(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者は、従来の水洗便器について、リム吐水口から吐出される洗浄水によるボウル部の洗浄が終了した後、残水がリム吐水口から点滴し、吐水(洗浄)が終了していないとの誤解を与える可能性があると共に、見映えが宜しくなく、また、残水の点滴によりボウル部に水垢が発生する懸念があることを把握した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、リム吐水口から吐出される洗浄水によるボウル部の洗浄が終了した後、残水がリム吐水口から点滴してしまうことを抑制できる水洗式大便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続された排水路と、前記導水路から前記排水路に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路の出口開口の断面積は、前記水抜流路の入口開口の断面積よりも大き
く、前記水抜流路の出口開口は、前記排水路の上面側の最下位置よりも前方側において開口されていることを特徴とする水洗式大便器である。
【0008】
本発明によれば、導水路内の残水が、水抜流路を経て排水路に直接排水される。これにより、リム吐水口から吐出される洗浄水によるボウル部の洗浄が終了した後、残水がリム吐水口から点滴してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0009】
また、本発明における導水路とは、汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水するものであるから、当該導水路(例えばリム通水開始領域)から排水路に至る水抜流路の長さを、結果として短くすることができる。これにより、効果的な水抜作用を期待することができる。
【0010】
好ましくは、導水路の底面は、水抜流路の入口開口に向けて、高さ位置が低くなっている。この場合、導水路の残水が効果的に水抜流路の入口開口に向けて案内されるため、導水路の残水がリム吐水口から点滴してしまうことを一層効果的に抑制することができる。
【0011】
また、導水路は、凹部を有しており、水抜流路の入口開口は、当該凹部内に設けられていることが好ましい。この場合、当該凹部に残水が集められると水位に応じた水頭圧が作用するため、一層効果的な水抜作用を期待することができる。
【0012】
また、好ましくは、リム通水路の底面は、導水路または水抜流路の入口開口に向けて、高さ位置が低くなっている。この場合、リム通水路の残水が効果的に導水路ないし水抜流路の入口開口に向けて案内されるため、リム通水路の残水がリム吐水口から点滴してしまうことを一層効果的に抑制することができる。
【0015】
あるい
は、水抜流路が当該出口開口の近傍領域で延びる方向は、当該出口開口に向かって後方向きである。この場合も、水抜流路を通過してくる洗浄水が、封水を後方側(排出側)に向けて押し出すように作用するため、汚物、特に水の勢いに抗して浮遊してくる比較的微細な浮遊汚物の排出に効果的である(微弱サイホン)。
【0016】
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路の出口開口の断面積は、前記水抜流路の入口開口の断面積よりも大きく、前記水抜流路は、トラップ流路を有していること
を特徴とする水洗式大便器である。ここでいうトラップ流路というのは、下方へ延びる流路部分の後に再び上方へ延びる流路部分を有する流路であり、排水路において広く採用されている構成である。
【0017】
水抜流路がトラップ流路を有している場合には、水抜流路の出口開口に対して封水水面が低下してしまった場合であっても、水抜流路から排水路への残水の排出が途切れた後に水抜流路内に流入する残水によって、いわゆる封水が溜まり、当該封水によって水抜流路を介して臭気が上がってくること、衛生害虫等が侵入してくることが抑制される。
【0018】
水抜流路がトラップ流路を有している場合には、水抜流路の出口開口を設計上の封水水面よりも上方に位置づけることも可能である。
【0019】
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路の出口開口の断面積は、前記水抜流路の入口開口の断面積よりも大きく、前記導水路は、
前記水抜流路の入口開口より上流側の
前記導水路の底面から突出し、上流側から
前記水抜流路の入口開口に向かう洗浄水を
前記リム通水路にガイドするガイド部を有すること
を特徴とする水洗式大便器である。当該構成によれば、上流側から水抜流路の入口開口に向かう洗浄水をリム通水路にガイドすることができるため、ボウル部の洗浄中において、十分な量の洗浄水をリム吐水口から吐水することができる。
【0020】
前述のように、ボウル部の洗浄中においては、十分な量の洗浄水がリム吐水口から吐水されるべきであるから、水抜流路から排水されてしまう洗浄水の量は少ない方がよい。従って、水抜流路の入口開口の断面積は、小さい方がよい。具体的には、残水の水抜機能のみで足りる場合には、水抜流路の入口開口の断面積は7mm
