特許第6972516号(P6972516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972516
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】作業用小物入れ
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20211111BHJP
   A45C 5/00 20060101ALI20211111BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B25H3/00 Z
   A45C5/00 E
   A45C11/00 E
   A45C11/00 P
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-75453(P2016-75453)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-164883(P2017-164883A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年12月17日
【審判番号】不服2020-12582(P2020-12582/J1)
【審判請求日】2020年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-66731(P2016-66731)
(32)【優先日】2016年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513033755
【氏名又は名称】株式会社いなほ
(72)【発明者】
【氏名】鷹▲のはし▼ 豊
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 河端 賢
【審判官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0170873(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0374293(US,A1)
【文献】 特開2009−45677(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0227148(US,A1)
【文献】 中国実用新案第202999659(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 1/00-15/08
A45F 3/00
A45F 3/02
A45F 3/04
A45F 3/12
B25H 1/00- 5/00
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形を板状に保持しうる背板と、
前記背板の前面に前方に向けて膨出状態に配した、該背板と共に容器部を構成する容体部であって、該容器部をその上部の係止手段で作業者のいずれかの部位又は作業現場の何らかの物に係止して吊り下げた場合に上下方向に延びる可変形性の容体部と、
前記容体部の、前記容器部の下部の小物類収納部となる部位より上方の前面部に形成した側面視で斜め上向きに開口する縦長の開口部と、
前記開口部の全縁部に沿って配した可変形性で前記容体部を構成する部材の厚みより大径の断面を有する紐状縁部材と、
前記容器部の上部に構成した、作業者のいずれかの部位又は作業現場の何らかの物に係止するための前記係止手段と、
で構成した作業用小物入れであり、
前記容体部が上下方向に延びた場合に、これに伴って、前記開口部が更に縦長に変形してその全縁部に沿って配した可変形性の前記紐状縁部材の両側部が相互に接するか又はそれに近似するほどに該開口部の両側の縁部間が狭くなるように構成してある作業用小物入れ。
【請求項2】
前記背板を弾力性を有する硬質プラスチックの縦長板状部材で構成した請求項1の作業用小物入れ。
【請求項3】
前記容体部をプラスチック製の可変形性網状部材で構成した請求項1又は2の作業用小物入れ。
【請求項4】
前記紐状縁部材を可変形性の帯状部材を円筒状に丸めて構成し、これを前記開口部の全縁に沿って取り付けた請求項1、2又は3の作業用小物入れ。
【請求項5】
前記背板を、複数の前記容体部を横一列に連設可能な横長に構成し、
前記開口部に前記紐状縁部材を配した複数の前記容体部を前記背板に横一列に配し、
前記係止手段を前記容器部の上部の内、横方向中央に位置する容体部の上部又は背板中央部に構成することとした請求項1の作業用小物入れ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事その他の建築工事等で使用するコネクタ類やネジ類又は釘類等の小物類を収納した上で、作業者の身体の一部又はその近傍のはしごや脚立等の一部から吊り下げておく等により、その小物類を必要なときに取り出して使用することができるようにする作業用小物入れに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の作業用小物入れには、種々の態様の物が提案され、また市販もされている。
【0003】
特許文献1は溶接作業用腰袋に関するものであり、これは、上部を開口し底部を閉じたほぼ円筒状の腰袋本体と、腰袋本体に取り付ける環状の本体取付片と、該本体取付片に係止する環状の本体側金具と、環状のベルト通しと、該ベルト通しに係止する環状のベルト側金具と、該ベルト側金具及び前記本体側金具を連結する連結リングとからなるものである。
【0004】
この特許文献1の溶接作業用腰袋によれば、これは、その腰袋本体を作業者の腰部のベルトに、本体取付片、ベルト側金具、本体側金具及び前二者を連結する連結リングからなる自在金具を介して吊り下げて使用するものであり、該腰袋本体は、該自在金具の作用により作業者の姿勢にかかわらず常に垂直状態を維持し得、それ故に、この腰袋本体に装入してある溶接棒がその中から脱落してしまうような問題を生じないとされる。
【0005】
しかし、以上のような自在金具は、作業者の姿勢の変動の生じている際に、常に必ず腰袋本体を垂直に保持しうるものではなく、姿勢の変動に伴ってそれに揺れが生じることは普通のことである。一方、この特許文献1の溶接作業用腰袋の腰袋本体は、上部開口のものであり、その様に揺れを生じた際に、収納してある溶接棒等が脱落するおそれがあるといわざるを得ない。またこの溶接作業用腰袋を誤って落下させたような場合も、腰袋本体内の溶接棒等がその中から飛び出し飛散するおそれがあるといわざるを得ない。
