(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制止部(16a)が、前記ドア内面(1a)に垂直な方向に直線移動可能でありかつ前記スライド部材(11)の先端面(11d)に隣接する位置に弾性的に付勢されており、かつ、
前記制止解除部(16b)が前記壁板(2)の内面(2a)により押されることによって、前記制止部(16a)が弾性力に抗して直線移動させられることを特徴とする請求項1に記載のドア施錠装置。
前記スライド部材(11)が、前記ドア内面(1a)上又は前記ドア(1)の内部でスライド可能なスライド部(11c)と、前記スライド部(11c)から前記ドア内面(1a)に対し垂直に延在する操作部(11a)とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドア施錠装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドアを閉じて施錠する際に手指を使わないためには、手指以外の身体部位、例えば肘、膝、足などを用いてドアを閉じて施錠できることが好ましい。ドアを閉じることは、肘などを用いて比較的容易に行うことができるが、従来のかんぬき式の施錠装置は、手指での操作を前提とした小型のものであるので、肘などで操作することは困難である。
【0007】
また、かんぬき式の施錠装置は、ドアが開いている間にうっかりスライドボルトをスライドさせてしまうとドアを閉じることができなくなり、ドアを閉めるためにスライドボルトを一旦解除位置に戻さなければならない。手指以外の身体部位は、手指ほど器用に動かせないためにこのような誤操作を生じ易い。したがって、手指以外の身体部位を用いて施錠装置を操作する場合には、誰が操作を行っても誤操作することなく施錠可能、又は、誤操作したとしても施錠可能であることが要望される。
【0008】
以上の現状に鑑み、本発明は、内開きドアを内側から施錠するための施錠装置であって、手指以外の身体部位を用いても誤操作することなく施錠可能、又は、誤操作したとしても施錠可能なドア施錠装置及びそのようなドア施錠装置を取り付けたドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0010】
− 本発明の一態様は、内開きのドア(1)を内側から施錠するためのドア施錠装置(10)において、
ドア内面(1a)上でスライド可能なスライド部材(11)と、
閉じた前記ドア(1)の戸先側に並立する壁板(2)の内面(2a)上に配置され前記スライド部材(11)を保持可能な受け部材(14)と、
前記スライド部材(11)の戸先側へのスライドを制止するための制止部(13a,15a,16a)と、前記制止部(13a,15a,16a)による制止を解除するために前記制止部(13a,15a,16a)に連結された制止解除部(13b,15b,16b)とを具備するスライド制御部(13,15,16)と、を有し、
前記ドア(1)が開いているときは前記制止部(13a,15a,16a)が前記スライド部材(11)の戸先側に向いた先端面(11d)に隣接しており、
前記ドア(1)が閉じるとき、前記制止解除部(13b,15b,16b)が前記壁板(2)の内面(2a)により押されることによって、前記制止部(13a)が前記スライド部材(11)の先端面(11d)から移動させられることを特徴とする。
− 上記態様において、前記制止部(13a)が、前記スライド部材(11)の先端面(11d)に隣接する位置に弾性的に付勢されており、かつ、
前記制止解除部(13b)が前記壁板(2)の内面(2a)により押されることによって、前記制止部(13a)が弾性力に抗して移動させられることが、好適である。
− 上記態様において、前記制止部(15a)が、前記ドア内面(1a)上に水平方向に配置された回動軸(15d)から鉛直下方に吊下されており、かつ、
前記制止解除部(15b)が前記壁板(2)の内面(2a)により押されることによって、前記制止部(15a)が前記回動軸(15d)の周りで回動させられることが、好適である。
− 上記態様において、前記制止部(16a)が、前記ドア内面(1a)に垂直な方向に直線移動可能でありかつ前記スライド部材(11)の先端面(11d)に隣接する位置に弾性的に付勢されており、かつ、
前記制止解除部(16b)が前記壁板(2)の内面(2a)により押されることによって、前記制止部(16a)が弾性力に抗して直線移動させられることが、好適である。
【0013】
上記いずれかの態様において、前記スライド部材(11)が、前記ドア内面(1a)上又は前記ドア(1)の内部でスライド可能なスライド部(11c)と、前記スライド部(11c)から前記ドア内面(1a)に対し垂直に延在する操作部(11a)とを有することが、好適である。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、上記いずれかの態様のドア施錠装置を取り付けたドアである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内開きドアを内側から施錠するためのドア施錠装置であって、手指以外の身体部位を用いても、誤操作することなく施錠可能であり、又は、誤操作したとしても施錠可能である。この結果、使用者は、手指以外の身体部位、例えば肘、腕、肩、腰、膝、足などを用いて操作板を操作することが可能である。したがって、体格、体調、癖などが様々である多数の使用者の誰にとっても、手指を用いずに施錠する操作が容易となる。この結果、本発明のドア施錠装置は、手指を介した感染の防止に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。図面において、各実施形態における同じ又は類似する構成要素には、基本的に同じ符号を付している。また、別の実施形態において既に説明した同じ又は類似する構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0018】