2〜20mm
2程度であることが好ましく、微弱サイホン作用を期待する場合には、水抜流路の入口開口の断面積は78mm
2〜314mm
2程度であることが好ましい。また、このように水抜流路の入口開口の断面積が小さい場合、水抜流路の入口開口の近傍領域の断面積が水抜流路の入口開口の断面積よりも大きくなっていることが好ましい。当該構成は、表面張力が作用して残水が水抜流路の入口開口に流入しない、ということを抑制する上で効果的である。
【0021】
水抜流路の少なくとも一部は、泥漿を外部に排出するために形成された排泥流路の一部からなることが好ましい。すなわち、一般に陶器として製造される水洗式大便器の製造過程で形成される排泥流路の一部を、水抜流路の少なくとも一部として流用することが好ましい。
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路の出口開口は、前記排水路の上面側の最下位置において開口されていることを特徴とする水洗式大便器である。
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路の出口開口は、前記排水路の上面側の最下位置よりも前方側において開口されており、前記水抜流路が当該出口開口の近傍領域で延びる、当該出口開口に向かって後方向きであることを特徴とする水洗式大便器である。
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記水抜流路は、トラップ流路を有していることを特徴とする水洗式大便器である。
また、本発明は、ボウル形状の汚物受け面と、当該汚物受け面の上縁部に形成されたリム部と、を有するボウル部と、前記リム部に設けられ、前記ボウル部内に洗浄水を吐水して当該洗浄水による旋回流を形成するリム吐水部と、前記汚物受け面の後方側に位置するリム通水開始領域まで洗浄水を導水する導水路と、前記導水路に接続され前記リム通水開始領域から前記リム吐水部まで洗浄水を導水するリム通水路と、前記ボウル部の下方に接続されトラップ流路を有する排水路と、前記導水路から前記排水路の上面側に至る水抜流路と、を備え、前記導水路は、前記水抜流路の入口開口より上流側の前記導水路の底面から突出し、上流側から前記水抜流路の入口開口に向かう洗浄水を前記リム通水路にガイドするガイド部を有することを特徴とする水洗式大便器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、導水路内の残水が、水抜流路を経て排水路に直接排水される。これにより、リム吐水口から吐出される洗浄水によるボウル部の洗浄が終了した後、残水がリム吐水口から点滴してしまうことを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗式大便器を説明する。
先ず、
図1及び
図2により、本発明の第1実施形態による水洗式大便器の構成を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗式大便器の洗浄水の流れの様子を示す平面図であり、
図2は、本発明の第1実施形態による水洗式大便器の左右方向中央での断面図である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗式大便器1は、ボウル部8内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器であり、便器本体2を備えている。便器本体2には、洗浄水源である貯水タンク(図示せず)を介して、洗浄水が導入されるようになっている。便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上部前方にボウル部8が形成されている。また、ボウル部8の後方には、貯水タンクの排水口に接続される導水路10が形成され、さらに、ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水路12が形成されている。
【0026】
もっとも、本発明は、洗浄水源として貯水タンクを使用した水洗式大便器に限らず、洗浄水源としてジェットポンプ機構を使用した貯水タンクを使用して洗浄水を供給する水洗便器や、直接洗浄水が供給される直圧給水式、および、ポンプ給水式の水洗便器等にも適用することができる。
【0027】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上縁部に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された凹部20と、を備えている。ここで、本実施形態のリム部18の内周面18aは、
図2に示すように、内側に向かってオーバーハングした形状となっており、旋回する洗浄水(詳しくは後述する)が外部へ飛び出ないようになっている。
【0028】