【0006】
またこの特許文献1の溶接作業用腰袋は、前記のように、その腰袋本体は上部開口の物であって、溶接棒等の出し入れは、当然上部からしかできない。この腰袋本体は、文字通り腰にベルトを介して取り付けて使用するものであり、該腰袋本体が身体に近接しすぎており、その状態で、溶接棒等の出し入れをその真上からするというのは、身体の構造との関係からスムーズに行えるものとは言い難い。
【0007】
特許文献2は腰袋に関するものであり、これは、保形性を有する柔軟素材で作成した上部開口かつ底部が平坦な外袋体と、その内底部に配した保形性を有する硬質素材で作成した上部開口かつ底部が平坦な内収納体とからなり、前記外袋体の外面上部に吊り下げ部を構成したものである。
【0008】
この特許文献2の腰袋によれば、これに、ビット、釘、ネジ類等、若しくはドライバー、スパナ、ナイフ等のそれら自体の一部に尖った部分を有する部品又は道具を収納した場合であっても、その内側底部に硬質素材で構成した内収納体が配してあるため、これに容易に損傷を生じることがないとされ、また腰からこれを取り外して、テーブルその他の何らかの平坦な物の上にこれを置いた場合には、外袋体の底部及び内収納体の底部のいずれも平坦であり、かついずれも保形性を有するものであるため、垂直に立った状態を維持でき、それ故に、これに収納した前記部品類又は道具類がこれから飛び出して散乱してしまうようなおそれはないものとされる。
【0009】
前記損傷の問題の生じない利点はその通りであると思われるし、平坦な物の上にこれを置いた場合に、内部の部品類等が飛び出すことがないのもその通りであると思われるが、これを腰にベルト等を介して取り付けて使用する通常の用法においては、上部開口で何らの閉塞手段もないから、作業者の姿勢の変動等に伴って揺れ動きそれらの収容物が飛び出すおそれはあるものと考えられる。またこの腰袋を落下させたような場合には、内部の部品や道具等が飛び出し周囲に散乱することとなるのは明かである。
【0010】
またこの特許文献2の腰袋は、その外袋体及び内収納体のいずれも上部開口の物であって、前記部品類等の出し入れは、当然上部からしかできない。他方、これは通常腰にベルトを介して取り付けて使用するものであり、その状態で、以上の部品類等の出し入れをその真上からするというのは、前記特許文献1の溶接作業用腰袋と同様に、身体の構造との関係からスムーズに行えるものとは言い難い。
【0011】
特許文献3は作業用腰袋に関するものであり、これは、上部開口の本体ポケットと、その前面側に配した外ポケットと、前記本体ポケットの背面上部に取り付けたベルト通しとからなり、前記本体ポケットの口部に形を保持するための骨材を配したものである。
【0012】
この特許文献3の作業用腰袋によれば、その本体ポケットにハンマーのような重量のある道具を入れた場合にも、その口部に骨材が配してあるので、該口部の変形が回避されることにより、前記ハンマー等の落下等が回避できることになるとされる。もっともそうであっても、本体ポケット及び外ポケットは、上部開口であり、いつでも完全に上部が開口しており、通常、この作業用腰袋は、作業者の腰部にベルト等を介してを取り付けて使用するものであるから、使用中に作業者の姿勢の変動によりそれらのポケットの開口部が傾くことはしばしばあり、その口部からハンマー等が落下することとなるおそれは十分にあるといわざるを得ない
【0013】
またこの特許文献3の作業用腰袋は、以上のように、その本体ポケット及び外ポケットのいずれも上部開口の物であって、前記ハンマー及びその他の物品類の出し入れは、当然上部からしかできない。そしてこの作業用腰袋も、特許文献1、2のそれらと同様に、通常腰にベルトを介して取り付けて使用するものであり、同様の理由で、その装着状態で、以上のハンマー等の出し入れをその真上からするというのはスムーズに行えるものとは言い難い。
【0014】
特許文献4は腰袋に関するものであり、これは、補強板で補強した背布の表面側に平面視で半円形状又は矩形状の開口部を有するポケット部を形成し、かつ該背布の背面側にベルト通しを設けたものである。
【0015】
この特許文献4の腰袋によれば、背布を補強板で補強したので、容易にこれが変形するようなことがない。それ故に、その変形に起因して、そのポケット部に装入した工具類等が、その開口部から落下してしまうような問題の生じるおそれがないものとされる。もっとも、この腰袋も、特許文献1〜3のそれらと同様に、上部開口のポケット部からなるものであり、それらと同様に、作業者の腰に取り付けて使用する際に、工具類の出し入れがしやすくはないという問題及び作業中に収納物を落下させてしまうおそれがあるという問題は残っていると云わざるを得ない。
【0016】
特許文献5は工事用腰袋に関するものであり、これは、上部開口の腰袋本体の前面側に工具を磁着する永久磁石を取り付け、背面側上端に作業者のベルトを通すベルト通し部を構成してなるものである。
【0017】
この特許文献5の工事用腰袋によれば、腰袋本体の前面側に永久磁石が取り付けてあり、作業中に、工具類を一時使用停止する場合に、作業場所から遠い場所に移動して置くような厄介な動作をすることなく、この永久磁石に磁着保持させておくことができるので、非常に便利である利点がある事は認められる。しかし、他方、腰袋本体は上部開口のものであり、その点で、特許文献1〜4のそれらと全く同様の問題がある。
【0018】
特許文献6は腰袋に関するものであり、これは、上部開口の腰袋本体の内部に着脱可能に磁着体を配し、前記腰袋本体の外部前面には第二の磁石を着脱自在に装着したものであり、前記磁着体はケースの内部に板状の磁石を着脱可能に収納したものであり、前記磁石及び前記第二の磁石はそれぞれ片面のみが磁着可能であるようにしたものである。
【0019】
この特許文献6の腰袋によれば、腰袋本体の内部に磁着体が配してあるため、この内部に磁性金属製の部品類を収納した場合には、作業中に、作業者の姿勢が様々に変動してもその内部の部品類が飛び出して落下飛散してしまうような問題は生じにくくなると思われ、その点では好都合であるが、部位品類には磁石により悪影響を受ける物もあり、その様な部位品類の収容携帯には使用できない。また、この腰袋の腰袋本体は上部開口であり、その点で、特許文献1〜4のそれらと全く同様に、腰に装着した腰袋本体からの手による部品類等の出し入れ操作そのものはやりやすいとは云えない問題はある。