本発明のドア施錠装置を適用されるドアは、1枚の板状の本体を有し、鉛直回転軸の周りで回動する片開きドアである。本発明のドア施錠装置は、特に室内側に開く内開きのドアを内側から施錠するためのものである。例えば、トイレブースやシャワーブースなどの個室のドア施錠装置として好適である。ドアの幅方向に関して、回転軸の方を「戸尻側」と称し、回転軸とは反対側の方を「戸先側」と称することとする。また、本体において、室外側に向いた面を「ドア外面」と称し、室内側に向いた面を「ドア内面」と称する。
【0019】
(1)第1の実施形態
図1〜
図3を参照して、本発明のドア施錠装置10の第1の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態のドア施錠装置10を取り付けた内開きのドア1が完全に開いている状態を概略的に示した斜視図である。ここでは、ドア1におけるドア内面1a、戸先側面1c、及び上面が見えている。ドア1は、回転軸1dの周りで例えば約90°回転することができる。図示しないが、施錠されていないドア1が、
図1に示す開位置を維持するためのヒンジ構造が設けられていることが好ましい。そのようなヒンジ構造は周知であり、ドア施錠装置10が解錠されたときやドア1を中間位置で解放したとき、ドア1は自動的に図示の位置まで戻ることができる。
【0020】
ドア施錠装置10は、ドア1に配置された部材と、壁板2に配置された部材とから構成されている。壁板2は、ドア1が完全に閉じたときにドア1の戸先側の隣りに並立する壁状部材である。ドア1と壁板2は、一般的には同じ厚さを有する。ドア1と壁板2の各々の高さは異なっていてもよく、各々の上端及び/又は下端の位置が異なっていてもよい。ドア1が完全に閉じた閉位置において、ドア内面1aと壁板2の内面2aとは面一となり、ドア1の戸先側面1cと壁板2の側面2cとは所定の間隙を空けて対向する。
【0021】
ドア施錠装置10は、ドア1に配置された部材として、かんぬき錠のスライドボルトに相当するスライド部材11と、スライド部材11を支持しかつスライド移動をガイドするガイド部材12と、スライド部材11のスライド移動を制御するスライド制御部13とを有する。壁板2に配置された部材として、スライド部材11の先端部を保持するための受け部材14を有する。
【0022】
図示の例では、ドア施錠装置10が、ドア1の下半部すなわち床の近傍に配置されている。これは、膝又は足によるスライド部材11の操作を想定しているためである。このために、スライド部材11は、一般的なスライドボルト(例えば直径1cm程度、長さ10cm程度の円柱体など)に比べて大きいサイズで設計されることが好ましい。なお、ドア施錠装置10は、別の高さ位置(例えば通常のハンドルの高さ位置又はドアの上半部など)に配置することもできる(他の実施形態においても同様)。
【0023】
図2は、
図1に示したドア1の閉じる直前におけるドア施錠装置10の部分を拡大した概略斜視図である。
【0024】
スライド部材11は、ドア内面1a上(ドア内面1aとの間に僅かな隙間がある場合も含む)で水平方向にスライド可能なスライド部11cと、スライド部11cの戸尻側端部からドア内面1aに対し垂直に所定の長さで延在する操作部11aとを有する。図示の例では、操作部11aの延在方向に垂直な断面形状は縦長の長方形であり、操作部11aは、戸尻側及び戸先側にそれぞれ向いた広い鉛直面を有する。好ましくは図示の例のように、操作部11aの先端部が次第に幅広となってドア内面1aに対し略平行に延在する平板状に拡張されている。操作部11aの広い鉛直面及び先端部の形状によって、使用者が操作し易くなる。操作部11aの戸尻側の広い鉛直面を押すことにより、スライド部材11をスライドさせることができる。また、使用者がドア1を開くときに操作部11aの先端部に肘や足等を引っ掛けて引くことができ、また先端部に向かって鉛直面が次第に傾斜しているので引っ掛けた肘や足等を操作部11aからスムーズに離すことができる。使用者は、操作部11aの使用しやすい箇所に対して操作を行えばよい。
【0025】
操作部11aの形状は、その先端部の形状も含め、図示の例に限られない。一例として、操作部11aにおけるドア内面1aから突出する長さは10〜20cm程度、鉛直方向の長さは5〜20cm程度であることが好ましい。操作部11aの拡張された先端部の大きさは、例えば、平面視にてドア内面1aに平行な方向及びそれに垂直な方向における長さが5〜20cm程度であることが好ましい。この好ましい寸法は、一般的なかんぬき式の錠に比べて遙かに大きい。操作部11aをこのような大きさとすることで、操作部11aを手指以外の身体部位、例えば肘、膝、足などを用いて操作することが容易となる。しかしながら、操作部11aの大きさはこの範囲に限定されるものではなく、この範囲より小さく又は大きくしてもよい。
【0026】
スライド部材11のスライド部11cも、操作部11aを安定に支持できかつ安定にスライド可能な程度の大きさ及び形状で設計されている。図示の例では、スライド部11cの延在方向に垂直な断面形状は、縦長の長方形である。
【0027】
ガイド部材12は、適宜の取付手段(図示せず)によりドア内面1a上に固定されている。ガイド部材12は、ドア内面1aに垂直な鉛直断面において略コ字状であり、スライド部材11のスライド部11cが嵌合方式で貫通するガイド孔12aが形成されている。ドア1が開いているとき、ガイド部材12を貫通したスライド部材11の先端面11dは、ドア1の戸先側面1cと面一であるか、又は戸先側面1から若干後退した位置にある。この先端面11dの位置は、スライド制御部13により規定されている。ここで、「ドア1が開いているとき」とは、ドア1が完全に閉じた閉位置以外の状態をいう。
【0028】
