化する鉛直方向の分布が、前記分離装置によって処理されるバッチからリアルタイムで測定されるか、1つまたは複数の以前のバッチの間に測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセッサで、前記集合カーネル及び前記分散カーネルを、前記静的または動的沈降データに基づいて選択することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記流体の特性のデータには、密度、粘性、及び表面張力を含む、1つまたは複数の変数に係る値または値の勾配が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
小滴サイズの発達が、小滴サイズ、及び、前記流体の特性のデータの変数の1つまたは複数の関数としてモデル化される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記最初の小滴サイズの分布が、実験的測定から判定されるとともに、前記最初の小滴の直径の分布と、前記小滴の直径によって分けられた容量の割合に関し、小滴の確率分布によって規定された確率分布関数の各々に関する相の割合とを含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記内部の幾何学的構成要素には、流入デバイス、穴が開けられたプレート、バッフル、渦遮断器、堰、コアレッサパック、及び、前記分離装置の前記内部容量内の気体及び液体の流れを妨げるか部分的に妨げるデバイスの1つまたは複数を含んでいる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不混和液の分散の分離のためのシステム及びプロセスに関する。より詳細には、本発明は、油中水の分散及びエマルジョン、または、水中油の分散及びエマルジョンの、重力による分離のための重力分離装置処理システムの設計、監視、及び/または制御に関する。
【背景技術】
【0002】
原油及びその分留物質は、有益な化学物質を製造するための供給原料として使用されている。油田内の原油は、しばしば、水とのエマルジョンを形成している。
【0003】
エマルジョンは、一方の相が他方の(「連続した」)相内に不連続的に分散している、通常は不混和性である2つ以上の液体の混合物である。油中水(w/o)のエマルジョン[水が分散相であり、オイルが連続相である]、及び、水中油(o/w)のエマルジョン[オイルが分散相であり、水が連続相である]、ならびに、水中油中水(w/o/w)のエマルジョン、及び、油中水中油(o/w/o)のエマルジョンなどの、より複雑なエマルジョンを含む、油/水のエマルジョンのいくつかのタイプが存在する。たいていの場合、油田で生成されるエマルジョンは、w/oエマルジョンである。
【0004】
炭化水素系ガスと、液体と、水との分離は、通常、鉛直重力分離装置または水平重力分離装置によって実施される。これら分離装置では、2相または3相が分離装置に入り、炭化水素系ガスと、炭化水素またはより軽い密度の液体と、水またはより重い密度の液相との、別々の流れに分けられる。分離装置を出る液体の流れの品質は、分離装置の効率に影響される。理想的な効率、すなわち、完全な分離がされない状況では、より重い液相のいくらかが、より軽い液相とともに出され(油中水)、より軽い相のいくらかが、より重い相とともに出される(水中油)。産出井から分離装置に移送するプロセス中に、流体が混合され、互いに分散され、リザーバからのパイプラインによる移送の間、分離が困難である複雑な分散またはエマルジョンを形成する。気相は液体及び液相内にバブルを形成し、炭化水素相(より軽い液相)と水相(より重い液相)とが混ざり、一方の相の小滴のエマルジョンまたは分散を形成する。
【0005】
気体のほとんどは、分離が極めて容易である一方、エマルジョンは、通常は「タイト」である、すなわち、安定しており、分離が困難である。重力分離装置は、比較的静的な水平または鉛直流において混和していない相となるのに、十分に沈降させる時間を提供する原則の上で作動する。エマルジョンは、分離装置に入り、分離容器の容量によって定められた時間に基づき、各相が、様々な程度に分離する。ここでは、油を水の流出流れに、また、水を油の流出流れに見ることができる。油の小滴は、油−水界面に浮き上がり、水の小滴は界面に沈降する。各相間に形成されたエマルジョン相により、分離が阻害される。油と水との分散は、油の不均等性、及び、水内の不純物によって複雑化する。解乳化剤が、油−水の分離を向上させるために添加され、ボトルテスト、バッチ式の重力による分離が、油水の分離を加速する解乳化剤の効果を評価するために質的に使用される。
【0006】
重力分離装置の設計、サイズ設定、及び制御のための、既存のシステム及び方法は、分離装置内における流体の滞留時間に基づく技術を使用している。これら標準的な設計のガイドラインは、費用がかかる過度に大型の設計、エマルジョンの安定性の変化に対する感度の悪化、または、サイズが過小になり、必須の効率を失うことに繋がる。たとえば、滞留時間の設計の基準には、流入時の条件、エマルジョンの安定性、小滴のサイズの分布、内部構造、または水の界面レベルが考慮されていない。さらなる実施例として、単一の小滴の移送、または、分離される相の平均滞留時間に基づく分離装置の設計には、分離装置内における多次元の流れの場が考慮されておらず、分離装置の容量が過度に大きくなりがちである。
【0007】
必要とされているのは、真の幾何学形状及び多次元の流れの場に基づく、分離効率の判定を可能にする多相分離装置の設計及び制御のため、及び、水中油または油中水の分散の流動学上のエマルジョンの濃縮の影響を伴う、小滴サイズの分布に関するシステム及び方法である。それにより、分離装置を伴う設備の設計者、技術者、及びオペレータが、分離装置内の相の分布、実際の残存または滞留時間を判定すること、及び、一般的な作動条件のために分離装置を最適化することを可能にする。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、多液及び多相の不混和液の分散を分離するための重力分離装置システムの性能を評価する、そのようなシステムの監視のため、及び、そのようなシステムの制御のための、コンピュータで実行される方法を対象としている。
【0009】
一態様では、本方法は、不揮発性貯蔵媒体に貯蔵された、1つまたは複数のモジュールの形態のコードを実行することによって構成される、コントローラ・コンピュータ・デバイスのプロセッサにおいて、動作に関する入力パラメータを提供するステップを含んでいる。動作の入力パラメータには、密度、粘度、及び表面張力の1つまたは複数を含む、不混和液の分散に関する流体の特性のデータ、不混和液の分散に関する、静的または動的沈降データ、ならびに、分子装置内の1つまたは複数の内部の幾何学的構成要素を含む、分離装置の内部容量の幾何学形状が含まれている。本方法は、プロセッサにより、分離装置のシステムの計算流体力学(CFD)モデルを生成するステップをも含んでいる。具体的には、CFDモデルを生成することには、プロセッサにより、幾何学形状に基づき、分離装置の内部容量及び分離装置内の内部構成要素の3次元幾何学モデルを規定するステップと、プロセッサにより、3次元モデルに基づき、分離装置の内部容量に関するコンピュータによるメッシュを規定するステップと、プロセッサにより、不混和液の分散の最初の小滴サイズの分布を判定するステップと、オイラーの多相モデルを使用して、分離装置の内部容量内の連続した気相、重い液相、及び軽い液相の各々に関する容量を示すステップと、分散された液相の容量に関し、集団バランスモデリングで小滴サイズの分布を示すステップであって、分布が、多変数の方法に従って集団バランス方程式を解くことによってモデル化される、示すステップと、プロセッサで、集合カーネル及び分離カーネルを適用して、小滴サイズ及び流体の特定のデータの関数として、集団内における小滴サイズの進展をモデル化するステップと、連続した液相の各々と、分散された液相との間の相の相互作用をモデル化するステップであって、相の相互作用のモデルが、分散された液相の容量内における希釈状況と、半希釈状況と、濃縮された状況との間の分散相の割合の濃縮の関数であるとともに、分散相の小滴の直径の分布、分散の粘度、及び油と水の特性の関数である、モデル化するステップとが含まれる。さらに、本方法は、プロセッサで、CFDモデルに基づき、動作の入力パラメータの1つまたは複数を調整して、分離効率を最大化し、分離装置から、それぞれの規定の組成を有する処理された液体の1つまたは複数の流れを出力するステップをも含んでいる。
【0010】