【0020】
特許文献7は腰袋に関するものであり、これは、前面に上部開口の収納部を有する作業用腰袋であって、その底部の外隅部に柔軟な弾性材からなる保護部材を取り付けたものである。
【0021】
この特許文献7の腰袋によれば、作業者が腰にこの腰袋を装着して作業をする場合に、この腰袋が周囲の何らかの物に接触したとしても、その底部の外隅部に柔軟な弾性材からなる保護部材が取り付けてあるので、その接触は弾力的な穏やかなものとなり、それらの周囲の何らかの物に損傷を生じさせるようなおそれのないものとなる。もっとも、他方で、この腰袋の収納部は上部開口であり、その点で、特許文献1〜4のそれらと全く同様の問題があることは認めざるを得ない。
【0022】
以上の特許文献1〜7のほかに前記のように市販の作業用小物入れがあり、これには、上部開口の物入れ部と、その物入れ部の上部開口の上端縁に内側に向かって延びるように構成したカバー部であって、その中央部に弾力性を有する部材で構成した開口径の伸縮自在な開口部を備えたカバー部と、該物入れ部の背面側に配した作業者の腰ベルト等に取り付けることのできる取付部とからなるものがある。
【0023】
この市販の作業用小物入れは、通常は開口径が弾力的に小さくなる開口部を備えているので、作業者が腰に装着して作業をする際に、その姿勢の変動によって前記物入れ部に揺れを生じても、或いは、何らかの理由でこの作業用小物入れを落下させてしまったような場合でも、その内部に収納してある小物類を飛散させ、周囲に散乱させてしまうような問題を容易に生じさせない利点を有する。しかしその様な開口部は、上向きのそれであり、前記したように、作業者が、腰部に装着した作業用小物入れの内部から収容している小物類を取り出す場合には、特許文献1〜7のそれらと同様の理由から、使い易いとは言い難く、更に開口径を伸縮する弾力性を有する開口部はスムーズな手の出し入れ動作を妨げ、便利であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平10−211009号公報
【特許文献2】特開2009−248254号公報
【特許文献3】実開平02−149514号公報
【特許文献4】特開2004−306244号公報
【特許文献5】実開平01−114287号公報
【特許文献6】特開2007−130740号公報
【特許文献7】特開2000−157319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、電気工事その他の建築工事等で使用するコネクタ類等の小物類を収納した上で、作業者の腰部その他の身体の一部又は作業現場の何らかの物の一部から吊り下げておき、その小物類を必要なときにはいつでも取り出して使用することができるようにする作業用小物入れであって、その取り出しを極めて容易に行えるようにし、かつそれ自体に揺れを生じたような場合又はそれ自体を何らかの原因で落下させてしまったような場合のいずれの場合であってもその内容物である小物類を飛び出させ、周囲に散乱させるようなことのないように構成した作業用小物入れを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の1は、形を板状に保持しうる背板と、
前記背板の前面に前方に向けて膨出状態に配した、該背板と共に容器部を構成する容体部であって、該容器部をその上部の係止手段で作業者のいずれかの部位又は作業現場の何らかの物に係止して吊り下げた場合に上下方向に延びる可変形性の容体部と、
前記容体部の、前記容器部の下部の小物類収納部となる部位より上方の前面部に形成した側面視で斜め上向きに開口する縦長の開口部と、
前記開口部の全縁部に沿って配した可変形性で前記容体部を構成する部材の厚みより大径の断面を有する紐状縁部材と、
前記容器部の上部に構成した、作業者のいずれかの部位又は作業現場の何らかの物に係止するための前記係止手段と、
で構成した作業用小物入れであり、
前記容体部が上下方向に延びた場合に、これに伴って、前記開口部が更に縦長に変形してその全縁部に沿って配した可変形性の前記紐状縁部材の両側部が相互に接するか又はそれに近似するほどに該開口部の両側の縁部間が狭くなるように構成してある作業用小物入れである。
【0027】
本発明の2は、本発明の1の作業用小物入れにおいて、
前記背板を弾力性を有する硬質プラスチックの縦長板状部材で構成したものである。
【0028】
本発明の3は、本発明の1又は2の作業用小物入れにおいて、
前記容体部をプラスチック製の可変形性網状部材で構成したものである。
【0029】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の作業用小物入れにおいて、
前記紐状縁部材を可変形性の帯状部材を円筒状に丸めて構成し、これを前記開口部の全縁に沿って取り付けたものである。
【0031】
本発明のは、本発明の1の作業用小物入れにおいて、
前記背板を、複数の前記容体部を横一列に連設可能な横長に構成し、
前記開口部に前記紐状縁部材を配した複数の前記容体部を前記背板に横一列に配し、
前記係止手段を前記容器部の上部の内、横方向中央に位置する容体部の上部又は背板中央部に構成することとしたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の1の作業用小物入れによれば、前記背板を、若干の外力が加わっても、その形をほぼそのままの板状に保持することができる部材で構成したため、それを一部として構成した容器部中に何も収納していない場合又はコネクタやビス等の小物類を収納した場合のいずれの場合であっても、前記係止手段で作業者のいずれかの部位又は何らかの物に係止して吊り下げると、該容器部の他の一部を構成する可変形性の容体部が自重により又はそれに加えて収納する小物類の重量により変形することになるが、その容器部としての変形には限度があることになる。少なくとも該容器部の背面側がその背板の形状に保持されるため、該容体部の変形も一定程度に限定され、その前面に開口する前記開口部が不定形に乱れた変形をするようなことにはならない。すなわち、前記容器部に小物類を収納していない場合には、前記容体部はその自重により、収納している場合は、該容体部の自重及び該小物類の重量により該容体部は若干縦長に延びた状態となり、これに伴って、前記開口部も縦長に延び、その隙間は非常に幅の狭い状態になる程度の変形となる。特に後者の場合はほぼ閉じた状態になる程度の変形となる。
