(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助磁極は、中央に形成された開口部の内周面の前記固定磁極寄りの領域の全部、又は、下端部近傍以外の部分が前記固定磁極側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
前記補助磁極は、前記開口部の前記内周面の前記コイルボビン寄りの領域が前記コイルボビン側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のソレノイド。
前記補助磁極は、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域が前記コイルボビン側に向かって突出するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のソレノイド。
前記補助磁極は、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域が前記コイルボビンの前記巻胴部の内部に進入すると共に、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域以外の領域が前記コイルボビンの一方の前記フランジに接するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のソレノイド。
【背景技術】
【0002】
直動型のソレノイドは、磁極の形状によってフラット型とコニカル型とに大別することが可能である。フラット型は、固定磁極と可動磁極との互いに対向する部分が平坦に形成され、コニカル型は、これらの部分が凹凸をなすように形成されている。以下に、この2種類のソレノイドの特徴について説明する。
図17は、従来技術に係るフラット型のソレノイドを示す断面図である。
図17において、200はソレノイド、201は固定磁極、202は対向部、203は可動磁極、204は対向部、205はケース、206はコイルである。また、
図18は、従来技術に係るコニカル型のソレノイドを示す断面図である。
図18において、210はソレノイド、211は固定磁極、212は対向部、213は可動磁極、214は対向部、215はケース、216はコイルである。
【0003】
まず、フラット型のソレノイドの従来例について説明する。
図17は、特開2008−4742号公報で開示されているフラット型のソレノイドである。ソレノイド200は、ケース205の内部に設けたコイル206の中空部内を摺動するように可動磁極203を設け、さらにケース205及びコイル206の一方の端部を閉止するように固定磁極201を設けている。固定磁極201の対向部202と可動磁極203の対向部204とは、互いに可動磁極203の中心軸、すなわち、可動磁極203の摺動方向に対して直交する平坦面として形成されている。このように対向する部分同士を平坦面とした場合、これらの間を流れる磁束は可動磁極203の中心軸に対して概ね平行に流れる。したがって、固定磁極201と可動磁極203との間に生成される磁力は、可動磁極203の中心軸に対して概ね平行なものとなる。言い換えると、コイル206に通電して生成される磁力は、そのほとんどが可動磁極203を固定磁極201に吸引する推力に寄与する。
【0004】
続けて、コニカル型のソレノイドの従来例について説明する。
図18は、特開2004−63825号公報で開示されているコニカル型のソレノイドである。ソレノイド210は、ケース215の内部に設けたコイル216の中空部内を摺動するように可動磁極213を設け、さらにケース215及びコイル216の一方の端部を閉止するように固定磁極211を設けている。固定磁極211の対向部212は、円錐台状の凸部として形成されており、可動磁極213の対向部214に向かって突出している。これに対して、可動磁極213の対向部214は、円錐台状の凹部として形成されており、凸部である対向部212と噛み合う、すなわち、可動磁極213の中心軸に対して同じ傾斜角を持つテーパ面に形成されている。したがって、固定磁極211と可動磁極213との間に生成される磁力は、互いの対向部が可動磁極213の中心軸に対して傾斜したテーパ面であるので、可動磁極が固定磁極に接近したときに、可動磁極を前方でなく側方に吸引する磁力の割合がフラット型のソレノイドよりも多くなる。さらに直交する方向の磁力成分の割合は、対向部212と対向部214とが接近するのに応じて大きくなっていく。また、互いの対向部がテーパ面であることから、コイル216に通電していない状態における対向部212と対向部214との間の磁気ギャップがフラット型よりも小さくなる。
【0005】
以上に説明したフラット型及びコニカル型のソレノイドを推力特性から観ると、フラット型が強い推力が得られるのに対して、コニカル型は推力が相対的に小さくなる。その一方、フラット型は、固定磁極と可動磁極との間の磁気ギャップがある程度の長さ以上あると、コイルへの通電開始時における推力は非常に小さいものとなるが、コニカル型は推力が大きく変化しない。このように、フラット型のソレノイドの推力は、可動磁極の開始から終了までの間に急増するという特徴がある。逆に、コニカル型のソレノイドでは、コイルへの通電開始時においても一定程度の大きさの推力が得られるが、可動磁極が固定磁極に接近しても推力は急増しない。
【0006】
したがって、フラット型のソレノイドは、必要となるストローク長が例えば3mmなど比較的短い用途に適している。また、可動磁極が固定磁極に非常に接近している、又は、可動磁極が固定磁極に吸着されているときにおける推力は非常に大きくなるので、負荷が非常に大きい場合や、可動磁極が固定磁極に吸着された状態を強く保持することが求められる場合に好適と言える。一方、コニカル型のソレノイドは、必要となるストローク長が例えば6mm、あるいはそれ以上など比較的長い用途に適している。また、ほぼ一定の推力が求められる用途や、静音性が求められる用途にも適している。
【0007】
