(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS P 8113に基づく、トイレットペーパーの、乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが400gf/25mm以上1000gf/25mm以下、乾燥時の横方向の引張強さDCDTが90gf/25mm以上230gf/25mm以下、である、請求項1に記載のシャワートイレ用トイレットロール。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
【0015】
<シャワートイレ用トイレットロール>
本発明のシャワートイレ用トイレットロール1は、
図1及び
図2に示すように、2プライに積層され、エンボスパターンが付与されたトイレットペーパー1xをロール状に巻取ったトイレットロールであって、エンボスパターンは、2プライの各々に設けられた、ダブルエンボスパターンであり、トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量が13g/m
2以上19g/m
2以下、紙厚が1.2mm/10枚以上1.9mm/10枚以下であり、巻長が20m以上40m以下、巻直径DRが104mm以上120mm以下、巻密度が0.52m/cm
2以上0.92m/cm
2以下、である。
【0016】
また、トイレットペーパー1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面をロール表面1a(トイレットペーパー1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面をロール裏面1b(トイレットペーパー1xの裏面)と称する。
【0017】
[巻長]
シャワートイレ用トイレットロール1の巻長が20m以上40m以下であることにより、シャワートイレ用トイレットロール1の交換頻度を低くすることができる。また、シャワートイレ用トイレットロールの交換頻度をより低くするために、巻長は、27m以上40m以下であることが好ましく、30m以上40m以下であることがより好ましい。
【0018】
[巻直径]
シャワートイレ用トイレットロール1の巻直径DRが104mm以上120mm以下であることにより、シャワートイレ用トイレットロール1の巻長を好適な範囲に維持しつつ、シャワートイレ用トイレットロール1がトイレットペーパーホルダーに容易に収容されるものとなる。また、巻直径DRを上記の範囲内にすることにより、高級感のある見栄えとなる。また、巻直径DRは、108mm以上120mm以下であることが好ましく、112mm以上120mm以下であることがより好ましい。
【0019】
[巻密度]
本発明においては、シャワートイレ用トイレットロール1の巻密度が0.52m/cm
2以上0.92m/cm
2以下である。ここで、ロールを硬く巻き過ぎると、内巻のトイレットペーパー1xに過大な押圧が加わり、内巻のトイレットペーパー1xに設けたエンボスが潰れて、使用時に美粧性が低下する。一方、ロールを弱く巻き過ぎると、エンボスは潰れないが、巻直径DRが大きくなって、シャワートイレ用トイレットロール1のトイレットペーパーホルダーへの装着が困難になったり、内巻の巻付け力が弱くなり過ぎて、
図7の写真に示すように、ロールの内巻側が軸方向に飛び出して不良品が生じたりする。このようなことから、本明細書では、ロールの巻き強さを表すための因子として、巻密度を規定した。
【0020】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}−(コア外径DI部分の断面積)で表される。コア外径DIは、ロールの中心孔の直径である。
【0021】
例えば、巻長36m、2プライ、巻直径DR116mm、コアの外径39mmの場合、巻密度=(36m×2)÷{3.14×(116mm÷2÷10)
2−3.14×(39mm÷2÷10)
2}=0.77m/cm
2となる。トイレットロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
【0022】
巻密度が0.52m/cm
2以上0.92m/cm
2以下であることにより、巻直径DRが適切な範囲に維持されて、シャワートイレ用トイレットロール1が、トイレットペーパーホルダー等に収まりやすくなるとともに、内巻の巻付け力が適切なものとなり、ロールの内巻側が軸方向に飛び出して(ロールの保形性が劣り)、不良品となることがなく、シートの柔らかさも好適に維持されるほか、トイレットペーパー1xに設けたエンボスが潰れることなく、使用時の美粧性が維持され、満足感も向上する。巻密度は、0.60m/cm
2以上0.87m/cm
2以下であることが好ましく、0.70m/cm
2以上0.82m/cm
2以下であることがより好ましい。
【0023】
[坪量]
トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量は、13g/m
2以上19g/m
2以下であり、このときの紙厚は1.2mm/10枚以上1.9mm/10枚以下である。坪量及び紙厚が上記の範囲内のものであることにより、巻長、巻直径DR、巻密度、を上述の範囲に調整しやすくなる。トイレットペーパー1xの1枚あたりの坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としては、原紙ウェブのカレンダー条件(カレンダー処理後の紙厚及び比容積、カレンダー処理前後の紙厚差)及びエンボス条件を規定する方法を挙げることができる。
【0024】
トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量及び紙厚が上記の範囲内のものであることにより、トイレットペーパー1xの強度や使用感(嵩高さ)が好適に維持されるとともに、トイレットペーパー1xの巻直径DRも適切な範囲に維持されて、トイレットペーパーホルダーに収まりやすくなる。また、ボリューム感があり、ごわごわ感のあまりないトイレットペーパー1x及びシャワートイレ用トイレットロール1を得ることができる。トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量は、14g/m