スライド制御部13は、ドア1が開いているときにスライド部材11の先端面11dの戸先側への移動限界位置を規定する制止部13aを有する。制止部13aは、ドア1が開いているときはスライド部材11の先端面11dに隣接する位置にあり、スライド部材11の戸先側へのスライドを制止している。この例では、制止部13aは、平板状であり、スライド部材11の先端面11dの鉛直長さと少なくとも同じ鉛直長さを有する。
【0029】
制止部13aの上端と下端は、平板状の上側の支持部13dと下側の支持部13eにそれぞれ連結され支持されている。支持部13d、13eはそれぞれスライド部材11の上面と下面に沿って延在し、支持部13d、13eのもう一方の端部は、ガイド部材12の戸先側の側面12b上に配置された鉛直方向の回動軸13f、13gにそれぞれ連結されている。よって、制止部13aは、支持部13d、13eと共に回動軸13f、13gの周りで回動可能である。回動軸13f、13gには捻りバネが設けられている。捻りバネの一方の脚は支持部13d、13eをドア内面1aの方に押圧しており、捻りバネの他方の脚はガイド部材12の側面12bを押圧している。したがって、捻りバネの弾性力によって、制止部13aは、スライド部材11の先端面11dに隣接する位置に弾性的に付勢されている。
【0030】
スライド制御部13はさらに、制止部13aによる制止を解除する制止解除部13b、13cを有する。図示の例では、平板状の制止解除部13b、13cが、制止部13aの上端と下端にそれぞれ連結されている。制止解除部13b、13cは、それぞれドア内面1aに向かって延在し、ドア内面1aの縁を超えて戸先側面1cに隣り合う位置まで延びている。好ましくは、制止解除部13b、13cの先端に、戸先側面1cとは反対側に屈曲した屈曲部が設けられている。戸先側から視た場合、上側の制止解除部13bと下側の制止解除部13cとの間に形成された開口部は、スライド部材11が通過可能な大きさを有している。
【0031】
さらに、壁板2の内面2a上には、適宜の取付手段(図示せず)により受け部材14が配置されている。受け部材14は、ここでは、内面2aに平行な水平方向から視て略コ字状であり、スライド部材11のスライド部11cが貫通可能な貫通孔14aが形成されている。ドア1が完全に閉じられ、スライド部材11がスライドして受け部材14を貫通すると、ドア1が施錠される。
【0032】
図3(a)は、
図2のラインI−Iに沿った概略的な断面図であり、(b)(c)は、同じ断面におけるドアを閉じて施錠するときの(a)に続く動作を概略的に示している。
【0033】
図3(a)は、ドア1が閉じるとき、特に閉じる直前の状態を示している(黒矢印参照)。例えば、
図1に示したドア1が完全に開いた状態で室内に入った使用者が、ドア1をこの位置まで動かす。衛生上、手指を用いずに肘や足などを用いてドア1を閉じることが好ましい。この時点では、スライド部材11は、スライド制御部13の制止部13aが先端面11dに隣接しているので、それ以上戸先側にスライドすることを制止されている。したがって、手指のように器用な操作が難しい肘や足などを用いてドア1を閉じるとき、誤ってスライド部材11をスライドさせてしまう誤操作を回避できる(類似する他の実施形態でも同様)。仮にスライド制御部13が無い場合、誤ってスライド部材11をスライドさせてしまうと、ドア1を閉じることができず、スライド部材11を初期位置に戻す操作が必要となる。
【0034】
図3(b)は、ドア1が完全に閉じた状態を示す。ドア1が閉じるときにスライド制御部13の制止解除部13bの先端が壁板2の内面2aに当たると、制止解除部13bは壁板2の内面2aにより押されることによって回動軸13fの周りで捻りバネの弾性力に抗して回動する(黒矢印参照、下側の制止解除部13c及び回動軸13eの動作も同様)。制止解除部13bは制止部13aと一体であるから、制止部13aも回動する。ドア1が完全に閉じたとき、制止部13aはスライド部材11の先端面11dから移動させられる。すなわち、制止部13aがスライド部材11の先端面11dから離脱することによって、スライド部材11の先端面11dの前方から障害物が除かれる。この結果、スライド部材11が戸先側にスライド可能となる。
【0035】
図3(c)に示すように、ドア1が完全に閉じた後、スライド部材11の操作部11aを操作してスライド部材11を戸先側にスライドさせる(黒矢印参照)。その結果、スライド部材11の先端部が、壁板2の受け部材14を貫通し、施錠される。ここでは、ガイド部材12が、スライド部材11のストッパとしての役割も果たしている。
【0036】
解錠するときは、逆の手順を実行する。すなわち、スライド部材11を戸尻側にスライドさせることによって
図3(b)の状態に戻す。図示しないが、スライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定する適宜のストッパが設けられている。ドア1が、開位置に自動的に戻るヒンジ構造を有する場合、使用者が何処にも触れずともドア1は開位置に戻り、同時にスライド制御部13も、捻りバネの復元力によって
図3(a)の初期位置に戻る。なお、ドア1が開位置に自動的に戻らない場合は、使用者が、例えば足を操作部11aの先端部に引っ掛けて手前に引き、ドア1が半分程度開いた時点で、足を操作部11aから離す。このとき、操作部11aの先端部におけるドア内面1aに対向する側が滑らかな傾斜面となっているので、足を操作部11aから抜きやすい。
【0037】
(2)第2の実施形態
図4及び
図5を参照して、本発明のドア施錠装置10の第2の実施形態を説明する。
図4は、
図2と同様の図であり、第2の実施形態のドア施錠装置10を取り付けた内開きのドア1が若干開いている状態、ここでは閉じる直前の状態を、部分的に示した概略斜視図である。
【0038】