ところで、ソレノイドを装着する装置によっては、ストローク長が長く、同時に、可動磁極が固定磁極に吸着された状態を強く保持できることなど、フラット型の長所とコニカル型の長所とが同時に要求される場合がある。このような場合、例えば、大型のコニカル型のソレノイドを装着し、コイルに対して大きな電流を流して大きな推力を得られるようにするなどの方法によって対処している。しかし、フラット型のソレノイドを用いる場合よりも消費電力が相当大きくなる上に、ソレノイドの実装に必要な面積が増大するなど、副次的な課題が発生するので、好ましい解決手段とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、フラット型のソレノイドとコニカル型のソレノイドとの両方の特長を併せ持つソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、磁性材料からなると共に、両端部に開口部がある略円筒状に形成されたケースと、前記ケースの内部に設けられると共に、中心軸に沿って延びる中空部が形成された巻胴部と該巻胴部の両端部に設けられたフランジとを備えたコイルボビンと、前記コイルボビンにコイルワイヤを巻回して形成されたコイルと、略円環板状に形成されると共に前記ケースの一方の前記開口部を閉止するように設けられた本体部と、該本体部の中央に形成された開口部と、該開口部の周辺領域から前記ケースの他方の前記開口部側に向かって突出した凸部とを備えた固定磁極と、略円筒状、略有底円筒状又は略円柱状に形成され、前記コイルボビンの前記巻胴部に挿通して配置されると共に、前記コイルに通電したときに前記固定磁極に吸引されて移動するように設けられた可動磁極と、略円環板状に形成されると共に、前記コイルボビンと前記固定磁極との間であって、前記ケース及び前記固定磁極との間に磁気ギャップができるように、かつ、前記ケースとの間の該磁気ギャップが前記固定磁極との間の該磁気ギャップよりも小さくなるように配置されている補助磁極とを有することを特徴とするソレノイドである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記補助磁極は、中央に形成された開口部の内周面の前記固定磁極寄りの領域の全部、又は、下端部近傍以外の部分が前記固定磁極側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面に形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記補助磁極は、前記開口部の前記内周面の前記コイルボビン寄りの領域が前記コイルボビン側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面に形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記補助磁極は、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域が前記コイルボビン側に向かって突出するように形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記補助磁極は、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域が前記コイルボビンの前記巻胴部の内部に進入すると共に、前記コイルボビン側の内周側縁辺領域以外の領域が前記コイルボビンの一方の前記フランジに接するように設けられていることを特徴とするソレノイドである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明において、さらに、非磁性材料材からなると共に、前記補助磁極と前記固定磁極との間に配置されたスペーサと、前記補助磁極、前記スペーサ及び前記固定磁極を貫通すると共に、前記補助磁極及び前記スペーサを前記固定磁極に対して固定する固定ピンとを有することを特徴とするソレノイドである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発明において、さらに、前記可動磁極に固定されると共に、前記可動磁極の中心軸に沿って延びるように設けられたシャフトと、前記固定磁極の前記開口部に嵌合されると共に、前記シャフトの摺動を支持する軸受とを有することを特徴とするソレノイド。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、補助磁極をコイルボビンと固定磁極との間、つまり、可動磁極が固定磁極に対して遠いところに位置している状態において、補助磁極が固定磁極よりも可動磁極により近いところに配置すると共に、補助磁極とケース及び固定磁極との間に磁気ギャップが存在し、さらに、補助磁極とケースとの間の磁気ギャップが補助磁極と固定磁極との間の磁気ギャップよりも小さいので、補助磁極とケースとの間の磁気抵抗が可動磁極と固定磁極との間の磁気抵抗よりも小さいものとなる。したがって、コイルへの通電中において、可動磁極から補助磁極を経由して固定磁極へ流れる磁束が非常に少なくなる。また、コイルへの通電開始、つまり、可動磁極の摺動開始時には、可動磁極と補助磁極との磁気ギャップが相対的に小さいことから、磁束は主として可動磁極から補助磁極を経由してケースに流れる。可動磁極が固定磁極に接近したときには、可動磁極と固定磁極との磁気ギャップが小さくなり、可動磁極と固定磁極との間に磁気抵抗が小さくなるので、磁束は主として可動磁極から固定磁極を経由してケースに流れ、補助磁極にはあまり流れなくなる。すなわち、可動磁極の摺動開始時からしばらくの間は補助磁極が機能し、可動磁極が固定磁極に接近して来ると、補助磁極があまり機能しない構成となる。