【0033】
従って、吊り下げた状態で前記容器部に何らかの小物類を収納する際には、概ね縦長となって非常に幅狭となっている又は閉じている開口部を手指によって開いた上で、それらの小物類をその中に投入することになるが、該開口部の手指による開口変形は、前記容体部が可変形性であり、かつ該開口部の全縁部に配した紐状縁部材も可変形性であるから、極めて簡単に行えることとなる。また該紐状縁部材は、該容体部を構成する部材の厚みより大径の断面を有するように構成してあるため、その内外が手指によって明瞭に区別し得、手探りでもその開口部の内側に容易に手指を滑り込ませることが可能になるものでもある。こうして極めて簡単にその内部に小物類を投入できることになる。
【0034】
なお、通常、この作業用小物入れへの小物類の収納は、作業開始前の準備段階で、作業現場の要求に応じて選択された小物類を収納するということで行われるものである。従って、前記のように、この作業用小物入れを作業者のいずれかの部位又は何らかの物に係止手段で係止した上で行うというよりは、これをテーブル等の上に置いた状態で行うことになるのが普通である。この場合は、前記容器部の容体部は、吊り下げによる縦長の変形は生じていないので、前記開口部はある程度開いた状態を維持しており、小物類の投入は容易になっている。前記のように、吊り下げ状態で、小物類を容器部中に収納するのは、多くの場合、作業中に余分に取り出してしまった小物類を戻すような場合であり、前記のように、その様な場合にも不都合無く、小物類を該容器部中に投入することが可能である。
【0035】
また、作業現場等で、この作業用小物入れを作業者のいずれかの部位等から吊り下げて作業している最中等に、前記容器部中からこれに入っている小物類を取り出す場合にも、その場合には、前記開口部が前記容体部の自重及び該小物類の重量で縦長に変形し、前記のように、ほぼ閉じた状態になっているが、前記の場合と同様に、前記紐状縁部材は、該容体部を構成する部材の厚みより大径の断面を有するように構成してあるため、その内外が手探りでも手指によって明瞭に区別し得、その開口部中に容易に手指を挿入することが可能であり、該小物類を簡単に取り出すことができる。
【0036】
また本発明の1の作業用小物入れによれば、前記開口部を、前記容器部の下部の小物類収納部となる部位より上方に位置させて前記容体部の前面部に形成し、かつ側面視で斜め上向きに開口する構成としたため、この作業用小物入れを、例えば、作業者の腰部のベルトから吊り下げた場合のように、身体に非常に近接した部位に吊り下げた状態になっている場合であっても、前記開口部への手指の挿入が非常にスムーズに行えることになり、小物類の取り出しや投入が極めてスムーズに行えることになったものである。既存の作業用小物入れは、市販の物も提案されている物も、いずれも取り出し又は投入のための開口部は全て容器部の真上に開口してあり、このような既存の作業用小物入れを身体の、例えば、腰部のベルトに取り付けた場合には、該開口部に、取り出し又は投入のために真上から手指を挿入するのは、それが身体に近接しすぎる位置に位置するため、身体動作としてやりにくくスムーズな投入取り出し作業を行うことはできなかったものであり、その点の違いは極めて大きい。
【0037】
本発明の1の作業用小物入れによれば、前記開口部の縁に沿って、可変形性の、開口部の縁の厚みより大径の断面を有する紐状縁部材を取り付けたため、前記したように、その開口部の内側に容易に手指を滑り込ませることが可能になるものでもある。該開口部に沿った大径の紐状縁部材の故に、手探りでも容易にその開口部を見つけてその中に手指を挿入することが可能となるからである。こうしてスムーズな動作を確保することができる。
【0038】
本発明の1の作業用小物入れによれば、前記したように、前記容体部を可変形性に構成し、前記開口部の全縁部に可変形性の紐状縁部材を配したため、特に容器部の小物類収納部中に小物類を収納すると、係止手段でこれを吊り下げた場合には、前記したように、該開口部は縦長に変形し、ほぼ閉じた状態になるため、作業中にこの作業用小物入れがその動作に伴って様々な角度に揺動しても又はこれ自体を落下させるようなことをしたとしても、その開口部から小物類収納部に収納してある小物類が飛び出し、周囲に散乱してしまうようなおそれはない。
【0039】
本発明の2の作業用小物入れによれば、前記背板を弾力性を有する硬質プラスチックの縦長板状部材で構成したため、若干の外力が加わってもその形状を保持することが可能であり、前記容体部に不定形の変形が生じることを回避させることができる。また更に強力な外力が加わった場合には、それに応じて必要な変形をすることにより、その破損を免れることができるものでもある。
【0040】
本発明の3の作業用小物入れによれば、前記容体部をプラスチック製の可変形性網状部材で構成したものであり、適当な容体部の可変形性を容易に確保し得、かつ内部の小物類をある程度は視認することが可能となる利点も得られる。
【0041】
本発明の4の作業用小物入れによれば、前記紐状縁部材を可変形性の帯状部材を円筒状に丸めて構成し、これを前記開口部の全縁に沿って取り付けたものであるため、必要なその径も可変形性も容易に確保し得、前記したような効果を容易に得ることができる。
【0043】
本発明のの作業用小物入れによれば、この作業用小物入れを、前記係止手段を介して作業現場に配してある脚立やはしごの一部から吊り下げておけば、前記背板と容体部とで構成される複数の容器部のそれぞれに収納してある小物類を取り出して極めて便利に使用することができる。特に本発明のの作業用小物入れの場合は、複数の容器部に、その作業現場で必要とする複数種の小物類を分けて収納しておけば、必要な小物類を確実にスピーディに取り出して使用することができ、極めて好都合である。
【0044】
なお、本発明のの作業用小物入れにおける背板、容体部、開口部及び係止手段のそれぞれについての作用及び効果は、容体部、開口部及び係止手段については、本発明の1のそれらと同様の構成であり、背板は若干構成が異なるが、機能が本発明の1のそれと同様であることは明かであり、それ故、それらに関して実施例1で説明したのと全く同様である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例1の作業用小物入れの正面概略説明図。