別の態様では、本方法は、気相、油相、及び水相を含む多液及び多相不混和液の分散を受領するための流入部を有する多層分離装置を提供するステップを含んでいる。さらなる態様では、本方法は、不混和液の分散を分離装置に送ることと、動作に関するパラメータを調整して、液体−液体の分離効率を最大化することと、分離装置から、不混和液の分散から分離され、不混和液の分散を最小量だけ含む、処理された液体の1つまたは複数の流れを出力することと、を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、堰を有する例示的な3相の気体−油−水の分離装置を示す図である。
図1B】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、ブートを有する例示的な3相の気体−油−水の分離装置を示す図である。
図2】バッチ式静的重力分離装置の2相の液体−液体の分離の原理を示す高レベルの図である。
図3】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、不混和液の分散の重力による分離のシミュレーションのための方法を示すフロー図である。
図4】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、不混和液の分散の重力による分離のシミュレーションのための方法に関する入力パラメータを示すフロー図である。
図5】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、0から1までの水の割合のレンジにわたってプロットされた、Arab Lightの原油のエマルジョン及び塩水の相対的粘度を示すグラフである。
図6】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、局所的な小滴サイズに依存する、半希釈された状況と濃縮された状況とにおける、変形しない円形小滴を伴うエマルジョンの粘性のモデリングからの、グラフを用いて示した例示的なアウトプットを示す図である。
図7】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、不混和液の分散の重力による分離のシミュレーションのための方法を示すフロー図である。
図8】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、分離装置のCFDモデルに関する分離装置の性能を分析するための方法を示すフロー図である。
図9A】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、変形されたBullardモデルを使用した、水の割合に関する、経時的な高さの割合を示すグラフである。
図9B】開示の実施形態の1つまたは複数に係る、超音波技術を使用した、水の割合に関する、経時的な高さの割合を示すグラフである。
図10】開示の実施形態の1つまたは複数に係る方法を実施するのに適切なハードウェア構成要素を含む、不混和液の分散を分離するための例示的システムを示す高レベルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、不混和液の分散(たとえば、油中水、水中油の混合物)、及び、2相(液体−液体)または3相(気体−液体−液体)の系に関するエマルジョンを分離するために使用される、性能の評価、プロセス制御の実施、重力分離処理システムの最適化及び設計のためのシステム及び方法を対象としている。
【0013】
一態様によれば、そのようなシステムの設計、シミュレーション、及び制御は、計算流体力学(CFD)ソフトウェアを使用して実施される。計算流体力学(CFD)ソフトウェアは、真の幾何学形状及び多次元の流れの場に基づき、かつ、水中油または油中水の分散の流動学上のエマルジョンの濃縮の影響を伴う、小滴サイズの分布に関する、分離装置の分離効率を判定するために構成されている。本システム及び方法は、資本支出及び作動効率が適切であることを確実にするために、計算流体力学による厳密なモデリングを利用する。
【0014】
本明細書にさらに記載される例示的システム及び方法は、既存の分離装置の設計者、技術者、及びオペレータが、分離装置内における相の分布、及び、実際の残存または滞留時間を判定すること、ならびに、一般的な作動条件に基づく、新しい分離装置の設計及び既存の分離装置の動作を最適化することを可能にしている。本明細書に記載のシステム及び方法は、仮想の分離動作を可視化するために、技術者及びオペレータのためのトレーニングツールとして利用することもできる。さらに、本システム及び方法は、水平分離装置、鉛直分離装置、及び、2相または3相の分離装置の分離を向上させるために、新規の分離装置の内部を評価及び設計するために使用することができる。最終的には、本システム及び方法により、多相分離装置の動作を評価し、動作に関するトラブルシューティングを実施し、プロセスを最適化し、また、新しい分離ユニットを設計するために、分離効率を良好に予測する。
【0015】
A.多相油水分散の重力による分離
エマルジョンの形態での水と原油との共存は、プロセスと製品との両方の品質の観点から、かなり魅力のない形態である。図1A及び図1Bは、3相の分離装置100の実施形態を示している。この3相の分離装置100は、内部に、気体層105、油層110、水層115、及び、油層と水層との間のエマルジョン層120を含む例示的な相分離領域を示している。図1Aの実施形態では、より軽い液相(油)のオーバーフローのための堰125も示されている。図1Bには、重い相を除去するために設計されたブート126を含む代替的実施形態が示されている。水流出バルブ130及び油流出バルブ135を含む、液相流出部の制御バルブは、液体レベル140と界面レベル145と(すなわち、水レベル層とエマルジョン層120との間の界面レベル)を制御するために使用される。混合物が分離装置内に流入するための流入バルブ155も示されている。気体流出部150の制御バルブは、容器の圧力を制御するために使用される。気体のほとんどは、分離が極めて容易である一方、エマルジョンは、通常は「タイト」である、すなわち、安定しており、分離が困難である。
【0016】
通常、重力分離装置は、比較的静的な水平または鉛直流において混和していない相となるのに、十分に沈降させる時間を提供する原則の上で作動する。エマルジョンは、分離装置に入り、分離容器の容量によって定められた時間に基づき、各相が、様々な程度に分離する。ここでは、油を水の流出流れに、また、水を油の流出流れに見ることができる。油の小滴は、油水界面に浮き上がり、水の小滴は界面に沈降する。各相間に形成されたエマルジョン層により、分離が阻害される。油と水との分散は、油の不均等性、及び、水内の不純物によって複雑化する。
【0017】
図2は、バッチ式静的重力分離装置の2相の液体−液体の分離の原理を記載するために提供されている。図2は、油中水の分散から分離された水相の割合の過渡的な進展を概略的に示している。ボトルテストに対応する、このシンプルな実施例において、軽い相(油)、重い相(水)、及び、処理用の化学物質が、ともに加えられ、エマルジョンを形成するように混ぜられるか、機械的に攪拌される。時間が経過すると、脱水された油が、沈降界面上に存在するようになり、水の均一な相が、混合界面の下に生じるようになる。エマルジョンの不安定化は、分散相の相の分離及び濃度勾配を測定するために、視覚的な観察、超音波技術、ガンマ線濃度測定、核磁気共鳴、または他の手段によって監視することができる。相の分離の間、小滴の沈降が、小滴の界面上の集合よりも速い場合、小滴は、密にパックされたゾーン(DPZ)で凝集する。小滴の群は、集合の速度が遅くなるにつれて、密にパックされたゾーンにおいて、高密度のエマルジョンに沈降する。小滴の相の容量の割合は増大し、一様な相へと近づき、小滴のサイズは、密にパックされたゾーンにおいて隣接する小滴との集合に起因して増大する。
【0018】
油−水の分離の速度及び処理量により、容器の容量、長さ、及び直径が規定される。油が多い流入流れに関する分離の効率は、オイルの流出流れにおける水の割合に基づいている。水が多い流入流れに関する分離効率は、水の流出流れにおける油の割合に基づいている。下流における作業、生成された水の注入、及び、原油の輸送ラインの、技術的条件及び商業上の条件を満たすために、分離効率を最大化することと、油中水または水中油の繰り越しを最小にすることとが、分離プロセスには重要である。
【0019】
重力分離装置の設計及びサイズ設定のための、既存のシステム及び方法は、通常、分離装置内における流体の滞留時間に基づく、確立された技術を使用して行われる。たとえば、API12Jの規格により、滞留時間に関するガイドラインが定められている。容器の容量、生成速度、流体の密度、及び流体の粘性に関する滞留時間により、油と水との分離にかかる時間が判定される。滞留時間は、分離装置のタイプ−2相または3相の分離装置、及び、油のAPIの重力(油の密度及び粘性)に基づいて選択される。気体と液体との分離は、気相からの小滴の分離に利用可能である滞留時間と同じように対処される。