したがって、可動磁極の動作の前半がコニカル型の特長、可動磁極の動作の後半がフラット型方の特長を持つソレノイドとなる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、中央に形成された開口部の内周面の固定磁極寄りの領域の全部、又は、下端部近傍以外の部分が固定磁極側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面に形成されているので、可動磁極から補助磁極を経由してケースへ流れる磁束の経路となる領域に好ましくない影響を及ぼすことなく、補助磁極と固定磁極との間の磁気ギャップを大きくすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、補助磁極の開口部の内周面のコイルボビン寄りの領域をコイルボビン側に向かって漸次拡径するテーパ面又は階段状面にしたので、内周面のコイルボビン寄りの領域が可動磁極の中心軸に対して傾斜した面となる。したがって、この領域と可動磁極との間を流れる磁束が生成する磁力において、可動磁極の中心軸に平行な成分の割合がより多くなり、可動磁極の摺動開始時の推力をさらに大きくすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、補助磁極のコイルボビン側の内周側縁辺領域をコイルボビン側に向かって突出させるので、補助磁極と可動磁極との間の磁気ギャップを縮めることができ、可動磁極の摺動開始時の推力をさらに大きくすることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、補助磁極のコイルボビン側の内周側縁辺領域がコイルボビンの巻胴部の内部に進入し、コイルボビン側の内周側縁辺領域以外の領域がコイルボビンの一方のフランジに接しているので、補助磁極をコイルボビンの保持部材として利用することができる。さらに、補助磁極とコイルボビンとの間の無用な空間をなくすことにより、ソレノイドの小型化に寄与することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、固定磁極と補助磁極との間に非磁性材のスペーサを設け、さらに、補助磁極及びスペーサを固定ピンによって固定磁極に固定するので、補助磁極と固定磁極及びケースとの間の磁気ギャップを正確に設定することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、固定磁極の開口部の周囲を凸部としているので、可動磁極の中心軸方向において、シャフトを支持する軸受を嵌合するのに十分な厚さ(長さ)を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。まず、以下の説明において、「先端側」はシャフト56の突出部58を設けている側、つまり、
図1乃至
図3、及び、
図10乃至
図15の下側と定義し、ソレノイドの「基端側」はケース60の小径部62を設けている側、つまり、
図1乃至
図3、及び、
図10乃至
図15の上側と定義する。また、「中心軸」は、可動磁極50の中心軸と定義する。なお、以下に説明する各実施の形態に係るソレノイドにおいて、可動磁極50の中心軸とシャフト56及びケース60の中心軸は、互いに一致している。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの通電状態における断面図である。
図1において、10はソレノイド、20は補助磁極、22は凸部、24bは先端側テーパ面、30は固定磁極、31は本体部、32は凸部、40はスペーサ、41は本体部、42は凸部、50は可動磁極、51は本体部、52は底部、54は中空部、56はシャフト、57は嵌合部、58は突出部、60はケース、61は本体部、62は小径部、63は段差部、70はコイルボビン、71は巻胴部、72は第1フランジ部、73は第2フランジ部、74は第3フランジ部、75はコイル、76及び77は無給油ベアリング、78はスペーサである。また、
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの通電状態におけるA−A線断面図である。
図2において、79a及び79bは固定ピンであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。さらに、
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの非通電状態における断面図である。
図3において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。
【0027】
最初に、第1の実施の形態に係るソレノイドの全体構成の概略について述べる。本発明は、例えばストローク長が6〜8mmと長い、いわゆるロングストロークソレノイドに適しており、
図1乃至
図3に示しているソレノイド10もロングストロークのソレノイドである。可動磁極50は、
図1に示すように、軽量化のために有底円筒状に形成されている。可動磁極50の本体部51は、先端側がコイルボビン70の巻胴部71の内部に配置され、基端側が無給油ベアリング76に支持されている。可動磁極50の底部52には、シャフト56の基端側が嵌合されている。シャフト56の先端側は、固定磁極30に固定された無給油ベアリング76に支持されている。また、可動磁極50の先端側には、固定磁極30の凸部32が対向しており、コイル75への通電時には、可動磁極50が凸部32に吸引され、
図1に示す状態になる。固定磁極30は、ケース60の先端側の開口部に嵌合されており、コイルへの通電時には、可動磁極50、ケース60及び補助磁極20と共に磁気回路を構成する。ただし、後述するように、本発明は、固定磁極30と補助磁極20との間には磁束がほとんど流れない構成になっており、固定磁極30と補助磁極20とは異なる経路の磁気回路を構成していると言える。
【0028】
さらに、ソレノイド10の各構成部品について説明する。
図4は、本発明の第1の形態に係るソレノイドの固定磁極を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)はB−B線断面図である。
図3において、33は開口部、34及び35は上面、36a及び36bはピン用孔、37及び38は周側面、39は下面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0029】