2以上18g/m
2以下であることが好ましく、15g/m
2以上17g/m
2以下であることがより好ましい。トイレットペーパー1xの紙厚は、1.3mm/10枚以上1.8mm/10枚以下であることが好ましく、1.4mm/10枚以上1.7mm/10枚以下であることがより好ましい。
【0025】
[エンボスパターン]
本発明のシャワートイレ用トイレットロール1(トイレットペーパー1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。また、本発明におけるエンボスパターンは、トイレットペーパー1xの表面、裏面側の各シートをそれぞれエンボス処理した後、それぞれのシートのエンボスの凸面同士を内側にしてプライアップして2プライにする、いわゆるダブルエンボスである。エンボスパターンをこのようなダブルエンボスパターンにすることにより、シート間に空気層を作り、トイレットロールの吸水量を上げることができ、シャワートイレ用に適したトイレットロールを得ることができる。また、2プライ積層する際には、プライボンドグルー(糊)やナーリング(エッジエンボス)を用いることができるが、エンボスの潰れにくさの観点から、プライボンドグルーを用いる方が好ましい。
【0026】
本発明のシャワートイレ用トイレットロール1において、エンボスパターンの深さが、100μm以上300μm以下であることが好ましい。エンボスパターンの深さが上記の範囲内のものであることにより、ロールを硬く巻いてもエンボスパターンが潰れにくくなり、エンボスパターンの凹凸の度合いが好適に維持されて、トイレットペーパー1xの嵩が適度なものとなり、シートの柔らかさを好適に維持することができるようになるとともに、シャワートイレ用トイレットロール1をトイレットペーパーホルダーに装着しやすい状態を維持することもできる。エンボスパターンの深さは、120μm以上280μm以下であることがより好ましく、150μm以上250μm以下であることが更に好ましい。
【0027】
エンボスパターンの深さは、
図9に示すようにエンボス加工を施す工程において、エンボスロール3と対向するゴムロール4のニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、20mmから50mmであることが好ましく、25mmから45mmであることがより好ましく、30mmから40mmであることが更に好ましい。ニップ幅を上記の範囲内のものとすることにより、エンボスパターンの表裏差が適切に維持されるとともに、紙厚が好適に維持されてロールの巻直径DRが適切なものとなり、シートの柔らかさについても好適に維持される。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロール3のニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロール3にニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロール3でニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。なお、エンボスロール3の材質は、金属であることが好ましい。
【0028】
エンボスロールの凹凸が深ければニップ幅を狭くし、エンボスロールの凹凸が浅ければニップ幅を広くすることで、エンボスパターンの深さを調整できる。また、エンボスパターンの深さを確保するよう、ロールを巻く強さを調整できる。例えば、エンボスパターンの深さが大きくなると、ロールを巻く際にエンボスパターンが潰れやすくなるので、ロールを巻く強さを弱くすることで、エンボスパターンの深さを調整できる。
【0029】
エンボスパターンの深さは、マイクロスコープを用いてエンボスパターンの高低差を測定して求める。なお、ロール表面1a及びロール裏面1bそれぞれから測定し、測定値が大きい方の面の値を、最終的なエンボスパターンの深さとする。
【0030】
マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR−3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR−H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスパターンの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0031】
まず、
図3に示すように、エンボスパターンの周縁frの最長部aを求める。
図4(a)は、マイクロスコープによるX−Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー1x表面の高さが濃淡で表されることがわかる。
図4(a)の濃色部位が個々のエンボスパターンを示し、
図4(a)から1つのエンボスパターンの最長部aを見分けることができる。この最長部aを横切る線分A−Bを引くと、
図4(b)に示すようにエンボスパターンの高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X−Y平面画像の色の濃淡で、エンボスパターンの凸部(非エンボス部)と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A−Bを決めればよい。
【0032】
ここで、