図1に示すように、ボウル部8のリム部18の内周面の前方から見て左側の中央部後方側に、洗浄水を吐水する第1リム吐水口22(リム吐水部)が形成されている。本実施の形態では、更に、前方から見て右側の後方側且つ第1リム吐水口より後方側にも、第2リム吐水口24(リム吐水部)が形成されている。これらの第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24は、同一方向(
図1では反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになっている。
【0029】
また、
図1に示すように、ボウル部8の汚物受け面16の後方に形成された導水路10は、第1リム吐水口22に洗浄水を供給する第1リム通水路26(リム通水路)及び第2リム吐水口24に洗浄水を供給する第2リム通水路28(リム通水路)に分岐している。当該分岐領域10dが、リム通水開始領域となっている。
【0030】
なお、本実施形態の水洗式大便器1においては、第1リム吐水口22を含む第1リム通水路26と、第2リム吐水口24を含む第2リム通水路28とは、陶器製の便器本体2と一体に形成されている。しかしながら、本発明は、このような形態に限られず、第1リム吐水口を含む第1リム通水路と、第2リム吐水口を含む第2リム通水路とが、便器本体とは別体のディストリビユータ等により形成された形態にも適用可能である。
【0031】
図1及び
図2に示すように、本実施形態による水洗式大便器1のボウル部8の汚物受け面16は、前方側汚物受け面16aと、後方側汚物受け面16bと、を備えている。
【0032】
そして、
図1及び
図2に示すように、リム部18の内周面18aの下方領域に、洗浄水を導く棚形通水路30が形成されている。棚形通水路30は、汚物受け面16の外周領域でもある。棚形通水路30は、第1リム吐水口22から吐水された洗浄水がリム部18の内周面18aに沿って旋回することを支援するために設けられており、第1リム吐水口22からボウル部8の前方端に向かって下方に徐々に下降傾斜する一方で、前方端から後方側に向かっては上方へ徐々に上昇傾斜している(
図2参照)。また、棚形通水路30は、ボウル部8の後方端では幅狭に形成されている。
【0033】
このような棚形通水路30の存在のために、第1リム吐水口22から吐水される洗浄水は、
図1に示すように、ボウル部8の前方端近傍において棚形通水路30から排水路12に向けて流れ落ち始める主流M11を形成すると共に、棚形通水路30を流れ続けて第2リム吐水口24近傍から排水路12に向けて流れ落ち始める副流M12を形成するようになっている。
【0034】
一方、棚形通水路30の後方端が幅狭であるために、第2リム吐水口24から吐水される洗浄水は、ボウル部8の後方端近傍において棚形通水路30から排水路12に向けて流れ落ち始める主流M21を形成すると共に、棚形通水路30を流れ続けて第1リム吐水口22近傍から排水路12に向けて流れ落ち始める副流M22を形成するようになっている。
【0035】
また、
図2に示すように、排水路12は、凹部20の底面と接続し且つ後方下方へ延びる導入管32によって構成されている。導入管32は、トラップ流路を有しており、すなわち、下方へ延びる流路部分32aと、その後に再び上方へ延びる流路部分32bと、を有している。導入管32は、凹部20の底面と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、凹部20から導入管32に流入する洗浄水が当該導入管32内をスムーズに流れるようになっている。
【0036】
本実施形態では、導水路10の底面(の少なくとも一部)、ボウル部8の後方側汚物受け面16b(の少なくとも一部)、及び、排水路12の上面(の少なくとも一部)は、中実領域S(陶器部分)の外表面によって構成されている。そして、当該中実領域Sに、導水路10の底面から排水路12の上面側に至る水抜流路40が形成されている。
【0037】
本実施形態の水抜流路40の出口開口42は、排水路12の上面側の最下位置において開口されている。そして、水抜流路40は出口開口42の近傍領域において、鉛直下向きに延びる。
【0038】
水抜流路40の入口開口41の断面積は、7mm
2〜20mm
2程度である。但し、水抜流路40の入口開口41を除いた部分(水抜流路40の入口開口41の近傍領域を含む)の断面積は、水抜流路40の入口開口41の断面積よりも大きくなっており、具体的には、20mm
2〜80mm
2程度である。なお、
図1に示すように、本実施形態において入口開口41は円形であるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、半円形や四角形等でもよい。
【0039】
そして、導水路10の底面は、水抜流路40の入口開口41に向けて、高さ位置が低くなっている。具体的には、傾斜角度5°程度で傾斜している。
【0040】
更に、本実施の形態の導水路10の底面は、深さ5mm程度の凹部10rを有しており、水抜流路40の入口開口41は、当該凹部10r内に設けられている。
【0041】
また、リム通水路26、28の底面は、導水路10の凹部10r(すなわち水抜流路40の入口開口41)に向けて、高さ位置が低くなっている。具体的には、傾斜角度2°程度で傾斜している。