固定磁極30は、略円板状に形成された本体部31と、本体部31の中央寄りの領域から基端側に向かって突出する凸部32、本体部31及び凸部32の中央に形成された円形の開口部33とを備えている。本体部31は、ケース60に圧入して嵌合されるので、周側面37がケース60の内周面に強く押し当てられた状態となる。さらに、本体部31は、中心軸に対して点対称となる位置に、ピン用孔36a及び36bが形成されている。ピン用孔36a及び36bは、
図2に示すように、固定ピン79a及び79bを打ち込むための孔である。また、凸部32は、略円板状に形成されており、ケース60の基端側開口部側に突出しており、可動磁極50に対向するように形成されている。凸部32の周側面38は、スペーサ40に接する部分であり、スペーサ40を固定する際の位置決めに利用される。
【0030】
ところで、従来技術に係るフラット型のソレノイドにおいては、凸部32の周辺領域も凸部32と同じ肉厚とする、すなわち、凸部32の上面34と周辺領域の上面35とが同一平面をなすように形成されることが多いが、この実施の形態に係るソレノイド10、及び、他の実施の形態に係る架空ソレノイドおいては、補助磁極20及びスペーサ40を配置する空間を確保するために、凸部32の周辺領域の肉厚を薄くしている。開口部33は、無給油ベアリング77が嵌合される貫通孔である。前述のように、凸部32は、周辺領域より肉厚が大きいので、上面34と下面39との距離も上面35と下面39との距離より長くなる。このように構成したことによって、無給油ベアリング77は、中心軸方向において比較的長いものを選択することができる。長い無給油ベアリング77を採用できることは、可動磁極50及びシャフト56が中心軸に対して僅かに傾いた状態で摺動することを防止でき、ロングストロークソレノイドにおいて非常に有用な構成と言える。
【0031】
図5は、本発明の第1の形態に係るソレノイドのスペーサを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)はC−C線断面図である。
図5において、43は開口部、44aは基端側垂直面、44bは先端側テーパ面、45は上面、46a及び46bはピン用孔、47及び48は周側面、49は下面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0032】
スペーサ40は、略円板状に形成された本体部41と、本体部41の中央寄りの領域から基端側に向かって突出する凸部42、本体部41及び凸部42の中央に形成された円形の開口部43とを備えている。本体部41は、上面45側(基端側)に補助磁極20、下面49側(先端側)に固定磁極30が位置するように配置され、補助磁極20と固定磁極30との間に所定距離の磁気ギャップを保持するための役割を持つ。また、本体部41は、中心軸に対して点対称となる位置に、ピン用孔46a及び46bが形成されている。ピン用孔46a及び46bは、
図2に示すように、固定ピン79a及び79bを挿通するための孔である。なお、スペーサ40は、上面45側に補助磁極20を配置した状態で固定ピン79a及び79bによって固定磁極30に固定される。スペーサ40は、本体部41を磁気ギャップとして設けることから、非磁性ステンレス鋼SUS305など特に非磁性としての特性が高く、強度も十分である材料が望ましい。なお、補助磁極20に対して加わる強い吸引力によって、例えばピン用孔46a及び46bやその周辺部などが変形しない強度を持ち、かつ、磁化されにくいものであるならば、他の材料であってもよい。
【0033】
凸部42は、開口部43を取り囲むように、かつ、略円環状の薄い板のような形状に形成されており、基端部側に対向している。また、凸部42の周側面48は、後述するように、補助磁極20の位置決めに利用される。開口部43は、固定磁極30の凸部32が挿入される貫通孔である。開口部43の基端側垂直面44aは、固定磁極30の凸部32の周側面38に接する部分であり、ソレノイド10の組立工程において、スペーサ40を固定する際の位置決めに利用される。開口部43の先端側テーパ面44bは、部品の大きさのバラツキから、スペーサ40が固定磁極30の上面35から浮き上がった状態で組み立てられることを防止する、すなわち、先端側テーパ面44bと固定磁極30との間隙によって部品の大きさのバラツキに対応するために形成されている。なお、前述のように、スペーサ40は、固定ピン79a及び79bによって固定磁極30に固定する際に、基端側垂直面44aを位置決めに利用しているが、本体部41の周側面47がケース60に接するように形成し、周側面47を基準として位置決めをしてもよい。なお、コイル75への通電停止後に、可動磁極50及びシャフト56を元の位置に復帰させるためには、ソレノイド10にスプリングを設ける、又は、ソレノイド10を装着した機器から反発力が加わるようにすることによって可動磁極50及びシャフト56を押し戻す必要があるが、本発明との関連が薄い事項であるので、その記載を省略する。
【0034】
図6は、本発明の第1の形態に係るソレノイドの補助磁極を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図6において、23は開口部、26a及び26bはピン用孔、27は周側面、28は上面、29は下面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図7は、本発明の第1の形態に係るソレノイドの補助磁極を示し、(c)はD−D線図、(b)はE−E線断面図である。
図7は、21は本体部、24は上部寄りテーパ面、25は垂直面であり、その他の符号は
図1及び
図6と同じものを示す。
【0035】