図2】実施例1の作業用小物入れの右側面概略説明図。
図3図1のA−A線断面概略説明図。
図4図1のB−B線断面概略説明図。
図5】(a)は容体基部を構成するための網状の容体基部用シートの平面概略説明図、(b)は(a)の網状の容体基部用シートを丸めて構成した容体基部の正面概略説明図、(c)は(b)の右側面概略説明図、(d)は網状の容体前部片の平面概略説明図、(e)は(b)の容体基部の前面下部に(d)の容体前部片を配した状態を示す正面概略説明図。
図6】(a)は紐状縁部材を作成するための帯状フェルト材を示す正面概略説明図、(b)は(a)の帯状フェルト材を充填材を充填した上で丸めて作成した紐状縁部材の側面概略説明図、(c)は(b)のC−C線の端面概略説明図、(d)は(b)のD−D線の端面概略説明図、(e)は(b)のE−E線の端面概略説明図、(f)は(b)のF−F線の端面概略説明図、(g)は(b)のG−G線の端面概略説明図。
図7】(a)は実施例2の作業用小物入れの上部の正面概略説明図、(b)は実施例2の作業用小物入れの上部の右側面概略説明図。
図8】実施例3の作業用小物入れにおける背板の正面概略説明図。
図9】実施例3の作業用小物入れの正面概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、発明を実施するための形態を実施例に基づいて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0047】
この実施例1の作業用小物入れは、図1図4に示すように、形を板状に保持しうる背板1と、該背板1と共に容器部2を構成すべく、その前面に前方に向けて膨出状態に配した可変形性の容体部3と、該容体部3の前面部に形成した側面視で斜め上向きに開口する開口部4と、該開口部4の全縁部に沿って配した可変形性の紐状縁部材5と、前記容器部2の上部に構成した係止手段6とで構成したものである。
【0048】
前記背板1は、前記したように、前記容体部3と共に前記容器部2を構成する部材であり、図2図4に示すように、文字通り、該容器部2の背面側の部位を構成する板状の部材である。板状である以外には、特定の形状に限定されないが、前記容器部2を若干縦長の器に構成するのが多くの場合は適当であり、その観点では、縦長の長方形状を基本とする形状であるのが適当である。また前記背板1は、該容器部2を方形に構成する場合は、ほぼ平坦な板形状とし、或いは、裏面側が若干凹む半円弧状に構成し、該容器部2を円筒状に構成する場合は、横断面で半円弧状とするのが適当である。この実施例1では、前記背板1は、平坦で縦長長方形で、その上下端をそれぞれ半円状に丸めた板材に構成した。
【0049】
また前記背板1は、前記のように、その形を前記種々の形の板状に保持しうるものである必要があり、その観点より、作業用小物入れの通常の用法で加わる程度の外力では容易に変形しない、ある程度の硬さを有するものであることが必要である。他方、前記の程度を越える特に強い外力が加わった場合に容易に破損しないようにする観点から、その様な場合にある程度の変形を可能とする相応の弾力性をも併せて有するべきである。この実施例1では、その様な趣旨から該背板1は弾力性を有する硬質プラスチックの縦長板状部材で構成したものである。
【0050】
前記容体部3は、図1図4に示すように、かつ前記したように、前記背板1の前面に膨出状態に配して、該背板1と共に容器部2を構成するものであり、例えば、可変形性の薄いシート状部材で構成した、背部側が全開口で、前上部側に前記開口部4を開口した容器状部材であり、その背部側の全開口の縁部を前記背板1の縁部に結合することで、容器部2を構成するものである。
【0051】
この実施例1では、前記容体部3を、図1図3及び図5に示すように、環状の容体基部3Aとその前面下部を閉じる容体前部片3Bとで構成したものであり、前記可変形性の薄いシートとして、目開きの小さいプラスチック製の網状シートを採用した。
【0052】
前記環状の容体基部3Aは前記網状シートで作成する。詳細には、該網状シートで、図5(a)に示すように、一側(左辺)には、その両端(上下端)に向かって端部側が細幅になるように斜めに切断した斜め切断部3a1、3a1を有し、他側(右辺)には、前記背板1の縁部に沿って接合するための細幅の接合片部3a2を備え、一端(上端)には、他端と重ね合わせて接合固定するための細幅の端部接合片部3a3を備えた網状の容体基部用シート3aを作成し、この容体基部用シート3aを、図5(b)、(c)に示すように、丸め、一端の端部接合片部3a3を他端に重ねて接合し、接着結合して作成する。
【0053】
こうして作成した容体基部3Aは、図5(b)に示すように、その開口側から見て(正面視で)、両端(上下端)が半円弧状になっている長方形に構成し、かつ前記斜め切断部3a1、3a1を有する側(正面側)の縁を若干内側に屈曲し、反対側(背面側)の縁の接合片部3a2は内側にほぼ直角に曲げた構成とする。また該容体基部3Aは、図5(c)に示すように、側面視では、前面側(左辺側)のほぼ上半分が斜めに切断された長方形状になる。
【0054】
以上の容体基部3Aの正面側の縁の内側への若干の屈曲成形は、若干の加熱をした上で行うことができる。単に折り曲げることでもある程度は可能である。またこの実施例1では、前記容体基部3Aの正面側の縁を内側に屈曲成形しているが、その様にしなくても不都合ではない。その場合は、云うまでもなく、前面下部を閉じる前記容体前部片3Bを対応する若干大きなサイズ及び対応する形状に構成する。
また前記反対側(背面側)の接合片部3a2の内側への直角の屈曲は、該接合片部3a2に適宜何カ所かでV字形の切り込みを入れることで、行いやすくなる。正面側の縁と同様に、加熱すると屈曲しやすい。
【0055】
前記容体前部片3Bは、前記網状シートで、図1図3及び図5(d)、(e)に示すように、前記容体基部3Aの前面下部の開口縁の形状に対応するほぼU字状の両側部及び下部形状を有し、上部は、半楕円弧状の凹部縁を有する形状に構成したものである。該容体前部片3Bは、図2及び図3に示すように、前部側に向かって膨らんだ構成でもある。また該容体前部片3Bの両側部及び下部の縁は、前記容体基部3Aの前面下部の開口縁に沿って接合するための細幅の接合片部3bを備えたものでもある。更にまた該容体前部片3Bの高さ方向の寸法(下部の縁から上部の凹部縁の最下部までの寸法)は、前記容器部2中の図3に示す小物類収納部2aとなる部位の最上部までをカバーできる寸法とする。