図4(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットペーパー1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Tであるが、ノイズ(トイレットペーパー1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出にあたっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。そこで、
図5に示すように、高さプロファイルの断面曲線Tから「輪郭曲線」Uを計算し、この輪郭曲線Uのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2と、変曲点P1,P2で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。
【0033】
このようにして、エンボスパターンの深さ=最大値Max−最小値Minとし、変曲点P1,P2のX−Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さと規定する。なお、「輪郭曲線」は、断面曲線Tからλc:800μm(ただし、λcはJIS−B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、隣接するエンボスパターン同士のP1の間隔(これを、エンボスピッチという)以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボスピッチが800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。隣接するエンボスパターン同士のP1の間隔は、
図5の左又は右に繋がる次のエンボスパターンについて同様にP1,P2を求め、隣接するエンボスパターン同士でP1、P2、P1と並ぶときの2つのP1の間隔である。
【0034】
同様にして、
図4(a)において最長部aに垂直な方向での最長部bについてもエンボスパターンの深さを測定し、最長部aとbの各エンボスパターンの深さのうち、大きい方の値をエンボスパターンの深さとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパー1xのロール表面1a及びロール裏面1bの任意の10個のエンボスパターン2(
図8参照)について行い、その平均値をロール表面1a及びロール裏面1bそれぞれのエンボスパターンの深さとして採用し、最終的には、上記のとおりロール表面1a及びロール裏面1bの測定値が大きい方の面の値をエンボスパターン深さとする。最長部aと最長部bは、上記したトイレットペーパー1xの10個のエンボスパターン2についての個々のa、bの値を平均した値を用いる。ただし、
図6に示すように、エンボスパターンが流れ方向(MD方向)につながっている場合、最長部aが巻長と同じになってしまい、高低差が得られず、凹部の深さを測定できない。そこで、エンボスパターンが繋がる方向(MD方向)に直交する幅W方向に、エンボスパターンを跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さを測定することができる。同様に、エンボスパターンが幅W方向(CD方向)につながっている場合、流れ方向(MD方向)に、エンボスパターンを跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さを測定する。
【0035】
なお、エンボスパターンの形状は、長方形、正方形、丸形、長丸形等、特に制限はない。また、上記に示したエンボスパターンの大きさ及びエンボスパターンの面積率(個数)を適宜調整して、巻直径DRや巻密度を調整することができる。
【0036】
また、エンボスパターンの深さを求める際、任意の10個のエンボスパターン2を選定する際には、
図8に示すように、シャワートイレ用トイレットロール1の最外巻のトイレットペーパー1xの端縁1eから、シャワートイレ用トイレットロール1の巻長20%に相当する所定の位置M1にあるエンボスパターン2の中から任意の10個を選ぶ。このとき、エンボスパターン2の中心が位置M1を通っている必要はなく、位置M1上にあるエンボスパターン2を上述のマイクロスコープの視野内に入れ、最長部a、bを見極めればよい。
【0037】
位置M1上にエンボスパターン2が10個未満しか存在しない場合は、位置M1上のエンボスパターン2に隣接する外巻側のエンボスパターン2の群2F、又は位置M1上のエンボスパターン2に隣接する内巻側のエンボスパターン2の群2Eの中から不足する個数のエンボスを選べばよい。なお、位置M1がミシン目にあたる場合は、ミシン目に隣接する外巻側のエンボスパターン2の群を対象に測定する。
【0038】
[コア外径]
また、本発明のシャワートイレ用トイレットロール1の芯の外径である、コア外径DIは、25mm以上48mm以下であることが好ましく、35mm以上46mm以下であることがより好ましく、37mm以上43mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが上記の範囲内のものであることにより、シャワートイレ用トイレットロール1の巻密度を好適に維持しつつ、シャワートイレ用トイレットロール1を、トイレットペーパーホルダーに収まりやすくすることができ、加えて、製造時のシャワートイレ用トイレットロール1の取扱性も良好となる。また、シャワートイレ用トイレットロール1のコアの質量は2.8g以上5.5g以下であることが好ましく、3.5g以上5.0g以下であることがより好ましく、4.0g以上4.6g以下であることが更に好ましい。コア質量を上記の範囲内にすることにより、本願のような長尺のシャワートイレ用トイレットロール1に適した、良好なコアの強度とコアのコストを実現することができる。コアの質量は、ロール幅114mmの質量とし、114mm以外のコアの質量は、比例計算で算出できる。
【0039】
[比容積]
トイレットペーパー1xの比容積は7.5cm
3/g以上12.0cm