補助磁極20は、磁気回路を構成する磁性部品の一つであるが、他のいずれの磁性部品にも接していない点に大きな特徴がある。まず、補助磁極20は、略円板状に形成された本体部21と、本体部21の中央寄りの領域から基端側に向かって突出する凸部22、本体部21及び凸部22の中央に形成された円形の開口部23とを備えている。すなわち、固定磁極30、スペーサ40及び補助磁極20は、後述するように、重ね合わせて固定するために近似した形状にしている。本体部21は、凸部22及び開口部23の周辺部から流れ込んだ磁束をケース60に流す上での経路となる。また、本体部21は、中心軸に対して点対称となる位置にピン用孔26a及び26bが形成されている。ピン用孔26a及び26bは、固定ピン79a及び79bを上面28側(基端側)から下面29(先端側)に向かって、本体部21及びスペーサ40を挿通して固定磁極30に打ち込むための孔である。
【0036】
凸部22は、基端側に突出して、可動磁極50との間の磁気ギャップを短くして、可動磁極50との間から磁束が流れ込みやすくなるように形成したものである。すなわち、固定磁極30と可動磁極50との間の磁気ギャップが非常に大きく、両者の間で磁束がほとんど流れていない場合であっても、可動磁極50から補助磁極20への磁束の流れができるので、可動磁極50の摺動開始から間もない局面において必要となる推力を確保することができる。さらに、
図1乃至
図3に示しているように、凸部22は、コイルボビン70の巻胴部71の内部に進入した状態に配置されている。さらに、本体部21の上面28にコイルボビン70の第1フランジ部72が接した状態に配置されている。このように配置することによって、上面28の上方の空間をなにもない空間とせずに有効に利用するができる。
【0037】
また、開口部23の内周面は、フラット型とコニカル型との中間的な特性を得るために好適な形状に形成されている。すなわち、開口部23は、
図7(d)に示すように、コイルボビン70寄りの基端側テーパ面24aが基端側に向かって拡径し、かつ、先端側テーパ面24bよりも中心軸に対する傾斜角が小さくなるように形成されている。さらに、開口部23は、固定磁極30寄りの先端側テーパ面24bが先端側に向かって拡径し、かつ、基端側テーパ面24aよりも中心軸に対する傾斜角が大きくなるように形成されている。この開口部23の構成は、発明者が実験及び磁場解析を行った得た知見に基づくものであり、第1に、補助磁極20を固定磁極30よりも可動磁極50により近いところに配置した上で、開口部23の内周面を基端側の面と先端側の面とで異なるものとする。このように構成することによって、可動磁極50から補助磁極20に流れた磁束を固定磁極30に流れず、ケース60に流れ易くする。つまり、可動磁極50、固定磁極30、ケース60を経由して可動磁極50に戻る磁気回路と、補助磁極20、ケース60を経由して可動磁極50に戻る磁気回路との2つの磁気回路を生成することが後述する理由によって容易になる。
【0038】
第2に、先端側の面を中心軸に対して先端側に拡径し、かつ、基端側テーパ面24aよりも中心軸に対する傾斜角が大きい先端側テーパ面24bとする。先端側の面をこのように形成することによって、補助磁極20と、固定磁極30の本体部31及び凸部32、特に凸部32の周側面との間の磁気ギャップをソレノイド10の耐久性等に影響のない範囲で可能な範囲で大きくし、固定磁極30との間の磁気抵抗が大きくなれば、可動磁極50から補助磁極20を経由して固定磁極30に流れる磁束量をできる限り低減させることが可能となる。その一方、可動磁極50から補助磁極20を経由してケース60に流れる磁束量を大きくできるという効果が得られる。
【0039】
第3に、基端側の面を中心軸に対して基端側に拡径し、かつ、先端側テーパ面24bよりも中心軸に対する傾斜角が小さい基端側テーパ面24aとする。基端側の面をこのように形成することによって、コイル75への通電開始から短時間の間、つまり、可動磁極50が固定磁極30から遠いところに位置している状態において、凸部32の周側面の可動磁極50に対向する面積を大きくすることができる。したがって、可動磁極50が固定磁極30から遠いところに位置している状態において、可動磁極50から補助磁極20へ流れる磁束量を増大させて、可動磁極50の推力を増大させることが可能となる。
【0040】
さらに、補助磁極20は、開口部23の基端側テーパ面24a及び先端側テーパ面24bの特徴に加えて、中心軸に平行になるように形成した周側面27とケース60との間に磁気ギャップを設けている。このように磁気ギャップのある構成にすることによって、可動磁極50が固定磁極30に接近した状態において、可動磁極50から補助磁極20を経由してケース60に至る磁気回路の磁気抵抗が可動磁極50から固定磁極30を経由してケース60に至る磁気回路の磁気抵抗よりも相当に大きくなるようにしている。したがって、可動磁極50が固定磁極30に接近すると、可動磁極50から補助磁極20へ流れる磁束量は非常に小さくなり、補助磁極20から可動磁極50に加わる吸引力も小さなものとなる。これは、すなわち、推力に寄与しない中心軸に直交する方向の磁力の成分比を直交する方向の磁力成分の割合が大幅に低下することを意味する。したがって、補助磁極20は、可動磁極50が固定磁極30から遠いところに位置している状態ではコニカル型に近い作用効果が得られるが、可動磁極50が固定磁極30に接近していると、フラット型に近い作用効果が得られることになる。
【0041】
図8は、本発明の第1の形態に係るソレノイドの構成部品を示し、(a)は可動磁極の平面図、(b)は可動磁極のF−F線断面図、(c)はシャフトの平面図、(d)はシャフトの正面図、(e)は固定ピンの正面図、(f)は固定ピンの底面図である。
図8において、53はテーパ面、55は開口部であり、その他の符号は
図1及び
図2と同じものを示す。また、
図9は、本発明の第1の形態に係るソレノイドのケースを示し、(a)は平面図、(b)はG−G線断面図である。
図9において、64及び65は内周面、66は段差面、67は開口部である。
【0042】
可動磁極50は、
図8(a)及び(b)に示すように、底部52が先端側に位置している略有底円筒状に形成されており、軽量化のために、磁束があまり流れない中心軸に近い部分を中空部54としている。また、本体部51の周側面の先端部近傍を先端側に向かって縮径するようなテーパ面53に形成している。テーパ面53は中心軸に対して小さな傾斜角となるように形成されており、これによってコニカル型に近い推力特性を得ることができる。底部52の開口部55は、シャフト56が嵌合される貫通孔である。シャフト56は、