ドア施錠装置10は、ドア1に配置された部材として、第1の実施形態と同様のスライド部材11及びガイド部材12を有する。第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なる形態のスライド制御部15を有する。壁板2に配置された部材は、第1の実施形態と同様の受け部材14である。
【0039】
スライド制御部15は、ドア1が開いているときにスライド部材11の先端面11dの戸先側への移動限界位置を規定する制止部15aを有する。制止部15aは、ドア1が開いているときはスライド部材11の先端面11dに隣接する位置にあり、スライド部材11の戸先側へのスライドを制止している。この例では、制止部15aは、略台形の輪郭を有する平板状であり、スライド部材11の先端面11dの上端近傍部分に隣接している。
【0040】
制止部15aの上端部は、鉛直上方に延在する平板状の支持部15cに連結されている。支持部15cの上端は、ドア内面1a上に水平方向に配置された回動軸15dに取り付けられている。したがって、制止部15aは、回動軸15dから鉛直下方に吊下されており、回動軸15dの周りで回動可能である。
【0041】
スライド制御部15はさらに、制止部15aの上端に連結された平板状の制止解除部15bを有する。制止解除部15bは、ドア内面1aの縁を超えて戸先側面1cに沿ってほぼ水平方向に所定の位置まで延びている。好ましくは、制止解除部15bの先端に、戸先側面1cとは反対側に屈曲した屈曲部が設けられている。
【0042】
図5(a)は、
図4における矢印IIの方向の概略的な矢視図、すなわち戸先側から視たドア1の側面図であり、(b)は(a)と同じ方向の図であるが、ドア1が閉じて壁板2と重なった状態を示し、説明の便宜上、ドア1と重なる壁板2を断面で示している。
【0043】
図5(a)は、
図4に示した閉じる直前の未だ開いているドア1の状態を示している。この時点では、スライド部材11は、スライド制御部15の制止部15aが先端面11dに隣接しているので、戸先側にそれ以上スライドすることを制止されている。
【0044】
図5(b)ではドア1が完全に閉じられている。ドア1が閉じるとき、スライド制御部15の制止解除部15bの先端が壁板2の内面2aに当たると、制止解除部15bが壁板2の内面2aにより押されることによって、スライド制御部15は回動軸15dの周りでドア内面1aから離れる向きに回動する(黒矢印参照)。制止解除部15bは制止部15aと一体であるから、制止部15aも回動する。ドア1が完全に閉じたとき、制止部15aはスライド部材11の先端面11dから移動させられる。すなわち制止部15aがスライド部材11の先端面11dから離脱することによって、スライド部材11の先端面11dの前方から障害物が除かれる。この結果、スライド部材11が戸先側にスライド可能となる。
【0045】
図示しないが、ドア1が完全に閉じた後、スライド部材11の操作部11aを操作してスライド部材11を戸先側にスライドさせ、壁板2の受け部材14を貫通させて施錠することができる。
【0046】
解錠するときは、逆の手順を実行する。すなわち、スライド部材11を戸尻側にスライドさせることによって
図5(b)の状態に戻す。図示しないが、スライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定する適宜のストッパが設けられている。その後、ドア1が開位置に戻ると、スライド制御部15も、鉛直に吊下された
図5(a)の初期位置に戻る。
【0047】
(3)第3の実施形態
図6及び
図7を参照して、本発明のドア施錠装置10の第3の実施形態を説明する。
図6は、
図2と同様の図であり、第3の実施形態のドア施錠装置10を取り付けた内開きのドア1が若干開いている状態、ここでは閉じる直前の状態を、部分的に示した概略斜視図である。
【0048】
ドア施錠装置10は、ドア1に配置された部材として、第1の実施形態と同様のスライド部材11及びガイド部材12を有する。第3の実施形態では、第1の実施形態とは異なる形態のスライド制御部16を有する。壁板2に配置された部材は、第1の実施形態と同様の受け部材14である。
【0049】
スライド制御部16は、ドア1が開いているときにスライド部材11の先端面11dの戸先側への移動限界位置を規定する制止部16aを有する。制止部16aは、ドア1が開いているときはスライド部材11の先端面11dに隣接する位置にあり、スライド部材11の戸先側へのスライドを制止している。この例では、制止部16aは、平板状であり、スライド部材11の先端面11dの全体を覆っている。
【0050】
制止部16aの上端と下端は、上側の支持部16dと下側の支持部16eにそれぞれ連結され支持されている。支持部16d、16eは、ガイド部材12の戸先側の上壁と下壁にそれぞれ形成されたレール(図示せず)に沿ってドア内面1aに垂直な方向に直線移動可能である。したがって、制止部16aは、ドア内面1aに垂直な方向に直線移動可能である。
【0051】
さらに、ガイド部材12の上壁と下壁の戸先側には、コイルバネ16f、16gが、ドア内面1aに垂直な方向にそれぞれ内設されている。コイルバネ16f、16gの各々の一端はガイド部材12により支持され、各々の他端はスライド制御部16の支持部16d、16eにそれぞれ当接している。これにより、スライド制御部16は、コイルバネ16f、16gの弾性力によってドア内面1aの方に押圧されている。すなわち、制止部16aは、スライド部材11の先端面11dに隣接する位置に弾性的に付勢されている。
【0052】
スライド制御部16はさらに、制止部16aの上端と下端にそれぞれ連結された平板状の制止解除部16b、16cを有する。制止解除部16b、16cは、それぞれドア内面1aの縁を超えて戸先側面1cに沿って所定の位置まで延びている。好ましくは、制止解除部16b、16cの先端に、戸先側面1cとは反対側に屈曲した屈曲部が設けられている。戸先側から視た場合、上側の制止解除部16bと下側の制止解除部16cとの間に形成された開口部は、スライド部材11が通過可能な大きさを有している。