3/g以下であることが好ましい。トイレットペーパー1xの比容積が上記の範囲内のものであることにより、シートの柔らかさが良好なものとなり、バルク(嵩高さ)が好適に維持され、水分の吸収性が良好に維持されるとともに、巻直径DRが大きくなり過ぎることがない。上記比容積は、8.1cm
3/g以上11.3cm
3/g以下であることがより好ましく、8.7cm
3/g以上10.7cm
3/g以下であることが更に好ましい。
【0040】
[DMDT、DCDT]
トイレットペーパー1x(2プライに積層したシート)のJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さをDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)、乾燥時の横方向の引張強さをDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)としたとき、DMDTが400gf/25mm以上1000gf/25mm以下であることが好ましく、500gf/25mm以上900gf/25mm以下であることがより好ましく、600gf/25mm以上800gf/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは、90gf/25mm以上230gf/25mm以下であることが好ましく、110gf/25mm以上190gf/25mm以下であることがより好ましく、130gf/25mm以上170gf/25mm以下であることが更に好ましい。DMDT及びDCDTが上記の範囲内のものであることにより、シートが破れにくくなるとともに、触った時の紙の丈夫さも良好となる。なお、引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行う。また、引張強さは、公知の方法で調整することができる。
【0041】
なお、上記においては、トイレットペーパー1xの抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
【0042】
[柔らかさTS7、滑らかさTS750、剛性D]
トイレットペーパー1xのティッシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が11dBV
2rms以上25dBV
2rms以下であり、13dBV
2rms以上23dBV
2rms以下であることが好ましく、15dBV
2rms以上21dBV
2rms以下であることがより好ましい。このTS7は、トイレットペーパー1xの柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、トイレットペーパー1x及びシャワートイレ用トイレットロール1の柔らかさがバランスよく維持される。
【0043】
さらに、トイレットペーパー1xについて、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が16dBV
2rms以上40dBV
2rms以下であり、20dBV
2rms以上36dBV
2rms以下であることが好ましく、24dBV
2rms以上32dBV
2rms以下であることがより好ましい。このTS750は、トイレットペーパー1xの滑らかさの指標であり、TS750が上記の範囲内のものとなることにより、トイレットペーパー1x及びシャワートイレ用トイレットロール1の平滑さがバランスよく維持される。
【0044】
加えて、トイレットペーパー1xについて、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したトイレットペーパー1xのサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、押し込み圧力100mNと600mNの間での上記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性Dの測定値が2.2mm/N以上3.4mm/N以下であり、2.4mm/N以上3.2mm/N以下であることが好ましく、2.6mm/N以上3.0mm/N以下であることがより好ましい。Dが上記の範囲内のものとなることにより、トイレットペーパー1xのクッション性がバランスよく維持される。
【0045】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS7、TS750及びDの測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013−236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。なお、TS750、TS7、及びDについても、最外巻のトイレットペーパー1xの端縁1eから、シャワートイレ用トイレットロール1の巻長の20%に相当する位置のトイレットペーパー1xのサンプルを用い、測定面は、上記のエンボスパターンの深さとして採用した面と同じ面とする。
【0046】
[吸水度]
トイレットペーパー1xの(2プライに積層したシート)の旧JIS S 3104に基づく吸水度は、7.0秒以下であることが好ましく、5.0秒以下であることがより好ましく、3.0秒以下であることが更に好ましい。吸水度は、短時間であることが好ましく、上記時間の範囲内であることにより、吸水性が良好に維持される。なお、水を滴下する際は、トイレットペーパー1xの表面側に滴下する。
【0047】
[ほぐれやすさ]
トイレットペーパー1xを1枚に剥がしたときのJIS P 4501に基づくほぐれやすさは、8.0秒以上60.0秒以下であることが好ましく、8.0秒以上45.0秒以下であることがより好ましく、8.0秒以上30.0秒以下であることが更に好ましい。ほぐれやすさは、短時間であることが好ましく、上記時間の範囲内であることにより、トイレでの水解性が良好に維持され、シャワートイレにおけるトイレットペーパー1xが水に濡れたときの耐水性も良好になる。
【0048】