【0042】
次に、以上のような構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0043】
使用者が操作スイッチ(図示せず)をON操作すると、貯水タンクの排水口(図示せず)が開き、所定量の洗浄水が導水路10内に流入する。洗浄水は、導水路10からリム通水開始領域を経て第1リム通水路26及び第2リム通水路28を流れ、第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24からそれぞれ吐水される。
【0044】
前述のように、第1リム通水路26の底面及び第2リム通水路28の底面には、第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24に至る洗浄水の通水を妨げるような傾斜が設けられている。しかし、洗浄水の流入開始時には洗浄水に勢いがあるため、これらの傾斜にも拘わらず、洗浄水は第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24を通過して吐水される。
【0045】
本実施形態では、第1リム吐水口22から吐水される洗浄水は、ボウル部8の前方端近傍において棚形通水路30から排水路12に向けて流れ落ち始める主流M11を形成すると共に、棚形通水路30を流れ続けて第2リム吐水口24近傍から排水路12に向けて流れ落ち始める副流M12を形成する。第1リム吐水口22からの主流M11も副流M12も、旋回流となって汚物受け面16を洗浄しながら、排水路12へと排出される。
【0046】
一方、第2リム吐水口24から吐水される洗浄水は、ボウル部8の後方端近傍において棚形通水路30から排水路12に向けて流れ落ち始める主流M21を形成すると共に、棚形通水路30を流れ続けて第1リム吐水口22近傍から排水路12に向けて流れ落ち始める副流M22を形成する。第2リム吐水口24からの主流M21も副流M22も、旋回流となって汚物受け面16を洗浄しながら、排水路12へと排出される。
【0047】
導水路10内に流入した所定量の洗浄水は、ほぼその全てが第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24から吐水され、僅かな一部が水抜流路40を介して排水路12に直接排出され、また、僅かな一部が流れに取り残されて導水路10の底面や第1リム通水路26及び第2リム通水路28の底面に留まる。このように留まった残水は、そのまま存置されると、カビなどが生えるという懸念がある。また、リム吐水口22、24から点滴すると、吐水(洗浄)が終了していないとの誤解を与える可能性があると共に、見映えが宜しくなく、また、残水の点滴によりボウル部に水垢が発生する懸念がある。
【0048】
本実施形態では、そのような問題を解決すべく、導水路10の底面から排水路12の上面側に至る水抜流路40が形成されると共に、導水路10の底面が水抜流路40の入口開口41に向けて、傾斜角度5°程度で傾斜している。このため、導水路10に取り残された残水は、当該傾斜のために水抜流路40の入口開口41へと案内されて水抜される。
【0049】
特に、本実施形態では、導水路10の底面に深さ5mm程度の凹部10rが設けられ、水抜流路40の入口開口41は当該凹部10r内に設けられている。このため、当該凹部10rに集められた残水の水位に応じた水頭圧が作用することで、一層効果的な水抜作用を期待することができる。
【0050】
また、本実施形態では、リム通水路26、28の底面も、導水路10の凹部10r(すなわち水抜流路40の入口開口41)に向けて傾斜角度2°程度で傾斜している。このため、リム通水路26、28に取り残された残水も、当該傾斜のために水抜流路40の入口開口41へと(逆向きに)案内されて水抜される。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、リム吐水口22、24から吐出される洗浄水によるボウル部8の洗浄が終了した後(導水路10への所定量の洗浄水の供給が終了した後)、導水路10内に留まりそうになった残水が導水路10の底面の傾斜によって水抜流路40の入口開口41へと案内されて排水路12に排水され、また、リム通水路26、28内に留まりそうになった残水についてもリム通水路26、28の底面の傾斜によって水抜流路40の入口開口41へと(逆向きに)案内されて排水路12に排水されるため、残水がリム通水路26、28を経てリム吐水口22、24から点滴することが効果的に抑制される。
【0052】
特に、本実施形態の水抜流路40によれば、汚物受け面16の後方側に位置するリム通水開始領域から排水路12に至るまで、長さが比較的短いため、効果的な水抜作用を期待することができる。
【0053】
また、本実施形態の導水路10は、凹部10rを有しており、水抜流路40の入口開口41は、当該凹部10r内に設けられているため、当該凹部10rに残水が集められるとその水位に応じた水頭圧が作用して、一層効果的な水抜作用を期待することができる。