【0020】
気体−液体、及び、液体−液体の分離のための容器の滞留時間は、気体及び液体の見かけの流速を判定するために使用される、利用可能な断面積から判定される。滞留時間は、API規格毎に、液体−液体の分離における基本的なサイズ設定パラメータとして使用される。液体の容量は、特定の油の重量に関する特定の滞留時間に基づいて選択される。この方法に加え、Stokesの法則が、分離に関するカットオフ小滴サイズ、すなわち、最小小滴サイズを判定するために使用される。それより大である小滴はすべて、分離されているものと推定され、一方、カットオフ直径よりも小である小滴はすべて、生成された流れに持ち越される。カットオフ小滴は、通常、100ミクロンから500ミクロンである。
【0021】
分離装置の容器のサイズは、カットオフ小滴に関して必要とされる時間から判定されて、Stokesの法則に従って、静止中の希釈流体内の単一の球体に関する限界沈降速度に基づいて定められる。滞留時間の設計の基準には、流入時の条件、エマルジョンの安定性、小滴のサイズの分布、内部構造、または水の界面レベルが考慮されていない。これら標準的な設計のガイドラインは、費用がかかる過度に大型の設計、エマルジョンの安定性の変化に対する感度の悪化、または、サイズが過小になり、必須の効率を失うことに繋がる。
【0022】
計算流体力学(CFD)を使用した、液体−液体の分離、及び、水平重力分離装置の性能のモデル化のために、多くの試みがされてきた。以前の研究により、CFDによる予測が、流れのパターン及び相の滞留時間などの、包括的パラメータを解明する助けになるが、CFDは、液相の分離性能を正確に予測することは不可能であったことが示されている。
【0023】
開示の実施形態の1つまたは複数によれば、本明細書にさらに記載のシステム及び方法は、より正確な方法により、油−水エマルジョンのモデル化と、そのようなモデルの、分散相の小滴サイズの分布、及び、エマルジョンの流動学を含むこととの、既存のCFDモデリング技術を向上させる。
【0024】
液体−液体の分散における分散相のサイズの分布は、分離運動に影響を与える。予測における分散相のサイズの分布に基づき、沈降させる作用は、分離モデルを向上させることができる。既存の液体−液体の分散の分離モデルは、油と水との混合物が均質化によって準備される、いわゆるボトルテストで実施される静的な実験に基づいている。結果として得られるエマルジョンは、水のカット(液体全体の容量に比べての水の割合)に応じて、複雑なエマルジョンを含む、油中に分散した水の小滴、水中に分散した油の小滴、または、これら2つのいくつかの組合せで構成され得る。攪拌の直後から、分散は、細長い円筒状のガラス容器内で経時的に分離される。ボトルテストは、原油のエマルジョンの安定性を判定するためにエネルギ産業において使用される一般的なテストであり、産業スケールの重量分離ユニットの代用である。単純に、ボトルテストは、サンプルの最初の物理的攪拌後の時間経過に伴う油−水の相の分離の観察を伴う。ボトルテストに関する別の方法及び手順が存在し、また、解乳化剤がどれだけ良好に、水を油から分離するのに要する時間を低減するかを評価することにより、解乳化用化学物質を遮るための基本的方法として通常は使用される。
【0025】
分離装置の設計に関する既存の方法は、単一の小滴の移送、または、分離される相の平均的な滞留時間に基づいている。通常、この方法では、分離装置内における多次元の流れの場が考慮されておらず、分離装置の容量が過度に大きくなりがちである。本明細書にさらに記載されているシステム及び方法は、真の幾何学形状及び多次元の流れの場に基づき、かつ、水中油または油中水の分散の流動学上のエマルジョンの濃縮の影響による、小滴サイズの分布に関する、分離装置の分離効率の判定を可能にしている。
【0026】
本発明の特定の特徴:
顕著な態様によれば、本明細書にさらに記載のシステム及び方法により、バッチ式または連続式の重力分離装置の、気体−油−水、及び、油−水の分離の、より広範囲にわたる、正確な分離のシミュレーションに基づく重力分離装置を設計するために、既存の方法を向上させて、液相の分離を予測し、分離効率を判定する。いくつかの実施態様では、そのようなモデリングは、計算流体力学(CFD)ソフトウェアシミュレーションを使用して実施される。特に、例示的システム及び方法には、別々の相に関して解くために、オイラーの多相モデリング方法または同様の方法が組み込まれており、シミュレーションにおいて、相の各々の間の相対的またはスリップ粘度を特徴付ける。また、この例示的システム及び方法には、シミュレーションにおける分散相の小滴の直径の分布を特徴付け、小滴−小滴の集合に起因する、進展した小滴サイズの分布、及び、軽い相の分散と思い相の分散との間に形成される、より高い粘度の、高密度のエマルジョン層を特徴付けるための、集団バランスモデルまたは同様の方法が組み込まれている。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によれば、不混和液の分散の重力による分離をシミュレーションするための一般的な方法は、図3に示すプロセスを辿る。この方法は、相の分離を予測するために、計算流体力学(CFD)シミュレーションとして実行することができる。ルーチン300は、シミュレーションのための入力パラメータが取得及び分析されるステップ305で開始される。次いで、ステップ310において、分離装置のCFDモデルが構築されるとともに、セットアップされる。次いで、ステップ315において、シミュレーション(集団バランスモデリングと組み合わせた多相CFDアプローチを使用する)が実施される。ステップ320では、分離装置の性能を示すための、シミュレーションの出力の前処理が実施される(経時的な相分離の速度、及び、2相または3相の分離装置における分離の効率を含む)。1つまたは複数の実施形態では、シミュレーションの出力の処理に続き、既存の分離装置の入力パラメータが、特定の不混和液の分散の組成に関する分離装置の液体−液体の分離効率を最適化するために、シミュレーションの結果に関して調整され得る。これら調整により、既存の分離装置が、不混和液の分散の組成からの、1つまたは複数の処理された液体の流れの分離及び出力を可能にしている。ここで、処理された液体の流れに含まれる、不混和液の分散の量は最小である。少なくとも1つの実施形態では、シミュレーションの出力は、やはり、一般的な作動条件に関して最適化された、新規の分離装置を設計するために使用することができる。
【0028】
示すブロック図の描写である図4に示すように、ステップ305で得られるとともに分析され、CFDモデルを生成するための入力として使用される、例示的パラメータには、以下を含むことができる。
1.流量(連続式分離装置に関する)、温度、及び圧力を含む、プロセス及び作動条件
2.密度、粘性、表面張力、及び処理用化学物質の濃度を含む、流体の特性のデータ
3.静的または動的沈降データ
4.水中油及び/または油中水の最初の分散が、分散された小滴の分布を有することになるような、最初の小滴サイズの分布
5.分離装置の幾何学形状
6.分離装置のコンピュータのメッシュ
(たとえば、ルーチン300のステップ305及びステップ310において)入力パラメータを規定するため、及び、分離装置のCFDモデルを生成するための様々なステップは、本明細書にさらに記載され、図7の例示的プロセスのフロー図に示されている。
【0029】
全体として、図7は、多相分離装置システムの設計、シミュレーション、及び制御において使用することができるプロセス700を示している。このプロセスは、計算流体力学(CFD)ソフトウェアを利用する。計算流体力学(CFD)ソフトウェアは、真の分離装置の幾何学形状及び多次元の流れの場に基づき、かつ、水中油または油中水の分散の流動学上のエマルジョンの濃縮の影響による、小滴サイズの分布に関する、分離装置の分離効率を判定するように構成されている。
【0030】
具体的には、プロセス700は、3相の重力による分離システムのモデリングのための、様々な入力及びコンピュータ上のステップを伴っており、また、本明細書に記載されるとともに図示されている様々なステップが、様々な異なる順番または組合せで実施することができるものと理解することができる。ステップ715では、重力分離装置の容器は、3次元CFDシミュレーションで示されており、分離装置のメッシュは、ステップ720において規定されている。分離装置内の気体の容量と、軽い液体の容量と、重い液体の容量との各々は、オイラーの多相モデリング方法または類似の方法を使用して示される。ステップ710では、最初の小滴サイズの分布が規定され、また、分散した液相の小滴のサイズの分布が、ステップ740において、集団バランスモデリング(PBM)によってCFDシミュレーションで示される。具体的には、この分布は、ステップ740において、集団バランス方程式を、多変数の方法を使用して解くことによってモデル化される(たとえば、同種ではない別個の方法または、モーメントの直接の定積分の方法)。