【0053】
図7(a)は、
図6のラインIII−IIIに沿った概略的な断面図であり、(b)(c)は、同じ断面におけるドアを閉じて施錠するときの(a)に続く動作を概略的かつ模式的に示している。
【0054】
図7(a)は、ドア1が閉じるとき、特に閉じる直前の状態を示している(黒矢印参照)。この時点では、スライド部材11は、スライド制御部16の制止部16aが先端面11dに隣接して覆っているので、戸先側にそれ以上スライドすることを制止されている。
【0055】
図7(b)は、ドア1が完全に閉じた状態を示す。ドア1が閉じるとき、スライド制御部16の制止解除部16bの先端が壁板2の内面2aに当たると、制止解除部16bが壁板2の内面2aにより押されることによって支持部16dがコイルバネ16fの弾性力に抗して直線移動する(黒矢印参照、下側の制止解除部16c、支持部16e及びコイルバネ16gの動作も同様)。制止解除部16bは制止部16aと一体であるから、制止部16aも直線移動する。ドア1が完全に閉じたとき、制止部16aはスライド部材11の先端面11dから移動させられる。すなわち制止部16aがスライド部材11の先端面11dから離脱することによって、スライド部材11の先端面11dの前方から障害物が除かれる。この結果、スライド部材11が戸先側にスライド可能となる。
【0056】
図7(c)に示すように、ドア1が完全に閉じた後、スライド部材11の操作部11aを操作してスライド部材11を戸先側にスライドさせる(黒矢印参照)。その結果、スライド部材11の先端部が、壁板2の受け部材14を貫通し、施錠される。ガイド部材12は、スライド部材11のストッパとしての役割も果たしている。
【0057】
解錠するときは、逆の手順を実行する。すなわち、スライド部材11を戸尻側にスライドさせることによって
図7(b)の状態に戻す。図示しないが、スライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定する適宜のストッパが設けられている。ドア1が、開位置に自動的に戻るヒンジ構造を有する場合、使用者が何処にも触れずともドア1は開位置に戻り、同時にスライド制御部16も、コイルバネの弾性力によって
図7(a)の初期位置に戻る。ドア1が開位置に自動的に戻らない場合は、使用者が、例えば足を操作部11aの先端部に引っ掛けて手前に引くことができる。
【0058】
(4)第4の実施形態
図8及び
図9を参照して、本発明のドア施錠装置10の第4の実施形態を説明する。
図8は、
図2と同様の図であり、第4の実施形態のドア施錠装置10を取り付けた内開きのドア1が若干開いている状態、ここでは閉じる直前の状態を、部分的に示した概略斜視図である。
【0059】
ドア施錠装置10は、ドア1に配置された部材として、スライド部材11と、トリガー部材18と、スライド制御部20とを有する。
【0060】
第4の実施形態では、スライド部材11の全体形状は第1の実施形態と同様であるが、スライド部11cがドア1の内部に配置され、ドア1の内部でドア内面1aに平行な水平方向にスライド可能である。スライド部11の先端部は、スライドに伴って戸先側面1cに形成されたロック開口1fから出入可能である。
【0061】
スライド部11cの戸尻側端部からドア内面1aに対し垂直に延びる操作部11aは、ドア内面1aに形成された略矩形の輪郭をもつスライド開口1gを通り、所定の長さだけ外部に突出している。操作部11aの先端部は、上述した第1の実施形態と同様に拡張されている。
【0062】
スライド開口1gは、少なくともスライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定している。
図8では、スライド部材11が最も戸尻側に後退した位置にあり、この位置でスライド部材11の先端面11dが戸先側面1cとほぼ面一になることが好ましい。
【0063】
ドア1が閉じたときにドア1の戸先側に並立する壁板2の側面2cには、スライド部材11を挿入可能なストライク孔17が穿設されている。スライド部材11がスライドしてストライク孔17に受容されると、ドア1が施錠される。
【0064】
トリガー部材18は、ドア1の内部に配置され、ドア1の内部でドア内面1aに平行な水平方向にスライド可能である。トリガー部材18の先端部18aは、スライドに伴って戸先側面1cに形成されたトリガー開口1eから出入可能である。トリガー部材18の戸尻側端部はコイルバネ18bにより支持されている。ドア1が開いている間、トリガー部材18の先端部18aはトリガー開口1eから突出している。
【0065】
トリガー部材18の先端部18aは、平面視にて略三角形の輪郭を有し、ドア内面1aに平行な平坦な側面と、反対側の傾斜面、ここでは丸みのある傾斜面とを有する。先端部18aの形状は、一般的なラッチボルトの形状と類似している。但し、トリガー部材18は、一般的なラッチボルトとは異なり、壁板2にトリガー部材18を受容するストライク孔は設けられていない。したがって、ドア1が閉じたとき、トリガー部材18は壁板2の側面2cにより押されることによって、コイルバネ18bの弾性力に抗してドア1内に後退することになる。
【0066】
スライド制御部20はドア1の内部に配置されるが、
図8には極めて概略的にそのおおよその位置のみを示している。
図8には具体的構成を示さないが、スライド制御部20は、ドア1が開いているときは、トリガー部材18の突出位置に対応してスライド部材11が戸先側にスライドしないように制止する。そしてスライド制御部20は、ドア1が閉じるときのトリガー部材18の後退動作に応じてスライド部材11の制止を解除する。
【0067】
図9(a)は、
図8のラインIV−IVに沿った概略的な断面図であり、(b)(c)は、同じ断面におけるドアを閉じて施錠するときの(a)に続く動作を概略的かつ模式的に示している。