【0054】
また、本実施の形態の水抜流路40の出口開口42は、排水路12の上面側の最下位置において開口されているため、封水水位が低下して水抜流路40を介して臭気が上がってきてしまうという懸念に対して最も有効である。
【0055】
また、本実施の形態の水抜流路40の入口開口41の断面積は、直径3mm〜5mm程度であるから、ボウル部8の洗浄中に水抜流路40から排水されてしまう洗浄水の量は少なく抑えられている。一方、水抜流路40の入口開口41の近傍領域の断面積が水抜流路40の入口開口41の断面積よりも大きくなっているために、表面張力が作用して残水が水抜流路40の入口開口41に流入しないということも防止されている。
【0056】
なお、水抜流路40の少なくとも一部、例えば入口開口41及びその近傍領域を除く部分は、泥漿を外部に排出するために形成された排泥流路の一部からなることが好ましい。すなわち、陶器として製造される中実領域Sの製造過程で形成される排泥流路の一部を、水抜流路40の少なくとも一部として流用することが好ましい。
【0057】
次に、本発明の第2実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第2実施形態による水洗式大便器201の左右方向中央の断面図である。
【0058】
図3に示すように、本実施形態の水洗式大便器201においては、水抜流路240の出口開口242が、排水路12の上面側の最下位置よりも後方側において開口されている。そして、水抜流路240の出口開口242の近傍領域の方向が、当該出口開口242に向かって後方向きである。
【0059】
本実施形態の水抜流路240の断面積は、入口開口241及びその近傍領域を含めて、78mm
2〜314mm
2程度となっている。
【0060】
本実施形態のその他の構成については、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図3において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0061】
本実施形態によれば、水抜流路240を通過してくる洗浄水が、封水を後方側(排出側)に向けて押し出すように作用する。この作用は、汚物の排出に効果的である(微弱サイホン)。
【0062】
特に、水抜流路240の断面積が、入口開口241及びその近傍領域を含めて78mm
2〜314mm
2程度となっていることにより、微弱サイホン効果を十分に発揮することができる。
【0063】
また、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の残水の水抜効果を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の第3実施形態について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第3実施形態による水洗式大便器301の左右方向中央の断面図である。
【0065】
図4に示すように、本実施形態の水洗式大便器301においては、水抜流路340の出口開口342が、排水路12の上面側の最下位置よりも前方側において開口されている。但し、美観上の観点から、水抜流路340の出口開口342は、ボウル部8の上方からは見えない位置に設けられている。そして、水抜流路340は出口開口342の近傍領域において、当該出口開口342に向かって後方向きに延びている。
【0066】
本実施形態の水抜流路340の断面積は、入口開口341及びその近傍領域を含めて、78mm
2〜314mm
2程度となっている。
【0067】
本実施形態のその他の構成については、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図4において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0068】
本実施形態の場合によっても、水抜流路340を通過してくる洗浄水が、封水を後方側(排出側)に向けて押し出すように作用する。この作用は、汚物の排出に効果的である(微弱サイホン)。
【0069】
特に、水抜流路340の断面積が、入口開口341及びその近傍領域を含めて78mm
2〜314mm
2程度となっていることにより、微弱サイホン効果を十分に発揮することができる。
【0070】
また、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の残水の水抜効果を得ることができる。
【0071】
次に、本発明の第4実施形態について、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第4実施形態による水洗式大便器401の左右方向中央の断面図である。
【0072】
図5に示すように、本実施形態の水洗式大便器401においては、水抜流路440がトラップ流路444を有している。トラップ流路444は、下方へ延びる流路部分444aの後に再び上方へ延びる流路部分444bを有している。
【0073】