【0031】
さらに、集合のカーネルと分離のカーネルとが、核磁気共鳴、光学的顕微鏡検査、収束ビーム反射率測定法、または他の方法を使用した動的な小滴サイズの判定を含む、静的または動的沈降データに基づき、ステップ730とステップ735とにおいてそれぞれ判定される。集合のカーネル及び分離のカーネルは、ステップ740において、集団バランスモデルに対する入力として適用されて、集団内における小滴のサイズの進展を規定する。小滴サイズの進展は、小滴のサイズ及び追加の物理的特性(たとえば、ステップ745において判定される密度、粘性、表面張力)、運動量または速度、乱流のエネルギの消失量、乱流の運動エネルギ、解乳化剤または表面活性剤の濃度、ならびに、他の変数または変数の傾きの結果である場合がある。
【0032】
ステップ755では、連続相と分散相との間(すなわち、油と水の小滴との間)の相の相互作用がモデル化される。このことは、希釈から半希釈と、濃縮された状況との間における分散相の割合の濃縮と、分散相の小滴のサイズとを考慮することを含んでいる。さらに、相間の相互作用は、ステップ750において、小滴の直径の因数の関数として計算される、エマルジョンまたは分散物質の粘性を判定する関数として判定される。
【0033】
様々なパラメータ及びCFDモデルを規定するためのルーチン700の様々なステップを、以下にさらに記載する。
【0034】
静的または動的沈降データ
図7に示すように、ステップ705において、静的または動的沈降データが得られる。静的または動的沈降データには、相の割合の分布及び安定化の時間変化する鉛直方法のプロファイル、ならびに、集合のプロファイルを含むことができる。このデータは、ボトルテストまたは、分離装置の容器もしくはコンテナのテストを使用して得られた、静的または動的沈降データから得ることができる。したがって、このプロファイルは、分離装置、ボトル、またはコンテナ内の、安定化または浮上する相の、時間変化する鉛直方法の分布を判定するために、視覚的な観察、超音波測定、ガンマ線濃度測定、核磁気共鳴NMR測定、電気トモグラフィ、または他の方法から得ることができる。たとえば、いくつかの実施態様では、安定化データのプロファイルは、分離装置の設計の前に得ることができる。さらに、作動中に、そのような情報をリアルタイムで監視し、それにより、動作及び生成を最適化するように制御パラメータを調整することができる。たとえば、動作中、時間変化する鉛直方法の分布は、不揮発性記憶媒体に貯蔵された1つまたは複数のモジュールの形態のコードを実行することによって構成されるハードウェアプロセッサを有するコントローラ・コンピュータ・デバイスによって判定することができる。より具体的には、時間変化する鉛直方法の分布は、作動可能に分離装置に接続されたセンサデバイスを使用して、プロセッサによって判定することができる。代替的には、センサデバイスは、たとえば、作動圧力及び温度、または周囲の圧力、または特定の圧力において、サンプリングポートのように、分離装置の流入流れまたは流出流れに作動可能に接続され得る。センサは、液体の分散の、超音波測定、ガンマ線濃度測定、核磁気共鳴NMR測定、電気トモグラフィ測定、及び、光学的かつ視覚的測定の1つまたは複数を取るように構成されている。
【0035】
最初の小滴サイズの分布
さらに、ステップ710において、バッチ式の分離のデータ(分散相の割合の分布)から、一定の分散相の割合の輪郭線は、時間の関数として抽出される。時間に対する分散相の割合の、これら同一値のカーブが分析される。安定化する小滴の平均のサイズは、安定化プロファイルの勾配、すなわち、時間に対する中間の分散相の濃度の同一値のカーブの高さの変化の割合、または安定化速度から計算される。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、Hは、特定の時間tにわたって沈降した高さである。
【0038】
さらに、安定化速度は、中間の安定化小滴直径のサイズレンジを確立するために、以下に対して比較することができる。
【0039】
妨げられていない沈降−Stokesの法則:
【0040】
【数2】
【0041】
妨げられている沈降:
水の小滴の安定化速度は、たとえば、以下の関係から計算される(Henscke、Schlieper、及びPfennig、2002):
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、
【0044】
【数4】
【0045】
安定化速度vは、所与の小滴のSauter径d及び相の割合oに関して計算される。
【0046】
代替的には、Richardson−Zakiの相関関係を比較のために評価することもできる。
【0047】
【数5】
【0048】
ここで、nは、5から6.5の間である。
平均の小滴の直径は、エマルジョンの粘性モデルの選択において、統計的分析、または適合度を通して、集団バランスモデルの集合パラメータを合わせるために使用される。小滴サイズの分布は、集合量の実験的パラメータの、より直接的な調整及び最適化を可能にするように、沈降の間に、鉛直なインターバルにおいて測定することができる。
【0049】
分離装置に流入する小滴サイズの分布は、実験的な相関関係または実験的測定値から得られ、CFDシミュレーションに、最初の小滴の直径の分布、及び、各ビンに関する相の割合を与えるか、小滴の直径によって分けられた容量の割合に関する、小滴の見込みの分布によって規定される、見込みの分布割合を与える。
【0050】
分離装置の幾何学形状及びメッシュ
2相または3相の、水平または鉛直の分離装置に関する幾何学形状の情報は、既存の分離装置の設計の仕様、または、提案されている分離装置の設計の仕様から得ることができる。ステップ715では、そのような情報は、分離装置のCFDモデルの、2次元または3次元のCADの幾何学形状を構築するために使用される。
【0051】
さらに、ステップ720において、コンピュータのメッシュまたはグリッド(たとえば、多角形のメッシュ)が、詳細な分離装置の幾何学形状から構築される。詳細な分離装置の幾何学形状には、内部の幾何学的構成要素と、流入デバイス、穴が開けられたプレート、バッフル、渦遮断器、堰、コアレッサパック、または、気体及び液体の流れを妨げるか部分的に妨げる任意の他の物理的デバイスなどの内部装置とを含むことができる。
【0052】
図7に示すように、静的または動的沈降データにより、分散相の小滴の集合と分離とを示す、集団バランス方程式の閉じた項に関し、ステップ730とステップ735とでそれぞれ規定された集合のカーネルと分離のカーネルとに対する入力が提供される。
【0053】
分離装置のCFDモデルは、多相モデリングのアプローチで設定することができる。オイラーの多相モデリングのアプローチは、複雑な相の流動学、連続式分離装置及びバッチ式分離装置内に存在する油−水のエマルジョンの分離及び反転を記載するのに適切である場合がある。この理由は、各相が固有の速度場または運動量場を有しているためである。多数の流体のオイラーの多相のアプローチでは、相は、十分に浸透した連続体として扱われる。ここでは、相容量の割合がドメイン内の任意のセルの1つに加算される。運動量方程式と連続方程式との別々のセットは、各相に関して解くことができる。相間の結合は、圧力および運動量の交換係数を通してモデル化することができる。オイラーのモデルは、構成のモデルを通して得られた適切な閉じた式で、分散から密な状態への多相の流れから適用することができる。保存方程式は、各相に関して局所的かつ瞬間的なバランスを平均化した集合によって得られる。相jに関する連続方程式は以下のようになる。
【0054】
【数6】
【0055】
ここで、α、ρ、及び
【0056】
【数7】
【0057】
は、相の容量の割合、密度、および速度であり、
【0058】
【数8】
【0059】
は、相間で移送された質量である。相jに関する運動量のバランスは、以下のようになる。
【0060】
【数9】
【0061】
ここで、pは圧力であり、μは粘度であり、Iは単位テンソルであり、Kij(=Kji)は、平均の相間運動量の交換係数であり、以下のような一般的形態で記載することができる。
【0062】
【数10】
【0063】
fの項とτの項とはそれぞれ、ドラグの割合と、粒子の緩和時間とであり、以下のように示される。
【0064】
【数11】
【0065】
【0066】
【数12】
【0067】
ここで、dは、運動量方程式を集団バランス方程式に結合する、平均のソーター径である。
【0068】