図8(c)及び(d)に示すように、略円形棒状に形成されており、基端側の端部近傍が可動磁極50の開口部55に嵌合される嵌合部57となる。先端側の突出部58及びその近傍は、無給油ベアリング77に支持された状態で摺動する。
【0043】
ケース60は、磁性材からなり、径が大きい略円筒状の本体部61と、本体部61よりも径が小さい略円筒状の小径部62を備えている。本体部61には、コイルボビン70などが収納される。本体部61の先端側の開口部67の内周面64側には、固定磁極30の本体部31が嵌合される。本体部61の基端側に設けられた小径部62の内周面65側は、無給油ベアリング76が嵌合される。本体部61と小径部62との段差部63の段差面66は、補助磁極20の本体部21と共にコイルボビン70を挟持して保持する。なお、ケース60は、より長い略円筒形状とし、基端側を蓋部材で閉止し、さらにこの蓋部材の中央の開口部に無給油ベアリングを嵌合する構成にしてもよい。
【0044】
さらに、
図1乃至
図3に戻って、他の構成備品について説明する。コイルボビン70は、巻胴部71の先端側端部に第1フランジ部72、基端側端部に第2フランジ部73が設けられており、さらに第2フランジ部73の内側近傍に第3フランジ部74が設けられている。第1フランジ部72と第3フランジ部74との間には、コイルワイヤを巻回してコイル75を形成している。なお、通常のコイルに代えてモールドコイルを使用してもよい。また、前述のように、巻胴部71の先端側の開口部には、補助磁極20の凸部22が進入した状態で組み立てられており、組立時には凸部22によってコイルボビン70の位置決めがなされる。したがって、凸部22は、磁気回路を構成する部材としての役割だけでなく、ソレノイド10の組立時に位置決め用部材としての役割も併せ持っている。無給油ベアリング76と無給油ベアリング77は、それぞれ可動磁極50とシャフト56を支持するものである。無給油ベアリング76及び78としては、金属製のドライブッシュが好適であるが、樹脂製のドライブッシュや、給油が必要なタイプのベアリングであってもよい。スペーサ78は、中央に開口部がある薄い円板状に形成されており、固定磁極30に吸引された可動磁極50がコイル75への通電停止後に固定磁極30に張り付いて動かなくなることを防止する。
【0045】
続けて、ソレノイド10の組立手順の概要について説明する。
図10は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの組立手順を示す斜視図(1)である。また、
図11は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの組立手順を示す斜視図(2)である。
図10及び
図11において用いた符号は、すべて
図1と同じのものを示す。
【0046】
まず、
図10に示すように、無給油ベアリング77を固定磁極30の開口部33に圧入しておく。次に、固定磁極30の凸部32がスペーサ40の開口部43に挿入されるようにしながら、スペーサ40を固定磁極30上に載せる。さらに、スペーサ40の凸部42の周側面48が補助磁極20の開口部23の垂直面25に接するように、つまり、凸部42が開口部23に挿入されるようにしながら、補助磁極20をスペーサ40上に載せる。次に、固定ピン79aと固定ピン79bとをピン用孔26a及び46aとピン用孔26b及び46bとに挿通させた上で、ピン用孔36aとピン用孔36bに打ち込んで補助磁極20及びスペーサ40を固定磁極30に固定する。続けて、
図11に示すように、無給油ベアリング76をケース60の小径部62に圧入し、さらにコイルボビン70及びコイル75をケース60の内部に挿入しておく。さらに、可動磁極50の開口部55にシャフト56を圧入しておく。次に、ケース60の開口部67に圧入する。最後に、固定磁極30の凸部32上にスペーサ78を配置し可動磁極50とシャフト56とを無給油ベアリング76と無給油ベアリング77とに挿入する。以上の工程によれば、固定磁極30に対して、スペーサ40及び補助磁極20を正確に配置することができ、設計上想定されている推力特性を得ることができる。
【0047】
続けて、ソレノイド10の動作時における磁束の流れの特徴について説明する。
図12は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す断面図(1)である。
図12において、59は磁気ギャップであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図13は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す断面図(2)である。
図13において用いた符号は、すべて
図1及び
図12と同じのものを示す。なお、図中の磁束の流れを示す曲線及び矢印、並びにこれらの太さは模式的なものであり、実際の磁束の流れと同一ではない。くわえて、
図16は、本発明の第1及び第2の実施の形態に係るソレノイドにおける推力特性を示すグラフである。
【0048】
まず、コイル75に通電していない状態においては、
図3に示すように、可動磁極50は固定磁極30から最も遠いところに位置している。この状態において、コイル75に通電すると、
図12(a)に示すように、可動磁極50と固定磁極30との磁気ギャップが大きいことから、磁束の流れは、主として可動磁極50から補助磁極20へ流れ、可動磁極50から固定磁極30への流れは少ない。したがって、可動磁極50に生じる推力は、主として補助磁極20に起因するものとなる。可動磁極50の摺動開始から暫くの間この状態となる。なお、補助磁極20に先端側テーパ面24bを形成して、補助磁極20を固定磁極30の凸部32から大きく離隔させているので、補助磁極20から固定磁極30に流れる磁束量は非常に小さいものになる。次に、可動磁極50が固定磁極30にやや接近すると、