<トイレットペーパー>
トイレットペーパー1xは木材パルプ100質量%からなるものであってもよく、古紙パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプ、液体飲料用紙パック古紙等を含んでよいが、品質の観点から50%以下とすることが好ましい。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上45質量%以下であることが更に好ましい。また、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が40質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上65質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
なお、上記のLBKPとしては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属の材種から形成されるパルプが好ましい。
【0050】
なお、トイレットペーパー1xに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理を行うことにより強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるカナダ標準ろ水度で、叩解前後におけるろ水度の差を0ml以上150ml以下、より好ましくは10ml以上100ml以下、更に好ましくは20ml以上70ml以下に低減させる叩解処理を挙げることができる。
【0051】
トイレットペーパー1xは、紙料にバージン系原料を使用する場合は、一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤等を用いることができる。湿潤紙力増強剤は使用しないことが好ましい。トイレットペーパー1xの紙料に古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
【0052】
[トイレットペーパーの製造方法]
トイレットペーパー1xは、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理(
図9参照)、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。なお、プライアップの際には、トイレットペーパー1xの表面、裏面側の各シートをそれぞれエンボス処理した後、それぞれのシートのエンボスの凸面同士を内側にしてプライアップして2プライにする。また、2プライ積層する際には、プライボンドグルー(糊)やナーリング(エッジエンボス)を用いることができる。
【0053】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0054】
NBKP及びLBKPの含有率が、表1及び表2に記載の数値となるように配合し、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理(
図9参照)、(3)ロール巻取り加工の工程を経て、実施例1から実施例
9、参考例1から参考例4、比較例1から比較例8のトイレットペーパー及びシャワートイレ用トイレットロールを製造した。
【0055】
以下の評価を行った。
【0056】
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、シート1枚あたりに換算した。
【0057】
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。シートを2プライに積層したトイレットペーパーを5組重ねて、10枚分として測定を行った。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
【0058】
乾燥時の縦方向引張強さDMDTと乾燥時の横方向引張強さDCDT:JIS P 8113に基づいて、2プライに積層したトイレットペーパーにつき、破断までの最大荷重をgf/25mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0059】
ロールの巻直径DR、コア外径DI:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
【0060】
ロールの巻密度、エンボスパターンの深さ、柔らかさTS7、滑らかさTS750、剛性Dは上述の方法で測定した。なお、ロールの巻密度は、ロールの巻直径DRの測定に用いた10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
【0061】
巻長:トイレットロールのミシン目とミシン目の間のシートについて、10シート分の長さを実測した。その後、ロールのシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求めた。例えば、10シート分の長さが1.14m、シート数が316シートの場合、1.14m×(316/10)=36mとなる。なお、ミシン目がない場合は、実測することにより巻長を求めた。
【0062】
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上であれば良好である。
なお、上記の測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0063】
得られた結果を表1、表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
以上より、本発明のシャワートイレ用トイレットロールは、ごわごわ感が少なく、ロールの交換頻度が低く、トイレットペーパーホルダーへ装着しやすく、また、使用感、ボリューム感、高級感、満足感、紙の丈夫さ、柔らかさ、滑らかさ及びクッション性が良好であることが分かる。