沈降する小滴または浮上する小滴に関し、ドラグは、粘性表面のせん断及び圧力分布から生じるか、小滴周りのドラグから生じる。希釈の分散に関し、小滴は、修理の小滴と相互作用することなく、沈降または浮上することができる。粘性の状況における小さい小滴に関し、Stokesの法則により、希釈されているか、妨げられていない状況において、終端速度が判定される。球を仮定することにより、ドラグ形成の選択がより簡単になる。変形していないと仮定することも、エマルジョン流動学モデル、及び、集合に関する小滴の衝突の力学に関するベースである。油−水のバッチ及び連続式の重力による沈降に見られる密度の分散において、ドラグの関数には、好ましくは、周囲の小滴の影響が含まれている。
【0069】
周囲の小滴の影響により、沈降が妨げられる。液体−液体の分離装置に関する、沈降の妨げを扱うアプローチは、多く存在する。多数の流体の多相モデリングにおいて採用される例示的アプローチは、単一の粒子のドラグ定数の変更を通して、沈降の妨げに対処することである。ドラグ関数は、無次元のドラグ定数、相の特性、及び小滴の直径に依存している。ドラグ定数Cに関するSchiller−Naumannの相関関係は、エマルジョンの粘性μに基づき、混合物またはエマルジョンのレイノルズ数Reを使用して、高濃度の懸濁液に関して以下のように変更される。
【0070】
【数13】
【0071】
下付文字cとdとは、連続(continuous)相と分散(dispersed)相とにそれぞれ言及している。ドラグの力は、界面の相互作用のモデルのみに関する考慮事項である。鉛直方向の質量による力、横断方向の揚力、または、壁の潤滑による力を含む、他の力が加えられ得るが、原油の分離に関する、油中水の分散に関し、小滴のレイノルズ数が0.01程度と低い場合、概して重要ではない。分散流内における散乱に寄与する乱流の分散力は、重力による沈降における高濃度の相の割合と、乱流が少ないこととに起因して、考慮されていなかった。乱流の崩壊は、k及びεの方程式における乱流の相互作用またはソースタームを伴うか伴わずに、多相の流れに拡大された、標準的なk−εの乱流モデルでモデル化されている。混合物またはエマルジョンの粘性μは、分散相及び連続相の粘性、分散相の濃度、せん断の場、小滴サイズの分布、温度、及びエマルジョンの安定性に依存する。二面間の安定性は、原油の重質留分、固形物、温度、小滴サイズ及び分布、pH、塩度、及び組成を含む、多くの非流体力学的要素に依存し得る。解乳化剤の存在により、内部の小滴の循環が妨げられ、また、固体粒子の懸濁液に関して得られたエマルジョンの粘性モデルが適用可能である。
【0072】
連続相の粘性が上昇すると、衝突の頻度が減り、集合を低減するとともに、エマルジョン内の小滴数を増大させる。分散相の濃度により、小滴と、連続した流れ場との間、及び、小滴間の相互作用を増大させる。これは、原油エマルジョンの粘性におけるもっとも重要な要素である。高濃度におけるエマルジョンの粘性を予測するための方程式を得るために使用される主要な理論的アプローチの1つが、差動効果媒体理論(Bullard、Pauli、Garboczi、及びMarys、2009)である。Brinkmanは、硬い球の懸濁液に関するエマルジョンの粘性に関し、以下の方程式を得た(Brinkman、1952)。
【0073】
【数14】
【0074】
KriegerとDoughertyは、最大のパッキング値を考慮することを含めることで、Brinkmanの相関関係を拡大させた(Krieger及びDougherty、1959)。
【0075】
【数15】
【0076】
ここで、φmaxは、平衡ではない、硬い球に関しては0.64の最大パッキング値であり、多角形の閉じた、パック構造に関しては、0.74のリミットまで達する。圧力が増大するにつれて、小滴は変形し得、また、最大のパッキング値φmaxは単一の値に近付く。IshiiとZuberは、指数の粘性要素を含むことにより、Krieger−Doughertyの相関関係を拡大させた(Ishii及びZuber、1979)。
【0077】
【数16】
【0078】
以下は、球状の小滴の希釈されたエマルジョンの粘性に関するTaylorの方程式である(Taylor、1932)。
【0079】
【数17】
【0080】
Palは、変形しない小滴の密集とパッキングのリミットとを組み込んだ以下の方程式を提案した(Pal、2011)。
【0081】
【数18】
【0082】
ここで、φmax=0.64である。Millsは、フリー・セル・モデルに基づく、ニュートン型流体内の硬い球の濃縮された懸濁液の明らかなせん断の粘性に関する以下の方程式を得た(Mills、1985)。
【0083】
【数19】
【0084】
ここで、φmaxは0.64である。セ氏45度における、Arab Lightの原油のエマルジョンと、塩水(50g/LのNaCl)との相対粘度が、エマルジョンの相関関係(方程式8から方程式14)から、0から1までの水の割合のレンジにわたって、図5にプロットされている。Saudi Arabianのルーズなエマルジョンとタイトなエマルジョンが、参照のために示されている。転移点は、0.6の水の割合である。
【0085】
上述の観点から、ステップ750において、例示的システムは、局所的な小滴サイズに依存する、半希釈された状況と濃縮された状況とにおける、変形しない円形小滴を伴うエマルジョンの粘性のモデリングのための以下の関係を適用することができる(図6にプロットされている)。
【0086】
【数20】
【0087】
ここで、
【0088】
【数21】
【0089】
顕著な態様によれば、直径の因子dを追加することは、エマルジョンの粘性の計算のための既存のシステム及び方法を向上させることである。
【0090】
粒子、バブル、または小滴の集団に特有の分布は、ステップ740において、集団バランス方程式でモデル化される。集団バランス方程式は、乱流の多相運動量方程式と結合しており、便宜的に、小滴サイズの分布を示している(Rarnkrishna、2000)。一般的な集団バランス方程式は、小滴数の密度の関数の連続的表示として記載されている。
【0091】
【数22】
【0092】
粒子の空間的位置は、粒子の状態ベクトルにおける「外部の座標」であり、一方、小滴の容量Vは、集団の分布の「内部の座標」である。生成(B)の量と消失(D)の量とに起因する、分離b及び集合cに関するソースタームS(V,t)は、以下のようにさらに説明される。
【0093】
【数23】
【0094】
方程式(15)の閉じた部分は、上述の方程式(16)におけるソースタームの展開を必要としている。
【0095】
分離量のカーネルは、分離頻度g(V’)と、容量V’から容量Vに分離する小滴の確立密度関数β(V|V’)との積である。分離に起因する、容量Vの小滴の生成量は以下のようになる。
【0096】
【数24】
【0097】
ここで、容量V’のg(V’)n(V’)dV’の小滴は、単位時間あたりに分裂し、pの子小滴を生成する。割合がβ(V|V’)dVである、pg(V’)n(V’)の小滴は、容量Vの小滴を示している(ANSYS Inc.,2012)。分離のPDF β(V|V’)は、娘のサイズ分布関数とも呼ばれ、ここでは、断片、すなわち娘小滴の質量が、元々の小滴の質量と等しくなければならない。小滴の消失量は以下のようになる。
【0098】
【数25】
【0099】
分離頻度と、分離のPDFとを判定して、小滴の分離量を計算するための、いくつかの異なるモデルが存在する。集合カーネルα(V−V’,V’)は、容量Vの小滴と容量V’の小滴との間の衝突頻度h(V−V’,V’)と、集合効率λ(V−V’,V’)との積である。集合効率は、容量Vの小滴が容量V’の小滴と集合する確立である。集合に起因する、小滴の生成量は以下のようになる。
【0100】
【数26】
【0101】
集合に起因する、小滴の消失量は以下のようになる。
【0102】
【数27】
【0103】
小滴の分離カーネルと集合カーネルとは、相の分離の間の小滴サイズの分布の進展を示している。小滴の分離カーネルと集合カーネルとは、システムに依存するものであり、システムの要請に基づいて選択することができる。
【0104】
集団バランス方程式を解くいくつかのアプローチが存在する。せん断場における重力による分離においては、小滴の相の移流は、小滴サイズによって強く促される。小滴サイズ及び容量の割合の分布により、小滴の安定化速度の場が確立される。集団内の小滴すべては、同じ速度の場を共有することができない。分散相(複数可)からの連続相の分離においては、異なるサイズの小滴は、異なる速度で浮上または沈降する。小滴サイズの分布は、20倍から30倍にわたるレンジとすることができ、分布は、単一の様式か複数の様式とすることができる。いくつかの速度のクラスを組み込む多変量の方法は、小滴サイズの分布と、二次相の速度分布との間の、このタイトな結合をモデル化するために必要である。たとえば、Direct Quadrature Method of Moments(Marchisio及びFox、2005)、ならびに、Inhomogeneous Discrete Method(Frank、Zwart、Shi、Krepper、Lucas、及びRohde、2005;Sanyal、Ozarkar、及びLiu、2013)である。速度グループ及びサブのビンの数は、分散相の小滴の直径の分布を示している。分布の真の打切りには、非常に多くの速度グループが必要である。より多くの速度グループは、狭い、単一様式の分布に比べ、複数の様式または広い小滴サイズ分布に必要である。速度グループの数を増大させることにより、軸方向の水の割合のプロファイルの分解能が向上する。速度グループの数が増大すると、各速度グループの沈降量における差が少なくなる。Inhomogeneous Discrete Methodでは、通常は、7以上の速度グループが、油−水のエマルジョンに関する分離プロファイルを分解するために必要である。DQMOMは、IDM(速度グループ>6)に比べ、分離プロファイルのレンジを確保しておらず、この理由は、3つの求積ポイントのみが、過度な数値上の誤差を生じることなく、可能であるためである。最初の小滴サイズの分布は、分散した小滴の相の最初の分布を規定するために、集団バランスモデルに使用される。