【0068】
図9(a)は、ドア1が開いているときの状態を示している。スライド制御部20は、例えば略直方体のケース20aを有し、その戸尻側の壁に開口20bを有する。スライド部材11のスライド部11cは、戸尻側から開口20bを貫通してケース20a内に入り、戸先側面1cのロック開口1fまで延在している。トリガー部材18は、コイルバネ18bにより支持されて先端部18aがトリガー開口1eから突出した位置にある。コイルバネ18bの一端は、トリガー部材18の戸尻側端部に当接し、他端はケース20aの戸尻側の壁により支持されている。
【0069】
トリガー部材18の本体下側に係止突起20dが突出している。一方、スライド部材11の上側にも係止突起20gが突出している。さらに、ケース20aの側面により両端を支持されたカム軸20fの周りで回動可能な2つのアームをもつカム20eが設けられている。カム20eの一方のアームがトリガー部材18の係止突起20dに係合すると同時に、他方のアームはスライド部材11の係止突起20gに係合している。スライド部材11が戸先側にスライドするためには、カム20eを時計回りに回す必要があるが、トリガー部材18の係止突起20dにより阻止されている。
【0070】
図9(b)は、ドア1が閉じたときの状態を示している。トリガー部材18は、先端部18aが壁板2の側面2cに押されることによってコイルバネ18bの弾性力に抗して後退する(黒矢印参照)。これにより係止突起20dも後退し、カム20eが解放される。その結果、スライド部材11が戸先側にスライドすることが可能となる。
【0071】
図9(c)に示すように、ドア1が完全に閉じた後、スライド部材11の操作部を操作してスライド部材11を戸先側にスライドさせる(黒矢印参照)。その結果、スライド部材11の先端部が、壁板2のストライク孔17に進入し、施錠される。
【0072】
解錠するときは、逆の手順を実行する。すなわち、スライド部材11を戸尻側にスライドさせることによって
図9(b)の状態に戻す。ドア1が、開位置に自動的に戻るヒンジ構造を有する場合、使用者が何処にも触れずともドア1は開位置に戻り、同時にスライド制御部20も、コイルバネ18bの復元力によって
図9(a)の初期位置に戻る。ドア1が開位置に自動的に戻らない場合は、使用者が、例えば足を操作部11aの先端部に引っ掛けて手前に引くことができる。
【0073】
(5)第5の実施形態
図10を参照して、本発明のドア施錠装置の第5の実施形態を説明する。第5の実施形態は第4の実施形態の変形形態である。
図10(a)(b)(c)は、第5の実施形態における
図9(a)(b)(c)に相当する図である。
【0074】
第5の実施形態では、トリガー部材18の先端部18aが半球状である。半球状の先端部18aは、第4の実施形態のラッチボルト状の先端部18aと互いに置換可能である。先端部18aの後方には柱状のトリガー部材18の本体が、ケース20a内の隔壁20a1を貫通してさらに後方に延在している。コイルバネ18bの一端は、トリガー部材18の本体の一部であるフランジ部に当接し、他端は隔壁20a1に当接している。コイルバネ18bは、トリガー部材18が突出位置となるように支持している。
【0075】
トリガー部材18における隔壁20a1よりも後方の部分には外螺子20hが形成されている。さらに、外螺子20hと螺合する内螺子が形成された内螺子部材20iが隔壁20a1に取り付けられている。さらに、トリガー部材18の戸尻側端部近傍から係止突起20dが下方に突出している。係止突起20dの下端は、スライド部材11のスライド部11cに上向きに開口するように切り欠かれた係止溝20j内に挿入されている。係止突起20dにより、スライド部材11のスライドが阻止されている。
【0076】
図10(b)は、ドア1が閉じたときの状態を示している。トリガー部材18は、先端部18aが壁板2の側面2cに押されることによってコイルバネ18bの弾性力に抗して後退する(黒矢印参照)。これにより、トリガー部材18の後部の外螺子20hが内螺子部材20iに沿って回動することによって、係止突起20dも回動して係止溝20jから出る(黒矢印参照)。その結果、スライド部材11が戸先側にスライドすることが可能となる。
【0077】
図10(c)に示すように、ドア1が完全に閉じた後、スライド部材11の操作部を操作してスライド部材11を戸先側にスライドさせる(黒矢印参照)。その結果、スライド部材11の先端部が、壁板2のストライク孔17に進入し、施錠される。
【0078】
解錠するときは、逆の手順を実行する。すなわち、スライド部材11を戸尻側にスライドさせることによって
図10(b)の状態に戻す。ドア1が、開位置に自動的に戻るヒンジ構造を有する場合、使用者が何処にも触れずともドア1は開位置に戻り、同時にスライド制御部20も、コイルバネ18bの復元力によって
図10(a)の初期位置に戻る。ドア1が開位置に自動的に戻らない場合は、使用者が、例えば足を操作部11aの先端部に引っ掛けて手前に引くことができる。
【0079】
なお、
図9及び
図10にそれぞれ示したスライド制御部20の機構は一例であり、トリガー部材18が突出位置にあるときはスライド部材11のスライドを制止し、トリガー部材18の後退動作に応じてスライド部材11をスライド可能とする変換機構は、これらに限られない。スライド制御部は、カム、リンク、バネ、歯車、ラック、及び/又は、電気的駆動装置などを適宜組み合わせることによって多様に構成することが可能である。
【0080】
(6)第6の実施形態
図11を参照して、本発明のドア施錠装置の第6の実施形態を説明する。第6の実施形態は、
図8及び
図9に示した第4の実施形態の変形形態である。第6の実施形態はさらに、
図10に示した第5の実施形態の変形形態としても適用可能である。
【0081】