【0056】
しかして前記容体部3は、図5(e)に示すように、前記容体基部3Aに、その前面の全開口のうち、下部側を閉じるべく、その前面に前記容体前部片3Bを配することで構成する。該容体前部片3Bは、同図に示すように、その両側部及び下部の接合片部3bを、前記容体基部3Aの下部開口の縁部に沿って配置すると共に、該接合片部3bを該縁部に接着剤で接着結合することで前記容体基部3Aに結合する。
【0057】
なお、図5(e)に示すように、前記容体部3を構成する前記容体基部3Aの前面の開口の内の前記容体前部片3Bにカバーされていない開口縁及び該容体前部片3Bの上部の半楕円弧状の凹部縁に囲まれている開口が前記開口部4となる。
【0058】
こうして構成した前記容体部3は、図2図4に示すように、前記背板1の前面に配置し、かつ、この状態で、該背板1の外縁に沿って接合状態となった前者の容体基部3Aの接合片部3a2を該背板1の外縁に接着剤で接合固定することにより、前記容器部2に構成する。なお、該容体部3と該背板1との結合は、加熱溶着を用いても良い。或いは、縫合でも可能である。種々の結合手段を自由に用いることができる。
以上において、図3に示すように、該容器部2中の、容体基部3Aの両側部及び底部、容体前部片3B及び背板1で閉じられた内側の空間が前記小物類収納部2aになる。
【0059】
前記紐状縁部材5は、図1及び図2に示すように、かつ前記したように、前記容器部2を構成する容体部3の前面の開口部4の全縁部に沿って配置した若干太い可変形性の紐状の部材である。この紐状縁部材5は、最低でも、該容体部3を構成する網状シートの厚さより大径の断面寸法を有するべきであるが、好ましくは、大人の小指以上の径を有するべきである。更により好ましくは20mm程度の径を有することである。そして十分な可変形性を有することである。この実施例1では、最大径の部分でほぼ20mmとし、最少径部分でも10mm程度とした。
【0060】
該紐状縁部材5は、図6(a)に示すように、中央部で幅が狭くなり、両側(上下方向)に向かって徐々に幅広になり、更に両側途中から両端に向かって徐々に幅が狭くなる構成の帯状フェルト材5aを作成し、これを図6(b)及び図6(c)〜(g)のように、丸めて構成するものである。該帯状フェルト材5aは、この実施例1では、以上のように、フェルトを用いて構成したが、同様の可変形性及び柔らかさを有する部材であれば、他の種々の素材を自由に用いることができる。強い弾力性は不要であるが、使用中に外力によって潰れた場合にほぼ原形状に復帰できる程度の弾力性は必要である。以上のフェルトはその程度の弾力性は有している。
【0061】
なお、該帯状フェルト材5aは、図6(a)に示すように、その一方の辺(右辺)に沿って細幅の接合片部5a1を延長状態に構成しておく。
また該帯状フェルト材5aの長さは、作成する紐状縁部材5の長さに一致させる。すなわち、前記容器部2の容体部3の前面に開口した開口部4の開口縁の長さに一致させる。
該帯状フェルト材5aの中央部は作成する紐状縁部材5の中央部に対応し、それ故、この部位は、前記容体部3の開口部4の最下部に対応する部位となっており、従って該紐状縁部材5のこの部位は特に良好に屈曲可能とすべく細く構成するのが適当である。そこで、前記のように、該帯状フェルト材5aの中央部は幅狭に構成してある。また該帯状フェルト材5aの両端部は、作成する紐状縁部材5の両端部に対応し、それ故、これらの部位は、前記容体部3の開口部4の最上部に対応する部位となっており、従って該紐状縁部材5のこれらの部位は、中央部と同様に、特に良好に屈曲可能とすべく細く構成するのが適当である。そこで、前記のように、該帯状フェルト材5aの両端部はそれぞれ幅狭に構成してある。
【0062】
前記のように、前記帯状フェルト材5aは、これを丸めて前記紐状縁部材5を構成するものであるが、これを丸める際には、適切な太さ(径)を確保するために、その内側に適当な充填材5a2を充填する。各部位の径に応じて適切に充填する。この実施例1では、充填材5a2として、該帯状フェルト材5aに用いたのと同様のフェルトを用い、図6(c)〜(g)に示すように、大径の部位にはゼンマイ状に巻き込んで相応する径としたフェルトによる充填材5a2を充填し、小径の部位には、フェルト片による充填材5a2を充填したものである。なお、充填材5a2としてこれに代えて綿を用いても良い。
【0063】
各部に必要量のフェルトによる充填材5a2を充填して丸めた帯状フェルト材5aは、その両辺を接着剤で接着結合し、紐状の状態を維持するようにして前記紐状縁部材5に形成する。なお、このとき、図6(b)及び(c)〜(g)に示すように、前記接合片部5a1は、作成された紐状縁部材5本体の周側部から張り出した状態にしておく。
【0064】
前記紐状縁部材5は、図1及び図2に示すように、前記容器部2の容体部3に開口した開口部4の全縁に沿って配設する。このとき、前記したように、その中央部を、該開口部4の開口縁の最下部に一致させ、両端部を該開口部4の開口縁の最上部に一致させる。こうして該紐状縁部材5を該容体部3の開口部4の全縁に沿って配置した上で、図3及び図4に示すように、前記接合片部5a1を該開口部4の縁部前面に当接させ、その間に接着剤を配して両者を結合固定する。こうして該紐状縁部材5は、該開口部4の全開口縁に取り付けられることになる。
【0065】
前記係止手段6は、図1図3に示すように、この実施例1では、基本的に、作業者の腰のベルトを通して作業者の腰から吊り下げるようにするべく構成したものであり、前記容体部3の最上部に両端部を固設した取付片6aと、該取付片6aの中央部に取り付けたベルト通し部6bとで構成したものである。該ベルト通し部6bは、図2及び図3に示すように、帯状部材の両端を結合し、かつその一端近傍の途中を結合して、該取付片6aの中央部を通してこれに取り付けるための小径の取付環6b1と作業者の腰のベルトを通すための薄型かつ幅広のベルト通し環6b2とで構成したものである。なお、前記取付環6b1は、前記取付片6aの中央部を通してから環状に閉じるのは云うまでもない。
【0066】
なお、前記取付片6aは、図2及び図3に示すように、前記容器部2の内の容体部3側に取り付ける。この作業用小物入れを吊り下げた場合に、該容体部3が自重により、又は自重及び収容している小物の重量により、若干縦方向(上下方向)に延び、これに伴って、前記し、図1中一点鎖線で示すように、前記開口部4の両側縁の紐状縁部材5は相互に当接状態に近似する状態になるか、または当接状態になり、該開口部4はほぼ閉じた状態となるが、前記取付片6aの前記取付位置は、そのようにさせ易くするために定めたものである。