図12(b)に示すように、可動磁極50から固定磁極30へ流れる磁束量が可動磁極50から補助磁極20へ流れる磁束量に近くなる。
【0049】
可動磁極50が固定磁極30に接近して、可動磁極50と固定磁極30との磁気ギャップが可動磁極50と補助磁極20との磁気ギャップよりも小さくなると、
図13(c)に示すように、磁束の流れは、主として可動磁極50から固定磁極30へ流れ、可動磁極50から補助磁極20への流れは少なくなる。したがって、可動磁極50を補助磁極20に向かって吸引する力、すなわち、中心軸方向の推力に寄与しない磁力は、従来技術に係るコニカル型のソレノイドよりもかなり小さいものとなる。また、補助磁極20とケース60との間に磁気ギャップ59を設けて、補助磁極20とケース60との間の磁気抵抗を意図的に大きくしているので、この構成も可動磁極50から補助磁極20への流れを少なくする作用を発揮している。そして、
図13(d)に示すように、可動磁極50がスペーサ78に当接し、可動磁極50及びシャフト56の摺動が停止したときには、磁束の大半は可動磁極50から固定磁極30へ流れるようになる。
【0050】
さらに、以上の第1の実施の形態の構成を持つ実施例と、磁性部品以外の構成をほぼ同じにしたフラット型及びコニカル型の比較例について実験した。その結果、
図16に示すように、実施例のソレノイドは、可動磁極が固定磁極から遠いところに位置しているときには、コニカル型の比較例に近い特性を持ち、可動磁極が固定磁極に接近してきたときには、フラット型の比較例に近い特性を持っていることが分かった。すなわち、本発明の構成を持つソレノイドは、フラット型のソレノイドとコニカル型のソレノイドとの両方の特長を併せ持つソレノイドを実現できたと言える。
【0051】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10によれば、補助磁極20をコイルボビン70と固定磁極30との間、つまり、可動磁極50が固定磁極30に対して遠いところに位置している状態において、補助磁極20が固定磁極30よりも可動磁極50により近いところに配置すると共に、補助磁極20とケース60及び固定磁極30との間に磁気ギャップが存在し、さらに、補助磁極20とケース60との間の磁気ギャップが補助磁極20と固定磁極30との間の磁気ギャップよりも小さいので、補助磁極20とケースとの間の磁気抵抗が可動磁極50と固定磁極30との間の磁気抵抗よりも小さいものとなる。したがって、コイル75への通電中において、可動磁極50から補助磁極20を経由して固定磁極30へ流れる磁束が非常に少なくなる。また、コイル75への通電開始、つまり、可動磁極50の摺動開始時には、可動磁極50と補助磁極20との磁気ギャップが相対的に小さいことから、磁束は主として可動磁極50から補助磁極20を経由してケース60に流れる。可動磁極50が固定磁極30に接近したときには、可動磁極50と固定磁極30との磁気ギャップが小さくなり、可動磁極50と固定磁極30との間に磁気抵抗が小さくなるので、磁束は主として可動磁極50から固定磁極30を経由してケース60に流れ、補助磁極20にはあまり流れなくなる。すなわち、可動磁極50の摺動開始時からしばらくの間は補助磁極20が機能し、可動磁極50が固定磁極30に接近して来ると、補助磁極20があまり機能しない構成となる。したがって、可動磁極50の動作の前半がコニカル型の特長、可動磁極の動作の後半がフラット型方の特長を持つようになる。また、補助磁極20の中央に形成された開口部23の内周面の固定磁極寄りの領域を固定磁極30側に向かって漸次拡径する先端側テーパ面24bとしているので、可動磁極50から補助磁極20を経由してケース60へ流れる磁束の経路となる領域に好ましくない影響を及ぼすことなく、補助磁極20と固定磁極30との間の磁気ギャップを大きくすることができる。
【0052】
さらに、補助磁極20の開口部23において、内周面のコイルボビン寄りの領域をコイルボビン70側に向かって漸次拡径する基端側テーパ面24aとしたので、内周面のコイルボビン寄りの領域が可動磁極の中心軸に対して傾斜した面となる。したがって、基端側テーパ面24aと可動磁極50との間を流れる磁束が生成する磁力において、可動磁極50の中心軸に平行な成分の割合がより多くなり、可動磁極50の摺動開始時の推力をさらに大きくすることができる。くわえて、補助磁極20のコイルボビン70側の内周側縁辺領域をコイルボビン70側に向かって突出した凸部22としたので、補助磁極20と可動磁極50との間の磁気ギャップを縮めることができ、可動磁極50の摺動開始時の推力をさらに大きくすることができる。また、補助磁極20のコイルボビン70側の内周側縁辺領域にある凸部22がコイルボビン70の巻胴部71の内部に進入し、コイルボビン70側の内周側縁辺領域以外の領域がコイルボビン70の第1フランジ部72に接しているので、補助磁極20をコイルボビン70の保持部材として利用することができる。さらに、補助磁極20とコイルボビン70との間の無用な空間をなくすことにより、ソレノイド10の小型化に寄与することができる。くわえて、固定磁極30と補助磁極20との間に非磁性材のスペーサ40を設け、さらに、補助磁極20及びスペーサ40を固定ピン79a及び79bによって固定磁極30に固定するので、補助磁極20と固定磁極30及びケース60との間の磁気ギャップを正確に設定することができる。さらに、固定磁極30の開口部33の周囲を凸部32としているので、中心軸方向において、シャフト56を支持する無給油ベアリング77を嵌合するのに十分な厚さ(長さ)を確保することができる。
【0053】
さらに、本発明の他の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図14は、本発明の第2乃至第4の実施の形態に係るソレノイドを示す部分断面図であり、(a)は第2の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図、(b)は第3の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図、(c)は第4の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図である。