図11に示すように、第6の実施形態のドア施錠装置10は、第4の実施形態と同様にドア1に配置された部材として、スライド部材11と、トリガー部材18と、スライド制御部20とを有する。第4の実施形態と異なる点は、ドア施錠装置10が、ドア1の内部ではなくドア内面1a上に設置されている点である。
【0082】
ドア施錠装置1がドア1に外付けされている点で、第6の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態と共通する。スライド部材11は、ドア内面1a上に取り付けられたガイド部材12により支持されることによってスライド可能である。ドア1がまだ開いているとき、スライド部材11は、最も戸尻側に寄った後退位置にあり、スライド部材11の戸先側の先端面11dはドア1の戸先側面1cとほぼ面一となる位置にある。図示しないが、スライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定する適宜のストッパが設けられている。
【0083】
ドア1が閉じたときにドア1の戸先側に並立する壁板2の内面2a上には、スライド部材11を挿入可能なストライク孔17を穿設された受け部材14が取り付けられている。この例では、ストライク孔17は貫通孔である。スライド部材11がスライドしてストライク孔17に受容されると、ドア1が施錠される。、
【0084】
トリガー部材18は、図示の例では、ガイド部材12の上方に一体的に設けた筐体内部に配置されている。トリガー部材18は、この筐体内部でドア内面1aに平行な水平方向にスライド可能である。トリガー部材18の先端部18aは、スライドに伴って筐体の戸先側面に形成されたトリガー開口から出入可能である。トリガー部材18の戸尻側端部はコイルバネ18bにより支持されている。ドア1が開いている間、トリガー部材18の先端部18aはトリガー開口から突出している。
【0085】
図11に示したトリガー部材18の先端部18aは、第4の実施形態と同じく平面視にて略三角形の輪郭を有するが、別の例として第5の実施形態と同じく半球状であってもよい。第6の実施形態においても、壁板2に設置された受け部材14には、トリガー部材18を受容するストライク孔は設けられていない。したがって、ドア1が閉じたとき、トリガー部材18は壁板2の受け部材14の対向する面により押されることによって、コイルバネ18bの弾性力に抗してガイド部材12の筐体内に後退することになる。
【0086】
スライド制御部20もまた、ガイド部材12の筐体内部に配置される。スライド制御部20は、ドア1が開いているときは、トリガー部材18の突出位置に対応してスライド部材11が戸先側にスライドしないように制止する。そしてスライド制御部20は、ドア1が閉じるときのトリガー部材18の後退動作に応じてスライド部材11の制止を解除する。スライド制御部20の具体的構成として、
図9に示した第4実施形態又は
図10に示した第5実施形態の構成を適用可能である。
【0087】
(7)第7の実施形態
図12及び
図13を参照して、本発明のドア施錠装置10の第7の実施形態を説明する。
図12は、
図2と同様の図であり、第7の実施形態のドア施錠装置10を取り付けた内開きのドア1が若干開いている状態、ここでは閉じる直前の状態を、部分的に示した概略斜視図である。
【0088】
図12に示すように、第7の実施形態では、ドア1に配置された部材としてスライド部材11を有する。スライド部材11は、ドア1の内部に配置されドア内面1aに平行な水平方向にスライド可能なスライド部11cと、スライド部11cの戸尻側端部からドア内面1aに対し垂直に延びる操作部11aを有する。操作部11aは、ドア内面1aに形成された略矩形の輪郭をもつスライド開口1gを通り、所定の長さだけ外部に突出している。操作部11aの先端部は、上述した実施形態と同様に拡張されている。
【0089】
スライド部11の戸先側端部は、ドア1の内部に配置されたコイルバネ11fの戸尻側端部に連結されている。コイルバネ11fの軸は、ドア内面1aに平行な水平方向に延在している。コイルバネ11fの戸先側端部はラッチ部11eの端部と連結されている。
【0090】
ラッチ部11eの先端部は、平面視にて略三角形の輪郭を有し、ドア内面1aに平行な平坦な側面と、反対側の傾斜面、ここでは丸みのある傾斜面とを有する。ラッチ部11eの先端部の形状は、一般的なラッチボルトの形状と類似している。ラッチ部11eにおいてコイルバネ11fに連結された後部は、図示の例では四角柱である。
【0091】
スライド開口1gは、スライド部材11の戸先側及び戸尻側への移動限界位置を規定している。
図12では、スライド部材11が最も戸先側にスライドした位置にあり、この位置においてラッチ部11eの先端部は、ドア1の戸先側面1cに形成されたロック開口1fから突出している。ラッチ部11eの四角柱の後部は、常にドア1の内部に位置する。スライド部材11が最も戸尻側にスライドすると、ラッチ部11eの先端部は、戸先側面1cのロック開口1f内に埋没する。
【0092】
ドア1が閉じたときにドア1の戸先側に並立する壁板2の側面2cには、ラッチ部11eの先端部を挿入可能なストライク孔17が穿設されている。ラッチ部11eの先端部がストライク孔17に受容されると、ドア1が施錠される。
【0093】
第7の実施形態では、上述した各実施形態とは異なり、ドア1が開いている間もスライド部材1はスライド可能であるので、スライド部材11は、スライド開口1gにより規定される移動可能範囲のいずれの位置も取り得る。
【0094】
例えば、前の使用者が室外に出るときにドア施錠装置10を解錠する際は、必ずスライド部材11を最も戸尻側に移動させなければならない。しかしながら、次の使用者が室内に入ってドア1を閉める際、ドアが未だ開いている間に誤ってスライド部材11を戸先側に移動させてしまうこともある。