【0067】
従ってこの実施例1の作業用小物入れによれば、この作業用小物入れを、作業者の腰のベルトを前記係止手段6のベルト通し環6b2に通すことで、簡単に作業者の腰から吊り下げた状態に装着することができる。
この実施例1の作業用小物入れは、背板1を弾力性を有する硬質プラスチックの縦長板状部材で構成した物であるため、以上のような吊り下げ状態で、前記容器部2の小物類収納部2a中にコネクタやビス等の小物類を収納した場合又は何も収納していない場合のいずれの場合であっても、該容器部2の内の可変形性の容体部3は、自重により又は自重及び収容しているコネクタ等の小物類の重量により、上下方向には若干の変形をすることになるが、該容体部3は、その背面側は前記背板1で保持されているため、それ以上の不定形の変形等は生じない。
【0068】
すなわち、このように作業者の腰から吊り下げたような場合には、前記容器部2の容体部3は、若干上下方向に延びた状態となり、それに伴って、前記し、図1中一点鎖線で示すように、前記開口部4の両側縁の紐状縁部材5は相互に当接状態に近似する状態になるか、または当接状態になり、該開口部4はほぼ閉じた状態となる。従って、作業者が様々な作業によって姿勢を種々に変え、この作業用小物入れがこれに伴って揺れ動いたとしても、その容器部2の小物類収納部2a中に収納したコネクタ等の小物類が該開口部4から飛び出して周囲に飛散してしまうようなおそれはない。
【0069】
またこの実施例1の作業用小物入れから、作業者がその容器部2に収容してあるコネクタ等の小物類を取り出す場合は、手指を前記開口部4の両側縁の紐状縁部材5の間に挿入すれば良い。こうすると、手指の挿入に伴って両側の紐状縁部材5は簡単にその間が開き、容器部2中のコネクタ等の小物類を取り出すことができる。取り出して手指が開口部4の外側に出た後は、また該開口部4の両側縁の紐状縁部材5はほぼ閉じた状態に戻る。なお、小物類を必要以上に取り出してしまって、その余分の小物類を、この作業用小物入れに戻したいような場合にも、同様に、該開口部4の両側縁の紐状縁部材5の間に小物類を掴んだ手指を挿入しようとすれば、簡単にその間が開き、該容器部2の小物類収納部2a中に小物類を装入することもできる。
【0070】
以上のように、この実施例1の作業用小物入れからその収容物である小物類を取り出す場合や取り出した余分の小物類を戻したい場合は、手指を開口部4の両側縁の紐状縁部材5の間に挿入してその間を開けば良いわけであるが、この実施例1の作業用小物入れでは、該紐状縁部材5の断面径を最大径部分で約20mmに、最少径部分でも約10mmに構成したため、この紐状縁部材5を手探りで見いだすことが可能であり、その間に手指を滑り込ませることも容易にできる。従って、作業者は、いちいち開口部4の位置を目視することなく、容器部2の小物類収納部2a中の小物類を取り出すことができるし、余分に取り出した小物類を再度投入することもできる。
【0071】
また前記開口部4は、図3に示すように、前記容器部2の容体部3の前面において、側面視で斜め上向きに構成してあるため、腰から吊り下げた状態のように、身体に極めて近接した状態に位置していても、自然な動作でその開口部4に手指を挿入し、容器部2内部の小物類収納部2aに収容してある小物類を該開口部4から取り出すことができることになる。
【0072】
またこの実施例1の作業用小物入れに、コネクタ等の小物類を予め入れておくのは、通常、腰に装着する前であるが、その場合は、これを、例えば、テーブルの上等に置いて、その装入作業を行うと、前記容器部2の容体部3は、上下に延びた状態にならないので、例えば、図1に示すように、前記開口部4は若干開いた状態となっており、例えば、手に握った沢山の小物類を該開口部4の両側縁の紐状縁部材5を拡げながら一度に装入することができる。
【0073】
なお、前記のように、前記背板1を弾力性を有する硬質プラスチックで構成したので、前記のように、若干の外力が加わってもその形状を保持することが可能である利点があるが、更に強力な外力が加わった場合には、それに応じて必要な変形をすることにより、その破損を免れることができるものでもある。
【0074】
またこの実施例1では、前記容体部3をプラスチック製の可変形性網状シートからなる容体基部用シート3a等で構成したため、該容体部3の可変形性を容易に確保し得、かつ内部の小物類をある程度透過して視認することが可能となるものでもある。
【0075】
この実施例1の作業用小物入れは、複数のこれを用意して、コネクタとかビスとか種類の異なる小物類を各々別のそれらに収容しておき、必要に応じて、それらを選択して腰に装着するか、あるいは、全部を何らかの手段に吊り下げて作業現場に設置しておき、それらから必要な物を取り出して使用するような使い方もできる。
【実施例2】
【0076】
この実施例2の作業用小物入れは、図7(a)、(b)に示すように、係止手段16のみが実施例1の係止手段6と異なる例である。異なる部分についてのみ説明する。
この係止手段16は、図7(a)、(b)に示すように、この実施例2では、作業者の胸ポケットその他のポケット等又は作業現場の脚立その他の係止可能な各種部材に係止して吊り下げるようにすべく構成したものであり、前記容体部3の最上部に両端部を固設した取付片16aと、該取付片16aの中央部に取り付けたフック片16bとで構成したものである。
【0077】
前記フック片16bは、同図に示すように、フック部16b2と、その基部に前記取付片16aの中央部を通してこれに取り付けるための小径の取付環16b1とからなる一般的な構成のものである。なお、前記取付片16aは、その中央部を前記取付環16b1に通してからその両端を前記容体部3の最上部に取り付ける。一端を取り付けてからその中央部を前記取付環16b1に通し、その後に他端を該容体部3の最上部に取り付けることとしても良いのは云うまでもない。
【0078】
なお、前記取付片16aも、実施例1の取付片6aと同様に、特に図7(b)に示すように、前記容器部2の内の容体部3側に取り付ける。この作業用小物入れを吊り下げた場合に、該容体部3が自重により、又は自重及び収容している小物の重量により、若干縦方向(上下方向)に延びて、その開口部4の両側の縁がほぼ接するか又は非常に狭い状態になり、該開口部4が閉じるか又はそれに近い状態になるようにさせるためである。実施例1と同様に、前記背板1の上端に取り付けてもそれは可能であるが、容体部3側に取り付ける方がより適切である。