【0105】
最初の小滴サイズの分布は、二次相の割合の最初の分布に関し、連続式分離装置への流入部、及び、バッチ式分離装置において、各ビンまたは求積ポイントに関する二次相の割合の最初の分布を特定するためにも使用される。
【0106】
静的/動的沈降データに伴う流体の特性のデータが、多相モデルの相間相互作用を通して実施される、エマルジョンの粘性モデルを判定するために使用される。
【0107】
すべての上述の情報及びデータは、分離装置のCFDモデルに入力される。分離装置のCFDモデルから、仮想分離装置の結果が分析され得、バッチ式分離装置または連続式分離装置の分離性能を評価することができる。
【0108】
図8は、分離装置のCFDモデルに関する分離装置の性能を分析するための、プロセスのフロー図を示している。ステップ805では、分離装置のCFDモデルを使用してシミュレーションが実施される。ステップ810では、シミュレーションの結果が生成され、分離装置内のすべての相の分布、ならびに、各相の相の速度、粘性、小滴サイズの分布、及び滞留時間の変化を判定するために評価される。シミュレーションされた流出流れにおける相の組成から、たとえば以下の方程式に従って、モデルの分離装置の分離効率を判定することができる。
【0109】
水の分離効率=(流入部における水の流量−水の流出部において出る水の流量)/流入部において入る水の流量
【0110】
CFDシミュレーションデータは、分離装置にわたる速度の分布、相の濃度、乱流、粘性、小滴の直径、及び他の変数で構成されている。このデータは、関連するディスプレイを使用して、ベクトルのプロット、輪郭のプロット、流線のプロット、ならびに/または、2次元もしくは3次元のプロファイルのプロット及び出力を使用して可視化することができる。さらに、シミュレーションデータは、コンピュータデバイスを使用してさらに分析することができる。たとえば、シミュレーションデータにより、容器全体の異なる相の流れ分布及び速度分布、ならびに、分離装置の流入領域、分離領域、または流出領域の内部の相互作用及び影響を比較することが可能になる。シミュレーションは、分離装置の特定の内部の幾何学形状によって示されるように、気相、油相、水相、及びエマルジョンの残留または滞留時間を判定するためにも使用される。シミュレーションデータは、異なる内部の構成要素の有利な性能を判定し、油と水との分離、及び、気体と液体との分離を最適化するために使用される内部の最適な構成及び設計を判定するために使用することができる。シミュレーションにより、エマルジョン帯の拡張と、油−水の分離装置の性能に対する、エマルジョン帯の厚さの影響をも示すことができる。
【0111】
1つまたは複数の実施形態では、本出願のCFDモデルは、物理的(超音波測定)の実験/観測を質的に再度生成するために示されている。このことは、図9A及び図9Bに例示されている。図9A及び図9Bは、開示の実施形態の1つまたは複数に係る、変形されたBullardモデル(図9A)、及び、超音波技術(図9B)を使用した、水の割合に関する、経時的な高さの割合を示すグラフである。より具体的には、図9Aは、図9Bに示す実験的観測に対する、CFDの解決策である。
【0112】
上述のように、本出願は、分散した不混和液の分離のためのシステムにも関する。不混和液の分散の分離のためのシステムの例示的実施形態が、ハードウェア構成要素を含んで図10に示されている。具体的には、システム1000は、プロセッサ1010を有する少なくとも1つのコントローラ・コンピュータ・デバイス1005と、1つまたは複数の分離装置1015と含んでいる。上述の方法は、全体として、または部分的に、以下にさらに詳細に記載するように、システム1000を使用して達成することができる。
【0113】
当業者には理解されるように、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005は、1つまたは複数の分離装置1015に特定の入力パラメータを提供することを含む、作業タスクの実施を促すように特別に設計された機能的ハードウェア構成要素を含むことができる。コントローラ・コンピュータ・デバイス1005は、メモリ及び/またはコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含む電子回路をも含むことができる。メモリ及び/またはコンピュータ読取り可能な記憶媒体は、構成の設定及び1つまたは複数の制御プログラムなどの、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005及び/または分離装置1015の動作に関する情報を貯蔵するように構成されている。
【0114】
より具体的には、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005は、プロセッサ1010、メモリ1020、センサ1040、通信インターフェース1050、及びコンピュータ読取り可能な記憶媒体1090を含む、システムの動作を可能にする役割を果たす様々なハードウェア及びソフトウェア構成要素を伴って構成することができる。プロセッサ1010は、メモリ1020に組み込むことができるソフトウェアの指示を実行する役割を果たす。プロセッサ1010は、特定の実施態様に応じて、複数のプロセッサ、マルチプロセッサコア、または、いくつかの他のタイプのプロセッサとすることができる。1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の分離装置1015は、様々なハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素(たとえば、プロセッサ、メモリ、通信インターフェース)を備えることもできる。
【0115】
好ましくは、メモリ1020及び/またはストレージ1090は、プロセッサ1010によってアクセス可能であり、それにより、プロセッサ1010が、メモリ1020及び/またはストレージ1090上に貯蔵されている指示を受領及び実行することを可能にしている。メモリ1020は、たとえば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、または、任意の他の適切な揮発性もしくは不揮発性のコンピュータ読取り可能な記憶媒体とすることができる。さらに、メモリ1020は、固定されているか、取外し可能とすることができる。ストレージ1090は、特定の実施態様に応じて、様々な形態を取ることができる。たとえば、ストレージ1090は、ハードドライブ、フラッシュメモリ、書換え可能な光学ディスク、書換え可能な磁気テープ、または、これらのいくつかの組合せなどの、1つまたは複数の構成要素またはデバイスを含むことができる。ストレージ1090は、固定されているか取外し可能であるか、クラウドベースのデータ貯蔵システムなどの遠位のものとすることができる。
【0116】
1つまたは複数のソフトウェアモジュール1030は、ストレージ1090及び/またはメモリ1020内でエンコードすることができる。ソフトウェアモジュール1030は、プロセッサ1010内で実行されるコンピュータプログラムコードまたは指示のセットを有する、1つまたは複数のソフトウェアプログラムまたはアプリケーションを備えることができる。動作を実施し、本明細書に開示のシステム及び方法の態様を実施するためのそのようなコンピュータプログラムコードまたは指示は、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで記載することができる。プログラムコードは、全体としてコントローラ・コンピュータ・デバイス1005上で、スタンドアロンなソフトウェアパッケージとして、部分的にコントローラ・コンピュータ・デバイス1005上かつ部分的に遠位のコンピュータ/デバイスまたは全体としてそのような遠位のコンピュータ/デバイス上で実行することができる。全体としてそのような遠位のコンピュータ/デバイス上で実行するシナリオでは、遠位のコンピュータシステムは、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005に、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)またはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを通して接続することができるか、接続を、外部のコンピュータを通して(たとえば、インターネットサービスのプロバイダを使用するインターネットを通して)形成することができる。