図12は、そのような場合を示している。これは、膝などの手指以外でドア1を操作する場合には生じ易い。また、
図12とは異なり、ドア1が完全に閉じてからスライド部材11を移動させる使用者もいる。第7の実施形態のドア施錠装置10は、使用者がいずれの操作を行っても確実に施錠することができる。
【0095】
図13を参照して、第7の実施形態における2通りの操作の手順を説明する。
図13(a1)は、
図12のラインV−Vに沿った概略的な断面図であり、(b1)は、同じ断面におけるドアを閉じて施錠するときの(a1)に続く動作を示している。また、(a2)は、(a1)と同じ断面であるが(a1)とは異なる操作を行う場合を示し、(b2)は(a2)に続く動作を示している。(c)は、(b1)(b2)に続く状態を示している。
【0096】
第1の操作手順では、
図13(a1)に示すドア1が閉じる直前の時点において、スライド部材11は既に戸先側にスライドさせられ、ラッチ部11eはロック開口1fから突出している。その後、
図13(b1)に示すように、突出位置にあるラッチ部11eは、壁板2の側面2cに押されることによりコイルバネ11fを圧縮させることによって後退する。このとき、スライド部材11は不動に保持される。そして、ドア1が完全に閉じたときは、
図13(c)に示す状態となる。この場合、ドア1が閉じてからの操作は不要である。ラッチ部11eの先端部の平坦面がストライク孔17の側面と当接することによって、ドア1は内側に開くことを阻止され施錠される。
【0097】
第2の操作手順では、
図13(a2)に示すドア1が閉じる直前の時点において、スライド部材11は、最も戸尻側に位置しており、ラッチ部11eはロック開口1fから突出していない。
図13(b2)に示すように、ラッチ部11eが突出していないドア1は、抵抗なく閉じられる。そして、ドア1が完全に閉じた後に、スライド部材11を戸先側にスライドさせる操作を行うことによって
図13(c)に示す状態となる。
【0098】
解錠するときは、スライド部材11を戸尻側にスライドさせるだけでよい。ドア1が、開位置に自動的に戻るヒンジ構造を有する場合、使用者が何処にも触れずともドア1は開位置に戻る。ドア1が開位置に自動的に戻らない場合は、使用者が、例えば足を操作部11aの先端部に引っ掛けて手前に引くことができる。
【0099】
(8)第8の実施形態
図14を参照して、本発明のドア施錠装置の第8の実施形態を説明する。第8の実施形態は、
図12及び
図13に示した第7の実施形態の変形形態である。
【0100】
図14に示すように、第8の実施形態のドア施錠装置10は、第7の実施形態と同様にドア1に配置された部材として、スライド部材11と、ドア内面1a上に取り付けられたガイド部材12とを有する。スライド部材11のスライド部11cは、ガイド部材12の戸尻側端部から内部に挿入されている。スライド部11cの戸先側端部は、ガイド部材12の内部に配置されたコイルバネ11fの戸尻側端部に連結されている。コイルバネ11fの軸は、ドア内面1aに平行な水平方向に延在している。コイルバネ11fの戸先側端部はラッチ部11eの端部と連結されている。第7の実施形態と異なる点は、ドア施錠装置10が、ドア1の内部ではなくドア内面1a上に設置されている点である。
【0101】
ドア施錠装置1がドア1に外付けされている点で、第8の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態と共通する。スライド部材11は、ガイド部材12により支持されることによってスライド可能である。スライド部材11cと連結されたコイルバネ11f及びラッチ部11eも一体的にスライドする。
【0102】
ドア1が閉じたときにドア1の戸先側に並立する壁板2の内面2aには、ラッチ部11eの先端部を挿入可能なストライク孔17が穿設された受け部材14が取り付けられている。ラッチ部11eの先端部がストライク孔17に受容されると、ドア1が施錠される。
【0103】
図14では、スライド部材11が最も戸先側にスライドした位置にあり、この位置においてラッチ部11eの先端部は、ガイド部材12の戸先側面に形成されたロック開口から突出している。ラッチ部11eの四角柱の後部は、常にガイド部材12の内部に位置する。スライド部材11が最も戸尻側にスライドすると、ラッチ部11eの先端部は、ガイド部材12のロック開口内に埋没する。図示しないが、スライド部材11の戸尻側への移動限界位置を規定する適宜のストッパが設けられている。
【0104】
第8の実施形態のドア施錠装置10の操作については、
図13を参照して説明した第7の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0105】
以上に示した実施形態のうち、ドア1のドア内面1a上に外付けするタイプのものは、新規のドアにも既設のドアにも設置することができる。
【0106】
以上、本発明の幾つかの実施形態を示す図面を参照して本発明を説明したが、各実施形態の特徴的構成を組み合わせた実施形態も本発明に含まれる。また、本発明の主旨に沿う限りにおいてさらに多様な変形形態が可能である。
【解決手段】ドア内面1a上でスライド可能なスライド部材11と、壁板2の内面2a上に配置されスライド部材11を保持可能な受け部材14とを有するドア施錠装置10が、スライド部材11の戸先側へのスライドを制止するための制止部13a,15a,16aと、制止部13a,15a,16aによる制止を解除するために制止部13a,15a,16aに連結された制止解除部13b,15b,16bとを具備するスライド制御部13,15,16を有し、ドア1が開いているときは制止部13a,15a,16aがスライド部材11の戸先側に向いた先端面11dに隣接しており、ドア1が閉じるとき、制止解除部13b,15b,16bが壁板2の内面2aにより押されることによって、制止部13aがスライド部材11の先端面11dから移動させられる。