【0079】
この実施例2の作業用小物入れは、複数のこれを用意して、コネクタとかビスとか種類の異なる小物類を各々別のそれに収容しておき、必要に応じて、それらを選択して腰に装着するか、あるいは、全部を何らかの手段に吊り下げて作業現場に設置しておき、それらから必要な物を取り出して使用するような使い方もできる。後者の用法は、係止片16aが実施例1の係止片6aよりも様々な物に係止可能であるため、実施例1の場合より一層実行しやすい。
【実施例3】
【0080】
この実施例3の作業用小物入れは、図9に示すように、横長の背板21に、この背板21の対応する4箇所の部位にそれぞれ前記開口部4に前記紐状縁部材5を配した前記容体部3を取り付けて4個の前記容器部2、2…を構成し、更に該背板21の上辺中央に係止手段26を取り付けたものである。
【0081】
この実施例3の作業用小物入れは、以上のとおりであり、実施例1と異なるのは、前記背板21が横長であり、前記開口部4に前記紐状縁部材5を配した4個の前記容体部3、3…を該背板21に横一列に配設することにより、該背板21に4個の容器部2、2…を構成した点及び前記係止手段26を該背板21の上辺中央に構成した点のみであり、前記容体部3、その開口部4及び前記紐状縁部材5のそれぞれ自体の構成は、実施例1のそれらと各々同一の構成である。
【0082】
すなわち、前記容体部3は、前記容体基部3Aとその前面開口の下部側を閉じる容体前部片3Bとからなり、その開口部4は、実施例1のそれと全く同様に、該容体前部片3Bの上部の凹状の縁部と該容体基部3Aの開口の上部縁及び両側縁で囲まれる口部であり、前記紐状縁部材5も実施例1のそれと全く同様の構成である。
【0083】
以下に実施例1と異なる構成に力点を置いて説明する。
前記背板21は、前記のように横長の板状部材であるが、材質は、実施例1のそれと同様に、弾力性を有する硬質プラスチックの平坦な板状部材で構成したものである。この背板21の前面には、前記のように、前記容体部3を構成する、4個の容体基部3A、3A…を横一列に配するわけであるが、これは、前記背板21に、図8に一点鎖線で示すように、横一列に対応する形状及びサイズ(実施例1の背板1と同様の形状及びサイズ)の4個の取付領域21a、21a…を想定し、各取付領域21a、21a…に各々容体基部3Aを配することで行う。
【0084】
該各容体基部3A、3A…は、その背後側の接合片部3a2をそれぞれ前記各取付領域21a、21a…の全縁に沿ってその内側に当接させ、この実施例3の場合も実施例1の場合と同様に、接着剤で両者を接着結合して、前記背板21に取り付け固定したものである。該背板21の各取付領域21a、21a…に取り付けた容体基部3A、3A…には、実施例1のそれと同様に、各々容体前部片3Bを取り付け、更にそれぞれの開口部4、4…には紐状縁部材5、5…を同様に取り付ける。
【0085】
前記係止手段26は、前記のように、実施例1のそれと異なり、前記背板21の上辺中央に取り付けたものであるが、特に図9に示すように、この係止手段26は、特に作業現場の脚立やはしごその他の係止可能な各種部材に係止して吊り下げるようにすべく構成したものであり、前記背板21の上辺中央部に両端部を固設した取付片26aと、該取付片26aの中央部に取り付けたフック片26bとで構成したものである。
【0086】
前記フック片26bは、実施例2のフック部16bと同様に、フック部26b2と、その基部に前記取付片26aの中央部を通してこれに取り付けるための小径の取付環26b1とからなる一般的な構成のものである。なお、前記取付片26aは、その中央部を前記取付環26b1に通してからその両端を前記背板21の上辺中央部に取り付ける。該取付片26aは、その一端を取り付けてからその中央部を前記取付環26b1に通し、その後に他端を該背板21の上辺中央部に取り付けることとしても良いのは云うまでもない。
【0087】
この実施例3の作業用小物入れによれば、この作業用小物入れを、前記係止手段26を介して作業現場に配してある、例えば、脚立やはしごの一部から吊り下げておけば、前記背板21と前記容体部3、3…とで構成する複数の容器部2、2…のそれぞれに収納してある小物類を一箇所で取り出して極めて便利に使用することができる。特に本発明の6の作業用小物入れの場合は、複数の容器部2、2…に、その作業現場で必要とする複数種の小物類を分けて収納しておくことが可能であり、そうすれば、必要な小物類を一箇所に保管しておき、それらを確実にスピーディに取り出して使用することができるものであり、極めて好都合である。
【0088】
なお、実施例3の作業用小物入れにおける背板21、容体部3、開口部4、紐状縁部材5及び係止手段26のそれぞれについての作用及び効果は、容体部3、開口部4及び紐状縁部材5については、実施例1のそれらと同様の構成であり、係止手段26については、実施例2の係止手段16と実質的に同様の構成であり、背板21については、実施例1の背板1と若干構成が異なるが、機能が実施例1の背板1と同様であることは明かであり、それ故、それらに関して実施例1又は2で説明したのと全く同様である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の作業用小物入れは、これを製造する工業分野及びこれを使用する建設業等の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 背板
2 容器部
2a 小物類収納部
3 容体部
3A 容体基部
3a 容体基部用シート
3a1 斜め切断部
3a2 接合片部
3a3 端部接合片部
3B 容体前部片
3b 接合片部
4 開口部
5 紐状縁部材
5a 帯状フェルト材
5a1 接合片部
5a2 充填材
6 係止手段
6a 取付片
6b ベルト通し部
6b1 取付環
6b2 ベルト通し環
16 係止手段
16a 取付片
16b フック片
16b1 取付環
16b2 フック部
21 背板
21a 取付領域
26 係止手段
26a 取付片
26b フック片
26b1 取付環
26b2 フック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9