【0117】
好ましくは、ソフトウェアモジュール1030に含まれているのは、データベースモジュール1070、入力パラメータモジュール1072、CFDモデル生成モジュール1074、調整モジュール1076、及びシミュレーションモジュール1078であり、プロセッサ1010によって実行される。ソフトウェアモジュール1030の実行の間、プロセッサ1010は、以下にさらに詳細に記載するように、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005の構成に関する様々な動作を実施するように構成されている。さらに、たとえば、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005の構成に使用される様々な制御プログラム1060などの、本システム及び方法の動作に関する他の情報及び/またはデータを、ストレージ1090上に貯蔵することもできることに留意されたい。
【0118】
データベース1080も、ストレージ1090に貯蔵することができる。データベース1080は、システム1000の様々な動作を通して利用される様々なデータのアイテム及び要素を包含及び/または維持することができる。好ましくは、データベース1080に貯蔵された情報のいくつかまたはすべては、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005が、任意の所与のアプリケーションを実施するプログラムの必要に応じて動作を実行することを可能にする形態であるか、この形態に変換され得る、作動可能なデータとすることができる。データベース1080は、プロセッサ1010によって実行される場合に、プロセッサに、分離装置1015の1つと通信させるように構成された、デバイス特有のアプリケーションをも含むことができる。同様に、データベースは、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005及び/または分離装置(複数可)1015に特有の、他の作動パラメータを貯蔵することができる。
【0119】
データベース1080が、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005のストレージに対して局所的に構成されるものとして示されているが、特定の実施態様では、データベース1080及び/または、このデータベース1080に記録された様々なデータ要素は、遠位(図示されていない遠位のサーバ上など)に配置することができ、また、当業者に既知の方式で、ネットワークを通してコントローラ・コンピュータ・デバイス1005に接続することができることに留意されたい。
【0120】
通信インターフェース1050は、プロセッサ1010にも操作可能に接続されており、また、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005と、分離装置(複数可)1015などの外部のデバイス、マシン、及び/または要素との間の通信を可能にする任意のインターフェースとすることができる。好ましくは、通信インターフェース1050は、限定ではないが、モデム、ネットワーク・インターフェース・カード(NIC)、集積ネットワークインターフェース、無線周波数送信機/受信機(たとえば、Bluetooth、セルラ、NFC)、衛星通信送信機/受信機、赤外線ポート、USB接続、ならびに/または、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005を他のコンピュータデバイス及び/もしくは、プライベートネットワーク及びインターネットなどの通信ネットワークに接続するための、任意の他のそのようなインターフェースを含んでいる。そのような接続には、有線接続または無線接続(たとえば、IEEE 802.11の規格を使用する)を含むことができるが、通信インターフェース1050は、実質的に、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005との通信を可能にする任意のインターフェースとすることができることを理解されたい。
【0121】
上述のように、本出願の方法は、システム1000、特に、コントローラ・コンピュータ・デバイス1005を使用して、全体として、または部分的に達成することができる。
【0122】
具体的には、再び図7を参照すると、ステップ705からステップ710において、入力パラメータモジュール1072を含む1つまたは複数のソフトウェアモジュール1030を実行することによって構成されているプロセッサ1010は、分離装置1015に関する、動作の入力パラメータを受信及び分析する。1つまたは複数の実施形態では、動作の入力パラメータには、不混和液の分散に関する流体の特性のデータ(たとえば、密度、粘度、及び表面張力)、不混和液の分散に関する、静的または動的沈降データ、ならびに、分子装置内の1つまたは複数の内部の幾何学的構成要素を含む、分離装置の内部容量の幾何学形状を含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、プロセッサ1010は、ユーザの入力を介して、動作の入力パラメータの1つまたは複数を受信することができるか、代替的には、プロセッサ1010は、(たとえば、データベースモジュール1070を実行することにより)データベース1080から動作の入力パラメータの1つまたは複数を引き出すように構成することができる。少なくとも1つの実施形態では、プロセッサ1010は、動作の入力パラメータの1つまたは複数を、(たとえば、ネットワークを越えて)分離装置1015のプロセッサから受信することができる。ここで、入力パラメータ(たとえば、流体の特性のデータ)は、分離装置1015内の不混和液の分散のリアルタイムの監視を介して判定される。たとえば、複数の液体、及び、複数の相の不混和液の分散(たとえば、気相、油相、及び水相を有する)が、分離装置1015に提供され得、この分離装置1015のプロセッサは、不混和液の分散の流体の特性を分析し、結果として得られるデータをコンピュータデバイス1005に(たとえば、ネットワークを越えて)送信するように構成することができる。分離装置1015のプロセッサは、内部の幾何学的構成要素の1つまたは複数を含む、分離装置の幾何学形状に関するデータをコンピュータデバイス1005に送信することもできる。入力パラメータモジュール1072を含むソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行するプロセッサ1010は、このため、受信された、動作に関する入力パラメータを分析することができる。
【0123】
ステップ710からステップ755において、データベースモジュール1070、入力パラメータモジュール1072、及びCFDモデル生成モジュール1074のモジュールを含むソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行することによって構成されたプロセッサ1010は、入力パラメータに基づき、不混和液の分散を含む分離装置の計算流体力学(CFD)モデルを生成する。たとえば、1つまたは複数の実施形態では、CFDモデルを生成するステップには、幾何学形的入力パラメータに基づき、分離装置の内部容量及び分離装置内のその内部構成要素の3次元幾何学モデルを規定すること(ステップ715)と、3次元モデルに基づき、分離装置の内部容量に関するコンピュータによるメッシュを規定すること(ステップ720)と、不混和液の分散の最初の小滴サイズの分布を判定すること(ステップ710)と、(たとえば、オイラーの多相モデルを使用して、)分離装置の内部容量内の連続した気相、重い液相、及び軽い液相の各々に関する容量を示すことと、分散された液相の容量に関し、集団バランスモデリングで小滴サイズの分布を示すことであって、それにより、分布が、多変数の方法に従って集団バランス方程式を解くことによってモデル化される、示すこと(ステップ740)と、集合カーネル及び分離カーネルを適用して、小滴サイズ及び流体の特性のデータの関数として、集団内における小滴サイズの進展をモデル化すること(ステップ730、735、745)と、が含まれている。最後に、CFDモデルを生成するステップは、連続した液相の各々と、分散された液相との間の相の相互作用をモデル化することであって、相の相互作用のモデルが、分散された液相の容量内における希釈状況と、半希釈状況と、濃縮された状況との間の分散相の割合の濃縮の関数であるとともに、分散相の小滴の直径及び分散の粘度の関数である、モデル化すること(ステップ750及び755)で完結する。