図14において、11、12及び13はソレノイド、80は補助磁極、81aは基端側テーパ面、81bは先端側テーパ面、82は垂直面、83はコイルボビン、84はコイル、85は補助磁極、86は凸部、87aは基端側垂直面、87bは先端側テーパ面、88は垂直面、89は可動磁極、90は補助磁極、91は凸部、92aは基端側テーパ面、92bは先端側テーパ面、93は垂直面、94はスペーサであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図15は、本発明の第5及び第6の実施の形態に係るソレノイドを示す部分断面図であり、(d)は第5の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図、(e)は第6の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図である。
図15において、14及び15はソレノイド、95は補助磁極、96は凸部、97aは基端側テーパ面、97bは先端側テーパ面、98はスペーサ、99は縁辺凸部、100は補助磁極、101、102、103、104、105、106及び107は磁性円形板、108は先端側階段状面、109は基端側階段状面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0054】
本発明は、第1の実施の形態に係るソレノイド10の他に、以下のような実施の形態に係るソレノイドを提供することが可能である。まず、第2の実施の形態に係るソレノイド11は、
図14(a)に示すように、補助磁極80の基端側テーパ面81a、先端側テーパ面81b及び垂直面82の形状は、補助磁極20の凸部22に相当する部分を形成せず、中心軸方向において補助磁極80の上面全体を補助磁極20の凸部22と同じ位置となるように形成している。これによって、コイルボビン83及びコイル84は、中心軸方向においてコイルボビン70及びコイル75よりも短いものとなっている。したがって、補助磁極80の加工は、補助磁極20よりも簡便にはなるが、コイル84がコイル75よりも短いものとなるので、コイル84に通電したときの推力は若干弱くなると言える。
【0055】
次に、第3の実施の形態に係るソレノイド12は、
図14(b)に示すように、中心軸方向における補助磁極85の凸部86は補助磁極20の凸部22と同じであるが、中心軸に対して平行な基端側垂直面87aを形成し、可動磁極89もテーパ面を設けず、周側面全体を中心軸に対して平行な面としている。なお、先端側テーパ面87b及び垂直面88は、補助磁極20の先端側テーパ面24b及び垂直面25と同じである。したがって、可動磁極89の加工は、可動磁極50よりも簡便にはなるが、補助磁極85の開口部の内周面のコイルボビン寄りの領域が可動磁極89に対向していないので、コイル75への通電開始からしばらくの間における推力は、ソレノイド10よりも推力は若干弱くなる。
【0056】
続けて、第4の形態に係るソレノイド13は、
図14(c)に示すように、中心軸方向においてスペーサ94をスペーサ40よりも薄くしている。補助磁極90の凸部91、基端側テーパ面92a、端側テーパ面92b及び垂直面93の形状は、補助磁極20の対応する部分と同じであるが、補助磁極90が中心軸方向においてより先端側に配置されている。ただし、補助磁極20が固定磁極30よりも可動磁極50により近いところに配置されている必要がある。このようにしたことによって、補助磁極90は、中心軸方向において固定磁極30により近いところに配置されており、推力特性もソレノイド10よりもフラット側のソレノイドにより近いものとなる。
【0057】
また、第5の形態に係るソレノイド14は、
図15(d)に示すように、補助磁極95は、凸部96及び基端側テーパ面97aの形状は、補助磁極20の凸部22及び基端側テーパ面24aと同じであるが、先端側テーパ面97bは、垂直面を形成していないことから、中心軸方向において若干長くなっている。また、スペーサ98は、外周側の縁辺部近傍に縁辺凸部99を設けている。縁辺凸部99は、ソレノイド14の組立時に、補助磁極95の位置決めに使用するものである。したがって、内周側の縁辺部近傍を補助磁極の位置決めに使用する他の実施の形態とは、逆の構成を有していると言える。
【0058】
続けて、第6の形態に係るソレノイド15の補助磁極100は、
図15(e)に示すようにソレノイド14の補助磁極95を積層した磁性円形板101、102、103、104、105、106及び107によって構成されるようにしている。また、磁性円形板101、102、103、104、105、106及び107の開口部の径をそれぞれ異なる所定の径にすることによって、基端側テーパ面97a及び先端側テーパ面97bに相当する基端側階段状面108及び先端側階段状面109を構成している。したがって、比較的簡単な外形を持つ磁性円形板101、102、103、104、105、106及び107を積層することによって中心軸方向に複雑な形状を持つ補助磁極を構成できるという利点がある。
【0059】
なお、発明者が実験及び磁場解析から得た知見によれば、以上の各実施の形態に係るソレノイドにおいても、コイルへの通電を停止しているときに補助磁極が固定磁極よりも可動磁極に対して(最も近い部分同士が)近くなるように配置されていること、補助磁極と周囲にある磁性部材との間に必ず磁気ギャップを設けること、先端側テーパ面を基端側テーパ面24よりも中心軸に対して大きく傾斜させて、補助磁極と固定磁極との間に十分な磁気ギャップを設けることが特に重要である。
【0060】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10において、本発明の第2乃至第6の実施の形態に係るソレノイドの構成の一部を取り入れるなど、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の構成にすることが可能である。