本実施形態のその他の構成については、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図5において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0074】
本実施形態によれば、水抜流路440がトラップ流路444を有していることにより、水抜流路440の出口開口442に対して封水水面が低下してしまった場合であっても、水抜流路440から排水路12への残水の排出が途切れた後に水抜流路440内に流入する残水によって、いわゆる封水が溜まり、当該封水によって水抜流路440を介して臭気が上がってくることが防止される。
【0075】
また、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の残水の水抜効果を得ることができる。
【0076】
次に、本発明の第5実施形態について、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第5実施形態による水洗式大便器501の左右方向中央の断面図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の水洗式大便器501においても、水抜流路540がトラップ流路544を有している。トラップ流路544は、下方へ延びる流路部分544aの後に再び上方へ延びる流路部分544bを有している。
【0078】
しかし、
図6に示すように、水抜流路540の出口開口542は、排水路12の上面側の最下位置よりも後方側において開口されており、設計上の封水水面よりも上方に位置づけられている。
【0079】
本実施形態のその他の構成については、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図6において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0080】
本実施形態によれば、水抜流路540がトラップ流路544を有していることにより、水抜流路540の出口開口542よりも封水水面の方が低いにも拘わらず、水抜流路540から排水路12への残水の排出が途切れた後に水抜流路540内に流入する残水によって、いわゆる封水が溜まり、当該封水によって水抜流路を介して臭気が上がってくることが防止される。
【0081】
また、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の残水の水抜効果を得ることができる。
【0082】
次に、本発明の第6実施形態について、
図7乃至
図9を用いて説明する。
図7は、本発明の第6実施形態による水洗式大便器601の洗浄水の流れの様子を示す平面図であり、
図8は、本発明の第6実施形態による水洗式大便器601の左右方向中央の断面図であり、
図9は、
図7のガイド部10gの拡大平面図である。
【0083】
図7乃至
図9に示すように、本実施形態の水洗式大便器601においては、上流側から水抜流路40の入口開口41に向かう洗浄水をリム通水路26、28にガイドするガイド部10gが、水抜流路40の入口開口41より上流側の導水路10の底面から突出している。
【0084】
具体的には、本実施形態のガイド部10gは、全体として、平面視において円形である入口開口41と同心で左右対称(
図7及び
図9においては上下対称)の円弧の形状を有する突出部である。
【0085】
本実施形態のその他の構成については、
図1及び
図2を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図7乃至
図9において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0086】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の残水の水抜効果を得ることができる。
【0087】
そして、本実施形態によれば、全体として円弧状の突出部であるガイド部10gの存在によって、上流側から水抜流路40の入口開口41に向かう洗浄水をリム通水路26、28に円滑にガイドすることができるため、ボウル部の洗浄中において、十分な量の洗浄水をリム吐水口26、28から吐水させることができる。
【0088】
なお、ガイド部10gの形態は、
図7乃至
図9に示したような円弧状に限定されない。例えば、
図10に示すように、平面視で左右対称(
図10においては上下対称)のV字状の形態が採用されてもよいし、
図11に示すように、両側鏡面が屈曲された三面鏡状の形態が採用されてもよい。
【0089】
以上の各実施形態は、2つのリム吐水口22、24を有するタイプの水洗式大便器であるが(
図1、
図7参照)、本発明は1つのみリム吐水口を有するタイプの水洗式大便器や、3つ以上の吐水口を有するタイプの水洗式大便器にも適用可能である。
【0090】
また、以上の各実施形態は、ゼット吐水口を有しないタイプの水洗式大便器であるが、本発明はゼット吐水口を有するタイプのいわゆるサイホンゼット式の水洗式大便器にも適用可能である。