【0124】
ここで図8を参照すると、ステップ805において、シミュレーションモジュール1078を含む、ソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行することによって構成されたプロセッサ1010は、生成されたCFDモデルを使用して1つまたは複数のシミュレーションを実施する。ステップ810では、シミュレーションモジュール1078を含む、ソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行することによって構成されたプロセッサ1010は、シミュレーションの結果が生成されるとともに評価されて、分離装置のすべての相の分布、ならびに、各相の相の速度、粘性、小滴サイズの分布、及び滞留時間の変化を判定する。シミュレーションされた流出流れにおける相の組成から、モデルの分離装置の分離効率を判定することができる。
【0125】
1つまたは複数の実施形態では、CFDモデルのシミュレーション結果に基づき、調整モジュール1076を含む、ソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行し、プロセッサ1010は、液体−液体の分離効率を最大化するために、分離装置1015の、動作に関する入力パラメータの1つまたは複数を調整することができる。たとえば、調整モジュール1076及び入力パラメータモジュール1072を含むソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行し、プロセッサ1010は、信号を分離装置1015に(たとえば、ネットワークを越えて通信インターフェース1050を介して)送信することができる(たとえば、受信機において、分離装置によって受信される)。これにより、分離装置1015に、分離装置1015に関する動作の入力パラメータの1つまたは複数を調整させる。シミュレーションの結果の評価に基づく、分離装置1015の動作の入力パラメータの1つまたは複数のこの調整により、分離装置に提供される特定の不混和液の分散に関し、分離装置1015の液体−液体の分離効率を最大化することができる(同じ不混和液の分散が、CFDモデルに含まれる)。
【0126】
最後に、1つまたは複数の実施形態では、ソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行するプロセッサ1010は、分離装置1015に、分離装置の提供された特定の不混和液の分散に関する、調整された入力パラメータを使用して実行させることができる。このことは、不混和液の分散から分離された、処理された液体の1つまたは複数の流れを流出させることと、最小の量の不混和液の分散を含む(すなわち、液体−液体の分離効率が最大化された)こととに繋がる。たとえば、ソフトウェアモジュール1030の1つまたは複数を実行するプロセッサ1010は、信号を分離装置1015に(たとえば、ネットワークを越えて通信インターフェース1050を介して)送信することができる。これにより、分離装置1015に、調整された入力パラメータを使用して実行させる。代替的実施形態では、分離装置1015は、自動的に、入力パラメータを調整するための信号を受信すると実行するように構成することができる。1つまたは複数の実施形態では、入力パラメータは、分離装置が特定の不混和液の分散に関して作動し始める前、作動の間、及び/または作動後に調整することができる。
【0127】
前述の観点から、前述の例示的実施形態が、液体−液体の分離効率を予測するためのアルゴリズムを含む、2相の分離装置または3相の分離装置のCFDシミュレーションに関する方法を提供したことを理解することができる。具体的には、提案されたシステム及び方法は、エマルジョンの粘性の評価に基づき、多相の分離装置をモデル化し、また、バッチ式及び連続式の液体−液体の分離装置の、多流体、多相のCFDシミュレーションに関する相間のドラグを通してのエマルジョンの粘性の形成を実施するように構成されている。さらに、開示の実施形態は、バッチ式の重力による分離のモデリングの、結合された計算流体力学−集団バランス方法(CFD−PBM)のシミュレーションに関する、速度グループの最小数を識別するように構成されている。そのようなモデリングは、提案されている分離装置のシステムの設計を分析するためのソフトウェアシステムを提供するように適合させることができる。同様に、例示的なモデリングの方法は、動作及び効率を向上させるための動的制御の目的のために、動作中に、リアルタイムで、既存の分離装置のシステムの動作を動的に監視し、制御するために、制御システム内に配置することができる。たとえば、1つまたは複数の実施形態では、分離装置の、動作に関する1つまたは複数の入力パラメータは、分離装置の液体−液体の分離効率を最適化するために、CFDシミュレーションの結果に基づき、分離装置のリアルタイムの動作の前、動作の間、及び/または動作の後に、調整することができる。入力パラメータの調整により、分離装置が、不混和液の分散から、1つまたは複数の処理された流れ(たとえば、水の液体の流れ、油の液体の流れ)を分離及び出力することが可能になる。ここで、処理された流体の流れの中では、不混和液の分散(たとえば、油中水、水中油、水中油中水、または油中水中油のエマルジョン)の量は最小になっている。
【0128】
さらに、分離装置のレベル及び圧力の動的制御は、CFDシミュレーションに基づき、代替物か、次元が縮小されたモデルをベースに調整される。やはり、各シナリオが、気体、油、及び水の流出流れの制御バルブの調整を通して、液体/油のレベルと、油−水の界面レベルとの最適な配置のために、CFDシミュレーションをベースに構築され得る。さらに、多孔性バッフルまたは流入流れの調整器などの、内部のデバイスの動的調整は、様々な動作条件に関し、CFDシミュレーションのデータに基づいて行うことができる。
【0129】
1つまたは複数の実施形態では、CFDシミュレーションのデータは、データベースに記録することができる。このデータは、分離効率の変動制を低減させる(たとえば、界面レベルを上昇させて、水中油の分離に関する滞留時間を増大させるか、エマルジョン帯の厚さが増大したことを示すCFDシミュレーションデータに起因して、解乳化剤の化学物質の注入を調整する)ように、気体、油、水の流量及び温度の、現在の、及び予測される動作条件に基づき、動作条件(液体レベル及び界面レベル、解乳化剤の注入量)の選択を自動化するように、検索、問合せ、及び分析され得る。
【0130】
上述の主題は、もっぱら説明のために提供されたものであり、限定的として解釈されるものではない。本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的として使用されるものであり、本発明を限定することは意図されていない。本明細書に使用される場合、単数の形態「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別様に明確に示していない限り、複数の形態も含むことが意図されている。「comprises」及び/または「comprising」との用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を除外しないことを、さらに理解されたい。
【0131】
やはり、本明細書に使用されるフレーズ及び言い回しは、記載の目的のためのものであり、限定的とは見なされないものとする。本明細書における、「including」、「comprising」、または「having」、「containing」、「involving」、及びこれらの変形の使用は、その後に列挙されたアイテム及びそれらの均等物、ならびに、追加のアイテムを包含することを意味するものである。
【0132】
本発明が、いくつかの特定の実施例及び実施形態を使用して上述されてきたが、当業者には明らかとなる変形形態及び変更形態が存在する。それとして、記載の実施形態は、あらゆる点で、例示的であり、限定的ではないものと解釈されるものとする。したがって、本発明の範囲は、上述の記載よりむしろ、添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内となる変更のすべては、特許請求の範囲の範囲内に包含されるものとする。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10